JP5201376B1 - エキスパンド格子用鉛合金シートの製造方法及びその鉛合金シートを用いる鉛蓄電池用エキスパンド格子の製造方法 - Google Patents

エキスパンド格子用鉛合金シートの製造方法及びその鉛合金シートを用いる鉛蓄電池用エキスパンド格子の製造方法 Download PDF

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Abstract

鉛合金からなる母材シートに、これとは合金組成が異なる鉛合金箔を重ねて両者を一対の圧延ロールの間の間隙に通して圧延する過程を複数回行うことにより、母材シートに鉛合金シートが一体化されたエキスパンド格子用鉛合金シートを製造するに当たり、鉛合金箔の先端寄りに設定した先端部領域に、鉛合金箔を厚み方向に貫通した複数の貫通穴を点在させておき、貫通穴を点在させた鉛合金箔の先端部領域を母材シートの先端部に重ねた状態で、母材シートと鉛合金箔とを最初の圧延を行う圧延ロールの間に供給する。これにより最初に行う圧延での圧延率を特に大きくすることなく、母材シートと鉛合金箔とを確実に一体化することを可能にする。
【選択図】図1

Description

本発明は、鉛蓄電池極板用のエキスパンド格子の素材として用いる鉛合金シートを製造する方法及びその製造方法により製造された鉛合金シートを用いてエキスパンド格子を製造する方法に関する。
鉛蓄電池用の極板として、エキスパンド格子からなる集電体に活物質ペーストを充填したものが広く用いられている。エキスパンド格子は、鉛合金シートにエキスパンド加工を施すことにより製造される。鉛蓄電池用極板の集電体として用いるエキスパンド格子は、活物質を脱落させることなく保持するために、活物質ペーストとの密着性(活物質ペーストと結合する性質)が高いことが必要とされる。そのため、エキスパンド格子を活物質ペーストとの密着性が比較的低い鉛合金により形成する場合には、その表面に活物質ペーストとの密着性が高い鉛合金からなる薄層を設けておくことが好ましい。このような構造のエキスパンド格子を得るための素材としては、エキスパンド格子の本体を構成する鉛合金の母材シートの表面に、該母材シートとは合金組成が異なる鉛合金の薄層を一体化した構造を有する複合構造の鉛合金シートが用いられる。
活物質ペーストとの密着性が高い薄層が表面に一体化されたエキスパンド格子は、鉛合金からなる母材シートと、該母材シートとは合金組成が異なる鉛合金箔との積層体を冷間で圧延することにより、母材シートの表面に鉛合金箔が一体化された複合構造の鉛合金シートを製造した後、この鉛合金シートにエキスパンド加工を施すことにより製造される。エキスパンド加工においては、帯状の鉛合金シートに、該シートの長手方向に長い多数のスリットを千鳥状に形成した後、鉛合金シートのスリットが形成された部分を幅方向に展開することにより、各スリットを広げて網目状にする。
母材シートと鉛合金箔との積層体を冷間で圧延して複合構造の鉛合金シートを製造する際には、母材シートと鉛合金箔とを確実に一体化するための工夫をする必要がある。母材シートと鉛合金箔との積層体の圧延は、多段圧延機を用いて、積層体の厚みを段階的に減少させることにより行われるが、母材シートと鉛合金箔との一体化を確実に行うためには、当該積層体を初段の圧延ローラの間に通して最初の圧延過程を行う際に、母材シートと鉛合金箔とを確実に一体化することが重要である。最初の圧延過程で母材シートと鉛合金箔との一体化がうまく行かないと、積層体の先端が圧延ロール間の間隙を通り抜けた際に鉛合金箔が母材シートから剥離して反り返り、後段の圧延ロール間の間隙に積層体を通すことができなくなるため、積層体の圧延に失敗する。このような問題が起らないようにするため、特許文献1や特許文献2に示されたエキスパンド格子用鉛合金シートの製造方法が提案されている。
特許文献1に示された方法では、図4に示すように、連続鋳造されて移送されてくる母材シート1の表面に、ガイドローラ2によりガイドされて送給された鉛合金箔3を重ね、重ね合わされた母材シート1と鉛合金箔3とを、相対して配置された一対のガイドローラ4,4′の間を通した後、一対のかしめローラ一5と押えローラ6との間を通して、多段圧延機7に供給する。
かしめローラ5の外周には多数の円錐状の突起5aが形成されている。重ね合わされた母材シート1及び鉛合金箔3をかしめローラ5と押えローラ6との間に供給すると、かしめローラ5に設けられた突起5aが鉛合金箔3を貫通した際に鉛合金箔3の一部が母材シートに食い込むため、鉛合金箔3が母材シート1にかしめられて結合される。
このようにして互いに結合された母材シート1及び鉛合金箔3を多段圧延機7に供給して圧延する。多段圧延機7は、所定の間隙を介して対向配置された一対の圧延ロール8,8′を備えた圧延ステージを複数個縦列に並べて配置した構造を有している。一連の圧延ステージに設けられた一対の圧延ロール8,8′は、相互間の間隙が段階的に小さくなるように設けられている。圧延機7に供給された母材シートと鉛合金箔との積層体は、各圧延ステージで圧延される毎にその厚みが減少させられて、最終的に所定の厚みを有する複合構造の鉛合金シート9に加工される。
特許文献2に示された方法では、図5に示したように、Pb−Ca系鉛合金の母材シート1に、Sn,Sb及びAgのうちの少なくとも1つを含む鉛合金箔3を重ねて、母材シート1と鉛合金箔3との積層体を多段圧延機で圧延する際に、最初の圧延ステージの圧延ロール8,8′で圧延する際の圧延率を大きな値とすることにより、最初の圧延ステージで母材シート1と鉛合金箔3との結合を確実にしてから以後の圧延ステージでの圧延を行うようにしている。特許文献2に示された方法では、圧延前の母材シート1の厚みをa,圧延前の鉛合金箔3の厚みをt、最初の圧延ロール8,8′により圧延した後の母材シート1と鉛合金箔3との積層体の厚みをbとしたときに、(a+t)/b≧1.3の条件を成立させ、母材シート1及び鉛合金箔3と最初の圧延ステージの圧延ロール8,8′の周面とが接触する部分の長さを10mm以上に設定している。
特許第4774297号公報 WO2004/084331号公報
特許文献1に示された方法によった場合には、かしめローラ5の外周に設けられた多数の突起5aが鉛合金箔3を貫通した際に形成された多数の穴の痕跡が製造された鉛合金シートの表面の全長に亘って残る。当該痕跡の部分の合金組成は、鉛合金箔2の合金組成ではなく、母材シート1の合金組成となっているため、母材シートの表面に該母材シートとは異なる合金組成を有する薄層を形成した意義が減じられてしまう。
特許文献2に示された方法によった場合には、多段圧延機で段階的に行われる一連の圧延過程のうち、最初の圧延ステージで行われる圧延の圧延率が大きいため、最初の圧延ステージの圧延ロールに常に大きな荷重がかかる。そのため、最初の圧延ステージの圧延ロールの寿命が短くなり、圧延機のメンテナンスが面倒になるのを避けられない。
本発明の目的は、製造された鉛合金シートの全長に亘って鉛合金箔を貫通した多数の穴の痕跡を残すことなく、かつ多段圧延機で最初に行う圧延での圧延率を大きくすることなく、母材シートに鉛合金箔を確実に一体化して、エキスパンド格子用鉛合金シートを製造する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記の方法により製造された鉛合金シートを用いて鉛蓄電池用エキスパンド格子を製造する方法を提供することにある。
本発明は、鉛合金からなる帯状の母材シートの表面に、該母材シートとは合金組成が異なる帯状の鉛合金箔を一体化してエキスパンド格子用鉛合金シートを製造する方法を対象とする。本発明が対象とする製造方法では、帯状の母材シートの表面に、帯状の鉛合金箔の厚み方向の一方の面を、該鉛合金箔の幅方向を母材シートの幅方向に一致させた状態で重ねて母材シートと鉛合金箔とを積層し、母材シートと鉛合金箔との積層体を一対の圧延ロールの間に通して圧延する圧延過程を複数の圧延ステージで行うことにより、母材シートと鉛合金箔との積層体の厚みを段階的に減じていく圧延工程を行う。
本発明においては、帯状の鉛合金箔の先端寄りに設定した先端部領域にのみ該鉛合金箔を厚み方向に貫通した複数の貫通穴を点在させておき、鉛合金箔の先端部領域を母材シートに重ねた状態で圧延工程の最初のステージで圧延過程を行う一対の圧延ロールの間に供給する。
鉛合金箔の先端部領域に設ける各貫通穴の母材シート側に向けられる開口端の周縁部には、鉛合金箔の一方の面から突出したカエリを形成しておくことが好ましい。母材シートの表面に鉛合金箔を重ねる際には、このカエリが突出した鉛合金箔の一方の面を母材シートの表面に重ねる。
本発明によれば、鉛合金箔の先端寄りに設定した先端部領域に該鉛合金箔を厚み方向に貫通した複数の貫通穴を点在させておいて、この鉛合金箔の先端部領域を母材シートの表面に重ねた状態で、母材シートと鉛合金箔との積層体を圧延工程の最初の圧延ステージで圧延を行う一対の圧延ロール間に通すようにしたので、最初の圧延を行う際に母材シートを構成する鉛合金の一部を鉛合金箔の貫通穴内に食い込ませて、母材シートと鉛合金箔の先端部領域とを確実に結合することができ、積層体が最初の圧延ステージの圧延ローラを通過した際に、鉛合金箔が母材シートから剥離して反り返るのを防ぐことができる。従って、2番目以降の圧延ステージで圧延を行う際に、母材シートと鉛合金箔との積層体を圧延ロール間の間隙に確実に供給して圧延を行わせることができ、母材シートの表面に鉛合金箔が確実に一体化されたエキスパンド格子用鉛合金シートを得ることができる。
また鉛合金箔の先端部領域に設けられた貫通穴の痕跡が残るのは製造された鉛合金シートの先端部のみであり、該鉛合金シートの長手方向の全領域に亘って貫通穴の痕跡が残ることはないので、該貫通穴の痕跡が残っている部分を除去することにより、貫通穴の痕跡を有しないエキスパンド格子を得ることができる。
更に、鉛合金箔の先端部領域に設ける各貫通穴の母材シート側に向けられる開口端の周縁部にカエリを形成して、このカエリが突出した鉛合金箔の一方の面を母材シートの表面に重ねるようにした場合には、カエリが形成された部分で母材シートと鉛合金箔の積層体の見かけの厚さを厚くして、母材シートと鉛合金箔との積層体に対して最初の圧延を施す際にカエリが形成された部分で鉛合金箔の圧延率を大きくすることができる。従って、最初の圧延により得られる母材シートと鉛合金箔との結合強度を高めることができ、鉛合金箔の剥離を確実に防いで、両者の積層体の圧延をより確実に行わせることができる。カエリは最初の圧延の際に容易に潰すことができるため、圧延ロールに大きな負担がかかるのを防ぐことができ、母材シートと鉛合金箔との積層体の全体の圧延率を大きくしていた従来技術によった場合のように、圧延ロールの寿命が短くなるのを防ぐことができる。
本発明の一実施形態において、鉛合金からなる帯状の母材シートの上に母材シートとは合金組成が異なる鉛合金箔を重ねて、これらの積層体を多段圧延機の最初の圧延ステージのロールの間を通して圧延する過程を開始する直前の状態を示した斜視図である。 本発明の一実施形態において、鉛合金からなる帯状の母材シートと鉛合金箔との積層体を、多段圧延機の最初の圧延ステージの圧延ローラの間を通して圧延した後の状態を模式的に示した断面図である。 (A)及び(B)はそれぞれ、本発明の一実施形態において、鉛合金箔の先端部領域に点在させる貫通穴の形状の異なる例を示した断面図である。 従来のエキスパンド格子用鉛合金シートの製造方法において、母材シートと鉛合金箔との積層体を圧延している状態を示した側面図である。 従来の他のエキスパンド格子用鉛合金シートの製造方法において、母材シートと鉛合金箔との積層体に最初の圧延を施す際の状態を示した側面図である。
以下図1ないし図3を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本発明に係るエキスパンド格子用鉛合金シートの製造方法においては、鉛合金からなる帯状の母材シートの表面に、該母材シートとは合金組成が異なる帯状の鉛合金箔の厚み方向の一方の面を、該鉛合金箔の幅方向を前記母材シートの幅方向に一致させた状態で重ねて母材シートと鉛合金箔とを積層する。これら母材シートと鉛合金箔との積層体を一対の圧延ロールの間に通して圧延する圧延過程を複数の圧延ステージで繰り返し行うことにより、母材シートと鉛合金箔との積層体の厚みを段階的に減じていく圧延工程を行って、母材シートの表面に鉛合金箔を一体化したエキスパンド格子用鉛合金シートを製造する。
本発明に係る製造方法によりエキスパンド格子用鉛合金シートを製造するに当たっては、母材シートとして、Pb−Ca−Sn合金からなるものを用いるのが好ましい。Pb−Ca−Sn合金としては、0.03〜0.1質量%のCaと、0.8〜1.8質量%のSnとを含むものを用いるのか好ましい。また母材シートの厚さは10〜20mm程度であることが好ましい。
エキスパンド格子と活物質との密着性を向上させるために母材シートの表面に一体化する鉛合金箔は、Sn,Sb及びAgからなる群から選択された少なくとも1種を含む鉛合金からなっていることが好ましい。ここで、Snの含有量は1〜10質量%であることが好ましく、Sbの含有量は1〜10質量%であることが好ましい。またAgの含有量は0.05〜1質量%であることが好ましい。鉛合金箔の厚みは、0.05〜0.3mm程度とする。
本実施形態においては、上記の母材シートと鉛合金箔とを重ねて構成した積層体を、一対の圧延ロールを有する圧延ステージを複数備えた多段圧延機に供給して、各圧延ステージで行う冷間圧延により積層体の厚みを段階的に減少させていくことにより、母材シートの表面に該母材シートとは合金組成が異なる鉛合金箔が一体化された、所定の厚さのエキスパンド格子用鉛合金シートを製造する。製造される鉛合金シートの最終的な厚みは、鉛蓄電池の設計に応じて適宜に決定されるが、通常は0.5〜1.5mm程度である。
上記のようにして製造されたエキスパンド格子用鉛合金シートを用いて鉛蓄電池用のエキスパンド格子を製造する際には、先ずエキスパンド格子用鉛合金シートの鉛合金箔が一体化された領域に、該鉛合金シートの長手方向に伸び、かつ該鉛合金シートを厚み方向に貫通した多数のスリットを千鳥状に形成し、該スリットが形成された鉛合金シートを幅方向に展開させるエキスパンド加工を行う。これにより各スリットを広げて網目を形成し、多数の網目が縦横に並ぶ構造を有する鉛蓄電池用エキスパンド格子を製造する。
図1は、本発明の一実施形態において、鉛合金からなる帯状の母材シートの上に鉛合金箔を重ねて、これらの積層体を多段圧延機の最初の圧延ステージの圧延ローラの間を通して圧延する過程を開始する直前の状態を示している。同図において、1は鉛合金からなる母材シートで、この母材シートは、溶融したPb−Ca系の鉛合金を、所定寸法のスリットが先端に形成されたノズルから流出させるなどの方法により連続鋳造されて、その長手方向に送給される。
また3は、母材シートを構成する鉛合金とは異なる合金組成を有する鉛合金からなる帯状の鉛合金箔である。この鉛合金箔3は、図示しないロールから巻き戻されて、その幅方向を帯状の母材シート1の幅方向に一致させ、かつ母材シート1の幅方向に対して所定の位置に位置決めされた状態で、連続鋳造されて送給されてくる母材シート1と同方向に送給されて母材シート1上に重ねられる。
図示の例では、母材シート1に鉛合金箔3を一体化してエキスパンド格子用鉛合金シートを形成した後に、その幅方向の中央部の一定幅の領域と、幅方向の両端寄りの一定幅の領域とを除く一定幅の2つの領域にエキスパンド加工を施す。図1において、W1及びW2は、鉛合金シートを形成した後にエキスパンド加工が施される母材シートの2つの領域を示しており、Woはエキスパンド加工が施されない中央領域を示している。またWe1及びWe2はそれぞれ、母材シート1のエキスパンド加工が施されない幅方向の一端寄り及び他端寄りの領域を示している。
図示の例では、母材シート1の表面のうち、後のエキスパンド工程でエキスパンド加工が施される領域W1及びW2に、平行に配置した2枚の鉛合金箔3,3を、それぞれの幅方向を母材シート1の幅方向に一致させ、かつそれぞれを母材シート1のエキスパンド加工が施される領域W1,W2の上に正確に位置させるように位置決めして、母材シート1の表面に重ねることにより、母材シート1と鉛合金箔3,3との積層体を構成するようにしている。そして、この積層体を、多段圧延機の最初の圧延ステージの一対の圧延ロール8,8′の間の間隙を通すことにより圧延して、母材シート1の表面に鉛合金箔3,3を結合する。
本発明においては、図1に示されているように、帯状の母材シート1の上に重ねる鉛合金箔3,3のそれぞれの先端寄りに、それぞれの長手方向に一定の長さ寸法Sを有する先端部領域3A、3Aを設定して、鉛合金箔3,3のそれぞれの先端部領域のみに、それぞれを厚み方向に貫通した複数個の貫通穴3aを点在させておく。そして、鉛合金箔3,3を、前述のように母材シート1の幅方向に位置決めした状態で、鉛合金箔3,3の先端領域3A,3Aを母材シート1の表面に重ねることにより母材シート1と鉛合金箔3,3との積層体を構成し、この積層体を最初の圧延ステージの圧延ロール8,8′の間に供給して冷間で圧延する。
上記のように、鉛合金箔3の先端寄りに設定した先端部領域3Aに該鉛合金箔を厚み方向に貫通した複数の貫通穴3aを点在させておいて、この鉛合金箔の先端部領域を母材シート1の表面に重ねることにより母材シート1と鉛合金箔3との積層体を構成し、この積層体を圧延工程の最初の圧延を行う一対の圧延ロール8,8′間に供給するようにすると、図2に示されているように、最初の圧延を行う際に母材シート1を構成する鉛合金の一部1aを鉛合金箔3の貫通穴3a内に食い込ませて、母材シート1と鉛合金箔3の先端部領域3Aとを機械的に確実に結合することができる。鉛合金箔3の先端部領域3Aを母材シート1に確実に結合しておけば、母材シート1と鉛合金箔3との積層体の先端が最初の圧延ステージの圧延ロールの間の間隙を通過する際に、鉛合金箔3,3が母材シート1から剥離して反り返るのを防ぐことができるため、積層体を2番目の圧延ステージの圧延ロールの間に確実に供給することができる。従って、2番目以降の圧延ステージでも、母材シート1と鉛合金箔3,3との積層体の圧延を確実に行わせることができ、母材シートの表面に鉛合金箔が強固に一体化された鉛合金シートを得ることができる。
最初の圧延ステージの圧延ロール8,8′により圧延された母材シート1と鉛合金箔3,3との積層体は、2番目以降の圧延ステージの圧延ロールにより更に圧延される。母材シート1と鉛合金箔3,3との積層体は、複数の圧延ロールにより圧延される過程で段階的に厚みを減じながら更に強固に一体化され、最終ステージの圧延ロールによる圧延により、最終的な厚みを有するエキスパンド格子用鉛合金シートに加工される。
本発明の方法によった場合、製造されたエキスパンド格子用鉛合金シートの先端部には、貫通穴3aの痕跡が残るが、貫通穴3aの痕跡が残る部分は鉛合金シートの先端部のみであり、得られた鉛合金シートの大部分の領域には貫通穴の痕跡が残らないので、製造された鉛合金シートの先端寄りの貫通穴の痕跡が残っている部分を切断して除去することにより、後の工程で製造されるエキスパンド格子には貫通穴の痕跡が残らないようにすることができる。エキスパンド格子用鉛合金シートから貫通穴の痕跡が残っている部分を除去する作業は、エキスパンド加工を行う前に行ってもよく、エキスパンド加工を行った後に、エキスパンド格子の貫通穴の痕跡が残っている部分を切除することにより行ってもよい。
複数の貫通穴3aを点在させる鉛合金箔3の先端部領域3Aの長さ寸法(鉛合金箔3の長手方向に測った寸法)Sを長く設定すればするほど、母材シート1と鉛合金箔3の結合を確実にすることができるが、無駄になる材料を少なくするため、鉛合金箔3の先端部領域3Aの長さ寸法Sは必要以上に長くしないようにするのが好ましい。実験の結果から、複数の貫通穴3aを点在させる鉛合金箔3の先端部領域3Aの、鉛合金箔3の先端から該鉛合金箔の長手方向に測った長さ寸法Sを、30mmに設定すれば最初の圧延ステージを通過した際に鉛合金箔が母材シートから剥離するのを確実に防ぐことができることが明らかになっている。従って、鉛合金箔の先端部領域3Aの長さSは、30mm以上で、しかも必要以上に長すぎない長さに設定することが好ましい。
貫通穴3aは1mm以上の直径を有する円形の穴とすることができる。複数の貫通穴3aは、1cm当たりに1個以上の貫通穴が存在する密度で鉛合金箔3の先端部領域に点在させておくことが好ましい。貫通穴3aの内径を大きくすると、鉛合金箔3の先端を母材シート1の表面に重ねて両者を最初の圧延ステージの圧延ローラ間に供給して圧延した際に、母材シート1を構成する鉛合金が貫通穴3a内に侵入するのを容易にすることができる。
図3(A)及び(B)は、鉛合金箔3の先端領域に設ける貫通穴の断面形状の異なる例を示している。図3(A)に示された例では、貫通穴3aをせん断打ち抜きにより、カエリが存在しないきれいな形に形成した例を示している。
図3(B)は、鉛合金箔2の一方の面(母材シートの表面に重ねられる面)3s側に位置する貫通穴3aの端部の周縁部に、鉛合金箔2の一方の面3sから突出したカエリ3bを形成した例である。この場合は、カエリ3bが突出した鉛合金箔3の一方の面3sを母材シート1の表面に重ねた状態で、圧延を実施する。カエリ3bは、鉛合金箔2に先が尖った円錐状の工具を突刺すことにより形成することができる。
上記のように、鉛合金箔3の先端部領域3Aに設ける貫通穴3aの、母材シート1側に向けられる開口端の周縁部に鉛合金箔の一方の面から突出したカエリ3bを形成して、このカエリ3bが突出した鉛合金箔の一方の面3sを母材シート1の表面に重ねるようにすると、カエリ3bが形成された部分で母材シート1と鉛合金箔3の積層体の見かけの厚さを厚くすることができる。従って、母材シート1と鉛合金箔3との積層体に対して最初の圧延を施す際にカエリ3bが形成された部分で鉛合金箔の圧延率を大きくして、最初の圧延により得られる母材シートと鉛合金箔との結合強度を高めることができ、両者の積層体の圧延をより確実に行わせることができる。
この場合、圧延率が大きくなるのは、鉛合金箔の貫通穴の開口端の周縁部に形成されたカエリの部分のみであり、カエリ3の部分は圧延の際に容易に潰すことができるため、最初の圧延ステージの圧延ロールに大きな負担がかかるのを防ぐことができる。従って、母材シート1と鉛合金箔3との積層体の全体の圧延率を大きくしていた特許文献2に示された方法によった場合のように、圧延ロールの寿命が短くなるのを防ぐことができる。
鉛合金箔3の先端部領域3Aに設ける貫通穴3aの周縁部に設けるカエリ3bの鉛合金箔3の一方の面3sからの突出高さは、0.05mm以上に設定することが好ましい。カエリ3bの突出高さをこのように設定すると、カエリ3bを設けたことによる効果が顕著に現われる。
上記実施形態の製造方法により製造された鉛合金シートを用いて鉛蓄電池用のエキスパンド格子を製造するエキスパンド格子の製造方法では、上記のようにして製造されたエキスパンド格子用鉛合金シートの鉛合金箔3,3が一体化された領域に多数の切り込みを入れることにより、該鉛合金シートの長手方向に伸びる多数のスリットを千鳥状に形成し、該スリットが形成された鉛合金シートを幅方向に展開させるエキスパンド加工を行う。鉛合金シートを幅方向に展開する過程で、各スリットを広げて網目形状にすることにより、鉛蓄電池用のエキスパンド格子を製造する。
鉛合金シートの幅方向の中央領域Woの両側の領域W1及びW2にそれぞれエキスパンド格子の網目が形成される。後の工程で、長尺のエキスパンド格子が打ち抜かれることにより、多数の極板用の集電体が形成される。エキスパンド加工が施されないエキスパンド格子の幅方向の中央部の一定幅の領域(図1のWoに相当する領域)は、エキスパンド格子を打ち抜いて多数枚の集電体を形成する際に集電体の耳部の形状に成形される。エキスパンド格子を打ち抜いて集電体を形成した後、該集電体にペースト状活物質を充填して極板を製造する。
上記の説明では、長尺のエキスパンド格子を打ち抜いて集電体を形成した後に該集電体に活物質ペーストを充填して極板を製造するとしたが、長尺のエキスパンド格子にペースト状活物質を充填した後に各極板を構成する部分を打ち抜くことにより、多数枚の極板を製造する方法をとることもできる。このように、長尺のエキスパンド格子に活物質を充填してから各極板を打ち抜く方法をとる場合、エキスパンド格子の幅方向の中央部の一定幅の領域を打ち抜いて各集電体の耳部を形成する工程を、活物質を充填する工程の前に行うこともある。長尺のエキスパンド格子を用いて鉛蓄電池用極板を製造する方法としては種々の方法が知られているが、本発明の方法により得られた長尺のエキスパンド格子は、何れの方法で極板を製造する場合にも適用することができる。
本発明の実施例を以下に説明する。本実施例では、鉛合金からなる母材シート1として、Pb−0.07質量%Ca−1.2質量%Snの合金組成を有する鉛合金からなるものを用いた。母材シート1の圧延前の厚みは11mmである。また鉛合金箔3としては、Pb−5.0質量%Sn−5.0質量%Sbの合金組成を有する鉛合金からなるものを用いた。鉛合金箔3の厚みは0.2mmとした。図1に基づいて説明した方法により母材シートに鉛合金箔3,3を重ねて、複数段階の圧延過程を行うことにより、鉛合金シートの最終的な厚みを1.1mmとした。なお圧延工程のいずれの圧延過程においても、一対の圧延ロール8,8′としては、直径が155mmの同径のロールを用いた。
厚みが1.1mmの鉛合金シートを製造した後、得られた鉛合金シートの鉛合金箔3,3が一体化された領域にエキスパンド加工を施して長尺のエキスパンド格子を製造した。この長尺のエキスパンド格子にペースト状活物質を充填した後、各極板を構成する部分を打ち抜いて多数枚の極板用の集電体を製作した。
以下、本発明の特徴部分を中心にして、本発明の実施例を従来例と対比する形で具体的に説明する。
[実施例1]
鉛合金箔3の先端から30mmの長さを有する領域を先端部領域3Aとして、この先端部領域3Aに横断面の輪郭形状がほぼ円形を呈する貫通穴3aを点在させた。貫通穴3aはその直径を2mmとし、1cm当り2個の密度で点在させた。貫通穴3aは剪断打ち抜き加工により設けた。本実施例で設けた貫通穴3aは図3(A)に示す通りであり、その端部の周縁部にはカエリが設けられていない。母材シート1と鉛合金箔との積層体を多段圧延機の最初の圧延ステージの圧延ロール間の間隙に通す前後において、図5に基づいて説明した数式(a+t)/bで計算される値は、1.17であった。最終的に得られる鉛合金シートの厚みを所望の厚み(1.1mm)とするために、その後の圧延の段数と圧延のために各圧延ロールにかける圧力とを適宜設定する。本実施例では、最初の圧延ステージを含めて10の圧延ステージを設けて、積層体の厚みを段階的に減じる圧延を実施した。
[実施例2]
図3(B)に基づいて説明したように、貫通穴3aの周縁に、鉛合金箔3の一方の面3sから外側(母材シート側)に突出したカエリ3bを形成した。貫通穴3aを点在させる先端部領域3Aの長さSは30mmとした。貫通穴3aは、鉛合金箔3の一方の面3s側に向って径が小さくなるようにテーパを付けた形状とし、その最大径を2mmとした。貫通穴3aは、1cm当り2個の密度で点在させた。この貫通穴3aは、先端部分領域3Aに円錐形状の突起を突き刺すことにより形成した。貫通穴3aの周縁部に形成されたカエリ3bは、鉛合金箔3の一方の面3sから0.5〜1.5mmの高さを持って突出している。
母材シート1と鉛合金箔との積層体を多段圧延機の最初の圧延ステージの圧延ロール間の間隙に通す前後において、図5に基づいて説明した数式(a+t)/bで計算される値は、1.14であった。本実施例においても、最初の圧延ステージを含めて10の圧延ステージを設けて、積層体の厚みを段階的に減じる圧延を実施した。
[従来例]
先端部領域3Aに貫通穴3aを設けない鉛合金箔3を母材シート1の表面に重ねて、両者を圧延した。母材シートと鉛合金箔の積層体を最初のロール間隙に通す前後において、前記数式(a+t)/bで計算される値は、1.6であった。本例では、最初の圧延ロールを含めて6段の圧延ロールを設けて、段階的に厚みを減じる圧延を実施した。本例では、最初の圧延ロールで圧延する際の圧延率を大きくして、数式(a+t)/bで計算される値を実施例1及び実施例2より大きくしているので、全体としての圧延の段数を実施例1及び実施例2より少なくしている。
上述した実施例1、実施例2及び従来例のいずれにおいても、母材シート1に鉛合金箔2を確実に一体化した鉛合金シート4を製造することができ、エキスパンド格子としての特性にも差異はなかった。
しかしながら、本発明の実施例1及び実施例2においては、母材シートと鉛合金箔とを最初の圧延ロール間に通す前後において、数式(a+t)/bで計算される値を小さく設定しているにも拘らず、圧延により母材シート1に鉛合金箔2を確実に一体化することができた。このことから、本発明によれば、初段の一対の圧延ロールにかかる荷重が少なくて済むので、圧延ロールの損傷を抑制してその長寿命化を図ることができることが明らかになった。
特に実施例2のように、鉛合金箔3の先端部領域に点在させる貫通穴3aの母材シート側の端部の周縁部にカエリ3bを形成しておくと、カエリ3bが存在する部分で鉛合金箔3の見掛けの厚みが厚くなって、最初の圧延ロールで圧延される際にカエリ3aが存在する部分で鉛合金箔2の圧延率が大きくなるので、鉛合金箔を母材シート1と一体化しやすくすることができる。そのため、鉛合金箔と母材シートとの圧延の初期段階での一体化をより確実にすることができ、最初の圧延ステージの圧延ローラを通過した鉛合金箔が母材シートから剥離して、2番目以降の圧延ステージでの圧延がうまく行われない状態が生じるのを確実に防ぐことができる。カエリは局部的に設けられている上に厚みが薄いため、最初の圧延ステージの圧延ロールにかける荷重を特に大きくしなくても、容易に潰すことができる。従って、鉛合金箔の先端部領域に設ける貫通穴の開口端の周縁部にカエリを設けておいても、初段の圧延ロールにかかる負担が増大することはなく、各ロールの寿命が短くなることはない。
[参考例]
従来例において、数式(a+t)/bで計算される値を1.2とした。母材シート1に鉛合金箔3を重ねて両者を最初の圧延ステージの圧延ロールの間に通したところ、鉛合金箔3は、一対の圧延ロールの内の上側のロールの周面に巻きつくように反り返ってしまい、鉛合金箔を母材シートに一体化するきっかけを作ることができなかった。
本発明によれば、鉛合金箔を貫通した多数の穴の痕跡が、製造された鉛合金シートの全長に亘って残ったり、多段圧延機で最初に行う圧延での圧延率を大きくする必要があるために圧延機にかかる負担が過大になるといった、従来技術が有していた問題を生じさせることなく、圧延により母材シートに鉛合金箔を確実に一体化してエキスパンド格子用鉛合金シートを製造することができるので、エキスパンド格子を集電体として用いる鉛蓄電池の分野での利用可能性が大である。
1 鉛合金母材シート
3 鉛合金箔
3a 貫通穴
3b カエリ
5 かしめロール
5a 突起
8,8’ 一対の圧延ロール
9 エキスパンド格子用鉛合金シート

Claims (6)

  1. 鉛合金からなる帯状の母材シートの表面に、該母材シートとは合金組成が異なる帯状の鉛合金箔の厚み方向の一方の面を、該鉛合金箔の幅方向を前記母材シートの幅方向に一致させた状態で重ねて前記母材シートと鉛合金箔とを積層し、前記母材シートと鉛合金箔との積層体を一対の圧延ロールの間に通して圧延する圧延過程を複数の圧延ステージで行うことにより、前記母材シートと鉛合金箔との積層体の厚みを段階的に減じていく圧延工程を行って、前記母材シートに前記鉛合金箔を一体化したエキスパンド格子用鉛合金シートを製造するエキスパンド格子用鉛合金シートの製造方法であって、
    前記帯状の鉛合金箔の先端寄りに設定した先端部領域にのみ該鉛合金箔を厚み方向に貫通した複数の貫通穴を点在させておき、
    前記鉛合金箔の前記先端部領域を前記母材シートに重ねた状態で前記圧延工程の最初の圧延過程を行う一対の圧延ロールの間に供給すること、
    を特徴とするエキスパンド格子用鉛合金シートの製造方法。
  2. 前記鉛合金箔の先端から長手方向の後方側に測った前記鉛合金箔の先端部領域の長さ寸法を30mm以上に設定することを特徴とする請求項1に記載のエキスパンド格子用鉛合金シートの製造方法。
  3. 前記貫通穴は1mm以上の直径を有し、前記複数の貫通穴が、1cm当たりに1個以上の密度で前記鉛合金箔の先端部領域に点在していることを特徴とする請求項1又は2に記載のエキスパンド格子用鉛合金シートの製造方法。
  4. 前記鉛合金箔に設けられた前記貫通穴の母材シート側に向けられる開口端の周縁部に、前記鉛合金箔の前記一方の面から突出したカエリが形成されていることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のエキスパンド格子用鉛合金シートの製造方法。
  5. 前記カエリの前記鉛合金箔の一方の面からの突出高さが0.05mm以上である請求項4に記載のエキスパンド格子用鉛合金シートの製造方法。
  6. 請求項1ないし5の何れかに記載された製造方法により製造されたエキスパンド格子用鉛合金シートの前記鉛合金箔が一体化された領域に、該鉛合金シートを厚み方向に貫通し、かつ該鉛合金シートの長手方向に伸びる多数のスリットを千鳥状に形成し、前記スリットが形成された前記鉛合金シートを幅方向に展開させるエキスパンド加工を行うことにより網目を形成して鉛蓄電池用のエキスパンド格子を製造することを特徴とする鉛蓄電池用エキスパンド格子の製造方法。
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