JP2004152578A - 鉛蓄電池およびその製造法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は格子体表面近傍の硫酸濃度が低下しやすい環境を作る大電流の充放電の繰り返しにおいて格子体が不働態化を抑制し、優れた寿命特性を達成する新しい技術を提供する。
【解決手段】骨格を形成する合金の連続鋳造スラブ(厚板)の少なくとも一部表面に高純度鉛金属のリボンを重ねて多段圧延して得られたクラッドシートをエキスパンド加工した格子体を形成する工程を備える鉛蓄電池の製造法で格子体骨格の表面の少なくとも一部に圧延一体化された高純度鉛の薄層を付与する。
【選択図】 図2
【解決手段】骨格を形成する合金の連続鋳造スラブ(厚板)の少なくとも一部表面に高純度鉛金属のリボンを重ねて多段圧延して得られたクラッドシートをエキスパンド加工した格子体を形成する工程を備える鉛蓄電池の製造法で格子体骨格の表面の少なくとも一部に圧延一体化された高純度鉛の薄層を付与する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エキスパンド格子を用いる鉛蓄電池およびその製造法に関するものであり、特に正極用格子体の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉛蓄電池は二酸化鉛を正極、鉛を負極の活物質、希硫酸を電解液とする電池である。電池の形態には、希硫酸を流体のまま用いる歴史的な液式形態のほかに、近年では希硫酸をシリカ等ゲル化剤とともに混合してゲル状にしたり、ガラスマットに吸収させて非流動化し、充電時に発生する酸素ガスを負極で吸収させてガス圧力の上昇を防ぐ制御弁式鉛蓄電池(VRLA)が実用化され、従来の自動車用や産業用のほかに電気自動車やエンジンとのハイブリッド車、ゴルフカートという新しい用途分野へ適用範囲が拡大されている。これらの電池では、必ずしも完全充電状態で充放電されるのではなく、制動時の回生電流を活用する関係で、不完全な充電状態で大電流の充放電を含む寿命特性が重要視され、その多くは正極の寿命によるところが多い。
【0003】
鉛蓄電池では、正極には、歴史的に鉛−アンチモン系合金を格子形状に鋳造した格子体に活物質ペーストを充填して構成される鋳造極板が適用されてきたが、近年の軽メンテナンス化の要求に対応して水素発生の起こりやすいアンチモンが排除され、その鋳造性が困難な性質を回避する為に例えば鉛−カルシウム系合金を多段に圧延して作製されたシートをエキスパンド加工して、得られた多孔体に活物質ペーストを充填するエキスパンドタイプの極板がまず自動車用に適用されるようになった。以降上記タイプの格子体を改善する多くの技術が開発された。
【0004】
例えば、特許文献1には、上記鉛−カルシウム系合金の適切なカルシウム濃度範囲が0.03〜0.10質量%であることが開示され、上記領域以下ではシートに充分な強度が得られず、また高すぎると格子の腐蝕が促進され硬度が高すぎて適切なエキスパンド加工が困難になることが示された。
【0005】
また、上記鉛−カルシウム合金が放電状態で放置されるような環境で不働態化しやすい性質を改善するために錫が有効であって、上記錫の適切な濃度範囲が0.5〜2.5%であることが明らかにされた。
【0006】
さらに特許文献2には、上記鉛−カルシウム系、および鉛−カルシウム−錫系合金のエキスパンド格子の不働態化抑制技術として、鉛−カルシウム合金や鉛−カルシウム−錫合金など鉛−カルシウム系合金のスラブに鉛−錫合金や鉛−錫−アンチモン合金など耐食性合金のリボンを重ね、多段に圧延し、クラッドシートを形成してこれをエキスパンド加工する技術が開発された。また特許文献3では、上記リボンにアンチモンやセレンが添加された。上記技術はこの段階では主に、流動状態の希硫酸を用いる自動車用電池においては、上記不働態現象の抑制は一応解決されたと思われた。
【0007】
しかしながら、上記耐食性合金のリボンをクラッドされたシートから作製したエキスパンド極板を電解液の流動が抑制されたVRLAに適用して、例えば電気自動車やハイブリッド車のように、不完全な充電状態において大電流で充放電を繰り返される用途に適用すると、正極板全体には多くの充電状態の活物質を保持しながら、比較的早期に特性が低下することが明らかになった。上記早期劣化した電池を解析した結果、活物質層と格子体の界面には多くの硫酸鉛が蓄積されているだけでなく、クラッドされた合金の表面にも不働態の酸化層が形成されていることが明らかになった。
【0008】
上記不働態化のメカニズムを考察すると、電解液の流動性が抑制された構成の電池に対して不完全な充電状態において大電流充放電を繰り返すと放電反応が格子体と活物質の界面に集中し、また大電流の充電では充電反応が十分行われず、次第に上記界面近傍に反応生成物の硫酸鉛が蓄積される。更に格子体の近傍には電解液の希薄な環境が形成され強い酸化電位が与えられる。その結果、流動状態で、過放電放置での不働態化の抑制に有効性を示した耐食性合金のクラッド層でも不働態化が進行し、その抑制が困難であったものと考えられる。
【0009】
すなわち上記不働態化の抑制には、従来適用されてきた耐食性合金のクラッド層を超える改善が必要であることがわかった。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−243958号公報
【特許文献2】
特開平05−013084号公報
【特許文献3】
特開平10−321236号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち本発明は、エキスパンド格子体を正極に用いる鉛蓄電池の構成において、正極格子体の不働態化を回避し、寿命特性に優れた鉛蓄電池を実現することを課題とし、好ましい格子体の形態とそれらを含めた鉛蓄電池の製造法を開示するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する手段として、本発明は骨格を構成する合金の少なくとも一部表面に圧延一体化された高純度鉛金属の薄層を備えるエキスパンド格子体を正極に用いることを基本的構成とする鉛蓄電池および上記鉛蓄電池の構成と、上記構成を実現する手段として骨格を形成する合金の連続鋳造スラブ(厚板)の少なくとも一部表面に高純度鉛金属のリボンを重ねて多段圧延して得られたクラッドシートをエキスパンド加工した格子体を形成する工程を備える鉛蓄電池の製造法を開示するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下図面を用いて、上記構成および製造法に関する好ましい形態について詳述する。
【0014】
図1は本発明の高純度鉛の薄層をエキスパンド用圧延シートの任意の表面に圧延一体化する装置を示す図、図2はクラッドシートの外観図、図3は本発明に基き圧延シートからエキスパンド格子体へ展開加工される過程を圧延シートの片面について図示したものである。1はスラブ鋳造機、2は圧延機、3は鋳造合金スラブ、4は高純度鉛リボン、5はクラッドシートであり、6はクラッド層、7は格子体のエキスパンド展開部、8は極板形状裁断部、Sは高純度鉛の薄層が付与されたエキスパンド格子体の領域を示す。
【0015】
上記高純度鉛層は、圧延シートの表裏あるいは、極板形状の上下等格子体の骨格が展開される任意の範囲に形成されている。
【0016】
極板は活物質が上記エキスパンド加工された連続多孔体に充填された後に極板形状に裁断されても、裁断されたエキスパンド多孔体に活物質が充填されても任意である。
【0017】
得られた極板は、所定の温度と湿度の環境で熟成、乾燥され、電池形状構成の前あるいは後に希硫酸中で化成充電される。
【0018】
高濃度鉛金属は、古くから優れた耐食性を有し、延展性に優れた金属として知られた材料である。ただし上記金属はシートを作製しても軟弱で、エキスパンド加工には不適切な材料であった。また、上記鉛−カルシウム系合金のクラッド用リボン材料に従来使用されたことは無い材料であって、その不働態抑制機能については知られていなかった。
【0019】
本発明は、上記高純度鉛の不働態化に対する抑制効果の発見に基き、実現したものである。
【0020】
たとえシートの片面あるいは両面全体に高純度鉛層が付与されても、エキスパンド加工で切り開かれた断面には高純度鉛層でクラッドされていない断面が露出する。
【0021】
そこで上記基本構造において高純度鉛の薄層はエキスパンド格子体の表面の一部に形成されて特性改善効果を発揮するメカニズムについて考察すると、以下の様に考えられる。
【0022】
たとえ骨格合金の表面が不働態化しても高純度鉛層の形成された表面が存在する限り、格子体の表面の一部は常に活物質と導通し、近傍に接し硫酸を固定している活物質(硫酸鉛)を充電することができる。さらに二酸化鉛に変換され導体化された活物質は導通経路となり、不働態化された近隣の活物質を充電可能とする。上記充電経路の拡大によって、格子体近傍に硫酸が生成され、極板全体に不働態が形成される低濃度硫酸の環境が修正される。したがって骨格合金表面の一部に高純度鉛層が形成されていることによって、エキスパンド格子体全体と活物質との界面における導通が復元される。
【0023】
さらに同様な効果は、シートの表裏から形成される部分だけでなく、エキスパンド格子体の投影面における上部、下部の位置関係でも得ることができる。
【0024】
一方上記高純度鉛の薄層は基本的にエキスパンド格子体骨格の鉛−カルシウム系合金から離れていると、その界面に電解液が侵入し、鉛−カルシウム系合金層側に不働態層が形成され、付与された高純度鉛層が格子の骨格から絶縁され、活物質との導通を保つという効果も無くなるので、高純度鉛層は骨格合金の一部に圧延一体化されていることが好ましい。
【0025】
上記基本構成において、高純度鉛の薄層は不働態抑制効果とスラブ合金への密着性を確保する観点から99.9質量%よりも高濃度であり、さらに好ましくは99.99質量%以上であることが好ましい。一般に鉱石から精製されたり、リサイクルから精製過程で残留するビスマス等の不純物の存在は、本発明の範囲において無害である。
【0026】
つぎに主要骨格形成合金の鉛−カルシウム系合金の組成について述べる。本発明では、エキスパンド格子体の骨格表面の耐食性よりも軟弱な高純度鉛層を強度に優れた骨格表面の一部に圧延一体化して形成することが重要であって、その強度を形成する役割を担うものである。したがって、本発明では骨格を形成する鉛合金が不働態化する事は妨げない。すなわち上記骨格の強度とクラッド層の形成の観点から従来適正とされた領域よりも高濃度のカルシウム合金領域であることが好ましい。ただし0.2質量%を越えるとエキスパンド加工が困難になるので、適正なカルシウム濃度範囲は0.04質量%以上0.2質量%以下であることが好ましく、基本的には錫の添加は任意である。
【0027】
さらに高純度鉛層の密着一体化の容易さ、骨格強度、耐食性を改善するために錫を3.0質量%以下の範囲で添加することは好ましい形態である。
【0028】
つぎに本発明の製造法について好ましい形態を説明する。
【0029】
まず本発明の格子体の主要骨格の一部表面に圧延一体化された高純度鉛薄層を形成する方法として高純度鉛金属製のリボンは鉛−カルシウム合金製スラブの少なくとも片面あるいは両面の一部に重ねて圧延する工程を備えることが好ましい。上記によってエキスパンド加工で切り開かれ形成されるエキスパンド格子体の骨格の一部表面に圧延一体化された高濃度鉛の薄層が形成される。
【0030】
またエキスパンド格子体の上部あるいは下部に部分的に上記高純度鉛層を付与するには、展開される位置に対応したスラブの位置に高純度の鉛リボンを重ねて圧延したシートから得ることができる。
【0031】
上記高純度鉛金属製リボンの厚さの全シート厚さに対する比率は、圧延シートの適正強度や高純度鉛の一体化状態に影響を与える。上記高純度鉛リボンの厚さ比率が大きくなると、圧延シートの強度が低下し、小さすぎると密着性が低下し、不働態抑制効果が低下する。上記の観点から、上記高純度鉛リボンの厚さ比率は1〜30%が好ましい。
【0032】
一方上記スラブと高純度鉛リボンの圧延一体化は、圧延過程の圧延率の経緯に大きく影響される。
【0033】
まず圧延には多段圧延が好ましいが、特に上記多段圧延のうち第1段階の圧延率が重要である。上記第1段階の圧延率が大きすぎると、高純度鉛層が固い鉛合金層の上で削れるようにめくれたり不均一な表面が形成され、これらは後段では修正が不可能である。
【0034】
第1段で低い圧延率を適用した場合は、接合が不完全であっても後段で修正できるだけでなく、第1段で少なくとも密接されると後段で空気を捲き込むことなく圧延密着ができる。上記観点から第1段の圧延率は少なくとも多段で構成されるもっとも低い圧延率を適用するのが好ましい。また圧延前の高純度鉛リボンとスラブの合計厚さから最終の圧延シートへの圧延率は1/5〜1/100であることが好ましい。
【0035】
一方高純度鉛の優れた延展性は、鉛−カルシウム系合金の様に延展性が乏しい圧延体のクラックの発生を補修する機能も備え、骨格用合金の強度と複合して、エキスパンド格子体に優れた安定性を与えることができる。
【0036】
なお上記圧延シートのエキスパンド展開はレシプロ式ロータリー式のいずれのエキスパンド方式を適用しても類似の効果を得ることができる。
【0037】
【実施例】
以下実施例によって本発明の特徴と効果を説明する。
【0038】
(実施例1)
まず、高純度鉛クラッド層の被覆程度と急速充放電を含むサイクル寿命改善レベルの関係を求めた。
【0039】
正極用格子体として鉛−カルシウム合金系の骨格の表面の一部に高純度の鉛クラッド層を形成したエキスパンド格子を用いて極板を作製し、これを用いて鉛蓄電池の寿命特性を調べた。
【0040】
スラブ用合金にはカルシウム濃度0.08質量%のカルシウムと1.5質量%を含む鉛−カルシウム−錫合金を用い、クラッド用高純度鉛リボンには99.9質量%の市販の鉛を用いた。スラブは厚さ15mmの連続鋳造体を作製し、リボンは0.5mmのリボンを作製して用いた。
【0041】
まず上記リボンをエキスパンド展開で得られる格子体の所定部分がクラッドされるようにリボンスラブに重ね、10段階で圧延して厚さ1.5mmのクラッドシートを作製し、これを常法にしたがってエキスパンドし、厚さ2.0mmの格子体を得た。得られた格子体に酸化度70%の鉛粉と希硫酸と水を主成分とする、正極用ペーストを充填し、数10℃で熟成、乾燥して厚さ2.8mmの正極板とした。
【0042】
つぎに上記正極板と既存の負極板をガラスマットを介して積層し、希硫酸を所定量注入し、6セル12V、公称容量12V60AhのVRLAタイプの電池を作製した。
【0043】
上記においてスラブの片面で、かつ展開されるエキスパンド格子体の上部半分にクラッド層が付与された格子体を用いた電池をA1、スラブの片面にリボンを適用し、かつ展開されたエキスパンド格子体の下部半分にクラッド層が付与された格子体を用いた電池をA2、スラブの片面にリボンを適用し、かつ展開されたエキスパンド格子体の全面にクラッド層が付与された格子体を用いた電池をA3、スラブの両面で、かつ展開されたエキスパンド格子体の全面にクラッド層が付与された格子体を用いた電池をA4とする。
【0044】
用いた格子体の構成材料の概要を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
(実施例2)
本発明に基くエキスパンド格子体のスラブ合金の組成と電池寿命の関係を明らかにするためにスラブの両面で、かつ展開されたエキスパンド格子体の全面にクラッド層が付与された格子体を用いた電池を作製した。
【0047】
上記スラブの錫濃度を0質量%、1質量%、2質量%、3質量%とし、各グループにおいてカルシウム濃度を0.01質量%、0.04質量%、0.12質量%、0.30質量%に設定してスラブを作製し、これらの両面に99.9%の高純度鉛のリボンと組合せてエキスパンド格子体を作製し、実施例1と同様に電池を作製した。
【0048】
得られた電池を上記錫濃度グループごとに順次B1〜B4、B5〜B8、B9〜B12、B13〜B16とする。
【0049】
また作製した電池に用いた格子体の構成材料組成の概要を表2に示した。
【0050】
【表2】
(注)鋳造スラブ厚さ:15mm、高純度鉛:リボン厚さ:0.5mm、クラッドシート厚さ:1.5mm、格子体厚み:2.0mm、極板厚み:2.8mm
【0051】
(比較例)
上記本発明の比較例として、上記スラブと同じ組成で高純度鉛のリボンをクラッドしない格子体を用いた鉛蓄電池とカルシウム濃度0.08質量%錫濃度1.5質量%のスラブと錫濃度5質量%の合金リボンを用いてシートの片面に合金の薄層を形成し、これを用いた鉛蓄電池を作製した。
【0052】
格子体以外の上記極板と電池の作製は、実施例1および2と同じ条件を適用した。上記格子体の合金組成の概要を表3に示す。
【0053】
【表3】
(注)鋳造スラブ厚さ:15mm、高純度鉛:リボン厚さ:0.5mm、クラッドシート厚さ:1.5mm、格子体厚み:2.0mm、極板厚み:2.8mm
【0054】
つぎに作製された電池に希硫酸を注入し、初充電の後、公称容量を1Cとし、終止電圧を9.9Vとして1/3C(20A)容量確認の後、さらに2.5C(150A)で容量の80%まで放電する放電と最大電流が2.5C(150A)、最小電流が0.2C(12A)、制御電圧が14.4Vに設定された準定電圧充電と0.05C(3A)で4時間の定電流充電からなる充放電パターンを繰り返した。上記サイクルの過程で50サイクルごとに1/3C(20A)での容量確認を行い、容量の推移を調べて、上記容量が公称容量の80%に到達した時点を寿命とした。
【0055】
上記各電池についての寿命試験の結果を表4に示す。
【0056】
【表4】
【0057】
表4から明らかなように、まず本発明を適用しないで、本実施例のスラブと同じカルシウム濃度および錫濃度を適用したR0では600サイクルレベルであった。
【0058】
また上記スラブを適用しさらに従来技術に示されたような錫を高濃度(5質量%)も含むクラッド層を適用したR1でも1000サイクルレベルに留まった。
【0059】
これに対して、本発明の高純度鉛のリボンの付与位置をスラブの片面あるいは両面、あるいはエキスパンド極板の上部あるいは下部に変えて適用したA1〜A4においてはいずれも上記R0あるいはR1のレベルを超えるものであった。このことは、たとえ部分的であっても、エキスパンド格子体の骨格のいずれかに高純度鉛の薄層が付与されることによって、優れた寿命改善効果が得られることを示すものである。
【0060】
一方、片面、両面に拘わらず、展開される極板の全面に亘って、付与されたA3およびA4は1400サイクルを超える高いレベルが得られた。このことは本発明の高純度鉛の圧延一体化された薄層が付与されることによって従来の技術を超える高い寿命レベルが得られた。
【0061】
つぎにスラブ合金組成を変えたB1〜B16の結果について述べる。
【0062】
まず寿命特性についてはスラブのカルシウム濃度が0.04質量%および0.12質量%で錫濃度が1.0質量%あるいは2.0質量%のB6、B7、B10、B11に比較例R0、あるいはR1をはるかに越えるレベルの優れた寿命特性が得られた。しかしながら、カルシウム濃度および錫濃度が高い領域あるいは低い領域では不十分な結果であった。
【0063】
カルシウム濃度が低い領域ではエキスパンド加工は可能であるが、エキスパンド格子体の骨格強度が不十分になり、極板の耐久性が充分得られない。
【0064】
またカルシウム濃度および錫の濃度が過剰に高い領域では、クラッドシートの硬度が高すぎてクラックや断線が発生し、エキスパンド加工自体が不可能になる。またその領域では錫の濃度を低下することによって、加工を見掛け上可能にすることはできるが、得られた極板は比較例R0、R1を越えるような充分な寿命を示さなかった。
【0065】
上記の結果より、スラブのカルシウム濃度は0.04質量%以上0.12質量%、錫濃度は1.0質量%以上2質量%以下の領域に最適な領域が存在すると思われる。
【0066】
また下限については、錫の濃度に関係無く、カルシウム濃度が0.01質量%では、格子体が軟弱で、極板の耐久力が得られなかった。
【0067】
上記で早期劣化を示した比較例R0およびR1の極板を解析した結果、格子と活物質の界面に集中して硫酸鉛が多く生成し、上記界面の近傍の硫酸濃度が中性化し、格子の表面には不働態層が多く形成されていた。これに対して本発明を適用して優れた寿命特性を得られた鉛蓄電池の正極板では、活物質と格子体の界面近傍に集中した硫酸鉛の蓄積は軽微で、上記界面の硫酸濃度は高く、付与された高純度鉛層の表面はもとよりスラブ合金の表面にも不働態層は見られなかった。
【0068】
なお上記効果は、格子体表面が不働態化しやすい環境において、格子体の骨格表面の一部表面に圧延一体化された薄層を形成するという従来に見られない構成と手法によって、エキスパンド格子体を用いる極板の不働態化を抑制し、寿命特性を改善するものであって、その効果は上記VRLAに限らず、広く液式を含めた鉛蓄電池の改善に有効であることは論を待たない。
【0069】
【発明の効果】
本発明は上記のように、不働態化の環境に陥り易いVRLA構成の鉛蓄電池の寿命特性を改善するものであり、近年環境問題の対応に重要視される電気自動車、ハイブリッド車用など新しい用途に極めて有効な技術である。
【図面の簡単な説明】
【図1】高純度鉛リボン圧延一体化装置を示す図
【図2】クラッドシートの外観図
【図3】エキスパンド格子体展開図
【符号の説明】
1 スラブ鋳造装置
2 圧延装置
3 スラブ
4 高純度鉛リボン
5 クラッドシート
6 クラッド層
7 エキスパンド展開部
8 極板裁断形状
S クラッド層展開領域
【発明の属する技術分野】
本発明は、エキスパンド格子を用いる鉛蓄電池およびその製造法に関するものであり、特に正極用格子体の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉛蓄電池は二酸化鉛を正極、鉛を負極の活物質、希硫酸を電解液とする電池である。電池の形態には、希硫酸を流体のまま用いる歴史的な液式形態のほかに、近年では希硫酸をシリカ等ゲル化剤とともに混合してゲル状にしたり、ガラスマットに吸収させて非流動化し、充電時に発生する酸素ガスを負極で吸収させてガス圧力の上昇を防ぐ制御弁式鉛蓄電池(VRLA)が実用化され、従来の自動車用や産業用のほかに電気自動車やエンジンとのハイブリッド車、ゴルフカートという新しい用途分野へ適用範囲が拡大されている。これらの電池では、必ずしも完全充電状態で充放電されるのではなく、制動時の回生電流を活用する関係で、不完全な充電状態で大電流の充放電を含む寿命特性が重要視され、その多くは正極の寿命によるところが多い。
【0003】
鉛蓄電池では、正極には、歴史的に鉛−アンチモン系合金を格子形状に鋳造した格子体に活物質ペーストを充填して構成される鋳造極板が適用されてきたが、近年の軽メンテナンス化の要求に対応して水素発生の起こりやすいアンチモンが排除され、その鋳造性が困難な性質を回避する為に例えば鉛−カルシウム系合金を多段に圧延して作製されたシートをエキスパンド加工して、得られた多孔体に活物質ペーストを充填するエキスパンドタイプの極板がまず自動車用に適用されるようになった。以降上記タイプの格子体を改善する多くの技術が開発された。
【0004】
例えば、特許文献1には、上記鉛−カルシウム系合金の適切なカルシウム濃度範囲が0.03〜0.10質量%であることが開示され、上記領域以下ではシートに充分な強度が得られず、また高すぎると格子の腐蝕が促進され硬度が高すぎて適切なエキスパンド加工が困難になることが示された。
【0005】
また、上記鉛−カルシウム合金が放電状態で放置されるような環境で不働態化しやすい性質を改善するために錫が有効であって、上記錫の適切な濃度範囲が0.5〜2.5%であることが明らかにされた。
【0006】
さらに特許文献2には、上記鉛−カルシウム系、および鉛−カルシウム−錫系合金のエキスパンド格子の不働態化抑制技術として、鉛−カルシウム合金や鉛−カルシウム−錫合金など鉛−カルシウム系合金のスラブに鉛−錫合金や鉛−錫−アンチモン合金など耐食性合金のリボンを重ね、多段に圧延し、クラッドシートを形成してこれをエキスパンド加工する技術が開発された。また特許文献3では、上記リボンにアンチモンやセレンが添加された。上記技術はこの段階では主に、流動状態の希硫酸を用いる自動車用電池においては、上記不働態現象の抑制は一応解決されたと思われた。
【0007】
しかしながら、上記耐食性合金のリボンをクラッドされたシートから作製したエキスパンド極板を電解液の流動が抑制されたVRLAに適用して、例えば電気自動車やハイブリッド車のように、不完全な充電状態において大電流で充放電を繰り返される用途に適用すると、正極板全体には多くの充電状態の活物質を保持しながら、比較的早期に特性が低下することが明らかになった。上記早期劣化した電池を解析した結果、活物質層と格子体の界面には多くの硫酸鉛が蓄積されているだけでなく、クラッドされた合金の表面にも不働態の酸化層が形成されていることが明らかになった。
【0008】
上記不働態化のメカニズムを考察すると、電解液の流動性が抑制された構成の電池に対して不完全な充電状態において大電流充放電を繰り返すと放電反応が格子体と活物質の界面に集中し、また大電流の充電では充電反応が十分行われず、次第に上記界面近傍に反応生成物の硫酸鉛が蓄積される。更に格子体の近傍には電解液の希薄な環境が形成され強い酸化電位が与えられる。その結果、流動状態で、過放電放置での不働態化の抑制に有効性を示した耐食性合金のクラッド層でも不働態化が進行し、その抑制が困難であったものと考えられる。
【0009】
すなわち上記不働態化の抑制には、従来適用されてきた耐食性合金のクラッド層を超える改善が必要であることがわかった。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−243958号公報
【特許文献2】
特開平05−013084号公報
【特許文献3】
特開平10−321236号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち本発明は、エキスパンド格子体を正極に用いる鉛蓄電池の構成において、正極格子体の不働態化を回避し、寿命特性に優れた鉛蓄電池を実現することを課題とし、好ましい格子体の形態とそれらを含めた鉛蓄電池の製造法を開示するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する手段として、本発明は骨格を構成する合金の少なくとも一部表面に圧延一体化された高純度鉛金属の薄層を備えるエキスパンド格子体を正極に用いることを基本的構成とする鉛蓄電池および上記鉛蓄電池の構成と、上記構成を実現する手段として骨格を形成する合金の連続鋳造スラブ(厚板)の少なくとも一部表面に高純度鉛金属のリボンを重ねて多段圧延して得られたクラッドシートをエキスパンド加工した格子体を形成する工程を備える鉛蓄電池の製造法を開示するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下図面を用いて、上記構成および製造法に関する好ましい形態について詳述する。
【0014】
図1は本発明の高純度鉛の薄層をエキスパンド用圧延シートの任意の表面に圧延一体化する装置を示す図、図2はクラッドシートの外観図、図3は本発明に基き圧延シートからエキスパンド格子体へ展開加工される過程を圧延シートの片面について図示したものである。1はスラブ鋳造機、2は圧延機、3は鋳造合金スラブ、4は高純度鉛リボン、5はクラッドシートであり、6はクラッド層、7は格子体のエキスパンド展開部、8は極板形状裁断部、Sは高純度鉛の薄層が付与されたエキスパンド格子体の領域を示す。
【0015】
上記高純度鉛層は、圧延シートの表裏あるいは、極板形状の上下等格子体の骨格が展開される任意の範囲に形成されている。
【0016】
極板は活物質が上記エキスパンド加工された連続多孔体に充填された後に極板形状に裁断されても、裁断されたエキスパンド多孔体に活物質が充填されても任意である。
【0017】
得られた極板は、所定の温度と湿度の環境で熟成、乾燥され、電池形状構成の前あるいは後に希硫酸中で化成充電される。
【0018】
高濃度鉛金属は、古くから優れた耐食性を有し、延展性に優れた金属として知られた材料である。ただし上記金属はシートを作製しても軟弱で、エキスパンド加工には不適切な材料であった。また、上記鉛−カルシウム系合金のクラッド用リボン材料に従来使用されたことは無い材料であって、その不働態抑制機能については知られていなかった。
【0019】
本発明は、上記高純度鉛の不働態化に対する抑制効果の発見に基き、実現したものである。
【0020】
たとえシートの片面あるいは両面全体に高純度鉛層が付与されても、エキスパンド加工で切り開かれた断面には高純度鉛層でクラッドされていない断面が露出する。
【0021】
そこで上記基本構造において高純度鉛の薄層はエキスパンド格子体の表面の一部に形成されて特性改善効果を発揮するメカニズムについて考察すると、以下の様に考えられる。
【0022】
たとえ骨格合金の表面が不働態化しても高純度鉛層の形成された表面が存在する限り、格子体の表面の一部は常に活物質と導通し、近傍に接し硫酸を固定している活物質(硫酸鉛)を充電することができる。さらに二酸化鉛に変換され導体化された活物質は導通経路となり、不働態化された近隣の活物質を充電可能とする。上記充電経路の拡大によって、格子体近傍に硫酸が生成され、極板全体に不働態が形成される低濃度硫酸の環境が修正される。したがって骨格合金表面の一部に高純度鉛層が形成されていることによって、エキスパンド格子体全体と活物質との界面における導通が復元される。
【0023】
さらに同様な効果は、シートの表裏から形成される部分だけでなく、エキスパンド格子体の投影面における上部、下部の位置関係でも得ることができる。
【0024】
一方上記高純度鉛の薄層は基本的にエキスパンド格子体骨格の鉛−カルシウム系合金から離れていると、その界面に電解液が侵入し、鉛−カルシウム系合金層側に不働態層が形成され、付与された高純度鉛層が格子の骨格から絶縁され、活物質との導通を保つという効果も無くなるので、高純度鉛層は骨格合金の一部に圧延一体化されていることが好ましい。
【0025】
上記基本構成において、高純度鉛の薄層は不働態抑制効果とスラブ合金への密着性を確保する観点から99.9質量%よりも高濃度であり、さらに好ましくは99.99質量%以上であることが好ましい。一般に鉱石から精製されたり、リサイクルから精製過程で残留するビスマス等の不純物の存在は、本発明の範囲において無害である。
【0026】
つぎに主要骨格形成合金の鉛−カルシウム系合金の組成について述べる。本発明では、エキスパンド格子体の骨格表面の耐食性よりも軟弱な高純度鉛層を強度に優れた骨格表面の一部に圧延一体化して形成することが重要であって、その強度を形成する役割を担うものである。したがって、本発明では骨格を形成する鉛合金が不働態化する事は妨げない。すなわち上記骨格の強度とクラッド層の形成の観点から従来適正とされた領域よりも高濃度のカルシウム合金領域であることが好ましい。ただし0.2質量%を越えるとエキスパンド加工が困難になるので、適正なカルシウム濃度範囲は0.04質量%以上0.2質量%以下であることが好ましく、基本的には錫の添加は任意である。
【0027】
さらに高純度鉛層の密着一体化の容易さ、骨格強度、耐食性を改善するために錫を3.0質量%以下の範囲で添加することは好ましい形態である。
【0028】
つぎに本発明の製造法について好ましい形態を説明する。
【0029】
まず本発明の格子体の主要骨格の一部表面に圧延一体化された高純度鉛薄層を形成する方法として高純度鉛金属製のリボンは鉛−カルシウム合金製スラブの少なくとも片面あるいは両面の一部に重ねて圧延する工程を備えることが好ましい。上記によってエキスパンド加工で切り開かれ形成されるエキスパンド格子体の骨格の一部表面に圧延一体化された高濃度鉛の薄層が形成される。
【0030】
またエキスパンド格子体の上部あるいは下部に部分的に上記高純度鉛層を付与するには、展開される位置に対応したスラブの位置に高純度の鉛リボンを重ねて圧延したシートから得ることができる。
【0031】
上記高純度鉛金属製リボンの厚さの全シート厚さに対する比率は、圧延シートの適正強度や高純度鉛の一体化状態に影響を与える。上記高純度鉛リボンの厚さ比率が大きくなると、圧延シートの強度が低下し、小さすぎると密着性が低下し、不働態抑制効果が低下する。上記の観点から、上記高純度鉛リボンの厚さ比率は1〜30%が好ましい。
【0032】
一方上記スラブと高純度鉛リボンの圧延一体化は、圧延過程の圧延率の経緯に大きく影響される。
【0033】
まず圧延には多段圧延が好ましいが、特に上記多段圧延のうち第1段階の圧延率が重要である。上記第1段階の圧延率が大きすぎると、高純度鉛層が固い鉛合金層の上で削れるようにめくれたり不均一な表面が形成され、これらは後段では修正が不可能である。
【0034】
第1段で低い圧延率を適用した場合は、接合が不完全であっても後段で修正できるだけでなく、第1段で少なくとも密接されると後段で空気を捲き込むことなく圧延密着ができる。上記観点から第1段の圧延率は少なくとも多段で構成されるもっとも低い圧延率を適用するのが好ましい。また圧延前の高純度鉛リボンとスラブの合計厚さから最終の圧延シートへの圧延率は1/5〜1/100であることが好ましい。
【0035】
一方高純度鉛の優れた延展性は、鉛−カルシウム系合金の様に延展性が乏しい圧延体のクラックの発生を補修する機能も備え、骨格用合金の強度と複合して、エキスパンド格子体に優れた安定性を与えることができる。
【0036】
なお上記圧延シートのエキスパンド展開はレシプロ式ロータリー式のいずれのエキスパンド方式を適用しても類似の効果を得ることができる。
【0037】
【実施例】
以下実施例によって本発明の特徴と効果を説明する。
【0038】
(実施例1)
まず、高純度鉛クラッド層の被覆程度と急速充放電を含むサイクル寿命改善レベルの関係を求めた。
【0039】
正極用格子体として鉛−カルシウム合金系の骨格の表面の一部に高純度の鉛クラッド層を形成したエキスパンド格子を用いて極板を作製し、これを用いて鉛蓄電池の寿命特性を調べた。
【0040】
スラブ用合金にはカルシウム濃度0.08質量%のカルシウムと1.5質量%を含む鉛−カルシウム−錫合金を用い、クラッド用高純度鉛リボンには99.9質量%の市販の鉛を用いた。スラブは厚さ15mmの連続鋳造体を作製し、リボンは0.5mmのリボンを作製して用いた。
【0041】
まず上記リボンをエキスパンド展開で得られる格子体の所定部分がクラッドされるようにリボンスラブに重ね、10段階で圧延して厚さ1.5mmのクラッドシートを作製し、これを常法にしたがってエキスパンドし、厚さ2.0mmの格子体を得た。得られた格子体に酸化度70%の鉛粉と希硫酸と水を主成分とする、正極用ペーストを充填し、数10℃で熟成、乾燥して厚さ2.8mmの正極板とした。
【0042】
つぎに上記正極板と既存の負極板をガラスマットを介して積層し、希硫酸を所定量注入し、6セル12V、公称容量12V60AhのVRLAタイプの電池を作製した。
【0043】
上記においてスラブの片面で、かつ展開されるエキスパンド格子体の上部半分にクラッド層が付与された格子体を用いた電池をA1、スラブの片面にリボンを適用し、かつ展開されたエキスパンド格子体の下部半分にクラッド層が付与された格子体を用いた電池をA2、スラブの片面にリボンを適用し、かつ展開されたエキスパンド格子体の全面にクラッド層が付与された格子体を用いた電池をA3、スラブの両面で、かつ展開されたエキスパンド格子体の全面にクラッド層が付与された格子体を用いた電池をA4とする。
【0044】
用いた格子体の構成材料の概要を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
(実施例2)
本発明に基くエキスパンド格子体のスラブ合金の組成と電池寿命の関係を明らかにするためにスラブの両面で、かつ展開されたエキスパンド格子体の全面にクラッド層が付与された格子体を用いた電池を作製した。
【0047】
上記スラブの錫濃度を0質量%、1質量%、2質量%、3質量%とし、各グループにおいてカルシウム濃度を0.01質量%、0.04質量%、0.12質量%、0.30質量%に設定してスラブを作製し、これらの両面に99.9%の高純度鉛のリボンと組合せてエキスパンド格子体を作製し、実施例1と同様に電池を作製した。
【0048】
得られた電池を上記錫濃度グループごとに順次B1〜B4、B5〜B8、B9〜B12、B13〜B16とする。
【0049】
また作製した電池に用いた格子体の構成材料組成の概要を表2に示した。
【0050】
【表2】
(注)鋳造スラブ厚さ:15mm、高純度鉛:リボン厚さ:0.5mm、クラッドシート厚さ:1.5mm、格子体厚み:2.0mm、極板厚み:2.8mm
【0051】
(比較例)
上記本発明の比較例として、上記スラブと同じ組成で高純度鉛のリボンをクラッドしない格子体を用いた鉛蓄電池とカルシウム濃度0.08質量%錫濃度1.5質量%のスラブと錫濃度5質量%の合金リボンを用いてシートの片面に合金の薄層を形成し、これを用いた鉛蓄電池を作製した。
【0052】
格子体以外の上記極板と電池の作製は、実施例1および2と同じ条件を適用した。上記格子体の合金組成の概要を表3に示す。
【0053】
【表3】
(注)鋳造スラブ厚さ:15mm、高純度鉛:リボン厚さ:0.5mm、クラッドシート厚さ:1.5mm、格子体厚み:2.0mm、極板厚み:2.8mm
【0054】
つぎに作製された電池に希硫酸を注入し、初充電の後、公称容量を1Cとし、終止電圧を9.9Vとして1/3C(20A)容量確認の後、さらに2.5C(150A)で容量の80%まで放電する放電と最大電流が2.5C(150A)、最小電流が0.2C(12A)、制御電圧が14.4Vに設定された準定電圧充電と0.05C(3A)で4時間の定電流充電からなる充放電パターンを繰り返した。上記サイクルの過程で50サイクルごとに1/3C(20A)での容量確認を行い、容量の推移を調べて、上記容量が公称容量の80%に到達した時点を寿命とした。
【0055】
上記各電池についての寿命試験の結果を表4に示す。
【0056】
【表4】
【0057】
表4から明らかなように、まず本発明を適用しないで、本実施例のスラブと同じカルシウム濃度および錫濃度を適用したR0では600サイクルレベルであった。
【0058】
また上記スラブを適用しさらに従来技術に示されたような錫を高濃度(5質量%)も含むクラッド層を適用したR1でも1000サイクルレベルに留まった。
【0059】
これに対して、本発明の高純度鉛のリボンの付与位置をスラブの片面あるいは両面、あるいはエキスパンド極板の上部あるいは下部に変えて適用したA1〜A4においてはいずれも上記R0あるいはR1のレベルを超えるものであった。このことは、たとえ部分的であっても、エキスパンド格子体の骨格のいずれかに高純度鉛の薄層が付与されることによって、優れた寿命改善効果が得られることを示すものである。
【0060】
一方、片面、両面に拘わらず、展開される極板の全面に亘って、付与されたA3およびA4は1400サイクルを超える高いレベルが得られた。このことは本発明の高純度鉛の圧延一体化された薄層が付与されることによって従来の技術を超える高い寿命レベルが得られた。
【0061】
つぎにスラブ合金組成を変えたB1〜B16の結果について述べる。
【0062】
まず寿命特性についてはスラブのカルシウム濃度が0.04質量%および0.12質量%で錫濃度が1.0質量%あるいは2.0質量%のB6、B7、B10、B11に比較例R0、あるいはR1をはるかに越えるレベルの優れた寿命特性が得られた。しかしながら、カルシウム濃度および錫濃度が高い領域あるいは低い領域では不十分な結果であった。
【0063】
カルシウム濃度が低い領域ではエキスパンド加工は可能であるが、エキスパンド格子体の骨格強度が不十分になり、極板の耐久性が充分得られない。
【0064】
またカルシウム濃度および錫の濃度が過剰に高い領域では、クラッドシートの硬度が高すぎてクラックや断線が発生し、エキスパンド加工自体が不可能になる。またその領域では錫の濃度を低下することによって、加工を見掛け上可能にすることはできるが、得られた極板は比較例R0、R1を越えるような充分な寿命を示さなかった。
【0065】
上記の結果より、スラブのカルシウム濃度は0.04質量%以上0.12質量%、錫濃度は1.0質量%以上2質量%以下の領域に最適な領域が存在すると思われる。
【0066】
また下限については、錫の濃度に関係無く、カルシウム濃度が0.01質量%では、格子体が軟弱で、極板の耐久力が得られなかった。
【0067】
上記で早期劣化を示した比較例R0およびR1の極板を解析した結果、格子と活物質の界面に集中して硫酸鉛が多く生成し、上記界面の近傍の硫酸濃度が中性化し、格子の表面には不働態層が多く形成されていた。これに対して本発明を適用して優れた寿命特性を得られた鉛蓄電池の正極板では、活物質と格子体の界面近傍に集中した硫酸鉛の蓄積は軽微で、上記界面の硫酸濃度は高く、付与された高純度鉛層の表面はもとよりスラブ合金の表面にも不働態層は見られなかった。
【0068】
なお上記効果は、格子体表面が不働態化しやすい環境において、格子体の骨格表面の一部表面に圧延一体化された薄層を形成するという従来に見られない構成と手法によって、エキスパンド格子体を用いる極板の不働態化を抑制し、寿命特性を改善するものであって、その効果は上記VRLAに限らず、広く液式を含めた鉛蓄電池の改善に有効であることは論を待たない。
【0069】
【発明の効果】
本発明は上記のように、不働態化の環境に陥り易いVRLA構成の鉛蓄電池の寿命特性を改善するものであり、近年環境問題の対応に重要視される電気自動車、ハイブリッド車用など新しい用途に極めて有効な技術である。
【図面の簡単な説明】
【図1】高純度鉛リボン圧延一体化装置を示す図
【図2】クラッドシートの外観図
【図3】エキスパンド格子体展開図
【符号の説明】
1 スラブ鋳造装置
2 圧延装置
3 スラブ
4 高純度鉛リボン
5 クラッドシート
6 クラッド層
7 エキスパンド展開部
8 極板裁断形状
S クラッド層展開領域
Claims (10)
- 骨格を構成する合金の少なくとも一部表面に圧延一体化された高純度鉛金属の薄層を備えるエキスパンド格子体を正極に用いる鉛蓄電池。
- 高純度鉛の純度は99.9質量%よりも高純度であることを特徴とする請求項1に記載の鉛蓄電池。
- 主要骨格合金は少なくとも0.04質量%以上0.12質量%以下のカルシウムを含む鉛−カルシウム系合金であることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の鉛蓄電池。
- 主要骨格合金は少なくとも0.04質量%以上0.12質量%以下のカルシウムと1.0質量%以上3.0質量%以下の錫を含む鉛−カルシウム−錫系合金であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の鉛蓄電池。
- 骨格を形成する合金の連続鋳造スラブ(厚板)の少なくとも一部表面に高純度鉛金属のリボンを重ねて多段圧延して得られたクラッドシートをエキスパンド加工した格子体を形成する工程を備える鉛蓄電池の製造法。
- 高純度鉛金属製のリボンは鉛−カルシウム合金製スラブの少なくとも片面あるいは両面の一部に重ねて圧延される工程を備えることを特徴とする請求項5に記載の鉛蓄電池の製造法。
- 高純度鉛金属製リボンの厚さはカルシウム系合金のスラブの厚さの30%以下であることを特徴とする請求項5あるいは6のいずれかに記載の鉛蓄電池製造法。
- 多段圧延における第1段階の圧延率は全ての圧延段階の内で最小であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の鉛蓄電池製造法。
- スラブとリボンの合計厚さに対するクラッドシートの厚さの比率(総圧延比率)は1/5〜1/100であることを特徴とする請求項5から8のいずれかに記載の鉛蓄電池製造法。
- エキスパンド加工方式はロータリーエキスパンド、レシプロエキスパンド法から選ばれたいずれかである請求項5から9のいずれかに記載の鉛蓄電池製造法。
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CN113363503A (zh) * | 2021-06-18 | 2021-09-07 | 超威电源集团有限公司 | 一种铅蓄电池板栅的制作方法 |
-
2002
- 2002-10-30 JP JP2002315712A patent/JP2004152578A/ja active Pending
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WO2013136360A1 (ja) * | 2012-03-13 | 2013-09-19 | 新神戸電機株式会社 | エキスパンド格子用鉛合金シートの製造方法及びその鉛合金シートを用いる鉛蓄電池用エキスパンド格子の製造方法 |
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