JP5199298B2 - 吸気用バルブ装置 - Google Patents
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Description
自動車のごとき車両に搭載されるエンジンの吸気用バルブ装置としては、種々な構成のものが従来より知られているが、その代表例であるスロットルバルブ装置の場合、図1に示すように吸気通路に配置され、図6に示すごとき基本的構造を有しているのが一般的である。
そして、弁体31を、ハウジング33に対して回動自在に取付けるために、シャフト32の両端部32a、32bとハウジング33との間に軸受34を介在させている。また、この軸受34の取付けにあたっては、ハウジング33のダクト部35の外周面に突設した一対の円筒状のボス部36、37に軸受34を圧入により担持させるのが通例である。
ところで近年、車両に搭載する各種部品・装置に対し、コスト低減や軽量化等の諸要求が一段と厳しくなってきており、この種の吸気用バルブ装置においても、少なくともハウジング33を、金属製のものから樹脂による射出成形品に変更した所謂樹脂製バルブ装置が多用されるようになってきた。
ところが、ハウジング33を樹脂製にした場合、ダクト部35から突出するボス部36、37も必然的に樹脂により一体形成されるため、この樹脂製のボス部36、37に軸受34を圧入することになるが、この圧入に際し、円筒状に形成されているボス部36、37に往々にしてひび割れが生じるという問題が発生した。
その主因は、軸受34やボス部36、37の製作誤差や組付公差、さらには両者の材質の違いに基づくものであるが、つぶさに精査したところ、ボス部36、37には、特に、ダクト部35の外周面に外径方向に向けて膨出形成される形状上の特質から、射出成形時にウエルドが発生し易く、このウエルドのところで亀裂が生じることも判明した。なお、「ウエルド」とは、射出成形に際し、各ゲートから注入した溶融樹脂が、成形型内にて合流し、この合流部にて完全に融合しないまま固化して発生する“樹脂溶着面のムラ”をいう。
かかる提案は、製作誤差等をスリットの拡開により吸収し、かつこのスリットの配設位置によってウエルドの発生を抑制しようとするものである。
つまり、ボス部にスリットを形成した場合、このスリットによる欠落分だけ強度が低下し、軸受のズレや極端な場合には軸受の脱落を招くという問題をはじめ、車両という過酷な使用環境下ではスリット側に大きな荷重が働き、ボス部自体が破損してしまうという問題、さらには、上記スリットを介して吸気通路が外界と連通し、所謂気密漏洩現象が生じるという致命的な危惧さえもある。
よって、軸受を、凸部の弾性変形と少なくとも3点支持による調芯作用により、製作誤差等を吸収し、かつ圧入荷重を分散(低減)して、ボス部に安定して圧入保持させることができるため、ボス部の破損を招くことがない。
しかも、ボス部の大径穴に対する凸部の配置は、複数のうちの1つの凸部が、吸気通路における吸気の流れ方向の下流側に配置されるようにしているため、エンジンの通常運転時に、弁体、したがってシャフトに常時加わる負荷を凸部で受け止めることができ、ボス部の応力を緩和することができる。
このような構成にすることにより、強度上ネックとなるウエルド部分の負担を軽減することができる。
また、請求項3に記載の発明によれば、凸部は、軸受の軸方向長以上の軸方向長を有しているため、軸受の外周面を軸方向長の全域にわたって凸部で確実に保持することができる。
請求項6に記載の発明によれば、補強用リブは、軸受の圧入時にボス部に生じるストレス方向にあわせて設けられている。よって、軸受圧入時におけるボス部を補強することができる。
図1において、エンジン1は、自動車のごとき車両に搭載されるものであり、エンジン1の燃焼室1aへ燃焼用吸気を導く吸気通路2には、スロットルバルブ装置として機能する吸気用バルブ装置3が設けられている。このバルブ装置3は、吸気通路2の開閉あるいは通路面積の可変を行なうもので、基本的に弁体31と、この弁体31を回動操作するシャフト32と、弁体31およびシャフト32を収納するハウジング33とからなり、弁体31がエンジン1の運転条件に応じて回動操作されて、矢印Aのごとき流れる吸気流量を制御するものであり、具体的な詳細構造については後述する。
吸気管4の各分岐管41には燃料噴射弁6が設けられていて、この燃料噴射弁6から噴射される燃料と前述の空気との混合気が吸気バルブ1cを介して燃焼室1aに導入されるわけで、点火プラグ1dにより点火されて燃焼したガスは排気バルブ1eを介して排気ポート1fから排気管7へと排出される。
バルブ装置3は、吸気通路2を形成する吸気管4の途中に配設され、弁体31、シャフト32およびハウジング33からなる前述の基本構成に加え、図2に示すごとく、ハウジング33とシャフト32の間に介在されて、ハウジング33に対してシャフト32を回動自在に支持する一対の軸受34を中枢部品として備えている。
外筐をなすハウジング33は、所要の耐熱性、機械的強度および弾性力を有する熱硬化樹脂(例えばPPS樹脂)による射出成形によって形成されており、上下の両端で吸気管4に取付けられ、吸気通路2の一部を形成する円筒状のダクト部35と、このダクト部35の外周面において外径方向に膨出形成された一対のボス部36、37とを具備している。
この一対のボス部36、37は、ダクト部35(吸気通路2)の軸線と直交する軸線を持つ貫通穴36a、37aを有する円筒状を呈している。
また、この一体化された弁体31およびシャフト32は、ハウジング33を製作する過程であらかじめハウジング33に組み付けられるもので、例えばハウジング33の射出成形時において、インサート成形技術により、一対のボス部36、37の貫通穴36a、37aにシャフト32の両端部32a、32bを遊嵌状態になるようにして、組み付けられる。
一方のボス部36には、軸受34の外側において開口側を気密的に密閉するためのキャップ8が組み付けられている。他方のボス部37には、前述のごとく、その開口側からシャフト32の他端部32bが露出しており、シャフト回動操作機構との関係で液密的に密閉するためのオイルシール9が組み付けられている。
円筒状を呈する各ボス部36、37は、軸受34が圧入される貫通穴36a、37aの部分が、軸受34の外径寸法より大径の大径穴38と、この大径穴38の内周面において内径側に膨出して形成された凸部をなす座部39を具備している。
この座部39は、軸受34の圧入前の状態では図3(b)に示すように、その先端面をなす円弧状座面39aが、軸受34の外形寸法より若干(所望の圧入代分)小径の仮想円を形成するように、大径穴38の内周面において周方向に等間隔(120度間隔)離れて3箇所に配設されており、座部39自体の弾性変形により、図3(a)に示すように、軸受34の外周面と大径穴38の内周面との接触を回避して軸受34を圧入支持することができる。
特に、大径穴38に対する座部39の配置は、3つのうちの1つが、吸気通路2における吸気の流れ方向の下流側(図3の下側位置D)に一致して配置されている。
さらに、3つの座部39は、いずれも、射出成形時にボス部36、37に形成されるウエルドWを避けて配設されている。
さらに、各ボス部36、37の貫通穴36a、37aの内周面と、シャフト32の外周面および軸受34の端面との間、さらには、図3(a)に拡大して示す大径穴38の内周面と座部39の軸方向側面39bと軸受34の外周面との間に形成される内部空間Gは、吸気通路2と連通しており、弁体31の全閉状態のときにも、吸気通路2の上流側と下流側とを、僅かなクリアランスに相当する通路面積で連通する迂回路の役目を担っている。
上述のように、ハウジング33とシャフト32とを回動自在に結合する軸受34をボス部36、37に取付ける場合において、関係する各部品の製作誤差や部品間の組付け公差などにより、ボス部36、37の内周面とシャフト32の両端部32a、32bの外周面との間に軸受34を圧入していくと、ボス部36、37に異常な拡開力が加わったり、逆に、緩く嵌ってしまうことがある。このような事態を避けるために、各部品をきわめて高精度に作製しなければならず、実用的ではない。
上記の不具合を解決するために、本実施例のバルブ装置3では、次の技術を採用している。
一対のボス部36、37には、軸受34が圧入される部分において、座部39が設けられている。この座部39は、軸受34の圧入前の状態ではその先端面をなす円弧状座面39aが、軸受34の外形寸法より若干(所望の圧入代分)小径の仮想円を形成するように、大径穴38の内周面において周方向に等間隔に離れた3箇所に配設されている。
したがって、座部39は、軸受34を調芯しながら3点で支持しつつ、座部39自体が弾性変形していくため、円滑に圧入することができ、かつ座部39の弾性力により、軸受34を適度な力で担持することができる。
また、座部39は、ボス部36、37に形成されるウエルドWを避けて配設されているため、座部39の受圧力が直接ウエルドWに及ぶことがなく、ウエルドWの応力を軽減することができる。
次に、バルブ装置3の使用環境について説明する。
まず、状態時におけるエンジン1の通常運転時において、バルブ装置3は、運転条件によって弁体31の開度が異なるものの、図1の矢印Aのごとく吸気が流れることにより、弁体31には下流側へ向けての力が常時加わり、シャフト32を介して軸受34からボス部36、37に対し、図3(a)の矢印Fのごとき力が負荷される。
このような場合においても、図3(a)の矢印Fの負荷を座部39で受けることができ、ボス部36、37の応力、特にウエルドWにおける応力を緩和できる。
この場合において、バルブ装置3の弁体31が全閉もしくはそれに近い状態にあると、弁体31全体が高温高圧の燃焼ガスをまともに受けることになり、弁体31に過大な圧力が加わり、極端な場合には弁体31の破損を招く恐れがある。
上述のごとき場合には、内部空間Gが有効に機能する。つまり、この内部空間Gによって、弁体31が全閉状態の場合でも、吸気通路2の下流側から上流側へのバイパス流路(迂回路)が形成されるため、下流側から逆流してくる燃焼ガスを速やかに上流側へと逃がすことができる。かくして、弁体31に過大な圧力が加わるのを防ぐことができる。
図5(a)において、ボス部36、37の外周面には、外径側に膨出して形成され、大径穴38の拡開を抑制する補強用リブ10が設けられている。この補強用リブ10は、座部39の数と同数の3箇所において、全ての座部39と重畳するように、放射状に設けられている。
この例では、全ての座部39と重畳するように補強用リブ10を設けているが、ボス部36、37の外周面に対する補強用リブ10の配置は、常時負荷がかかる部分を補強するという観点から、少なくとも補強用リブ10の一部が、吸気通路2における吸気の流れ方向の下流側に配置されたD位置の座部39と重畳するように設けることが肝要である。
図5(b)において、ボス部36、37の外周面には、接線方向に膨出させた補強用リブ11が4箇所に設けられている。
この補強用リブ11は、軸受圧入時にボス部36、37に生じるストレス方向にあわせて設けられており、特にウエルドWを引き剥がす方向Sに発生するストレスに対し、方向Sへの変形を抑える役目を果たすものであって、ウエルドWを挟むように配置された図示上側の一対の補強用リブ11が要であり、図示下側の一対の補強用リブ11は補助的に設けられている。
1a 燃焼室
2 吸気通路
3 バルブ装置(吸気用バルブ装置)
4 吸気管
10 補強用リブ
11 補強用リブ
31 弁体
32 シャフト
33 ハウジング
34 軸受
35 ダクト部
36 ボス部
37 ボス部
38 大径穴
39 凸部をなす座部
G 内部空間
W ウエルド
Claims (7)
- 内燃機関の燃焼室に導入される吸気が通過可能な吸気通路を形成する樹脂製のハウジングと、
前記吸気通路内で回動することで前記吸気通路の開閉あるいは通路面積の可変を行なう弁体と、
この弁体と一体に回動するシャフトと、
前記ハウジングと前記シャフトの間に介在されて、前記ハウジングに対して前記シャフトを回動自在に支持する軸受とを具備し、
前記ハウジングに形成された筒状のボス部の内周面に前記軸受の外周面が圧入されてなる吸気用バルブ装置において、
前記ボス部において前記軸受が圧入される部分は、
前記軸受の外径寸法より大径の大径穴と、
この大径穴の内周面において内径側に膨出して形成され、前記軸受の外周面と前記大径穴の内周面との接触を回避して前記軸受を圧入支持するものであり、前記大径穴の内周面において周方向に離れて少なくとも3箇所に配設される凸部とを具備し、
前記大径穴に対する前記凸部の配置は、
複数のうちの1つの凸部が、前記吸気通路における吸気の流れ方向の下流側に一致して配置されていることを特徴とする吸気用バルブ装置。 - 請求項1に記載の吸気用バルブ装置において、
前記大径穴に対する前記凸部の配置は、
複数の全ての凸部が、樹脂成形時に前記ボス部に形成されるウエルドを避けて配置されていることを特徴とする吸気用バルブ装置。 - 請求項1または請求項2に記載の吸気用バルブ装置において、
前記凸部は、前記軸受の軸方向長以上の軸方向長を有することを特徴とする吸気用バルブ装置。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の吸気用バルブ装置において、
前記ボス部の外周面には、外径側に膨出して形成され、前記大径穴の拡開を抑制する補強用リブが設けられていることを特徴とする吸気用バルブ装置。 - 請求項4に記載の吸気用バルブ装置において、
前記ボス部の外周面に対する前記補強用リブの配置は、少なくとも前記補強用リブの一部が、前記吸気通路における吸気の流れ方向の下流側に配置された前記凸部と重畳するように設けられていることを特徴とする吸気用バルブ装置。 - 請求項4に記載の吸気用バルブ装置において、
前記補強用リブは、前記軸受の圧入時に前記ボス部に生じるストレス方向にあわせて設けられていることを特徴とする吸気用バルブ装置。 - 請求項1〜6のいずれかに記載の吸気用バルブ装置において、
前記ボス部の内周面と前記軸受の全面とによって形成される内部空間を有しており、この内部空間が、前記吸気通路に連通していることを特徴とする吸気用バルブ装置。
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