JP5198414B2 - エチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法 - Google Patents

エチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体を製造する方法に関し、さらに詳しくは、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(以下、「EVOH」ともいう)の原料となるエチレンとビニルエステルとをアルコール中で重合,ケン化する際に生じる副生成物や、ケン化時に使用する触媒の残渣,アルコール溶媒等の不純物を高度に除去することのできるエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法に関するものである。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体(EVOH)は、透明性,酸素等に対するガスバリア性,耐溶剤性,耐油性,機械強度等に優れており、フィルム,シート,ボトル等に成形され、食品包装材料,医薬品包装材料,工業薬品包装材料,農薬包装材料等の各種包装材料として広く用いられている。
このEVOHは、通常、酢酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステルとエチレンとの共重合によって得られるエチレン−ビニルエステル系共重合体を、アルコール溶媒中、触媒の存在下、高温高圧条件下でケン化して製造される。また、上記ケン化工程で得られた高温高圧状態のEVOHのアルコール溶液は、容器中で水または水蒸気と接触させることにより、常圧で安定なEVOHの水/アルコール混合溶液とされ、水/アルコールの比率や圧力を調節することによって粘度を調整し、押出機を用いて溶融・混練された後、水等を主体とする低温の凝固浴中にストランド状に押出され、切断(ペレット化)してから洗浄・乾燥されて、フィルム,シート,ボトル等の成形加工に供される(例えば、特許文献1を参照。)。
しかしながら、上記従来のEVOH製造法においては、EVOHの水/アルコール溶液を凝固浴中に押し出してEVOHをストランド化し、アルコールを洗浄(除去)する際に、凝固浴に洗出されたアルコールが空気中に揮散し、作業環境を悪化させる原因となるという問題点を有していた。
そこで、上記の問題を解決する方法として、押出機を用いたペレット化(最終製品を得るためのペレット化)を行う前に、上記常圧で安定なEVOHの水/アルコール混合溶液(EVOHと水/アルコールとの混合物からなるペースト)を、ニーダー等を使用して水分量を減らして一旦ペレット化(中間ペレット化)し、この中間ペレットを洗浄−乾燥させたうえで、上記押出機を用いて、最終的なEVOHの製品ペレットを得る方法が提案されている(特許文献2,3を参照)。
しかし、これら特許文献2,3に開示の製造方法では、中間生成物であるEVOH含水組成物ペレット(中間ペレット)を製造する装置と、この中間ペレットを乾燥するための装置が必要となるため、製造コストの点で不利となる。また、上記中間ペレットの脱水・乾燥に時間とエネルギーがかかるうえ、乾燥機中に長期滞留したEVOHの中間ペレットが熱劣化しやすく、これが後の製品ペレットや成形加工に混入することで、異物の原因となる可能性が大きいという難点がある。
さらに、中間生成物であるEVOH含水組成物は、通常、ケン化時に使用する触媒の残渣や、ケン化の際に生じる副生物、溶媒としてのアルコール等の不純物を含んでおり、これら不純物が多量に含まれる場合は、最終製品として得られるEVOHペレットおよびそのペレットを用いた成形品(フィルム,シート,ボトル等)に着色等の問題が生じるおそれがある。しかしながら、中間ペレットを生成した後に洗浄を行う上記EVOHの製造方法(特許文献2,3)は、その洗浄を固形(ペレット形状)の状態で行うため、不純物をペレットの内部まで完全に除去することが難しいという問題があった。
そこで、本発明者らは、EVOH組成物の製造過程において、EVOHと水/アルコールとの混合物からなるペースト(高粘度のペースト)を、押出機を用いたペレット化(最終製品を得るためのペレット化)を行う前に、撹拌容器内で撹拌しながら水と接触させ、このペーストの組成を、EVOH:100重量部に対し、10重量部未満のアルコールと、20〜100重量部の水を含有するEVOH組成物とすることにより、ペレット化後の洗浄や加熱乾燥を行うことなく、低含水率のEVOH組成物を得ることができるエチレン−ビニルアルコール系共重合体組成物およびそのペレットの製造方法を提案している(特許文献4参照)。
特開平11−77674号公報 特開2002−284811号公報 国際公開第2004/009313号 国際公開第2009/084509号
しかしながら、上記本発明者らによるエチレン−ビニルアルコール系共重合体ペレットの製造方法(特許文献4)は、先に述べた従来のEVOH製造方法に比べ、上記不純物の除去率は向上しているものの、さらに検討を加えたところ、この製造方法では、洗浄対象であるEVOHと水/アルコールとの混合物からなるペーストの粘性が高いため、水中での撹拌操作だけでは、上記高粘度のペーストがその形状を保ったまま撹拌され、ペーストの内部が水に晒されにくくなっていることから、上記不純物を充分に除去しきれていない可能性があり、その改善が望まれている。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、ケン化の際に生じるケン化触媒の残渣,副生物や溶媒等の不純物が高度に除去され、高品質で均質な製品を効率的に製造することのできるエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法の提供をその目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明の製造方法は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体のアルコール溶液または水/アルコール混合溶媒溶液を洗浄容器に導入し、この洗浄容器内で水または水蒸気と接触させて、上記アルコールの一部を水または水蒸気とともに容器外に排出し、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の含水組成物からなるペーストを得る脱アルコール工程と、上記エチレン−ビニルアルコール系共重合体含水組成物を押出機に供給し、溶融混練した後、吐出して切断し、エチレン−ビニルアルコール系共重合体のペレットを得るペレット化工程と、を備えるエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法であって、上記脱アルコール工程と上記ペレット化工程との間のペースト流路上に、パイプミキサーと、上記ペーストに対して所定重量比率の洗浄水を添加する給水配管とが配設されており、上記洗浄容器から導出されたペーストを、上記洗浄水とともにパイプミキサーに導入し、このペーストの表面と内部とが繰り返し入れ替わるように撹拌混合した後導出させ、上記ペーストに含まれるアルコールの一部または全部を水と置換して、アルコール含有量の少ないエチレン−ビニルアルコール系共重合体含水組成物を、上記押出機に供給するという方法をとる。
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決するためにさらに鋭意研究を重ねた。その結果、ペレット化工程の押出機に供給される前(脱アルコール工程後)のペースト流路上に、EVOHと水/アルコールとの混合物からなる高粘度ペーストを、単に水と接触させるだけではなく、ペースト流路中に供給した多量の洗浄水とともにペーストの各部位(表面と内部、ペーストにおける層流の外側層と内側層、あるいは、高粘度領域と低粘度領域等)が表面更新されながら繰り返し入れ替わるように混練(液相中混練)して、このペースト全体を余すところなく何度も洗浄水に接触させる装置(機構)を介在配置することにより、上記ペースト中の不純物をほぼ完全に除去できることを見出し、本発明に到達した。
本発明のエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法は、以上のような知見にもとづきなされたものであり、ペレット化工程の押出機に投入する前に、多量の洗浄水とともに、EVOHと水/アルコールとの混合物からなるペーストを、混練および撹拌・混合機能を有するパイプミキサーに通し、上記ペーストの表面と内部(層流における外側層と内側層)とが繰り返し入れ替わるように液相中混練している。そのため、ペーストの表面だけでなく、その内部も洗浄水と接触し、それによって、上記洗浄水とともに上記アルコールの一部または全部と、重合およびケン化の際の残存触媒や副生物等の不純物とが、高い効率で除去される。したがって、本発明のエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法によれば、得られるEVOH含水組成物中の不純物が低減され、最終製品であるEVOH、および、このEVOHを用いた成形品の品質を向上させることができる。
また、本発明の製造方法のなかでも、上記パイプミキサーが静止型混合器である場合には、上記EVOH含水組成物からなるペーストが、この静止型混合器を通過する際に層流となり、これら各層流が互いに分割,転換,反転および合流を繰り返す。したがって、本発明のエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法によれば、混練等のための動力を用いずに、上記ペーストの撹拌混合を効率的に行うことができる。
さらに、静止型混合器に導入されたペーストが、混練(液相中混練)されながら、ペースト流路内の圧力(圧送)によりペースト導入(上流)側から導出(下流)側に自然と移動し、パイプミキサーから吐出される。したがって、本発明のエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法は、高粘度のペーストであっても、この静止型混合器(パイプミキサー)をスムーズに通過させることができる。
そして、本発明の製造方法において、なかでも特に、上記パイプミキサーの導出口から導出された低アルコール含有量のエチレン−ビニルアルコール系共重合体含水組成物を、このパイプミキサーの導入口より上流側の上記ペースト流路に環流させる循環流路が設けられており、上記低アルコール含有量のエチレン−ビニルアルコール系共重合体含水組成物の一部が、上記パイプミキサー導入前のペーストに合流するようになっている場合は、アルコール−水の置換率と、重合およびケン化の際の残存触媒や副生物等の不純物の除去率とを、向上させることができ、しかも、連続して流れるペーストの均質化(均一化)を図ることができる。
また、従来、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の耐熱性等の物性を向上させるために、このEVOHに、カルボン酸化合物,ホウ素化合物,リン酸化合物などの添加剤(助剤)を添加する場合があった。しかしながら、従来のEVOHの製造方法では、EVOHをペレット化した後(あるいは中間ペレット化した後)、このペレットを上記添加剤を含有する水溶液に浸漬し、その後脱水−乾燥する方法がとられていたため、上記添加剤がペレットの表面に偏在しやすく、ペレット中に均一に分散させることが難しいという問題を有していた。
これに対して、本発明の製造方法のなかでも、上記ペーストを得る工程(脱アルコール工程)から導出されたペーストに添加される洗浄水が、カルボン酸化合物(カルボン酸,カルボン酸塩)、ホウ素化合物、リン酸化合物から選ばれる少なくとも一種の添加剤を含有する場合には、上記ペーストの混練(表面更新)に伴って、上記添加剤をペーストの内部まで均一に分散させることができる。また、上記添加剤を添加するための工程や設備を設ける必要がなく、製造に伴う工数の削減や設備の簡略化を実現できるという利点を有する。
さらに、本発明の製造方法において、上記パイプミキサー通過後(ペレット化工程への投入前)のエチレン−ビニルアルコール系共重合体含水組成物の含水量が、エチレン−ビニルアルコール系共重合体100重量部に対して30〜400重量部である場合には、このEVOH含水組成物を押出機で溶融混練−ペレット化する際に、L/D値(スクリューの有効長さ/スクリューの直径)が大きいなどの特別な押出機を用いる必要がなく、有利である。
なお、上記パイプミキサー通過後のエチレン−ビニルアルコール系共重合体含水組成物の含水量が、低すぎる場合には、エチレン−ビニルアルコール系共重合体含水組成物の粘度が上がって、樹脂の移送効率が低下する傾向があり、逆に、高すぎる場合には、樹脂を脱水乾燥する際に生産効率が低下する傾向がある。
また、上記ペレット化工程から得られたエチレン−ビニルアルコール系共重合体のペレットの含水量は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体100重量部に対して10重量部未満であることが望ましい。
本発明のエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法の第1実施形態の概略を示すフロー図である。 本発明のエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法の第2実施形態の概略を示すフロー図である。
つぎに、本発明の実施の形態を、図面にもとづいて詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
図1は、本発明のエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法の第1実施形態の概略を示すフロー図である。
このEVOHの製造工程は、エチレン−ビニルエステル系(本例においてはエチレン−酢酸ビニル)共重合体のアルコール溶液に対してケン化を施し、EVOHのアルコール溶液を得るケン化処理工程(図示省略)と、EVOHのアルコール溶液を塔型の洗浄容器中で水蒸気と接触させ、EVOHと水/アルコールとの混合物からなるペーストを得る脱アルコール工程と、脱アルコール後のEVOH含水組成物を押出機およびストランドカッタ等を用いてペレット化するペレット化工程と、から構成されており、上記脱アルコール工程とペレット化工程との間のペースト流路(配管)上に、パイプミキサーと、上記ペーストに対して所定重量比率の洗浄水を添加する給水配管とが配設されている。
まず、本発明において用いられるエチレン−ビニルエステル系共重合体および本発明において得られるEVOHについて予め説明する。
本発明において得られるEVOHは、非水溶性の熱可塑性樹脂である。上記EVOHは、通常、脂肪酸ビニルエステルとエチレンを共重合して得られたエチレン−ビニルエステル系共重合体をケン化して得られるものであり、エチレン構造単位とビニルアルコール構造単位を主とし、ケン化によって生じた若干量のビニルエステル構造単位を含むものである。
上記脂肪酸ビニルエステル系化合物としては代表的には酢酸ビニルであるが、他にもギ酸ビニル,酢酸ビニル,プロピオン酸ビニル,バレリン酸ビニル,酪酸ビニル,イソ酪酸ビニル,ピバリン酸ビニル,カプリン酸ビニル,ラウリン酸ビニル,ステアリン酸ビニル,安息香酸ビニル,バーサチック酸ビニル等を、単独でもしくは併せて用いることができる。
なお、本発明では、エチレンと脂肪酸ビニルエステル以外に、EVOHに要求される特性を阻害しない範囲で共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合していてもよく、上記単量体としては、下記のものがあげられる。例えば、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類や、2−プロペン−1−オール、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン、5−ヘキセン−1,2−ジオール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類や、そのエステル化物である、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン、特に、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン等があげられる。また、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩、ならびに、炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類があげられる。また、アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、ならびに、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類や、メタクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩ならびにその4級塩等のメタクリルアミド類があげられる。また、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類、アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類や、炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類、トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン類、ならびに、酢酸アリル、塩化アリル、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルエチレンカーボネート、グリセリンモノアリルエーテル等があげられる。
また、EVOHのエチレン含有量は、エチレンと脂肪酸ビニルエステルの重合時に決定するものであり、ケン化の前後で変化するものではない。上記エチレン含有量は、EVOHにおけるエチレン含有量として、ISO14663にもとづいて測定した値で、通常20〜60モル%であり、好ましくは20〜55モル%、さらに好ましくは25〜50モル%である。このエチレン含有量が少なすぎた場合、溶融成形する際の成形性が低下する傾向にあり、逆に多すぎた場合、成形物に用いたときのガスバリア性が低下する傾向がある。
上記EVOHにおけるビニルエステル成分の平均ケン化度は、JIS K6726(ただし、EVOH樹脂は、水/メタノール溶媒に均一に溶解した溶液にて)にもとづいて測定した値で、通常90〜100モル%、好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは99〜100モル%である。上記ケン化度が低すぎた場合、ガスバリア性や耐湿性等が低下する傾向にある。
また、EVOHにおけるメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160g)は通常0.1〜100g/10分であり、好ましくは0.5〜50g/10分、さらに好ましくは1〜30g/10分である。このメルトフローレートが小さすぎる場合には、溶融成形時に高トルク状態となって成形加工が困難となる傾向にあり、また大きすぎる場合には、成形物としたときの外観性やガスバリア性が低下する傾向にある。
エチレンと脂肪酸ビニルエステルの共重合(反応)には、溶液重合,懸濁重合,乳化重合,バルク重合などの重合法が用いられ、なかでも溶液重合が好ましく用いられる。なお、溶液重合に使用される溶媒としては、エチレンと脂肪酸ビニルエステル、およびその重合生成物であるエチレン−ビニルエステル系共重合体を溶解するものであることが必要であり、通常はアルコールが用いられる。好ましくは炭素数が1〜4のアルコールであり、具体的には、メタノール,エタノール,n−プロピルアルコール,イソプロピルアルコール,t−ブチルアルコール等があげられる。そして、後述するケン化処理を考慮して、ケン化処理で用いる溶媒と上記重合時の溶媒と同じにすると、溶媒置換の必要がなく、回収再利用等の処理もあわせて効率的に行えることから、上記重合溶媒にはメタノール(MeOH)が特に好ましく用いられる。
溶液重合等により得られたエチレン−ビニルエステル系共重合体のケン化は、この共重合体をアルコールまたは水/アルコール混合溶媒に溶解させた状態で、ケン化触媒を用いて行われる。水/アルコール混合溶媒の場合、その混合比は(水/アルコール)の重量比にて通常(10/90)〜(90/10)、好ましくは(20/80)〜(80/20)、さらに好ましくは(40/60)〜(60/40)である。そして、エチレン−ビニルエステル系共重合体のアルコールまたは水/アルコール溶液におけるエチレン−ビニルエステル系共重合体樹脂分の濃度は、通常20〜70重量%であり、好適には30〜60重量%、さらに好適には35〜50重量%である。
また、ケン化触媒としては、アルカリ触媒,酸触媒等があげられる。例えば具体的に、アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物,ナトリウムメチラート,ナトリウムエチラート,カリウムメチラート,リチウムメチラート等のアルカリ金属アルコキシド等があげられる。酸触媒としては、硫酸,塩酸,硝酸等の無機酸、メタスルフォン酸等の有機酸、ゼオライト、カチオン交換樹脂等があげられる。取扱い性や工業生産性の点から好ましくはアルカリ触媒であり、特に好ましくはアルカリ金属水酸化物である。上記触媒の使用量については、目標とするケン化度等により適宜選択される。例えば、アルカリ触媒を使用する場合は通常、脂肪酸ビニルエステル量に対して通常0.001〜100ミリモル当量、好ましくは3〜30ミリモル当量である。
ケン化の方法に関しては、目標とするケン化度に応じて、バッチ式、連続式(ベルト式)、塔式のいずれかの方法を採用することが可能である。ケン化時の触媒量が低減できることやケン化反応が高効率で進み易い等の理由より、好ましくは、塔式装置(図示省略)を用いることが好ましい。
また、通常、加熱加圧下でケン化反応を行うが、その圧力は目的とするエチレン含有量により調節すればよい。例えば具体的には、圧力は通常0〜10MPaG、好ましくは0.1〜5MPaGの範囲から選択され、温度は通常50〜180℃、好ましくは80〜160℃である。また、ケン化反応時間は通常0.1〜6時間である。なお、「MPaG」単位は、ゲージ値における単位であり、絶対圧と大気圧の差を示すものである(以下の「MPaG」も同様)。
そして、ケン化反応後のEVOHは、高温高圧状態のアルコール溶液または水/アルコール溶液として反応系から導出され、直接、あるいは必要に応じて一旦タンク等に貯留した後、前記脱アルコール工程の塔型洗浄容器に供給される。例えば、具体的には、図1中のSである。
なお、ケン化反応においては、エチレン−ビニルエステル系共重合体のビニルエステル部分が水酸基に変換され、脱離基がカルボン酸エステルとして副生する。例えば、上記ビニルエステルとして酢酸ビニルを用いた場合、ケン化時の副生物として酢酸メチル(MeAc)が副生される。
このほかにも、ケン化触媒がアルカリ触媒の場合、触媒が有する金属がカルボン酸金属塩となって副生される。例えば、上記ビニルエステルとして酢酸ビニルを用い、水酸化ナトリウムを触媒として用いた場合、酢酸ナトリウムが副生される。また、カルボン酸が還元されたり、アルコールが酸化されたりすることによって、対応するアルデヒドが副生される。例えば、エチレン−酢酸ビニル系共重合体のケン化時には、アセトアルデヒドが副生される。
つぎに、上記ケン化処理工程で得られたEVOHのアルコールまたは水/アルコール溶液中のアルコールを水に置換し、アルコール含有量の少ないEVOH含水組成物を得るまでの工程について説明する。
本発明におけるエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法は、上記EVOHのアルコール溶液中のアルコール(メタノール)の水への置換と、ケン化する際に生じる副生成物、ケン化時に使用する触媒の残渣等の除去(水への溶解)を、複数回に分けて行うものである。より詳細には、従来の脱アルコール工程後のペースト流路上に、このペースト中に残るアルコール(以下、残存アルコール)と、重合およびケン化の際の残存触媒や副生物等の不純物とを高効率で完全に除去する過程(配管内のペーストを液相中混練する装置)を付加するものである。このとき、場合によっては、上記脱アルコール工程や、上記不純物等を除去する過程を複数回行っても差し支えない。
<脱アルコール工程の説明>
まず、脱アルコール工程における洗浄装置は、多孔板塔,泡鐘塔などの棚段塔や充填塔等の塔型容器を備えるものである。上記棚段塔式では、その理論段数は通常2〜20段であり、好ましくは5〜15段である。また、充填塔式でも、それに準じて充填物量が設定される。このような塔型容器に、EVOHのアルコール溶液または水/アルコール溶液と水蒸気(水)とが導入され、両者が接触することによってEVOH溶液中のアルコールの一部が水に置換され、EVOHの水/アルコール溶液、および、水とアルコールの混合物が塔型容器から導出される。
塔型容器へのEVOHのアルコール溶液または水/アルコール溶液、水蒸気(水)の導入位置、および、EVOHの水/アルコール混合溶液(ペースト)、水/アルコール混合物の導出位置は任意である。上記EVOHのアルコール溶液と水との接触は向流、並流のいずれでも可能であるが、置換効率の点から、向流で接触させることが好ましい。具体的には、EVOHのアルコール溶液または水/アルコール溶液を塔上部から導入し、水蒸気を塔下部から導入して前記溶液と向流接触させ、アルコール蒸気を水蒸気とともに塔上部から導出し、EVOHの水/アルコール溶液(ペースト)を塔下部から導出する形態を採用することが好ましい。
なお、棚段塔を用いる場合のEVOHアルコール溶液の供給位置は、通常塔頂部よりも通常2〜8段下であり、好ましくは2〜4段下である。上記供給位置よりも上の段には、水を供給したり、水蒸気の導出量を調整したりして、棚上に水層を形成することが、塔上部から導出される、水とアルコールの混合蒸気中へのEVOH等の飛沫の同伴を防ぎ、蒸気の移送管や凝縮器中の汚染を防止することができるため、好ましい。
また、水蒸気の供給位置は、置換効率の点から、通常、塔底部であるが、場合によってはそれよりも1〜5段上であっても構わない。なお、上記塔から導出されたアルコールと水との混合蒸気は、凝縮器などを用いて液化し、分離精製して再使用することが可能である。
例えば具体的には、図1のように、多数の棚段1dを有する塔型の洗浄容器1を用いて、前記ケン化処理工程で得られたEVOHのアルコール(メタノール)または水/アルコール溶液を、塔上部のペースト導入口1aから洗浄容器1内に導入し、塔下部の水蒸気導入口1sから洗浄容器1内に導入された水蒸気と接触させて、上記EVOHのアルコールまたは水/アルコール溶液中のアルコールの一部を置換し、EVOHと水/アルコールとの混合物からなるペーストを、塔底部のペースト導出口1bから導出するとともに、上記置換されたアルコールの一部を水蒸気とともに塔頂部の排気口1cから容器外に排出する。
なおこのとき、上記排気口1cからは、水(および/または水蒸気)と置換されたアルコールのほか、上記水とともにケン化時の副生物も排出され、EVOHおよびその成形品に着色等の問題を発生させる不純物を低減することができる。
上記塔型容器から導出されるEVOHの水/アルコール溶液(ペースト)中のアルコール、および水の含有量は、容器に導入されるEVOHのアルコール溶液に対する水(および/または水蒸気)の導入量、塔内の温度や圧力、などによって制御することが可能である。上記水の制御方法は、用いる塔型容器の仕様、例えば、棚段の数、断面積と塔長の比率、棚段の数、多孔板の孔径や数、などによって一概に言えないが、例えば、以下に示す条件が好ましく用いられる。
導入されるEVOHのアルコール溶液または水/アルコール溶液のEVOH濃度は、通常20〜50重量%であり、好ましくは30〜45重量%、さらに好ましくは35〜40重量%である。また、溶媒が水/アルコールである場合、その混合比は(水/アルコール)の重量比にて通常(10/90)〜(90/10)、好適には(20/80)〜(80/20)、さらに好適には(40/60)〜(60/40)である。
塔型容器に導入される水蒸気(または水)の導入量は、少なすぎるとアルコールとの置換効率が不足し、逆に多すぎるとコスト面で不利となる。上記水蒸気の量は、EVOH溶液の導入量に対して通常0.01〜30倍(重量比)であり、好適には0.1〜10倍、さらに好適には0.5〜5倍である。
導入される水(水蒸気)の温度は通常30〜200℃であり、好ましくは80〜180℃であり、さらに好ましくは100〜150℃である。置換効率の点から、特に水蒸気として容器中に導入されることが好ましい。上記水(水蒸気)は前述の容器から導出されたアルコールと水の混合蒸気を精製したものを再使用したものであってもよく、若干量のアルコールを含む混合蒸気であっても差し支えない。なお、若干量のアルコールを含む混合蒸気の場合、アルコールの含有量は通常水蒸気100重量部に対して10重量部以下であり、水−アルコールの置換効率の観点からは、アルコールの含有量がより少なく、理想的には全く含まないものが好ましい。
塔型容器内の温度は、通常は80〜200℃、好適には100〜180℃、さらに好適には110〜150℃である。上記温度が低すぎると、容器内でのEVOH溶液の粘度が高くなり、置換効率が低下する場合があり、逆に温度が高すぎると、樹脂そのものが劣化する傾向がある。
塔型容器内の圧力は、通常は0〜10MPaGであり、好ましくは0〜5MPaG、さらに好ましくは0.1〜3MPaGである。上記圧力が低すぎると置換効率が低下する傾向があり、また、高すぎると容器内の温度が上昇してEVOHが熱劣化しやすくなる傾向がある。
上記脱アルコール工程を経て、塔型容器から導出されるEVOHと水/アルコールとの混合物(以下、本発明が洗浄対象とする「ペースト」)は、EVOH100重量部に対してアルコールを通常10〜200重量部含有する液状のものである。このアルコール量としては、好ましくは20〜150重量部、さらには30〜100重量部とすることが好ましい。また、このペーストは、水をEVOH100重量部に対して通常20〜200重量部含有し、好適には30〜150重量部、さらに好適には40〜100重量部の水を含有する。
なお、このときの水/アルコール比は、(水/アルコール)の重量比にて通常(10/90)〜(90/10)、好ましくは(20/80)〜(80/20)、さらに好ましくは(30/70)〜(70/30)である。上記アルコールおよび水の含有量が多すぎると、ついで行われるパイプミキサーによる撹拌混合に負荷がかかる傾向がある。また、アルコールや水の含有量が少なすぎると粘度が高くなって、塔型容器後半の置換効率が低下したり、塔型容器からの導出が困難になる傾向がある。
さらに、ペーストが有する残存ケン化触媒は、ケン化触媒がアルカリ触媒であった場合にはそのカチオンの酢酸塩に、また、ケン化触媒が酸触媒であった場合には酢酸になる。上記残存ケン化触媒の含有量は、EVOHに対して通常1000〜4000ppmであり、好適には1500〜3000ppm、さらに好適には1700〜2700ppmである。なお、上記含有量は、アルカリ触媒の場合、1重量%の酢酸溶液でアルカリ(金属)を抽出し、イオンクロマトグラフィーで測定して求められる。
なお、必要に応じて、この脱アルコール工程と、後述するペレット化工程の間に、水/メタノール調整工程や、後述する添加剤を添加する工程や、EVOHに水(および/または水蒸気)を導入する工程等を設けても差し支えない。例えば、脱アルコール工程にて得られたEVOHペーストをペレット化工程に供する前に、上記ペーストに熱安定剤を含有させることが好ましく、特には、酢酸およびホウ酸を含有させることが好ましい。上記含有量は、酢酸の場合EVOHに対して通常1500〜4000ppmであり、ホウ酸の場合はEVOHに対して通常100〜1000ppm添加することができる。
<不純物等を除去する過程の説明>
つぎに、本発明の特徴的過程である、パイプミキサーを用いてペースト中の不純物および残存アルコール等を除去する過程について説明する。
上記脱アルコール工程の洗浄容器から導出されたペーストは、この脱アルコール工程と、次工程であるペレット化工程(後述)との間に設けられたペースト流路(配管)を用いて輸送され、例えばポンプ等を用いた圧送により、上記ペースト流路の途中(中間部)に介在配置されたパイプミキサーを通過する。これにより、インラインでペースト中の不純物等を除去することが可能となる。
上記パイプミキサーには、配管内に配置したインペラやスクリュー等を、管内あるいは管外に設けた動力原を用いて強制的に回転させる形式のもの(管路型撹拌装置等)のほか、可動部を持たないフローミキサー(モーションレスミキサー)である、オリフィスミキサー,ラモンドミキサー,スタティックミキサー(ケニックス型,SMX型,ベンチュリ型,分散板型,ひねり板型,噴流型)等のインライン形の静止型混合器、あるいは、これら強制型と静止型を併用したもの等が用いられる。なかでも、圧力損失が小さく、メンテナンスフリーで、内部に生じる層流により高粘度の流体(ペースト)を効率的に撹拌混合することのできるスタティックミキサーが、好適に採用される。
また、上記パイプミキサーのペースト導入口より上流側のペースト流路には、上記ペースト(EVOHの含水組成物)に対して所定重量比率の洗浄水を添加する給水配管が配設されており、供給された洗浄水が上記ペーストとともにパイプミキサーに導入されるようになっている。
そして、本発明の最大の特徴は、そのパイプミキサー内に、ペーストを撹拌混合する装置が内蔵されており、上記ペーストに添加された多量の洗浄水中で、EVOHと水/アルコールとの混合物からなるペーストが、その表面と内部(外側層と内側層)とが繰り返し入れ替わるように表面更新されながら混練(液相中混練)され、このペースト状のEVOH樹脂がその内部まで洗浄水に万遍なく接触できるように構成されている点である。また、上記パイプミキサー中における撹拌混合により、上記洗浄水は、ペースト中の残存アルコールを置換・溶解させて高アルコール濃度となり、かつ、このペースト中の不純物等を充分に吸収・溶解させた状態となる。なお、上記高アルコール濃度となった洗浄水は、低アルコール含有量でかつ高純度となったEVOH含水組成物と一緒に、パイプミキサーの導出口から吐出される。
例えば、具体的には図1のように、前記脱アルコール工程の塔型の洗浄容器1のペースト導出口1bから導出されたペースト(EVOH含水組成物)を、ポンプ(ペーストポンプ)Pを用いてパイプミキサー(スタティックミキサー2)内に導入し、上記スタティックミキサー2のペースト導入口2aより上流側に接続された洗浄水配管Wから導入された洗浄水とともに、上記スタティックミキサー2内に配置された各ミキシングエレメント(右エレメント2c,左エレメント2d)により、上記ペーストに生じた各層流を分割,転換,反転および合流させる。また、これらを繰り返して、上記ペースト中の残存アルコールの一部または全部を水と置換し、これを洗浄水とともにスタティックミキサー2のペースト導出口2bから吐出させる。
なお、上記パイプミキサー中での浴比(洗浄水の供給量)は、導入洗浄水/導入ペーストの重量比で表すことができ、通常0.5〜10、好ましくは0.6〜5、さらに好ましくは0.8〜3である。上記浴比は、アルコールの置換効率に影響するものであって、この浴比が高すぎる場合、経済性が低下する傾向があり、また低すぎる場合、置換・洗浄効率が低下する傾向がある。
さらに、上記パイプミキサー内におけるペーストの滞留時間は、目的とするEVOHの特性により変化するが、通常0.5〜10時間であり、好適には1〜8時間、さらに好適には1〜5時間である。
また、EVOHと水/アルコールとの混合物からなるペーストのパイプミキサーへの導入量は、浴比によって変化するが、通常パイプミキサーの内容積に対して10〜90容積%/時間、好ましくは10〜50容積%/時間、さらに好ましくは10〜25容積%/時間である。少なすぎるとアルコールとの置換効率が低下する傾向があり、逆に多すぎるとパイプミキサーからの導出速度が追いつかず、非経済的となる傾向がある。
なお、導入されるEVOHと水/アルコールとの混合物からなるペーストの温度は、通常40〜110℃であり、好ましくは50〜100℃である。
また、パイプミキサーの温度を一定に保つことが好ましい。上記パイプミキサー内の温度は通常50〜150℃であり、好ましくは60〜120℃であり、さらに好ましくは70〜110℃である。上記温度が高すぎる場合、ペースト粘度が低くなり、低すぎる場合、粘度が上昇し取り扱いしにくくなる場合がある。特に、上記温度は洗浄水によって調節することが好ましい。これは、導入ペーストの流動性を維持するためである。したがって、洗浄水の温度は、自然放熱を考慮して、通常70〜160℃であり、好適には90〜130℃、さらに好適には100〜120℃である。
さらに、本発明におけるペーストのパイプミキサーの通過は、常圧条件下で行うことができるが、必要に応じて圧力を変化させて行うことが可能である。上記圧力は、通常0〜1MPaG、好ましくは0〜0.6MPaG、さらに好ましくは0〜0.3MPaGである。上記圧力が高すぎると容器内の温度が上昇してEVOHが熱劣化しやすくなる傾向がある。
また、上記パイプミキサー内に導入される洗浄水には、カルボン酸化合物(カルボン酸,カルボン酸塩,ホウ素化合物,リン酸化合物から選ばれる少なくとも一種の熱安定剤を添加することが好ましい。上記洗浄水中におけるペーストの混練(液相中混練)に伴って、洗浄と同時にこの熱安定剤をペースト中に均一に分散させることができる。
上記カルボン酸化合物としては、炭素数が2〜4のカルボン酸が好ましく、また、1価あるいは2価のものが好適に用いられる。具体的には、シュウ酸,コハク酸,安息香酸,クエン酸,酢酸,プロピオン酸,乳酸等が例示され、これらのなかでも、コストおよび入手の容易さなどの面から、酢酸が好ましく用いられる。
上記カルボン酸を添加する場合、パイプミキサー通過後に得られるEVOHペースト中のカルボン酸の含有量は、滴定法にて測定した値で、EVOHに対して通常10〜10000ppm、好ましくは50〜3000ppm、さらに好ましくは100〜2000ppmである。カルボン酸の含有量が少なすぎると、カルボン酸の含有効果が充分に得られない傾向があり、逆に多すぎると均一なフィルムを得ることが難しくなる傾向がある。なお、洗浄水におけるカルボン酸の濃度は、通常10〜3000ppmであり、好適には20〜1000ppm、さらに好適には30〜500ppmである。
また、熱安定剤の平衡効果の点からカルボン酸塩をあえて添加する場合があり、上記カルボン酸塩は通常炭素数が2〜4のカルボン酸塩である。また、1価あるいは2価のものが好適に用いられる。具体的には、シュウ酸,コハク酸,安息香酸,クエン酸,酢酸,プロピオン酸,乳酸等のアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウム等)などの塩が例示され、これらのなかでも、コストおよび入手の容易さなどの面から、酢酸塩が好ましく、特には酢酸ナトリウムが用いられる。
上記カルボン酸塩を添加する場合、パイプミキサー通過後に得られるEVOHペースト中のカルボン酸塩の含有量は、原子吸光分析における金属換算にて、EVOHペーストに対して通常10〜5000ppmであり、好適には30〜1000ppm、さらに好適には50〜700ppmである。少なすぎると溶融成形時に着色が発生することがあり、また多すぎると溶融粘度が高くなることがある。なお、洗浄水におけるカルボン酸塩の濃度は、通常10〜3000ppmであり、好ましくは20〜1000ppm、さらに好ましくは30〜500ppmである。
ホウ素化合物としては、ホウ酸,ホウ酸エステル,ホウ酸塩などのホウ酸類,水素化ホウ素類などがあげられ、これらに限定されるものではないが、特にホウ酸あるいはホウ酸塩が好ましく用いられる。具体的には、ホウ酸類としては、オルトホウ酸,メタホウ酸,四ホウ酸などがあげられ、ホウ酸エステルとしてはホウ酸トリエチル,ホウ酸トリメチルなどがあげられ、ホウ酸塩としては上記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩,アルカリ土類金属塩,ホウ砂などがあげられる。これらの化合物のなかでもホウ酸が好ましい。
上記ホウ素化合物を添加する場合、パイプミキサー通過後に得られるEVOHペースト中のホウ素化合物の含有量は、ホウ素換算(灰化後、ICP発光分析法にて分析)で通常、EVOHペーストに対して10〜10000ppmであり、好ましくは100〜8000ppm、さらに好ましくは100〜7000ppmである。上記ホウ素化合物の含有量が少なすぎると熱安定性の改善効果が少なく、また、多すぎるとゲル化の原因となったり、成形性不良となる傾向がある。なお、洗浄水におけるホウ素化合物の濃度は、通常10〜3000ppmであり、好適には20〜1000ppm、さらに好適には30〜500ppmである。
上記リン酸化合物としては、リン酸,亜リン酸などの各種の酸や、その塩などが例示される。リン酸塩としては、第一リン酸塩,第二リン酸塩,第三リン酸塩のいずれの形で含まれていてもよく、そのカチオン種も特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩,アルカリ土類金属塩であることが好ましい。なかでも、リン酸二水素ナトリウム,リン酸二水素カリウム,リン酸水素二ナトリウム,リン酸水素二カリウムの形でリン酸化合物を添加することが好ましい。
上記リン酸化合物を添加する場合、パイプミキサー通過後に得られるEVOHペースト中のリン酸化合物の含有量は、EVOHペーストに対してリン酸根換算で(イオンクロマトグラフィーにて分析)で通常、リン酸根換算で1〜1000ppmである。上記範囲となるように添加することで、成形物の着色およびゲルやフィッシュアイの発生を抑制することでき、上記含有量が少なすぎると溶融成形時が着色しやすくなる傾向が見られ、逆に多すぎると成形物のゲルやフィッシュアイが発生しやすくなる場合がある。なお、洗浄水におけるリン酸化合物の濃度は、通常1〜3000ppmであり、好ましくは10〜1000ppm、さらに好ましくは20〜500ppmである。
つぎに、上記残存アルコールおよび不純物等を除去する過程で用いられるスタティックミキサー2の構造について詳しく説明する。
本実施形態で使用されるスタティックミキサー2は、その内部に、上記ペーストを分割して層流化させ、これら各層流を転換,反転および合流させるミキシングエレメント(右エレメント2c,左エレメント2d)が複数組配設されている。なお、図1では、その内部構造を強調するために、周囲の配管より大径に描画されているが、その管径は、特に限定されたものではない。また、付属する設備としてはジャケットやコイル等の温度調節手段を備えたものが望ましい。
また、スタティックミキサー2内に配設されたミキシングエレメント(ミキシングブレード)も、図1のようなスパイラルタイプのほか、ステータタイプや、ブロックごとにスパイラルとステータを組み合わせたもの等、様々なタイプのものを使用することができる。
さらに、本実施形態においては、スタティックミキサー2を水平に設置する例を示したが、このスタティックミキサー2は、水平に対して傾斜して配置してもよい。なお、この傾斜角は、通常0〜45°であり、好ましくは10〜30°である。また、スタティックミキサー2の傾斜は、ペースト導入側(2a)を上側に配置し、ペースト導出側(2b)を下側に配置することが望ましい。設置位置(傾斜)をこのように調節することで、高粘度のペーストを、効率的に通過させることができる。
そして、上記実施形態においては、ペーストに洗浄水を添加する給水配管Wを、スタティックミキサー2のペースト導入口2aより上流側に配設した例を示したが、この給水配管Wをペースト導出口2bより下流側に配置し、上記洗浄水の排出口をペースト導入口2aより上流側に設けてもよい。なお、この構成において、上記ペースト(EVOHの含水組成物)と洗浄水とは、向流的に接触することになるが、その場合、上記スタティックミキサー2の上部に、上記洗浄水がペースト流れ方向とは逆の方向に流れることを可能にする空間(クリアランス)が必要となる。したがって、この場合、スタティックミキサー2に導入するペースト量を制限して、上部に余裕(空間)ができる程度に流量を制御すればよい。
本実施形態におけるEVOHの製造方法によれば、上記パイプミキサー内を通過したペースト状のEVOH含水組成物は、上記洗浄水とともに、アルコール(メタノール)の一部または全部と、ケン化時に使用する触媒残渣や副生物等の不純物とが、高い効率で除去される。また、上記洗浄水に、熱安定剤として、カルボン酸、カルボン酸塩,ホウ素化合物,リン酸化合物から選ばれる少なくとも一種の添加剤が添加されていることから、上記ペーストの混練に伴って、この添加剤をペースト中に均一に分散・混合することができる。
そして、上記パイプミキサーを通して得られたEVOH含水組成物の含水量は、EVOH100重量部に対して通常30〜400重量部であり、好ましくは40〜240重量部、さらに好ましくは50〜150重量部である。また、除去しきれなかったアルコールを含有していても構わないが、その含有量は、EVOH100重量部に対して通常10重量部未満であり、好適には5重量部未満である。通常は、上記パイプミキサー中のEVOH含水組成物中のアルコールの含有量をモニターし、これがEVOH100重量部に対して10重量部未満となった時点を終点とすることが好ましい。
さらに、得られたEVOH含水組成物が有する残存ケン化触媒の含有量は、EVOHに対して通常0〜3000ppmであり、好ましくは0〜2000ppm、さらに好ましくは0〜1000ppmである。なお、上記含有量は、アルカリ触媒の場合、酢酸塩として求められる。
なお、本実施形態においては、塔型の洗浄容器を用いた脱アルコール工程で、完全にアルコールを除かず、流動性を保った状態に留めることによって、処理効率が低下することを防止し、ついで、パイプミキサーを用いた、残存アルコールおよび不純物等を除去する過程で、インライン条件下にて撹拌混合しながら洗浄水と接触させることにより、ペーストが高濃度,高粘度となっても、効率よくアルコールと水の置換が進み、その結果、アルコールを含んで膨潤状態であったEVOHが、アルコール含有量の低下とともに収縮し、ペースト中からアルコールとともに水やケン化時に使用する触媒残渣や副生物等が排出され、高純度・高品質のEVOH含水組成物(含水量:EVOH100重量部に対して30〜400重量部)が得られるものである。
したがって、本実施形態で得られるような、低アルコール含有量のEVOH含水組成物を、脱アルコール工程の塔型の洗浄容器1のみで得ることは、洗浄容器1の後半でEVOHペーストの粘度が高くなりすぎて流動性が低下し、アルコール−水の置換効率が下がるとともに、洗浄容器1から導出できなくなるため、困難である。また、パイプミキサーのみで、EVOHのアルコール溶液中のアルコールの大半を水に置換しようとすると、パイプミキサーに導入する当初の溶液粘度が低く、導入した洗浄水がEVOHペースト中に長く留まることができないため置換効率が低く、工程に時間がかかり、多量の水が必要となるため、実用的ではない。
つぎに、上記パイプミキサー(不純物等を除去する過程)を通過して得られた、アルコール含有量の少ないペースト状のEVOH含水組成物を乾燥、ペレット(製品ペレット)化する工程について説明する。
上記ペレット化工程は、(A)アルコール含有量の少ないペースト状のEVOH含水組成物をその含水量のままペレット形状に成形し、その後水分量を低下させる方法、および、(B)アルコール含有量の少ないペースト状のEVOH含水組成物の水分量を低下させた後にペレット形状に成形する方法があげられる。
上記(A)の方法としては、例えばアルコール含有量の少ないペースト状のEVOH含水組成物を、孔を通して押出し、流動状を有するままカットして丸形のペレットを得る方法(例えばホットカットやアンダーウォーターカット等)や、この含水樹脂よりも低温の冷媒浴中にストランド状に押し出して固化し、上記ストランドをカットして円柱状のペレットを得る方法があげられる。そして、得られたペレットを各種の乾燥方法にて乾燥するものである。
上記(B)の方法は、例えば、予め遠心分離機や押出機等を用いてアルコール含有量の少ないペースト状のEVOH含水組成物中の水分量を、EVOH100重量部に対して通常1〜50重量部、好ましくは1〜40重量部、さらに好ましくは1〜30重量部となるように水分量を低減した後に、押出機等を用いてペレット化する。上記ペレット化には、EVOH樹脂を押出機でストランド状に押出し、カットして円柱形状のペレットを得る方法や、押出機から押し出された直後の溶融状態の樹脂をカットして丸形状のペレットを得る方法(ホットカット)等があげられる。特に、乾燥工程の熱効率や樹脂に上記熱履歴を考慮すると、押出機を用いた場合、EVOH含水組成物の水分を低減させ、かつペレット化する作業を一連に行うことが可能であるため(B)の方法を採用することが好ましい。
上記ペレット化工程に用いる押出機としては、単軸押出機や二軸押出機があげられる。
上記押出機の口径(mmφ)は、通常40〜180であり、好適には60〜140、さらに好適には70〜110のものが用いられる。また、上記押出機のL/Dは、通常10〜80であり、好ましくは15〜70、さらに好ましくは15〜60であるものが用いられる。上記L/Dが小さすぎると脱水効果が不充分となったり、吐出が不安定となる傾向があり、逆に大きすぎると過度のせん断発熱を引き起こす傾向がある。なかでも、スクリューの回転方向が同方向の二軸押出機が適度なせん断により充分な混練が得られる点でより好ましい。
このとき、押出機中の樹脂の温度は、通常80〜250℃であり、好ましくは90〜240℃、さらに好ましくは100〜230℃である。上記温度が高すぎる場合、樹脂が劣化着色しやすい傾向があり、低すぎる場合、水分低減効率が低下する傾向がある。上記樹脂温度の調整方法は特に限定されないが、通常は、押出機内シリンダの温度を適宜設定する方法が用いられる。
押出機のスクリュー回転数は、軸の大きさによるが通常10〜1000rpmであり、好適には30〜800rpm、さらに好適には50〜400rpmの範囲が用いられる。上記回転数が小さすぎると吐出が不安定となる傾向があり、また、大きすぎると好ましくないせん断発熱によって樹脂の劣化の原因となる場合がある。
例えば具体的には、図1のように、第1押出機3および第2押出機4と、ストランドカッタ(ペレタイザ:図示省略)等とからなり、上記スタティックミキサー2を通過したペースト状のEVOH含水組成物(EVOH−Paste)を、第1押出機3および第2押出機4に順次投入して溶融混練し、上記EVOH含水組成物中の水分を徐々に低減するとともに、上記第2押出機4から吐出されたストランド状あるいはリボン状のEVOH組成物を冷却後、ストランドカッタ等を用いて上記EVOH組成物を所定の大きさに切断(ペレタイズ)し、低アルコールで低含水量のEVOHペレットを得る。
上記ペレット化工程に用いられる第1押出機3および第2押出機4としては、一般的な単軸押出機や二軸押出機等が使用できる。二軸押出機が、適度なせん断により充分な混練が得られる点でより好ましい。
また、上記押出機内における樹脂温度は、通常、80〜250℃に設定され、第1押出機3吐出後のEVOH組成物の水分量がEVOH100重量部に対して通常30〜35重量部に、第2押出機4吐出後のEVOH組成物の水分量がEVOH100重量部に対して通常10重量部未満、好ましくは0〜8重量部になるように調整されている。なお、上記ペレット化工程において、EVOH組成物の含水量を極力低減させたい場合には、上記押出機内の樹脂温度が、通常120〜250℃、好ましくは150〜230℃の範囲になるように設定される。逆に、EVOH組成物の熱劣化を極力抑制するために、含水量を維持しながら行いたい場合には、上記押出機内の樹脂温度を、通常80〜105℃、好適には85〜100℃、さらに好適には90〜100℃の範囲に設定して行われる。
さらに、上記押出機を用いた押出しにおいては、含水状態であるEVOH組成物を溶融混練するため、押出機の少なくとも一箇所から水あるいは水蒸気を排出することが好ましい。そのための水分排出手段としては、特に限定されるものではないが、押出機のシリンダ(バレル)に設けられた脱水孔,ベント口あるいは脱水スリット等から排出する方法を採用することができる。なかでも、脱水スリットは、水,水蒸気のいずれも排出することができ、樹脂の付着や漏出が少ないことから、好ましく用いられる。なお、上記水分排出手段は、複数用いてもよく、その場合には同一の種類のものであっても、異なるものを組み合わせて用いてもよい。
また、上記第2押出機4から吐出されたEVOH組成物をペレット化する方法は、特に限定されないが、このEVOH組成物を押出機のダイス(口金)からストランド状に押出し、冷却の後、適切な長さにカットする方法が、好適に用いられる。上記吐出されたストランドの冷却の方法としては、押し出された樹脂の温度よりも低温に保持された液体に接触させる方法や、冷風を吹き付ける方法等が用いられる。
そして、上記切断されたペレットの形状は、通常、円筒状であり、その大きさは、後に成形材料として用いる場合の利便性の観点から、ダイスの口径は2〜6mmφ、ストランドのカット長さは1〜6mm程度が、好適に用いられる。なお、押出機から吐出されたEVOH組成物がまだ溶融状態である間に、大気中あるいは水中でカットする方法も好適に用いられる。
なお、上記ペレット化工程においては、上記EVOH含水組成物(EVOH−Paste)とは異なる過程を経て得られた、重合度,エチレン含有量,ケン化度等が異なる二種以上のEVOH組成物をブレンドして、溶融成形することも可能である。また、他の各種可塑剤,滑剤,安定剤,界面活性剤,色剤,紫外線吸収剤,帯電防止剤,乾燥剤,架橋剤,金属塩,充填剤,各種繊維等の補強剤などを適量添加して、溶融混練することもできる。
つぎに、上記ペレット化工程で得られたEVOHペレットの水分量を必要に応じて低減するペレット乾燥工程(図示省略)について説明する。
上記ペレット化工程から得られたEVOHペレットは、押出機内で充分に水分が除去され、水分量がEVOH100重量部に対して0.3重量部未満であれば、そのまま製品とすることができる。また、その水分除去が不充分である場合には、ペレット乾燥工程に供することで、余分な水分が取り除かれる。
上記EVOHペレットの乾燥方法としては、各種の乾燥方法を採用することができる。例えば具体的には、静置乾燥法、流動乾燥法などがあげられる。また、異なる乾燥方法による多段階の乾燥方式を採用することも可能である。特に、一段階目に流動乾燥法、二段階目に静置乾燥法で乾燥する方法が、ペレットおよびそのペレットを用いた成形品の色調が良好となる点で好適である。また、乾燥の際には窒素ガス(N2 Gas)等の不活性ガスを循環させることも成形品の色調が良好となる点で好適である。
例えば具体的には、乾燥容器に、必要に応じて例えば窒素ガス(N2 Gas)等の不活性ガスを供給し循環させることにより上記ペレット化工程で得られたEVOHペレットの水分量を、製品レベルであるEVOH100重量部に対して0.3重量部未満にまで低減する。
本発明におけるエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法によれば、上記乾燥工程に必要な滞留時間が短時間であるため、得られるEVOH(ペレット)の熱劣化が起こらず、EVOHおよびこのEVOHを用いた成形品の品質が向上する。
つぎに、本発明のエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法の第2実施形態について説明する。
図2は、本発明のエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法の第2実施形態の概略を示すフロー図である。なお、図中の符号Rは、ペーストを環流させる環流流路を示す。
このEVOHの製造工程も、第1実施形態同様、エチレン−ビニルエステル系(本例においてはエチレン−酢酸ビニル)共重合体のケン化処理工程(図示省略)と、塔型洗浄容器1を用いて、EVOHと水/アルコールとの混合物からなるペーストを得る脱アルコール工程と、洗浄後のEVOH含水組成物を押出機3,4およびストランドカッタ等を用いてペレット化するペレット化工程と、から構成されており、上記脱アルコール工程とペレット化工程との間のペースト流路(配管)上には、パイプミキサー(スタティックミキサー2)と、上記ペーストに対して所定重量比率の洗浄水を添加する給水配管Wとが配設されている。
この第2実施形態が第1実施形態と異なるのは、パイプミキサー(スタティックミキサー2)の導出口から導出された低アルコール含有量のEVOH含水組成物を、このパイプミキサーの導入口より上流側の上記ペースト流路に環流させる循環流路Rが設けられており、パイプミキサーを通過して低アルコール含有量となったEVOH含水組成物の一部が、上記パイプミキサー導入前のペーストに合流するようになっている点である。
上記構成により、第2実施形態におけるエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法は、ペーストが環流することから、このペーストのパイプミキサー内での滞留時間を延ばすことができる。したがって、このEVOHの製造方法は、パイプミキサーの全長(流路長手方向の総延長)を短く構成することが可能となるとともに、上記給水配管Wから供給する洗浄水の量を低減・節約することができる。
また、ペーストの環流により、アルコール−水の置換率と、重合およびケン化の際の残存触媒や副生物等の不純物の除去率とを、さらに向上させることができ、しかも、流れるペーストの均質化(均一化)を図ることができるという利点もある。
つぎに、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
[実施例1]
〔EVOHのメタノール溶液〕
冷却コイルを持つ重合缶に酢酸ビニルを330重量部、メタノール60重量部、アセチルパーオキシド500ppm(対酢酸ビニル)を仕込み、系を窒素ガスで一旦置換した後、ついでエチレンで置換して、エチレン圧が3.6MPaとなるまでエチレンを圧入した。その後、撹拌しながら、68℃まで昇温し、酢酸ビニルの重合率が50重量%になるまで6時間重合した。その後、重合反応を停止してエチレン含有量29モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液(樹脂分の濃度が48重量%)を得た。
<ケン化工程>
反応溶液内の残存酢酸ビニルを除去した、上記エチレン−酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液を、棚段塔の塔上部より30重量部/時間の速度で供給し、同時にこの共重合体中の酢酸基のモル数に対して、6ミリモル当量の水酸化ナトリウムメタノール溶液0.54重量部/時間を塔上部より供給した。一方、塔下部から60重量部/時間でメタノールを供給した。塔内温度は120〜140℃、塔圧は0.36MPaGであった。仕込み開始後0.5時間後から、EVOHのメタノール溶液が得られた。上記EVOHは、エチレン含有量29モル%,ケン化度99.5モル%であり、ペースト中には、ケン化触媒である水酸化ナトリウムのナトリウム分に相当する酢酸ナトリウムが含まれる。なお、「MPaG」単位は、ゲージ値における単位であり、絶対圧と大気圧の差を示すものである。
<脱アルコール工程>
つぎに、上記EVOHのメタノール溶液を、塔型洗浄容器(10段の棚段塔)に供給した。上記塔型洗浄容器の塔頂から2段目の棚板に、上記サンプリングしたEVOHのメタノール溶液を、80重量部/時間で連続的に供給した。他方、130℃の水蒸気を、最下段の棚板から60重量部/時間で連続的に供給して、EVOHのメタノール溶液と水蒸気とを棚段塔内で向流で接触させた。塔型洗浄容器内の温度は120℃で、容器内の圧力は0.2MPaGであった。
そして、上記塔型洗浄容器底部のペースト導出口より、EVOH100重量部に対し、メタノールを75重量部、水を75重量部含有する(水/メタノール(重量比)=50/50)、EVOHと水/アルコールとの混合物からなるペースト(以下「ペースト」)を得た。なお、得られたペースト中には、4700ppmの酢酸ナトリウムが含有されていた。
EVOH100重量部に対し、メタノールを75重量部、水を75重量部(水/メタノール(重量比)=50/50)含有し、EVOHに対して4700ppmの酢酸ナトリウムを含有するペーストに対して、ホウ酸および酢酸を含有する水溶液を添加して、同時にペーストの水分調整を行った。
<不純物等を除去する過程>
ペースト(EVOH100重量部に対し、メタノールを141重量部、水を247重量部(水/メタノール(重量比)=64/36)含有し、樹脂分が21重量%であり、EVOHに対して酢酸 2100ppm、酢酸ナトリウム 7900ppm、ホウ酸 4300ppmを含有する)を、ポンプPで圧送して、第1実施形態に記載のパイプミキサー(スタティックミキサー2)を通過させ、下記の条件で洗浄した。
A)洗浄(撹拌・混合)条件
・スタティックミキサー 口径:158mm 全長:46m
・ミキシングエレメント数:24個
・保温ジャケット温度:79℃
B)EVOHペースト条件
・供給量:17重量部/時間
・供給ペースト温度:80℃
・ペースト滞留時間:3時間
・吐出量:6.4重量部/時間
C)洗浄水条件
洗浄水組成(水に対して)
:酢酸 160ppm
酢酸ナトリウム 200ppm
ホウ酸 110ppm
リン酸二水素ナトリウム 80ppm
リン酸カルシウム 150ppm
・供給量 :16重量部/時間
・温度 :85℃
なお、浴比(洗浄水重量/ペースト重量比)が0.94になるように調整して行った。
そして、上記スタティックミキサー2のペースト導出口2bより、モチ状の白濁高粘度ペーストとなったEVOH水/メタノールペースト:EVOH樹脂分54重量%、水45重量%、メタノール1%(EVOH100重量部に対し、水83重量部、メタノールを2重量部)酢酸 1360ppm、酢酸ナトリウム 530ppm、ホウ酸 4550ppm、リン酸二水素ナトリウム 80ppm、リン酸カルシウム 150ppmを得た。
以上の結果より、洗浄水とともに、残留メタノールの一部または全部と、EVOHおよびそのEVOHを用いた成形品に着色等の問題を生じるおそれのある不純物(ケン化の際の残存触媒や副生物等)とが、高い効率で除去されていることが判る。
本発明のエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法によれば、得られるEVOH製品中の不純物が低減され、このEVOHおよびEVOHを用いた成形品の品質が向上する。また、得られたEVOHのペレットは、押出成形,射出成形などの溶融成形によって、フィルム,シート,カップ,ボトルなどの成形体に成形され、食品,医薬品,工業薬品.農薬などの包装用途に広く用いられる。
1 洗浄容器
2 スタティックミキサー
3 押出機
4 押出機

Claims (6)

  1. エチレン−ビニルアルコール系共重合体のアルコール溶液または水/アルコール混合溶媒溶液を洗浄容器に導入し、この洗浄容器内で水または水蒸気と接触させて、上記アルコールの一部を水または水蒸気とともに容器外に排出し、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の含水組成物からなるペーストを得る脱アルコール工程と、上記エチレン−ビニルアルコール系共重合体含水組成物を押出機に供給し、溶融混練した後、吐出して切断し、エチレン−ビニルアルコール系共重合体のペレットを得るペレット化工程と、を備えるエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法であって、上記脱アルコール工程と上記ペレット化工程との間のペースト流路上に、パイプミキサーと、上記ペーストに対して所定重量比率の洗浄水を添加する給水配管とが配設されており、上記洗浄容器から導出されたペーストを、上記洗浄水とともにパイプミキサーに導入し、このペーストの表面と内部とが繰り返し入れ替わるように撹拌混合した後導出させ、上記ペーストに含まれるアルコールの一部または全部を水と置換して、アルコール含有量の少ないエチレン−ビニルアルコール系共重合体含水組成物を、上記押出機に供給することを特徴とするエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法。
  2. 上記パイプミキサーが、静止型混合器であり、この静止型混合器を通過する際に、ペーストが分割,転換,反転および合流を繰り返すことにより、上記ペーストの撹拌混合が行われるようになっている請求項1記載のエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法。
  3. 上記パイプミキサーの導出口から導出された低アルコール含有量のエチレン−ビニルアルコール系共重合体含水組成物を、このパイプミキサーの導入口より上流側の上記ペースト流路に環流させる循環流路が設けられており、上記低アルコール含有量のエチレン−ビニルアルコール系共重合体含水組成物の一部が、上記パイプミキサー導入前のペーストに合流するようになっている請求項1または2記載のエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法。
  4. 上記洗浄水が、カルボン酸,カルボン酸塩,ホウ素化合物,リン酸化合物から選ばれる少なくとも一種の添加剤を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法。
  5. 上記パイプミキサー通過後のエチレン−ビニルアルコール系共重合体含水組成物の含水量が、エチレン−ビニルアルコール系共重合体100重量部に対して30〜400重量部である請求項1〜4のいずれか一項に記載のエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法。
  6. 上記ペレット化工程から得られたエチレン−ビニルアルコール系共重合体ペレットの含水量が、エチレン−ビニルアルコール系共重合体100重量部に対して10重量部未満である請求項1〜5のいずれか一項に記載のエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法。
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