JP5195775B2 - 真空ポンプ - Google Patents

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Description

本発明はケーシング内にターボ機構を収納し、これを高速回転させて室内を高真空に排気するターボ分子ポンプなどの真空ポンプに関する。
この種のターボ分子ポンプにおいては、ターボ機構を高速回転させる関係でターボ機構を含む回転体が昇温し高温になる。これら回転体の高温化は回転体そのものに歪を生じ、回転体の保持機構にも歪などを生じてポンプ機能の低下を招来することになる。したがって、この種真空ポンプでは内方の回転体の温度を測定監視し対策を講じることが求められている。まず従来におけるターボ分子ポンプTPの一例を示す図9にしたがって説明する。
図9は磁気軸受式分子ポンプTPの概略構成を示したものである。3は後述するターボ機構が架設された回転枠体であるロータ2が取り付けられた回転軸で、ベース4に設けられた電磁石8、9、10によって非接触支持されている。回転軸3の浮上位置は、ベース4に設けられたラジアル変位センサ5、6およびアキシャル変位センサ7によって検出される。ラジアル磁気軸受を構成する電磁石8、9と、アキシャル磁気軸受を構成する電磁石10と、変位センサ5〜7とで5軸制御型磁気軸受が構成される。
回転軸3の下端には円形のディスク11が設けられており、このディスク11を上下に挟むように電磁石10が設けられている。この電磁石10によりディスク11を吸引することにより、回転軸3がアキシャル方向に浮上する。ディスク11はナット12により回転軸3の下端部に固定されており、回転軸3と一体で回転する。
ところで、ターボ分子ポンプTPにおいては、ロータ2には回転軸芯方向に沿って複数段の回転翼Rが形成されている。上下に並んだ回転翼Rの間には固定翼Sがそれぞれ配設されている。これらの回転翼Rと固定翼Sとにより、ターボ分子ポンプTPのターボ機構TKが構成される。各固定翼Sは、スペーサPによって上下に挟持されるように保持されている。スペーサPは、固定翼Sの保持機能とともに固定翼S間のギャップを所定間隔に維持する機能を有している。
さらに、固定翼Sの後段(図示下方)にはドラッグポンプ(ネジ溝ポンプ)NPを構成するネジステータNSが設けられており、ネジステータNSの内周面とロータ2の円筒部ETとの間にはギャップが形成されている。ロータ2およびスペーサPによって保持された固定翼Sは、吸気口16が形成されたケーシング17内に納められている。ロータ2が取り付けられた回転軸3を電磁石8〜10により非接触支持しつつモータ18により回転駆動すると、吸気口16側のガスは矢印Gのように背圧側の空間SPを経て排気される。背圧側に排気されたガスは、排気口19に接続された補助ポンプにより排出される。なお、図9において20は玉軸受である。なお、13、14は磁性体ターゲットを示している。
ターボ分子ポンプTPは、コントローラ1によって駆動制御される。コントローラ1には、磁気軸受を駆動制御する磁気軸受駆動制御部1Mおよびモータ18を駆動制御するモータ駆動制御部1Cが設けられている。なお、コントローラ1における1Sは検出器であり、1Kは警報部を示している。
このようなターボ分子ポンプTPは、ターボ機構TKによるターボポンプ機能とネジ溝ポンプNPによるネジ溝ポンプ機能を有機的に結合したものであり、通常ハイブリッド型ターボ分子ポンプと称されている。ターボ分子ポンプTPとしては、このようなハイブリッド型のものが排気特性は良く、よく利用されている。このように排気機構を備えたロータ2は回転軸3と一体化され、全体が電磁石8〜10により非接触で支持されながらモータ18にて回転駆動される。そのために内方のターボ機構TK等の回転体を非接触で測定する技術が使用されている(特許文献1参照)。
以上の構成において、上記した非接触形温度測定方式は、測定しようとする温度領域においてその透磁率が変化する強磁性体材料からなる磁性体を回転体に装備し、この磁性体と固定体側に固定した強磁性体材料からなる部材とで磁気回路を構成するとともに、この磁気回路の磁気抵抗を測定する手段を備えたものである。
この温度測定装置では、ある物性と温度との間に存在する周知の関連性を利用する。すなわち、真空中で高速回転している回転体においては、測定しようとする温度範囲内にキュリー点が存在している強磁性体材料を利用する。この種の材料は高温になるとその強磁性という物性を失い常磁性体に変化する。その結果、磁気回路中の磁束のうちその材料が寄与している分の磁束が著しく減少し磁気抵抗が大きくなる。この原理によって回転体の温度が非接触方式で実現できる。なお、回転体については後述するとおり、回転軸の場合、ロータの場合そして回転軸に結合される円盤状体の場合がある。以下従来の説明においてはロータを例に説明する。
上記した原理による非接触形温度測定方式は、ターボ分子ポンプTPの内部において実施する場合は、たとえば図7に示す原理的な構成で実施される。図7は回転体とギャップセンサ15のインダクタンス変化を説明する図であり、ギャップセンサ15とターゲットである磁性体Mで生起する磁気回路の模式図である。ギャップセンサ15は具体的にはターボ分子ポンプTPのステータ側、詳細にはポンプ内の機台部(固定部)に固設されるが、その構造は、珪素鋼板などの透磁率の大きなコアの周囲にコイルを巻いたものである。ギャップセンサ15のコイルには搬送波として一定周波数の高周波電圧が印加され、ギャップセンサ15からターゲットである磁性体Mに向けて高周波磁界が形成される。なお、図7に示すように磁性体Mは回転軸3と一体のフランジ3Pおいて、そのフランジ3Pの下面に形成された凹部3Kに取り付けられている。
一方、ターゲットである磁性体Mには、そのキュリー温度がロータ2の許容温度とほぼ同一か、またはそれに近い温度を有する磁性体材料を用いる。このように許容温度はロータ2の温度であり、磁性体Mが設置される部材すなわち図示例ではフランジ3Pとなるがこのフランジ3Pと一致するとは限らないことに留意すべきである。なお、図9に示すとおりロータ2がフランジ3Pに架設される場合、フランジ3Pは鋼材等が採用されておりアルミ材が採用されるロータ2とは材質が異なり、両者間の熱伝導度を考慮した設定が必要となる。フランジ3Pの場合には、アルミの場合には120℃〜140℃程度ある。キュリー温度が130℃程度の磁性体材料としては、ニッケル・亜鉛フェライトやマンガン・亜鉛フェライト等がある。
フランジ3Pの温度上昇によりターゲットである磁性体Mの温度が上昇してキュリー温度を越えると、ターゲットである磁性体Mの透磁率が真空の透磁率程度まで急激に低下する。ギャップセンサ15が形成する磁界中でターゲットである磁性体Mの透磁率が変化すると、ギャップセンサ15のインダクタンスが変化することになる。
その結果、搬送波を与えたギャップセンサ15から出力される振幅変調された信号を検波・整流することにより、透磁率の変化に相当する信号変化を検出することができる。このようにして温度を非接触式に検出できる。
この方法による温度測定例を示すのが図5である。なお、図5において回転軸3は図9に比して簡略に示されているが、磁性体Mは回転軸3と一体のフランジ3Pの凹部3Kに固設されている。なお、図3において(A)はロータ2全体を正面から見た図であり、図(B)はZZ面から見た図を示している。
特開2006−194094号公報
基本的には、できるかぎりロータ2の温度を直接測定することが求められる。回転軸の下端では温度勾配によりロータ2の温度との乖離が大きい。そのためにロータ2の近傍に磁性体Mを取り付けることになるが、この磁性体Mは一般的に引張強度が低く、磁性体Mへの応力を低減する方法を検討する必要がある。たとえば、図5の(B)に示すように、取り付け位置の形状および磁性体Mを円弧状とし、取り付け位置の円弧に磁性体Mの円弧を沿わせ、磁性体M自身には遠心力のみかかるようにする等の方法が考えられる。
しかし、たとえば接着材にて接着し、接着層厚みが薄い場合、磁性体Mの取り付け部材に生じる遠心力による周方向ひずみが緩和されず、磁性体Mにも大きな周方向ひずみが生じ、結果、周方向への引張方向の力が作用する。また、取り付け位置の円弧と磁性体Mの円弧形状の違いや磁性体Mの円弧部と磁性体Mの取り付け位置の円弧部との接点形状により、磁性体Mに対し引張方向の力が働いてしまうようなことがある。
この場合、図8に示すような亀裂Hが入り、磁性体M自身が粉砕するなどし、経時的な温度検出誤差を生じる原因となる。
そのため、強度を増すために、磁性体Mの材料を変更するなどが考えられる。しかし、磁性体Mはキュリー温度をロータ2の上限温度付近に設定する必要があり材料を変更するとキュリー温度も変化してしまうため材料を変更することは難しい。
また、遠心力が低減し、結果として磁性体Mへの応力が低減されるロータ2の中央部に設置する等の方法が考えられるが、たとえば、図6に示すように回転軸3の下方における小径軸STの下短面に磁性体Mを設置することも行われている。図6(A)は正面図で(B)はZZから見た下方端面図である。この場合、実際のロータ2の最高温度部と温度差があり、たとえばモータ電流等、ロータ温度測定用ギャップセンサからの信号に補正情報を追加するなどの温度推測・補正手段を設けることが必要な場合もある。本発明はこのような問題を解決する真空ポンプを提供するものである。
本発明が提供するターボ分子ポンプは上記課題を解決するために、磁性体を分割して、小片化し、これらを並設したものである。したがって、回転体の温度測定に影響を与えず、磁性体取り付け部材の周方向ひずみにより発生する磁性体の周方向ひずみが緩和する。
磁性体の割れを防ぐことができる。また、推測手段を用いる必要がなく、精度の高い回転体温度の測定が可能である。回転体の温度測定を可能とし、信頼性の高いポンプを提供できる。
本発明による第1の実施例を示す図である。 本発明による第2の実施例を示す図である。 本発明による第3の実施例を示す図である。 本発明による第4の実施例を示す図である。 従来の構造の他の例を示す図である。 従来の構造の他の例を示す図である。 インダクタンス変化の検出によるギャップセンサの原理と作動を説明するための図である。 従来の構造における磁性体のひび割れを示す図である。 ターボ分子ポンプの構成を示す縦断面図である。
回転体の回転によって生起する遠心力の作用により磁性体にかかる円周方向歪みにより生じる引張力により磁性体が破損しないようにするために可能なかぎり小さいこと、および磁気回路における磁束の変化が行われるだけの大きさを有することを満足する大きさに設定されることが望ましい。単数もしくは温度依存性の異なる複数種類の磁性体を回転体の一部に配置し、磁性体の温度変化を検出するためにステータに前記磁性体に対向するように前記磁性体の温度変化によるインダクタンス変化を検出するインダクタンス式ギャップセンサを配置し、磁性体の温度による透磁率の変化を検出する真空ポンプにおいて図1または図2に示すように同一材料の磁性体を小片に分割し、並べて配置することにより、モニタ機能の感度を下げることなく、各磁性体に生じる応力を分散することができる。これにより磁性体の破損を防ぐことができる。
ところで本発明はこの回転体の温度測定にかかるものであるが、温度測定の対象となる回転体の具体的実施態様については、本発明はつぎの3つの例を挙げる。
第1は「回転軸」である。より具体的には、回転軸に一体的に形成されたフランジである。このフランジは回転軸の頂部に一体的に設けられるのが一般的である。
第2は「ロータ」である。このロータは回転軸の上方に架設された回転枠体でターボ機構が設置され、さらにはハイブリッド型ターボ分子ポンプの場合は図示例に示されるとおりねじ溝ポンプを構成する円筒体もこの「ロータ」に含まれる。
第3は「回転軸に結合された円盤状体」である。すなわち回転軸に結合または、接合された円盤状体である。結合または接合の仕方としては回転軸と円盤状体をネジにて結合する方法あるいは互いの接合面に凹凸部を形成してこの凹凸部を組み合わせる方法や嵌合などが挙げられる。
本発明が特許請求の範囲で特定するこれら「回転軸」と「ロータ」および「回転軸に結合された円盤状体」は上記のとおり解釈するものとする。
以下、図面に示す実施例にしたがって本発明の構造を説明する。
図1は本発明による第1の実施例を示す図で、磁性体M1〜M3は3体に分割された四角矩形体の小片に形成され、回転軸3に一体的に形成されたフランジ3Pの凹部3Kに固設されている。この分割体化によって応力が低減できる。これら各四角矩形体の磁性体M1〜M3はそれぞれがフランジ3Pの回転中心から等距離に位置するよう円弧状に配設されるのが望ましい。なお、磁性体M1〜M3の大きさの一例を示すと一辺が数mm程度の矩形体である。なお、図1において図(B)は正面を示す図(A)をZZ面から見た図である。
本発明による第2の実施例は図2に示すとおりで、分割された各磁性体M4〜M6は円筒状をなしており、さらに応力を低減することができる。なお、図2において図(B)は正面を示す図(A)をZZ面から見た図である。各磁性体M4とM5、M5とM6の取り付け位置、および各磁性体M4〜M6間の接触する部分が1点となることにより径の大きい凹の外側の壁面による歪みの影響を低減し、応力がさらに低減することできる。なお、第2の実施例における磁性体M4〜M6の直径の大きさの一例を示すと数mm程度である。この第2の実施例の磁性体M4〜M6が固設される対象はフランジ3Pまたは円盤状体あるいは後述する第3の実施例に示すロータなどである。
本発明による第3の実施例は前記磁性体M4〜M6が固設される対象の回転体に関するものである。上記実施例では回転体は回転軸すなわち回転軸に一体的に形成されたフランジ3Pであるが、第3の実施例は図3に示すとおりである。第3の実施例は図3から明らかなとおり、ロータ2に磁性体M1が固設されている。この磁性体M1は上述した磁性体M4の形態でもよい。図示例では回転軸3に一体的に取り付けられたフランジ3Pには貫通孔3Hが穿設され、その上方のロータ2の部位に凹部2Kが形成されている。そして磁性体M1(あるいはM4)がこの凹部2Kの天井側に固設されている。そしてこの磁性体M1に対応して固定側であるベース4と一体の側にギャップセンサGSが設置されている。なお図3において図9と同一の符号で示される部位は図9と同一の機能を有するものであり詳細な説明は省略する。
本発明による第4の実施例は回転軸3に固設された円盤状体に磁性体M1〜M3を取り付ける実施例である。この実施例は図4に示すとおりで、(A)は正面図であり(B)が図(A)をZZ方向から見た図である。図において円盤状体3Bはボス部3Wを介して溶接などにより回転軸3に固定されている。なお、図4において4はベースである。
本発明が提供する真空ポンプにおける回転体の非接触形温度測定装置の構造は上記したとおりであるが、本発明は上記ならびに図示例に限定されるものではなく、種々の変形例を包含するものである。
たとえば、磁性体を単数もしくは温度依存性の異なる複数種類の磁性体で構成することもできる。さらに磁性体を粉体とし、取り付け位置にてこれをエポキシ樹脂と混合させた小片体とすることにより磁性体が破損し、飛散することを防ぐことができる。また小片の磁性体を固設する個数も図示例のように3個に限定されるものではなく、4個以上あるいは2個以下でもよい。本発明はこれら種々の変形例を包含する。
1 コントローラ
1C モータ駆動制御部
1K 警報部
1M 磁気軸受駆動制御部
1S 検出部
2 ロータ
2K 凹部
3 回転軸
3B 円盤状体
3H 貫通孔
3K 凹部
3P フランジ
3W ボス部
4 ベース
5 ラジアル変位センサ
6 ラジアル変位センサ
7 アキシャル変位センサ
8 電磁石
9 電磁石
10 電磁石
11 ディスク
12 ナット
13 磁性体ターゲット
14 磁性体ターゲット
15 ギャップセンサ
16 吸気口
17 ケーシング
18 モータ
19 排気口
20 玉軸受
ET 円筒部
GS ギャップセンサ
H 亀裂
M 磁性体
M1 磁性体
M2 磁性体
M3 磁性体
M4 磁性体
M5 磁性体
M6 磁性体
NP ネジ溝ポンプ
NS ネジステータ
P スペーサ
SP 空間
R 回転翼
S 固定翼
ST 小径軸
TK ターボ機構
TP ターボ分子ポンプ

Claims (7)

  1. 回転にて真空ポンプ機能を有する回転体の一部であって、該回転体の回転軸に直交する面内に設けた1つの凹部に磁性体を固設するとともに、前記磁性体に対向するように真空ポンプの固定部側に前記磁性体の温度変化によるインダクタンス変化を検出するインダクタンス式ギャップセンサを配置し、磁性体の温度による透磁率の変化を検出するよう構成された真空ポンプにおいて、前記回転体に取り付ける磁性体を小片に分割し前記1つの凹部に固設したことを特徴とする真空ポンプ。
  2. 回転体の一部が回転軸に一体的に形成されたフランジであることを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ。
  3. 回転体の一部が回転軸の上方に架設されたロータであることを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ。
  4. 回転体の一部が回転軸に結合された円盤状体であることを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ。
  5. 回転体に取り付ける磁性体の形状を円筒型に形成したことを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ。
  6. 回転体に取り付ける磁性体が磁性体の粉体とエポキシ等の樹脂とを混合、成形したものであることを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ。
  7. 磁性体を単数または温度依存性の異なる複数種類の磁性体で構成したことを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3または請求項4記載の真空ポンプ。
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