JP5194217B2 - 化成皮膜の仕上げ剤およびその製造方法 - Google Patents
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Description
炭素数が4以下のジカルボン酸およびヒドロシキジカルボン酸、それらのイオンならびにそれらのイオンを含む塩および配位化合物から選ばれる1種または2種以上からなる水溶性物質である水溶性ジカルボン酸化合物を仕上げ剤に含有させることによって、亜鉛を含む成分を含有させなくとも耐溶出性を向上させることができる。
群から選ばれる少なくとも1種を含有し、水溶性3価クロム含有物質のクロム換算モル濃
度、水溶性アルミニウム含有物質のアルミニウム換算モル濃度および水溶性ジルコニウム
含有物質のジルコニウム換算モル濃度の合計の水溶性リン酸系化合物のリン換算モル濃度
に対する比率(TM/P比)が0.5以上1.5以下であること、および水溶性リン酸系化合物のリン酸換算モル濃度に対する水溶性3価クロム含有物質の3価クロム換算モル濃度の比率が0.2以上以下であること。
(1)水溶性3価クロム含有物質
本発明に係る仕上げ剤は水溶性3価クロム含有物質を含有する。水溶性3価クロム含有物質は、3価クロム(Cr3+)およびこれを含有する水溶性物質からなる群から選ばれる1種または2種以上からなる。3価クロムを含有する水溶性物質として、[Cr(H2O)6]3+が例示される。
本発明に係る仕上げ剤は水溶性リン酸系化合物を含有する。水溶性リン酸系化合物は、オルトリン酸および縮合リン酸、それらのイオン、ならびにそれらのイオンを含む塩および配位化合物からなる群から選ばれる1種または2種以上の水溶性物質からなる。ここで、縮合リン酸は、ポリリン酸(一般式:Mn+2PnO3n+1、ただしnは2以上の整数)、メタリン酸(一般式:(HPO3)n、ただしnは3以上の整数)およびウルトラリン酸(一般式:xH2O・yP2O5、ただし0<x/y<1)の総称である。水溶性リン酸系化合物は一種類の化合物から構成されていてもよいし、複数集類の化合物から構成されていてもよい。水溶性リン酸系化合物が縮合リン酸を備える場合には、取扱いのし易さから、縮合リン酸はポリリン酸および/またはメタリン酸であることが好ましい。水溶性リン酸系化合物が塩または配位化合物である場合における当該化合物に含有される陽イオンは限定されない。ナトリウムイオンおよびカリウムイオンが例示される。
本発明に係る仕上げ剤は、有機酸、そのイオンならびにそのイオンを含む塩および配位化合物から選ばれる1種または2種以上の水溶性物質からなる水溶性有機酸化合物を含有する。水溶性有機酸化合物に係る有機酸の一例としてカルボン酸が挙げられ、具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等のモノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸;トリカルバリル酸等のトリカルボン酸;グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸等のヒドロキシカルボン酸;およびグリシン、アラニン等のアミノカルボン酸が例示される。水溶性有機酸化合物に係る有機酸は一種類から構成されていてもよいし、複数種類から構成されていてもよい。水溶性有機酸化合物は、有機酸として仕上げ剤に配合されてもよいし、その塩や誘導体(例えばエステル)として配合されてもよい。水溶性有機酸化合物が塩または配位化合物である場合における当該化合物に含有される陽イオンは限定されない。ナトリウムイオンおよびカリウムイオンが例示される。
本発明では、別の一態様として、本発明に係る仕上げ剤から得られる仕上皮膜における耐溶出性を向上させるために、本発明に係る仕上げ剤に水溶性アルミニウム含有物質および水溶性ジルコニウム含有物質からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有させる。水溶性アルミニウム含有物質は、アルミニウムイオンおよびこれを含有する水溶性物質からなる群から選ばれる1種または2種以上からなる。水溶性ジルコニウム含有物質は、ジルコニウムイオンおよびこれを含有する水溶性物質からなる群から選ばれる1種または2種以上からなる。
本発明に係る仕上げ剤は、仕上皮膜のマトリックス成分、換言すればバインダー成分となる成分(マトリックス形成成分)として有機系材料を含有する。有機系材料は水溶性高分子化合物および/または水分散性高分子化合物であることが好ましい。そのような有機系材料として、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体、エチレンとアクリル酸、アクリルレート等のアクリル系単量体との共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、ポリウレタン、アミノ変性フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、タンニン、ならびにタンニン酸およびその塩が例示される。有機系材料は、上記の高分子化合物を構成可能な単量体および/またはオリゴマーならびに重合開始剤を備えていてもよい。マトリックス形成成分は一種類の化合物から構成されていてもよいし、複数種類の化合物から構成されていてもよい。マトリックス形成成分がこれらの中でもポリビニルアルコールを含有することが耐疵性の観点から好ましい。
本発明に係る仕上げ剤は上記の成分のほかに、次の成分を含有してもよい:
水溶性金属含有物質(仕上げ剤中に溶解された状態にある金属を含む物質であって、上記の水溶性クロム含有物質、水溶性アルミニウム含有物質、および水溶性ジルコニウム含有物質以外の物質)、界面活性剤(例えばポリオール)、無機系マトリックス形成成分(例えばコロイダルシリカ)、顔料、染料、色素生成剤(例えば金属色素生成剤)、腐食抑制剤、潤滑材料(例えばワックス)、乾燥剤、分散剤、硫黄含有物質および窒素含有物質。以下、これらの成分を「その他の成分」と総称する。
本発明に係る仕上げ剤は水性組成物であり、そのpHは5以上7以下とすることが好ましい。pHが5よりも過度に低い場合には化成皮膜を過度に溶解させることが懸念される。pHが7よりも過度に高い場合には仕上げ剤の安定性が低下し、仕上皮膜の品質が低下することが懸念される。特に好ましいpHの範囲は5.0以上7.0以下である。
本発明に係る仕上げ剤の調製方法は特に限定されない。水溶性3価クロム化合物、水溶性リン酸系化合物の供給源、水溶性有機酸化合物の供給源、およびマトリックス形成成分、ならびに必要に応じて水溶性アルミニウム含有物質の供給源、水溶性ジルコニウム含有物質の供給源および/または上述のその他の成分のそれぞれを適量計量し、これらを溶媒としての水と混合すればよい。
本発明に係る仕上皮膜を備える部材の製造方法の好ましい一例は次のとおりである。その製造方法は次に説明する接触工程および乾燥工程を備える。
その表面が化成処理された部材である処理対象部材を用意し、接触工程ではこの処理対象部材と上記の本発明に係る仕上げ剤とを接触させて、仕上げ剤の液膜をこの処理対象部材上に形成する。処理対象部材は、化成処理された表面を乾燥させる処理が施されていないもの、すなわち、化成処理が終了して、必要に応じ行われた水洗が終了した段階であることが好ましい。この場合には化成処理により形成された化成皮膜と仕上げ剤により形成された仕上皮膜との密着性が向上する。
接触工程により得られた液膜を乾燥させて仕上皮膜とする。乾燥方法は任意である。液膜を備える部材を所定の温度に加熱されたオーブン内に静置してもよいし、液膜を備える部材に加温された気体を吹付けてもよいし、遠心乾燥機を用いてもよい。あるいは、液膜を備える部材を通常環境下に静置する風乾でもよい。
本発明の取りうる態様のいくつかを実施例として以下に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
表1〜6に示される各成分を水に溶解させることによって、複数種類の仕上げ剤を調製した。得られた仕上げ剤のpHはいずれも5.0であった。なお、表6に示される仕上げ剤No.37〜44については、有機酸化合物として二種類の有機酸を含有させた。また、表中の含有量の欄に示される数値は各成分の仕上げ剤中の含有量であり、水溶性金属含有物質における含有量はその物質に含まれる金属換算モル濃度である。
常法に従って電気亜鉛めっきが施されたM10ボルト(表面積50cm2)に対して、硝酸浸漬(67.5%硝酸3ml/L、液温は常温、浸漬時間10秒間)を行うことで表面を活性化させた。この試験部材をさらに常温で10秒間水洗した後、40℃に維持されpHが2.0の化成処理液(ユケン工業株式会社製YFB−NA7,YFB−NB7およびYFB−NC7を当該製品の基本条件に基づき建浴したもの)に40秒間浸漬させた。
(1)耐溶出性
上記の方法により得た試験部材のそれぞれについて、次の方法により仕上皮膜に含まれるクロム含有量を測定した。
別途、上述の条件で化成皮膜のみが形成された試験部材を用意し、この試験部材についても上記の方法で化成皮膜の溶解およびCr濃度の測定を行った。こうして得られたCr濃度から化成皮膜に含有されるCr量(単位:mg)を求めた。
Re=試験用塩水に溶解したCr量/(仕上皮膜および化成皮膜に含有されるCr量−化成皮膜に含有されるCr量)×100
上記の方法により得た試験部材のそれぞれを目視で観察し、次の評価基準で外観を評価した。
1(製品として使用不可):全面無光沢である、または薄灰色である
2(製品として使用可能):部分的に光沢を有し、灰色である
3(良い):部分的に光沢を有し、濃灰色から黒である
4(優れる):ほぼ全面光沢であり、黒味が強くほぼ漆黒である
5(特に優れる):全面にわたり光沢があり漆黒である
評価結果を表1〜5に示す。
150ml/Lの希釈により実施例1における仕上げ剤No.24を調製することが可能な濃縮液1を作成した。
150ml/Lの希釈により実施例1における仕上げ剤No.27を調製することが可能な濃縮液2を作成した。
150ml/Lの希釈により実施例1における仕上げ剤No.28を調製することが可能な濃縮液3を作成した。
濃縮液1〜3を40℃に保持した恒温槽に14日間保持して、濃縮液1a,2a,および3aを得た。
濃縮液1については、40℃に保持した恒温槽に21日間保持して濃縮液1bも得た。
表7に上記の結果をまとめて示す。
Claims (6)
- その表面が6価クロムフリーであって3価クロムを含有する化成処理された部材である処理対象部材上に仕上皮膜を形成するための仕上げ剤であって、
オルトリン酸および縮合リン酸、それらのイオン、ならびにそれらのイオンを含む塩および配位化合物からなる群から選ばれる1種または2種以上の水溶性物質からなる水溶性リン酸系化合物;
有機酸、そのイオンならびにそのイオンを含む塩および配位化合物から選ばれる1種または2種以上の水溶性物質からなる水溶性有機酸化合物;
水溶性3価クロム含有物質;ならびに
マトリックス形成成分としての有機系材料を含有し、
硝酸イオンを実質的に含有せず、
さらに水溶性アルミニウム含有物質および水溶性ジルコニウム含有物質からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し、前記水溶性3価クロム含有物質のクロム換算モル濃度、前記水溶性アルミニウム含有物質のアルミニウム換算モル濃度および前記水溶性ジルコニウム含有物質のジルコニウム換算モル濃度の合計の前記水溶性リン酸系化合物のリン換算モル濃度に対する比率が0.5以上1.5以下であり、
前記水溶性有機酸化合物はクエン酸およびそのイオンの少なくとも一方を備え、
さらに前記水溶性リン酸系化合物のリン酸換算モル濃度に対する前記水溶性3価クロム含有物質の3価クロム換算モル濃度の比率が0.2以上1.0以下であること
を特徴とする仕上げ剤。 - 硫酸イオンおよび塩化物イオンの少なくとも一方を実質的に含有しない請求項1記載の仕上げ剤。
- 前記マトリックス形成成分としての有機系材料がポリビニルアルコールを含む請求項1記載の仕上げ剤。
- pHが5.0以上7.0以下である請求項1記載の仕上げ剤。
- その表面が6価クロムフリーであって3価クロムを含有する化成処理された部材である処理対象部材と請求項1から4のいずれか一項に記載される仕上げ剤とを接触させて、前記仕上げ剤の液膜を前記部材の6価クロムフリーであって3価クロムを含有する化成皮膜上に形成する接触工程、および前記接触工程により得られた液膜を乾燥させて仕上皮膜とする乾燥工程を備えることを特徴とする仕上皮膜を有する部材の製造方法。
- 前記処理対象部材は、前記6価クロムフリーであって3価クロムを含有する化成処理された表面を乾燥させる処理が施されていないものである請求項5記載の製造方法。
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