JP5194217B2 - 化成皮膜の仕上げ剤およびその製造方法 - Google Patents

化成皮膜の仕上げ剤およびその製造方法 Download PDF

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    • C23CCOATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
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Description

本発明は化成皮膜の仕上げ剤に関し、詳しくは、耐食性および外観に優れ、かつ3価クロムの溶出が抑制された仕上皮膜を形成しうる化成皮膜の仕上げ剤およびその製造方法に関する。
鉄、亜鉛、アルミニウムなど金属表面を有する部材に耐食性などを付与する観点から、金属表面を有する部材に対して化成処理を行うことが広く行われている。この化成処理により得られる化成皮膜は、従来は6価クロムを含有するいわゆるクロメート皮膜が主流であった。しかしながら、環境保護の観点からその使用は実質的に禁止され、現在では6価クロムを実質的に含有しない、すなわち6価クロムフリーである3価クロムを含有する化成皮膜(以下、「化成皮膜」と略記する。)が用いられている。
また、表面処理に求められる特性は近年特に厳しくなってきている。このため、クロメート皮膜と同等以上の耐食性を付与すべく、上記の化成皮膜が形成された部材にさらに仕上処理を行う場合も増えてきている。
この仕上処理は塗布型処理であり、次のようにして行われる。その表面が化成処理された部材(本発明において、「被処理部材」ともいう。)に仕上げ剤を接触させてその表面に仕上げ剤の液膜を形成し、この液膜が形成された部材を乾燥させて被処理部材上に仕上皮膜を形成させる。
仕上皮膜は、一般的に、皮膜のマトリックスをなす有機系材料と耐食性などを付与する無機系材料とから構成される。無機系材料として、例えばリン酸などリン酸化合物および3価クロムが使用される(例えば特許文献1)。
ところが、無機系材料がリン酸化合物と3価クロムとからなる場合には、仕上皮膜に付着した水分などにより、形成された仕上皮膜から3価クロムが溶出し、結果的に、仕上皮膜が目的とした十分な耐食性を有さないという問題があった。以下、仕上皮膜におけるこの3価クロムの溶出を抑制する能力を耐溶出性という。
このため、従来技術においては、特許文献2に開示されるように、仕上処理剤に亜鉛を添加する手段が提案されている。
特開2003−293156号公報 特開2005−023372号公報
上記の亜鉛を添加する手段は、仕上皮膜に耐溶出性を付与する点において、一応の効果が認められる。しかしながら、亜鉛を含む成分を含有させることは、次のような新たな問題を引き起こす。
すなわち、仕上げ処理剤またはその濃縮液の温度が高まったり、これらの液体が製造後ある程度の時間が経過したりすると、亜鉛が他の成分とともに結晶性の沈殿物を形成しやすくなる。この沈殿物は上記の液体の移送の障害となる。具体的には、輸送ポンプを用いて濃縮液を適宜添加することにより仕上げ処理剤の濃度の自動管理を行う場合には、輸送ポンプ停止など致命的な問題を発生させることもある。また、輸送ポンプ停止まで至らないものの、沈殿物の存在により濃縮液の供給が適正に行われなかったために仕上げ剤の組成が所定の管理範囲を外れた場合には、この仕上げ剤から得られた仕上皮膜は光沢が劣り、外観不良となってしまう。この場合には、仕上皮膜が所期の耐食性を有さなくなるという問題も生じる。
本発明はかかる現状を鑑み、従来とは全く異なる新たなアプローチで、耐食性および外観に優れるとともに高い耐溶出性を有する仕上皮膜を形成しうる化成皮膜を有する部材の仕上げ剤、その仕上げ剤の製造方法、およびその仕上げ剤から得られた仕上皮膜を有する部材を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討した結果、次の知見を得た。
炭素数が4以下のジカルボン酸およびヒドロシキジカルボン酸、それらのイオンならびにそれらのイオンを含む塩および配位化合物から選ばれる1種または2種以上からなる水溶性物質である水溶性ジカルボン酸化合物を仕上げ剤に含有させることによって、亜鉛を含む成分を含有させなくとも耐溶出性を向上させることができる。
オルトリン酸および縮合リン酸、それらのイオン、ならびにそれらのイオンを含む塩および配位化合物からなる群から選ばれる1種または2種以上の水溶性物質からなる水溶性リン酸系化合物のリン換算モル濃度に対する、水溶性3価クロム含有物質(本発明において、仕上げ剤中に溶解された状態にある3価クロムを含む物質を意味する。)のクロム換算モル濃度の比率(以下、「Cr/P比」ともいう。)を0.5以上として、仕上げ剤に含まれる水溶性リン酸系化合物の含有量を相対的に低下させることによって、亜鉛を含む成分を含有させることなく耐溶出性を向上させることができる。
水溶性アルミニウム含有物質(本発明において、仕上げ剤中に溶解された状態にあるアルミニウムイオンを含む物質を意味する。)および水溶性ジルコニウム含有物質(本発明において、仕上げ剤中に溶解された状態にあるジルコニウムイオンを含む物質を意味する。)からなる群から選ばれる1種または2種以上を仕上げ剤に含有させ、かつ、水溶性3価クロム含有物質のクロム換算モル濃度、水溶性アルミニウム含有物質のアルミニウム換算モル濃度、および水溶性ジルコニウム含有物質のジルコニウム換算モル濃度の合計の水溶性リン酸系化合物のリン換算モル濃度に対する比率(以下、「TM/P比」ともいう。)を0.5以上とすることによって、亜鉛を含む成分を含有させることなく耐溶出性を向上させることができる。
上記水溶性アルミニウム含有物質および/または水溶性ジルコニウム含有物質を仕上げ剤に含有させることにより、得られた仕上皮膜の外観を特に向上させることができる。
上記の知見に基づき提供される本発明の一態様は、その表面が6価クロムフリーであって3価クロムを含有する化成処理された部材である被処理部材上に仕上皮膜を形成するための仕上げ剤であって、オルトリン酸および縮合リン酸、それらのイオン、ならびにそれらのイオンを含む塩および配位化合物からなる群から選ばれる1種または2種以上の水溶性物質からなる水溶性リン酸系化合物;有機酸、そのイオンならびにそのイオンを含む塩および配位化合物から選ばれる1種または2種以上の水溶性物質からなる水溶性有機酸化合物;水溶性3価クロム含有物質;ならびにマトリックス形成成分としての有機系材料を含有し、硝酸イオンを実質的に含有しない。さらに、この仕上げ剤は、水溶性有機酸化合物がクエン酸およびそのイオンの少なくとも一方を備えること、および次の要件を満たす。
さらに水溶性アルミニウム含有物質および水溶性ジルコニウム含有物質からなる
群から選ばれる少なくとも1種を含有し、水溶性3価クロム含有物質のクロム換算モル濃
度、水溶性アルミニウム含有物質のアルミニウム換算モル濃度および水溶性ジルコニウム
含有物質のジルコニウム換算モル濃度の合計の水溶性リン酸系化合物のリン換算モル濃度
に対する比率(TM/P比)が0.5以上1.5以下であること、および水溶性リン酸系化合物のリン酸換算モル濃度に対する水溶性3価クロム含有物質の3価クロム換算モル濃度の比率が0.2以上以下であること
ここで、仕上げ剤がある成分を実質的に含有しないとは、仕上げ剤中の当該成分の含有量が十分に低く、その成分を含有させたことに基づく顕著な特性変化が、その仕上げ剤やその仕上げ剤からなる仕上皮膜に発生しないことを意味する。
上記の仕上げ剤は硫酸イオンおよび塩化物イオンの少なくとも一方、好ましくは両方を実質的に含有しないことが好ましい。また、pHは5.0以上7.0以下の範囲であることが好ましい。
上記の仕上げ剤におけるマトリックス形成成分としての有機系材料がポリビニルアルコールを含んでもよい。
本発明の別の一態様は、仕上皮膜を有する部材の製造方法であって、当該方法は、その表面が6価クロムフリーであって3価クロムを含有する化成処理された部材である処理対象部材と上記の本発明に係る仕上げ剤とを接触させて、仕上げ剤の液膜を被処理部材の6価クロムフリーであって3価クロムを含有する化成皮膜上に形成する接触工程、および接触工程により得られた液膜を乾燥させて仕上皮膜とする乾燥工程を備える。
上記の製造方法における処理対象部材は、6価クロムフリーである3価クロムを含有する化成処理された表面を乾燥させる処理が施されていないものであることが好ましい。
本発明に係る仕上げ処理剤を用いることにより、耐溶出性に優れた仕上皮膜を、生産性や品質が低下するリスクを回避した状態で提供することが達成される。また、水溶性アルミニウム含有物質および/または水溶性ジルコニウム含有物質を仕上げ剤に含有させる場合には、得られた仕上皮膜の外観を特に向上させることができる。
なお、本発明による効果、特に外観を向上させる効果は、一次加工品(板材や棒材など)よりも、二次加工品(一次加工品に機械加工などを行うことにより比較的複雑な形状を付与されたものであって、ボルト、ナット、打ち抜き加工品などが例示される。)の方が顕著に得られる。
本発明に係る仕上げ剤の成分およびその製造方法ならびにその仕上げ剤から得られる仕上皮膜を有する部材の製造方法を説明する。
1.仕上げ剤
(1)水溶性3価クロム含有物質
本発明に係る仕上げ剤は水溶性3価クロム含有物質を含有する。水溶性3価クロム含有物質は、3価クロム(Cr3+)およびこれを含有する水溶性物質からなる群から選ばれる1種または2種以上からなる。3価クロムを含有する水溶性物質として、[Cr(HO)3+が例示される。
水溶性3価クロム含有物質を化成処理液に含有させるために配合される物質、つまり水溶性3価クロム含有物質の供給源として、水中で3価クロム含有物質を生成することが可能な水溶性化合物(以下「水溶性3価クロム化合物」という。)を用いることが好ましい。
水溶性3価クロム化合物を例示すれば、塩化クロム、硫酸クロム、リン酸クロム、酢酸クロム等の3価クロム塩の他、クロム酸や重クロム酸塩等の6価クロム化合物を還元剤により3価に還元した化合物が挙げられる。水溶性3価クロム化合物は1種類の化合物のみで構成されていてもよいし、複数種類の化合物から構成されていてもよい。なお、本発明に係る仕上げ剤に対して6価クロム化合物が原材料として積極的に添加されていないため、本発明に係る仕上げ剤は6価クロムを実質的に含有していない。
好ましい水溶性3価クロム化合物はリン酸クロムであり、リン酸クロムのみを水溶性3価クロム化合物とすることが特に好ましい。そのようにすることで、仕上げ剤は硝酸イオン、硫酸イオン、および塩化物イオンを実質的に含有しないようにすることが実現される。係る仕上げ剤は、仕上皮膜内にこれらのイオンが含有されないため、耐食性に優れる。
水溶性3価クロム化合物の含有量は、求める仕上皮膜の特性に応じて設定すればよい。一例を挙げれば0.1g/L以上30g/L以下である。経済性の観点や廃液処理の観点も考慮すれば、20g/L程度を上限とすることが好ましい。特に好ましい水溶性3価クロム化合物の含有量は0.5g/L以上15g/L以下である。
(2)水溶性リン酸系化合物
本発明に係る仕上げ剤は水溶性リン酸系化合物を含有する。水溶性リン酸系化合物は、オルトリン酸および縮合リン酸、それらのイオン、ならびにそれらのイオンを含む塩および配位化合物からなる群から選ばれる1種または2種以上の水溶性物質からなる。ここで、縮合リン酸は、ポリリン酸(一般式:Mn+23n+1、ただしnは2以上の整数)、メタリン酸(一般式:(HPO、ただしnは3以上の整数)およびウルトラリン酸(一般式:xHO・、ただし0<x/y<1)の総称である。水溶性リン酸系化合物は一種類の化合物から構成されていてもよいし、複数集類の化合物から構成されていてもよい。水溶性リン酸系化合物が縮合リン酸を備える場合には、取扱いのし易さから、縮合リン酸はポリリン酸および/またはメタリン酸であることが好ましい。水溶性リン酸系化合物が塩または配位化合物である場合における当該化合物に含有される陽イオンは限定されない。ナトリウムイオンおよびカリウムイオンが例示される。
水溶性リン酸系化合物の含有量は、求める仕上皮膜の特性に応じて設定すればよい。一例を挙げれば0.1g/L以上50g/L以下である。経済性の観点や廃液処理の観点も考慮すれば、40g/L程度を上限とすることが好ましい。特に好ましい水溶性リン酸系化合物の含有量は1g/L以上25g/L以下である。
本発明では、一態様として、本発明に係る仕上げ剤から得られる仕上皮膜における耐溶出性を向上させるために、水溶性3価クロム含有物質のクロム換算モル濃度の水溶性リン酸系化合物のリン換算モル濃度に対する比率(Cr/P比)を0.5以上とする。以下、Cr/P比を特定の範囲とすることにより仕上皮膜の耐溶出性を向上させる上記の手段を「手段1」という。Cr/P比の上限は耐溶出性を向上させる観点からは設定されない。Cr/P比が過度に高い場合には仕上げ皮膜の外観が低下する可能性が高まることが懸念されるため、Cr/P比は1.0以下とすることが好ましい。
(3)水溶性有機酸化合物
本発明に係る仕上げ剤は、有機酸、そのイオンならびにそのイオンを含む塩および配位化合物から選ばれる1種または2種以上の水溶性物質からなる水溶性有機酸化合物を含有する。水溶性有機酸化合物に係る有機酸の一例としてカルボン酸が挙げられ、具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等のモノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸;トリカルバリル酸等のトリカルボン酸;グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸等のヒドロキシカルボン酸;およびグリシン、アラニン等のアミノカルボン酸が例示される。水溶性有機酸化合物に係る有機酸は一種類から構成されていてもよいし、複数種類から構成されていてもよい。水溶性有機酸化合物は、有機酸として仕上げ剤に配合されてもよいし、その塩や誘導体(例えばエステル)として配合されてもよい。水溶性有機酸化合物が塩または配位化合物である場合における当該化合物に含有される陽イオンは限定されない。ナトリウムイオンおよびカリウムイオンが例示される。
水溶性有機酸化合物の合計含有量は、仕上げ剤のpHを5以上7以下の範囲とすることができるように設定すればよい。一例を挙げれば1.0g/L以上100.0g/L以下である。経済性の観点や廃液処理の観点も考慮すれば、80.0g/L程度を上限とすることが好ましい。特に好ましい水溶性有機酸化合物の含有量は5.0g/L以上60.0g/L以下である。
本発明では、他の一態様として、本発明に係る仕上げ剤から得られる仕上皮膜における耐溶出性を向上させるために、水溶性有機酸化合物が、炭素数が4以下のジカルボン酸およびヒドロシキジカルボン酸、それらのイオンならびにそれらのイオンを含む塩および配位化合物から選ばれる1種または2種以上からなる水溶性物質である水溶性ジカルボン酸化合物を備える。以下、水溶性有機酸化合物が水溶性ジカルボン酸化合物を備えることにより仕上皮膜の耐溶出性を向上させる上記の手段を「手段2」という。
ここで、手段1と手段2とは併用してもよいし、手段1のみまたは手段2のみとしてもよい。すなわち、手段1により耐溶出性を向上させる場合には水溶性有機酸化合物は水溶性ジカルボン酸化合物を備えなくともよく、手段2により耐溶出性を向上させる場合にはCr/P比は0.5未満であってもよい。
ジカルボン酸化合物の具体例として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、メチルマロン酸、リンゴ酸、イソリンゴ酸、タルトロン酸、酒石酸、ヒドロキシフマル酸、ジヒドロキシフマル酸、ヒドロキシマレイン酸、およびジヒドロキシマレイン酸ならびにこれらのイオンが例示される。これらの中でも、水溶性ジカルボン酸化合物が、シュウ酸、マロン酸およびリンゴ酸、それらのイオンならびにそれらのイオンを含む塩および配位化合物から選ばれる1種または2種以上の水溶性物質からなることが好ましい。
水溶性有機酸化合物における水溶性ジカルボン酸化合物の合計含有量は、特に限定されない。一例を挙げれば0.1g/L以上90.0g/L以下である。経済性の観点や廃液処理の観点も考慮すれば、80.0g/L程度を上限とすることが好ましい。特に好ましい水溶性ジカルボン酸化合物の含有量は5.0g/L以上60.0g/L以下である。
また、手段2を採用し水溶性ジカルボン酸化合物を含有させる場合であっても、水溶性ジカルボン酸化合物以外の有機酸を含む水溶性物質を含有させてもよい。
(4)水溶性アルミニウム含有物質および水溶性ジルコニウム含有物質
本発明では、別の一態様として、本発明に係る仕上げ剤から得られる仕上皮膜における耐溶出性を向上させるために、本発明に係る仕上げ剤に水溶性アルミニウム含有物質および水溶性ジルコニウム含有物質からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有させる。水溶性アルミニウム含有物質は、アルミニウムイオンおよびこれを含有する水溶性物質からなる群から選ばれる1種または2種以上からなる。水溶性ジルコニウム含有物質は、ジルコニウムイオンおよびこれを含有する水溶性物質からなる群から選ばれる1種または2種以上からなる。
水溶性アルミニウム含有物質および/または水溶性ジルコニウム含有物質を含有させる場合には、水溶性3価クロム含有物質のクロム換算モル濃度、水溶性アルミニウム含有物質のアルミニウム換算モル濃度および水溶性ジルコニウム含有物質のジルコニウム換算モル濃度の合計の水溶性リン酸系化合物のリン換算モル濃度に対する比率(TM/P比)を0.5以上とする。以下、水溶性アルミニウム含有物質および/または水溶性ジルコニウム含有物質を含有させるとともにTM/P比を特定の範囲とすることにより仕上皮膜の耐溶出性を向上させる上記の手段を「手段3」という。手段3に係る仕上げ剤から得られる仕上皮膜は光沢が高く、被処理部材に対して行われた化成処理が黒色の化成皮膜を形成するため処理(黒色化成処理)である場合には、漆黒に近い優れた外観を有する部材を得ることが実現される。すなわち、手段3は仕上皮膜を備える部材の外観を向上させるという観点からも好ましい。
ここで、手段3は手段1および/または2と併用してもよいし、手段3のみとしてもよい。
TM/P比の上限は耐溶出性を向上させる観点からは設定されない。TM/P比が過度に高い場合には相対的に水溶性リン酸系化合物の含有量が過度に低下してしまい、耐食性が低下する可能性が高まることが懸念されるため、TM/P比は1.5以下とすることが好ましい。
手段3を採用する場合には、Cr/P比は0.2以上とすることが好ましい。Cr/P比をこの範囲とすることにより、相対的に水溶性3価クロム含有物質の含有量が過度に低下してしまい、耐食性が低下する可能性が特に少なくなる。
手段3を採用する場合には、水溶性有機酸化合物はクエン酸およびそのイオンの少なくとも一方を備えることが好ましい。仕上げ剤がクエン酸および/またはそのイオンを含むことにより、水溶性アルミニウム含有物質および/または水溶性ジルコニウム含有物質の仕上げ剤中の安定性が高まる。
(5)マトリックス形成成分
本発明に係る仕上げ剤は、仕上皮膜のマトリックス成分、換言すればバインダー成分となる成分(マトリックス形成成分)として有機系材料を含有する。有機系材料は水溶性高分子化合物および/または水分散性高分子化合物であることが好ましい。そのような有機系材料として、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体、エチレンとアクリル酸、アクリルレート等のアクリル系単量体との共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、ポリウレタン、アミノ変性フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、タンニン、ならびにタンニン酸およびその塩が例示される。有機系材料は、上記の高分子化合物を構成可能な単量体および/またはオリゴマーならびに重合開始剤を備えていてもよい。マトリックス形成成分は一種類の化合物から構成されていてもよいし、複数種類の化合物から構成されていてもよい。マトリックス形成成分がこれらの中でもポリビニルアルコールを含有することが耐疵性の観点から好ましい。
マトリックス形成成分の仕上げ剤中の含有量は限定されない。仕上皮膜の厚さや仕上皮膜に求められる機械的強度などを勘案して適宜設定される。一例を挙げれば0.1g/L以上10.0g/L以下である。経済性の観点や廃液処理の観点も考慮すれば、8.0g/L程度を上限とすることが好ましい。特に好ましいマトリックス形成成分の含有量は0.1g/L以上5.0g/L以下である。
(6)その他の成分
本発明に係る仕上げ剤は上記の成分のほかに、次の成分を含有してもよい:
水溶性金属含有物質(仕上げ剤中に溶解された状態にある金属を含む物質であって、上記の水溶性クロム含有物質、水溶性アルミニウム含有物質、および水溶性ジルコニウム含有物質以外の物質)、界面活性剤(例えばポリオール)、無機系マトリックス形成成分(例えばコロイダルシリカ)、顔料、染料、色素生成剤(例えば金属色素生成剤)、腐食抑制剤、潤滑材料(例えばワックス)、乾燥剤、分散剤、硫黄含有物質および窒素含有物質。以下、これらの成分を「その他の成分」と総称する。
ここで、水溶性金属含有物質は亜鉛を含む成分、すなわち、水溶性亜鉛含有物質を含んでもよい。仕上げ処理が施される処理対象部材は化成処理が施された部材であり、その部材における化成処理された表面が亜鉛系のめっきからなる場合もある。このような場合には、化成処理のための処理液中には、亜鉛系めっきに由来する水溶性亜鉛含有物質が含まれており、この水溶性亜鉛含有物質が化成処理後の水洗を経ても処理対象部材の表面に残留していることもある。このため、処理数が増えた仕上げ剤には、若干量の水溶性亜鉛含有物質が含まれている場合がある。この場合における水溶性亜鉛含有物質の含有量は処理履歴により変動するが、亜鉛換算で1g/L(15mmol/L)程度となるときもある。しかしながら、この程度の含有量であれば、仕上げ剤が亜鉛を含有することに基づく耐溶出性向上の効果が顕在化する可能性は低い。一方、この程度の含有量の場合に前述のような亜鉛を含む沈殿物が形成される可能性も低い。したがって、亜鉛換算で1g/L程度の水溶性亜鉛含有物質が含まれていても、本発明にとって実質的に影響はない。
その他の成分の含有量は限定されない。上述の手段1〜3による仕上皮膜の耐溶出性を高める作用を著しく阻害しない限り、必要に応じて適宜設定すればよい。
(7)pH
本発明に係る仕上げ剤は水性組成物であり、そのpHは5以上7以下とすることが好ましい。pHが5よりも過度に低い場合には化成皮膜を過度に溶解させることが懸念される。pHが7よりも過度に高い場合には仕上げ剤の安定性が低下し、仕上皮膜の品質が低下することが懸念される。特に好ましいpHの範囲は5.0以上7.0以下である。
2.仕上げ剤の調製方法
本発明に係る仕上げ剤の調製方法は特に限定されない。水溶性3価クロム化合物、水溶性リン酸系化合物の供給源、水溶性有機酸化合物の供給源、およびマトリックス形成成分、ならびに必要に応じて水溶性アルミニウム含有物質の供給源、水溶性ジルコニウム含有物質の供給源および/または上述のその他の成分のそれぞれを適量計量し、これらを溶媒としての水と混合すればよい。
別の手段として、上記の仕上げ剤に含有される成分の少なくとも一つを仕上げ剤における含有量の4〜20倍程度に濃縮した濃縮液をあらかじめ用意しておき、これを適切な倍率で希釈することによって仕上げ剤を調製してもよい。
水溶性3価クロム含有物質の供給源(すなわち水溶性3価クロム化合物)かつ水溶性リン酸系化合物の供給源としてリン酸クロム水溶液(リン酸クロムとリン酸との混合物を溶質とする水溶液)を用いることが好ましい。水溶性3価クロム化合物としてリン酸クロム以外の化合物を用いると、仕上皮膜に3価クロムのカウンターイオン、例えば塩化物イオン、硝酸イオンなどが含有されることになる。これらのアニオンは仕上皮膜の耐食性を低下させる因子として機能するおそれがある。
同様の理由により、手段3に係る仕上げ剤を製造する場合には、水溶性アルミニウム含有物質の供給源としてリン酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、および/または水酸化アルミニウムリン酸が好ましく、水溶性ジルコニウム含有物質の供給源としてリン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニルアンモニウム、酸化ジルコニウム、および/または水酸化ジルコニウムを使用することが好ましい。
なお、一般的に最も簡便に入手可能なリン酸クロム水溶液は、含有されるリン酸分のリン換算モル数が3価クロムのモル数の3倍、すなわち、Cr/P比が0.33である。したがって、このリン酸クロム水溶液を用いて手段1に係る仕上げ剤を製造する場合には、Cr/P比を高めるためにリン酸クロム以外の水溶性3価クロム化合物を配合する必要がある。そのような場合には3価クロムのカウンターイオンが仕上皮膜に含有されてしまう。そこで、手段1に係る仕上げ剤を製造する場合には、含有されるリン酸分のモル数が3価クロムのモル数の2倍以下となるリン酸クロム水溶液を用いることが好ましい。
3.仕上皮膜を備える部材の製造方法
本発明に係る仕上皮膜を備える部材の製造方法の好ましい一例は次のとおりである。その製造方法は次に説明する接触工程および乾燥工程を備える。
(1)接触工程
その表面が化成処理された部材である処理対象部材を用意し、接触工程ではこの処理対象部材と上記の本発明に係る仕上げ剤とを接触させて、仕上げ剤の液膜をこの処理対象部材上に形成する。処理対象部材は、化成処理された表面を乾燥させる処理が施されていないもの、すなわち、化成処理が終了して、必要に応じ行われた水洗が終了した段階であることが好ましい。この場合には化成処理により形成された化成皮膜と仕上げ剤により形成された仕上皮膜との密着性が向上する。
接触工程における仕上げ剤の温度は任意である。接触方法は特に限定されず、化成皮膜が形成された部材を本発明に係る仕上げ剤に浸漬させたり、その部材に仕上げ剤をスプレー噴霧させたりすればよい。仕上げ剤の液膜の厚さは、求める仕上皮膜の厚さに応じて適宜設定される。
(2)乾燥工程
接触工程により得られた液膜を乾燥させて仕上皮膜とする。乾燥方法は任意である。液膜を備える部材を所定の温度に加熱されたオーブン内に静置してもよいし、液膜を備える部材に加温された気体を吹付けてもよいし、遠心乾燥機を用いてもよい。あるいは、液膜を備える部材を通常環境下に静置する風乾でもよい。
(実施例1)
本発明の取りうる態様のいくつかを実施例として以下に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
1.評価用仕上げ剤の調整
表1〜6に示される各成分を水に溶解させることによって、複数種類の仕上げ剤を調製した。得られた仕上げ剤のpHはいずれも5.0であった。なお、表6に示される仕上げ剤No.37〜44については、有機酸化合物として二種類の有機酸を含有させた。また、表中の含有量の欄に示される数値は各成分の仕上げ剤中の含有量であり、水溶性金属含有物質における含有量はその物質に含まれる金属換算モル濃度である。
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2.試験部材の準備
常法に従って電気亜鉛めっきが施されたM10ボルト(表面積50cm)に対して、硝酸浸漬(67.5%硝酸3ml/L、液温は常温、浸漬時間10秒間)を行うことで表面を活性化させた。この試験部材をさらに常温で10秒間水洗した後、40℃に維持されpHが2.0の化成処理液(ユケン工業株式会社製YFB−NA7,YFB−NB7およびYFB−NC7を当該製品の基本条件に基づき建浴したもの)に40秒間浸漬させた。
化成処理液から引き上げた部材を、水洗(常温、10秒間)したのち、上記の方法により調製された40℃の仕上げ剤に5秒間浸漬させ、引き上げた部材を遠心乾燥機にて80℃で5分間乾燥させることによって、化成皮膜上にさらに仕上皮膜を備える試験部材を得た。
3.評価方法
(1)耐溶出性
上記の方法により得た試験部材のそれぞれについて、次の方法により仕上皮膜に含まれるクロム含有量を測定した。
試験部材を0.5mol/LのHCL水溶液70mlに浸漬させて、仕上皮膜および化成皮膜を溶解させた。皮膜の溶解が完了したら溶解液から試験部材を引き上げ、少量のイオン交換水で試験部材を洗浄した。得られた溶解液および洗浄液を混合し、この混合液を100mlにメスアップして、ICPでCr濃度を測定した。こうして求めたCr濃度から、仕上皮膜および化成皮膜に含有されるCr量(単位:mg)を求めた。
別途、上述の条件で化成皮膜のみが形成された試験部材を用意し、この試験部材についても上記の方法で化成皮膜の溶解およびCr濃度の測定を行った。こうして得られたCr濃度から化成皮膜に含有されるCr量(単位:mg)を求めた。
JIS H 8502に定義される塩水噴霧試験において使用される試験用塩水70mL中に試験部材を1時間浸漬させた。この1時間浸漬後の塩水に含有されるクロム濃度を、次の方法により測定した。1時間浸漬後の試験用塩水から試験部材を取り出し、取り出した試験部材を少量のイオン交換水で洗浄した。得られた試験用塩水および洗浄水を混合し、この混合液を100mLにメスアップして、ICPでCr濃度を測定した。こうして求めたCr濃度から、試験用塩水に溶出したCr量(単位:mg)を求めた。
以上の方法により得られたCr量から、次の式により溶出率Rを求めた。
=試験用塩水に溶解したCr量/(仕上皮膜および化成皮膜に含有されるCr量−化成皮膜に含有されるCr量)×100
(2)外観
上記の方法により得た試験部材のそれぞれを目視で観察し、次の評価基準で外観を評価した。
1(製品として使用不可):全面無光沢である、または薄灰色である
2(製品として使用可能):部分的に光沢を有し、灰色である
3(良い):部分的に光沢を有し、濃灰色から黒である
4(優れる):ほぼ全面光沢であり、黒味が強くほぼ漆黒である
5(特に優れる):全面にわたり光沢があり漆黒である
4.評価結果
評価結果を表1〜5に示す。
仕上げ剤No.1〜6、8〜14、および25〜44は本発明例であり、仕上げ剤No.15および23は比較例、仕上げ剤No.7および24は参考例である。手段1のみを採用した仕上げ剤No.1および14の溶解度指数は、水溶性亜鉛含有物質を含有する参考例の仕上げ剤No.24の溶解度指数と同等以上であった。なお、No.24の仕上げ剤は前述のように沈殿物が発生する問題があるため、処理枚数が増えた場合には建浴初期の処理外観(表4に示される結果)を維持できない可能性が高い。すなわち、仕上げ剤No.24は信頼性が低く、工業的には使用困難である。この点については、実施例2において詳しく検討する。
少なくとも手段2または3を採用した他の発明例の溶解度指数は、仕上げ剤No.24の溶解度指数よりも格段に小さくなった。特に、手段1から3の全てを採用した仕上げ剤No.5および6の溶解度指数は、仕上げ剤No.24の溶解度指数の1/10程度となり、しかも優れた処理外観が得られた。試験No.37〜44に示されるように、従来技術において多用されるクエン酸を含有している場合においても、手段2または3を採用することにより、高い耐溶出性と優れた外観とを兼ね備える仕上皮膜を得ることができ、手段2および3を採用することにより、特に高い耐溶出性と特に優れた外観とを兼ね備える仕上皮膜を得ることができた。
(実施例2)
150ml/Lの希釈により実施例1における仕上げ剤No.24を調製することが可能な濃縮液1を作成した。
150ml/Lの希釈により実施例1における仕上げ剤No.27を調製することが可能な濃縮液2を作成した。
150ml/Lの希釈により実施例1における仕上げ剤No.28を調製することが可能な濃縮液3を作成した。
濃縮液1〜3を40℃に保持した恒温槽に14日間保持して、濃縮液1a,2a,および3aを得た。
濃縮液1については、40℃に保持した恒温槽に21日間保持して濃縮液1bも得た。
濃縮液1aおよび1bはいずれも、亜鉛を含む成分の沈降が認められた。このため、濃縮液1における亜鉛濃度は0.60mol/Lであったが、濃縮液1aおよび1bにおける亜鉛濃度は、それぞれ0.40mol/L、0.27mol/Lであった。
濃縮液1aが入っている容器の底部にポンプの吸い込み口が到達するように移送ポンプを設置し、濃縮液1であれば150ml/Lの希釈が可能な条件で移送ポンプを駆動して、所定量の水が入った容器内に濃縮液1の一部を移送した。この濃縮液1が入った水を攪拌することによって仕上げ剤45を得た。仕上げ剤45に含有される亜鉛濃度を測定したところ、亜鉛を含む沈降成分が移送ポンプの適切な動作を妨げたため、仕上げ剤45の亜鉛濃度は、濃縮液1aにおける亜鉛濃度に基づき期待される亜鉛濃度(60mmol/L)よりも少ない42.0mmol/Lとなった。
仕上げ剤45を用いて実施例1と同様にM10ボルトに仕上皮膜を形成し、その皮膜の特性について評価を行った。その結果、上記のように仕上げ剤に含有される有効成分の含有量が低下したため、溶出率は亜鉛を含有させない場合、すなわち仕上げ剤23の場合と同等であり、しかも仕上げ剤23の場合よりも外観の低下が認められた。
濃縮液1aから仕上げ剤45を得る作業と同じ作業を濃縮液1bについても行って、仕上げ剤46を得た。仕上げ剤46における亜鉛濃度は仕上げ剤45よりもさらに低下し、18.2mmolであった。この仕上げ剤46を用いて実施例1と同様にM10ボルトに仕上皮膜を形成し、その皮膜の特性について評価を行った。その結果、溶出率は仕上げ剤45の場合よりも多くなり、外観の低下も仕上げ剤45の場合よりも顕著であった。
濃縮液1aの上澄み液を採取し、この上澄み液について150ml/Lの希釈を行うことにより、仕上げ剤47を得た。この仕上げ剤47における亜鉛濃度はほぼ期待通りであった。
この仕上げ剤47を用いて実施例1と同様にM10ボルトに仕上皮膜を形成し、その皮膜の特性について評価を行った。その結果、溶出率は仕上げ剤24の場合よりも若干多くなった。外観については、仕上げ剤24の場合よりも劣化し、亜鉛を含有しない仕上げ剤23と同等の結果となった。
濃縮液2aおよび3aについては、沈降成分は認められず、それぞれ濃縮液2および3と対比して各有効成分の濃度に変化は認められなかった。
濃縮液1aから仕上げ剤45を得る作業と同じ作業を濃縮液2および3についても行って、それぞれ仕上げ剤48および49を得た。これらの仕上げ剤を用いて実施例1と同様にM10ボルトに仕上皮膜を形成し、その皮膜の特性について評価を行った。その結果、いずれの仕上げ剤についても、評価結果に実質的な変化は認められなかった。
表7に上記の結果をまとめて示す。
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Claims (6)

  1. その表面が6価クロムフリーであって3価クロムを含有する化成処理された部材である処理対象部材上に仕上皮膜を形成するための仕上げ剤であって、
    オルトリン酸および縮合リン酸、それらのイオン、ならびにそれらのイオンを含む塩および配位化合物からなる群から選ばれる1種または2種以上の水溶性物質からなる水溶性リン酸系化合物;
    有機酸、そのイオンならびにそのイオンを含む塩および配位化合物から選ばれる1種または2種以上の水溶性物質からなる水溶性有機酸化合物;
    水溶性3価クロム含有物質;ならびに
    マトリックス形成成分としての有機系材料を含有し、
    硝酸イオンを実質的に含有せず、
    さらに水溶性アルミニウム含有物質および水溶性ジルコニウム含有物質からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し、前記水溶性3価クロム含有物質のクロム換算モル濃度、前記水溶性アルミニウム含有物質のアルミニウム換算モル濃度および前記水溶性ジルコニウム含有物質のジルコニウム換算モル濃度の合計の前記水溶性リン酸系化合物のリン換算モル濃度に対する比率が0.5以上1.5以下であり、
    前記水溶性有機酸化合物はクエン酸およびそのイオンの少なくとも一方を備え、
    さらに前記水溶性リン酸系化合物のリン酸換算モル濃度に対する前記水溶性3価クロム含有物質の3価クロム換算モル濃度の比率が0.2以上1.0以下であること
    を特徴とする仕上げ剤。
  2. 硫酸イオンおよび塩化物イオンの少なくとも一方を実質的に含有しない請求項1記載の仕上げ剤。
  3. 前記マトリックス形成成分としての有機系材料がポリビニルアルコールを含む請求項1記載の仕上げ剤。
  4. pHが5.0以上7.0以下である請求項1記載の仕上げ剤。
  5. その表面が6価クロムフリーであって3価クロムを含有する化成処理された部材である処理対象部材と請求項1から4のいずれか一項に記載される仕上げ剤とを接触させて、前記仕上げ剤の液膜を前記部材の6価クロムフリーであって3価クロムを含有する化成皮膜上に形成する接触工程、および前記接触工程により得られた液膜を乾燥させて仕上皮膜とする乾燥工程を備えることを特徴とする仕上皮膜を有する部材の製造方法。
  6. 前記処理対象部材は、前記6価クロムフリーであって3価クロムを含有する化成処理された表面を乾燥させる処理が施されていないものである請求項5記載の製造方法。
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