JP5192836B2 - チオール化合物の安定な保存方法 - Google Patents
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Description
以下に本発明を詳述する。
なお、本発明において「チオール化合物を安定に保存する」とは、チオール化合物による経時的な分解や反応が充分に抑制された状態となることを意味し、特に、自己多量化が充分に抑制された状態となることを意味する。
また溶媒量の上限は特に限定されるものではないが、上記チオール化合物を原料として反応に供する場合には、極端に溶媒量が多いと支障を生じることがあるため、上記溶媒溶液の全量100質量%に対し、80質量%以下であることが好ましい。より好ましくは70質量%以下であり、更に好ましくは60質量%以下である。また上記と同様の理由で、上記チオール化合物と溶媒の合計量100質量%に対する上記チオール化合物の下限としては、20質量%以上であることが好ましい。より好ましくは30質量%以上であり、更に好ましくは40質量%以上である。
なお、pHの調整は、例えば、NaOH水溶液を投入することによって行うことができる。
なお、上記チオール化合物に求められる用途によっては、炭素数3以上のアルキレンオキシド基を含まない態様が好ましい場合もある。
なお、メルカプト基から水素が容易に引き抜かれてラジカルが生成し重合開始点となるというチオール化合物の性質を生かして上記チオール化合物を各種用途に使用する場合には、上記チオール化合物は、単量体として機能し得るものであることが好適である。すなわち、上記チオール化合物が単量体である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
なお、後述するように、ポリオキシアルキレングリコールに、同一分子内にカルボキシル基及びメルカプト基を有する化合物をエステル化して上記チオール化合物を得る場合には、上記R1及びR2は、メルカプトカルボン酸残基(メルカプト基とカルボキシル基を除いた二価の有機残基)となり得る。有機残基は、例えば、水酸基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン基、スルホニル基、ニトロ基、ホルミル基等で一部置換されていてもよい。
上記アルキレンオキシド基の好適な形態等については、上述したとおりである。
上記一般式(1)でnで表されるアルキレンオキシド基の平均付加モル数についても、上述したとおりである。
本発明において、特に好適なチオール化合物としては、上記一般式(1)において「R1」及び「(R2)t」がそれぞれ炭素数2の置換基を有してもよいアルキレン基であって、「s」及び「u」が1であり、かつAOがエチレンオキシド基である化合物や、上記一般式(1)において「R1」が炭素数2の置換基を有してもよい炭化水素基であって、「(R2)t−(S)u−H」がメチル基(u=0)であり、かつAOがエチレンオキシド基である化合物である。
以下では、アルキレンオキサイド基を含む有機残基を有する化合物に、カルボキシル基又は水酸基とメルカプト基とを有する化合物をエステル化することにより製造する方法について更に説明する。
上記ポリアルキレングリコールを合成によって得る場合に使用可能なアルコールとしては、例えば、1価アルコールや2価以上の多価アルコールが挙げられ、例えば、1価アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ノニルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の炭素数1〜30の脂肪族アルコール類;シクロヘキサノール等の炭素数3〜30の脂環族アルコール類;(メタ)アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等の炭素数3〜30の不飽和アルコール類等が挙げられ、2価以上の多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、1,4−ブタンジオール、1,2,4−ブタントリオール、グリセリン、ソルビトール、ショ糖、ブドウ糖、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類が挙げられる。
なお、ポリアルキレングリコールがカルボキシル基を有するものであることを要する場合には、通常の手法によってポリアルキレングリコールにカルボキシル基を導入すればよい。例えば、ポリアルキレングリコールが有する水酸基を酸化する方法、モノクロル酢酸でエーテル化する方法、多価カルボン酸でエステル化する方法等が挙げられる。
また反応時間としては、用いる酸触媒の種類や量、アルキレングリコール基含有化合物とチオール基含有化合物との混合比、溶液濃度等に応じて適宜設計すればよい。
(1)アルキレングリコール基含有化合物由来の反応に供される水酸基やカルボキシル基等の官能基量に対して、チオール基含有化合物由来の水酸基やカルボキシル基をモル比で大過剰とする。具体的には、反応速度の観点から、モル比としては、2倍以上が好ましく、より好ましくは3倍以上である。また、製造コストの観点から、10倍以下が好ましく、より好ましくは5倍以下である。この方法により、短時間で純度良くチオール化合物を得ることができる。反応後の粗生成物はそのまま本発明の保存方法に用いることができるが、必要に応じて精製し、未反応物を除去してもよい。
得られた反応粗生成物の固化物は、精製してもよいが、この場合には、反応粗生成物の固化物を乾燥・粉砕した後、未反応の原料化合物等の不純物は溶解するもののチオール化合物は溶解しない溶剤、例えばジエチルエーテル等を用いて固化物を洗浄してもよい。
なお、作業工程が増えることによる製造コストの高騰、及び、溶剤の使用による環境への負荷を考慮すると、上記溶剤を用いた洗浄作業は避けることが好ましい。このため、上述したように、原料化合物であるアルキレングリコール基含有化合物とチオール基含有化合物との混合比は、アルキレングリコール基含有化合物由来の反応に供される水酸基やカルボキシル基等の官能基量に対して、チオール基含有化合物由来の水酸基やカルボキシル基をモル比で2倍以下となるように行うことが好適である。
本発明の保存方法において、上記製造方法により得られるチオール化合物を保存しようとする場合には、上述のようにして得られた反応粗生成物の固化物又は更に精製工程を経て得た固化物を溶媒共存下で保存することとなる。
<GPC分析法>
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製、Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:東ソー(株)製、TSK guard column SWXL+TSKgel G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解し、更に酢酸でpH6.0に調整した溶液を使用。
較正曲線作成用標準物質:ポリエチレングリコール(PEG)[ピークトップ分子量(Mp)272500、219300、107000、50000、24000、12600、7100、4250、1470]
較正曲線:上記ポリエチレングリコールのMp値(ピークトップ分子量)と溶出時間とを基礎にして3次式で作成する。
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
測定時間:45分
試料液注入量:100μL(PAG及びチオール化合物は試料濃度0.4質量%)
RIクロマトグラムにおいて、溶出直前・溶出直後のベースラインにおいて平らに安定している部分を直線で結び、ピークを検出・解析する。多量体や不純物が目的物ピークに一部重なって検出された場合は、ピークの重なり部分の最凹部において垂直分割し、目的物の分子量を測定する。
なお、チオール化合物(単量体)純分量及び多量化物量の計算は、RI検出器によるピーク面積の比より、下記のようにして計算する。
単量体純分量=(単量体面積)/(多量化物ピーク面積+単量体面積)
多量化物量=(多量化物ピーク面積)/(多量化物ピーク面積+単量体面積)
したがって、合成後a日後の多量化物量の増加率は、以下のようにして求められる。
多量化物の増加率=(a日後の多量化物量−合成直後の多量化物量)/(a日後の多量化物量)
RIクロマトグラムにおいて、溶出直前・溶出直後のベースラインにおいて平らに安定している部分を直線で結び、ピークを検出・解析する。多量体や不純物が目的ピークに一部重なって測定された場合は、ピークの重なり部分の最凹部において垂直分割し、目的物の分子量を測定する。アルキレンオキシド(AO)の平均付加モル数(n)は、Mn(数平均分子量)の値から計算する。
<LC分析法>
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製 Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
カラム:GLサイエンス Inertsil ODS−2 ガードカラム+カラム(内径4.6mm×250mm×3本)
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:アセトニトリル/100mM酢酸イオン交換水溶液=40/60(質量%)の混合物に30%NaOH水溶液を加えてpH4に調整した溶液を使用する。
流量:0.6mL/min
カラム温度:40℃
測定時間:90分間(サンプルによる)
試料液注入量:100μL(試料濃度1質量%の溶離液溶液)。
RI検出器によるピーク面積の比より、下記のようにして計算する。
総エステル化率=(モノエステルピーク面積+ジエステルピーク面積)/(PAG面積+モノエステルピーク面積+ジエステルピーク面積)
ジエステル化率(ジエステル量)=(ジエステルピーク面積)/(PAG面積+モノエステルピーク面積+ジエステルピーク面積)
したがって、合成後a日後のジエステル量の減少率は、以下のようにして求められる。
ジエステル量の減少率=(合成直後のジエステル量−a日後のジエステル量)/(合成直後のジエステル量)
(1)PEG(1)(EOの平均付加モル数=22)の調整
温度計、圧力計、撹拌機、窒素導入口を備えた3.75Lオートクレーブに、トリエチレングリコール(日本触媒製、270g)、粉砕した水酸化ナトリウム(和光純薬製試薬特級、0.3g)を仕込んだ。系内を充分に窒素置換後、150℃に加温し、窒素を導入して系内圧を0.1MPaに調整した。系内温150±5℃、系内圧0.8MPa以下を保ちながら、エチレンオキシド(「EO」ともいう)(日本触媒社製、1530g)を逐次添加した。添加終了後、1時間150℃に保った後、降温し、PEG(1)を得た。
(2)PEG(2)(EOの平均付加モル数=92)の調整
温度計、圧力計、撹拌機、窒素導入口を備えた3.75Lオートクレーブに、PEG(1)(447g)、48%水酸化ナトリウム水溶液(2.3g)を仕込んだ。系内を100Torrに減圧後、100℃に加温し、100Torr100℃で1時間窒素をバブリングして水分を留去した。続いて150℃に加温し、窒素を導入して系内圧を0.1MPaに調整した。系内温150±5℃、系内圧0.8MPa以下を保ちながら、エチレンオキシド(日本触媒社製、1497g)を逐次添加した。添加終了後、1時間150℃に保った後、降温し、PEG(2)を得た。
(3)PEG(3)(EOの平均付加モル数=286)の調整
温度計、圧力計、撹拌機、窒素導入口を備えた3.75Lオートクレーブに、PEG(2)(433.95g)を仕込んだ。系内を100Torrに減圧後、100℃に加温し、100Torr100℃で1時間窒素をバブリングして水分を留去した。続いて150℃に加温し、窒素を導入して系内圧を0.1MPaに調整した。系内温150±5℃、系内圧0.8MPa以下を保ちながら、エチレンオキシド(日本触媒社製、1063.5g)を逐次添加した。添加終了後、1時間150℃に保った後、降温し、PEG(3)を得た。GPC分析結果は、Mw=12923、Mn=12602、単量体純度98.9%であった。
調整例1と同様の方法で、出発原料をメタノールとしてメトキシポリエチレングリコール(EO付加数100モル)を合成した。EOの付加は、10モル、25モル及び100モルの3段階に分けて行った。
(1)エステル化工程
ジムロート冷却管付の水分定量受器、テフロン(登録商標)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、ガラス保護管付温度センサーを備えた500mLガラス製反応器内に、PAGとしてポリエチレングリコール(アルドリッチ社製、商品番号373001、Mn=4656、n=105.8、320g)、カルボン酸基含有チオールとして3−メルカプトプロピオン酸(14.59g、PAGのOH基に対して100mol%)、エステル化用酸触媒としてp−トルエンスルホン酸1水和物(6.69g、PAGとチオールとの質量和に対して2質量%)、脱水溶媒としてシクロヘキサン(16.73g、PAGとチオールとの質量和に対して5質量%)を仕込んだ。水分定量受器をシクロヘキサンで満たした後、反応系内を撹拌しながら、還流するまで加温した。反応系内の温度が110±5℃になるように途中でシクロへキサンを加えながら48時間加温した。またこの時、加熱源であるオイルバスの温度は120±5℃であった。
加温終了後のLC分析結果は、総エステル化率は99.7%、ジエステル/総エステル比は82.9%であった。GPC分析結果は、単量体量89.9%、残りは多量体であった。
エステル化工程後、固化しないように撹拌しながら60℃以下に放冷した後、30%NaOH水溶液(4.46g、NaOHがp−トルエンスルホン酸に対して95mol%)と水(131.04g、PAGチオール濃度を約50%に調整)との混合物を速やかに反応器内に投入した。約70℃まで昇温し、還流が落ち着いてから徐々に約100℃まで加温してシクロへキサンを留去した。加温を停止し、放冷しながら窒素を30mL/分で90分バブリングして残存シクロヘキサンを除去し、目的化合物水溶液を得た。
LC分析結果は、総エステル化率は99.5%、ジエステル/総エステル比は81%であった。GPC分析結果は、単量体量83.8%、多量体量16.2%であり、脱溶媒前より多量体が6.1%増加した。
(1)エステル化工程
ジムロート冷却管付の水分定量受器、テフロン(登録商標)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、ガラス保護管付温度センサーを備えた500mLガラス製反応器内に、PAGとしてポリエチレングリコール(アルドリッチ社製、商品番号373001、Mn=4656、n=105.8、320g)、カルボン酸基含有チオールとして3−メルカプトプロピオン酸(16.05g、PAGのOH基に対して110mol%)、エステル化用酸触媒としてp−トルエンスルホン酸1水和物(6.72g、PAGとチオールとの質量和に対して2質量%)、酸化防止剤としてフェノチアジン(0.0672g、PAGとチオールとの質量和に対して200ppm)、脱水溶媒としてシクロヘキサン(16.80g、PAGとチオールの質量和に対して5質量%)を仕込んだ。水分定量受器をシクロへキサンで満たした後、反応系内を撹拌しながら、還流するまで加温した。反応系内の温度が110±5℃になるように途中でシクロへキサンを加えながら48時間加温した。またこの時、加熱源であるオイルバスの温度は120±5℃であった。
加温終了後のLC分析結果は、総エステル化率は99.5%、ジエステル/総エステル比は93.1%であった。GPC分析結果は、単量体量92.9%、残りは多量体であった。
エステル化工程後、固化しないように撹拌しながら60℃以下に放冷した後、30%NaOH水溶液(4.48g、NaOHがp−トルエンスルホン酸に対して95mol%)と水(131.04g、PAGチオール濃度を約50%に調整)の混合物を速やかに反応器内に投入した。約70℃まで昇温し、還流が落ち着いてから徐々に約100℃まで加温してシクロヘキサンを留去した。加温を停止し、放冷しながら窒素を30mL/分で90分バブリングして残存シクロヘキサンを除去し、目的化合物水溶液を得た。冷却後pH=4.73(25.2℃)であった。
LC分析結果は、総エステル化率は99.2%、ジエステル/総エステル比は90.1%であった。GPC分析結果は、単量体量93.2%、多量体量6.8%で、多量体量は0.3%しか増加しなかった。
各種化合物の仕込量や使用量及びエステル化工程での反応時間を表1に記載のように変更した他は、実施例2と同様にエステル化工程及び脱溶媒工程を行い、目的化合物水溶液を得た。
エステル化工程後及び脱溶媒工程後の各分析結果を表1に示す。
エステル化工程においてPAGとして調整例1で得たPEG(3)を使用し、各種化合物の仕込量や使用量及びエステル化工程での反応時間を表1に記載のように変更した他は、実施例2と同様にエステル化工程及び脱溶媒工程を行い、目的化合物水溶液を得た。
エステル化工程後及び脱溶媒工程後の各分析結果を表1に示す。
(1)エステル化工程
ジムロート冷却管付の水分定量受器、テフロン(登録商標)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、ガラス保護管付温度センサーを備えた500mLガラス製反応器内に、PAGとして調整例2で得たメトキシポリエチレングリコール(n=100、254.8g)、カルボン酸基含有チオールとして3−メルカプトプロピオン酸(30.2g、PAGのOH基に対して500mol%)、エステル化用酸触媒としてp−トルエンスルホン酸1水和物(5.7g、PAGとチオールの質量和に対して2質量%)、脱水溶媒としてシクロへキサン(14.25g、PAGとチオールの質量和に対して5質量%)を仕込んだ。水分定量受器をシクロヘキサンで満たした後、反応系内を撹拌しながら、還流するまで加温した。反応系内の温度が110±5℃になるように途中でシクロへキサンを加えながら14時間加温した。またこの時、加熱源であるオイルバスの温度は120±5℃であった。
加温終了後のLC分析結果は、エステル化率は100%、GPC分析結果は、単量体量はほぼ100%、多量体は痕跡量(trace)であった。
エステル化工程後、室温まで放冷後、固化した反応混合物を粉砕し、体積比で約1.5倍のジエチルエーテルを加えて30分撹拌後、吸引ろ過して粉体を得た。この際、完全に乾燥しないように減圧度を調整した。更に、得られたウェットな粉体を同様の手順で2回以上洗浄した。得られたウェットな粉体に水(275g)を加えて溶解させ、40℃100Torrで残存エーテルを留去し、目的化合物水溶液を得た。GPC分析結果は、単量体量98.3%、多量体量1.7%であり、脱溶媒前より多量体量が1.7%増加した。
(1)エステル化工程
ジムロート冷却管付の水分定量受器、テフロン(登録商標)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、ガラス保護管付温度センサーを備えた2Lガラス製反応器内に、PAGとしてポリエチレングリコール(アルドリッチ社製、商品番号373001、Mn=4656、n=105.8、320g)、カルボン酸基含有チオールとして3−メルカプトプロピオン酸(72.95g、PAGのOH基に対して500mol%)、エステル化用酸触媒としてp−トルエンスルホン酸1水和物(7.86g、PAGとチオールの質量和に対して2質量%)、脱水溶媒としてシクロへキサン(19.65g、PAGとチオールの質量和に対して5質量%)を仕込んだ。水分定量受器をシクロヘキサンで満たした後、反応系内を撹拌しながら、還流するまで加温した。反応系内の温度が110±5℃になるように途中でシクロへキサンを加えながら14時間加温した。またこの時、加熱源であるオイルバスの温度は120±5℃であった。
加温終了後のLC分析結果は、総エステル化率は99.4%、ジエステル/総エステル比は100%であった。GPC分析結果は、単量体量98.0%、残りは多量体であった。
エステル化工程後、固化しないように撹拌しながら60℃以下に放冷した後、30%NaOH水溶液(5.51g、NaOHがp−トルエンスルホン酸に対して95mol%)を反応器内に投入した。
室温まで放冷後、固化した反応混合物を粉砕し、体積比で約1.5倍のジエチルエーテルを加えて30分撹拌後、吸引ろ過して粉体を得た。更に、得られた粉体を同様の手順で2回以上洗浄した。得られた粉体を室温100Torrで24時間以上乾燥し、粉体化合物を得た。
GPC分析結果は、単量体量4.8%、多量体量92.3%であり、ほとんど多量体化した。
エステル化工程においてPAGとして調整例1で得たPEG(3)を使用し、また酸化防止剤としてフェノチアジン(0.5421g)を更に仕込んでエステル化工程を行ったこと、並びに、各種化合物の仕込量や使用量及びエステル化工程での反応時間を表1に記載のように変更したこと以外は、比較例1と同様にエステル化工程及び脱溶媒工程を行い、粉体化合物を得た。
エステル化工程後及び脱溶媒工程後の各分析結果を表1に示す。
PEG:ポリエチレングリコール
PEG(3):調整例1で得たPEG(3)
PEG(n):ポリエチレングリコール中のエチレンオキシドの平均付加モル数
3−MPA:3−メルカプトプロピオン酸
PTS・1H2O:p−トルエンスルホン酸一水和物
PTZ:フェノチアジン
実施例1〜3と比較例1とをそれぞれ比較すると、いずれも反応中は脱水溶媒であるシクロヘキサンと溶融しており、反応中の多量体量は、むしろ比較例1の方が少なくなる(表1中のエステル化後GPC分析値参照。)。これは、反応時間=加温時間が短いため、チオールの熱ラジカル化由来による多量化が少ないためである。
しかし、その後の工程において、実施例1〜3では脱溶媒・水置換を水溶液化して行うため、乾燥工程がなく、この場合、反応後の多量体量は比較的少なかった。
一方、比較例1では、脱溶媒を固化・エーテル洗浄にて行い、最後に乾燥工程を行ったため、反応直後は少なかった多量体が乾燥により一気に増大したことが分かる。
すなわち、比較例1では生成物が脱溶媒・乾燥によりほとんど多量体化するのに対し、溶媒として水が存在する実施例1ではそれほど多量体化が進行せず、多量体化の抑制には溶媒の存在が効果的であることが分かった。
実施例4と比較例2との比較においても同様のことが分かる。
このような実施例5と比較例1との比較からも、多量体化の抑制には溶媒の存在が効果的であることが分かる。
実施例1〜4で得た水溶液をそれぞれ用い、水溶液のまま−20℃に冷却して固化した後、表2に記載の保存期間(単位:月)保存し、LC及びGPCにて分析を行った。結果を表2に示す。
表2の結果より、実施例1〜4で得た水溶液を−20℃に冷却して固化させて長期間保存しても、多量体の増加程度は比較例1〜2に比べて少ないため、多量体の増大は、「固化」が主原因ではなく、「乾燥」が主原因であると推測される。よって、多量体化は乾燥によって促進され、溶媒と共存させることで抑制できることが明らかとなった。
また実施例2で得た水溶液について、水溶液のまま40℃で保存した他は、実施例7と同様に保存して分析を行い、−20℃で保存した場合(実施例7)と比較検証を行った。
その結果、−20℃で保存する方(実施例7)が、エステルの減少率(=加水分解率)及び多量体増加率ともに非常に小さくなったことから、低温で保存する方が安定ということが分かった。
実施例1で得た目的化合物水溶液のpH値を6〜9の5段階に設定した溶液を用意した。この5種類の溶液について、窒素雰囲気下、液温40℃で204日間にわたって保存し、0日後(合成直後)〜204日経過時点でのジエステル量及び多量化物量を上述したようにして測定し、0日後(合成直後)を基準とする1〜204日経過時におけるジエステル量の減少率及び多量化物量の増加率を算出した。表3にpHの経時変化、表4にジエステル量の経時減少率、表5に多量化物量の経時増加率を示す。また、これら表3〜5をグラフにしたものをそれぞれ図1〜3に示す。
なお、保存条件は、窒素雰囲気下、液温40℃を維持した。
表3及び図1より、pHは経時的に低下し、ある程度で一定になることが分かる。これは、ポリアルキレングリコールと3−MPAとのエステルが加水分解し、カルボン酸が生成していることを示唆している。
また表4及び図2より、pH6〜9の範囲において経時的にジエステル量が低下しており、徐々に加水分解が進行していることが分かる。加水分解の速度は遅く、40℃で5%/90日程度であり、pH依存性は少ない。
更に表5及び図3より、pH6〜9の範囲において経時的に多量体量が増加していることが分かる。また、多量体量の増加速度はpH=7〜9では大差ないが、それ以下ではpHが低いほど遅いことが明らかであり、pH=6ではpH=7〜9の半分程度まで抑制できることが分かった。
Claims (5)
- チオール化合物を安定に保存する方法であって、
該チオール化合物は、ポリアルキレングリコール鎖を有し、
該保存方法は、該チオール化合物を溶媒溶液として保存するものであり、
該溶媒溶液は、水溶液であり、
該溶媒溶液のpHは、4以上、9以下であることを特徴とするチオール化合物の安定な保存方法。 - 前記チオール化合物は、重量平均分子量1000以上であることを特徴とする請求項1に記載のチオール化合物の安定な保存方法。
- 前記保存方法は、酸化防止剤を用いるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のチオール化合物の安定な保存方法。
- 前記ポリアルキレングリコール鎖の含有量は、前記チオール化合物100質量%に対して50質量%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のチオール化合物の安定な保存方法。
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