JP5191667B2 - スチレン系樹脂異方性フィルム - Google Patents
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Description
スチレン系樹脂からなる光学用フィルムとして、特許文献1には、スチレン系共重合体をガラス転移温度、あるいはそれよりも10℃を越えない温度条件で一軸延伸したフィルムが開示されている。この文献には、負の固有屈折値を有するフィルムとして前記フィルムを用い、正の固有屈折値を有する一軸延伸フィルム、対向する2枚のねじれ配向したネマチック液晶を含む液晶素子、及び偏光板から液晶表示装置を構成することにより、液晶表示装置の視野角を増大できることが記載されている。しかしながら、一軸延伸法においては、延伸温度を高めると、フィルム両端部分の配向度が高くなり、シート巾が狭くなるネックイン現象が顕著となり、得られるフィルムの有効巾が少なくなる。また、一軸延伸フィルムは、一方向にのみの配向しているために、巾(TD)方向のフィルム強度が不十分となり、フィルムの後加工時に流れ(MD)方向に沿って割れや破れが発生しやすいという問題もある。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
スチレン系樹脂を50重量%以上含む光学異方性フィルムであって、
ASTM−D1504法に準じて測定した(ビカット軟化温度+30℃)における加熱収縮応力の流れ(MD)方向と巾(TD)方向との差が0.5〜4.0MPa、
面内レターデーションが50〜1000nmであり、
前記スチレン系樹脂が、スチレン系単量体と、不飽和カルボン酸単量体及び/又は不飽和ジカルボン酸無水物単量体を単量体成分として含む重合体である二軸方向に延伸された光学異方性フィルム。
さらに、本発明のフィルムは、液晶表示材料として好適であり、本発明により、低光弾性係数、光学均一性、光学補償性、耐熱性、透明性、液晶表示装置へと二次加工する際の加工適性に優れたスチレン系樹脂からなる異方性フィルムを提供できる。
本発明において、スチレン系樹脂とは、スチレン系単量体と、少なくとも不飽和カルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物より選ばれる一つの単量体を単量体成分として含む重合体をいう。
ここで、スチレン系単量体とは、その構造中にスチレン骨格を有する単量体をいう。
スチレン系単量体の具体例としては、スチレンの他に、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレンなどの核アルキル置換スチレンなどのビニル芳香族化合物単量体などが挙げられ、代表的なものはスチレンである。
不飽和カルボン酸の具体例としては、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、桂皮酸等が挙げられ、不飽和ジカルボン酸無水物の具体例としては無水マレイン酸、イタコン酸、エチルマレイン酸、メチルイタコン酸、クロルマレイン酸などの無水物などが挙げられる。
これらの中でも、耐熱性、光弾性係数の観点から、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体が特に好ましい。
さらに好ましい範囲は、不飽和カルボン酸単量体単位及び不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位の量が、4重量%以上20重量%未満であり、とりわけ好ましい範囲は不飽和カルボン酸単量体単位及び不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位の量が8重量%以上15重量%以下である。
スチレン系樹脂がスチレンと無水マレイン酸の共重合体である場合、スチレンと無水マレイン酸との共重合体における無水マレイン酸単位の量は2重量%以上30重量%未満の範囲が好ましい。スチレン単位の重量%を98重量%以下、無水マレイン酸単位の量を2重量%以上にすることで、光学用フィルムとしての十分な耐熱性、低光弾性係数が得られる。また、スチレン単位の量を70重量%以上、無水マレイン酸単位の重量%を30重量%以下にすることで、熱溶融加工時のゲル生成の頻度を少なくすることができ、十分な延伸安定性とフィルムの二次加工適性が得られる。さらに好ましい範囲は、無水マレイン酸単位の量が4重量%以上20重量%未満であり、とりわけ好ましい範囲は無水マレイン酸単位の量が8重量%以上15重量%以下である。
スチレン系樹脂の分子量は、GPCにより測定した重量平均分子量が、好ましくは10〜40万、より好ましくは12〜30万である。平均分子量が40万以下のスチレン系樹脂を用いることで、溶融押出、及び延伸加工する際に十分な流動性が得られ、平均分子量が10万以上のスチレン系樹脂を用いることで、延伸安定性とフィルムに十分な配向度を与えることができる。
このような他の単量体成分の共重合割合は、スチレン系樹脂において0〜50重量%であることが望ましく、0〜30重量%であることがさらに望ましく、0〜20重量%であることがとりわけ望ましい。
本発明のフィルムには、上記の安定剤以外に、紫外線吸収剤、無機系微粒子や有機系微粒子等の微粒子状アンチブロッキング剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤等、公知の添加剤を、本発明の要件と特性を損なわない範囲で配合してもよい。
ここで、加熱収縮応力は、延伸フィルムの配向レベルの指標となるが、スチレン系樹脂においては、加熱収縮応力の最大値の得られる(ビカット軟化温度+30℃)で測定することにより、配向レベルの指標としてより適したものとなる。
さらに、加熱収縮応力差を0.5MPa以上とすることで、フィルムの面内レターデーションを高めたつつ、フィルム厚みを低減することができ、これにより、例えば液晶表示装置に使用した場合に、液晶表示装置の軽量化、消費電力の低減が可能になるという効果もある。
具体的には、二軸延伸を通常よりも低温、具体的には、(ビカット軟化温度+10℃)〜(ビカット軟化+35℃)程度で行い、かつ、MD方向とTD方向の延伸比(MD方向の延伸倍率/TD方向の延伸倍率)を1.3〜3.8、好ましくは1.5〜2.2、となるようにMD方向とTD方向の延伸倍率を調整することにより、加熱収縮応力のMD方向とTD方向との差0.5MPa〜4.0MPaを実現することができる。
ビカット軟化温度は、フィルムに含まれるスチレン系樹脂の不飽和カルボン酸単量体及び/又は不飽和ジカルボン酸無水物酸単量体の共重合割合を調整することによって制御できる。
ここで、面内レタデーションとは、フィルムの光学的な歪みの指標(光がフィルム面内を透過する際の透過前後による位相のズレの程度)であり、下式により定義される。
Re=Δn×d、Δn=nx−ny
(式中、Δnは複屈折率、nx:フィルム面内において屈折率が最大となる方向をxとした場合のx方向の主屈折率、ny:フィルム面内においてx方向に垂直な方向をyとした場合のy方向の主屈折率、d:フィルムの厚み(nm)である。)
面内レターデーションを50nm以上にすることで、液晶表示装置に組み込んだ場合に十分な光学補償性を得ることが可能になる。また、面内レターデーションを1000nm以下とすることで、延伸製膜時においてフィルム面内の面内レターデーションの均一性を維持することができるため、液晶表示装置の色むらを抑制することができる。フィルムの面内レターデーションがこの範囲を超えると、液晶パネル基板として用いた場合に干渉色を生じ、表示画像が不鮮明になることがある。
フィルムの面内レタデーションは、スチレン系樹脂中のスチレン系単量体と、不飽和カルボン酸単量体及び/又は不飽和ジカルボン酸無水物の質量比、フィルム厚み、延伸倍率等を調整することにより制御することができる。
ここで、面内レタデーションの変動率は、下式により定義される。
面内レタデーション(Re)の変動率(%)
={(Remax−Remin)/Reave}×100
(式中、Remax:フィルム面内のReの最大値、Remin:フィルム面内のReの最小値、Reave:フィルム面内のReの平均値である。)
面内レターデーションの変動率を10%以下にすることで、液晶表示装置に使用した場合の色むらを押さえ、十分なコントラストを得ることができる。
ここで、光弾性係数とは、外力による複屈折の変化の生じやすさを表す係数で、下式により定義される。光弾性係数の値がゼロに近いほど、外力による複屈折の変化が小さいことを示しており、各用途に応じて設計された複屈折が外力によって変化しにくいことを意味する。
CR(/Pa)=(n1−n2)/σR
式中、n1は伸張方向と平行な方向の屈折率、n2は伸張方向と垂直な方向の屈折率、σRは伸張応力(Pa)である。
フィルムの光弾性係数は、スチレン系樹脂中のスチレン系単量体と、不飽和カルボン酸単量体及び/又は不飽和ジカルボン酸無水物の質量比等を調整することにより制御することができる。
ここで、厚み方向レタデーション(Rth)は下式により定義される。
Rth=((nx+ny)/2)−nz)×d
(式中、nx:フィルム面内において屈折率が最大となる方向をxとした場合のx方向の主屈折率、ny:フィルム面内においてx方向に垂直な方向をyとした場合のy方向の主屈折率、nz:フィルム厚み方向の主屈折率、d:フィルムの厚み(nm)である。)
また、Rthは、フィルムを構成するスチレン系樹脂のスチレン系単量体と、不飽和カルボン酸単量体及び/又は不飽和ジカルボン酸無水物の質量比や、フィルムの厚み、延伸倍率等を調整することにより制御することができる。
ここで、配向角とは、TD方向とフィルムの遅相軸(屈折率の最大方位)のなす角度をいい、配向角の変動幅とは、配向角の最大値と最小値の差のことをいう。なお、本発明において、MD方向とはフィルムの流れ方向を意味し、TD方向とはMD方向に垂直な方向をいう。
配向角の変動幅を5°以下にすることで、液晶表示装置への実装や他の光学フィルムとの積層の際に安定した光学補償性を得ることができる。
90℃で100時間保持することを条件としたのは、一般的な液晶表示装置内での表示に使用した場合にフィルムが到達する温度の最大値が90℃であり、通常、スチレン系樹脂延伸フィルムを90℃で保持した場合、100時間以内にはその面内レターデーションの低下曲線が飽和値に到達するからである。
ここで、面内レタデーション低下率は下式により定義される。
面内レターデーション低下率(%)
={(Re0−Reh)/Re0}×100
(式中、Re0:90℃で100時間保持前のフィルムの面内レタデーション、Reh:90℃で100時間保持後のフィルムの面内レタデーションである。)
面内レターデーション低下率を7%以内にすることで、フィルム製造時や液晶表示装置への組込み後の表示時において、熱履歴により分子配向が緩和することによるフィルムのレターデーション低下を最小限に抑えることができ、十分な光学補償性とコントラストが得られる。
面内レタデーション低下率は、スチレン系樹脂中の不飽和カルボン酸単量体単位や不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位の量を調整することなどにより制御することができる。
本発明のフィルムは、スチレン系樹脂を押出機内で熱溶融させた後にTダイから押出してロール上にキャストする方法(溶融製膜)、スチレン系樹脂を溶剤に溶かした後にTダイから押出してロール上にキャストする方法(溶液製膜)等によってスチレン系樹脂延伸前原反シートを得た後、この延伸前原反シートを、縦延伸機、テンター式横延伸機、同時二軸延伸機等の延伸機に供給して二軸延伸することにより得られる。
さらに、T−ダイから冷却ロール上への引取りに際して、ドラフト比(T−ダイのリップ部分の間隙/成形シートの厚み)は、15以下であることが好ましく、より好ましくは8以下である。また、冷却ロール温度は、好ましくは、スチレン系樹脂の(ビカット軟化温度−60℃)〜(ビカット軟化温度(℃))であり、より好ましくは(ビカット軟化温度−40℃)〜(ビカット軟化温度−20℃)である。
また、二軸延伸機の熱固定ゾーンの温度は、好ましくは(延伸温度−60℃)〜(延伸温度−20℃)であり、より好ましくは(延伸温度−50℃)〜(延伸温度−30℃)である。熱固定温度を(延伸温度−60℃)よりも高くすることにより、フィルム破れを抑制することができる。また、熱固定温度を(延伸温度−20℃)以下にすることにより、、フィルムのTD方向における面内レターデーションの変動率と配向角の変動幅を小さくすることができる。
実施例及び比較例で用いた、評価の測定方法と判定基準は以下のとおりである。
(1)面内レターデーションとその変動率の測定
MD方向及びTD方向が共に400mmの大きさのフィルムを用意し、自動複屈折計(王子計測機器社製、商品名「KOBRA−21ADH」)を用いて、そのMD方向及びTD方向それぞれについて20mm間隔でレターデーションを測定し、小数点以下一桁の値に四捨五入して面内レタデーション測定値とした。このように測定した全測定値の平均値を求め、これをフィルムの面内レタデーションとした。
また、その変動率を、面内レタデーション測定値の最大値、最小値及び平均値から下記式に従って算出した。
変動率(%)={(最大値−最小値)/平均値}×100
上記(1)と同様にして、得られる遅相軸の方位(屈折率の最大方位)を配向角として、小数点以下一桁の値に四捨五入して配向角測定値としたた。このように測定した全測定値の平均値を求めフィルム面内の平均値と変動幅(最大値と最小値の差)を求めた。ただし、フィルムのTD方向側を0°と定義する。
(1)において測定した面内レターデーション変動率、(2)において測定した配向角の変動幅を用い、下記基準にて判定し、面内レターデーション変動率と配向角の変動幅について、判定結果が低くなる方を光学均一性の評価として採用した。
・レターデーション変動率
○:10%以下
△:10%を越え、20%以下
×:20%を越える
・配向角変動幅
○:3°以下
△:3°を越え、5°以下
×:5°を越える
フィルムを90℃の熱風オーブン中に100時間静置し、熱処理後のレターデーション(Reh)を複屈折計(王子計測機器社製、商品名「KOBRA−21ADH」)により測定し、熱処理前のレターデーション(Re0)と熱処理後のレターデーション(Reh)から、下記式に従って、面内レタデーションの低下率を求めた。
面内レターデーション低下率(%)
={(Re0−Reh)/Re0}×100
(4)において測定した面内レターデーション低下率を用いて、下記基準で評価した。
×:7%を越えるもの
△:5%を越え、7%以下のもの
○:5%以下のもの
フィルムを積層し、熱プレスにより溶融後、冷却し3mm厚の板状サンプルを得た。このサンプルをASTM−D−1525に準じて測定した(荷重9.8N、昇温速度2℃/min)。
(7)(ビカット軟化温度+30℃)におけるMD方向、TD方向の加熱収縮応力の差(ORS差)
ASTM−D−1504に準拠し、フィルムのMD方向とTD方向のそれぞれについて、(ビカット軟化温度+30℃)に調整したシリコーンオイル浴中で、配向緩和応力のピーク値を測定し、MD方向とTD方向の差の絶対値をとり、小数点以下一桁の値に四捨五入した値を(ビカット軟化温度+30℃)におけるMD方向、TD方向の加熱収縮応力の差(ORS差)とした。
(8)透明性(HAZE)の評価
ASTM−D1003に準拠して、フィルムの透明度を測定し、小数点以下一桁の値に四捨五入した測定値を用い、下記基準で評価した。
×:3%を越えるもの
△:1%を越え、3%以下のもの
○:1%以下のもの
二軸延伸時における延伸性について、下記基準で評価した。
×:二軸延伸時にフィルムが破れたもの
○:二軸延伸が可能であったもの
(10)フィルムの二次加工性の評価
二次加工性は、フィルムの打ち抜きで評価した。ダンベル社製の打ち抜き型を用いて、引っ張り強度測定のJIS K7127 2号形試験片を打ち抜き、これを5回繰り返し、下記の基準で評価した。
○:5回とも割れない
△:1回でも割れた場合
×:5回とも割れた場合
Metricon社製レーザー屈折計Model2010を用いて、23℃で光学フィルムの550nmにおける平均屈折率nを測定した。そして、平均屈折率nとシックネスゲージにより測定したフィルム厚さd(nm)を大塚電子(株)社製複屈折測定装置RETS−100に入力し、23℃における厚み方向レタデーション(Rth)を測定した。
Macromolecules 2004,37,1062−1066に詳細に記載される複屈折測定装置を用いた。レーザー光の経路にフィルムの引っ張り装置を配置し、幅7mmの試験片に23℃で伸張応力をかけながら、その複屈折を測定した。伸張時の歪速度は20%/分(チャック間:30mm、チャック移動速度:6mm/分とした。
このようにして測定した値について、複屈折(Δn)をy軸、伸張応力(σR)をx軸としてプロットし、その関係から、最小二乗近似により初期線形領域の直線の傾きを求め、光弾性係数(CR)を算出した。
実施例で用いたスチレン系樹脂P−1〜P−3、P−5、P−6、及び比較例で用いたポリスチレンP−4の組成を表1に示す。
実施例及び比較例で用いた延伸前原反シートは、下記のキャスティング成形法により作製した。
<延伸前原反シートの作製>
L/D=32の65mmスクリューを有するTダイ付き押出機によりスチレン系樹脂を溶融・押出し、巾700mmのTダイから押出し、キャストロール上に落し、引取って延伸前の原反シートを得た。押出し条件、キャスティング条件と、得られたシートの物性を表2に示す。
(実施例1〜17、比較例1〜7)
表2に示した延伸前原反シートを、市金工業社製の同時二軸延伸機(製品名 FITZII)を用いて、同時二軸延伸を行い、巻取って実施例1〜17、比較例1〜5のフィルムを得た。同時二軸延伸機の各ゾーンの長さは、予熱ゾーン350mm、延伸ゾーン800mm、熱固定ゾーン1650mmであった。
表3に延伸条件とフィルム物性を示す。なお、実施例1〜17、比較例1〜7のフィルムの厚み方向のレタデーション(Rth)は何れも負の値であった。
(比較例6〜10)
表2に示した延伸前原反シートを、ロール間の周速差により縦一軸延伸を行い、巻取って比較例6〜10のフィルムを得た。
表5に延伸条件とフィルム物性を示す。
また、ビカット軟化温度が115℃〜138℃であり、熱処理後のレターデーション低下率が低く、耐熱性にも優れていた。
また、一軸方向にしか延伸しなかった比較例5のフィルムは、ビカット軟化温度が115℃であり、熱処理後の面内レターデーション低下率が低く、耐熱性に優れたものであるが、二次加工性に劣っていた。
さらに、スチレン系樹脂として、本発明のスチレン系樹脂を用いなかった比較例6、7のフィルムは、ビカット軟化温度が106℃と低く、また、熱処理後の面内レタデーション低下率が高く、耐熱性に劣っていた。比較例6、7のフィルムは、また、光弾性係数の絶対値もかった。
比較例2、3は、実施例6と同一の原反シートを用い、同時二軸延伸したものであるが、実施例6よりも高温の158℃、153℃で延伸したため、加熱収縮応力のMD方向とTD方向の差が小さくなったものである。面内レターデーションが低く、二次加工性も△であった。
比較例4は、同時二軸延伸法により、同時二軸延伸したものであるが、延伸温度が低くすぎ、しかも、TD/MD延伸比を大きくしたため、加熱収縮応力のMD方向とTD方向の差が大きくなったものである。
また、ポリカーボネート(旭化成(株)製 WONDERLITE PC−110)フィルム、市販のTAC(トリアセチルセルロース)フィルム(LOFO High Tech Film社製 商品名TACPHAN)の光弾性係数を比較例10、11として示す。本発明のフィルムはRthの値が負であるのに対して比較例12、13のフィルムはRthの値がプラスであった。また、本発明のフィルムと比較して比較例12、13のフィルムは光弾性係数の絶対値が大きかった。
特に、本発明のフィルムは、光学均一性に優れ、加工性、耐熱性、透明性を兼ね備えているので、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイに用いられる保護フィルムや位相差フィルムとして好適に用いることができる。
とりわけ、本発明のフィルムは、厚み方向レタデーションが負の値であることが望まれるIPSモードの液晶ディスプレイ用位相差フィルムとして好適に用いることができる。
Claims (15)
- スチレン系樹脂を50重量%以上含む光学異方性フィルムであって、
ASTM−D1504法に準じて測定した(ビカット軟化温度+30℃)における加熱収縮応力の流れ(MD)方向と巾(TD)方向との差が0.5〜4.0MPa、
面内レターデーションが50〜1000nmであり、
前記スチレン系樹脂が、スチレン系単量体と、不飽和カルボン酸単量体及び/又は不飽和ジカルボン酸無水物単量体を単量体成分として含む重合体である二軸方向に延伸された
光学異方性フィルム。 - 配向角(フィルム平面内での屈折率の最大方位)の変動幅が、5°以下である請求項1に記載の光学異方性フィルム。
- 面内レターデーションの変動率が、10%以下である請求項1又は2に記載の光学異方性フィルム。
- ASTM−D1525法に準じて測定したビカット軟化温度が、110〜140℃である請求項1から3のいずれか1項に記載の光学異方性フィルム。
- 90℃で100時間熱処理した後の面内レターデーション低下率が、7%以下である請求項1から4のいずれか1項に記載の光学異方性フィルム。
- ASTM−D1003法で測定した透明度(HAZE)が、3%以下である請求項1から5のいずれか1項に記載の光学異方性フィルム。
- 前記スチレン系樹脂が、スチレン系単量体と少なくとも不飽和カルボン酸単量体とを単量体成分として含む重合体である請求項1から6のいずれか1項に記載の光学異方性フィ
ルム。 - 前記スチレン系樹脂が、スチレン系単量体と少なくとも不飽和ジカルボン酸無水物単量体とを単量体成分として含む重合体である請求項1から6のいずれか1項に記載の光学異
方性フィルム。 - 前記スチレン系単量体が、スチレンである請求項7又は8に記載の光学異方性フィルム。
- 前記不飽和カルボン酸単量体が、メタクリル酸である請求項7に記載の光学異方性フィルム。
- 前記不飽和ジカルボン酸無水物単量体が、無水マレイン酸である請求項8に記載の光学異方性フィルム。
- 光弾性係数の絶対値が、7×10-12(/Pa)未満である請求項1から11のいずれか1項に記載の光学異方性フィルム。
- Rthの値が、負である請求項1から12のいずれか1項に記載の光学異方性フィルムからなる位相差フィルム。
- 水平電界(IPS)モード液晶ディスプレイ用である請求項13に記載の位相差フィルム。
- スチレン系単量体と、不飽和カルボン酸単量体及び/又は不飽和ジカルボン酸無水物単量体とを単量体成分として含むスチレン系樹脂を溶融押出して、スチレン系樹脂シートを得る工程と、
該スチレン系樹脂シートを、延伸温度が(ビカット軟化温度+10℃)〜(ビカット軟化温度+35℃)、トータル延伸倍率が1.5〜4.0倍、MD方向とTD方向の延伸比(MD方向の延伸倍率/TD方向の延伸倍率)が1.3〜3.8、かつ、TD方向の延伸倍率が1.03〜1.40の条件で二軸延伸する工程と
を含む光学異方性フィルムの製造方法。
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