JP5191082B2 - 電線、電力ケーブル用ポリエチレン樹脂材料およびその組成物並びにそれらを用いた電線、電力ケーブル - Google Patents
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Description
(1)当該ポリエチレン製造時の脱ガス処理工程において、負圧により当該炭化水素化合物を揮発させる方法または処理温度を上げることによって当該炭化水素化合物を揮発させる方法、
(2)製造時のペレット化工程において、押出機に設けたベント口から負圧により当該炭化水素化合物を引く方法、
(3)重合後のグラニュールまたはペレットを、60℃以上の温水中で、または温水中、かつ不活性ガス中で溶存酸素0.5mg/L以下の低酸素濃度雰囲気下、攪拌により炭化水素化合物を低減する方法、
(4)重合後のグラニュールまたはペレットを60℃以上、の空気中、または不活性ガス中で、炭化水素化合物を揮発させる方法。
[5]本発明の水架橋性電線、電力ケーブル用ポリエチレン樹脂組成物は、ポリエチレン樹脂材料の揮発性有機化合物を下記(1)〜(4)のいずれかの方法で除去した[2]または[3]に記載の電線、電力ケーブル用ポリエチレン樹脂組成物。
(1)当該ポリエチレン製造時の脱ガス処理工程において、負圧により当該炭化水素化合物を揮発させる方法または処理温度を上げることによって当該炭化水素化合物を揮発させる方法、
(2)製造時のペレット化工程において、押出機に設けたベント口から負圧により当該炭化水素化合物を引く方法、
(3)重合後のグラニュールまたはペレットを、60℃以上の温水中で、または温水中、かつ不活性ガス中で溶存酸素0.5mg/L以下の低酸素濃度雰囲気下、攪拌により炭化水素化合物を低減する方法、
(4)重合後のグラニュールまたはペレットを60℃以上、の空気中、または不活性ガス中で、炭化水素化合物を揮発させる方法。
[6]本発明の電線、電力ケーブルは、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のポリエチレン樹脂材料またはポリエチレン樹脂組成物を絶縁層および/または被覆層に用いたことを特徴とする電線、電力ケーブルである。
本発明のポリエチレン樹脂材料は、イオン重合法で製造される(a)密度0.91g/cm3〜0.97g/cm3、(b)メルトマスフローレイト(MFR)0.1g/10分〜5g/10分、(c)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が7以上のポリエチレン樹脂100〜60質量%と他のポリオレフィン系樹脂0〜40質量%から構成され、かつ(イ)炭素数12以下の炭化水素化合物の含有量が50ppm以下、および/または(ロ)分子量500以下、融点80℃以下の酸化防止剤の含有量が10ppm以下の性状を満足するものであることを特徴とするものである。イオン重合法では、主にチーグラー系触媒、クロム系触媒、メタロセン系触媒で分子量分布を制御して製造されることによって、高圧ラジカル重合法で製造される低密度ポリエチレンと比較して低分子量成分が少ないため、揮発性の高い炭素数12以下の炭化水素化合物の含有量が極めて少ないポリエチレンを得ることができ、また、耐ストレスクラック性の良い電線、電力ケーブルを提供することが可能となるものである。
本発明のポリエチレン樹脂の(a)密度(JIS K6922−1(1997)、JIS K6922−2(1997)、密度勾配管法で測定)は、0.91g/cm3〜0.97g/cm3、好ましくは0.920/cm3〜0.960g/cm3、より好ましくは0.920g/cm3〜0.950g/cm3である。
密度が0.91g/cm3未満では、機械的強度、耐熱性等が低下する虞が生じる。また、密度が0.97g/cm3を超えるものは、耐ストレスクラック性や可撓性等が劣るものとなる虞が生じる。
装置:WATERS社製 GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製 MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
標準ポリスチレン:東ソー製、F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000
校正曲線:標準ポリスチレンを、0.5mg/mLとなるようにo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
分子量の換算:分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4 α=0.7
PE:K=3.92×10−4 α=0.733
炭素数12以下の炭化水素化合物の含有量が50ppmを超えると、電線、電力ケーブルからの有機揮発成分量が多くなるため、クリーンルーム内で使用される場合には半導体関連製品が有機汚染される虞があり、当該炭化水素化合物の含有量は、50ppm以下、好ましくは30ppm以下、より好ましくは20ppm以下、更に好ましくは15ppm以下で、特に好ましくは10ppm以下、1ppm以下と少ない程好ましいが、分子量分布を持つポリエチレンの低分子量成分を少なくすることは技術的に非常に難しく、かつ本発明ではかなり高温の条件で揮発する炭化水素化合物の量をガスクロマトグラフィーにより定量しているため、主に室温で使用される電線、電力ケーブル用途には、本発明の測定方法による当該炭化水素化合物の含有量が50ppm以下で本発明の効果が得られる。
(加熱追出し、捕集条件)
装置:GERSTEL社製TDS
加熱条件:150℃(40℃から昇温速度60℃/分)、10分
キャリアガス:ヘリウム、流量50mL/分
捕集温度:−150℃
(GC/MS測定条件)
装置:Agilent社製GC HP6890
Agilent社製Mass Sensitive Detector 5973N(EI)
カラム:DB−5(長さ60m、0.25mm・ID、1.0μm・Df)
測定温度:捕集成分の加熱325℃、10分間
カラム温度300℃(50℃から昇温速度10℃/分)
キャリアガス:ヘリウム、流量1.4mL/分
測定モード:MS(Scan−EI Positive)
測定質量域:m/z14〜500
炭化水素化合物の炭素数の定性は、n−ヘプタンを溶媒として炭素数10〜30まで炭素数2毎の脂肪族飽和直鎖炭化水素の約1000μg/mL溶液を調製し、当該溶液1μLを加熱追出し管内で300℃、5分間加熱して捕集後、ポリエチレン試料と同条件でGC/MS測定して得られる保持時間から求めた。
炭素数12以下の炭化水素化合物の保持時間の範囲:15.2分以下
炭素数30以下の炭化水素化合物の保持時間の範囲:46.5分以下
定量質量域:m/z57
揮発成分量:S=(APE−AB)/(KC20×wPE) (ppm)
KC20=(AC20−AB)/wC20
ここで、APEは試料から発生した炭化水素化合物の保持時間内に得られる全てのピーク面積、ABはブランクのピーク面積、KC20はn−エイコサンの重量あたりのピーク面積で、標準n−エイコサンのピーク面積(AC20)とブランクのピーク面積(AB)の差を注入したn−エイコサンの重量(wC20、μg)で除した値、およびwPEは測定した試料の重量(g)である。
また、本発明のポリエチレン樹脂の炭素数12以下の炭化水素化合物の含有量を50ppm以下に低減するために、前述のようなグラニュールまたはペレットを60℃以上、好ましくは80℃以上の温水、または空気中などで加熱する方法を用いる場合、酸化防止剤が無添加であると熱劣化する虞があるので、分子量500を超え、かつ融点80℃を超える酸化防止剤が少量でも添加されていることが好ましい。
本発明のポリエチレン樹脂には、成形性、耐熱性、表面外観、耐ストレスクラック性等の物性を向上させるために、前記のポリエチレン樹脂に他のポリオレフィンを目的に応じて本発明の範囲内で適宜配合することができる。他のポリオレフィンとしては、高圧ラジカル重合法で製造される低密度ポリエチレン(エチレン単独重合体、エチレン・炭素数3〜10のα−オレフィン(例えば、プロピレン等)共重合体)、エチレンとビニルエステル(例えば、酢酸ビニル等)、α,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸−n−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等)、酸無水物(例えば、無水マレイン酸等)、ビニルシラン(例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等)、ブタジエン、ジビニルベンゼン、ペンタジエン等との二元以上のランダム、ブロック、ないしはグラフト共重合体、およびこれらの混合物、メタロセン系触媒を用いて製造される密度0.88〜0.92g/cm3の低密度ポリエチレン(エチレン・α−オレフィン共重合体)、ポリプロピレン等が挙げられる。これら他のポリオレフィンの配合量は、ポリエチレン樹脂60質量%以上に対して40質量%以下、好ましくはポリエチレン樹脂98〜70質量%に対して2〜30質量%、より好ましくはポリエチレン樹脂95〜80質量%に対して5〜20質量%の範囲で配合されることが好ましい。
本発明の水架橋性電線、電力ケーブル用ポリエチレン樹脂組成物は、電線、電力ケーブル用ポリエチレン樹脂材料に、不飽和アルコキシシラン化合物、有機過酸化物および所望によりシラノール縮合触媒を配合してなる水架橋性電線、電力ケーブル用ポリエチレン樹脂組成物である。
また、他の水架橋性電線、電力ケーブル用ポリエチレン樹脂組成物の態様は、電線、電力ケーブル用ポリエチレン樹脂材料に、不飽和アルコキシシラン化合物、有機過酸化物および所望によりシラノール縮合触媒を配合してなる水架橋性電線、電力ケーブル用ポリエチレン組成物を有機過酸化物の分解温度以上に上げて製造される水架橋性電線、電力ケーブル用ポリエチレン樹脂組成物である。
これらの組成物においても上記(イ)および(ロ)の性状を満足することが肝要である。
水架橋方法としては、不飽和アルコキシシラン化合物、有機過酸化物を当該ポリエチレンと共に有機過酸化物の分解温度以上の温度で押出成形して、不飽和アルコキシシラングラフトポリエチレン組成物を得た後、別にシラノール縮合触媒と当該ポリエチレンと混合させた後押出成形して混練したシラノール縮合触媒を含むポリエチレン組成物とを、電線、電力電線、電力ケーブルの被覆成形時に適当に混合してケーブル製品を得る方法(2工程Sioplas法)、不飽和アルコキシシラン化合物、有機過酸化物、シラノール縮合触媒、当該ポリエチレンを同時に混合させた組成物とした後、有機過酸化物の分解温度以上の温度で電線、電力電線、電力ケーブルを被覆成形してケーブル製品を得る方法(1工程Monosil法)等がある。
水架橋方法では、不飽和アルコキシシラン化合物、有機過酸化物、シラノール縮合触媒および酸化防止剤等が混合されたポリエチレン組成物を被覆成形して得た電線、電力ケーブルを、その後空気中、熱水中または水蒸気中の水により経時で架橋することを特徴とするが、60℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上の熱水、または水蒸気中で架橋処理することが、電線、電力ケーブルからの揮発性有機化合物を同時に低減する方法として好ましい。
また、水架橋方法は、上記の水架橋性電線、電力ケーブル用ポリエチレン組成物を用いて、有機過酸化物の分解温度以上に上げて製造されるものであれば混合方法等は特に限定されず、例えば、事前に不飽和アルコキシシラン化合物、有機過酸化物、当該ポリエチレンを混合させた後押出機に投入し、その後サイドフィーダーでシラノール縮合触媒と当該ポリエチレンの混合物を投入し同一押出機で成形する方法、不飽和アルコキシシラン化合物、有機過酸化物、当該ポリエチレンを混合させた後押出機に投入し、不飽和アルコキシシラングラフトポリエチレン組成物を得た後、続いて当該組成物を、シラノール触媒と当該ポリエチレンの混合物と共に第二の押出機を用いて溶融混練・成形する方法、当該ポリエチレンを押出機に投入後、不飽和アルコキシシラン化合物、有機過酸化物、シラノール縮合触媒を混合したものまたはそれぞれを、サイドフィーダーで供給し同一押出機で溶融混練・成形する方法、不飽和アルコキシシラン化合物、有機過酸化物、シラノール縮合触媒を分散させるために、当該ポリエチレンをあらかじめ粉砕機などによって粉粒状として使用する方法等、公知の水架橋方法が使用できる。
また、水架橋の際には、酸化防止剤、メヤニ防止剤等の公知の添加剤を混合させることにより、当該電線、電力ケーブルの熱老化性や成形加工性を向上させることができる。
本発明で使用する不飽和アルコキシシラン化合物としては、以下のものが挙げられる:γ−メタアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス−(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルメチルジエトキシシラン、ジアリルジメトキシシラン、アリルフェニルジエトキシシラン、メトキシビニルジフェニルシラン、ドデセニルジプロポキシシラン、ジデセニルジメトキシシラン、ジドデセニルメトキシシラン、シクロヘキセニルトリメトキシシラン、ヘキセニルヘキソキシジメトキシシラン、ビニル−トリ−n−ブトキシシラン、ヘキセニル−トリ−n−ブトキシシラン、ビニル−トリス(n−ブトキシ)シラン、ビニル−トリス(n−ペントキシ)シラン、ビニル−トリス(n−ヘキソキシ)シラン、ビニル−トリス(n−ヘプトキシ)シラン、ビニル−トリス(n−オクトキシ)シラン、ビニル−トリス(n−ドデシルオキソ)シラン、ビニル−ビス(n−ブトキシ)メチルシラン、ビニル−ビス(n−ペントキシ)メチルシラン、ビニル−ビス(n−ヘキソキシ)メチルシラン、ビニル−(n−ブトキシ)ジメチルシラン、ビニル−(n−ペントキシ)ジメチルシラン、アリルジペントキシシラン、ブテニルジデコキシシラン、デセニルジデコキシシラン、ドデセニルトリオクトキシシラン、ヘプテニルトリヘプキシシラン、アリルトリプロポキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ジアリル−ジ−n−ブトキシシラン、ペンテニルトリプロポキシシラン、アリル−ジ−n−ブトキシシラン、第二ブテニルトリエトキシシラン、β−メタクリルオキシエチル−トリス(n−ブトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(n−ドデシル)シラン。なお、不飽和アルコキシシランは当該ポリエチレン100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜3重量部配合される。
本発明で使用する有機過酸化物としては、グラフト反応条件下でポリオレフィン系樹脂に遊離ラジカル部位を生成することができ、反応温度において6分より短い半減期、好ましくは1分よりも短い半減期を有する任意の化合物を使用でき、代表的なものとしては、ジクミルパーオキサイド、ジ−第三ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジ(ペルオキシベンゾエート)ヘキシン−3等が挙げられる。有機過酸化物は当該ポリエチレン100重量部に対して0.01〜0.75重量部、好ましくは0.02〜0.3重量部配合される。
本発明で使用するシラノール縮合触媒としては、シリコーンのシラノール間の脱水縮合を促進する触媒として使用されるものであり、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオリテート、酢酸第一錫、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、カプリル酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸鉄、チタン酸エステル、チタン酸テトラブチルエステル、チタン酸テトラノニルエステル、ビス(アセチルアセトニトリル)ジ−イソプロピルチタン−エチルアミン、ヘキシルアミン、ジブチルアミン、ピリジン等が挙げられる。シラノール縮合触媒の配合量は、当該ポリエチレン100重量部に対して0.001〜10重量部程度であり、0.05〜5重量部が好ましい。
(1)本発明の電線、電力ケーブルとは、前記のポリエチレンを用いて絶縁層および/または被覆層に用いたことを特徴とする電線、電力電線、電力ケーブルである。
(2)他の電線、電力ケーブルの態様は、前記の水架橋性電線、電力ケーブル用ポリエチレン組成物を絶縁層および/または被覆層に用いて、水架橋したことを特徴とする電線、電力ケーブルである。
(3)さらに、第3の電線、電力ケーブルの態様は、前記のポリエチレンまたは水架橋電線、電力ケーブル用ポリエチレン組成物を絶縁層とし、前記のポリエチレンを最外層とする電線、電力ケーブル(以下、単にケーブルと称す)である。
本発明のケーブルは、上記の本発明のポリエチレンを用いたケーブルであれば、特に限定されず(1)と(2)のケーブルを組み合わせたものでもよいし、該絶縁層を介して、半導電層等が設けられていても良い。例えば絶縁層を架橋体のポリエチレンとし、被覆層を未架橋体としたケーブル、また逆に絶縁層を未架橋体のポリエチレンとし、被覆層を架橋体としたケーブル等が挙げられる。
また、本発明のケーブルは、例えば通常のポリエチレンを絶縁層に用い、被覆層にのみ密度の高い当該ポリエチレン樹脂材料を用いることにより、ケーブル内部から有機揮発成分が揮散するのを被覆層で妨げる等のケーブル構造体として用いることも可能である。
なお、実施例および比較例で用いた低密度ポリエチレン樹脂の性状は、以下の通りである。
LLDPE1:クロム系触媒により気相重合法で製造された、密度0.922g/cm3、MFR0.6g/10分、Mw/Mn10.0、分子量500以下、融点80℃以下のフェノール系酸化防止剤を含まない直鎖状低密度ポリエチレン(エチレン・1−ブテン共重合体)。
LLDPE2:LLDPE1、70重量%に、高圧ラジカル重合法で製造された、密度0.920g/cm3、MFR0.5g/10分の低密度ポリエチレン30重量%を混合し、口径50mmの単軸押出機を用いて回転数50rpm、温度210℃で溶融混練した後冷却、ペレット化して得られた、密度0.921g/cm3、MFR0.5g/10分、Mw/Mn8.9、分子量500以下、融点80℃以下のフェノール系酸化防止剤を含まない低密度ポリエチレン樹脂組成物。
HDPE1:チーグラー系触媒により二つの重合槽を用いてスラリー重合法で製造された、密度0.945g/cm3、MFR1.0g/10分、Mw/Mn11.2、分子量500以下、融点80℃以下のフェノール系酸化防止剤を含まない高密度ポリエチレン(エチレン・1−ブテン共重合体)。
HDPE2:クロム系触媒によりスラリー重合法で製造された、密度0.945g/cm3、MFR0.9g/10分、Mw/Mn7.1、分子量500以下、融点80℃以下のフェノール系酸化防止剤を含まない高密度ポリエチレン(エチレン・1−ブテン共重合体)。
HDPE3:チーグラー系触媒により一つの重合槽を用いてスラリー重合法で製造された、密度0.959g/cm3、MFR0.5g/10分、Mw/Mn4.1、分子量500以下、融点80℃以下のフェノール系酸化防止剤を含まない高密度ポリエチレン(エチレン・プロピレン共重合体)。
また、ポリエチレンを用いた被覆電線の成形は、下記の条件で実施した。
成形機:日本製鋼所製、電線被覆成形機
押出機:口径50mm、単軸押出機、スクリューL/D22
ダイス:ダイス出口外径1.2mm
成形温度:220〜240℃
スクリュー回転数:15〜20rpm
引取速度:50m/分
冷却:水槽温度30℃
電線形状:銅芯線直径0.9mm、被覆電線直径1.5〜1.6mm
得られた直鎖状低密度ポリエチレン樹脂材料を用いて電線被覆成形を行い、約50mの被覆電線を得た。得られた被覆電線の表面外観は良好であった。得られた被覆電線からポリエチレン被覆層のみを切り出し、炭素数12以下の炭化水素化合物の含有量を測定した。結果を表1に示す。
得られた高密度ポリエチレン樹脂材料を用いて実施例1と同様にして被覆電線を得た。得られた被覆電線の表面外観は良好であった。得られた被覆電線からポリエチレン被覆層のみを切り出し、炭素数12以下の炭化水素化合物の含有量を測定した。結果を表1に示す。
得られた高密度ポリエチレン樹脂材料を用いて実施例1と同様にして被覆電線を得た。得られた被覆電線の表面外観は良好であった。得られた被覆電線からポリエチレン被覆層のみを切り出し、炭素数12以下の炭化水素化合物の含有量を測定した。結果を表1に示す。
得られた低密度ポリエチレン樹脂材料を用いて実施例1と同様にして被覆電線を得た。得られた被覆電線の表面外観は良好であった。得られた被覆電線からポリエチレン被覆層のみを切り出し、炭素数12以下の炭化水素化合物の含有量を測定した。結果を表1に示す。
[比較例1]
[比較例2]
[比較例3]
HDPE4、10kgを加熱処理せず、炭素数12以下の炭化水素化合物の含有量が48ppmの高密度ポリエチレン樹脂材料を用いて実施例1と同様にして被覆電線を得た。得られた被覆電線の表面外観は良好であった。得られた被覆電線からポリエチレン被覆層のみを切り出し、炭素数12以下の炭化水素化合物の含有量を測定した。結果を表1に示す。
また、炭素数12以下の炭化水素化合物の測定と同様の方法で求めた分子量が500以下、融点が80℃以下のフェノール系酸化防止剤(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)の含有量の測定結果を表1に示す。当該酸化防止剤の定量は、前記炭化水素化合物の測定方法において、定量質量域m/z57ではなくトータルイオンクロマトグラムを用い、あらかじめ求めた当該酸化防止剤のピークである保持時間20.0min付近に認められるピーク強度を用い、前記炭化水素化合物の測定と同様にn−エイコサン換算で求めた。
[比較例4]
実施例1〜4は、炭素数12以下の炭化水素化合物の含有量が50ppm以下のため、電線被覆した後も被覆層からの揮発性炭化水素化合物の揮発量は低い。
比較例1、2は、炭素数12以下の炭化水素化合物の含有量が50ppmを超えるため、電線被覆した後の被覆層からの揮発性炭化水素化合物の揮発量が多い。
比較例3は、炭素数12以下の炭化水素化合物の含有量が50ppm以下であるものの、分子量500以下、融点80℃以下の酸化防止剤が10ppmを超えるため、電線被覆した後も被覆層からの揮発性成分として酸化防止剤が検出される。
比較例4は、Mw/Mnが小さいため成形性が劣り、被覆電線の表面外観も悪かった。
Claims (7)
- イオン重合法で製造される
(a)密度0.91g/cm3〜0.97g/cm3、
(b)メルトマスフローレイト(MFR)0.1g/10分〜5g/10分、
(c)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が7以上のポリエチレン樹脂100〜60質量%と他のポリオレフィン樹脂0〜40質量%からなるポリエチレン樹脂材料の揮発性有機化合物を除去してなり、かつ
(イ)炭素数12以下の炭化水素化合物の含有量が50ppm以下、および
(ロ)分子量500以下、融点80℃以下の酸化防止剤の含有量が10ppm以下の性状を満足することを特徴とする電線、電力ケーブル用ポリエチレン樹脂材料。 - イオン重合法で製造される
(a)密度0.91g/cm3〜0.97g/cm3、
(b)メルトマスフローレイト(MFR)0.1g/10分〜5g/10分、
(c)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が7以上のポリエチレン樹脂100〜60質量%と他のポリオレフィン樹脂0〜40質量%からなるポリエチレン樹脂材料の揮発性有機化合物を除去し、さらに不飽和アルコキシシラン化合物、有機過酸化物および所望によりシラノール縮合触媒を配合してなり、かつ
(イ)炭素数12以下の炭化水素化合物の含有量が50ppm以下、および
(ロ)分子量500以下、融点80℃以下の酸化防止剤の含有量が10ppm以下の性状を満足することを特徴とする水架橋性電線、電力ケーブル用ポリエチレン樹脂組成物。 - イオン重合法で製造される
(a)密度0.91g/cm3〜0.97g/cm3、
(b)メルトマスフローレイト(MFR)0.1g/10分〜5g/10分、
(c)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が7以上のポリエチレン樹脂100〜60質量%と他のポリオレフィン樹脂0〜40質量%からなるポリエチレン樹脂材料の揮発性有機化合物を除去し、さらに不飽和アルコキシシラン化合物、有機過酸化物および所望によりシラノール縮合触媒を配合してなるポリエチレン樹脂組成物を有機過酸化物の分解温度以上に上げて製造されてなり、かつ
(イ)炭素数12以下の炭化水素化合物の含有量が50ppm以下、および
(ロ)分子量500以下、融点80℃以下の酸化防止剤の含有量が10ppm以下の性状を満足することを特徴とする水架橋性電線、電力ケーブル用ポリエチレン樹脂組成物。 - ポリエチレン樹脂材料の揮発性有機化合物を下記(1)〜(4)のいずれかの方法で除去した請求項1に記載の電線、電力ケーブル用ポリエチレン樹脂材料。
(1)当該ポリエチレン製造時の脱ガス処理工程において、負圧により当該炭化水素化合物を揮発させる方法または処理温度を上げることによって当該炭化水素化合物を揮発させる方法、
(2)製造時のペレット化工程において、押出機に設けたベント口から負圧により当該炭化水素化合物を引く方法、
(3)重合後のグラニュールまたはペレットを、60℃以上の温水中で、または温水中、かつ不活性ガス中で溶存酸素0.5mg/L以下の低酸素濃度雰囲気下、攪拌により炭化水素化合物を低減する方法、
(4)重合後のグラニュールまたはペレットを60℃以上、の空気中、または不活性ガス中で、炭化水素化合物を揮発させる方法。 - ポリエチレン樹脂材料の揮発性有機化合物を下記(1)〜(4)のいずれかの方法で除去した請求項2または3に記載の電線、電力ケーブル用ポリエチレン樹脂組成物。
(1)当該ポリエチレン製造時の脱ガス処理工程において、負圧により当該炭化水素化合物を揮発させる方法または処理温度を上げることによって当該炭化水素化合物を揮発させる方法、
(2)製造時のペレット化工程において、押出機に設けたベント口から負圧により当該炭化水素化合物を引く方法、
(3)重合後のグラニュールまたはペレットを、60℃以上の温水中で、または温水中、かつ不活性ガス中で溶存酸素0.5mg/L以下の低酸素濃度雰囲気下、攪拌により炭化水素化合物を低減する方法、
(4)重合後のグラニュールまたはペレットを60℃以上、の空気中、または不活性ガス中で、炭化水素化合物を揮発させる方法。 - 請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリエチレン樹脂材料またはポリエチレン樹脂組成物を絶縁層および/または被覆層に用いたことを特徴とする電線、電力ケーブル。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリエチレン樹脂材料またはポリエチレン樹脂組成物を絶縁層とし、請求項1に記載のポリエチレン樹脂材料を最外層とすることを特徴とする電線、電力ケーブル。
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