JP5190207B2 - 亜鉛又はその塩を含むアミダーゼの保存剤、活性賦活剤及び失活予防剤 - Google Patents
亜鉛又はその塩を含むアミダーゼの保存剤、活性賦活剤及び失活予防剤 Download PDFInfo
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また、Ochrobactrum anthropi NCIMB40321由来のアミダーゼについて、特表2004−536608においては反応液中への亜鉛塩の添加効果、培養液中への亜鉛塩の添加効果が示されている。さらに、同菌株ついて、Appl. Environ. Microbiol (2005) 71, 7961-7973においては亜鉛、マグネシウム、マンガンの金属塩の反応液中への添加効果の記載がある。
(1)亜鉛又はその塩を含む、アミダーゼの保存剤。
(2)亜鉛又はその塩を含む、アミダーゼの活性賦活剤。
(3)亜鉛又はその塩を含む、アミダーゼの失活予防剤。
(4)亜鉛又はその塩を含む、アミダーゼ保存用キット。
(5)亜鉛又はその塩を含む、アミダーゼ活性賦活用キット。
(6)亜鉛又はその塩を含む、アミダーゼ失活予防用キット。
(7)アミダーゼを、亜鉛又はその塩を用いて処理することを特徴とするアミダーゼの保存方法。
(8)アミダーゼを、亜鉛又はその塩を用いて処理することを特徴とするアミダーゼの活性賦活方法。
(9)アミダーゼを、亜鉛又はその塩を用いて処理することを特徴とするアミダーゼの失活予防方法。
上記方法においては、処理に際し加熱することが好ましい。
本発明は、亜鉛又はその塩を含むアミダーゼの保存剤、活性賦活剤、活性保存剤、保存キット、活性賦活キット及び活性保存キット並びにその使用方法である。
アミダーゼ酵素液に亜鉛又はその塩を添加して、亜鉛又はその塩の存在下で熱処理することにより、亜鉛を添加しないで熱処理した場合に比べて活性が数倍向上することが示された。また、加熱処理後に亜鉛塩を添加した場合も活性向上は認められた。本発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。
本発明において、アミダーゼは、好熱菌由来、常温菌由来、好冷菌由来及び低温菌由来のいずれのものでもよい。
ここで、「好熱菌」とは、一般には55℃以上で生育可能な細菌をいう(極限環境微生物ハンドブック、大島泰郎監修、株式会社サイエンスフォーラム)。また、一般に「好冷菌」とは最適生育温度が15℃以下であって生育限界温度が20℃前後の菌を、「低温菌」とは最適生育温度が15℃以下であって生育限界温度が20℃以上のものをいう。
「常温菌」とは、上記好熱菌、好冷菌及び低温菌の定義に当てはまらないものを言い、従って、最適生育温度が15〜45℃であって55℃以上で生育不可能な細菌を指す。現在単離されている微生物の多くは常温菌であるが、常温菌の例としては、限定されるわけではないが、エンテロバクター(Enterobacter属)に属する細菌、エッシェリヒア(Escherichia)属に属する細菌、クレブシエラ(Krebsiella)属に属する細菌、オクロバクトラム(Ochrobactrum)属に属する細菌、ロドコッカス(Rhodococcus)属に属する細菌、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属に属する細菌等を挙げることができる。
配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列としては、例えば、(i) 配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1〜10個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii)配列番号2で示されるアミノ酸配列の1〜10個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、(iii)配列番号2で示されるアミノ酸配列に1〜10個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iv)上記(i)〜(iii)を組み合わせたアミノ酸配列が挙げられる。
このような遺伝子の例として、配列番号1で示される塩基配列と65%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは85%以上、最も好ましくは90%、95%、97%、98%又は99%の相同性(同一性)を有する塩基配列を含み、かつアミダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。
上記方法には、アミダーゼ遺伝子を含むベクター、mRNA、total RNA、cDNA、ゲノムDNA、又はそれらのライブラリーを用いることができる。また、市販のライブラリーを使用しても良い。
本明細書において、ストリンジェントな条件は、ハイブリダイゼーション後の洗浄条件として、例えば、「2×SSC、0.1%SDS、42℃」、「1×SSC、0.1%SDS、37℃」、よりストリンジェントな条件としては、例えば、「1×SSC、0.1%SDS、65℃」、「0.5×SSC、0.1%SDS、50℃」等の条件を挙げることができる。
ハイブリダイゼーションは、公知の方法によって行うことができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.」(Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))、「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons(1987-1997))等を参照することができる。
配列番号1で示される塩基配列において、1個又は数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列としては、例えば、(i) 配列番号1で示される塩基配列において、1〜10個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個)の塩基が欠失した塩基配列、(ii)配列番号1で示される塩基配列の1〜10個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個)の塩基が他の塩基で置換された塩基配列、(iii)配列番号1で示される塩基配列に1〜10個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個)の塩基が付加した塩基配列、(iv)上記(i)〜(iii)を組み合わせた塩基配列が挙げられる。
プラスミドDNAとしては、例えば、大腸菌由来のプラスミド(pBR322、pUC18、pUC19、pUC118、pUC119、pBluescriptなどのColE系プラスミド等)、放線菌由来のプラスミド(pIJ486等)、酵母由来のプラスミド(YEp13、YEp 24、Ycp50等)が挙げられる。ファージDNAとしては、λファージ(Charon4A、Charon21A、EMBL3、EMBL4、λgt10、λgt11等)、レトロトランスポゾンDNA、人工染色体DNA等が挙げられる。
大腸菌宿主としては、例えば大腸菌K12株やB株、あるいはそれら野生株由来の派生株であるJM109株、XL1-Blue株、C600株、W3110株等を挙げることができる。その他、これら菌株の変異体、組換え体及び遺伝子工学的手法による誘導体等も用いられ得る。
酵母宿主としては、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピヒア・パストリス(Pichia pastoris)等を挙げることができる。
ロドコッカス属細菌としては、例えばロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)ATCC 12674株やロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J-1株(FERM BP-1478)等を挙げることができる。
プロモーター配列としては、大腸菌由来のトリプトファンオペロンのtrpプロモーター、ラクトースオペロンのlacプロモーター、ラムダファージ由来のPLプロモーター及びPRプロモーター、枯草菌由来のグルコン酸合成酵素プロモーター(gnt)、アルカリプロテアーゼプロモーター(apr)、中性プロテアーゼプロモーター(npr)、α−アミラーゼプロモーター(amy)等を挙げることができる。また、tacプロモーター、trcプロモーターのように独自に改変、設計された配列も利用できる。
リボソーム結合配列としては、SD配列やKozak配列が知られており、これらの配列を変異遺伝子の上流に挿入することができる。原核生物を宿主に用いるときにはSD配列を、真核細胞を宿主に用いるときにはKozak配列をPCR法等により付加してもよい。SD配列としては、大腸菌由来、ロドコッカス属細菌又は枯草菌由来の配列等を挙げることができるが、所望の宿主内で機能する配列であれば特に限定されるものではない。例えば、16SリボゾームRNAの3’末端領域に相補的な配列が4塩基以上連続したコンセンサス配列をDNA合成により作製してこれを利用してもよい。
転写終結配列は必ずしも必要ではないが、ρ因子非依存性のもの、例えばリポプロテインターミネーター、trpオペロンターミネーター等が利用できる。
選択マーカーとしては、例えばジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等を挙げることができる。
これらのベクターにアミダーゼをコードする遺伝子断片を組み込むには、アミダーゼ遺伝子を含むDNAを適当な制限酵素で切断し、必要であれば適当なリンカーを付加した後、適当な制限酵素で切断したベクターと結合させることにより行うことができる。
酵母への発現プラスミドの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、例えばエレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法等を挙げることができる。
培養培地に用いる炭素源としては、グルコース、ガラクトース、フラクトース、スクロース、ラフィノース、デンプン等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール、グリセリン等のアルコール類を挙げることができる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩又はその他の含窒素化合物を挙げることができる。その他、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー、酵母エキス、各種アミノ酸等を用いてもよい。無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム、硫酸亜鉛等を挙げることができる。その他、ビタミン等を必要に応じて適宜添加してもよい。培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
ロドコッカス属細菌の培養は、4〜36℃、好ましくは20〜30℃で18〜96時間行う。
こうして得られた培養物から菌体や細胞を回収するには、遠心分離法や膜ろ過法を用いることができる。回収した形質転換体を、必要に応じて、リン酸−ナトリウム緩衝液、リン酸緩衝液等で洗浄し、懸濁することができる。
菌体又は細胞の破砕方法としては、超音波処理、フレンチプレスやホモジナイザーによる高圧処理、ガラスビーズなどによる磨砕処理、リゾチーム、セルラーゼ、ペクチナーゼ等を用いる酵素処理、凍結融解処理、低張液処理、ファージによる溶菌誘導処理等を利用することができる。破砕処理は、必要に応じて氷冷下で行う。破砕処理を行ったサンプルを「形質転換体破砕物」、「破砕物」又は「細胞抽出液全画分」とも称する。
破砕後、形質転換体破砕物から、必要に応じて菌体又は細胞の破砕残渣(細胞抽出液不溶性画分を含む)を除くことができる。残渣を除去する方法としては、例えば、遠心分離やろ過などが上げられ、必要に応じて、凝集剤やろ過助剤等を使用して残渣除去効率を上げることもできる。残渣を除去した後に得られた上清は、「細胞抽出液可溶性画分」であり、「粗精製したアミダーゼ溶液」とすることができる。
(1)亜鉛又はその塩とアミダーゼとの接触処理
本発明において、「接触」とは、亜鉛又はその塩とアミダーゼとを共存させること、すなわち亜鉛又はその塩とアミダーゼとを同一の反応系に存在させることを意味し、例えば、アミダーゼ酵素液を含む容器に亜鉛又はその塩を添加すること、亜鉛又はその塩を含む培養液中でアミダーゼ遺伝子を含む菌体(形質転換体)を培養すること、アミダーゼ遺伝子を含む菌体(形質転換体)又はその破砕物を含有する溶液中に亜鉛又はその塩を添加することなどが含まれる。亜鉛塩の濃度は、好ましくは0.01 mM〜30 mM、好ましくは0.1 mM〜15 mMであり、より好ましくは2 mM〜15 mMであり、さらに好ましくは5 mM〜12 mMである。
亜鉛塩としては、特に限定されるものではなく、例えば硫酸亜鉛(ZnSO4)、塩化亜鉛(ZnCl2)、等が挙げられる。
このように、アミダーゼと亜鉛又はその塩とを接触させることにより、アミダーゼの活性を増加(賦活化)させることができる。このことは、アミダーゼの活性低下(失活)を防止することを意味するものであり、これによりアミダーゼを有効に保存することができる。
アミダーゼ活性は、DL−α−アミノ酸アミドやDL−α−ヒドロキシ酸アミドを基質として一定時間反応させた後、生成するα−アミノ酸やα−ヒドロキシ酸を高速液体クロマトグラフィー等により定量し、その定量値を活性の指標として測定することができる。
本発明においては、アミダーゼを亜鉛又はその塩で処理する際に、加熱処理を行なうことにより、高活性アミダーゼを得ることができる。加熱処理とは、アミダーゼと亜鉛又はその塩との混合物を、60℃〜80℃、好ましくは65℃〜75℃の温度範囲内の環境下に曝すことを意味し、例えば、アミダーゼ溶液に亜鉛塩を添加した後、上記温度条件で5〜360分、好ましくは30〜60分処理する態様が挙げられる。
アミダーゼを上記亜鉛塩による処理、又は亜鉛塩処理と加熱処理を施すことにより、アミダーゼを24時間〜300日、好ましくは10〜100日保存することができる。また、アミダーゼ活性は、上記処理を施さないアミダーゼと比較して、110〜400%の活性に上昇させることが可能となる。その結果、アミダーゼの失活予防効果をより高くすることができる。
本発明において、亜鉛又はその塩は、アミダーゼの保存用キット、アミダーゼの活性賦活用キット、又はアミダーゼの失活予防用キットとして使用される。
本発明のキットは、上記亜鉛又はその塩に加えて、一般の測定において慣用的な成分、例えば緩衝液、生理食塩水、pH調整剤等を含んでいてもよい。また、本発明のキットは、アミダーゼを保存する方法及び/又は活性の測定方法を記載した取扱説明書等を含んでいてもよい。
(1)アミダーゼ遺伝子断片の調製
アミダーゼ遺伝子を含むプラスミドpLA205(WO00/63354号公報参照)を鋳型として、配列番号3に示す合成DNA(LTL-03)及び配列番号4に示す合成DNA(RV)をプライマーとして用い、ポリメラーゼ伸長鎖反応(PCR)により、アミダーゼ遺伝子を含むDNA断片を増幅した。
LTL-03:GAAAGCTTACATAACGCTCCTAATTAAACACGCTGTTGGG(配列番号3)
M13 primer RV:CAGGAAACAGCTATGAC(配列番号4)
一方、5μlのベクターpUC118(タカラバイオ株式会社)に10×Kバッファー(タカラバイオ(株))を3μl、滅菌水を23μl、制限酵素BamHI及びHindIIIを各1μl加え、37℃で2時間反応後、アルカリフォスファターゼ処理(Shrimp Alkaline Phosphatase、プロメガ株式会社)を行い、エタノール沈殿によりDNA断片を回収した。
BamHIとHindIIIにより切断されたこれらのDNA断片を各2μlと、solution I(DNA Ligation Kit ver.2(タカラバイオ株式会社))(10μl)を混合してライゲーション混合物を作った。該混合物を、16℃で2時間インキュベートすることでアミダーゼ遺伝子断片とベクターpUC118を結合させた。
大腸菌 JM109株をLB培地(1% バクトトリプトン、0.5%バクトイーストエキス、0.5% NaCl) 1mlに接種し37℃、5時間好気的に前培養した。得られた前培養液 0.4mlをSOB培地 40ml(2%バクトトリプトン、0.5%バクトイーストエキス、10mM NaCl 、2.5mM KCl 、1mM MgSO4 、1mM MgCl2 ) に加え、18℃で20時間培養した。当該培養物を遠心分離(3,700×g、10分間、4℃)により集菌した後、冷TF溶液 (20 mM PIPES−KOH (pH 6.0)、200 mM KCl 、10 mM CaCl2 、40mM MnCl2)を13 ml加え、0℃で10分間放置した。その後、再度遠心分離(3,700×g、10分間、4℃)し、上清を除いた。沈殿した大腸菌を冷TF溶液 3.2 mlに懸濁し、0.22 mlのジメチルスルホキシドを加え0℃で10分間放置した。その後、液体窒素下で冷凍した後、-80℃で保存した。
上記(3)で作製したコンピテントセル 200μl を氷上で解凍し、上記(2)で作製したライゲーション産物10μlに加え、0℃で30分放置した。続いて、当該コンピテントセルに42℃で30秒間ヒートショックを与え、0℃で2分間冷却した。その後、SOC 培地 (20 mM グルコース、2%バクトトリプトン、0.5%バクトイーストエキス、10 mM NaCl 、2.5 mM KCl 、1 mM MgSO4 、1mM MgCl2) 1mlを添加し、37℃にて1時間振盪培養した。培養後の培養液を各200μlずつ、 LB Amp寒天培地(アンピシリン 100mg/L 、1.5%寒天を含有するLB培地)にまき、37℃で一晩培養した。寒天培地上に生育した形質転換体コロニー複数個を 1.5mlのLB Amp培地(アンピシリン 100mg/Lを含有するLB培地)にて37℃で一晩培養した。得られた培養液を各々集菌後、Flexi Prep(GEヘルスケア バイオサイエンス社製)を用いて組換えプラスミドを回収した。得られたプラスミドの塩基配列をCEQ DTCS Quick Start Kitおよび蛍光シーケンサCEQ 2000XL DNA Analysis system(いずれもBECKMAN COULTER、米国)を用いて解析した。目的とするプラスミドをpLA301と命名した。
(1)培養
実施例1と同様にして、大腸菌K-12株(NBRC3308)のコンピテントセルを作製し、プラスミドpLA301による形質転換を行った。得られた形質転換体K-12/pLA301のコロニーを、以下に示す培地(500ml容三角フラスコ中の100ml)で37℃で12時間前振盪培養(回転数:210rpm)を行った。
前培養培地組成(pH7.2):ポリペプトンN(20g/L)、酵母エキス(5g/L)、KH2PO4(1.5g/L)、アンピシリン(0.1g/L)。
得られた前培養液20mlを以下に示す本培養培地(3Lジャーファーメンター中の2L)に植菌し、37℃または25℃で20〜52時間本培養を行った。
ポリペプトンN 20g/L
酵母エキス 5g/L
KH2PO4 1.5g/L
MgSO4・7H2O 0.5g/L
MnSO4・5H2O 0.2g/L
ZnSO4・7H2O 0.02g/L
CaCl2・2H2O 0.02g/L
プルロニック L-61 0.5g/L
フルクトース 40g/L
アンピシリン 0.1g/L
回転数は750rpm、空気流量は2L/min、内圧は常圧、pHは6.8-7.2制御(3N NaOHと5N H2SO4使用)で行った。培養の途中、適時サンプリングを行い、菌濃度(OD630)の測定、および菌体懸濁液の調製後、アミダーゼ活性測定を行った。菌体懸濁液の調製は、サンプリングして得られた培養液から遠心分離(5,800×g、10分間、4℃)により菌体を回収し、10mM リン酸−ナトリウム緩衝液(pH7.0)で洗浄した後、同緩衝液に懸濁することにより行った。
活性測定は下記のようにして行った。40℃で10分間プレインキュベートした0.5mlの菌体懸濁液又は培養液(50mMリン酸−ナトリウム緩衝液(pH7.0)により適当な濃度に希釈)に、予め40℃で加温していた0.5mlの2%ラセミ体tert-ロイシンアミド(50mM 緩衝液)を加え、40℃にて20分間反応させた後、1Mリン酸溶液を0.2ml添加して反応を停止させた。遠心(15000rpm / 5min)により菌体を除去し上清を取得し、更に0.45μmのフィルターにより菌体を完全に除去した。こうして得られた反応終了液5μlを高速液体クロマトグラフィー(分析カラム Inertsil ODS-3V(4.6x250mm GLサイエンス社製)40℃、キャリヤー:0.1%リン酸水溶液、UV検出波長=220nm)にて分析した。光学純度の測定は、上記反応終了液を高速液体クロマトグラフィー(分析カラム スミキラルOA-5000 住友化学社製、キャリアー:2mM硫酸銅水溶液/メタノール(85:15) 40℃ UV検出波長=254nm)にて分析することにより行った。
培養終了後、約2Lの培養液より遠心分離(5,800×g、10分間、4℃)により菌体を回収し、10mM リン酸−ナトリウム緩衝液(pH7.0)で洗浄した後、菌体を約200mlの同緩衝液に懸濁した。亜鉛塩(終濃度10mM)を含む菌体懸濁液は、10mlの菌体懸濁液に500mMの塩化亜鉛溶液又は硫酸亜鉛を0.2ml添加した後、撹拌することにより調製した。菌濃度は分光光度計を用いて630nmの波長で測定することにより算出した。
実施例2−(3)で調製した菌体懸濁液(菌濃度150mg乾燥菌体(以下DCと表記)/ml、活性 1.9U/mg DC)5mlを低温下(4〜7℃)で保存し、随時 50μlずつサンプリングしながら、300倍に希釈後、実施例2−(2)に記載の方法により活性測定を行った。その結果、図2に示されるように、硫酸亜鉛を含まない菌体懸濁液の場合には活性が低下していくのに対し、10mM硫酸亜鉛を含む菌体懸濁液の場合にはむしろ活性が向上する傾向にあることを見出した。反応時には最終的に菌体懸濁液が600倍に希釈されるため、反応時の硫酸亜鉛濃度は約17μMとなるが、反応時にこの濃度で硫酸亜鉛を添加した場合には、硫酸亜鉛を含まない懸濁液とほぼ同等の活性を示した。
低温下での長期保存により活性が培養直後の半分程度にまで低下した菌体に亜鉛塩を添加することにより活性が回復するかどうかを調べた。菌懸濁液を実施例2−(3)と同様に調製した後(活性2.8U/mg DC、菌濃度160mg/DC)、低温下で約15ヶ月保存し活性が低下した菌体(活性 1.5U/mg DC)10mlに500mM硫酸亜鉛を0.2ml添加し(終濃度10mM)、更に保存を継続した。実施例3と同様にして活性測定した結果、図3に示されるように、硫酸亜鉛を添加しない場合には活性が低い状態で維持されるのに対し、硫酸亜鉛を添加した場合にはしだいに活性が向上していくことが見出された。
実施例3及び4に示されるように、低温での保存により活性が次第に低下し、最終的には培養直後の半分程度にまで低下するが、それ以上は低下せずに維持されることが見出された。
次に、実施例2−(3)と同様にして調製した菌体懸濁液60mlをウオーターバス内で加熱処理(70℃1時間)し、処理前後の活性を比較した。活性測定は実施例2−(2)に記載の方法により行った。その結果、図4に示されるように、加熱処理によっても活性が半分程度にまで低下しすることが見出され、更に加熱処理を継続してもそれ以上の低下は認められなかった。
加熱処理時に500mM硫酸亜鉛を1.2ml添加した場合(終濃度約10mM)、活性の低下は認められず、むしろわずかに向上する傾向が見られ、亜鉛塩が加熱処理による失活に対しても防止効果並びに賦活効果があることが明らかとなった。
保存により部分的に活性低下した菌体を用いて実施例5と同様の実験を行い、亜鉛塩のみを添加したもの、加熱処理後に亜鉛塩を添加したものについての実験を追加した。実験に供した菌体懸濁液の菌濃度は160mgDC/ml、処理スケールは1mlで行った。結果を図5に示した。部分的に活性が低下した菌体では、加熱処理時に終濃度約10mMの硫酸亜鉛を添加しておくことで、活性が回復した。加熱処理により活性が低下した菌体に後で硫酸亜鉛を添加した場合、活性は加熱処理前のレベルにまで回復したが、培養直後のレベルにまでは回復しなかった。
25ヶ月の長期保存により活性が大きく低下した菌体を用いて、実施例6と同様の実験を行った。実験に供した菌濃度は20mgDC/ml、処理スケールは1mlで行った。結果を図6に示した。本菌体懸濁液では加熱処理によってもそれ以上の活性低下は認められなかった。本菌体懸濁液及び加熱処理菌体懸濁液では硫酸亜鉛により活性の部分的回復が認められた。加熱処理時に硫酸亜鉛を添加した場合、活性は培養直後のレベル以上に回復した。
本実施例では、亜鉛塩濃度の影響を調べるために、実施例2−(3)と同様にして調製した菌体懸濁液に2〜10mMの硫酸亜鉛を添加し、添加当日、6日後及び230日後に活性を測定した。実験に供した菌濃度は160mgDC/ml、処理スケールは1mlで行った。その結果を図7に示す。図7に示す通り、2mM以上の硫酸亜鉛濃度で活性賦活効果が認められた。
配列番号4:合成DNA
Claims (8)
- 亜鉛又はその塩を含む、アミダーゼの保存剤であって、前記アミダーゼが以下の(a)または(b)のタンパク質である、アミダーゼの保存剤。
(a) 配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b) 配列番号2で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつアミダーゼ活性を有するタンパク質 - 亜鉛又はその塩を含む、アミダーゼの失活予防剤であって、前記アミダーゼが以下の(a)または(b)のタンパク質である、アミダーゼの失活予防剤。
(a) 配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b) 配列番号2で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつアミダーゼ活性を有するタンパク質 - 亜鉛又はその塩を含む、アミダーゼ保存用キットであって、前記アミダーゼが以下の(a)または(b)のタンパク質である、アミダーゼ保存用キット。
(a) 配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b) 配列番号2で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつアミダーゼ活性を有するタンパク質 - 亜鉛又はその塩を含む、アミダーゼ失活予防用キットであって、前記アミダーゼが以下の(a)または(b)のタンパク質である、アミダーゼ失活予防用キット。
(a) 配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b) 配列番号2で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつアミダーゼ活性を有するタンパク質 - アミダーゼを、亜鉛又はその塩を用いて処理することを特徴とするアミダーゼの保存方法であって、前記アミダーゼが以下の(a)または(b)のタンパク質である、アミダーゼの保存方法。
(a) 配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b) 配列番号2で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつアミダーゼ活性を有するタンパク質 - アミダーゼを、亜鉛又はその塩を用いて処理することを特徴とするアミダーゼの失活予防方法であって、前記アミダーゼが以下の(a)または(b)のタンパク質である、アミダーゼの失活予防方法。
(a) 配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b) 配列番号2で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつアミダーゼ活性を有するタンパク質 - 処理に際し加熱することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
- 処理に際し加熱することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
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