JP5189660B2 - 二重テコ式プルタブ構造を有する缶 - Google Patents

二重テコ式プルタブ構造を有する缶 Download PDF

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Description

この発明は、缶容器の蓋を開けるプルタブの構造に関する。
缶コーヒー等の缶容器の蓋を押し裂いて開けるプルタブの構造では、缶容器の上面に、押されて周囲が裂けることで開けられる蓋が、形成される。そして、この蓋を押して開けるためのプルタブが、缶容器の上面に設けられる。プルタブは、テコの働きにより、タブを引き起こす小さな力で、蓋を押して開けるための大きな力が得られる構造となっている。
特に、下記特許文献1では、二重テコの働きで、より小さな力により、タブを引き起こすことができる構造になっている(図4)。すなわち、図4(B)に示すように、タブ外枠101の指掛部103に指104を掛けて上向きの力Gを加えるとき、タブ外枠101が斜めに起き上がるものの、タブ本体105は固定部107に引っ張られ、側面から眺めると、分岐部109で二つに折れ、横Yの字状になる。タブ外枠101を第1のテコとして見ると、分岐部109を第1支点S1として、上記力Gにより、接触部111に缶容器の上面113から反力gを上向きに受ける。このとき、分岐部109である第1支点力S1には、下向き力fが働く。
同時に、タブ本体105を第2のテコとして見ると、固定部107を第2支点S2として、上記分岐部109に反力として働く上向きの力fにより、押圧端117に下向きの力Pを生じて蓋115を押す。押圧端117自体は反力として上向きの力Pを受ける。
よって、小さな力Gは、第1のテコの働きで大きな力fを生み、このfは、第2のテコの働きで更に大きな下向きの力Pを生じうる。これが二重テコの働きである。
実用新案登録第3158431
しかしながら、特許文献1では、図4(A)に示すように、接触部111から分岐部109までの水平方向の長さをBが、分岐部109から第2支点S2までの水平方向の長さをDよりも小さい(B<D)ので、タブの傾斜角度がある程度まで大きくなると、接触部111は缶容器の上面113に十分には接触できなくなり(図4(B))、更に、角度が大きくなると(図4(C))、接触部111は缶容器の上面113を空振りし、十分な反力gを得られないので、二重テコの働きを維持できず、蓋を押す大きな力Pを生じ得ない。
このことを換言すると、B<Dであるために、タブの傾斜角度を大きくしても、第1のテコであるタブ外枠101が先に垂直状態になってしまい(図4(B)〜(C))、タブ本体105は十分に大きな傾斜角度にはならないままなので、大きな力Pを生じ得ない、と言える。
図4(C)に示すように、空振り後の状態では、二重テコの働きを維持できないために、蓋115を押し裂いて開けるのに十分に大きな下向きの力Pを得られない。よって、最終的には、二重テコの機能は捨てられ、タブにあらためて別の仕方で指104を掛け(図4(C))、別の機能により蓋115を押して開けることとされている。このために、連続した一連の動作でプルタブを操作できないので、面倒である。
この発明は、以上の問題点を解決するために、タブの傾斜角度が大きくなっても十分に大きな力で蓋を押すことができ、よって、連続した一連の動作でプルタブを操作できる二重テコ式プルタブ構造を有する缶を提供することを目的とする。
以上の課題を解決するために、第一発明は、缶容器の蓋を押し裂いて開けるプルタブの構造において、前記缶容器の上面に設けられ、押されて周囲が裂けることで開けられる蓋と、この蓋を押して開けるため前記上面に設けられるプルタブを有し、このプルタブは、タブ外枠と、このタブ外枠の一端に設けられる指掛部と、前記タブ外枠の他端に設けられ前記指掛部が起こされたときに前記上面に接触してスライドする接触部と、前記タブ枠体の内側で前記接触部とは反対側へ分岐して設けられるタブ本体と、このタブ本体の略中央を固定する固定部と、前記タブ本体の一端に形成され前記蓋を押圧する押圧端と、を有して構成され、前記接触部から前記分岐が行なわれる分岐部までの水平方向の長さBが、この分岐部から前記固定部までの水平方向の長さDと、実質的に同じであり、前記接触部は前記固定部との干渉を避ける位置に設けられていることを特長とする二重テコ式プルタブ構造を有する缶である。
なお、「BがDと実質的に同じである」とは、例えば図1(A)の平面図でBがDと完全に同じである場合、及び、BとDとが、例えば図1(A)の平面図では異なるにもかかわらず、タブの傾斜時には、缶容器の材質や寸法、及び固定部の形状や構造などの影響を受けた結果、BとDとがほぼ二等辺三角形を形成し(図2(B)(C)参照)、その等しい辺部を構成する場合を含むものとする。
第二発明は、更に、前記タブ外枠は略四角形であり、前記接触部が前記固定部との干渉を避ける位置は、前記タブ外枠の略四角形を構成する辺のうち前記他端の辺の中央部を避けた左右の位置であることを特長とする二重テコ式プルタブ構造を有する缶である。
第一、または第二発明によれば、以下の効果を得る。
[二重テコとしての効果]
すなわち、この二重テコ式プルタブ構造は、指で引き起こすことで、例えば図2(A)〜(F)まで順に示す動作をする。このうち図2(B)を参考にして説明すると、指掛部に指を掛けて上向きの力を加えるとき、プルタブは、タブ外枠が斜めに起き上がるものの、タブ本体は固定部に引っ張られ、側面から眺めると、分岐部で二つに折れ横Yの字状になる。このとき、タブ外枠を第1のテコとして、タブ本体を第2のテコとして見る。そして、
G :指掛部に指を掛けて上向きの力
S1:第1支点
g :接触部に働く力
f :第1支点S1に働く力
S2:第2支点
P :押圧端に働く力
A :指掛部から分岐部である第1支点までの水平方向の長さ
B :接触部から分岐部までの水平方向の長さ
C :固定部である第2支点S2から押圧端までの水平方向の長さ
D :分岐部から第2支点S2までの水平方向の長さ
とすると、
第1のテコにおけるS1回りのモーメントのつりあいにより
GA=gB ・・・[1]
第1のテコにおける上下の力のつりあいにより
G+g=f ・・・[2]
第2のテコにおけるS2回りのモーメントのつりあいにより
PC=Df ・・・[3]
が得られ、これらの式から
P/G=(1+A/B)D/C ・・・[4]
が得られ、ここでB=Dとすると
P/G=(A+B)/C ・・・[5]
二重テコではない通常のテコとなる単純なプルタブでは、タブ外枠はなく、上記接触部の位置に上記指掛部が設けられると考えてよいので、
P/G=(B+D)/C ・・・(1)
式[5]と(1)とを比べ、Aの長さは、BやDの長さよりもかなり長くできることを考えると、P/Gの値は式[5]の方が式(1)の2倍程度になることが図からわかる。よって、2倍程度の力Pを得られる。つまり大きな力Pで蓋を押すことができる。
[B=Dとすることの効果]
BがDと実質的に同じとし、式[4]において、B=Dとし、式[5]とすることで、プルタブの起き上がりが進んで、タブの傾斜角度が大きくなっても(図2(C)〜(D)参照)、式[4]つまり式[5]の効果、すなわち二重テコの効果が有効に持続する。このため、十分に大きな力Pで蓋を押し続けることができ、よって、連続した一連の動作でプルタブを操作できる二重テコ式プルタブ構造を有する缶を提供できる。
仮に、B<Dの時は、例えば図3(B)に示すように、傾斜角度がある程度まで大きくなると、接触部は缶容器の上面に十分には接触できなくなり、更には接触部は缶容器の上面を空振りし、十分な反力gを得られないので、式[4]の効果、すなわち二重テコの効果を維持できない。
仮に、逆にB>Dの時は、例えば図3(D)に示すように、接触部は缶容器の上面に十分に接触はするものの、缶容器の上面とのスライドが滑らかに行なわれなくなるので、二重テコの効果が働かない。
第二発明によれば、更に、タブ外枠を略四角形とすることで、タブ外枠が起き上がる動作が安定する。また、接触部を辺の左右の位置とすることで、固定部との干渉を避けやすく、このため、タブ外枠が垂直に起き上がった(図2(D)参照)後に、そのままタブ外枠を起し続け、タブ枠体を反対側へ折り返す(図2(E)(F)参照)ことが容易に行なえる。
この発明の一実施形態に係る二重テコ式プルタブ構造を示すもので、(A)は平面図、(B)は(A)の縦断面図である。 図1の二重テコ式プルタブ構造の機能を示すための縦断面図で、(A)〜(F)まで順に動作を示す。 図1の二重テコ式プルタブ構造の作用効果を説明するための縦断面図で、(A)は図2(C)に相当する図、(B)(C)は比較例を示す。 従来例のプルタブ構造を示すもので、(A)は平面図、(B)(C)は(A)の縦断面図で、機能を示すものである。
この発明の実施形態を、図1(A)(B)に示す。
すなわち、缶容器1の上面3の一部に形成される丸い蓋5を、押し裂いて開けるプルタブ7の構造に係る。この丸い蓋5は周囲に溝9が形成され、この溝9が脆弱な部分となることで、プルタブ7によって押されることで、溝9から裂けて、蓋5が開けられる。
この蓋5を押して開けるためのプルタブ7が、缶容器1の上面3に設けられる。このプルタブ7は、タブ外枠11と内側のタブ本体13との平面内二重構造を有する。
タブ外枠11は外形が略四角形をなす。この外枠の図1(A)中左側となる一端の辺15は、缶容器1の上面3のほとんど左端に位置し、そして指掛部17が設けられる。タブ外枠11の図1(A)中右側となる他端の辺19は、缶容器1の上面3のほとんど右端に位置し、そして接触部21が設けられる。この接触部21は、指掛部17に指が掛けられてタブが起こされたときに、缶容器1の上面3に接触しつつスライドする((図2(B)〜(D))。
接触部21は、タブ外枠11の右側の辺19において、辺19の中央部を避けて左右(図1(A)の上下)の位置に2つ形成される。このため、辺19の中央には、缶容器1の上面3との接触時に、缶容器1の上面3中央に設けられる固定部27との干渉を避けるための、いわば逃がし23の空間が形成される。
タブ本体13はタブ外枠11の内側に、舌状に設けられる。すなわちタブ本体13は、タブ外枠11の内側で、タブ外枠11の図1(A)中右側の接触部21が形成される辺19から、舌状の基部が分岐して形成され、舌状の先端を、接触部21とは反対側へ向けて、設けられる。このタブ本体13の略中央を固定する固定部27は、リベットである。タブ本体13の先端には、押圧端29が形成され、蓋5の上に位置し、プルタブ7が機能すると蓋5を押圧する。
そして、接触部21から前記分岐が行なわれる分岐部31までの水平方向の長さBが、この分岐部31から固定部27までの水平方向の長さDと、実質的に同じである。
「実施形態の効果」
この実施形態によれば、以下の効果を得る。
[二重テコとしての効果]
すなわち、この実施形態の二重テコ式プルタブ構造は、指で引き起こすことで、図2(A)〜(F)まで順に示す動作をする。このうち図2(B)に示すように、タブ外枠11の指掛部17に指を掛けて上向きの力Gを加えるとき、タブ外枠11が斜めに起き上がるものの、タブ本体13は固定部27であるリベットに引っ張られる。このため、プルタブ7を側面から眺めると、分岐部31で二つに折れ横Yの字状になる。
この横Yの字状のプルタブ7に働く力を考える。まず、タブ外枠11を第1のテコとして見ると、分岐部31を第1支点S1として、上記力Gにより、接触部21に反力gを上向きに受ける。このとき、分岐部31である第1支点力S1には、下向き力fが働く。
同時に、タブ本体13を第2のテコとして見ると、固定部27を第2支点S2として、上記分岐部31に反力として働く上向きの力fにより、押圧端29に下向きの力Pを生じて蓋5を押す。押圧端29自体は反力として上向きの力Pを受ける。
指掛部17から分岐部31である第1支点までの水平方向の長さをAとし、接触部21から分岐部31までの水平方向の長さをBとし、固定部27である第2支点S2から押圧端29までの水平方向の長さをCとし、分岐部31から第2支点S2までの水平方向の長さをDとする。
第1のテコにおけるS1回りのモーメントのつりあいにより
GA=gB ・・・[1]
第1のテコにおける上下の力のつりあいにより
G+g=f ・・・[2]
第2のテコにおけるS2回りのモーメントのつりあいにより
PC=Df ・・・[3]
の式が得られる。これらの式において、加えた力Gに対する得られる力Pの割合を知ることができる。つまりA、B、C、Dは分かっていて、P/Gを知りたく、g、fは分かっていないのであるから、[1]から得られるgの式と、[3]から得られるfの式を、[2]の式に代入し整理すると、
P/G=(1+A/B)D/C ・・・[4]
となる。ここで、BとDは実質的に同じ長さとするのであるから、B=Dとすると
P/G=(A+B)/C ・・・[5]
と整理される。
二重テコではない通常のテコとなる単純なプルタブ7では、タブ外枠11はなく、上記接触部21の位置に上記指掛部17が設けられると考えてよいので、
P/G=(B+D)/C ・・・(1)
となる。
式[4]や[5]と(1)とを比べ、さらに図1(A)から、Aの長さはBやDの長さよりも数倍長くできることを考えると、P/Gの値は式[4]や[5]の方が式(1)の2倍程度になることが図からわかる。よって、2倍程度の力Pを得られる。
[B=Dとすることの効果]
この実施形態では、起き上がりが進んで、タブの傾斜角度が大きくなっても(図2(C))、式[4]の効果が有効に持続するように、B=Dとし、式[5]とするものである。
その理由は、傾斜角度が大きくなり(図2(C))、更にタブ外枠11が垂直に近くまで起き上がり(図2(D))、タブ本体13も固定部27に固定されたまま垂直に近くまで引っ張られ、側面から眺めると、横Yの字状が大きく広がった状態となが、B=Dとすれば、そのような状態になるまで(図2(B)〜(D))、接触部21は缶容器1の上面3に十分に接触してスライドし続けるので、式[4]すなわち式[5]の効果を維持できる。
そして、タブ外枠11が垂直に起き上がった後には(図2(D))、そのままタブ外枠11を起し続け(図2(E))、タブ外枠11を反対側へ折り返す(図2(F))。折り返すことで、タブ外枠11は、開いた蓋5の上から退くことになるので、開いた蓋5から、缶容器1の中身を飲みやすくなる。
なお、このときに、タブの傾斜角度が非常に大きくなっても(図2(C)〜(E))、接触部21がスライドを続けるには、凹凸がある固定部27との干渉を避けなければならないが、接触部21は、タブ外枠11の他端の辺19の中央部を避けて左右に形成され、この中央にいわば逃がし23を設けてあるので、缶容器1の上面3中央の固定部27に干渉することはない。
「B<Dとの比較」
図3(A)に示すB=Dの時に比べ、図3(B)に示すように仮にB<Dの時は、角度がある程度まで大きくなると、接触部21は缶容器1の上面3に十分には接触できなくなり、更に、図3(B)よりも角度が大きくなると、接触部21は缶容器1の上面3を空振りし、十分な反力gを得られないので、式[4]の効果を維持できない。
前述した特許文献1を示す図4(B)は、上記図3(B)と同じ状態を示している。更に、図4(B)は、空振り後の状態を示していて、式[4]の効果を維持できないために、蓋を押し裂いて開けるのに十分に大きな下向きの力Pを得られない。よって、最終的には、二重テコの機能は捨てられ、タブに別の仕方で指を掛け、別の機能により蓋を押して開けることとしている。
「B>Dとの比較」
図3(C)に示すように、仮に逆にB>Dの時は、接触部21は缶容器1の上面3に十分に接触はするものの、缶容器1の上面3とのスライドが滑らかに行なわれなくなるので、二重テコの機能が十分には働かず、このため、指掛部17に指を掛けて上向きにタブを起こすのに必要な力が重くなりすぎ、よって、うまく蓋を押して開けることができない。指掛部17に大きな力を掛けすぎると、固定部27であるリベット部に力がかかり過ぎて、プルタブ7を壊して外すことになりかねない。また、タブ外枠11を折り返すことができず、タブ外枠11が蓋の上に残ったままになるので、プルタブ7として使えない。
「他の実施形態」
以上の実施形態では、タブ外枠11は略四角形であったが、他の実施形態では、四角形以外の形、例えば円形、楕円形、台形、三角形などでも構わない。
以上の実施形態では、平面図でBがDとがほぼ同じである場合を示したが、他の実施形態では、完全に同じである場合、及び、BとDとが、平面図では異なるにもかかわらず、タブの傾斜時には、缶容器1の材質や寸法、及び固定部27の形状や構造などの影響を受けた結果、BとDとがほぼ二等辺三角形を形成し、その等しい辺部を構成する場合を含むものとする。
このように、BがDと実質的に同じであるようにすることで、タブの傾斜角度が大きくなっても、二重テコの効果が有効に持続する。
1…缶容器、3…上面、5…蓋、7…プルタブ、9…溝、11…タブ外枠、13…タブ本体、15…一端の辺、17…指掛部、19…他端の辺、21…接触部、23…逃がし、27…固定部、29…押圧端、101…タブ外枠、103…指掛部、105…タブ本体、107…固定部、109…分岐部。

Claims (2)

  1. 缶容器の蓋を押し裂いて開けるプルタブの構造において、前記缶容器の上面に設けられ、押されて周囲が裂けることで開けられる蓋と、この蓋を押して開けるため前記上面に設けられるプルタブを有し、このプルタブは、タブ外枠と、このタブ外枠の一端に設けられる指掛部と、前記タブ外枠の他端に設けられ前記指掛部が起こされたときに前記上面に接触してスライドする接触部と、前記タブ枠体の内側で前記接触部とは反対側へ分岐して設けられるタブ本体と、このタブ本体の略中央を固定する固定部と、前記タブ本体の一端に形成され前記蓋を押圧する押圧端と、を有して構成され、前記接触部から前記分岐が行なわれる分岐部までの水平方向の長さBが、この分岐部から前記固定部までの水平方向の長さDと、実質的に同じであり、前記接触部は前記固定部との干渉を避ける位置に設けられていることを特長とする二重テコ式プルタブ構造を有する缶。
  2. 前記タブ外枠は略四角形であり、前記接触部が前記固定部との干渉を避ける位置は、前記タブ外枠の略四角形を構成する辺のうち前記他端の辺の中央部を避けた左右の位置であることを特長とする請求項1に記載の二重テコ式プルタブ構造を有する缶。
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