JP5189045B2 - 円筒形状部材の抜き取り工具 - Google Patents

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Description

本発明は、任意の部材に形成された非貫通孔に嵌め込まれたドライベアリング等の円筒形状部材を抜き取る際に用いる、円筒形状部材の抜き取り工具に関する。
従来より、任意の部材に形成された非貫通孔に嵌め込まれたベアリング等の円筒形状部材を抜き取るための、種々の抜き取り工具や抜き取り方法が開示されている。
例えば特許文献1に記載された従来技術には、ケース等のくぼみ部に嵌め込まれたベアリングに挿通するコレット部を備えたベアリング抜き取り工具が記載されている。このベアリング抜き取り工具は、コレット部が複数の溝により円周方向に分割され、コレット部の先端にはふくらみ(ツメ部)が形成されている。そしてベアリングを貫通するようにコレット部を挿通した後、コレット部の内側からボルトをねじ込むことで、コレット部の外径を拡張し、ツメ部をベアリングに引っ掛けて抜き取ることが記載されている。
また特許文献2に記載された従来技術には、先端部を鋭角状に斜めにカットした長尺異形丸鋼と短尺異形丸鋼を、棒状のハンドルに直交する方向に並べて取り付けたアンカーポット硬質紙抜き取り工具が記載されている。そして、非貫通孔に嵌め込まれた筒状のアンカーポット硬質紙の内周側に短尺異形丸鋼が、外周側に長尺異形丸鋼が配置されるように、アンカーポット硬質紙の外周面と非貫通孔との間に長尺異形丸鋼を差し込み、短尺異形丸鋼(または長尺異形丸鋼)が回転軸となるようにハンドルを回している。そして、長尺異形丸鋼と短尺異形丸鋼にてアンカーポット硬質紙を巻き取った後に引き抜くことが記載されている。
特開平10−146773号公報 特開平10−202542号公報
特許文献1に記載された従来技術では、ベアリング等の円筒部材を引き抜く際、コレット部の先端のツメ部に応力が集中するため、当該ツメ部が変形したり破壊したりする可能性がある。
また、特許文献2に記載された従来技術では、抜き取る対象の円筒形状部材がベアリングやドライベアリングである場合、長尺異形丸鋼と短尺異形丸鋼にて巻き取ることができない。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、任意の部材に形成された非貫通孔に嵌め込まれたドライベアリング等の円筒形状部材を、適切に抜き取ることが可能な、円筒形状部材の抜き取り工具を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための手段として、本実施の形態に記載の円筒形状部材の抜き取り方法は、任意の部材に形成された非貫通孔に嵌め込まれた円筒形状部材を抜き取る、円筒形状部材の抜き取り方法であって、対象とする円筒形状部材の内径よりも大きな外径を有して前記円筒形状部材の内側に、前記円筒形状部材の抜き取り方向とは反対の差し込み方向に圧入される嵌合部材と、前記嵌合部材に取り付けられて前記任意の部材に対して前記嵌合部材を、前記円筒形状部材の抜き取り方向に移動させる相対移動部材と、を用いる。
前記嵌合部材は略円柱形状であり、前記嵌合部材の外周面には、前記円筒形状部材の内側において前記差し込み方向に前記嵌合部材を移動させた際の円筒形状部材と嵌合部材との摩擦力よりも、前記抜き取り方向に前記嵌合部材を移動させた際の円筒形状部材と嵌合部材との摩擦力の方が大きくなるように周方向に形成された鋸歯が前記抜き取り方向に沿って複数形成され、前記抜き取り方向に沿って所定幅の単数または複数の逃し溝が形成されており、対象とする円筒形状部材の内側に前記嵌合部材を圧入するステップと、前記嵌合部材を所定角度だけ回転させて、前記圧入の際に前記逃し溝と対向していた前記円筒形状部材の内壁面に、前記鋸歯を周方向から食い込ませるステップと、前記嵌合部材に前記相対移動部材を取り付けて、前記任意の部材に対して前記嵌合部材を、前記円筒形状部材の抜き取り方向に移動させるステップと、を有する、円筒形状部材の抜き取り方法である。
また、本実施の形態に記載の円筒形状部材の抜き取り工具は、任意の部材に形成された非貫通孔に嵌め込まれた円筒形状部材を抜き取る、円筒形状部材の抜き取り工具であって、対象とする円筒形状部材の内径よりも大きな外径を有して前記円筒形状部材の内側に、前記円筒形状部材の抜き取り方向とは反対の差し込み方向に圧入される嵌合部材と、前記嵌合部材に取り付けられて前記任意の部材に対して前記嵌合部材を、前記円筒形状部材の抜き取り方向に移動させる相対移動部材と、を備えている。
そして前記嵌合部材は略円柱形状であり、前記嵌合部材の外周面には、前記円筒形状部材の内側において前記差し込み方向に前記嵌合部材を移動させた際の円筒形状部材と嵌合部材との摩擦力よりも、前記抜き取り方向に前記嵌合部材を移動させた際の円筒形状部材と嵌合部材との摩擦力の方が大きくなるように周方向に形成された鋸歯が前記抜き取り方向に沿って複数形成され、前記抜き取り方向に沿って所定幅の単数または複数の逃し溝が形成されている。
また、本発明の第1発明は、請求項1に記載されたとおりの円筒形状部材の抜き取り工具である。
請求項1に記載の円筒形状部材の抜き取り工具は、任意の部材に形成された非貫通孔に嵌め込まれた円筒形状部材を抜き取る、円筒形状部材の抜き取り工具であって、対象とする円筒形状部材の内側に、前記円筒形状部材の抜き取り方向とは反対の差し込み方向に差し込まれる嵌合部材と、前記嵌合部材に取り付けられて前記任意の部材に対して前記嵌合部材を、前記抜き取り方向に移動させる相対移動部材と、を備えている。
前記嵌合部材は略円柱形状であり、前記嵌合部材の外周面には、前記嵌合部材の軸を通る任意の平面である摺動面内で円弧を描くように摺動するリンク機構部が円周方向に複数設けられており、それぞれのリンク機構部の先端には、前記円筒形状部材の内側において前記差し込み方向に前記嵌合部材を移動させた際の円筒形状部材との摩擦力よりも、前記抜き取り方向に前記嵌合部材を移動させた際の円筒形状部材との摩擦力の方が大きくなるように周方向に形成された鋸歯が前記抜き取り方向に沿って複数形成された摩擦部材が取り付けられている。
また、前記リンク機構部は、前記円筒形状部材の内側において前記嵌合部材を前記差し込み方向に移動させた際に摺動して到達する差し込み時摺動位置における前記摩擦部材の最外周の径となる差し込み径よりも、前記円筒形状部材の内側において前記嵌合部材を前記抜き取り方向に移動させた際に摺動して到達する抜き取り時摺動位置における前記摩擦部材の最外周の径となる抜き取り径の方が大きくなるように摺動範囲が設定されている。
また、本実施の形態に記載の円筒形状部材の抜き取り工具には、前記嵌合部材における前記抜き取り方向の側には、被係止部が形成されており、前記相対移動部材は、ネジ部材と、前記ネジ部材を嵌合させるネジ孔と前記嵌合部材の前記被係止部を係止する係止部とを有するプレート部材と、で構成されている。あるいは、前記相対移動部材は、前記嵌合部材の被係止部を係止して作用点として作用する係止部を有するとともに前記係止部と反対側の位置にて支点として作用する当接部を有する第1アーム部と、前記当接部の近傍に接続されて力点として作用するグリップ部を有する第2アーム部と、で構成されている。
また、本発明の第2発明は、請求項2に記載されたとおりの円筒形状部材の抜き取り工具である。
請求項2に記載の円筒形状部材の抜き取り工具は、請求項1に記載の円筒形状部材の抜き取り工具であって、前記嵌合部材には軸方向に沿って貫通しているネジ孔が形成されており、前記相対移動部材は、前記ネジ孔に嵌合するネジ部材にて構成されている。
本実施の形態に記載の円筒形状部材の抜き取り方法を用いれば、任意の部材に形成された非貫通孔に嵌め込まれた円筒形状部材の内壁面(圧入時に逃し溝と対向していた面)に、嵌合部材の鋸歯を適切に食い込ませて、円筒形状部材を抜き取ることができる。
また、請求項1または請求項2に記載の円筒形状部材の抜き取り工具によれば、任意の部材に形成された非貫通孔に嵌め込まれた円筒形状部材を適切に抜き取ることが可能な、円筒形状部材の抜き取り工具を適切に実現することができる。
第1の実施の形態における抜き取り工具1を構成する各部材の外観を説明する図である。 第1の実施の形態における抜き取り工具1を用いて円筒形状部材TWを抜き取る様子を説明する図である。 第2の実施の形態における抜き取り工具2を構成する各部材の外観を説明する図である。 第2の実施の形態における抜き取り工具2を用いて円筒形状部材TWを抜き取る様子を説明する図である。 第3の実施の形態における抜き取り工具3を構成する各部材の外観を説明する図である。 第3の実施の形態における抜き取り工具3を用いて円筒形状部材TWを抜き取る様子を説明する図である。 第4の実施の形態における抜き取り工具4を構成する各部材の外観を説明する図である。 第4の実施の形態における抜き取り工具4を構成する各部材の外観を説明する図である。 第4の実施の形態における抜き取り工具4を用いて円筒形状部材TWを抜き取る様子を説明する図である。
以下に、本発明を実施するための第1の実施の形態〜第4の実施の形態を図面を用いて説明する。図1(A)〜(C)及び図2(A)、(B)は、本発明の円筒形状部材の抜き取り工具(以降、「円筒形状部材の抜き取り工具」を「抜き取り工具」と記載する)の第1の実施の形態の例を示している。
なお、以下に説明する第1〜第4の実施の形態では、任意の部材BSに形成された非貫通孔Hに嵌め込まれた円筒形状部材TWを、ハウジングに形成された非貫通孔に圧入されたドライベアリングの例で説明する。
●[第1の実施の形態における抜き取り工具1の全体構成(図1、図2)]
次に、第1の実施の形態における抜き取り工具1(図2(B)参照)、及び抜き取り工具1を構成する各部材(図1(A)〜(C)参照)の外観について説明する。
図2(B)に示す抜き取り工具1は、図1(A)に示す嵌合部材10と、図1(B)に示すプレート部材20と、図1(C)に示すネジ部材30と、で構成されている。なお、図1(A)〜(C)は、各部材の平面図と正面図を示している。
また、第1の実施の形態では、任意の部材BSに対して嵌合部材10を抜き取り方向に移動させる相対移動部材は、ネジ部材30とプレート部材20とで構成されている。
図1(A)に示す嵌合部材10は、略円柱形状であり、被係止部11と挿入部12とで構成されている。なお、図1(A)の正面図における挿入部12は、右側が外観を示しており、左側が断面図を示している。嵌合部材10は、例えばS45Cの材質にて形成され、その後、高周波焼入して作成されている。
被係止部11は、図1(B)に示すプレート部材20に形成されたU溝21に係止する(引っ掛ける)ためのフランジ部が形成されているとともに、スパナ掛けして回転させるための平面部11Mが形成されている。なお、図1(A)の例では、平面部11Mは4面形成されているが、6面や2面であってもよい。
挿入部12は円柱形状であり、外周面には抜き取り方向(軸方向)に沿って複数の鋸歯13が形成されている。鋸歯13の形状は、図2(B)に示すように円筒形状部材TWに圧入した場合において、抜き取り方向(図2(B)における上方向)に嵌合部材10を移動させた際の円筒形状部材TWと嵌合部材10との摩擦力が、圧入の方向(図2(B)における下方向)に嵌合部材10を移動させた際の円筒形状部材TWと嵌合部材10との摩擦力よりも大きくなるように、歯が抜き取り方向に向かっている。
また図1(A)のA−A断面図に示すように、挿入部12の外周面には、抜き取り方向(嵌合部材10の軸方向)に沿って所定幅の逃し溝14が形成されている。この逃し溝14の数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。本実施の形態では、図1(A)のA−A断面図に示すように、挿入部12の円周方向を8分割し、逃し溝14と鋸歯13とが交互となるように、逃し溝14と鋸歯13を配置している。
また、挿入部12の先端(図1(A)における正面図の下端)は、圧入を容易にするために、先細りのテーパ形状とすることが好ましい。
図1(B)に示すプレート部材20には、ネジ部材30を嵌合させるネジ溝NMを有するネジ孔22、23と、嵌合部材10の挿入部12の径よりも大きく被係止部11の幅よりも小さな径のU溝21(係止部に相当)が形成されている。
図1(C)に示すネジ部材30は、スパナ掛けして回転させるための頂部31と、円柱形状を有して外周部にネジ溝NMが形成された挿通部32と、を有する、いわゆるボルトである。
●[第1の実施の形態における円筒形状部材の抜き取り手順(図2)]
次に、図2(A)及び(B)を用いて、抜き取り工具1を用いて任意の部材BSに形成された非貫通孔Hに嵌め込まれた(圧入された)円筒形状部材TWを抜き取る手順について説明する。
最初のステップでは、抜き取り対象とする円筒形状部材TWの孔部(内側)に嵌合部材10の挿入部12を圧入する。嵌合部材10の外径は、円筒形状部材TWの内径よりもやや大きく設定してあり、例えばハンマ等を用いて叩き込んで圧入する。
次のステップでは、圧入した嵌合部材10の被係止部11にスパナ掛けして、嵌合部材10を所定角度だけ回転させる。この場合の所定角度は、嵌合部材10の圧入時において逃し溝14と対向していた円筒形状部材TWの内壁面に、鋸歯13が周方向から食い込む角度であり、図1(A)の例に示す嵌合部材10の場合、45度が適切な角度となる。これにより、円筒形状部材TWの内壁面に鋸歯13をマシンタップの様に食い込ませることができる。
次のステップでは、嵌合部材10にプレート部材20のU溝21を嵌め込み、プレート部材20のネジ孔22、23に、ネジ部材30を嵌合し、ネジ部材30の頂部31にスパナ掛けして、2本のネジ部材30を回転させ、プレート部材20を任意の部材BSの表面から離れる方向(抜き取り方向)に移動させる。そして円筒形状部材TWが任意の部材BSから抜けるまでネジ部材30を回転させればよい。
●[第2の実施の形態における抜き取り工具2の全体構成(図3、図4)]
次に、第2の実施の形態における抜き取り工具2(図4参照)、及び抜き取り工具2を構成する各部材(図3(A)及び(B))の外観について説明する。
図4に示す抜き取り工具2は、図3(A)に示す嵌合部材50と、図3(B)に示すネジ部材60と、で構成されている。なお、図3(A)及び(B)は、各部材の平面図と正面図を示している。
また、第2の実施の形態では、任意の部材BSに対して嵌合部材50を抜き取り方向に移動させる相対移動部材は、ネジ部材30で構成されている。
図3(A)に示す嵌合部材50は、略円柱形状であり、スパナ掛け部51と挿入部52とで構成されている。なお、図3(A)の正面図における挿入部52は、右側が外観を示しており、左側が断面図を示している。嵌合部材50は、例えばS45Cの材質にて形成され、その後、高周波焼入して作成されている。
スパナ掛け部51は、スパナ掛けして回転させるための平面部51Mが形成されている。なお、図3(A)の例では、平面部51Mは6面形成されているが、4面や2面であってもよい。
挿入部52は円柱形状であり、外周面には抜き取り方向(軸方向)に沿って複数の鋸歯53が形成されている。なお、鋸歯53の形状については図1(A)に示す鋸歯13と同様であるので説明を省略する。
また図3(A)のC−C断面図に示すように、挿入部52の外周面には、抜き取り方向(嵌合部材50の軸方向)に沿って所定幅の逃し溝54が形成されている。この逃し溝54の数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。本実施の形態では、図3(A)のA−A断面図に示すように、挿入部52の円周方向を8分割し、逃し溝54と鋸歯53とが交互となるように、逃し溝14と鋸歯13を配置している。
また、挿入部52の先端(図3(A)における正面図の下端)は、圧入を容易にするために、先細りのテーパ形状とすることが好ましい。
また、嵌合部材50の内側には、ネジ部材60を嵌合するネジ溝NMが形成されたネジ孔55が軸方向に沿って形成されている。なお、ネジ孔55は貫通孔である。
図3(B)に示すネジ部材60は、スパナ掛けして回転させるための頂部61と、円柱形状を有して外周部にネジ溝NMが形成された挿通部62と、を有している。なお、図3(B)に示す例では、頂部61の径が挿通部62の径よりも小さい例を示したが、頂部61の径を挿通部62の径よりも大きくして、いわゆるボルトであってもよい。
●[第2の実施の形態における円筒形状部材の抜き取り手順(図4)]
次に、図4を用いて、抜き取り工具2を用いて任意の部材BSに形成された非貫通孔Hに嵌め込まれた(圧入された)円筒形状部材TWを抜き取る手順について説明する。
最初のステップでは、抜き取り対象とする円筒形状部材TWの孔部(内側)に嵌合部材50の挿入部52を圧入する。嵌合部材50の外径は、円筒形状部材TWの内径よりもやや大きく設定してあり、例えばハンマ等を用いて叩き込んで圧入する。
次のステップでは、圧入した嵌合部材50のスパナ掛け部51にスパナ掛けして、嵌合部材50を所定角度だけ回転させる。この場合の所定角度は、嵌合部材50の圧入時において逃し溝54と対向していた円筒形状部材TWの内壁面に、鋸歯53が周方向から食い込む角度であり、図3(A)の例に示す嵌合部材50の場合、45度が適切な角度となる。これにより、円筒形状部材TWの内壁面に鋸歯53をマシンタップの様に食い込ませることができる。
次のステップでは、嵌合部材50のネジ孔55にネジ部材60を嵌合し、ネジ部材60の頂部61にスパナ掛けして、ネジ部材60を回転させ、嵌合部材50を任意の部材BSの表面から離れる方向(抜き取り方向)に移動させる。そして円筒形状部材TWが任意の部材BSから抜けるまでネジ部材60を回転させればよい。
●[第3の実施の形態における抜き取り工具3の全体構成(図5、図6)]
次に、第3の実施の形態における抜き取り工具3(図6参照)、及び抜き取り工具3を構成する各部材(図5(A)及び(B))の外観について説明する。
図6に示す抜き取り工具3は、図5(A)に示す嵌合部材70と、図5(B)に示すテコ部材80と、で構成されている。なお、図5(A)及び(B)は、各部材の平面図と正面図を示している。
また、第3の実施の形態では、任意の部材BSに対して嵌合部材70を抜き取り方向に移動させる相対移動部材は、テコ部材80で構成されている。
図5(A)に示す嵌合部材70は、図1(A)に示す嵌合部材10と同様であり、被係止部71(11)、挿入部72(12)、平面部71M(11M)、鋸歯73(13)、逃し溝74(14)についての説明は省略する。
図5(B)に示すテコ部材80は、第1アーム部81と、第2アーム部82と、で構成されている。
そして、第1アーム部81は、被係止部71を係止して作用点として作用するU溝84(係止部に相当)を有するとともに、U溝84と反対側の位置にて支点として作用する当接部83を有している。
また、第2アーム部82は、第1アーム部81の当接部83の近傍に接続されて、力点として作用するグリップ部85を有している。
●[第3の実施の形態における円筒形状部材の抜き取り手順(図6)]
次に、図6(A)及び(B)を用いて、抜き取り工具3を用いて任意の部材BSに形成された非貫通孔Hに嵌め込まれた(圧入された)円筒形状部材TWを抜き取る手順について説明する。
最初のステップでは、図2(A)及び(B)に示す第1の実施の形態と同様、例えばハンマ等を用いて叩き込んで圧入する。
次のステップでも、図2(A)及び(B)に示す第1の実施の形態と同様、圧入した嵌合部材70の被係止部11にスパナ掛けして、嵌合部材70を所定角度だけ回転させる。
次のステップでは、嵌合部材70にテコ部材80のU溝84を嵌め込み、当接部83を任意の部材BSに当接させて、この当接部83を支点としてグリップ部85を下方向に押し下げる。そして円筒形状部材TWが任意の部材BSから抜けるまでグリップ部85を押し下げればよい。
●[第4の実施の形態における抜き取り工具4の全体構成(図7〜図9)]
次に、第4の実施の形態における抜き取り工具4(図9参照)、及び抜き取り工具4を構成する各部材(図7(A)〜(C)及び図8(A)〜(D))の外観について説明する。
図9に示す抜き取り工具4は、図7(A)に示すベース嵌合部材A10と、図7(B)に示す位置決めプレートA20と、図7(C)に示すブロック部材A30と、図8(A)に示す摩擦部材A40と、図8(B)に示すリンクA50と、図8(C)に示す摺動規制ネジA60と、図8(D)に示すネジ部材A70と、で構成されている。なお、図7(A)〜(C)及び図8(A)〜(D)は、各部材の平面図と正面図を示している。
また、第4の実施の形態では、図9に示すように、図7(A)〜(C)に示す部材と、図8(A)〜(C)に示す部材と、を組み合わせて嵌合部材を構成しており、任意の部材BSに対して嵌合部材を抜き取り方向に移動させる相対移動部材は、ネジ部材A70で構成されている。
図7(A)に示すベース嵌合部材A10は、図3(A)に示す嵌合部材50に対して、外周面に逃し溝54、及び鋸歯53が形成されておらず、外周面にはネジ溝NMaが形成されている。なお、スパナ掛け部A11(51)、挿入部A12(52)、平面部A11M(51M)、ネジ溝NMb(NM)が形成された貫通孔A15(55)は、図3(A)に示す嵌合部材50と同様であるので説明を省略する。
また、図8(D)に示すネジ部材A70は、図3(B)に示すネジ部材60と同様であり、頂部A71(61)、挿通部A72(62)も同様であるので説明を省略する。
図7(B)に示す位置決めプレートA20は、ベース嵌合部材A10の外周面のネジ溝NMaに嵌合するネジ溝NMcが形成された開口孔A25と、図8(C)に示す摺動規制ネジA60を嵌合するネジ溝が形成された複数のネジ孔A26と、を有した略円板状の部材である。そして図9(B)に示すように、ベース嵌合部材A10に対して2枚の位置決めプレートA20が使用され、ブロック部材A30を挟み込んで、ベース嵌合部材A10に対するブロック部材A30の位置を保持する(位置決めする)。なお、ネジ孔A26は、ブロック部材A30の切欠部A37に対応する位置に形成されている。
図7(C)に示すブロック部材A30は、ベース嵌合部材A10の外周面のネジ溝NMaに嵌合するネジ溝NMdが形成された開口孔A35と、図8(B)に示すリンクA50を支持するように円周方向に複数設けられた切欠部A37と、ブロック部材A30に対してリンクA50を摺動可能に支持するピン(図示省略)を挿入するピン孔H1〜H6と、を有した円環状の部材である。そして図9(A)及び(B)に示すように、ブロック部材A30に形成された各切欠部A37には、それぞれリンク50が摺動可能に支持され、各リンク50の先端には、図8(A)に示す摩擦部材A40が摺動可能に支持されている。
図8(B)に示すリンクA50(リンク機構部に相当)は、ブロック部材A30の切欠部37を通るピン孔H1〜H6に挿入されるピン(図示省略)を通すピン孔H51と、摩擦部材A40に形成されたピン孔H40に挿入されるピン(図示省略)を通すピン孔H52と、を有している。図9(A)及び(B)に示すように抜き取り工具4が組み付けられている場合、リンクA50は、嵌合部材の軸(またはベース嵌合部材A10の軸)を通る任意の平面である摺動面内でブロック部材A30のピン孔を中心として円弧を描くように摺動する。
図8(A)に示す摩擦部材A40には、円筒形状部材TWの内壁に沿うように形成された円弧面A40Mに、図9(A)及び(B)に示すように抜き取り工具4が組み付けられている場合、差し込み方向(図9(B)における下方向)に嵌合部材(またはベース嵌合部材A10)を移動させた際の円筒形状部材TWとの摩擦力よりも、抜き取り方向(図9(B)における上方向)に嵌合部材(またはベース嵌合部材A10)を移動させた際の摩擦力の方が大きくなるように、周方向に形成された鋸歯A43が抜き取り方向に沿って複数形成されている。また、摩擦部材A40には、リンクA50のピン孔H52に対応するピン孔H40が、切欠部A47を挟む位置に形成されている。摩擦部材A40は、切欠部A47とピン孔H40にて、リンクA50のピン孔52に取り付けられる。
図8(C)に示す摺動規制ネジA60は、図9(A)及び(B)に示すように抜き取り工具4が組み付けられた場合において、ブロック部材A30の上下に配置されている位置決めプレートA20のそれぞれのネジ孔26に嵌合されるネジ溝が形成されており、図9(B)に示すように、リンクA50の摺動範囲を規制する。
図9(B)において、ブロック部材A30の上に位置する位置決めプレートA20に取り付けられた摺動規制ネジA60は、嵌合部材(またはベース嵌合部材A10)を差し込み方向(図9(B)の下方向)に移動させた際にリンクA50が図9(B)において上方向に摺動して到達する差し込み時摺動位置を決定する。
また、図9(B)において、ブロック部材A30の下に位置する位置決めプレートA20に取り付けられた摺動規制ネジA60は、嵌合部材(またはベース嵌合部材A10)を抜き取り方向(図9(B)の上方向)に移動させた際にリンクA50が図9(B)において下方向に摺動して到達する抜き取り時摺動位置を決定する。
なお、上記の差し込み時摺動位置における摩擦部材A40の最外周の径となる差し込み径よりも、上記の抜き取り時摺動位置における摩擦部材A40の最外周の径となる抜き取り径の方が大きくなるように、各摺動規制ネジA60の位置が調整されている。
●[第4の実施の形態における円筒形状部材の抜き取り手順(図9)]
次に、図9(A)及び(B)を用いて、抜き取り工具4を用いて任意の部材BSに形成された非貫通孔Hに嵌め込まれた(圧入された)円筒形状部材TWを抜き取る手順について説明する。
最初のステップでは、図9(A)及び(B)に示すように各部材を組付けた抜き取り工具4を、円筒形状部材TWの内側に差し込む。差し込む際は、リンクA50が差し込み時摺動位置まで摺動して径が小さくなるので、容易に差し込むことができる。
次のステップでは、ネジ部材A70の頂部A71にスパナ掛けして、ネジ部材A70を回転させ、嵌合部材(またはベース嵌合部材A10)を任意の部材BSの表面から離れる方向(抜き取り方向)に移動させる。抜き取る際は、リンクA50が抜き取り時摺動位置まで摺動して径が大きくなり、摩擦部材A40の鋸歯A43が円筒形状部材TWの内壁に食い込み、円筒形状部材TWを抜き取り方向に移動させる。そして円筒形状部材TWが任意の部材BSから抜けるまでネジ部材A70を回転させればよい。
なお、図9(B)に示す抜き取り工具4からネジ部材A70を省略して(貫通孔A15も省略する)、ベース嵌合部材A10の抜き取り方向の側に、図1(A)に示す被係止部11と同様な被係止部を設ければ、図2(A)及び(B)に示す相対移動部材(プレート部材20とネジ部材30とで構成)や、図6(A)及び(B)に示す相対移動部材(テコ部材80)を用いて、抜き取り工具を構成することができる。
本発明の円筒形状部材の抜き取り工具は、本実施の形態で説明した方法、手順、外観、構成、構造等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
本実施の形態にて説明した円筒形状部材の抜き取り方法及び円筒形状部材の抜き取り工具は、ハウジングに形成された非貫通孔に嵌め込まれたドライベアリングの抜き取りに限定されず、任意の部材に形成された非貫通孔に嵌め込まれた種々の円筒形状部材の抜き取りに適用することができる。
1、2、3、4 抜き取り工具
10、50、70 嵌合部材
11、71 被係止部
12、52、72、A12 挿入部
13、53、73、A43 鋸歯
14、54、74 逃し溝
20 プレート部材
21 U溝
22、23 ネジ孔
30、60 ネジ部材
51 スパナ掛け部
55 ネジ孔
80 テコ部材
81 第1アーム部
82 第2アーム部
83 当接部
84 U溝
85 グリップ部
A10 ベース嵌合部材
A20 位置決めプレート
A26 ネジ孔
A30 ブロック部材
A37 切欠部
A40 摩擦部材
A50 リンク(リンク機構部)
A60 摺動規制ネジ
A70 ネジ部材
BS 任意の部材
H 非貫通孔
NM ネジ溝
TW 円筒形状部材

Claims (2)

  1. 任意の部材に形成された非貫通孔に嵌め込まれた円筒形状部材を抜き取る、円筒形状部材の抜き取り工具であって、
    対象とする円筒形状部材の内側に、前記円筒形状部材の抜き取り方向とは反対の差し込み方向に差し込まれる嵌合部材と、
    前記嵌合部材に取り付けられて前記任意の部材に対して前記嵌合部材を、前記抜き取り方向に移動させる相対移動部材と、を備え、
    前記嵌合部材は略円柱形状であり、前記嵌合部材の外周面には、前記嵌合部材の軸を通る任意の平面である摺動面内で円弧を描くように摺動するリンク機構部が円周方向に複数設けられており、
    それぞれのリンク機構部の先端には、前記円筒形状部材の内側において前記差し込み方向に前記嵌合部材を移動させた際の円筒形状部材との摩擦力よりも、前記抜き取り方向に前記嵌合部材を移動させた際の円筒形状部材との摩擦力の方が大きくなるように周方向に形成された鋸歯が前記抜き取り方向に沿って複数形成された摩擦部材が取り付けられており、
    前記リンク機構部は、前記円筒形状部材の内側において前記嵌合部材を前記差し込み方向に移動させた際に摺動して到達する差し込み時摺動位置における前記摩擦部材の最外周の径となる差し込み径よりも、前記円筒形状部材の内側において前記嵌合部材を前記抜き取り方向に移動させた際に摺動して到達する抜き取り時摺動位置における前記摩擦部材の最外周の径となる抜き取り径の方が大きくなるように摺動範囲が設定されている、
    円筒形状部材の抜き取り工具。
  2. 請求項1に記載の円筒形状部材の抜き取り工具であって、
    前記嵌合部材には軸方向に沿って貫通しているネジ孔が形成されており、
    前記相対移動部材は、前記ネジ孔に嵌合するネジ部材にて構成されている、
    円筒形状部材の抜き取り工具。
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