JP5187430B2 - 移動体 - Google Patents

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Description

本発明は、移動体に関し、詳しくは、発電に伴って水を生成する燃料電池を電力源として搭載する移動体に関する。
従来、この種の移動体としては、燃料電池により生成される生成水を車両の側方に放出する自動二輪車が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この自動二輪車では、燃料電池の生成水を側方に排出することにより、生成水がタイヤにかかることに基づく不都合、例えばスリップを防止している。
特開2001−313056号公報(図2,第3頁,第4頁)
上述したように、燃料電池を搭載する車両では、走行中でも燃料電池により生成される生成水を車外に排出する必要がある。このとき、スリップを回避するためにタイヤにかからないように生成水を排出しても、排出した生成水が走行風によって巻き上げられ、後続の車両のフロントガラスに飛散するなどの後続車両に対する不都合が生じる場合がある。また、側方に排出する場合には、路肩の人や建造物に水がかかる場合も生じる。
本発明の移動体は、燃料電池からの生成水を放出する際に生成水が飛散するのを抑制することを目的の一つのとする。本発明の移動体は、燃料電池からの生成水を放出する際に生成水が人や建造物にかかるのを抑止することを目的の一つのとする。本発明の移動体は、燃料電池からの生成水を放出する際に放出した生成水の後方または側方の移動体への影響を抑制することを目的の一つのとする。本発明の移動体は、燃料電池からの生成水をより適正に外部に放出することを目的の一つとする。
本発明の移動体は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明の第1の参考例の移動体は、
発電に伴って水を生成する燃料電池を電力源として搭載する移動体であって、
前記燃料電池により生成された生成水を貯留可能な貯留手段と、
前記燃料電池により生成された生成水および/または前記貯留手段により貯留された生成水を少なくとも一つの放出口から外部に放出可能な放出手段と、
移動体の状態を検出する状態検出手段と、
該検出した状態に基づいて前記放出手段による生成水の放出を制御する放出制御手段と、
を備えることを要旨とする。
この本発明の第1の参考例の移動体では、移動体の状態に基づいて燃料電池により生成された生成水やこれを貯留した水を放出口から外部に放出するから、移動体の状態に応じた生成水の放出を行なうことができる。即ち、移動体の状態に応じて生成水をより適正に外部に放出することができるのである。ここで、貯留手段は、燃料電池から放出口までに設けられて生成水を貯留可能な全てのものを意味し、例えば、生成水を貯留するタンクなどが含まれる他、燃料電池から放出口まで生成水を通流させる通路(特に、燃料電池からの排ガスと共に生成水を通流させる通路)なども含まれる。また、移動体としては、自動車や列車などの車両を含む地上移動体が含まれる。さらに、移動体は、燃料電池に加えて燃流電池以外の電力源、例えば二次電池やキャパシタ,発電機などを搭載するものとしてもよい。
こうした本発明の第1の参考例の移動体において、前記状態検出手段は移動体の移動状態を検出する手段であり、前記放出制御手段は前記状態検出手段により移動体の移動状態が検出されたときには移動体の停止状態のときより前記生成水の放出量が制限されるよう前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、移動体が移動しているときに放出される生成水による影響、例えば、移動体の移動に伴う空気の流れにより放出された生成水が飛散し巻き上げられて後方または側方の移動体にかかるなどの不都合や放出された生成水が歩行者や建造物にかかるなどの不都合,放出された生成水による移動体の移動における安定性を阻害する不都合などを抑制することができる。
この移動状態のときには生成水の放出量を制限する態様の本発明の第1の参考例の移動体において、前記放出制御手段は、前記状態検出手段により検出された移動体の移動状態が所定の移動状態であるときには前記生成水が放出されないよう前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、所定の移動状態における生成水の放出による不都合を回避することができる。ここで、「所定の移動状態」としては、所定の移動速度以上で移動している状態を、その一例として考えることができる。
また、移動状態のときには生成水の放出量を制限する態様の本発明の第1の参考例の移動体において、前記放出制御手段は、前記状態検出手段により移動体の停止状態が検出されたときには第1の放出量の範囲内で前記生成水が放出されるよう前記放出手段を制御し、前記状態検出手段により移動体の移動状態が検出されたときには前記第1の放出量より小さな第2の放出量の範囲内で前記生成水が放出されるよう前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、移動体が停止状態のときには第1の放出量の範囲内で生成水を放出し、移動体が移動状態のときにはこの第1の放出量より小さな第2の放出量の範囲内で生成水を放出することができる。この結果、移動状態における生成水の放出による不都合を抑制することができる。
さらに、移動状態のときには生成水の放出量を制限する態様の本発明の第1の参考例の移動体において、前記状態検出手段は移動体の移動速度を検出する手段であり、前記放出制御手段は前記状態検出手段により検出された移動速度が大きいほど前記生成水の放出量が少なくなる傾向で前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできるし、前記状態検出手段は移動体の移動速度を検出する手段であり、前記放出制御手段は前記状態検出手段により検出された移動速度が大きいほど小さくなる傾向で許容放出量を設定すると共に該設定した許容放出量の範囲内で前記生成水が放出されるよう前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできる。このようにするのは、上述した放出された生成水による影響(不都合)は移動体の移動速度が大きくなるほど生じやすくなることなどに基づく。
本発明の第1の参考例の移動体において、前記状態検出手段は移動体の加速状態を検出する手段であり、前記放出制御手段は前記状態検出手段により移動体の加速状態が検出されたときには移動体の加速状態が検出されないときより前記生成水の放出量が制限されるよう前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできる。移動体は定速で移動しているときより加速しているときの方が不安定な場合が多いため、この不安定な状態になりやすい加速状態に対して放出された生成水による影響(不都合)が重畳的に生じるのを抑制することなどに基づく。この場合、前記放出制御手段は、前記状態検出手段により検出された移動体の加速度が所定加速度以上のときには前記生成水が放出されないよう前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、所定加速度以上で加速しているときに放出された生成水による影響が生じるのを回避することができる。
本発明の第1の参考例の移動体において、前記状態検出手段は移動体の移動状態を検出する手段であり、前記放出制御手段は前記状態検出手段により移動体の移動状態が検出されたときには前記生成水の放出量が前記燃料電池により生成される生成水の生成量より少なくなるよう前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、移動体が移動状態にあるときの生成水の放出量を少なくすることができる。
本発明の第1の参考例の移動体において、前記状態検出手段は移動体に対する移動体周囲の空気の流れの相対速度を検出する手段であり、前記放出制御手段は前記状態検出手段により検出された相対速度が大きいほど前記生成水の放出量が少なくなる傾向で前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできる。移動体周囲の空気の流れによる放出した生成水の飛散や巻き上げの程度は生成水に対する相対速度の大小によるから、移動体周囲の空気の流れの移動体に対する相対速度が大きいほど生成水の放出量を少なくすることにより、放出した生成水が移動体周囲の空気の流れにより飛散し巻き上げられるのを抑制することができる。この態様の本発明の第1の参考例の移動体において、前記放出制御手段は、前記状態検出手段により検出された相対速度が所定相対速度以上のときには前記生成水が放出されないよう前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、移動体周囲の空気の流れの移動体に対する相対速度が所定相対速度以上のときにおける生成水の放出による不都合を回避することができる。
本発明の第1の参考例の移動体において、前記状態検出手段は移動体の制動状態を検出する手段であり、前記放出制御手段は前記状態検出手段により移動体の制動状態が検出されたときには前記生成水の放出量が制限されるよう前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、放出した生成水が移動体の制動を阻害するのを抑制することができる。この態様の本発明の第1の参考例の移動体において、前記放出制御手段は、前記状態検出手段により検出された移動体の制動状態が所定の制動状態であるときには前記生成水が放出されないよう前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、所定の制動状態における放出した生成水による制動の阻害を回避することができる。
本発明の第1の参考例の移動体において、前記状態検出手段は移動体の所定の旋回状態を検出する手段であり、前記放出制御手段は前記状態検出手段により前記所定の旋回状態が検出されたときには該所定の旋回状態が検出されないときより前記生成水の放出量が制限されるよう前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、放出した生成水による移動体の旋回時における安定性の阻害、例えば移動体が車両であるときのスリップなどによる安定性の阻害を抑制することができる。ここで、生成水の放出量の制限は、生成水の放出の禁止も含まれる。
この移動体が旋回状態のときに生成水の放出量を制限する態様の本発明の第1の参考例の移動体において、前記放出手段は移動体の左右の位置に少なくとも一つずつの放出口から生成水を放出可能な手段であり、前記放出制御手段は前記状態検出手段により前記所定の旋回状態が検出されたときには前記放出手段における前記左右の位置の放出口のうち少なくとも旋回により外周側となる放出口からの生成水の放出量が制限されるよう前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできる。移動体は旋回時には遠心力によりその外周側に大きな力が作用する。従って、旋回により外周側となる放出口からの生成水の放水量を制限することにより、放出した生成水による移動体の旋回時の安定性の阻害をより効果的に抑制することができる。
また、移動体が旋回状態のときに生成水の放出量を制限する態様の本発明の第1の参考例の移動体において、前記所定の旋回状態は所定の回転半径以下の回転半径でもって所定の移動速度以下で旋回する状態であるものとすることもできる。こうすれば、所定の回転半径以下の回転半径でもって所定の移動速度以下で旋回する状態における移動体の安定性の阻害を抑制することができる。
本発明の移動体は、
発電に伴って水を生成する燃料電池を電力源として搭載する移動体であって、
前記燃料電池により生成された生成水を貯留可能な貯留手段と、
前記燃料電池により生成された生成水および/または前記貯留手段により貯留された生成水を少なくとも一つの放出口から外部に放出可能な放出手段と、
移動体の状態を検出する状態検出手段と、
該検出した状態に基づいて前記放出手段による生成水の放出を制御する放出制御手段と、
を備え、
移動体は自動車であり、
車輪のスリップを抑制するスリップ抑制手段を備え、
前記状態検出手段は、前記スリップ抑制手段による車輪のスリップの抑制が行なわれているスリップ抑制作動状態を検出する手段であり、
前記放出制御手段は、前記状態検出手段によりスリップ抑制作動状態が検出されたときには前記生成水の放出量が制限されるよう前記放出手段を制御する手段である
ことを要旨とする。
この本発明の移動体では、移動体の状態に基づいて燃料電池により生成された生成水やこれを貯留した水を放出口から外部に放出するから、移動体の状態に応じた生成水の放出を行なうことができる。即ち、移動体の状態に応じて生成水をより適正に外部に放出することができるのである。ここで、貯留手段は、燃料電池から放出口までに設けられて生成水を貯留可能な全てのものを意味し、例えば、生成水を貯留するタンクなどが含まれる他、燃料電池から放出口まで生成水を通流させる通路(特に、燃料電池からの排ガスと共に生成水を通流させる通路)なども含まれる。また、移動体としては、自動車や列車などの車両を含む地上移動体が含まれる。さらに、移動体は、燃料電池に加えて燃流電池以外の電力源、例えば二次電池やキャパシタ,発電機などを搭載するものとしてもよい。ここで、スリップ抑制動作はスリップしている車輪をグリップさせる動作であり、路面の摩擦係数に左右される。一方、路面の摩擦係数は路面が濡れているときの方が乾いているときより小さくなる。従って、スリップ抑制作動状態に生成水の放出量を制限することにより、放出された生成水によるスリップ抑制動作の阻害を抑制することができる。ここで、生成水の放出量の制限は、生成水の放出の禁止も含まれる。この本発明の移動体において、前記放出手段は取り付け位置の異なる複数の放出口から前記生成水を放出可能な手段であり、前記放出制御手段は前記状態検出手段によりスリップ抑制作動状態が検出されたときには前記放出手段における複数の放出口のうち少なくとも前記スリップの抑制に係る車輪に影響を与える放出口からの前記生成水の放出量が制限されるよう前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、放出された生成水によるスリップ抑制動作の阻害をより効果的に抑制することができる。
本発明の第1の参考例の移動体において、前記状態検出手段は移動体の移動環境状態を検出する手段であるものとすることもできる。こうすれば、移動体の移動環境状態に応じた生成水の放出を行なうことができる。
この移動体の移動環境状態に応じて生成水の放出を制御する態様の本発明の第1の参考例の移動体において、前記状態検出手段は雨天状態を検出する手段であり、前記放出制御手段は前記状態検出手段により雨天状態を検出したときには前記生成水を制限することなく放出するよう前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできる。雨天時における生成水の放出は水による移動体の移動特性に影響を与えないため、生成水の放出量を制限する必要がないからである。ここで、生成水の放出量の制限は、生成水の放出の禁止も含まれる。この態様の本発明の第1の参考例の移動体において、前記放出制御手段は、前記状態検出手段により検出された雨天状態が所定の雨天状態であるときには雨天状態が検出されないときより前記生成水が多く放出されるよう前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできる。即ち、雨天時により多くの生成水を放出するものとしてもよいのである。
また、移動体の移動環境状態に応じて生成水の放出を制御する態様の本発明の第1の参考例の移動体において、移動体は車両であり、前記状態検出手段は移動体の雪面上または凍結面上を移動する雪凍結面上移動状態を検出する手段であり、前記放出制御手段は前記状態検出手段により移動体の雪凍結面上移動状態を検出したときには前記生成水の放出量が制限されるよう前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、雪面上や凍結面上を移動しているときに生成水が放出されることによる不都合、例えば、生成水がかかった部分の摩擦係数が小さくなることによりスリップが生じやすくなる不都合や生成水がかかった部分が凍結することによりスリップが生じやすくなる不都合などの不都合を抑制することができる。ここで、生成水の放出量の制限は、生成水の放出の禁止も含まれる。
さらに、移動体の移動環境状態に応じて生成水の放出を制御する態様の本発明の第1の参考例の移動体において、前記状態検出手段は外気の温度を検出する手段であり、前記放出制御手段は前記状態検出手段により検出された外気の温度が低いほど前記生成水の放出量が少なくなる傾向で前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、放出された生成水に対する外気の温度が低いことに対する不都合、例えば、水蒸気を液化することにより生じる飛散や巻き上げなどの不都合や水を凍結させることにより生じるスリップが生じやすくなる不都合などの不都合を抑制することができる。ここで、生成水の放出量の制限は、生成水の放出の禁止も含まれる。
本発明の第1の参考例の移動体において、前記状態検出手段は、移動体の周囲における障害物の状態を検出する手段であるものとすることもできる。こうすれば、移動体の周囲における障害物の状態に応じた生成水の放出を行なうことができる。ここで、障害物には、建造物などの固定物や他の移動体などの移動物の他、人なども含まれる。
この移動体の周囲における障害物の状態に応じて生成水の放出を制御する態様の本発明の第1の参考例の移動体において、前記状態検出手段は移動体から所定範囲内の障害物の有無を検出する手段であり、前記放出制御手段は前記状態検出手段により移動体から所定範囲内に障害物が検出されたときには前記生成水の放出量が制限されるよう前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、所定範囲内の障害物に対する生成水の放出の不都合、例えば放出された生成水が直接あるいは間接にかかることにより生じる不都合や放出された生成水によって障害物のスリップが生じやすくなることによる不都合などの不都合を抑制することができる。ここで、生成水の放出量の制限は、生成水の放出の禁止も含まれる。この態様の本発明の第1の参考例の移動体において、前記放出手段は取り付け位置の異なる複数の放出口から前記生成水を放出可能な手段であり、前記状態検出手段は複数の方向に対する所定範囲内の障害物の有無を検出する手段であり、前記放出制御手段は前記複数の放出口のうち前記状態検出手段により前記所定範囲内の障害物が検出された方向に対応する放出口からの前記生成水の放出量が制限されるよう前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、より効果的に所定範囲内の障害物に対する生成水の放出の不都合を抑制することができる。
また、移動体の周囲における障害物の状態に応じて生成水の放出を制御する態様の本発明の第1の参考例の移動体において、前記状態検出手段は移動体と該移動体の後方における他の移動体との距離を検出する手段であり、前記放出制御手段は前記状態検出手段により検出された前記他の移動体との距離が所定距離未満のときには前記生成水の放出量が制限されるよう前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、放出された生成水による後方の他の移動体における不都合、例えば、放出された生成水が外気によって飛散し巻き上げられて視界を妨げる場合が生じるといった不都合や放出された生成水によりスリップしやすくなるといった不都合などの不都合を抑制することができる。ここで、生成水の放出量の制限は、生成水の放出の禁止も含まれる。こうした本発明の第1の参考例の移動体において、前記状態検出手段は移動体の移動速度を検出する手段を備え、前記放出制御手段は前記検出された移動体の移動速度に基づく距離を前記所定距離として設定し、該設定した所定距離を用いて前記生成水の放出を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、移動体の移動速度に応じた障害物との距離により生成水の放出を制御することができる。
本発明の第1の参考例の移動体において、前記状態検出手段は移動体における乗員の乗降が推定される乗降推定状態を検出する手段であり、前記放出制御手段は前記状態検出手段により前記乗降推定状態が検出されたときには前記生成水の放出量が制限されるよう前記放出手段を制御する手段であるものとすることできる。こうすれば、乗員の乗降の際に生成水が乗員にかかるのを抑制することができる。ここで、生成水の放出量の制限は、生成水の放出の禁止も含まれる。この態様の本発明の第1の参考例の移動体において、前記放出手段は取り付け位置が異なる複数の放出口から前記生成水を放出可能な手段であり、前記状態検出手段は移動体の複数の位置における乗降推定状態を検出する手段であり、前記放出制御手段は前記複数の放出口のうち前記状態検出手段により前記乗降推定状態が検出された位置に対応する放出口からの前記生成水の放出量が制限されるよう前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、乗員の乗降の際に生成水が乗員にかかるのを抑制すると共に生成水を放出することができる。
本発明の第1の参考例の移動体において、前記貯留手段における生成水の貯留状態を検出する貯留状態検出手段を備え、前記放出制御手段は前記貯留状態検出手段により検出された貯留状態に基づいて前記放出手段による生成水の放出を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、生成水の貯留状態に応じて生成水を放出することができる。
この生成水の貯留状態に基づいて生成水の放出を制御する態様の本発明の第1の参考例の移動体において、前記放出制御手段は前記貯留状態検出手段により検出された貯留状態における生成水の貯留量が第1の所定量以下のときには前記生成水の放出量が制限されるよう前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできるし、前記放出制御手段は前記貯留状態検出手段により検出された貯留状態における生成水の貯留量が第2の所定量以上のときには前記生成水の放出量が多くなるよう前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、前者では貯留量が第1の所定量を超えるまでの放出された生成水による不都合を抑制することができ、後者では貯留量が第2の所定量を超えた後の貯留量の増加を抑制することができる。
また、生成水の貯留状態に基づいて生成水の放出を制御する態様の本発明の第1の参考例の移動体において、前記貯留状態検出手段により検出された貯留状態における生成水の貯留量が第3の所定量以上のときには前記燃料電池の出力制限を指示する出力制限指示手段を備えるものとすることもできる。こうすれば、貯留量が第3の所定量を超えた後の貯留量の増加を抑制することができる。
本発明の第1の参考例の移動体において、前記放出手段は取り付け位置の異なる複数の放出口から前記生成水を放出可能な手段であり、前記放出制御手段は前記状態検出手段により検出された状態に基づいて前記複数の放出口からの生成水の放出状態を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、移動体の状態に応じた放出口から生成水を放出することができる。この結果、より適正な位置で生成水を放出することができる。
本発明の第2の参考例の移動体は、
発電に伴って水を生成する燃料電池を電力源として搭載する移動体であって、
前記燃料電池により生成された生成水の放出状態を変更して外部に放出可能な放出手段と、
移動体の移動状態を検出する移動状態検出手段と、
該検出した移動状態に基づいて前記生成水の放出状態を設定すると共に該設定した放出状態により前記生成水が放出されるよう前記放出手段を制御する放出制御手段と、
を備えることを要旨とする。
この本発明の第2の参考例の移動体では、移動体の移動状態に基づいて燃料電池により生成される生成水の放出状態を設定し、この設定した放出状態により生成水を外部に放出する。この結果、移動体の移動状態に応じた放出状態により生成水を放出することができる。従って、より適切な放出状態を設定することにより、生成水を放出することにより生じる不都合、例えば、放出した生成水が外気により飛散し巻き上げられることによる不都合や放出した生成水が周囲の障害物にかかることによる不都合などの不都合を抑制することができる。
こうした本発明の第2の参考例の移動体において、前記放出手段は前記生成水の放出方向を変更可能な手段であり、前記放出制御手段は前記検出した移動状態に基づいて前記生成水の放出方向を設定すると共に該設定した放出方向をもって前記生成水が放出されるよう前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、移動体の移動状態に応じた放出方向に生成水を放出することができる。
この移動体の移動状態に応じて放出方向を変更して生成水を放出する態様の本発明の第2の参考例の移動体において、前記移動状態検出手段は移動体の移動速度を検出する手段であり、前記放出手段は移動体の側方向の成分をもった放出方向に変更可能な手段であり、前記放出制御手段は前記検出した移動体の移動速度が大きいほど移動体の側方向の成分が大きくなる傾向に前記放出方向を設定すると共に該設定した放出方向をもって前記生成水が放出されるよう前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、移動体の移動速度が大きくなるほど移動体の移動に伴う空気の流れの影響の小さな移動体の側方向にむけて生成水を放出するから、放出した生成水が移動体の移動に伴う空気の流れにより飛散し巻き上げられるのを抑制することができる。また、移動体の移動速度が小さいときには側方向に向けて放出されないから、移動体の側方向の建造物や人に生成水がかかるのを抑制することができる。
また、移動体の移動状態に応じて放出方向を変更して生成水を放出する態様の本発明の第2の参考例の移動体において、前記移動状態検出手段は移動体の移動速度を検出する手段であり、前記放出手段は移動体の後方向の成分をもった放出方向に変更可能な手段であり、前記放出制御手段は前記検出した移動体の移動速度が大きいほど移動体の後方向の成分が大きくなる傾向に前記放出方向を設定すると共に該設定した放出方向をもって前記生成水が放出されるよう前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできる。放出された生成水の地面に対する相対速度が大きいほど生成水が地面に到達したときに飛び散りやすくなり、生成水が多く飛び散るほど移動体の移動に伴う空気の流れにより巻き上げられる水が多くなる。従って、移動体の移動速度が大きいほど移動体の後方向の成分が大きくなるよう生成水を放出することにより、生成水が地面に到達したときの飛び散る量を少なくして、放出した生成水が移動体の移動に伴う空気の流れにより巻き上げられるのを抑制することができる。
本発明の第2の参考例の移動体において、前記放出手段は前記生成水の放出速度を変更可能な放出速度変更手段を有する手段であり、前記放出制御手段は前記検出した移動状態に基づいて前記放出速度変更手段の状態を設定すると共に該設定された状態となるよう前記放出速度変更手段を調整して前記生成水が放出されるよう前記放出手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、移動体の移動状態に応じた放出速度により生成水を放出することができる。
この移動体の移動状態に応じた放出速度により生成水を放出する態様の本発明の第2の参考例の移動体において、前記放出制御手段は、移動体の移動方向における前記生成水の地面に対する相対速度が小さくなるよう前記放出速度変更手段の状態を設定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、生成水が地面に到達したときの飛び散る量を少なくすることができ、これにより放出した生成水が移動体の移動に伴う空気の流れにより巻き上げられるのを抑制することができる。
また、移動体の移動状態に応じた放出速度により生成水を放出する態様の本発明の第2の参考例の移動体において、前記放出速度変更手段は、前記生成水の放出口の開口面積を変更することにより前記生成水の放出速度を変更可能な手段であるものとすることもできるし、前記生成水の放出口に至る経路における圧力を変更することにより前記生成水の放出速度を変更可能な手段であるものとすることもできる。
さらに、本発明の第2の参考例の移動体において、前記放出手段は、前記生成水を前記燃料電池からの排気と共に放出する手段であるものとすることもできる。こうすれば、燃料電池からの排気の放出状態を変更することにより生成水の放出状態を変更することができる。
本発明の第3の参考例の移動体は、
発電に伴って水を生成する燃料電池を電力源として搭載する移動体であって、
前記燃料電池を運転する運転手段と、
前記燃料電池により生成された生成水の少なくとも一部を水蒸気とした状態で該燃料電池から排出される排ガスと共に外部に放出する放出手段と、
該放出手段から放出される液体としての生成水の放出量が許容放出量の範囲内となるよう前記運転手段を制御する放出制御手段と、
を備えることを要旨とする。
この本発明の第3の参考例の移動体では、燃料電池により生成された生成水をの一部を水蒸気とした状態で燃料電池から排出される排ガスと共に外部に放出する際に、放出される液体としての生成水の放出量が許容放出量の範囲内となるよう制御する。これにより、燃料電池により生成される生成水の生成量に拘わらず、放出される液体としての生成水の放出量を許容放出量の範囲内にすることができる。この結果、生成水の放出量が許容放出量を超えることにより生じる不都合、例えば放出した生成水が移動体の移動に伴う空気の流れにより飛散し巻き上げられることによる不都合などを抑制することができる。
こうした本発明の第3の参考例の移動体において、前記運転手段は前記燃料電池から排出される排ガスの温度を調整可能な手段を有し、前記放出制御手段は前記燃料電池から排出される排ガスの温度を変更することにより前記生成水における水蒸気量を変更して前記液体としての生成水の放出量が前記許容放出量の範囲内となるよう前記運転手段を制御する手段であるものとすることもできるし、前記運転手段は前記燃料電池を冷却する冷却装置を運転する手段を有し、前記放出制御手段は前記冷却装置の運転の変更により前記燃料電池から排出される排ガスの温度が変更されるよう前記運転手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、排ガスの温度を変更することにより生成水の水蒸気量を調整して液体としての生成水の放出量を許容放出量の範囲内にすることができる。これらの態様の本発明の第3の参考例の移動体において、前記運転手段は前記燃料電池からの排ガスの背圧を調整する手段を有し、前記放出制御手段は前記燃料電池からの排ガスの背圧調整により前記燃料電池から排出される排ガスの温度が変更されるよう前記運転手段を制御する手段であるものとすることもできる。
また、本発明の第3の参考例の移動体において、前記運転手段は前記燃料電池に供給される気体を前記燃料電池から排出される排ガスに含まれる水分により加湿する加湿手段を有し、前記放出制御手段は前記加湿手段による加湿量を調整することにより前記液体としての生成水の放出量が前記許容放出量の範囲内となるよう制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、加湿手段による加湿量を調整することにより液体としての生成水の放出量を許容放出量の範囲内にすることができる。
さらに、本発明の第3の参考例の移動体において、前記燃料電池の運転状態を検出する運転状態検出手段を備え、前記放出制御手段は前記運転状態検出手段により検出された前記燃料電池の運転状態に基づいて前記液体としての生成水の放出量を演算すると共に該演算した放出量が前記許容放出量の範囲内となるよう前記運転手段における制御パラメータを設定し、該設定した制御パラメータを用いて前記運転手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、制御パラメータを変更することにより、液体としての生成水の放出量を許容放出量の範囲内にすることができる。ここで、「制御パラメータ」としては、燃料電池からの排ガスの目標温度を用いることができる。
本発明の第4の参考例の移動体は、
水素と酸素の電気化学反応により発電する燃料電池と、
前記燃料電池からの排気を移動体外に排出するための排気系と、
前記排気に含まれる生成水の移動体外への排出を所定速以上の時に抑制する排水抑制機構と、
を備えることを要旨とする。
この本発明の第4の参考例の移動体では、生成水の飛散は移動体外の気流の影響を受けるため、排気に含まれる生成水の移動体外への排出を所定速以上の時に抑制することにより、生成水の飛散を抑制することができる。ここで、移動体としては主に車両を考えることができる。
こうした本発明の第4の参考例の移動体において、排水抑制機構は、種々の構成を採ることができる。第1の態様として、排水抑制機構は、所定速以上で開度が低減する弁機構としてもよい。この弁機構は、電磁弁と、移動体速に応じてその開度を制御する制御装置とを用いて構成してもよい。また、外部からの圧力に応じて開閉動作するリード弁を用いてもよい。高速移動時には、気流をせき止めた時の圧力、即ちラム圧が速度に応じて高くなる。従って、ラム圧に応じて開閉するリード弁を用いれば、上述の弁機構を比較的容易に実現することができる。
排水抑制機構は、第2の態様として、移動体の移動に伴うラム圧が生成水の排出を抑制する方向に作用する位置および向きに開口する排水口としてもよい。例えば、排水口を移動体の外部に前方に向けて設ける構造を採ることができる。
上述の排水抑制機構は、例えば、排気管に直接設けてもよい。また、排気から生成水を分離するための気液分離機構を設け、その気液分離機構からの排水系に設けてもよい。気液分離機構を用いる場合には、排気中の生成水を分離した上で、効率的に排出することができる利点がある。
気液分離機構を適用する場合には、分離された生成水を一時的に貯留する貯留部を有することが好ましい。こうすることにより、高速移動時に、生成水の分離機能に支障なく生成水の排出を抑制することができる。この場合、排水系は、貯留部において移動体の前方に開口するよう設けられていることが好ましい。移動体の加速時には、慣性力の作用により、生成水は貯留部後方に押しやられるため、排水、ひいては生成水の飛散が抑制される。減速時には、生成水が前方に流れてくるため、排水が促進される。このように貯留部からの排水用の開口を移動体前方に向けておくことにより、簡易な構造で、高速移動に向けての加速中の排水を抑制し、減速時の排水を促進することができる。
本発明の第5の参考例の移動体は、
移動体であって、
水素と酸素の電気化学反応により発電する燃料電池と、
前記燃料電池からの排気を移動体外に排出するための排気系と、
前記排気に含まれる生成水を一時的に貯留する貯留部と、
前記貯留部から前記生成水を排出するため前記移動体の前方側に設けられた排水口と、
を備えることを要旨とする。
この本発明の第5の参考例の移動体では、排気系に貯留部を備えると共に貯留部から生成水を排出するための排水口を車両の前方側に設ける。この本発明の第5の参考例の移動体では、高速移動時に排水を抑制する作用を十分に奏しない構成も含まれる。先に説明した通り、前方に開口部を設けることにより、加速時の排水が抑制され、減速時の排水が促進される。移動中の移動体は、一定速度で走行し続けることはあまり多くなく、加減速が行われることが多い。従って、減速時に生成水を十分に排出すると共に加速時の排出を抑制することにより、移動中における生成水の飛散を後続の移動体の移動に支障を与えない程度には抑制することができる。ここで、移動体としては主に車両を考えることができる。
こうした本発明の第5の参考例の移動体において、貯留部および排水口を移動体内部に設け、排水管で移動体外に生成水を排出する構造としてもよい。また、排水口は、移動体の移動中に伴うラム圧が生成水の排出を抑制する方向に作用する位置および向きに開口させてもよい。後者の態様では、貯留部を移動体外に設けることにより排水口にラム圧が作用するようにしてもよいし、貯留部を移動体内に設けた上で排水口を移動体外に設けてもよい。このように排水口にラム圧を作用させることによって、高速移動時の排水を抑制し、生成水の飛散を抑制することができる。
また、本発明の第5の参考例の移動体において、排水口には、所定速以上で開度が低減する弁機構を設けてもよい。こうすることで、高速移動時における排水を抑制することができる。かかる弁機構としては、先に本発明の第4の参考例の移動体で説明した構成、即ち、電磁弁と制御装置の組み合わせ、リード弁などを適用することができる。
さらに、本発明の第5の参考例の移動体において、効率的な排水を行う上で、排気から生成水を分離するための気液分離機構を設けることが好ましい。この場合、貯留部は、気液分離機構の排水系に設けることができる。
第1実施例の移動体としての燃料電池車10における搭載機器の平面配置を例示する平面配置図である。 第1実施例の燃料電池車10が搭載する燃料電池システム20の構成の概略を示す構成図である。 放出口58a〜58fからの水の放出制御を行なうのに必要なPCU70に組み込まれている電子制御ユニット71に入出力される制御信号の一例を示すブロック図である。 電子制御ユニット71により実行される放出制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。 放出禁止フラグF1と補正値K1とを設定する走行状態補正値判定フラグ設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。 放出禁止フラグF2や左右の放出禁止フラグFL1,FR1を設定する車両姿勢確保判定フラグ設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。 放出禁止フラグF3や左右の放出禁止フラグFL2,FR2を設定する旋回判定フラグ設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。 放出禁止フラグF4と補正値K2とを設定する障害物補正値判定フラグ設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。 放出禁止フラグF5を設定する乗降判定フラグ設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。 車速補正係数設定マップの一例を示す説明図である。 加速度補正係数設定マップの一例を示す説明図である。 風速補正係数設定マップの一例を示す説明図である。 外気温補正係数設定マップの一例を示す説明図である。 放出制限距離設定マップの一例を示す説明図である。 後続車距離Lvと放出制限距離L1,L2と補正値K2との関係の一例を示す説明図である。 水位HWと閾値H1,H2と補正値K3との関係の一例を示す説明図である。 第2実施例の燃料電池車210における搭載機器の平面配置を例示する平面配置図である。 第2実施例の燃料電池車210が搭載する燃料電池システム220の構成の概略を示す構成図である。 方向可変放出口260の構成の概略を示す構成図である。 方向可変放出口260の動作を説明する説明図である。 電子制御ユニット271により実行される放出方向制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。 生成水量Qfcと補正係数Pqfcとの関係の一例を示す説明図である。 車速Vaと補正係数Pvaとの関係の一例を示す説明図である。 空気流量Qaと補正係数Pqaとの関係の一例を示す説明図である。 第3実施例の燃料電池車310における搭載機器の平面配置を例示する平面配置図である。 第3実施例の燃料電池車310の電子制御ユニット271で実行される放出方向制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。 地面から見た車両相対速度Vrと放出流速Vgと放出角度Θとの関係の一例を示す説明図である。 第3実施例の燃料電池車310の変形例としての断面積可変放出口370の構成の概略を示す構成図である。 断面積可変機構372の構成の一例を示す説明図である。 第3実施例の燃料電池車310の変形例で実行される開口面積制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。 第4実施例の移動体としての燃料電池車410における搭載機器の平面配置を例示する平面配置図である。 第4実施例の燃料電池車410が搭載する燃料電池システム420の構成の概略を示す構成図である。 排ガスの放出制御を行なうのに必要なPCU70に組み込まれている電子制御ユニット471に入出力される制御信号の一例を示すブロック図である。 電子制御ユニット471により実行される放出制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。 許容放出水量設定用マップの一例を示す説明図である。 変形例の放出制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。 第5実施例としての車両1010の概略構成を示す説明図である。 バッファタンク1027の作用を示す説明図である。 第6実施例としての排気系の構造を示す説明図である。 変形例としての排気系の構造を示す説明図である。 変形例としての排気系の構造を示す説明図である。
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
図1は本発明の第1実施例の移動体としての燃料電池車10における搭載機器の平面配置を例示する平面配置図であり、図2は第1実施例の燃料電池車10が搭載する燃料電池システム20の構成の概略を示す構成図である。説明の容易のために、まず、図2のシステム構成図を用いて燃料電池システム20のシステム構成について説明し、その後、図1を用いて燃料電池システム20構成する各機器等の配置について説明する。
第1実施例の燃料電池車10が搭載する燃料電池システム20は、例えば高分子により形成された電解質膜を二つの電極(燃料極と空気極)で狭持してなる単電池ユニットを複数積層して構成した燃料電池スタック22と、この燃料電池スタック22の燃料極(負極)に高圧水素タンク31からの水素を供給する水素供給系30と、燃料電池スタック22の空気極(正極)に空気を供給すると共に空気極からの排気を処理する空気給排系40と、システムから発生した水を外部に放出する放出系50と、燃料電池スタック22を冷却する冷却系60とを備える。
水素供給系30は、燃料電池スタック22の内側に形成された燃料極への水素の供給用の流路に高圧水素タンク31からの水素を供給する水素供給流路32と、燃料電池スタック22の内側に形成された燃料極からの未反応の水素の排出用の流路からの水素を水素供給流路32に戻す水素循環路33とを備える。水素供給流路32には、高圧水素タンク31からの水素が逆流しないようにするための逆流防止弁(チェック弁)や燃料電池スタック22への水素の供給や供給停止を行なうための仕切弁などが設けられている。水素循環路33には、水素を水素供給流路32に圧送するための水素ポンプ34や、循環している水素中の水蒸気を液化することにより気液分離する気液分離器38、水素供給流路32側の水素が逆流しないようにするための逆流防止弁(チェック弁)、燃料電池スタック22からの水素の排出を停止するための仕切弁などが設けられている。また、水素供給流路32や水素循環路33に燃料電池スタック22に供給する水素の供給量や燃料電池スタック22の運転状態を制御するために用いられる各種センサ、例えば、燃料電池スタック22の流入口や水素ポンプ34の吐出側に設けられた圧力センサや燃料電池スタック22の出口近傍や水素ポンプ34の吐出側に設けられた温度センサなどが取り付けられている。気液分離器38により分離された水は、放出系50が複数備える回収タンク54に送られる。
空気給排系40では、マスフローメータ43により計量されエアコンプレッサ44により加圧された空気を加湿器46により加湿して供給管42により燃料電池スタック22の空気極に供給する。燃料電池スタック22の空気極からの空気(排ガス)は、加湿器46に供給されてエアコンプレッサ44からの空気を加湿し、その後、気液分離器48により気液分離される。気液分離器48で分離された水は回収管52により回収タンク54やバッファタンク57a,57bに送られ、分離された気体(排ガス)は排ガス管51により車両後部に導かれて大気に開放される。ここで、実施例の気液分離器48は、気液を完全に分離するものではなく、不完全に分離するものを意味する。即ち、気液分離器48により分離された気体は、完全に乾燥した気体ではなく、不完全飽和或いは完全飽和若しくは過飽和の水蒸気を含む気体であったり、こうした水蒸気に加えて微小な液滴としての水をも含む気体である。
放出系50は、水素供給系30の気液分離器38や空気給排系40の気液分離器48で分離した水を回収タンク54やバッファタンク57a〜57fに一旦蓄えてから複数の放出口58a〜58f(第1実施例では6箇所)から放出する。回収タンク54の入口近傍には回収された水の回収タンク54への導入を調整する調整バルブ53が取り付けられており、各バッファタンク57a〜57fの入口にも回収された水の各バッファタンク57a〜57fへの導入を調整する放出バルブ56a〜56fが取り付けられている。バッファタンク57a〜57fのうちバッファタンク57a,57bには、回収管52からの分岐により気液分離器48から直接に水が導かれるように配管されており、残るバッファタンク57c〜57fには、回収タンク54に一旦蓄えられた水が導かれるよう配管されている。
冷却系60は、燃料電池スタック22の内側に形成された冷却水用流路とにより冷却水の循環路を形成する冷却水循環路62に冷却水を循環させることにより燃料電池スタック22を冷却する。冷却水循環路62には、冷却水を循環させるための冷却水ポンプ64や循環する冷却水を外気を用いて冷却するファン付きのラジエータ66が設けられている。また、冷却水の温度管理を行なうために冷却水循環路62における燃料電池スタック22からの出口近傍とラジエータ66の後段に冷却水の温度を検出する温度センサが取り付けられている。
こうした燃料電池システム20は、各種センサからの信号に基づいて水素ポンプ34やエアコンプレッサ44,冷却水ポンプ64を駆動したり各仕切弁や流量調節弁の開度を調節することにより燃料電池スタック22を制御すると共に図示しない走行用のモータを制御するパワーコントロールユニット(以下、PCUという)70や充放電可能なバッテリ84,モータ駆動用のインバータなども備えるが、これらについては本発明の中核をなさないから、その図示や詳細な説明については省略する。
図1に示すように、燃料電池スタック22は車両前部の中央下部に横たわるように配置され、その上に、PCU70が配置されている。燃料電池スタック22の左右の前部には、加湿器46とエアコンプレッサ44とが配置されており、その前方にはラジエータ66や乗員室内の空気調節を行なうエアコンディショナー用のラジエータ80が配置されている。この他、車両前部には水素ポンプ34や冷却水ポンプ64,気液分離器38が配置されているが、その図示は省略した。燃料電池スタック22の後方で運転席(右ハンドル用の車両における運転席)の前方右下部には、空気給排系40の気液分離器48が配置されており、車両中央の乗員室の下には回収タンク54が配置されている。車両後部の下部には4個の高圧水素タンク31a〜31d(総称するときには符号として「31」を用いる。)が配置されており、その上にはバッテリ84が配置されている。
バッファタンク57a〜57fは、前輪12a,12bの前方および後方と後輪14a,14bの前方に配置されており、バッファタンク57a〜57fに一時的に蓄えられた水は自然流下によって放出口58a〜58fから放出されるようになっている。なお、放出口58a〜58fからの水の放出やその停止は、放出バルブ56a〜56fの開閉により行なうことができる。放出バルブ56a〜56fは、図示しないアクチュエータを駆動することにより、その開度Aを0%〜100%の範囲で自由に調節することができるよう構成されている。従って、放出バルブ56a〜56fの開度Aを調節することにより、放出口58a〜58fからの水の放出を調節することができる。
図3は、放出口58a〜58fからの水の放出制御を行なうのにPCU70に組み込まれている電子制御ユニット71に入出力される制御信号の一例を示すブロック図である。電子制御ユニット71は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムなどを記憶するROM73やデータを一時的に記憶するRAM74,入力信号を受け付ける入力処理回路75,出力信号の出力処理を行なう出力処理回路76などを備える。電子制御ユニット71には、車速Vaを検出する車速センサ101からの車速Vaや車両前部に取り付けられて風速Vwを検出する風速センサ90(図1参照)からの風速Vw,フロントウインドウに雨滴が発生したかを感知する雨滴感知センサ102からの雨滴感知信号SWR,外気の温度Taを検出する外気温センサ103からの外気温Ta,運転者によるハンドルの切れ角(ステアリング角θ)を検出するステアリング角センサ104からのステアリング角θ,アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルポジションセンサ105からのアクセル開度Acc,運転者のシフト操作によるシフト位置を検出するシフトポジションセンサ106からのシフトポジションSP,ブレーキペダルの踏み込みを検出するブレーキスイッチ107からのブレーキスイッチ信号SWB,パーキング装置の作動を検出するパーキングスイッチ108からのパーキングスイッチ信号SWP,各ドア(左右4個のドア)の開閉を検出するドア開閉スイッチ109からのドア開閉スイッチ信号SWD1〜SWD4,運転席前方に配置され雪面上や凍結面上を走行する際に実施する駆動制御を指示するスノーモードスイッチ110からのスノーモードスイッチ信号SWS,回収タンク54に回収した水の水位HWを検出する水位計111からの水位HW,車両の四隅に取り付けられたクリアランスソナー94a〜94cからの信号に基づいて四隅方向に位置する対象物(障害物)までの距離Lfl,Lfr,Lrl,Lrrを演算する対象物距離演算器95からの対象物距離Lfl,Lfr,Lrl,Lrr,車両の後部中央に取り付けられたミリ波レーダ92からの信号に基づいて後続車までの距離Lvを演算する後続車距離演算器93からの後続車距離Lv,車輪のロックや空転,横滑りなどのスリップ抑制制御(ABS,TRC,VSC)を行なうスリップ抑制制御装置112からのスリップ抑制作動情報などを入力処理回路75を介して入力している。一方、電子制御ユニット71からは放出バルブ56a〜56fの図示しないアクチュエータへの駆動信号などを出力処理回路76を介して出力している。
次に、こうして構成された第1実施例の燃料電池車10が搭載する燃料電池システム20の燃料電池スタック22により生成された水を外部に放出する際の動作について説明する。図4は、電子制御ユニット71により実行される放出制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば、20msec毎)に繰り返し実行される。この放出制御ルーチンでは、複数の放出禁止フラグF1〜F5,FL1〜FL3,FR1〜FR3と補正値K1〜K3を用いて各放出口58a〜58fからの水の放出を調節する放出バルブ56a〜56fの開度Aを制御する。この放出禁止フラグF1〜F5,FL1〜FL3,FR1〜FR3や補正値K1,K2は、所定時間毎(例えば20msec毎)に繰り返し実行される図5に例示する走行状態補正値判定フラグ設定ルーチンや図6に例示する車両姿勢確保判定フラグ設定ルーチン,図7に例示する旋回判定フラグ設定ルーチン,図8に例示する障害物補正値判定フラグ設定ルーチン,図9に例示する乗降判定フラグ設定ルーチンによって設定される。説明の都合上、まず、これらの放出禁止フラグF1〜F5,FL1〜FL3,FR1〜FR3や補正値K1,K2を設定する処理について説明し、その後に、放出制御について説明する。
図5に例示する走行状態補正値判定フラグ設定ルーチンが実行されると、電子制御ユニット71のCPU72は、まず、車速センサ101からの車速Vaや外気温センサ103からの外気温Ta,ブレーキスイッチ107からのブレーキスイッチ信号SWBなどの補正値K1や放出禁止フラグF1を設定するのに必要なデータを入力し(ステップS200)、入力した車速Vaに基づいて車両の加速度αを計算する(ステップS202)。そして、まず、ブレーキスイッチ信号SWBのオンオフを調べ(ステップS204)、ブレーキスイッチ信号SWBがオンのときには水の放出により制動性能の低下を回避するために放出口58a〜58fからの水の放出を禁止するよう放出禁止フラグF1に値1をセットして(ステップS226)、本ルーチンを終了する。
ブレーキスイッチ信号SWBがオフのときには、車速Vaを閾値Va1と比較する(ステップS206)。ここで、閾値Va1は、車両の走行によって生じる走行風により放出口58a〜58fから放出した水が飛散し巻き上げられるのを抑制することができない車速(例えば、90kmなど)として設定されるものであり、車両の特性などによって設定される。車速Vaが閾値Va1より大きいときには放出口58a〜58fから放出した水が飛散し巻き上げられて後方や側方を走行している車両のフロントウインドウにかかるのを回避するために放出口58a〜58fからの水の放出を禁止するよう放出禁止フラグF1に値1をセットして(ステップS226)、本ルーチンを終了する。車速Vaが閾値Va1以下のときには、車速Vaに基づいて車速補正係数Kvaを設定する(ステップS208)。車速補正係数Kvaは、車速Vaが大きくなるほど放出口58a〜58fからの水の放出を制限するよう小さくなる傾向に設定されるものであり、第1実施例では、車速Vaと車速補正係数Kvaとの関係を予め設定して車速補正係数設定マップとしてROM73に記憶しておき、車速Vaが与えられると車速補正係数設定マップから対応する車速補正係数Kvaを導出することにより設定するものとした。車速補正係数設定マップの一例を図10に示す。この例では、車速Vaが閾値Va1より小さな値Va2に至るまでは車速補正係数Kvaに値1が設定され、車速Vaが値Va2より大きくなるにしたがって車速補正係数Kvaが小さくなるよう設定される。
車速補正係数Kvaが設定されると、計算した加速度αを閾値α1と比較する(ステップS210)。ここで、閾値α1は、車両を急発進させたときの加速度として設定されるものである。車両を急発進させるときには、路面状態によっては駆動輪が空転(スリップ)する場合が生じる。駆動輪の空転によるスリップが生じやすい路面状態としては路面が濡れている状態をその一例として挙げることができる。即ち、閾値α1は、放出口58a〜58fから水を放出すると駆動輪に空転によるスリップが生じる可能性があるのを判定するための加速度として設定されているのである。加速度αが閾値α1より大きいときには、駆動輪に空転によるスリップが生じる可能性があると判断し、これを抑制するために放出口58a〜58fからの水の放出を禁止するよう放出禁止フラグF1に値1をセットして(ステップS226)、本ルーチンを終了する。加速度αが閾値α1以下のときには、駆動輪に空転によるスリップが生じる可能性は少ないと判断し、加速度αに基づいて加速度補正係数Kαを設定する(ステップS212)。加速度補正係数Kαは、加速度αが大きくなるほど放出口58a〜58fからの水の放出を制限するよう小さくなる傾向に設定されるものであり、第1実施例では、加速度αと加速度補正係数Kαとの関係を予め設定して加速度補正係数設定マップとしてROM73に記憶しておき、加速度αが与えられると加速度補正係数設定マップから対応する加速度補正係数Kαを導出することにより設定するものとした。加速度補正係数設定マップの一例を図11に示す。この例では、加速度αが閾値α1より小さな値α2に至るまでは加速度補正係数Kαに値1が設定され、加速度αが値α2より大きくなるにしたがって加速度補正係数Kαが小さくなるよう設定される。
加速度補正係数Kαが設定されると、風速Vwを閾値Vw1と比較する(ステップS214)。ここで、閾値Vw1は、走行している車両の相対的な空気の流れとしての風により放出口58a〜58fから放出した水が飛散し巻き上げられるのを抑制することができない風速(例えば、20m/sなど)として設定されるものである。風速Vwが閾値Vw1より大きいときには放出口58a〜58fから放出した水が風により飛散し巻き上げられて後方や側方を走行している車両のフロントウインドウにかかるのを回避するために放出口58a〜58fからの水の放出を禁止するよう放出禁止フラグF1に値1をセットして(ステップS226)、本ルーチンを終了する。風速Vwが閾値Va1以下のときには、風速Vwに基づいて風速補正係数Kvwを設定する(ステップS216)。風速補正係数Kvwは、風速Vwが大きくなるほど放出口58a〜58fからの水の放出を制限するよう小さくなる傾向に設定されるものであり、第1実施例では、風速Vwと風速補正係数Kvwとの関係を予め設定して風速補正係数設定マップとしてROM73に記憶しておき、風速Vwが与えられると風速補正係数設定マップから対応する風速補正係数Kvwを導出することにより設定するものとした。風速補正係数設定マップの一例を図12に示す。この例では、風速Vwが閾値Vw1より小さな値Vw2までは風速補正係数Kvwに値1が設定され、風速Vwが値Vw2より大きくなるにしたがって風速補正係数Kvwが小さくなるよう設定される。
風速補正係数Kvwが設定されると、外気温Taを閾値Ta1と比較する(ステップS218)。ここで、閾値Ta1は、放出した水が蒸発したり地面に浸透するまでに凍結する外気温として設定されるものである。即ち、閾値Ta1は、放出した水が凍結するのを抑制するために設定されるものである。外気温Taが閾値Ta1未満のときには、放出した水により路面の凍結を回避するために放出口58a〜58fからの水の放出を禁止するよう放出禁止フラグF1に値1をセットして(ステップS226)、本ルーチンを終了する。外気温Taが閾値Ta1以上のときには、外気温Taに基づいて外気温補正係数Ktaを設定する(ステップS220)。外気温補正係数Ktaは、外気温Taが低くなるほど放出口58a〜58fからの水の放出を制限するよう小さくなる傾向に設定されるものであり、第1実施例では、外気温Taと外気温補正係数Ktaとの関係を予め設定して外気温補正係数設定マップとしてROM73に記憶しておき、外気温Taが与えられると外気温補正係数設定マップから対応する外気温補正係数Ktaを導出することにより設定するものとした。外気温補正係数設定マップの一例を図13に示す。この例では、外気温Taが閾値Ta1より高い値Ta2より高いときには外気温補正係数Ktaに値1が設定され、外気温Taが値Ta2より低くなるにしたがって外気温補正係数Ktaが小さくなるよう設定される。
こうして各補正係数Kva,Kα,Kvw,Ktaが設定されると、放出禁止フラグF1に値0をセットすると共に(ステップS222)、設定した補正係数の積をとって走行状態用の補正値K1を設定し(ステップS224)、本ルーチンを終了する。走行状態用の補正値K1は、車速Vaや加速度α,風速Vw,外気温Taなどの走行状態に基づいて放出口58a〜58fからの放出を制限するものとなる。
図6に例示する車両姿勢確保判定フラグ設定ルーチンが実行されると、電子制御ユニット71のCPU72は、まず、スリップ抑制制御装置112からのスリップ抑制作動情報やスノーモードスイッチ110からのスノーモードスイッチ信号SWS,ブレーキスイッチ107からのブレーキスイッチ信号SWBなどの放出禁止フラグF2や左右の放出禁止フラグFL1,FR1を設定するのに必要なデータを入力する(ステップS230)。そして、入力したブレーキスイッチ信号SWBとスノーモードスイッチ信号SWSの状態を判定する(ステップS232,S234)。ブレーキスイッチ信号SWBがオンのときには放出口58a〜58fからの水の放出により制動性能の低下を回避するために放出口58a〜58fからの水の放出を禁止するよう放出禁止フラグF2に値1をセットして(ステップS246)、本ルーチンを終了する。スノーモードスイッチ信号SWSがオンのときには、車両が雪面上や凍結面上を走行しているときに放出された水による不都合、例えば、放出された水がかかった部分の摩擦係数が小さくなることによりスリップが生じやすくなる不都合や放出された水がかかった部分が凍結することによりスリップが生じやすくなる不都合などの不都合を回避するために放出口58a〜58fからの水の放出を禁止するよう放出禁止フラグF2に値1をセットして(ステップS246)、本ルーチンを終了する。ブレーキスイッチ信号SWBがオフであり、かつ、スノーモードスイッチ信号SWSもオフのときには、スリップ抑制作動情報に基づいてスリップ抑制制御中であるか否かを判定し(ステップS236)、スリップ抑制制御中でないときには、放出禁止フラグF2や左右の放出禁止フラグFL1,FR1に値0を設定して(ステップS244)、本ルーチンを終了する。スリップ抑制制御中のときには、スリップ抑制制御を受けている車輪は左右の車輪のうち何れであるかを判定し(ステップS238)、スリップ抑制制御を受けているのが左側の車輪であるときにはその車輪のスリップを助長する可能性のある左側の放出口58a,58c,58eからの水の放出を禁止するよう左放出禁止フラグFL1に値1をセットし(ステップS240)、スリップ抑制制御を受けているのが右側の車輪であるときにはその車輪のスリップを助長する可能性のある右側の放出口58b,58d,58fからの水の放出を禁止するよう右放出禁止フラグFL2に値1をセットして(ステップS242)、本ルーチンを終了する。
図7に例示する旋回判定フラグ設定ルーチンが実行されると、電子制御ユニット71のCPU72は、まず、ステアリング角センサ104からのステアリング角θや車速センサ101からの車速Vaなど放出禁止フラグF3や左右の放出禁止フラグFL2,FR2を設定するのに必要なデータを入力する(ステップS250)。そして、入力したステアリング角θの絶対値を閾値θ1と比較する判定する(ステップS252)。閾値θ1はステアリングが左や右に切られたことによって生じる車両の旋回を判定するものである。なお、第1実施例では、ステアリング角θが負の値のときにはステアリングが左に切られたことを意味し、ステアリング角θが正の値のときにはステアリングが右に切られたことを意味する。ステアリング角θの絶対値が閾値θ1未満のときには、旋回していないか旋回していてもその回転半径が大きいと判断し、放出禁止フラグF3や左右の放出禁止フラグFL2,FR2に値0をセットして(ステップS254)、本ルーチンを終了する。ステアリング角θの絶対値が閾値θ1以上のときには、車速Vaを閾値Va3と比較する(ステップS256)。ここで、閾値Va3は、車両が交差点で右折または左折する際の旋回時の車速を判定するものであり、例えば30km/hなどのように設定される。車速Vaが閾値Va3未満のときには交差点での旋回、即ち交差点で左折または右折していると判断し、交差点内に水たまりができるのを抑制するために放出口58a〜58fからの水の放出を禁止するよう放出禁止フラグF3に値1をセットして(ステップS258)、本ルーチンを終了する。車速Vaが閾値Va3以上のときには、ステアリング角θの正負を判定し(ステップS260)、ステアリング角θが負のとき、即ちステアリングを左に切っているときには旋回の外側となる右側の車輪のスリップを抑制するために右放出禁止フラグFR2に値1をセットし(ステップS262)、ステアリング角θが正のとき、即ちステアリングを右に切っているときには旋回の外側となる左側の車輪のスリップを抑制するために左放出禁止フラグFL2に値1をセットして(ステップS264)、本ルーチンを終了する。
図8に例示する障害物補正値判定フラグ設定ルーチンが実行されると、電子制御ユニット71のCPU72は、まず、対象物距離演算器95からの対象物距離Lfl,Lfr,Lrl,Lrrや後続車距離演算器93からの後続車距離Lvなど放出禁止フラグF4や左右の放出禁止フラグFL3,FR3,後続車に対する補正値K2を設定するのに必要なデータを入力する(ステップS270)。そして、入力した対象物距離Lfl,Lfr,Lrl,Lrrを閾値Lrefと比較する(ステップS272)。ここで、閾値Lrefは、放出口58a〜58fから放出した水が対象物にかからない範囲を設定するものであり、例えば、50cmや1mなどに定めることができる。対象物距離Lfl,Lfr,Lrl,Lrrの全てが閾値Lref以上であるときには左右の放出禁止フラグFL3,FR3に値0をセットする(ステップSステップS274)。対象物距離Lfl,Lfr,Lrl,Lrrのうち左側のクリアランスソナー94a,94bからの信号に基づいて計算された対象物距離Lfl,Lrlのいずれか一方が閾値Lref未満のときには、左側の放出口58a,58c,58eから放出した水が対象物にかからないようにするために、左放出禁止フラグFL3に値1をセットする(ステップS276)。対象物距離Lfl,Lfr,Lrl,Lrrのうち右側のクリアランスソナー94c,94dからの信号に基づいて計算された対象物距離Lfr,Lrrのいずれか一方が閾値Lref未満のときには、右側の放出口58b,58d,58fから放出した水が対象物にかからないようにするために、右放出禁止フラグFR3に値1をセットする(ステップS278)。
こうして左右の放出禁止フラグFL3,FR3に値をセットすると、放出口58a〜58fから放出した水が走行風により飛散し巻き上げられて後方や側方を走行している車両のフロントウインドウにかからないようにするために車速Vaに基づいて放出制限距離L1,L2を設定する(ステップS280)。ここで、放出制限距離L1は出口58a〜58fからの水の放出を禁止する必要がある後続車との距離として設定されるものであり、放出制限距離L2は放出口58a〜58fからの水の放出を制限する必要がない後続車との距離として設定されるものである。こうした放出制限距離L1,L2はいずれも車速Vaが大きくなるにしたがって長くなる。第1実施例では、車速Vaと放出制限距離L1,L2との関係を予め設定して放出制限距離設定マップとしてROM73に記憶しておき、車速Vaが与えられると放出制限距離設定マップから対応する放出制限距離L1,L2を導出することにより設定するものとした。放出制限距離設定マップの一例を図14に示す。この例では、車速Vaに対して放出制限距離L1を設定するL1設定ラインと放出制限距離L2を設定するL2設定ラインを用いて放出制限距離L1,L2を求めることができるようになっている。
放出制限距離L1,L2を求めると、入力した後続車距離Lvと放出制限距離L1,L2とを比較し(ステップS282)、後続車距離Lvが放出制限距離L1未満のときには、放出口58a〜58fからの水の放出を禁止するよう放出禁止フラグF4に値1をセットして(ステップS284)、本ルーチンを終了する。後続車距離Lvが放出制限距離L1以上で放出制限距離L2以下のときには、放出禁止フラグF4に値0をセットすると共に(ステップS286)、放出口58a〜58fからの水の放出を制限するために後続車距離Lvと放出制限距離L1,L2とに基づいて補正値K2を設定して(ステップS288)、本ルーチンを終了する。補正値K2は、その値が小さいほど放出口58a〜58fからの水の放出を制限するものである。後続車距離Lvと放出制限距離L1,L2と補正値K2との関係の一例を図15に示す。図示するように、補正値K2は、後続車距離Lvが放出制限距離L1より大きくなるにしたがって大きくなり後続車距離Lvが放出制限距離L2に至ったときに値1が設定される。後続車距離Lvが放出制限距離L2より大きいときには、放出禁止フラグF4に値0をセットすると共に(ステップS286)、放出口58a〜58fからの水の放出を制限しないよう補正値K2に値1を設定して(ステップS288)、本ルーチンを終了する。
図9に例示する乗降判定フラグ設定ルーチンが実行されると、電子制御ユニット71のCPU72は、まず、ドア開閉スイッチ109からのドア開閉スイッチ信号SWD1〜SWD4やシフトポジションセンサ106からのシフトポジションSP,パーキングスイッチ108からのパーキングスイッチ信号SWPなど放出禁止フラグF5を設定するのに必要なデータを入力する(ステップS300)。そして、シフトポジションSPがPポジションであるか否か(ステップS302)、パーキングスイッチ信号SWPがオンであるか否か(ステップS304)、ドア開閉スイッチ信号SWD1〜SWD4がオンであるか否か(ステップS306)、を判定する。シフトポジションSPがPポジションのときやパーキングスイッチ信号SWPがオンのとき、あるいは、ドア開閉スイッチ信号SWD1〜SWD4のいずれかがオフのときには、車両の乗員室への乗降が推定されると判断し、乗降の際に放出口58a〜58fから放出された水が乗降者にかかるのを防止するために放出口58a〜58fからの水の放出を禁止するよう放出禁止フラグF5に値1をセットして(ステップS310)、本ルーチンを終了する。シフトポジションSPがPポジションではなくパーキングスイッチ信号SWPがオフであり、更にドア開閉スイッチ信号SWD1〜SWD4の全てがオンのときには乗降は推定されないと判断し、放出禁止フラグF5に値0をセットして(ステップS308)、本ルーチンを終了する。
図4の放出制御ルーチンでは、こうして設定された放出禁止フラグF1〜F5,FL1〜FL3,FR1〜FR3や補正値K1,K2を用いて放出口58a〜58fからの水の放出を制御する。以下、放出制御について説明する。放出制御ルーチンが実行されると、電子制御ユニット71のCPU72は、まず、雨滴感知センサ102からの雨滴感知信号SWRや放出禁止フラグF1〜F5,FL1〜FL3,FR1〜FR3,補正値K1,K2などの放出口58a〜58fからの水の放出制御に必要なデータを入力する(ステップS100)。そして、雨滴感知信号SWRがオンであるか否か、即ち雨滴を感知している可否かを判定する(ステップS102)。雨滴感知信号SWRがオンであるとき、即ち雨滴を感知しているときには、路面は雨により濡れており、放出口58a〜58fからの水の放出は何ら制限する必要がないと判断し、左側の放出バルブ56a,56c,56eの開度Alと右側の放出口58b,58d,58fの開度Arとに100%をセットして(ステップS104)、セットしたバルブ開度Al,Arとなるよう放出バルブ56a〜56fのアクチュエータを駆動することにより放出バルブ56a〜56fの開度を調整して(ステップS130)、本ルーチンを終了する。即ち、放出バルブ56a〜56fを全開にするのである。雨天で路面が濡れているときには、雨による水が走行風により飛散し巻き上げられるから、放出口58a〜58fから放出された水が雨による水と共に走行風により飛散し巻き上げられることになっても、不都合は生じないからである。
雨滴感知信号SWRがオフのとき、即ち雨滴が感知されていないときには、放出禁止フラグF1〜F5の値を調べ(ステップS106)、放出禁止フラグF1〜F5のいずれかが値1であるときには放出バルブ56a〜56fのバルブ開度Al,Arに0%をセットして(ステップS110)、セットしたバルブ開度Al,Arとなるよう放出バルブ56a〜56fのアクチュエータを駆動することにより放出バルブ56a〜56fの開度を調整して(ステップS130)、本ルーチンを終了する。即ち、放出バルブ56a〜56fを全閉するのである。これにより、図5から図9の各ルーチンで放出禁止フラグF1〜F5に値1をセットする際に説明したように、放出口58a〜58fから放出した水が走行風により飛散し巻き上げられて後方や側方を走行している車両のフロントウインドウにかからないようにすることができると共に放出口58a〜58fからの水の放出により制動性能の低下を回避することができ、放出口58a〜58fからの水の放出により交差点内に水たまりができるのを抑制することができ、乗降の際に放出口58a〜58fから放出された水が乗降者にかかるのを防止することができる。
放出禁止フラグF1〜F5の全てが値0のときには、回収タンク54の水位HWを閾値H1や閾値H2と比較する(ステップS108)。閾値H1は、回収タンク54に気液分離器48からの水を十分に受け入れることができる水位として設定されており、例えば、回収タンク54の全容量の30%や40%に相当する水位などを用いることができる。閾値H2、回収タンク54がほぼ満タン状態の水位として設定されており、例えば、回収タンク54の全容量の90%に相当する水位などを用いることができる。回収タンク54の水位HWが閾値H1未満のときには、放出口58a〜58fからの水の放出による不都合を回避するために、放出バルブ56a〜56fのバルブ開度Al,Arに0%をセットして(ステップS110)、セットしたバルブ開度Al,Arとなるよう放出バルブ56a〜56fのアクチュエータを駆動することにより放出バルブ56a〜56fの開度を調整して(ステップS130)、本ルーチンを終了する。回収タンク54の水位HWが閾値H1以上で閾値H2以下のときには、水位HWが高いほど放出口58a〜58fからの水の放出が行なわれるよう補正値K3を設定し(ステップS112)、燃料電池スタック22からの出力が制限されているときにはその出力制限を解除する(ステップS114)。補正値K3の設定は。第1実施例では、水位HWと補正値K3との関係を予め設定して補正値設定マップとしてROM73に記憶しておき、水位HWが与えられると補正値設定マップから対応する補正値K3を導出することにより設定するものとした。補正値K2は、その値が小さいほど放出口58a〜58fからの水の放出を制限するものである。水位HWと閾値H1,H2と補正値K3との関係の一例を図16に示す。図示するように、補正値K3は、水位HWが閾値H1より大きくなるにしたがって大きくなり水位HWが閾値H2に至ったときに値1が設定される。水位HWが閾値H2より大きいときには、補正値K3に値1を設定すると共に(ステップS116)、燃料電池スタック22からの出力を制限する出力制限を実施する(ステップS118)。ここで、燃料電池スタック22の出力制限は、燃料電池スタック22の図示しない出力端子に接続されたDC/DCコンバータなどにより燃料電池スタック22からの出力を制限し、不足する電力をバッテリ84から賄うように制御することにより行なわれる。燃料電池スタック22の出力制限を行なうことにより、燃料電池スタック22により単位時間当たりに生成される生成水量を減少させることができるから、回収タンク54が完全に満タン状態になるのを抑制することができる。
こうして補正値K3を設定すると、設定した補正値K3と入力した補正値K1,K2とを値100に乗じて放出バルブ56a〜56fのバルブ開度Al,Arを設定する(ステップS120)。続いて、左放出禁止フラグFL1〜FL3を調べ(ステップS122)、左放出禁止フラグFL1〜FL3のいずれかが値1のときには左側の放出バルブ56a,56c,56eの開度Alに0%を設定する(ステップS124)。左放出禁止フラグFL1〜FL3の全てが値0のときには現在設定されている左側の放出バルブ56a,56c,56eの開度Alを保持する。そして、右放出禁止フラグFR1〜FR3を調べ(ステップS126)、右放出禁止フラグFR1〜FR3のいずれかが値1のときには右側の放出バルブ56b,56d,56fの開度Arに0%を設定する(ステップS128)。右放出禁止フラグFR1〜FR3の全てが値0のときには現在設定されている右側の放出バルブ56b,56d,56fの開度Arを保持する。こうして放出バルブ56a〜56fのバルブ開度Al,Arを設定すると、セットしたバルブ開度Al,Arとなるよう放出バルブ56a〜56fのアクチュエータを駆動することにより放出バルブ56a〜56fの開度を調整して(ステップS130)、本ルーチンを終了する。左放出禁止フラグFL1〜FL3のいずれかが値1のときには左側の放出バルブ56a,56c,56eの開度Alに0%が設定されることにより放出口58a,58b,58eからは水は放出されず、右放出禁止フラグFR1〜FR3のいずれかが値1のときには右側の放出バルブ56b,56d,56fの開度Arに0%が設定されることにより放出口58b,58d,58fからは水は放出されない。これにより、スリップ抑制制御を受けている側の車輪のスリップが助長されるのを防止することができると共にステアリング操作により旋回しているときに旋回の外側となる車輪のスリップを抑制することができ、対象物に放出した水がかからないようにすることができる。
以上説明した第1実施例の燃料電池車10によれば、燃料電池スタック22により生成された水を、車両の走行状態や周囲の環境,車両への乗降,車両の周囲の障害物の状態などに基づいてより適正に放出することができる。即ち、(1)放出口58a〜58fから放出した水が走行風により飛散し巻き上げられて後方や側方を走行している車両のフロントウインドウにかからないようにすること、(2)放出口58a〜58fからの水の放出により制動性能の低下を回避すること、(3)放出口58a〜58fからの水の放出により交差点内に水たまりができるのを抑制すること、(4)乗降の際に放出口58a〜58fから放出された水が乗降者にかかるのを防止すること、(5)スリップ抑制制御を受けている側の車輪のスリップが助長されるのを防止すること、(6)ステアリング操作により旋回しているときに旋回の外側となる車輪のスリップを抑制すること、(7)対象物に放出した水がかからないようにすること、などの種々の効果を奏することができるのである。
第1実施例の燃料電池車10では、車両の車速Vaや加速度α,風速Vw,外気温Ta,ブレーキスイッチ107の状態を示すブレーキスイッチ信号SWB,スノーモードスイッチ110の状態を示すスノーモードスイッチ信号SWS,スリップ抑制制御の状態を示すスリップ抑制動作情報態,ステアリング角θと車速Vaとによる旋回状態,車両の四隅からの対象物までの距離Lfl,Lfr,Lrl,Lrr,後続車までの距離Lv,ドア開閉スイッチ信号SWD1〜SWD4やパーキングスイッチ信号SWPなどによって推定される車両への乗降の可能性,回収タンク54の水位HW,雨滴感知センサ102からの雨滴感知信号SWRなどに基づいて、放出バルブ56a〜56fの開度Al,Arを設定することにより、放出口58a〜58fからの水の放出を制御するものとしたが、これらに限定されるものではなく、車両の走行状態や周囲の環境,車両への乗降の可能性,車の障害物の状態などに基づいて放出口58a〜58fからの水の放出を制御するものであれば、如何なるものに基づいて制御するものとしてもよい。また、これらの全てを用いて放出口58a〜58fからの水の放出を制御するものに限定されるものではなく、これらの一部における可能な組み合わせや他の手法によるものとの組み合わせなどにより放出口58a〜58fからの水の放出を制御するものとしてもよい。
第1実施例の燃料電池車10では、車速Vaが閾値Va1以下では車速Vaが大きくなるほど放出口58a〜58fから放出される水量が小さくなるよう車速Vaに対して連続的に補正係数Kvaを変化させて設定するものとしたが、補正係数Kvaは車速Vaが大きくなるほど放出口58a〜58fから放出される水量が小さくなる傾向で変化させればよく、車速Vaに対して段階的に変化するよう補正係数Kvaを設定するものとしてもよい。第1実施例の燃料電池車10では、車速Vaが閾値Va1以下のときには車速Vaが大きくなるほど放出口58a〜58fから放出される水量が小さくなるよう補正係数Kvaを設定し、車速Vaが閾値Va1より大きいときには放出口58a〜58fからの水の放出を禁止するべく放出禁止フラグF1に値1を設定するものとしたが、単に、車速Vaが閾値Va1以下のときには放出口58a〜58fからの水の放水を許可し、車速Vaが閾値Va1より大きいときには放出口58a〜58fからの水の放出を禁止するものとしてもよい。さらに、第1実施例の燃料電池車10では、車速Vaが閾値Va1以下のときには車速Vaが大きくなるほど放出口58a〜58fから放出される水量が小さくなるよう補正係数Kvaを設定するものとしたが。車速Vaに応じて放出口58a〜58fから放水可能な水量の上限値を設定し、その上限値の範囲内で水を放出するものとしてもよい。この場合、上限値は、車速Vaが大きくなるほど小さくなる傾向に設定するのが好ましい。また、車速Vaにより車両の停止状態と走行状態とを判定し、走行状態のときには停止状態のときより放出口58a〜58fからの水の放出量が少なくなるように制御するものとしてもよい。この場合、放出口58a〜58fから放出する水の放出量の上限値を停止状態のときと走行状態のときとを予め設定しておき、設定された上限値の範囲内の放出量で放出口58a〜58fから水を放出するものとしてもよい。さらに、車速Vaにより車両の停止状態と走行状態とを判定し、走行状態のときには放出口58a〜58fからの水の放出量を走行状態における燃料電池スタック22により生成される水の生成量より少なくし、停止状態のときには放出口58a〜58fからの水の放出量を停止状態における燃料電池スタック22により生成される水の生成量より多くするものとしてもよい。
第1実施例の燃料電池車10では、加速度αが閾値α1以下では加速度αが大きくなるほど放出口58a〜58fから放出される水量が小さくなるよう加速度αに対して直線的に補正係数Kαを変化させるものとしたが、補正係数Kαは加速度αが大きくなるほど放出口58a〜58fから放出される水量が小さくなる傾向で変化させればよく、加速度αに対して段階的に変化するものとしてもよい。第1実施例の燃料電池車10では、加速度αが閾値α1以下のときには加速度αが大きくなるほど放出口58a〜58fから放出される水量が小さくなるよう補正係数Kαを設定し、加速度αが閾値α1より大きいときには放出口58a〜58fからの水の放出を禁止するべく放出禁止フラグF1に値1を設定するものとしたが、単に、加速度αが閾値α1以下のときには放出口58a〜58fからの水の放水を許可し、加速度αが閾値α1より大きいときには放出口58a〜58fからの水の放出を禁止するものとしてもよい。
第1実施例の燃料電池車10では、風速Vwが閾値Vw1以下では風速Vwが大きくなるほど放出口58a〜58fから放出される水量が小さくなるよう風速Vwに対して連続的に補正係数Kvwを変化させるものとしたが、補正係数Kvwは風速Vwが大きくなるほど放出口58a〜58fから放出される水量が小さくなる傾向で変化させればよく、風速Vwに対して段階的に変化するものとしてもよい。第1実施例の燃料電池車10では、風速Vwが閾値Vw1以下のときには風速Vwが大きくなるほど放出口58a〜58fから放出される水量が小さくなるよう補正係数Kvwを設定し、風速Vwが閾値Vw1より大きいときには放出口58a〜58fからの水の放出を禁止するべく放出禁止フラグF1に値1を設定するものとしたが、単に、風速Vwが閾値Vw1以下のときには放出口58a〜58fからの水の放水を許可し、風速Vwが閾値Vw1より大きいときには放出口58a〜58fからの水の放出を禁止するものとしてもよい。
第1実施例の燃料電池車10では、外気温Taが閾値Ta1以上では外気温Taが高くなるほど放出口58a〜58fから放出される水量が多くなるよう外気温Taに対して直線的に補正係数Ktaを変化させるものとしたが、補正係数Ktaは外気温Taが高くなるほど放出口58a〜58fから放出される水量が多くなる傾向で変化させればよく、外気温Taに対して段階的に変化するものとしてもよい。第1実施例の燃料電池車10では、外気温Taが閾値Ta1以上のときには外気温Taが高くなるほど放出口58a〜58fから放出される水量が多くなるよう補正係数Ktaを設定し、外気温Taが閾値Ta1より低いときには放出口58a〜58fからの水の放出を禁止するべく放出禁止フラグF1に値1を設定するものとしたが、単に、外気温Taが閾値Ta1以上のときには放出口58a〜58fからの水の放水を許可し、外気温Taが閾値Ta1より低いときには放出口58a〜58fからの水の放出を禁止するものとしてもよい。
第1実施例の燃料電池車10では、ブレーキスイッチ信号SWBがオンのときには水の放出により制動性能の低下を回避するために放出口58a〜58fからの水の放出を禁止するよう放出禁止フラグF2に値1をセットするものとしたが、ブレーキスイッチ信号SWBがオンのときでも放出口58a〜58fからの水の放出を禁止しないものとしてもよい。この場合、ブレーキスイッチ信号SWBがオンのときには放出口58a〜58fから放出される水の水量をブレーキスイッチ信号SWBがオフのときより少なくするものとしてもよい。
第1実施例の燃料電池車10では、スノーモードスイッチ信号SWSがオンのときには雪上に放出された水が凍結するのを回避するために放出口58a〜58fからの水の放出を禁止するよう放出禁止フラグF2に値1をセットするものとしたが、スノーモードスイッチ信号SWSがオンのときでも放出口58a〜58fからの水の放出を禁止しないものとしてもよい。この場合、スノーモードスイッチ信号SWSがオンのときには放出口58a〜58fから放出される水の水量をスノーモードスイッチ信号SWSがオフのときより少なくするものとしてもよい。
第1実施例の燃料電池車10では、スリップ抑制制御を受けている車輪があるときにはその車輪のスリップを助長する可能性のある側の放出禁止フラグ(左放出禁止フラグFL1か右放出禁止フラグFR1)に値1をセットし、スリップ抑制制御を受けている車輪の側の全ての放出口からの水の放出を禁止するものとしたが、スリップ抑制制御を受けている車輪の側の全ての放出口からの水の放出を禁止する必要はなく、スリップ抑制制御を受けている車輪に対応する放出口、例えば左前輪12aがスリップ抑制制御を受けているときには放出口58aからの水の放出だけを禁止し、同じ側の放出口58cや放出口58eからの水の放出口は禁止しないものとしてもよい。あるいは、いずれかの車輪がスリップ抑制制御を受けているときには全ての放出口58a〜58fからの水の放出を禁止するものとしてもよい。
第1実施例の燃料電池車10では、ステアリング角θの絶対値が閾値θ1以上で車速Vaが閾値Va3未満のときに交差点での旋回していると判断し、交差点内に水たまりができるのを抑制するために放出口58a〜58fからの水の放出を禁止するよう放出禁止フラグF3に値1をセットしたが、交差点での旋回か否かについてはウインカーの点灯などと合わせて判断するものとしてもよいし、交差点での旋回と判断したときには放出口58a〜58fからの水の放出を禁止せず、放出口58a〜58fから放出する水量を少なくするものとしてもよい。
第1実施例の燃料電池車10では、ステアリング角θの絶対値が閾値θ1以上で車速Vaが閾値Va3以上のときには車両が旋回状態にあるとして旋回の外側となる車輪のスリップを抑制するために旋回の外側の放出口からの水の放出を禁止するよう左放出禁止フラグFL2または右放出禁止フラグFR2に値1をセットしたが、車両が旋回状態にあるときには全ての放出口58a〜58fからの水の放出を禁止するものとしてもよい。
第1実施例の燃料電池車10では、車両の四隅に取り付けられたクリアランスソナー94a〜94cを用いて車両の四隅からの対象物の距離Lfl,Lfr,Lrl,Lrrを演算するものとしたが、クリアランスソナー94a〜94cを取り付ける位置は車両の四隅に限られず、如何なる位置に取り付けるものとしてもよい。また、第1実施例の燃料電池車10では、クリアランスソナー94a〜94cからの信号に基づいて演算した車両の四隅からの対象物の距離Lfl,Lfr,Lrl,Lrrのいずれかが閾値Lref未満のときに、車両からの距離が閾値Lref未満となった対象物に水がかからないようにするために対象物が存在する側の放出口からの水の放出を禁止したが、対象物が存在する側の放出口からの水の放出量を少なくするものとしてもよい。また、対象物が存在する方向の放出口、例えば、クリアランスソナー94aからの信号により演算された対象物の距離Lflが閾値Lref未満のときには、放出口58aからの水の放出だけを禁止し、他の放出口58b〜58fからの水の放出は禁止しないものとしてもよい。
第1実施例の燃料電池車10では、車速Vaに基づいて放出制限距離L1,L2を求め、後続車までの距離Lvが放出制限距離L1未満のときには、放出口58a〜58fからの水の放出を禁止するよう放出禁止フラグF4に値1をセットしたが、後続車距離Lvが放出制限距離L1未満のときでも放出口58a〜58fからの水の放出を禁止せず、少量の放出量により水を放出するものとしてもよい。また、第1実施例の燃料電池車10では、後続車距離Lvが放出制限距離L1以上で放出制限距離L2以下のときには、後続車距離Lvが小さいほど放出口58a〜58fからの水の放出が制限されるよう連続的に補正値K2を変化させて設定するものとしたが、段階的に補正値K2を変化させて設定するものとしてもよい。また、車速Vaに基づいて放出制限距離L1,L2を求めるものとしたが、車速Vaに拘わらずに放出制限距離L1,L2を設定するものとしてもよい。
第1実施例の燃料電池車10では、シフトポジションSPやパーキングスイッチ信号SWP,ドア開閉スイッチ信号SWD1〜SWD4に基づいて車両への乗降の可能性を推定するものとしたが、これらに加えてシートスイッチのオンオフなどにより車両への乗降の可能性を推定するものとしてもよい。また、第1実施例の燃料電池車10では、車両への乗降の可能性が推定されたときには全ての放出口58a〜58fからの水の放出を禁止するものとしたが、例えば、左前席への乗降の可能性が推定されたときには、左前席近傍の放出口58cからの水の放出だけを禁止し、他の放出口58a,58b,58d〜58fからの水の放出は禁止しないなど、乗降の可能性が推定された座席の近傍の放出口からの水の放出だけを禁止し、他の放出口からの水の放出は禁止しないものとしてもよい。
第1実施例の燃料電池車10では、雨滴感知センサ102により雨滴が感知されたときには放出バルブ56a〜56fのバルブ開度Al,Arを全開(100%)としたが、回収タンク54の水位HWに応じてその開度を設定するものとしてもよい。第1実施例の燃料電池車10では、雨滴感知センサ102により雨滴が感知されたときに放出バルブ56a〜56fのバルブ開度Al,Arを全開(100%)としたが、雨滴感知センサ102により雨滴が所定時間以上継続して感知されたときに放出バルブ56a〜56fのバルブ開度Al,Arを全開(100%)とするものとしてもよい。第1実施例の燃料電池車10では、雨滴感知センサ102にyり雨滴が感知されたときに路面が濡れていると判断して放出バルブ56a〜56fのバルブ開度Al,Arを全開(100%)としたが、路面の反射率などを用いて路面の濡れをセンシングして放出バルブ56a〜56fのバルブ開度Al,Arを全開(100%)とするものとしてもよい。
第1実施例の燃料電池車10では、回収タンク54の水位HWが閾値H1未満のときには放出バルブ56a〜56fのバルブ開度Al,Arを全閉(0%)として放出口58a〜58fから水が放出されないようにしたが、回収タンク54の水位HWが閾値H1未満でも放出口58a〜58fから水が放出されるようにしても構わない。また、第1実施例の燃料電池車10では、回収タンク54の水位HWが閾値H1以上で閾値H2以下のときには回収タンク54の水位HWが高くなるほど放出口58a〜58fから放出される水の放出量が多くなるよう連続的に補正値K3を変化させて設定するものとしたが、段階的に補正値K3を変化させて設定するものとしてもよい。また、回収タンク54の水位HWが閾値H1以上で閾値H2以下のときには所定値を補正値K3に設定するものとしても差し支えない。さらに、第1実施例の燃料電池車10では、回収タンク54の水位HWが閾値H2より高いときには燃料電池スタック22に対して出力制限を行なうものとしたが、回収タンク54の水位HWが閾値H2より高いときでも燃料電池スタック22に対して出力制限を行なわないものとしても差し支えない。
この他、路面における水滴の跳ね返りに与える路面の粗さをセンシングして放出バルブ56a〜56fのバルブ開度Al,Arを調整するものやナビゲーションシステムなどにより入力される天気予報に基づいて回収タンク54の水位HWを調整して放出口58a〜58fからの水の放出を制御するもの、地図情報に基づいて放出バルブ56a〜56fのバルブ開度Al,Arを調整するものなど、種々の手法により放出口58a〜58fからの水の放出を制御するものとしてもよい。
第1実施例の燃料電池車10では、車両に6個の放出口58a〜58fを取り付け、この6個の放出口58a〜58fから水を放出するものとしたが、取り付ける放出口は6個に限定されず、4個など6個未満の数の放出口を取り付けたり、8個など7個以上の数の放出口を取り付けるものとしてもよい。また、第1実施例の燃料電池車10では、放出バルブ56a〜56fの下流側にバッファタンク57a〜57fを設け、このバッファタンク57a〜57fから自然流下により水が放出口58a〜58fから放出されるものとしたが、放出口58a〜58fにバルブを取り付け、そのバルブの開度を調節することにより放出口58a〜58fからの水の放出量を調節するするものとしてもよい。また、バッファタンク57a〜57fを備えないものとしても差し支えない。
第1実施例の燃料電池車10では、燃料電池スタック22から排出される未反応の水素を水素循環路33により水素供給流路32に循環させるものとしたが、こうした水素循環路33を備えないものとしてもよい。
第1実施例の燃料電池車10では、空気給排系40の気液分離器48として完全に気液分離できないタイプのものを用いたが、完全に気液分離が可能なタイプのものを用いるものとしてもよい。
次に、本発明の第2実施例の移動体としての燃料電池車210について説明する。図17は第2実施例の燃料電池車210における搭載機器の平面配置を例示する平面配置図であり、図18は第2実施例の燃料電池車210が搭載する燃料電池システム220の構成の概略を示す構成図である。第2実施例の燃料電池車210は、図17および図18に示すように、燃料電池システム220が備える排ガス管51の放出端に方向可変放出口260が取り付けられている点を除いて第1実施例の燃料電池車10と同一の構成をしている。重複した説明を回避するために、第2実施例の燃料電池車210の構成のうち第1実施例の燃料電池車10の構成と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
図17および図18に示すように、気液分離器48により分離された排ガスは、排ガス管51により運転席後方(車両の右後方)の後輪の後方に移送されて方向可変放出口260から外部に放出される。図19は排ガス管51の放出端に取り付けられた方向可変放出口260の構成の概略を示す構成図であり、図20は方向可変放出口260の動作を説明する説明図である。方向可変放出口260は、図示するように、下側を約45度の角度をもって切り落とした形状に端部を加工し略水平に配置して排ガス管51に接続した固定管262と、固定管262への取り付け端部を約45の角度をもって切り落とした形状に加工した短管の可動管264と、可動管264を図20(a)および図20(b)に示すように約90度の角度をもって回転可動させるためのアクチュエータとしてのモータ268と、を備える。なお、可動管264は、取り付け端部の先端で固定管262の端部の先端にモータ268の回転軸266に固定された状態で取り付けられている。排ガス管51からの水蒸気を含んだ排ガスは、図20(a)に示す鉛直下方向から図20(b)に示す水平方向までの角度に調整された可動管264の方向に放出される。可動管264の可動方向は、図17および図19に示すように、可動管264が車両の側方に向けて約45度の角度をもって取り付けられているため、車両の側方向の成分と後方向の成分とを有する方向となる。車両が走行しているときに可動管264を水平方向に向けた状態(車両の側方向の成分と後方向の成分とをもたせた図20(b)に示す状態)で方向可変放出口260から排ガスを放出するときを考える。気液分離器48により分離された排ガスは水蒸気を含んでいるから、水蒸気の一部は方向可変放出口260から放出されるまでに液化し、排ガスと共に方向可変放出口260から放出される。このように液化して方向可変放出口260から排ガスと共に放出された水は、車両の側後方に飛ばされるように放出される。車両の走行に伴って生じる走行風は、車両の横幅の範囲における後方が強く、特に中央付近の後方が強い傾向があるが、車両の側方では、その距離に応じて走行風の影響は減少する。したがって、車両の側後方に向けて排ガスを放出することにより、排ガスと共に放出される水に対する走行風の影響を小さくし、走行風により放出した水が巻き上げられるのを抑制することができる。また、車両の側後方に向けて排ガスを放出することにより、排ガスと共に放出された水や放出された排ガス中の水蒸気のうち液化した水の地面に対する相対速度は小さくなる。水滴が地面に至ったときの水の飛び散る程度は、水滴の地面に対する相対速度が大きいほど多く飛び散る傾向があるから、放出された水や液化した水の地面に対する相対速度を小さくすることにより、飛び散る量を少なくすることができる。これらの結果、放出された水が路面に到達するまでに走行風等の外乱により巻き上げられるのを抑制することができる。これらが、可動管264を車両の側後方に向けて排ガスを放出する際の利点となる。一方、車両が停止しているときに可動管264を鉛直下向きに向けた状態で方向可変放出口260から排ガスを放出するときを考える。このとき、可動管264は鉛直下向きを向いているから、排ガスや液化した水は車両のシルエット内で鉛直下向きに放出される。この結果、車両の間近にいる人などに水がかけることがない。これが、可動管264を鉛直下向きに向けて排ガスを放出する際の利点となる。
PCU70に組み込まれた電子制御ユニット271は、第1実施例の電子制御ユニット71と同様に、CPU272やROM273,RAM274を中心として構成されており、その入力処理回路には車速センサ101からの車速Vaやマスフローメータ43からの空気流量Qa,燃料電池スタック22の図示しない出力端子に取り付けられ燃料電池スタック22の出力電流を検出する電流計114からの電流値Ifcが入力されており、その出力回路からはモータ268への駆動信号が出力されている。
次に、こうして構成された第2実施例の燃料電池車210の動作、特に燃料電池システム220の空気給排系40からの排ガスの放出の際の動作について説明する。図21は、方向可変放出口260による排ガスの放出方向を制御するために電子制御ユニット271により実行される放出方向制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば、200msec毎)に繰り返し実行される。
放出方向制御ルーチンが実行されると、電子制御ユニット271のCPU272は、まず、車速センサ101からの車速Vaや電流計114からの電流値Ifc,マスフローメータ43からの空気流量Qaなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS400)。続いて、入力した電流値Ifcに基づいて燃料電池スタック22により生成される水の生成水量Qfcを計算する(ステップS402)。燃料電池スタック22の出力電流(電流値Ifc)は、燃料電池スタック22内で反応した分子量に比例するから、電流値Ifcから生成水量Qfcを容易に計算することができる。
生成水量Qfcを計算すると、計算した生成水量Qfcや入力した車速Va,空気流量Qaに基づいて補正係数Pqfc,Pva,Pqaを設定し(ステップS404〜S408)、設定した補正係数Pqfc,Pva,Pqaの積に90を乗じて放出角度Θを設定し(ステップS410)、設定した放出角度Θとなるようモータ268を駆動して(ステップS412)、本ルーチンを終了する。ここで、補正係数Pqfc,Pva,Pqaは、方向可変放出口260における可動管264の角度を設定する際に用いるものであり、いずれも排ガスの放出方向が鉛直下向きの値0から水平方向の値1の範囲内で設定される。生成水量Qfcと補正係数Pqfcとの関係の一例を図22に、車速Vaと補正係数Pvaとの関係の一例を図23に、空気流量Qaと補正係数Pqaとの関係の一例を図24に示す。生成水量Qfcに基づいて設定される補正係数Pqfcは、図22に示すように、生成水量Qfcが大きくなるほど大きな値となる傾向に設定される。これは、生成水量Qfcが大きいほど方向可変放出口260から排ガスと共に放出される水や放出した後に液化する水量も多くなることに基づく。即ち、これらの水が車両の側後方に放出されることにより、放出した水が地面に至るまでに走行風によって巻き上げられたり地面に至った水の多くが飛び散るのを抑制するのである。車速Vaに基づいて設定される補正係数Pvaは、図23に示すように、車速Vaが大きくなるほど大きな値となる傾向に設定される。これは、車速Vaが大きくなるほど走行風の影響も大きくなることに基づく。空気流量Qaに基づいて設定される補正係数Pqaは、図24に示すように、空気流量Qaが大きくなるほど小さな値となる傾向に設定される。これは、空気流量Qaが大きくなるほど放出される排ガスや水の放出速度が大きくなることに基づく。従って、空気流量Qaに代えて排ガス管51の排ガス流量を用いてもよい。放出角度Θは、可動管264が鉛直下向きのときが値0であり、可動管264が水平方向に向いているときが値90である。図22ないし図24から解るように、第2実施例では、車速Vaに対する補正係数Pvaは、生成水量Qfcや空気流量Qaに対する補正係数Pqfc,Pqaに比してその影響が大きくなるように設定される。これは、放出された水が飛散し巻き上げられることに対する走行風の影響が大きいことに基づく。従って、放出角度Θは、車速Vaに基づいて設定される値を燃料電池スタック22により生成された水の生成水量Qfcと空気給排系40の空気流量Qaとにより補正することにより設定されるものと考えることができる。このように、可動管264の向きを調整することにより、排ガスや排ガスと共に放出される水をより適正に放出することができる。
以上説明した第2実施例の燃料電池車210によれば、車速Vaや燃料電池スタック22により生成される水の生成水量Qfc,空気給排系40の空気流量Qaに応じて排ガスや排ガスと共に放出される水をより適正に放出することができる。即ち、車速Vaが大きいときには、可動管264を車両の側後方に向けて排ガスを放出するから、排ガスと共に放出される水や放出された排ガス中の水蒸気のうち液化した水が路面に到達するまでに走行風により飛散し巻き上げられるのを抑制することができると共に路面に到達し飛び散った水が走行風により飛散し巻き上げられるのを抑制することができる。しかも、燃料電池スタック22により生成される水の生成水量Qfcが大きいときには、可動管264の向きが車両の側後方へ向くよう補正することにより、排ガスと共に放出される水や放出された排ガス中の水蒸気のうち液化した水が多くなっても、路面に到達するまでに走行風により飛散し巻き上げられたり路面に到達し飛び散った水が走行風により飛散し巻き上げられるのを抑制することができる。さらに、空気給排系40の空気流量Qaが多いときには、可動管264の向きが鉛直下向きに向くよう補正することにより、方向可変放出口260から放出される排ガスや水の放出速度が大きくなり、水が側方向や後方向に飛ばされるのを抑制することができる。また、車速Vaが小さいときには、可動管264を鉛直下向きに向けて排ガスを放出するから、排ガスや液化した水を車両のシルエット内で鉛直下向きに放出することができる。この結果、放出された水が車両の間近にいる人などにかかるのを抑止することができる。
第2実施例の燃料電池車210では、気液分離器48により分離した排ガスを車速Vaや燃料電池スタック22により生成された水の生成水量Qfcや空気給排系40の空気流量Qaに基づいて放出方向を調節して方向可変放出口260から放出したが、気液分離器48を備えず、気液分離されていない排ガスを車速Vaや生成水量Qfcや空気流量Qaに基づいて放出方向を調節して方向可変放出口260から放出するものとしてもよい。また、気液分離器48により分離され回収タンク54に蓄えられた水を放出する際にも車速Vaに基づいて放出方向を調節して方向可変放出口から放出するものとしてもよい。
第2実施例の燃料電池車210では、気液分離器48により分離した排ガスを車速Vaや燃料電池スタック22により生成された水の生成水量Qfcや空気給排系40の空気流量Qaに基づいて放出方向を調節して方向可変放出口260から放出したが、排ガスを車速Vaと生成水量Qfcだけに基づいて放出方向を調節して方向可変放出口260から放出するものとしたり、車速Vaと空気流量Qaだけに基づいて放出方向を調節して方向可変放出口260から放出するものとしてもよい。また、生成水量Qfcや空気流量Qa以外の要素と車速Vaとに基づいて放出方向を調節して排ガスを方向可変放出口260から放出するものとしてもよいし、生成水量Qfcや空気流量Qaに加えてこれら以外の要素と車速Vaとに基づいて放出方向を調節して排ガスを方向可変放出口260から放出するものとしてもよい。
第2実施例の燃料電池車210では、気液分離器48により分離した排ガスを車速Vaや生成水量Qfcや空気流量Qaに基づいて可動管264の向きを側方向と後方向との成分をもつように調節して方向可変放出口260から放出したが、可動管264の向きの調節は側方向に対する調節だけで後方向に対する調節ができないものとしてもよい。
次に、本発明の第3実施例の移動体としての燃料電池車310について説明する。図25は第3実施例の燃料電池車310における搭載機器の平面配置を例示する平面配置図である。第3実施例の燃料電池車310は、図25に示すように、排ガス管51の放出端に取り付けられた方向可変放出口260の方向が車両の進行方向に一致するよう後方に向けて設置されている点を除いて第2実施例の燃料電池車210と同一の構成をしている。重複した説明を回避するために、第3実施例の燃料電池車310の構成のうち第2実施例の燃料電池車210の構成と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
第3実施例の燃料電池車310の電子制御ユニット271では、図21の放出方向制御ルーチンに代えて図26に例示する放出方向制御ルーチンが実行される。このルーチンが実行されると、まず、車速センサ101からの車速Vaとマスフローメータ43からの空気流量Qaとが入力され(ステップS420)、空気流量Qaに基づいて方向可変放出口260から放出される排ガスの放出流速Vgを計算する(ステップS422)。前述したように、空気流量Qaは燃料電池スタック22から排出される排ガス流量に換算することができるから、方向可変放出口260の排出断面を用いることにより方向可変放出口260から放出される排ガスの放出流速Vgを計算することができる。そして、車速Vaに基づいて地面から見た車両相対速度Vrを計算すると共に(ステップS424)、計算した車両相対速度Vrと放出流速Vgとに基づいて放出角度Θを計算し(ステップS426)、計算した放出角度Θとなるようモータ268を駆動して(ステップS428)、本ルーチンを終了する。図27に地面から見た車両相対速度Vrと放出流速Vgと放出角度Θとの関係の一例を示す。放出角度Θは、図示するように、地面から見た車両相対速度Vgが放出流速Vgの車両進行方向成分によって打ち消される角度として求めることができる。こうした制御により、方向可変放出口260から放出される排ガスや水の地面から見た速度成分から車両の進行方向に対する速度成分をなくし、地面に対して鉛直方向の速度成分だけにすることができる。即ち、方向可変放出口260から放出された水を地面から見て鉛直に放出することができる。この結果、放出された水が地面に対して水平方向の速度成分をもつことにより、水が地面に到達したときに飛び散り、この飛び散った水が走行風などにより巻き上げられるのを抑制することができる。
以上説明した第3実施例の燃料電池車310によれば、方向可変放出口260から放出される排ガスの放出流速Vgと地面から見た車両相対速度Vrとに基づいて放出される排ガスや水が地面から見て鉛直下向きの速度成分だけをもつようにして放出することができる。この結果、水が地面に到達したときに飛び散り、この飛び散った水が走行風などにより巻き上げられるのを抑制することができる。
第3実施例の燃料電池車310では、方向可変放出口260の可動管264の向きを変えることにより、方向可変放出口260から放出された排ガスや水を地面から見て鉛直下向きの速度成分だけをもつようにして放出するものとしたが、排ガスや水の放出方向は変更せずに排ガスの放出流速Vgを変更することにより、放出される排ガスや水を地面から見て鉛直下向きの速度成分だけをもつようにして放出するものとしてもよい。例えば、図28および図29の変形例の示すように、排ガス管51を放出角度Θとなるよう鉛直下向きに折り曲げ、その端部にカメラの絞りと同様の断面積可変機構372とこの断面積可変機構372における断面積を変更するアクチュエータとしてのモータ374とからなる断面積可変放出口370を取り付け、図30に例示する開口面積制御ルーチンに示すように、車速Vaから計算される地面から見た車両相対速度Vrと放出角度Θとから図27に例示した地面から見た車両相対速度Vrと放出流速Vgと放出角度Θとの関係を用いて放出流速Vgを計算し(ステップS430〜S434)、断面積可変放出口370からこの計算した放出流速Vgで排ガスが放出されるよう断面積可変機構372の開口面積Sを計算し(ステップS436)、この開口面積Sとなるようモータ374を駆動するのである(ステップS438)。こうしても第3実施例の燃料電池車310と同様の効果、即ち、排ガスや水を地面から見て鉛直下向きの速度成分だけをもつようにして断面積可変放出口370から放出することができることによる、水が地面に到達したときに飛び散り、この飛び散った水が走行風などにより巻き上げられるのを抑制することができる効果を奏することができる。こうした変形例では、断面積可変放出口370の開口面積を変更することにより放出流速Vgを調節するものとしたが、排ガス管51にポンプと流量調節弁を取り付け、ポンプにより排ガスを加圧すると共に加圧された排ガスの放出流量を流量調節弁によって調節することにより放出流速Vgを調節するものとしてもよい。
第3実施例の燃料電池車310では、気液分離器48により分離した排ガスを方向可変放出口260から放出される排ガスの放出流速Vgと地面から見た車両相対速度Vrとに基づいて放出される排ガスや水が地面から見て鉛直下向きの速度成分だけをもつようにして放出したが、気液分離器48を備えず、気液分離されていない排ガスをその放出流速Vgと車両相対速度Vrとに基づいて地面から見て鉛直下向きの速度成分だけをもつようにして放出するものとしてもよい。また、気液分離器48により分離され回収タンク54に蓄えられた水を放出する際にも車両相対速度Vrに基づいて放出する水が地面から見て鉛直下向きの速度成分だけをもつようにして放出するものとしてもよい。
次に、本発明の第4実施例の移動体としての燃料電池車410について説明する。図31は第4実施例の燃料電池車410における搭載機器の平面配置を例示する平面配置図であり、図32は第4実施例の燃料電池車410が搭載する燃料電池システム420の構成の概略を示す構成図である。第4実施例の燃料電池車410は、図31および図32に示すように、放出系50が異なる点を除いて第1実施例の燃料電池車10と同一の構成をしている。重複した説明を回避するために、第4実施例の燃料電池車410の構成のうち第1実施例の燃料電池車10の構成と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
第4実施例の燃料電池車410では、空気給排系40における燃料電池スタック22からの排ガスは、加湿器46により供給側の空気を加湿した後は、排ガス管451によりそのまま外部に放出される。従って、排ガス管451からは水蒸気を含む排ガスと液化した水とがそのまま放出されることになる。
図33は、排ガスの放出制御を行なうのにPCU70に組み込まれている電子制御ユニット471に入出力される制御信号の一例を示すブロック図である。電子制御ユニット471は、CPU472を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU472の他に処理プログラムなどを記憶するROM473やデータを一時的に記憶するRAM474,入力信号を受け付ける入力処理回路475,出力信号の出力処理を行なう出力処理回路476などを備える。電子制御ユニット471には、車速センサ101からの車速Vaや燃料電池スタック22の出力端子に取り付けられた電流センサ423からのFC電流Ifc,空気給排系40の供給側に取り付けられた空気温度センサ443からの空気温度Tin,空気給排系40の排気側の燃料電池スタック22近傍に取り付けられた背圧圧力センサ444からの背圧圧力Pb,排ガス管451に取り付けられた排ガス温度センサ453や排ガス圧力センサ454,排ガス流量センサ455からの排ガス温度Toutや排ガス圧力Pout,排ガス流量Qout,冷却系60のラジエータ66の前後に取り付けられた冷却水温度センサ461,462からの冷却水温度Tw1,Tw2,水素供給系30に取り付けられた温度センサや圧力センサなどのセンサ群からの検出信号などが入力処理回路475を介して入力されている。また、電子制御ユニット471からは、冷却系60に設けられたラジエータ66のファン66aへの駆動信号や同じく冷却系60に設けられた冷却水ポンプ64への駆動信号,空気給排系40に設けられた背圧調節バルブ441への駆動信号などが出力処理回路476を介して出力されている。
次に、こうして構成された第4実施例の燃料電池車410の動作、特に空気給排系40の排ガスの放出制御の際の動作について説明する。図34は電子制御ユニット471により実行される放出制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば数秒毎)に繰り返し実行される。
放出制御ルーチンが実行されると、電子制御ユニット471のCPU472は、まず、車速センサ101からの車速Vaや電流センサ423からのFC電流Ifc,排ガス温度センサ453からの排ガス温度Tout,排ガス圧力センサ454からの排ガス圧力Pout,排ガス流量センサ455からの排ガス流量Qoutなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS500)。続いて、入力したFC電流Ifcに基づいて燃料電池スタック22により生成される水の単位時間当たりの水量(生成水量)Qfcを計算すると共に(ステップS502)、排ガス温度Toutや排ガス圧力Pout,排ガス流量Qoutに基づいて単位時間当たりに水蒸気として排ガス管451から放出される放出水蒸気量Qw1を計算し(ステップS504)、計算した生成水量Qfcから放出水蒸気量Qw1を減じて単位時間当たりに液体の水として放出される放出水量Qw2を計算する(ステップS506)。ここで、放出水蒸気量Qw1については、実施例では排ガス温度Toutにおける飽和水蒸気圧を用いて計算するものとした。なお、FC電流Ifcに基づいて生成水量Qfcが計算できることについては前述した。
次に、車速Vaに基づいて液体としての水を外部に放出する許容量(許容放出水量)Qwrefを設定する(ステップS508)。ここで、許容放出水量Qwrefは、第4実施例では、車速Vaが大きくなるほど小さくなる傾向に設定されるものとし、車速Vaと許容放出水量Qwrefとの関係を定めて許容放出水量設定用マップとしてROM473に記憶しておき、車速Vaが与えられるとマップから対応する許容放出水量Qwrefを導出して設定するものとした。許容放出水量設定用マップの一例を図35に示す。
続いて、計算した放出水量Qw2と設定した許容放出水量Qwrefとの偏差が打ち消される方向に目標電池温度Tfc*を設定すると共に(ステップS510)、この設定した目標電池温度Tfc*が上下限温度Tmax,Tminを超えないように制限し(ステップS512)、上下限制限された目標電池温度Tfc*で燃料電池スタック22が運転されるよう冷却系60や燃料電池スタック22の背圧を制御して(ステップS514)、本ルーチンを終了する。ここで、燃料電池スタック22の運転温度を変更することにより放出水量Qw2と許容放出水量Qwrefとの偏差を打ち消すことができるのは、燃料電池スタック22の運転温度を変更することにより空気給排系40の排ガス温度を変更し、これにより放出水蒸気量Qw1を変更することができることに基づく。即ち、放出水量Qw2が許容放出水量Qwrefより大きいときには、目標電池温度Tfc*を高くして排ガス温度を高くし、これにより放出水蒸気量Qw1を大きくして放出水量Qw2を小さくするのである。また、放出水量Qw2が許容放出水量Qwrefより小さいときには、目標電池温度Tfc*を低くして排ガス温度を低くし、これにより放出水蒸気量Qw1を小さくして放出水量Qw2を大きくするのである。燃料電池スタック22を目標電池温度Tfc*で運転するには、例えば、冷却水温度センサ461の温度に基づいてラジエータ66のファン66aの回転数を調節することにより行なったり、冷却水温度センサ461の温度に基づいて冷却水ポンプ64の吐出量を調節することにより行なうことができる。また、燃料電池スタック22を目標電池温度Tfc*で運転するには、背圧調節バルブ441を調節することにより燃料電池スタック22の空気給排系40の背圧を調節することによっても行なうことができる。これは、燃料電池スタック22の背圧を高くすることにより、エアコンプレッサ44の吐出温度が高くなることに基づく。この場合、エアコンプレッサ44の吐出温度が高くなることにより、加湿器46における加湿量も多くなるから、放出水量Qw2を増減する効果は更に大きくなる。従って、燃料電池スタック22の背圧を調節する手法を用いることは、加湿器46における加湿量を調節することにもなるから、加湿器46の加湿量を調節することにより、放出水量Qw2と許容放出水量Qwrefとの偏差を打ち消すものということができる。
以上説明した第4実施例の燃料電池車410によれば、生成水量Qfcから放出水蒸気量Qw1を減じて得られる放出水量Qw2と車速Vaに基づいて設定された許容放出水量Qwrefとの偏差が打ち消されるよう燃料電池スタック22の運転温度を調節することにより、排ガス管451から放出される液体としての水を許容放出水量Qwrefにすることができる。この許容放出水量Qwrefは車速Vaに基づいて後続車などに影響を与えないように或いは影響が小さくなるように設定することができるから、車速Vaに応じたより適切な放水量とすることができる。
第4実施例の燃料電池車410では、放出水量Qw2と許容放出水量Qwrefとの偏差が打ち消される方向に燃料電池スタック22の運転温度である目標電池温度Tfc*を設定するものとしたが、放出水蒸気量Qw1を変更することを考えれば、排ガス管451の排ガスの目標温度を設定し、その目標温度となるように燃料電池スタック22の運転を行なうものとしてもよいのは勿論である。
第4実施例の燃料電池車410では、放出水量Qw2と許容放出水量Qwrefとの偏差が打ち消される方向に目標電池温度Tfc*を設定するものとしたが、放出水量Qw2が許容放出水量Qwrefとなるように目標電池温度Tfc*を計算するものとしてもよい。この場合、燃料電池スタック22を通常温度で運転したときに放出水量Qw2が許容放出水量Qwrefより大きいときには放出水量Qw2が許容放出水量Qwrefとなるよう燃料電池スタック22の運転温度を変更し、燃料電池スタック22を通常温度で運転したときに放出水量Qw2が許容放出水量Qwref以下のときには燃料電池スタック22の運転温度を変更しないものとしてもよい。この場合の放出制御ルーチンを図36に示す。このルーチンでは、許容放出水量Qwrefを設定した後に、計算した放出水量Qw2と設定した許容放出水量Qwrefとを比較し(ステップS520)、放出水蒸気量Qw1が許容放出水量Qwrefより大きいときには、目標電池温度Tfc*が通常温度であるか否かを判定し(ステップS524)、通常温度であるときには放出水量Qw2が許容放出水量Qwrefに一致するように排ガス圧力Poutや排ガス流量Qout,許容放出水量Qwrefに基づいて目標電池温度Tfc*を設定すると共に(ステップS526)、設定した目標電池温度Tfc*を上限温度Tmaxで制限し(ステップS528)、この上限制限した目標電池温度Tfc*で燃料電池スタック22が運転されるよう冷却系60や燃料電池スタック22の背圧を制御する(ステップS530)。ステップS524で目標電池温度Tfc*が通常温度でないときには、既に放出水量Qw2が許容放出水量Qwrefに一致するように目標電池温度Tfc*が設定されていると判断し、設定されている目標電池温度Tfc*で燃料電池スタック22が運転されるよう冷却系60や燃料電池スタック22の背圧を制御する(ステップS530)。ステップS520で放出水量Qw2が許容放出水量Qwref以下のときには燃料電池スタック22の運転温度を高くすることにより放出水量Qw2を小さくする制御は必要ないと判断し、目標電池温度Tfc*に通常温度を設定して(ステップS522)、目標電池温度Tfc*で燃料電池スタック22が運転されるよう冷却系60や燃料電池スタック22の背圧を制御する(ステップS530)。こうした変形例では、放出水量Qw2が許容放出水量Qwref以下のときには燃料電池スタック22を通常温度で運転するから、燃料電池スタック22の発電効率をより高く維持することができる。
第4実施例の燃料電池車410では、燃料電池スタック22を目標電池温度Tfc*で運転するのに、冷却水温度センサ461の温度に基づいてラジエータ66のファン66aの回転数を調節する手法や冷却水温度センサ461の温度に基づいて冷却水ポンプ64の吐出量を調節する手法、背圧調節バルブ441を調節することにより燃料電池スタック22の空気給排系40の背圧を調節する手法によって行なったが、これらの手法のうちいずれか一つの手法だけを用いて燃料電池スタック22を目標電池温度Tfc*で運転するものとしてもよく、これらの手法のうちいずれか二つの手法を用い燃料電池スタック22を目標電池温度Tfc*で運転するものとしてもよい。
第4実施例の燃料電池車410では、燃料電池スタック22からの排ガスは、加湿器46を経由するだけで気液分離器を経由せずに直接外部に放出するものとしたが、第1実施例の燃料電池車10のように、気液分離器48を経由して外部に放出するものとしてもよい。この場合、気液分離器48で分離される液体としての水の量が許容放出水量Qwrefとなるようにすればよい。
図37は第5実施例としての車両1010の概略構成を示す説明図である。車両1010は、後部の燃料電池室1012に搭載された燃料電池1020を電源とし、モータ1030の動力によって駆動する。モータ1030は種々のタイプを適用可能であるが、本実施例では、同期電動機を用いるものとした。燃料電池1020から出力される直流は、インバータ1031によって三層交流に変換される。モータ1030は、この三層交流によって駆動される。モータ1030の動力は、回転軸1032を介して車輪1033に伝達され、車両1010を駆動する。
燃料電池1020は、水素と酸素の電気化学反応によって発電する。燃料電池1020には、種々のタイプを適用可能であるが、本実施例では、固体高分子型を用いた。酸素極には、供給管1024を介して外部から空気が供給される。水素は、屋根上の水素タンク室1011に設置された複数の水素タンク1050から供給管1022を介して順次、供給される。
インバータ1031など、車両1010に搭載された各機器の動作は、制御ユニット1040によって制御される。制御ユニット1040は、内部にCPU、ROM、RAMなどを備えたマイクロコンピュータとして構成されており、ROMに記憶された制御プログラムに従って、各ユニットの動作、および運転席1014に設けられた計器板1060への表示を制御する。
図の下方には、燃料電池室1012の酸素極の排気系を拡大図で示した。燃料電池1020の酸素極からの排気には、発電時の反応によって生じた生成水が含まれている。この排気は、配管1024Pを介して気液分離器1021に運ばれ、排気中の生成水が分離された後、排気管1025から排出される。分離された生成水は、ドレイン1026を介して車両1010の下面に設けられたバッファタンク1027に貯留される。バッファタンク1027内の生成水は、排出管1028によって外部に排出される。排出管1028はバッファタンク1027の前方に取り付けられている。排出管1028からの円滑な排水を実現するよう、バッファタンク1027の下面は後方の方が前方よりも高くなっている。排出管1028の開口端の路面からの高さH(以下、「開口端高さ」と称する)は、車両1010の走行中に気流の影響によって生成水が飛散しない程度に十分低く設定されている。
本実施例では、水素極からの排気は、発電で未消費の残留水素の有効活用を図るため、上述の排気系を介さず、供給管1022に循環させる。水素極からの排気も併せて、図中の排気系から排気するようにしても構わない。
図38はバッファタンク1027の作用を示す説明図である。図38(a)は、車両1010が停車している状態を示した。この状態では、バッファタンク1027に貯留している生成水は排出管1028から車外に排出される。但し、停車中なので、気流の影響で生成水が飛散することはない。
図38(b)は、車両1010が加速している状態を示した。この状態では、加速に伴う慣性力Aの作用によって、バッファタンク1027に貯留している生成水は、図示するように後方に押しやられる。この結果、生成水の水面が、排出管1028の取り付け部から離れるため、生成水の排出が抑制される。加速時には、車両下面に気流が生じているが、生成水の排出が抑制されるため、気流によって生成水が飛散する可能性も抑制される。
図38(c)は、車両1010が減速している状態を示した。この状態では、減速に伴う慣性力Aの作用によって、バッファタンク1027に貯留している生成水は、図示するように前方に押しやられ、排出管1028からの生成水の排出が促進される。車両下面には気流が生じているが、減速時には気流が弱まりつつある状態なので、生成水の飛散を比較的抑えることができる。排出管1028の開口端高さは、このような減速時における排出でも、生成水の飛散を抑えることが可能な程度に低く設定しておくことが好ましい。
以上で説明した第5実施例の車両1010によれば、排気系に設けられたバッファタンク1027および排出管1028の作用により、加速時における生成水の排出を抑制し、減速時における生成水の排出を促進することができる。走行中の車両は、一定速度で走行し続けることはあまり多くなく、加減速が行われることが多い。従って、減速時に生成水を十分に排出するとともに、加速時の排出を抑制することにより、走行中における生成水の飛散を後続車両の走行に支障を与えない程度には抑制することができる。
図39は第6実施例としての排気系の構造を示す説明図である。第6実施例では、バッファタンク1027の下面に、リード弁1028Vを備えた排出管1028Aを設けた。リード弁1028Vは、車両走行中の気流のラム圧、即ち気流をせき止めた時の圧力に応じて開閉する弁機構である。
図の下部に、リード弁1028Vの動作を説明するためのグラフを示した。排出管1028Aから排出された生成水は、車速が増して気流が速くなるにつれて、激しく飛散するようになる。ある速度Vrを超えると、飛散によって後続車両の走行に支障を与えるおそれが生じるため、水滴の飛散を抑制することが望まれるようになる。本実施例では、水滴の飛散を抑制する設計速度Vdを、この速度Vrよりも若干、低い値に設定した。
ラム圧は、曲線Pで示す通り、車速の2乗に比例して増加する。この曲線Pを参照することで、設計速度Vdに対応するラム圧Pdが求められる。本実施例では、ラム圧が値Pdよりも小さい場合には開弁し、Pd以上の範囲で閉弁するようリード弁1028Vの動作圧力を調整した。
このように調整することにより、第6実施例の車両では、車速が設計速度Vdを超えた範囲でリード弁1028Vが閉じられるため、生成水の排水を停止することができる。従って、後続車に支障を与える程の生成水の飛散を回避することができる。
第6実施例においては、排出管1028Aをバッファタンク1027の下部に設けたが、第1実施例と同様、前方に設けても構わない。また、車速がVdを超えた時点で、必ずしもリード弁1028Vを完全に閉弁する必要はなく、車速に応じて弁の開度が連続的または段階的に低減するような機構としてもよい。
第6実施例におけるリード弁1028Vに代えて電磁弁を用いても良い。この場合には、電磁弁の動作を制御するための制御装置を併せて設け、この制御装置に車速が設計速度Vdを超えた時点で、電磁弁の開度を低減または閉弁する制御を実行させればよい。
図40は変形例としての排気系の構造を示す説明図である。変形例では、バッファタンク1027Aの下面が、後方の方が前方よりもLだけ低くなる形状とした。こうすることにより、図40(a)に示すように、定常状態であっても、バッファタンク1027A内の生成水は排出管1028から離れるようになるため、生成水の排出が抑制される。従って、車両が定常走行している場合の排水、ひいては生成水の飛散を抑制することができる。
車両の加速時には図40(b)に示すように、慣性力Aの作用によって、やはり生成水の排出は抑制される。減速時には図40(c)に示すように、慣性力Aの作用によって、生成水が前方に押しやられるため、生成水が排出される。車両の走行時には必ず減速が行われる期間が存在するため、定常走行時における排水が抑制されたとしても、バッファタンク1027Aにおける生成水の貯留機能に支障が生じることはない。
図41は変形例としての排気系の構造を示す説明図である。変形例では、バッファタンク1027に、前方に開口する剛性のある排出管1028Bを設けた。図の例では、排出管1028Bの前面の断面積S0はバッファタンク1027への取り付け部の断面積S1よりも大きくなっている例を示した。排出管1028Bは、面積S0、S1が等しい形状、即ち円筒状としても構わない。
この変形例の構成によれば、排出管1028Bには、走行中にラム圧が作用する。バッファタンク1027内の生成水は、排出管1028Bを経て前方に流出しようとするから、ラム圧は、この流出を抑制する方向に作用することになる。かかる作用により、第2変形例の構成では、高速走行時における生成水の排水を抑制することができる。
図の下方には、断面積比S0/S1が上述した排水の抑制効果に与える影響を示した。先に説明した通り、生成水の飛散が要求される車速の下限値Vrに基づき設計速度Vdを設定したとする。この時のラム圧は、曲線Pに基づいてPaと求められる。生成水の排出を抑制するためには、このラム圧Paは、バッファタンク1027内の生成水が排出管1028Bから流出しようとする水圧よりも高くなくてはならない。生成水の水圧は、バッファタンク1027内の貯留水の量によって変動するが、例えば、代表的な走行状態で貯留している生成水量に基づいて設定することができる。変形例では、この水圧よりも若干高い範囲でラム圧の設計値Pdを設定した。
一般に管内の圧力は、断面積に応じて変化する。例えば、排出管1028Bの断面積比S0/S1を1以上の値とすることにより、排出管1028Bの取り付け口でのラム圧を、入口での値よりも上昇させることができる。変形例ではこの関係に基づき、設計速度Vdにおけるラム圧Paと、ラム圧の設計値Pdとの圧力比Rd(=Pd/Pa)の値に応じて求められる面積比Sdに従って、排出管1028Bの形状を設定した。こうすることにより、ラム圧で生成水の排水を抑制することが可能となる。
以上説明した実施例では、本発明を燃料電池を電力源として搭載した自動車に適用するものとしたが、自動車は燃料電池を搭載する他に燃料電池以外の電力源、例えば、二次電池やキャパシタなど種々の電力源を搭載するものとしてもよい。また、燃料電池を搭載する自動車に限定されるものではなく、自動車以外の列車などの車両を含む各種の地上移動体に適用するものとしてもよいし、地上移動体以外の移動体に適用するものとしてもよい。
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
本発明は、自動車などの移動体の製造産業に利用可能である。
10,210,310,410 燃料電池車、12a,12b 前輪、14a,14b 後輪、20,220,420 燃料電池システム、22 燃料電池スタック、30 水素供給系、31,31a〜31d 高圧水素タンク、32 水素供給流路、33 水素循環路、34 水素ポンプ、38 気液分離器、40 空気給排系、42 供給管、43 マスフローメータ、44 エアコンプレッサ、46 加湿器、48 気液分離器、50 放出系、51 排ガス管、52 回収管、53 調整バルブ、54 回収タンク、56a〜56f 放出バルブ、57a〜57f バッファタンク、58a〜58f 放出口、60 冷却系、62 冷却水循環路、64 冷却水ポンプ、66 ラジエータ、66a ファン、70 PCU、71,271,471 電子制御ユニット、72,272,472 CPU、73,273,473 ROM、74,274,474 RAM、75,475 入力処理回路、76,476 出力処理回路、80 ラジエータ、84 バッテリ、90 風速センサ、92 ミリ波レーダ、93 後続車距離演算器、94a〜94c クリアランスソナー、95 対象物距離演算器、101 車速センサ、102 雨滴感知センサ、103 外気温センサ、104 ステアリング角センサ、105 アクセルポジションセンサ、106 シフトポジションセンサ、107 ブレーキスイッチ、108 パーキングスイッチ、109 ドア開閉スイッチ、110 スノーモードスイッチ、111 水位計、112 スリップ抑制制御装置、114 電流計、260 方向可変放出口、262 固定管、264 可動管、266 回転軸、268 モータ、370 断面積可変放出口、372 断面積可変機構、374 モータ、423 電流センサ、441 背圧調節バルブ、443 空気温度センサ、444 背圧圧力センサ、453 排ガス温度センサ、454 排ガス圧力センサ、455 排ガス流量センサ、461,462 冷却水温度センサ、1010 車両、1011 水素タンク室、1012 燃料電池室、1014 運転席、1020 燃料電池、1021 気液分離器、1022 供給管、1024 供給管、1024P 配管、1025 排気管、1026 ドレイン、1027,1027A バッファタンク、1028,1028A,1028B 排出管、1028V リード弁,1030 モータ、1031 インバータ、1032 回転軸、1033 車輪、1040 制御ユニット、1050 水素タンク、1060 計器板。

Claims (3)

  1. 発電に伴って水を生成する燃料電池を電力源として搭載する移動体であって、
    前記燃料電池により生成された生成水を貯留可能な貯留手段と、
    前記燃料電池により生成された生成水および/または前記貯留手段により貯留された生成水を少なくとも一つの放出口から外部に放出可能な放出手段と、
    移動体の状態を検出する状態検出手段と、
    該検出した状態に基づいて前記放出手段による生成水の放出を制御する放出制御手段と、
    を備え、
    移動体は自動車であり、
    車輪のスリップを抑制するスリップ抑制手段を備え、
    前記状態検出手段は、前記スリップ抑制手段による車輪のスリップの抑制が行なわれているスリップ抑制作動状態を検出する手段であり、
    前記放出制御手段は、前記状態検出手段によりスリップ抑制作動状態が検出されたときには前記生成水の放出量が制限されるよう前記放出手段を制御する手段である
    移動体。
  2. 請求項1記載の移動体であって、
    前記放出手段は、取り付け位置の異なる複数の放出口から前記生成水を放出可能な手段であり、
    前記放出制御手段は、前記状態検出手段によりスリップ抑制作動状態が検出されたときには前記放出手段における複数の放出口のうち少なくとも前記スリップの抑制に係る車輪に影響を与える放出口からの前記生成水の放出量が制限されるよう前記放出手段を制御する手段である
    移動体。
  3. 前記生成水の放出量の制限は、前記生成水の放出の禁止である請求項1または2記載の移動体。
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