JP5767091B2 - 移動体 - Google Patents

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Description

本発明は、移動体に関し、詳しくは、発電に伴って水を生成する燃料電池を電力源として搭載する移動体に関する。
従来、この種の移動体としては、燃料電池により生成される生成水を車両の側方に放出する自動二輪車が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この自動二輪車では、燃料電池の生成水を側方に排出することにより、生成水がタイヤにかかることに基づく不都合、例えばスリップを防止している。
また、燃料電池からの排気時に、残留水素の濃度を低減するために、排気管の出口近傍に、排気の拡散を促進するための邪魔板を設ける技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。生成水の排出には、排気管から排気とともに排出する方法や、気液分離器によって分離された後、車両下面から排出する方法などが採られている。
特開2001−313056号公報(図2,第3頁,第4頁) 特開2002−289237号公報
上述したように、燃料電池を搭載する車両では、走行中でも燃料電池により生成される生成水を車外に排出する必要がある。このとき、スリップを回避するためにタイヤにかからないように生成水を排出しても、排出した生成水が走行風によって巻き上げられ、後方や側方などで走行する車両のフロントガラスに飛散するなどの不都合が生じる場合がある。また、側方に排出する場合には、路肩の人や建造物に水がかかる場合も生じる。
本発明の移動体は、燃料電池からの生成水を放出する際に生成水が飛散するのを抑制することを目的の一つのとする。本発明の移動体は、燃料電池からの生成水を放出する際に生成水が人や建造物にかかるのを抑止することを目的の一つのとする。本発明の移動体は、燃料電池からの生成水を放出する際に放出した生成水の後方や側方への影響を抑制することを目的の一つのとする。
本発明の移動体は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明の第1の参考例の移動体は、
発電に伴って水を生成する燃料電池を電力源として搭載する移動体であって、
前記燃料電池により生成された生成水を前記移動体の前部に配置された放出口から外部に放出する放出手段
を備えることを要旨とする。
この本発明の第1の参考例の移動体では、燃料電池により生成された生成水を移動体の前部に配置された放出口から外部に放出するから、移動体の移動に伴う空気の流れの影響により放出した生成水が飛散したとしても後方や側方への影響を小さくすることができる。ここで、移動体としては、自動車や列車などの車両を含む地上移動体が含まれる。また、移動体は、燃料電池に加えて燃流電池以外の電力源、例えば二次電池やキャパシタなどを搭載するものとしてもよい。
こうした本発明の第1の参考例の移動体において、前記移動体は車両であり、前記放出口は車両前部のバンパー部またはフェンダ部に配置されてなるものとすることもできる。こうすれば、バンパー部やフェンダー部から生成水を排出することができる。
この放出口が車両前部のバンパー部またはフェンダ部に配置されてなる態様の本発明の第1の参考例の移動体において、前記放出口は、前記車両の前輪より前方に配置されてなるものとすることもできる。車輪近傍は車両の走行に伴う走行風の影響が小さいから、生成水の飛散を抑制することができる。
また、放出口が車両前部のバンパー部またはフェンダ部に配置されてなる態様の本発明の第1の参考例の移動体において、車両前部に前記燃料電池から前記生成水を外部へ放出するための経路に設けられて該生成水を貯留可能な貯留手段を備えるものとすることもできる。こうすれば、生成水を貯留することができるから、車両が停止している際に放出したり、均等化して放出することができる。この結果、生成水を貯留することができないものに比して生成水の飛散や後方や側方への影響を抑制することができる。この態様の本発明の第1の参考例の移動体において、前記貯留手段は、前記車両のバンパーの内側に配置されてなるものとすることもできる。こうすれば、バンパー内側のスペースを有効利用することができる。また、前記貯留手段は、前記放出口の前方に配置されてなるものとすることもできる。こうすれば、貯留手段から放出口までの配管に必要なスペースを小さくすることができる。
本発明の第2の参考例の移動体は、
発電に伴って水を生成する燃料電池を電力源として搭載する移動体であって、
前記燃料電池により生成された生成水を放出口から外部に放出する放出手段と、
該放出手段の放出口近傍における移動体の移動に伴う空気の流れを調整する空気流調整手段と、
を備えることを要旨とする。
この本発明の第2の参考例の移動体では、燃料電池により生成された生成水を放出する放出口近傍における移動体の移動に伴う空気の流れを調整するから、生成水の飛散を抑制することができる。この結果、生成水の後方や側方への影響を抑制することができる。ここで、移動体としては、自動車や列車などの車両を含む地上移動体が含まれる。また、移動体は、燃料電池に加えて燃流電池以外の電力源、例えば二次電池やキャパシタなどを搭載するものとしてもよい。
こうした本発明の第2の参考例の移動体において、前記放出口は前記生成水を移動体の下側部から略鉛直下方に向けて放出するよう配置されてなり、前記空気流調整手段は空気を移動体の側後方に流す手段であるものとすることもできる。この場合、移動体が移動していないときには、生成水は移動体の鉛直方向のシルエットの範囲内の側部から放出されるから、移動体が移動していないときに生成水が移動体の側方に位置する人や建造物にかかるのを抑止することができる。また、移動体が移動しているときには、生成水は空気の流れにより移動体の側後方に放出されるから、移動体の移動に伴う空気の流れにより生成水が飛散するのを抑制することができる。この結果、生成水の後続への影響を抑制することができる。なお、側後方に放出される生成水の側方向の距離は生成水の流量と移動体の移動速度とにより異なるものとなるが、移動体を移動させているときに通常近寄らない程度の範囲、例えば10〜100cm好ましくは30〜70cmとなるよう生成水の側後方への放出角度が調節されるのが好ましい。こうすれば、移動体が移動しているときに放出される生成水が移動体側方に位置する人や建造物に生成水がかかるのを抑止することができる。ここで、「側後方」とは、側方および後方を含む他、側方から後方までの全ての方向を含む概念、即ち移動体の側方から後方に向けてその角度が側方から0〜90度の角度をもった後方の全ての方向を含む概念である。以下、単に「側後方」と言う場合も同様である。なお、空気流調整手段は、空気を移動体の側方に対して15〜75度の範囲内の角度をもって後方に流す手段であるものとすることもできる。
また、放出口の空気を移動体の側後方に流す態様の本発明の第2の参考例の移動体において、前記空気流調整手段は、空気を鉛直下方の流れ成分をもって流す手段であるものとすることもできる。こうすれば、生成水の地面への落下を促進することができるから、生成水の後方への飛散をより効果的に抑止することができる。
さらに、放出口の空気を移動体の側後方に流す態様の本発明の第2の参考例の移動体において、前記空気調整手段は、移動体前部から流入した空気の流れを調整する手段であるものとすることもできる。こうすれば、移動体前部から流入した空気の流れを利用することができる。
あるいは、放出口の空気を移動体の側後方に流す態様の本発明の第2の参考例の移動体において、前記移動体は車両であり、前記放出口は車両の前輪の後方に配置されてなるものとすることもできる。こうすれば、車輪近傍は車両の走行に伴って生じる走行風の影響が小さいから、放出口から放出される生成水に対する走行風の影響を小さくして生成水が後方や側方に飛散するのを抑止することができる。
また、放出口の空気を移動体の側後方に流す態様の本発明の第2の参考例の移動体において、前記放出口は、運転席側に配置されてなるものとすることもできる。通常、運転席側は対向車側に一致するから、側後方に放出された生成水が路肩を歩行している人などにかかるのを抑止することができる。
本発明の第3の参考例の移動体は、
発電に伴って水を生成する燃料電池を電力源として搭載し、懸架装置をもって本体を支持する移動体であって、
前記懸架装置のばね下部材に取り付けられた放出口を有し、該放出口から前記燃料電池により生成された生成水を外部に放出する放出手段
を備えることを要旨とする。
この本発明の第3の参考例の移動体では、懸架装置のばね下部材に取り付けられた放出口から燃料電池により生成された生成水を外部に放出する。即ち、地面に近い位置から生成水を放出するから、生成水の地面への落下時間を短くして、移動体の移動に伴う空気の流れによる生成水の飛散を抑制することができる。この結果、生成水の後方や側方への影響を抑制することができる。ここで、移動体としては、自動車や列車などの車両を含む地上移動体が含まれる。また、移動体は、燃料電池に加えて燃流電池以外の電力源、例えば二次電池やキャパシタなどを搭載するものとしてもよい。なお、懸架装置のばね下部材はサスペンションアームであるものとすることもできる。
こうした本発明の第3の参考例の移動体において、前記移動体は車両であり、前記放出口は車輪近傍に取り付けられてなるものとすることもできる。車輪近傍は車両の走行に伴って生じる走行風の影響が小さいから、放出口から放出される生成水に対する走行風の影響を小さくして生成水が後方や側方に飛散するのを抑止することができる。ここで、放出口は後輪後方に取り付けられてなるものとすることもできる。
また、本発明の第3の参考例の移動体において、前記放出口における移動体の移動に伴う空気の流れを調整する空気流調整手段を備えるものとすることもできる。こうすれば、生成水に対する移動体の移動に伴う空気の流れの影響を調整することができる。ここで、前記空気流調整手段は、移動体の移動に伴う空気の流れを抑制する手段であるものとすることもできるし、移動体の移動に伴う空気の流れを鉛直下向きの成分を有する流れとする手段であるものとすることもできる。前者では生成水に対する移動体の移動に伴う空気の流れの影響を小さくすることができ、後者では生成水の地面への落下を促進することができるから、生成水の後方や側方への飛散をより効果的に抑制することができる。
本発明の第4の参考例の移動体は、
発電に伴って水を生成する燃料電池を電力源として搭載する移動体であって、
前記燃料電池により生成された生成水を放出口から外部に放出する放出手段と、
前記放出口から放出された生成水が地面に至るまでの過程における少なくとも前記放出口近傍において該放出口から放出された生成水に対する移動体の移動に伴う空気の流れの影響を抑制する空気流影響抑制手段と、
を備えることを要旨とする。
この本発明の第4の参考例の移動体では、放出口から放出された生成水が地面に至るまでの過程における少なくとも放出口近傍において放出口から放出された生成水に対する移動体の移動に伴う空気の流れの影響を抑制するから、移動体の移動に伴う空気の流れによる生成水の飛散を抑制することができる。この結果、生成水の後方や側方への影響を抑制することができる。ここで、移動体としては、自動車や列車などの車両を含む地上移動体が含まれる。また、移動体は、燃料電池に加えて燃流電池以外の電力源、例えば二次電池やキャパシタなどを搭載するものとしてもよい。
こうした本発明の第4の参考例の移動体において、前記空気流影響抑制手段は、前記放出口近傍に前記放出口から放出される生成水の放出方向に略一致する気体流を生成する手段であるものとすることもできる。こうすれば、気体流が生成水に対する移動体の移動に伴う空気の流れを遮ろうとするから、生成水に対する移動体の移動に伴う空気の流れの影響を抑制することができる。
また、本発明の第4の参考例の移動体において、前記空気流影響抑制手段は、前記放出口から放出される生成水に作用する移動体の移動に伴う空気の流れを略遮断するよう気体流を生成する手段であるものとすることもできる。こうすれば、気体流が生成水に作用する移動体の移動に伴う空気の流れ遮断するから、生成水に対する移動体の移動に伴う空気の流れの影響を抑制することができる。
これら気体流により生成水に対する移動体の移動に伴う空気の流れの影響を抑制する態様の本発明の第4の参考例の移動体において、前記空気流影響抑制手段は、移動体の移動方向における前記生成水の前方に前記気体流を生成する手段であるものとすることもできる。こうすれば、生成水に対する前方からの空気の流れの影響を抑制することができる。
また、空気流影響抑制手段が生成水の放出方向に略一致する気体流を生成する態様の本発明の第4の参考例の移動体において、前記空気流影響抑制手段は、移動体の移動方向における前記生成水の後方に前記気体流を生成する手段であるものとすることもできる。こうすれば、生成水の後方に生成された気体流により生成水に対する空気の流れの影響を抑制することができる。
さらに、空気流影響抑制手段が生成水の放出方向に略一致する気体流を生成する態様の本発明の第4の参考例の移動体において、前記空気流影響抑制手段は、移動体の移動方向における前記生成水の側方内側に前記気体流を生成する手段であるものとすることもできるし、移動体の移動方向における前記生成水の側方外側に前記気体流を生成する手段であるものとすることもできる。こうすれば、生成水の側方に生成された気体流により、生成水に対する空気の流れの影響を抑制することができる。
また、気体流により生成水に対する移動体の移動に伴う空気の流れの影響を抑制する態様の本発明の第4の参考例の移動体において、前記空気流影響抑制手段は、前記生成水の周囲に環状の前記気体流を生成する手段であるものとすることもできるし、前記生成水を取り囲むよう前記気体流を生成する手段であるものとすることもできる。こうすれば、生成水の周囲に環状に生成された気体流や生成水を取り囲むように生成した気体流により、生成水に対する空気の流れの影響を抑制することができる。
気体流により生成水に対する移動体の移動に伴う空気の流れの影響を抑制する態様の本発明の第4の参考例の移動体において、前記空気流影響抑制手段は、移動体からの排気により前記気体流を生成する手段であるものとすることもできる。この場合、前記空気流影響抑制手段は前記燃料電池からの排気により前記気体流を生成する手段であるものとすることもできる。こうすれば、燃料電池からの排気を有効に用いることができる。また、前記空気流影響抑制手段は、前記気体流を生成するためのファンを備える手段であるものとすることもできる。この場合、ファンは、移動体に搭載された機器を冷却するために用いられる冷却用ファンであるものとすることもできる。こうすれば、移動体に搭載された機器を冷却するために用いられる冷却用ファンからの排気を有効に用いることができる。この場合、ファンは、移動体の下部に鉛直下向きの成分を有する方向に向けて排気を送出するよう配置されてなるものとすることもできる。
気体流により生成水に対する移動体の移動に伴う空気の流れの影響を抑制する態様の本発明の第4の参考例の移動体において、前記空気流影響抑制手段は、移動体の移動に伴う空気の流れを調整することにより前記気体流を生成する手段であるものとすることもできる。こうすれば、移動体の移動に伴う空気の流れを有効に用いることができる。
本発明の移動体は、
発電に伴って水を生成する燃料電池を電力源として搭載する移動体であって、
前記燃料電池により生成された生成水を放出口から外部に放出する放出手段と、
前記放出口から放出された生成水および/または前記放出口から放出され地面に至った後の生成水が移動体の移動に伴う空気の流れに基づいて後方に飛散するのを抑制する後方飛散抑制手段と、
を備えることを要旨とする。
この本発明の移動体では、放出口から放出された生成水や放出口から放出されて地面に至った後の生成水が移動体の移動に伴う空気の流れに基づいて後方に飛散するのを抑制するから、生成水の放出による後方や側方への影響を抑制することができる。ここで、移動体としては、自動車や列車などの車両を含む地上移動体が含まれる。また、移動体は、燃料電池に加えて燃流電池以外の電力源、例えば二次電池やキャパシタなどを搭載するものとしてもよい。
こうした本発明の移動体において、前記後方飛散抑制手段は、前記放出口の後方に該放出口から放出される生成水の放出方向に略一致する気体流を生成する手段であるものとすることもできる。こうすれば、気体流が放出口から放出された生成水や地面に至った後の生成水に対する移動体の移動に伴う空気の流れの影響を抑制することができる。
また、本発明の移動体において、前記後方飛散抑制手段は、前記放出口の後方に鉛直下向きの成分を有する気体流を生成する手段であるものとすることもできる。こうすれば、気体流により放出口から放出された生成水や地面に至った後の生成水が後方に飛散しようとするのを抑制することができる。
これら気体流により放出口から放出された生成水や地面に至った後の生成水が後方に飛散するのを抑制する態様の本発明の移動体において、前記後方飛散抑制手段は、移動体の移動に伴う空気の流れを調整することにより前記気体流を生成する手段であるものとすることもできる。こうすれば、移動体の移動に伴う空気の流れを有効に用いることができる。
また、気体流により放出口から放出された生成水や地面に至った後の生成水が後方に飛散するのを抑制する態様の本発明の移動体において、前記空気流影響抑制手段は、移動体からの排気により前記気体流を生成する手段であるものとすることもできる。この場合、前記空気流影響抑制手段は、前記燃料電池からの排気により前記気体流を生成する手段であるものとすることもできる。こうすれば、燃料電池からの排気を有効に用いることができる。
本発明の第5の参考例の移動体は、
発電に伴って水を生成する燃料電池を電力源として搭載する移動体であって、
前記燃料電池により生成された生成水の少なくとも一部を水蒸気として含む排気の供給を受け、該供給された排気を遠心分離作用を用いて気液分離し、気体と液体とを略同一方向に向けて外部に放出する気液分離放出手段、
を備えることを要旨とする。
この本発明の第5の参考例の移動体では、燃料電池により生成された生成水の少なくとも一部を水蒸気として含む排気の供給を受け、この供給された排気を遠心分離作用を用いて気液分離し、分離した気体と液体とを略同一方向に向けて外部に放出する。液体と略同一方向に向けて放出される気体は、液体に対する移動体の移動に伴う空気の流れの影響を抑制する気体流として作用するから、液体、即ち生成水が後方や側方に飛散するのを抑制することができる。この結果、生成水の後方や側方への影響を抑制することができる。ここで、気液分離により分離された気体は、完全に乾燥した気体だけを意味するのではなく、不完全飽和或いは完全飽和若しくは過飽和の水蒸気を含む気体や水蒸気に加えて微小な液滴としての水を含む気体をも意味する。また、移動体としては、自動車や列車などの車両を含む地上移動体が含まれる。さらに、移動体は、燃料電池に加えて燃流電池以外の電力源、例えば二次電池やキャパシタなどを搭載するものとしてもよい。
こうした本発明の第5の参考例の移動体において、前記気液分離放出手段は、前記排気を螺旋回させて流すことにより気液を遠心分離する気液分離部と、該気液分離部からの気液を鉛直下向きの成分を有する方向に向けて放出する放出部と、を備える手段であるものとすることもできる。ここで、「螺旋回」とは螺旋状に旋回する意である。気液分離部では螺旋回して排気を流すことにより生成水を自重に対する遠心力を用いて内壁面に集め、放出部では内壁面に集められた生成水をガス流速によって後方側に集めて鉛直下向きの成分を有する方向に向けて放出する。したがって、気液分離により分離された気体は、生成水の前方の気体流として放出されることになる。この気体流は生成水に対する移動体の移動に伴う空気の流れの影響を抑制するから、生成水が後方や側方に飛散するのを抑制することができる。ここで、前記放出部は、前記気液分離部からの気液を略水平に移動させる状態から鉛直下方方向に湾曲させて放出する湾曲管により構成されてなるものとすることもできる。
本発明の第6の参考例の移動体は、
発電に伴って水を生成する燃料電池を電力源として搭載する移動体であって、
ガス流量に応じてガスの放出方向を鉛直下向きから水平方向に変更可能な放出機構を有し、前記燃料電池により生成された生成水を該燃料電池からの排ガスと共に該放出機構から外部に放出する放出手段
を備えることを要旨とする。
この本発明の第6の参考例の移動体では、ガス流量に応じてガスの放出方向を鉛直下向きから水平方向に変更可能な放出機構から、燃料電池により生成された生成水を該燃料電池からの排ガスと共に外部に放出する。従って、生成水と共に放出される排ガスの流量に応じて放出される方向を変更することができる。放出機構をガス流量の増加に伴ってガスの放出方向を水平方向に変更するものとすれば、排ガスの流量は燃料電池の負荷に応じて大きくなることや燃料電池の負荷は移動体の移動速度や移動加速度に応じて大きくなることを考慮すれば、移動体の移動速度が小さいときや移動加速度が小さいときには生成水と排ガスは鉛直下向きに放出され、移動体の移動速度が大きいときや移動加速度が大きいときには生成水と排ガスは鉛直下向きから水平方向の成分をもって放出されることになる。ここで、移動体としては、自動車や列車などの車両を含む地上移動体が含まれる。また、移動体は、燃料電池に加えて燃流電池以外の電力源、例えば二次電池やキャパシタなどを搭載するものとしてもよい。
こうした本発明の第6の参考例の移動体において、前記放出機構は、ガス流量に応じてガスの放出方向を鉛直下向きから移動体の側方向への成分をもって水平方向に変更する機構であるものとすることもできる。こうすれば、移動体の移動速度が大きいときや移動加速度が大きいときには生成水と排ガスとを移動体の側方向の成分をもって放出することができる。この結果、移動体の移動に伴う空気の流れにより生成水が飛散して巻き上げられるのを抑制することができる。
また、本発明の第6の参考例の移動体において、前記放出機構は、ガス流量に応じてガスの放出方向を鉛直下向きから移動体の後方向への成分をもって水平方向に変更する機構であるものとすることもできる。こうすれば、移動体の移動速度が大きいときや移動加速度が大きいときには生成水と排ガスとを移動体の後方向の成分をもって放出することができる。生成水に後方向の成分をもたせることにより、放出された生成水の地面に対する相対速度を小さくし、地面に到達したときの飛び散りを抑制することができる。この結果、地面に到達したときに飛び散った水が移動体の移動に伴う空気の流れに巻き上げられて飛散するのを抑制することができる。
本発明の第6の参考例の移動体において、前記放出機構は、移動体に略水平に固定された固定管端部の上部にヒンジをもって可動管を取り付けてなる機構であるものとすることもできるし、移動体に略水平に固定された固定管端部に屈曲自在な屈曲自在管を取り付けると共に該屈曲自在管内を流れるガスによる力をもって変形可能の弾性部材を用いてガス流量が小さいときに該屈曲自在管の端部が略鉛直下方を向くよう屈曲状態を調整してなる機構であるものとすることもできる。
本発明の第7の参考例の移動体において、
発電に伴って水を生成する燃料電池を電力源として搭載する移動体であって、
前記燃料電池により生成された生成水を放出口から外部に放出する放出手段と、
該放出手段の放出口から放出される生成水の飛散を抑制する飛散抑制手段と、
を備えることを要旨とする。
この本発明の第7の参考例の移動体では、燃料電池により生成され放出口から放出される生成水の飛散を抑制するから、生成水の後方や側方への影響を抑制することができる。ここで、移動体としては、自動車や列車などの車両を含む地上移動体が含まれる。また、移動体は、燃料電池に加えて燃流電池以外の電力源、例えば二次電池やキャパシタなどを搭載するものとしてもよい。
こうした本発明の第7の参考例の移動体において、前記飛散抑制手段は、前記生成水の落下に作用する方向の力を大きくする手段であるものとすることもできる。生成水の落下に作用する力を大きくして生成水を迅速に地面に落下させることにより、地面に落下するまでに生成水が移動体の移動に伴う空気の流れにより巻き上げられて飛散するのを抑制するのである。
この飛散抑制手段が生成水の落下に作用する方向の力を大きくする態様の本発明の第7の参考例の移動体において、前記飛散抑制手段は、前記生成水の落下重量を大きくする手段であるものとすることもできる。ここで、「生成水の落下重量を大きくする」とは、生成水が水滴として落下するときには大きな水滴とすることを意味し、生成水が連続して落下するときにはその断面積を大きくすることを意味する。この場合、前記飛散抑制手段は、前記生成水を収集して前記放出手段に導く手段であるものとすることもできるし、更に、前記生成水の少なくとも一部を水蒸気として含む前記燃料電池からの排気を気液分離することにより生成水を収集する手段であるものとすることもできる。
また、飛散抑制手段が生成水の落下に作用する方向の力を大きくする態様の本発明の第7の参考例の移動体において、前記飛散抑制手段は、移動体の移動に伴う空気の流れを用いて前記生成水の落下を促進する手段であるものとすることもできる。こうすれば、移動体の移動に伴う空気の流れを有効に用いて生成水が飛散するのを抑制することができる。この態様の本発明の第7の参考例の移動体において、前記飛散抑制手段は、前記生成水に対する移動体の移動に伴う空気の流れを鉛直下方の成分を有する流れとすることにより該生成水の落下を促進する手段であるものとすることもできる。こうすれば、移動体の移動に伴う空気の流れを有効に用いて生成水の飛散を抑制することができる。
さらに、飛散抑制手段が生成水の落下に作用する方向の力を大きくする態様の本発明の第7の参考例の移動体において、前記飛散抑制手段は、移動体から放出されるガスを用いて前記生成水の落下を促進する手段であるものとすることもできる。こうすれば、移動体から放出されるガスを有効に用いて生成水の飛散を抑制することができる。この場合、前記飛散抑制手段は、前記生成水に対して前記移動体から放出されるガスを鉛直下方の成分を有する流れとして放出することにより該生成水の落下を促進する手段であるものとすることもできる。
また、本発明の第7の参考例の移動体において、前記飛散抑制手段は、前記生成水の飛散に作用する方向の力を小さくする手段であるものとすることもできる。生成水の飛散に作用する方向の力を小さくすることにより、生成水の飛散を抑制することができる。
この飛散抑制手段が生成水の飛散に作用する方向の力を小さくする態様の本発明の第7の参考例の移動体において、前記飛散抑制手段は、前記生成水に作用する移動体の移動に伴う空気の流れの影響を小さくする手段であるものとすることもできる。こうすれば、移動体の移動に伴う空気の流れによって生成水が飛散するのを抑制することができる。
この生成水に作用する移動体の移動に伴う空気の流れの影響を小さくする態様の本発明の第7の参考例の移動体において、前記飛散抑制手段は、前記生成水に対する移動体の移動に伴う空気の流れを調整することにより前記生成水に作用する移動体の移動に伴う空気の流れの影響を小さくする手段であるものとすることもできる。この場合、前記飛散抑制手段は、前記生成水に対する移動体の移動に伴う空気の流れを抑制する手段であるものとすることもできるし、前記生成水に対する移動体の移動に伴う空気の流れを遮断する手段であるものとすることもできるし、前記生成水に対する移動体の移動に伴う空気の流れを鉛直下向きの成分を有する流れとする手段であるものとすることもできる。
また、生成水に作用する移動体の移動に伴う空気の流れの影響を小さくする態様の本発明の第7の参考例の移動体において、前記飛散抑制手段は、移動体から放出されるガスを用いて前記生成水の飛散に作用する方向の力を小さくする手段であるものとすることもできる。こうすれば、移動体から放出されるガスを有効に用いて生成水が飛散するのを抑制することができる。この場合、前記飛散抑制手段は、移動体から放出されるガスにより前記生成水に対する移動体の移動に伴う空気の流れを抑制する手段であるものとすることもできるし、移動体から放出されるガスにより前記生成水に対する移動体の移動に伴う空気の流れを遮断する手段であるものとすることもできる。
本発明の第7の参考例の移動体において、前記飛散抑制手段は、前記生成水の運動を規制する手段であるものとすることもできる。生成水の運動を規制することにより、生成水が飛散するのを抑制するのである。この態様の本発明の第7の参考例の移動体において、前記飛散抑制手段は、移動体から放出されるガスを用いて前記生成水の運動を規制する手段であるものとすることもできるし、移動体の移動に伴う空気の流れを用いて前記生成水の運動を規制する手段であるものとすることもできる。
本発明の第8の参考例の移動体は、
水素と酸素の電気化学反応により発電する燃料電池と、
前記燃料電池からの排気を移動体外に排出するための排気系と、
前記排気に含まれる生成水の移動体外への排出を所定速以上の時に抑制する排水抑制機構と、
を備えることを要旨とする。
この本発明の第8の参考例の移動体では、生成水の飛散は移動体外の気流の影響を受けるため、排気に含まれる生成水の移動体外への排出を所定速以上の時に抑制することにより、生成水の飛散を抑制することができる。ここで、移動体としては主に車両を考えることができる。
こうした本発明の第8の参考例の移動体において、排水抑制機構は、種々の構成を採ることができる。第1の態様として、排水抑制機構は、所定速以上で開度が低減する弁機構としてもよい。この弁機構は、電磁弁と、移動体速に応じてその開度を制御する制御装置とを用いて構成してもよい。また、外部からの圧力に応じて開閉動作するリード弁を用いてもよい。高速移動時には、気流をせき止めた時の圧力、即ちラム圧が速度に応じて高くなる。従って、ラム圧に応じて開閉するリード弁を用いれば、上述の弁機構を比較的容易に実現することができる。
排水抑制機構は、第2の態様として、移動体の移動に伴うラム圧が生成水の排出を抑制する方向に作用する位置および向きに開口する排水口としてもよい。例えば、排水口を移動体の外部に前方に向けて設ける構造を採ることができる。
上述の排水抑制機構は、例えば、排気管に直接設けてもよい。また、排気から生成水を分離するための気液分離機構を設け、その気液分離機構からの排水系に設けてもよい。気液分離機構を用いる場合には、排気中の生成水を分離した上で、効率的に排出することができる利点がある。
気液分離機構を適用する場合には、分離された生成水を一時的に貯留する貯留部を有することが好ましい。こうすることにより、高速移動時に、生成水の分離機能に支障なく生成水の排出を抑制することができる。この場合、排水系は、貯留部において移動体の前方に開口するよう設けられていることが好ましい。移動体の加速時には、慣性力の作用により、生成水は貯留部後方に押しやられるため、排水、ひいては生成水の飛散が抑制される。減速時には、生成水が前方に流れてくるため、排水が促進される。このように貯留部からの排水用の開口を移動体前方に向けておくことにより、簡易な構造で、高速移動に向けての加速中の排水を抑制し、減速時の排水を促進することができる。
本発明の第9の参考例の移動体は、
移動体であって、
水素と酸素の電気化学反応により発電する燃料電池と、
前記燃料電池からの排気を移動体外に排出するための排気系と、
前記排気に含まれる生成水を一時的に貯留する貯留部と、
前記貯留部から前記生成水を排出するため前記移動体の前方側に設けられた排水口と、
を備えることを要旨とする。
この本発明の第9の参考例の移動体では、排気系に貯留部を備えると共に貯留部から生成水を排出するための排水口を車両の前方側に設ける。この本発明の第9の参考例の移動体では、高速移動時に排水を抑制する作用を十分に奏しない構成も含まれる。先に説明した通り、前方に開口部を設けることにより、加速時の排水が抑制され、減速時の排水が促進される。移動中の移動体は、一定速度で走行し続けることはあまり多くなく、加減速が行われることが多い。従って、減速時に生成水を十分に排出すると共に加速時の排出を抑制することにより、移動中における生成水の飛散を後続の移動体の移動に支障を与えない程度には抑制することができる。ここで、移動体としては主に車両を考えることができる。
こうした本発明の第9の参考例の移動体において、貯留部および排水口を移動体内部に設け、排水管で移動体外に生成水を排出する構造としてもよい。また、排水口は、移動体の移動中に伴うラム圧が生成水の排出を抑制する方向に作用する位置および向きに開口させてもよい。後者の態様では、貯留部を移動体外に設けることにより排水口にラム圧が作用するようにしてもよいし、貯留部を移動体内に設けた上で排水口を移動体外に設けてもよい。このように排水口にラム圧を作用させることによって、高速移動時の排水を抑制し、生成水の飛散を抑制することができる。
また、本発明の第9の参考例の移動体において、排水口には、所定速以上で開度が低減する弁機構を設けてもよい。こうすることで、高速移動時における排水を抑制することができる。かかる弁機構としては、先に本発明の第8の参考例の移動体で説明した構成、即ち、電磁弁と制御装置の組み合わせ、リード弁などを適用することができる。
さらに、本発明の第9の参考例の移動体において、効率的な排水を行う上で、排気から生成水を分離するための気液分離機構を設けることが好ましい。この場合、貯留部は、気液分離機構の排水系に設けることができる。
第1実施例の燃料電池車10に搭載された機器の平面配置の一例を示す平面配置図である。 第1実施例の燃料電池車10に搭載された機器の側面配置の一例を示す側面配置図である。 第1実施例の燃料電池車10に搭載された燃料電池スタック22を中心とする燃料電池システム20の構成の概略を示すシステム構成図である。 第2実施例の燃料電池車110における放出口164および導風路180の配置を例示する平面配置図である。 第2実施例の燃料電池車110に搭載された機器の側面配置の一例を示す側面配置図である。 第2実施例の変形例の燃料電池車110Bにおける放出口164とダクト180Bの配置を例示する平面配置図である。 第2実施例の変形例の燃料電池車110Bにおける放出口164とダクト80Bの配置を例示する側面配置図である。 第3実施例の燃料電池車210における放出口264の取り付け位置を説明する説明図である。 図8におけるA−A断面を拡大して例示する拡大断面図である。 図8におけるB−B断面を拡大して表示する拡大断面図である。 第4実施例の燃料電池車310に搭載された機器の平面配置の一例を示す平面配置図である。 第4実施例の燃料電池車310における排気管347と気液分離器348の配置の一例を示す側面配置図である。 第4実施例の燃料電池車310に搭載された燃料電池スタック22を中心とする燃料電池システム320の構成の概略を示すシステム構成図である。 第4実施例の燃料電池車310の空気給排系40における放出系の構成の一例を示す構成図である。 放出された水と排ガスと走行風との関係を説明する説明図である。 第4実施例における空気給排系40の放出系の変形例の構成の概略を示す構成図である。 第4実施例における空気給排系40の放出系の変形例の構成の概略を示す構成図である。 変形例における放出された水と排ガスや空気と走行風との関係を説明する説明図である。 第4実施例における空気給排系40の放出系の変形例の構成の概略を示す構成図である。 第4実施例における空気給排系40の放出系の変形例の構成の概略を示す構成図である。 第4実施例における空気給排系40の放出系の変形例の構成の概略を示す構成図である。 変形例における放出された水と排ガスや空気と走行風との関係を説明する説明図である。 第4実施例における空気給排系40の放出系の変形例の平面配置を説明するための平面配置図である。 第4実施例における空気給排系40の放出系の変形例の側面配置を説明するための側面配置図である。 第4実施例における空気給排系40の放出系の変形例の構成の概略を示す構成図である。 変形例における放出された水と排ガスと走行風との関係を説明する説明図である。 第5実施例の燃料電池車410に搭載された機器の平面配置の一例を示す平面配置図である。 放出管450の構造と機能とを説明する説明図である。 第5実施例における空気給排系40の放出系の変形例の構造と機能とを説明する説明図である。 第5実施例における空気給排系40の放出系の変形例の構成の一例を示す構成図である。 第5実施例における空気給排系40の放出系の変形例の構成の一例を示す構成図である。 変形例のエアカーテンの形成位置を例示する説明図である。 変形例のエアカーテンの形成位置を例示する説明図である。 第6実施例の燃料電池車510に搭載された機器の平面配置の一例を示す平面配置図である。 第6実施例の燃料電池車510における排ガス系の配置の一例を示す側面配置図である。 第6実施例の燃料電池車510に搭載された燃料電池スタック22を中心とする燃料電池システム520の構成の概略を示すシステム構成図である。 放出機構550の構成と排ガスの放出の様子を示す説明図である。 変形例の放出機構550Bの構成と排ガスの放出の様子を示す説明図である。 第7実施例としての車両1010の概略構成を示す説明図である。 バッファタンク1027の作用を示す説明図である。 第8実施例としての排気系の構造を示す説明図である。 変形例としての排気系の構造を示す説明図である。 変形例としての排気系の構造を示す説明図である。
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
図1は本発明の第1実施例の燃料電池車10に搭載される機器の平面配置の一例を示す平面配置図であり、図2は第1実施例の燃料電池車10に搭載される機器の側面配置の一例を示す側面配置図であり、図3は実施例の燃料電池車10に搭載された燃料電池スタック22を中心とする燃料電池システム20の構成の概略を示すシステム構成図である。説明の容易のために、まず、図3のシステム構成図を用いて燃料電池システム20のシステム構成について説明し、その後、図1および図2を用いて燃料電池システム20の各機器の配置について説明する。
第1実施例の燃料電池車10が搭載する燃料電池システム20は、例えば高分子により形成された電解質膜を二つの電極(燃料極と空気極)で狭持してなる単電池ユニットを複数積層して構成した燃料電池スタック22と、この燃料電池スタック22の燃料極(負極)に高圧水素タンク31からの水素を供給する水素供給系30と、燃料電池スタック22の空気極(正極)に空気を供給すると共に空気極からの排気を処理する空気給排系40と、燃料電池スタック22を冷却する冷却系50と、システムからの排ガスや発生した水を外部に放出する放出系60とを備える。
水素供給系30は、燃料電池スタック22の内側に形成された燃料極への水素の供給用の流路に高圧水素タンク31からの水素を供給する水素供給流路32と、燃料電池スタック22の内側に形成された燃料極からの未反応の水素の排出用の流路からの水素を水素供給流路32に戻す水素循環路33とを備える。水素供給流路32には、高圧水素タンク31からの水素が逆流しないようにするための逆流防止弁(チェック弁)や燃料電池スタック22への水素の供給や供給停止を行なうための仕切弁などが設けられている。水素循環路33には、水素を水素供給流路32に圧送するための水素ポンプ34や、循環している水素中の水蒸気を液化することにより気液分離する気液分離器38、水素供給流路32側の水素が逆流しないようにするための逆流防止弁(チェック弁)、燃料電池スタック22からの水素の排出を停止するための仕切弁などが設けられている。また、水素供給流路32や水素循環路33に燃料電池スタック22に供給する水素の供給量や燃料電池スタック22の運転状態を制御するために用いられる各種センサ、例えば、燃料電池スタック22の流入口や水素ポンプ34の吐出側に設けられた圧力センサや燃料電池スタック22の出口近傍や水素ポンプ34の吐出側に設けられた温度センサなどが取り付けられている。気液分離器38により分離された水は、放出系60が複数備えるバッファタンク62a〜62cに送られる。なお、水素循環路32には仕切弁を介して分岐管が取り付けられており、この分岐管により水素循環路32内の水素は放出系60の希釈器61に導入され、希釈されて大気に開放される。
空気給排系40では、マスフローメータ43により計量されエアコンプレッサ44により加圧された空気を加湿器46により加湿して供給管42により燃料電池スタック22の空気極に供給する。燃料電池スタック22の空気極からの空気(排ガス)は、加湿器46に供給されてエアコンプレッサ44からの空気を加湿し、その後、気液分離器48により気液分離される。気液分離器48で分離された水はバッファタンク62a〜62cに送られ、分離された気体(排ガス)は希釈器61に送られて希釈用のガスとして用いられて大気に開放される。ここで、実施例の気液分離器48は、気液を完全に分離するものではなく、不完全に分離するものを意味する。即ち、気液分離器48により分離された気体は、完全に乾燥した気体ではなく、不完全飽和或いは完全飽和若しくは過飽和の水蒸気を含む気体であったり、こうした水蒸気に加えて微小な液滴としての水をも含む気体である。
冷却系50は、燃料電池スタック22の内側に形成された冷却水用流路とにより冷却水の循環路を形成する冷却水循環路52に冷却水を循環させることにより燃料電池スタック22を冷却する。冷却水循環路52には、冷却水を循環させるための冷却水ポンプ54や循環する冷却水を空気を用いて冷却するファン付きのラジエータ56が設けられている。また、冷却水の温度管理を行なうために冷却水循環路52における燃料電池スタック22からの出口近傍とラジエータ56の後段に冷却水の温度を検出する温度センサが取り付けられている。
放出系60は、水素供給系30の気液分離器38や空気給排系40の気液分離器48で分離した水をバッファタンク62a〜62cに一旦蓄えてから複数の放出口(第1実施例では、二つの放出口)64b,64cから放出する水放出系と、空気給排系40の気液分離器48で分離した排ガスを希釈器61で希釈ガスとして用いて水素供給系30から排気される水素を希釈して放出するガス放出系とから構成されている。
こうした燃料電池システム20は、各種センサからの信号に基づいて水素ポンプ34やエアコンプレッサ44,冷却水ポンプ54を駆動したり各仕切弁や流量調節弁の開度を調節することにより燃料電池スタック22を制御すると共に図示しない走行用のモータを制御するパワーコントロールユニット(以下、PCUという)70や充放電可能な二次電池,モータ駆動用のインバータなども備えるが、これらについては本発明の中核をなさないから、その図示や詳細な説明については省略する。
図1および図2に示すように、燃料電池スタック22は車両前部の中央下部に横たわるように配置され、その上に、PCU70が配置されている。燃料電池スタック22の左側前部のフェンダ内には、加湿器46とエアコンプレッサ44とが配置されており、燃料電池スタック22の右側前部のフェンダ内には、バッファタンク62aが配置されている。燃料電池スタック22の前方には、ラジエータ56が配置され、その前方には乗員室内の空気調節を行なうエアコンディショナー用のラジエータ72が配置されている。また、前部のバンパー内側の左右下部には、バッファタンク62b,62cが取り付けられている。更に、運転席(右ハンドル用の車両における運転席)の前方右下部には、空気給排系40の気液分離器48が配置されている。この他、車両前部には水素ポンプ34や冷却水ポンプ54,気液分離器38が配置され、車両前部或いは中央部もしくは後部には希釈器61が配置されているが、これらの図示は省略した。
バッファタンク62aは、水素供給系30の気液分離器38や空気給排系40の気液分離器48と図示しない連絡管により接続されていると共にバンパーの左右下部に配置されたバッファタンク62b,62cと図示しない配水管により接続されており、気液分離器38や気液分離器48により分離された水はフェンダ内に配置されたバッファタンク62aに蓄えられ、その後、バンパー内に配置された左右のバッファタンク62b,62cに送られる。バッファタンク62aには、エア抜き用の穴が形成されており、バッファタンク62a〜62c内の圧力が高くなるのを抑制できるようになっている。バンパー内に配置されたバッファタンク62bとバッファタンク62cは、図示しない放水管により左右前輪のフェンダの前部内側に取り付けられた同一形状の二つの放出口64b,64dに接続されており、バッファタンク62bやバッファタンク62cに蓄えられた水は放出口64bや放出口64cから放出されるようになっている。放出口64bと放出口64cは、放出可能な単位時間当たりの水量が燃料電池スタック22に最大負荷を与えたときに燃料電池スタック22により発電に伴って生成される単位時間当たりの水量より小さくなるように、その放水断面が設計されている。第1実施例の燃料電池車10では、一般的な運転パターンによる走行をしたときに燃料電池スタック22で生成される単位時間当たりの平均水量かこれより若干多い水量が放出口64bと放出口64cとから放出されるよう放出口64bと放出口64cの放水断面が設計されている。
以上構成を説明した第1実施例の燃料電池車10では、燃料電池スタック22により生成された水、即ち水素供給系30の気液分離器38により分離された水や空気給排系40の気液分離器48により分離された水は、一旦、右フェンダ内のバッファタンク62aに蓄えられ、その後、バンパーの左右下部に配置されたバッファタンク62b,62cで貯留し、前輪のフェンダの前部内側に配置された放出口64bと放出口64cとから放出される。このように、燃料電池スタック22からの生成水をバッファタンク62aやバッファタンク62b,62cで蓄えてから放出するから、燃料電池スタック22に大きな負荷を作用させたときに燃料電池スタック22で生成される水を直ちに放出するものに比して、放出する水量を少なくすることができる。このため、放出した水が走行風によって巻き上げられて飛散する際における飛散水量を抑制することができる。また、放出口64bと放出口64cを前輪のフェンダの前部に配置したから、放出口64bと放出口64cを前輪のフェンダの後部や後輪のフェンダに配置したものに比して、放出した水が走行風によって巻き上げられて飛散するのを抑制することができる。さらに、放出口64bと放出口64cを走行風の影響が小さいフェンダの内側に配置したから、放出した水が走行風によって巻き上げられて飛散するのを抑制することができる。これらの結果、後方や側方を走行する車両に放出した水が飛散してかかる等の不都合を抑制することができる。
第1実施例の燃料電池車10では、燃料電池スタック22からの生成水を右フェンダ内のバッファタンク62aで蓄え、その後、バンパーの左右下部のバッファタンク62b,62cで貯留した後に前輪のフェンダの前部内側に取り付けられた放出口64b,64cから放出するものとしたが、バンパーの左右下部にバッファタンク62b,62cを設けず、燃料電池スタック22からの生成水を右フェンダ内のバッファタンク62aで蓄えた後に放出口64b,64cから放出するものとしてもよいし、右フェンダ内にバッファタンク62aを設けず、燃料電池スタック22からの生成水をバンパーの左右下部のバッファタンク62b,62cで貯留した後に放出口64b,64cから放出するものとしてもよい。また、右フェンダ内のバッファタンク62aもバンパーの左右下部のバッファタンク62b,62cも設けず、燃料電池スタック22からの生成水を直接に放出口64b,64cから放出するものとしても差し支えない。この場合、単位時間当たりの放出水量を略均等にできないものの、生成水を前輪のフェンダの前部から放出する効果については同様に奏することができる。
第1実施例の燃料電池車10では、燃料電池スタック22からの生成水を前輪のフェンダの前部内側に取り付けられた左右二つの放出口64b,64cから放出するものとしたが、放出口を三つ以上設けて放出するものとしてもよいし、放出口64b,64cのいずれか一方だけから放出するものとしてもよい。また、第1実施例の燃料電池車10では、放出口64bと放出口64cとを同一形状に形成するものとしたが、異なる形状、例えば、放出口64bからの単位時間当たりの放出水量が放出口64cからの単位時間当たりの放出水量より大きくなるよう、その形状を形成するものとしてもよい。
第1実施例の燃料電池車10では、燃料電池スタック22から排出される未反応の水素を水素循環路33により水素供給流路32に循環させるものとしたが、こうした水素循環路33を備えないものとしてもよい。
第1実施例の燃料電池車10では、空気給排系40の気液分離器48として完全に気液分離できないタイプのものを用いたが、完全に気液分離が可能なタイプのものを用いるものとしてもよい。
次に、本発明の第2実施例の燃料電池車110について説明する。図4は第2実施例の燃料電池車110の放出口164の平面配置を例示する平面配置図であり、図5は第2実施例の燃料電池車110に搭載される機器の側面配置の一例を示す側面配置図である。第2実施例の燃料電池車110は、バッファタンク62b,62cを備えない点やバッファタンク62aに蓄えられた水を外部に放出する放出口164の配置が異なる点と放出口164近傍へ走行風を導く導風路180が設けられている点とを除いて第1実施例の燃料電池車10と同一の構成をしている。従って、重複した説明を避けるため、第2実施例の燃料電池車110の構成のうち第1実施例の燃料電池車10の構成と同一の構成については同一の符号を付し、その図示や詳細な説明については省略する。
第2実施例の燃料電池車110では、バッファタンク62aは図示しない管路により運転席側(右ハンドルの車両の場合は右側)の前輪のフェンダの後部内側に鉛直下向きに水を放出する放出口164に接続されており、バッファタンク62aに蓄えられてた水は放出口164から放出されるようになっている。第2実施例の燃料電池車110では、前方から流入した空気を前輪後方から側後方に排出する空気の通り道としての導風路180が車両前部のフェンダなどにより構成されている。この導風路180は、フェンダ内の放出口164が取り付けられた付近で車両の側後方約45度の角度で空気が排出されるよう構成されている。
次に、こうして構成された第2実施例の燃料電池車110における放出口164からの放水の様子について説明する。車両が走行しているときに放出口164から放水すると、放出口164からの水は、車両の走行に伴って導風路180により導かれる空気の流れによって車両の側後方に飛ばされるようになる。このように、放出口164から放出された水を車両の側後方に飛ばすようにするのは、車両の走行に伴って生じる走行風により放出した水が巻き上げられるのを抑制するためである。走行風の影響は、車両の横幅の範囲における後方が強く、特に中央付近の後方が強い傾向がある。車両の側方では、その距離に応じて走行風の影響は減少する。従って、車両の側後方に向けて放水することにより、走行風の影響を小さくし、走行風により放出した水が巻き上げられるのを抑制することができるのである。第2実施例では、車両を走行させたときに放出口164から放出された水が車両の側方向における路上の障害物に対して通常必要とする距離未満の距離(例えば、60km/hの走行に対して約50cm程度)だけ離れた路面に到達するよう導風路180における放出口164近傍の空気の流速と導風路180における側後方の角度が調整されている。このため、走行中に放出口164から水を放出しても路上の障害物に水がかかるのを抑止することができる。特に、前述したように、第2実施例では放出口164は運転席側(通常、対向車に対する側であって道路の中央側)に設けられているから、走行中に放出口164から放出された水が路肩を歩いている人や道路に面した建造物にかかるのを抑止することができる。また、第2実施例では、放出口164は鉛直下向きに水を放出するよう取り付けられているから、水の放出する際に水に下向きの力を作用させることができる。このため、水が自由落下する場合に比して迅速に路面に到達させることができる。従って、放出された水が路面に到達するまでに走行風等の外乱により巻き上げられるのを抑制することができる。一方、車両が停止しているときに放出口164から水を放出すると、放出口164は車両のシルエット内で鉛直下向きに水を放出するよう取り付けられているから、車両のシルエット内に水を放出することができる。即ち、車両の間近にいる人などに水をかけることがない。
以上説明した第2実施例の燃料電池車110によれば、放出口164を運転席側の前輪のフェンダの後部内側に鉛直下向きに水を放出するよう配置すると共に車両前方から導入された空気を放出口164近傍において車両の側後方約45度の角度で放出するよう導風路180を構成したことにより、走行中に放出口164から放出された水を車両の側後方に飛ばすようにして、放出された水が走行風によって巻き上げられるのを抑止することができる。この結果、後続の車両に放出した水が飛散してかかる等の不都合を抑制することができる。しかも、放出口164を運転席側に設けたから、走行中に放出口164から放出された水が路肩を歩いている人や道路に面した建造物にかかるのを抑止することができる。また、鉛直下向きに水を放出するよう放出口164を取り付けたから、水を迅速に路面まで到達させることができる。さらに、放出口164を車両のシルエット内で鉛直下向きとなるよう取り付けたから、停車中に放出口164から放出した水が車両の間近にいる人などにかけるのを防止することができる。
第2実施例の燃料電池車110では、車両前方から導入された空気を前輪の後方から側後方約45度の角度で放出するよう導風路180を構成したが、空気を導いて放出口164近傍において車両の側後方約45度の角度で放出すればよいから、導風路180以外に空気をガイドする部材を設けたり、図6の平面配置図や図7の側面配置図に例示する変形例の燃料電池車110Bのように、車両前方から導入された空気を放出口164近傍において車両の側後方約45度の角度で放出するダクト180Bを設けるものとしてもよい。このダクト180Bは、図7に示すように、空気と共に放出口164から放出される水が車両の側後方約45度の角度で放出される際に、放出される速度成分として鉛直下向きの成分が含まれるよう、下向きに折れ曲がっている。このため、放出された水は、鉛直下向きの成分を有する空気の流れにより、空気の流れがないときに比して短時間で路面に到達するようになる。この結果、水が路面に到達する最中に走行風によって巻き上げられるのを抑制することができる。
第2実施例の燃料電池車110では、空気を導いて放出口164近傍において車両の側後方約45度の角度で放出するものとしたが、車両の側方に放出すればよいから、その角度は45度に限定されるものではなく、如何なる角度であっても構わない。好ましい角度の範囲としては約15度〜75度の範囲や30度〜60度の範囲などが考えられる。
第2実施例の燃料電池車110では、放出口164を運転席側の前輪のフェンダの後部内側に設けたが、運転席側の前輪のフェンダの前部内側に設けたり、運転席側の後輪のフェンダの前部や後部の内側に設けたり、助手席側の前輪のフェンダの前部や後部の内側あるいは助手席側の後輪のフェンダの前部や後部の内側に設けるものとしても構わない。また、放出口164をフェンダ以外の部位に設けるものとしても差し支えない。
次に、本発明の第3実施例の燃料電池車210について説明する。図8は第3実施例の燃料電池車210における放出口264の取り付け位置を説明する説明図である。第3実施例の燃料電池車210は、バッファタンク62b,62cを備えない点やバッファタンク62aに蓄えられた水を外部に放出する放出口264の配置が異なる点とを除いて第1実施例の燃料電池車10と同一の構成をしている。従って、重複した説明を避けるため、第3実施例の燃料電池車210の構成のうち第1実施例の燃料電池車10の構成と同一の構成については同一の符号を付し、その図示や詳細な説明については省略する。
第3実施例の燃料電池車210では、バッファタンク62aに管路263により接続された放出口264は、運転席側の前輪の懸架装置におけるばね下部材を構成するロアアーム282にエアダム283を用いて取り付けられている。図9は図8におけるA−A断面を拡大して例示する拡大断面図であり、図10は図8におけるB−B断面を拡大して表示する拡大断面図である。エアダム283は、図示するように、ロアアーム282への取り付け位置までの環状部284と、その下側の半円部285とにより構成されている。環状部284は、略半円形の断面をしており、その直径近傍の取付部284aの内側に放出口264が取り付けられている。また、取付部284aの外側はロアアーム282に取り付けられている。環状部284の車両前方側(図9中左側)には車両の前方からの風(走行風)の方向を斜め下方向に変更するよう屈曲部284bが形成されている。エアダム283の半円部285は、車両の前方からの風(走行風)が放出口264から放出された直後の水に当たらないように放出口264の車両前方を覆うように配置されている。
次に、こうして構成された第3実施例の燃料電池車210における放出口264からの放水の様子について説明する。走行中に放出口264から放出された水は、エアダム283の半円部285の下端に至るまでは、半円部285によって囲まれていることから走行風の影響は受けず、車両に対して鉛直直下方向に落下する。半円部285の下端以降に落下した水は、走行風の影響を受けることになるが、放出した水に直接影響を与える位置の走行風は、図9に示すように、エアダム283の屈曲部284bの存在により鉛直下向きの成分を持つようにその方向が変えられるから、水には鉛直下向きの力が作用するようになる。このため、水の落下速度は大きくなり、落下した水は迅速に路面に至るようになる。また、放出口264は路面の凹凸に伴って車輪と共に上下運動する懸架装置のばね下部材を構成するロアアーム282に取り付けられているから、放出口264から放出された水は迅速に路面に到達する。
以上説明した第3実施例の燃料電池車210によれば、路面の凹凸に伴って車輪と共に上下運動する懸架装置のばね下部材を構成するロアアーム282に放出口264を取り付けることにより、放出口264から放出された水を迅速に路面に到達させることができる。この結果、車両から放出された水が路面に到達するまでに走行風によって巻き上げられるのを抑制することができる。しかも、エアダム283により放出口264から放出された水の放出直後における走行風の影響を抑止することができる。この結果、放出された水を迅速に路面に到達させることができる。さらに、エアダム283の半円部285の下端を超えて落下した水に対して鉛直下向きの成分を持つ走行風が影響するようにエアダム283を構成したから、放出した水が路面に到達するまでの時間を短くすることができる。この結果、車両から放出された水が路面に到達するまでに走行風によって巻き上げられるのを抑制することができる。これらの結果、後方や側方を走行する車両に放出した水が飛散してかかる等の不都合を抑制することができる。
第3実施例の燃料電池車210では、放出した水に直接影響を与える位置の走行風が鉛直下向きの成分を持つように屈曲部284bを設けたが、屈曲部284bを設けず、放出した水に直接影響を与える位置の走行風が鉛直下向きの成分を持たないようにしても差し支えない。
また、第3実施例の燃料電池車210では、放出口264から放出した直後の水に走行風の影響が生じないようにエアダム283を設けるものとしたが、こうしたエアダム283を設けないものとしても差し支えない。
第3実施例の燃料電池車210では、放出口264を運転席側の前輪の懸架装置のばね下部材を構成するロアアーム282に取り付けたが、放出口264を運転席側の後輪の懸架装置のばね下部材を構成するロアアームに取り付けるものとしたり、放出口264を助手席側の前輪または後輪の懸架装置のばね下部材を構成するロアアームに取り付けるものとしても差し支えない。この場合、放出口264を、運転席側の前輪の懸架装置のばね下部材を構成するロアアーム282と助手席側の前輪の懸架装置のばね下部材を構成するロアアームとに取り付けるなど、複数取り付けるものとしてもよい。
次に、本発明の第4実施例の燃料電池車310について説明する。図11は第4実施例の燃料電池車310に搭載される機器の平面配置の一例を示す平面配置図であり、図12は第4実施例の燃料電池車310における気液分離器348の配置の一例を示す側面配置図であり、図13は第4実施例の燃料電池車310に搭載された燃料電池スタック22を中心とする燃料電池システム320の構成の概略を示すシステム構成図である。第4実施例の燃料電池車310が搭載する燃料電池システム320は、図13に示すように、空気給排系40における排気が異なる点と希釈器61に空気を導入して希釈する点を除いて第1実施例の燃料電池車10が搭載する燃料電池システム20と同一の構成をしている。従って、重複した説明を避けるため、第4実施例の燃料電池車310が搭載する燃料電池システム320の構成のうち第1実施例の燃料電池車10が搭載する燃料電池システム20の構成と同一の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明については省略する。なお、第4実施例の燃料電池車310の燃料電池システム320以外の構成についても第1実施例の燃料電池車10が備える構成と同一の構成については同一の符号を付して用いる。
第4実施例の燃料電池車310が搭載する燃料電池システム320は、図13に示すように、燃料電池スタック22からの発電に伴う生成水を水蒸気として含む排ガスは、加湿器46に供給されてエアコンプレッサ44により加圧され供給管42によって燃料電池スタック22に供給される空気を加湿し、その後、図11および図12に示すように、排気管347によって運転席側の後輪近傍に配置された気液分離器348に導かれ、気液分離が行なわれて排気屈曲管349を介して大気に開放される。
図14に気液分離器348と排気屈曲管349の構成の一例を示す。気液分離器348は、リボン式の気液分離器として構成されており、排気管347により導かれた排ガスが螺旋状に旋回するようにその内部がねじれている。即ち、排ガスを螺旋回させることによって水滴に遠心力を作用させ、この力により水滴を壁面に収集することにより気液分離するのである。従って、気液分離器348により分離される気体は、水蒸気や微小な液滴としての水を含むものとなる。排気屈曲管349は、気液分離器348の取り付け部から直線上に延びた後に鉛直下方に屈曲するように形成されていると共にこの屈曲部を路面に対して略水平にカットするように排気口349aが形成されている。排気屈曲管349の排気口349aは、図11および図12に示すように、排出される水に対する走行風の影響が小さくなるよう運転者側の後輪の後部に配置されている。
次に、こうして構成された第4実施例の燃料電池車310における水の放出の様子について説明する。排気管347により気液分離器348に導かれた排ガス中の水は、遠心分離作用により気液分離器348の壁面に収集され、排ガスの流れによって排気屈曲管349の壁面を後方に移動する。こうして移動する水は、その表面張力と排ガスの流れにより、排気口349aの最後部に集合して路面に向けて放出される。気液分離器348で分離されたガスは、排気口349aのほぼ全体から排気口349aの最後部から放出された水と略同一の方向に向けて排出される。排気口349aは、前述したように、放出される水に対する走行風の影響が小さくなるように運転者側の後輪の後部に配置されているが、走行風の影響を全く受けない訳ではない。排気口349aから排出された水と排ガスと走行風との関係を説明する説明図を図15に示す。図示するように、排気口349aのほぼ全体から排出される排ガスは、排気口349aの最後部から放出された水に対して走行風を遮るエアカーテンの役目をする。このため、排気口349aから排出された水が走行風によって巻き上げられるのが抑制される。こうした排ガスによるエアカーテンは、放出された水の走行風による運動を規制するものとも言うことができる。
以上説明した第4実施例の燃料電池車310によれば、遠心分離作用により気液分離する気液分離器348と鉛直下方に屈曲すると共にこの屈曲部を路面に対して略水平にカットするように形成された排気口349aを有する排気屈曲管349とを用いることにより、分離した水を排気口349aの最後部から放出する吐共に排気口349aの全体から排ガスを放出することができる。このように水と排ガスを放出することにより、放出された排ガスは放出された水に対して走行風を遮るエアカーテンのように機能するから、放出された水が走行風によって巻き上げられるのを抑制することができる。しかも、排気口349aを走行風の影響が小さな運転者側の後輪の後部に配置したから、排気口349aから放出される水が走行風に巻き上げられるのを更に抑制することができる。これらの結果、後方や側方を走行する車両に放出した水が飛散してかかる等の不都合を抑制することができる。
第4実施例の燃料電池車310では、鉛直下方に屈曲すると共にこの屈曲部を路面に対して略水平にカットするように形成された排気口349aを有する排気屈曲管349を用いるものとしたが、気液分離器348からの水と排ガスとを略水平に鉛直下方に屈曲することなく運転者側の後輪の後部に導くと共に閉口した端部近傍に下部に排気口が形成された排気管を用いるものとしてもよい。この場合でも、気液分離器348により分離された水は排ガスの流れによって排気管の壁面を後方に移動すると共に排気口の最後部近傍から放出され、排ガスは閉口した端部により排気口から鉛直下向きの成分をもって排出されるから、第4実施例の燃料電池車310と同様の効果を奏することができる。なお、排気口は、閉口した端部の下部を含むように形成してもよいし、端部から若干離れた部位の下部に形成するものとしてもよい。
第4実施例の燃料電池車310では、気液分離器348により分離した水が排ガスの流れによって排気口349aの最後部から放出されると共に排気口349aのほぼ全体から排ガスが放出されるように排気屈曲管349の形状を構成したが、図15に示すように、放出された水に対して走行風を遮るように排ガスが放出されればよいから、例えば、図16の変形例に示すように、気液分離器348Bにより分離した排ガスと水とをそれぞれ排ガス管349Bと放水管349bとによって導き、車両の進行方向に対して放水管349bの放出口が排ガス管349Bの放出口の後方になるよう放水管349bと排ガス管349Bとを配置して水と排ガスとを放出するものとしてもよい。この場合、水の放出の方向と排ガスの放出の方向とが略同一方向となるのが望ましい。また、放出された水に対して走行風を遮る気体は燃料電池スタック22からの排ガスである必要はなく、空気を用いて放出された水に対する走行風を遮るものとしてもよい。例えば、図17の変形例に示すように、車両前方からの走行風を導くダクト350の空気の放出口を気液分離器348Cからの水を放出する放水管349cの放出口の前方に配置するものとしてもよい。
このように、気液分離器348により分離されて放出された水に対して走行風を遮るように排ガスや空気を用いればよいから、図18の説明図に示すように、放出された水の周囲を取り囲むようにして排ガスを放出したり、空気を導くものとしてもよい。例えば、図19の変形例に示すように、気液分離器348Dにより分離した排ガスと水とをそれぞれ排ガス管349Dと放水管349dとによって導き、放水管349dの放出口が排ガス管349Dの放出口の中央となるよう配管349D,349dを配置して水と排ガスとを放出するものとしてもよいし、図20の変形例に示すように、気液分離器348Eにより分離した水を放出する放水管349eの放出口が車両前方からの空気を導くダクト350Eの放出口の中央となるよう放水管349eとダクト350Eとを配置して水を放出するものとしてもよい。さらに、図21の変形例に示すように、気液分離器348Fにより分離した水を放出する放水管349fの放出口が同じく気液分離器348Fにより分離した排ガスを放出する排ガス管349Fの放出口の中央となると共にこの排ガス管349Fの放出口が車両前方からの空気を導くダクト350Fの放出口の中央となるよう放水管349fと排ガス管349Fとダクト350Fとを配置するものとしてもよい。この場合、気液分離器348Fにより分離されて放出された水は、図22の説明図に示すように、排ガスと空気とにより二重のエアカーテンをもって走行風から遮られることになる。こうすれば、排ガス中に含まれる微小な液滴としての水をも走行風に巻き上げられるのを抑制することができる。
また、気液分離器348により分離され放出された水に対して走行風を遮るようにすればよいから、気液分離器348により分離された排ガスや空気以外の気体を用いて放出された水に対する走行風を遮るものとしてもよい。例えば、図23および図24に例示する変形例の燃料電池車310Gに示すように、燃料電池スタック22を冷却するラジエータ356をそのファンによる風が鉛直下方に向くように車両の床近傍に配置し、気液分離器348Gにより分離した水の配管349gの放出口をラジエータ356のファン風の中央となるよう配置するものとしてもよい。こうすれば、ラジエータ356のファン風により気液分離器348Gにより分離して放出された水に対する走行風を遮ることができる。なお、この場合、気液分離器348Gにより分離した排ガスは、その排ガス管349Gにより車両後方から放出されることになる。
さらに、気液分離器348により分離されて放出された水に対して走行風を遮るように排ガスや空気を用いればよいから、排ガスや空気の放出口の断面形状は円形である必要はなく、断面形状は如何なる形状であっても差し支えない。
第4実施例の燃料電池車310では、加湿器46からの排ガスを気液分離器348で気液を分離し、分離した水と排ガスとを運転席側の後輪の後方から放出するものとしたが、分離した水と排ガスとを放出する位置は運転席側の後輪の後方に限られず、例えば、運転席側の後輪の前方や助手席側の後輪の後方あるいは前方,運転席側あるいは助手席側の前輪の後方また前方,車両の中央後部あるいは中央前部など、如何なる位置としても構わない。
第4実施例の燃料電池車310では、加湿器46からの排ガスを気液分離器348により気液分離し、分離され放出された水に対して走行風が遮られるよう排ガスを放出するものとしたが、気液分離器348を備えず、加湿器46からの水を含む排ガスをそのまま放出すると共にこの排ガスに対して走行風が遮られるよう空気を調整するものとしてもよい。例えば、図25の変形例に示すように、加湿器46からの排気管347Hの放出口が車両前方からの空気を導くダクト350Hの放出口の中央となるよう排気管347Hとダクト350Hとを配置して水を含む排ガスを放出するものとしてもよい。この場合、図26の説明図に示すように、水を含む排ガスは、周囲の空気により走行風が遮られる。
次に、本発明の第5実施例の燃料電池車410について説明する。図27は第5実施例の燃料電池車410の空気給排系40における放出系の平面配置の一例を示す平面配置図である。第5実施例の燃料電池車410が搭載する燃料電池システムは、空気給排系40における排気が異なる点とを除いて第4実施例の燃料電池車310と同一の構成をしている。従って、重複した説明を避けるため、第5実施例の燃料電池車410の構成のうち第4実施例の燃料電池車310の構成と同一の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明については省略する。
第5実施例の燃料電池車410が搭載する燃料電池システムは、図13に例示した第4実施例の燃料電池車310が搭載する燃料電池システム320と同様に、燃料電池スタック22からの発電に伴う生成水を水蒸気として含む排ガスは、加湿器46に供給されてエアコンプレッサ44により加圧され供給管42によって燃料電池スタック22に供給される空気を加湿し、その後、排気管447によって運転席側の後輪近傍に導かれ、放出管450から大気に開放される。
図28は、放出管450の構造と機能とを説明する説明図である。図28中、上部は放出管450を上から見た平面図であり、中央は放出管450を横から見た際の断面図であり、下部は下方放出部452から放出される水と上方放出部454から放出される排ガスと走行風との関係を説明する説明図である。放出管450は、図示するように、排気管447から下方に折れ曲がって後方斜め下側に水と排ガスとを放出する下方放出部452と、この下方放出部452の上部から上に分岐して下方放出部452と並行になるように屈曲しその開口面積を順次大きくして後方斜め下側に排ガスを放出する上方放出部454とから構成されている。
次に、こうして構成された第5実施例の燃料電池車410における水の放出の様子について説明する。加湿器46から排気管447を流れる排ガスは排気管447内でその一部が気液分離する。分離した水は、排気管447の下部を排ガスの流れやその流下によって放出管450に流れ、下方放出部452から放出される。分離した排ガスは、排気管447を流れ、その後、放出管450内で下方放出部452と上方放出部454とに分離して放出される。従って、水の殆どは下方放出部452から放出され、排ガスは下方放出部452と上方放出部454とから放出されることになる。いま、走行している車両の後部の床下から水を滴下したときを考える。通常は、滴下直後の水はその一部が走行風によって巻き上げられ、残余が路面に至る。そして、路面に至った水の一部は路面で飛び散り、その多くが走行風により巻き上げられる。第5実施例の燃料電池車410では、放出管450の上方放出部454から下方放出部452から放出された水の後方に幅広のエアカーテンを形成するよう排ガスが放出されるから、この排ガスによるエアカーテンによって落下中の水に対する走行風の影響は小さくなる。また、この排ガスによるエアカーテンによって路面に至って飛び散った水が走行風により巻き上げられるのが抑制される。こうした排ガスによるエアカーテンは、路面に至ってからの水の運動を規制するものとも言うことができる。
以上説明した第5実施例の燃料電池車410によれば、下方に折れ曲がって後方斜め下側に放出する下方放出部452と、この下方放出部452の上部から上に分岐して下方放出部452と並行になるように屈曲しその開口面積が順次大きくなって後方斜め下側に放出する上方放出部454とにより放出管450を構成することにより、下方放出部452から水を放出すると共にこの放出された水の後方に幅広のエアカーテンが形成されるよう上方放出部454から排ガスを放出することができる。このように排ガスによるエアカーテンを形成することにより、落下中の水に対する走行風の影響を小さくすることができると共に路面に至って飛び散った水が走行風により巻き上げられるのを抑制することができる。この結果、後方や側方を走行する車両に放出した水が飛散してかかる等の不都合を抑制することができる。
第5実施例の燃料電池車410では、排ガスにより放出された水の後方に幅広のエアカーテンを形成するために、下方放出部452と上方放出部454とからなる放出管450を備えるものとしたが、排ガス以外の気体、例えば空気により放出された水の後方にエアカーテンを形成するものとしてもよい。この場合、図29の変形例に示すように、排気管447をそのまま延長した形状の放出管450Bと、この放出管450Bの後方に車両前方から導いた空気により幅広のエアカーテンを形成するダクト460とを備えるものとすればよい。
第5実施例の燃料電池車410では、加湿器46からの排ガスを気液分離器を用いずに排気管447により放出管450に導いて大気に放出するものとしたが、加湿器46からの排ガスを気液分離器により気液を分離して放出するものとしてもよい。この場合、図30の変形例に示すように、排気管447に気液分離器448Cを取り付け、気液分離器448Cにより分離した水を放出する放水管456と、放水管456の放出口の後方に気液分離器448Cにより分離した排ガスにより幅広のエアカーテンが形成されるよう排ガスを放出する排ガス管458とを備えるものとしたり、図31の変形例に示すように、排気管447に気液分離器448Dを取り付け、気液分離器448Dにより分離した水を放出する放水管456と、放出管456の放出口の後方に車両前方から導いた空気により幅広のエアカーテンを形成するダクト460とを備えるものとすればよい。
第5実施例の燃料電池車410では、放出された水の後方に幅広のエアカーテンを形成するものとしたが、放出された水に対する走行風の影響を小さくしたり、路面に至って飛び散った水が走行風により巻き上げられるのを抑制できればよいから、放出された水の後方以外の部位にエアカーテンを形成するものとしてもよい。例えば、図32の変形例に示すように、車両にとって排気管447からの放出口の内側にエアカーテンを形成するものとしたり、図33の変形例に示すように、車両にとって排気管447からの放出口の外側にエアカーテンを形成するものとしてもよい。これらの場合、エアカーテンは、排ガスによって形成するものとしてもよいし、空気によって形成するものとしてもよい。このように、エアカーテンを形成する位置は放出された水の近傍であればよい。また、放出された水の後方と一方または両方の側方にエアカーテンを形成するなど、放出された水を囲むようにエアカーテンを形成するものとしてもよい。
第5実施例の燃料電池車410では、空気給排系40の排ガスを排気管447によって運転席側の後輪近傍に取り付けられた放出管450に導き、この放出管450から外部に放出するものとしたが、空気給排系40の排ガスを助手席側の後輪近傍から放出するものとしたり、空気給排系40の排ガスを車両の後部中央から放出するものとしても構わない。
次に、本発明の第6実施例の燃料電池車510について説明する。図34は第6実施例の燃料電池車510に搭載される機器の平面配置の一例を示す平面配置図であり、図35は第6実施例の燃料電池車510における排ガス系の配置の一例を示す側面配置図であり、図36は第6実施例の燃料電池車510に搭載された燃料電池スタック22を中心とする燃料電池システム520の構成の概略を示すシステム構成図である。第6実施例の燃料電池車510が搭載する燃料電池システム520は、図36に示すように、空気給排系40における排気が異なる点を除いて図13に例示した第4実施例の燃料電池車310の燃料電池システム320と同一の構成をしている。従って、重複した説明を避けるため、第6実施例の燃料電池車510の燃料電池システム520の構成のうち第4実施例の燃料電池車310の燃料電池システム320の構成と同一の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明については省略する。なお、第6実施例の燃料電池車510の燃料電池システム520以外の構成についても第4実施例の燃料電池車310が備える構成と同一の構成については同一の符号を付して用いる。
第6実施例の燃料電池車510が搭載する燃料電池システム520は、図36に示すように、燃料電池スタック22からの発電に伴う生成水を水蒸気として含む排ガスは、加湿器46に供給されてエアコンプレッサ44により加圧され供給管42によって燃料電池スタック22に供給される空気を加湿し、その後、図34および図35に示すように、排気管547によって運転席側の後輪近傍に配置された放出機構550に導かれ、この放出機構550から外部に放出される。
図37に放出機構550の構成と排ガスの放出の様子を示す。図37(a)は燃料電池スタック22からの排ガス流量が少ないときの排ガスの放出の様子を示し、図37(b)は燃料電池スタック22からの排ガス流量が多いときの排ガスの放出の様子を示す。放出機構550は、下側を約45度の角度をもって切り落とした形状に端部を加工し略水平に配置して排気管547に接続された固定管551と、取り付け端部を約45の角度をもって切り落とした形状に加工した短管の可動管552とを備え、固定管551の端部の先端と可動管552の端部の先端とを回転可能にヒンジ553により取り付けた構成をしている。可動管552は、その固定管551からのガスの吐出力によってヒンジ553を中心として回転可動する。即ち、可動管552は、固定管551からのガス流量が多くなってガスの吐出力が大きくなるに従ってガスの放出方向を鉛直下方の方向から水平方向に変更するのである。なお、可動管552が可動する方向は、図34の配置から解るように、車両の側方向の成分と後方向の成分とを有する方向となる。
次に、こうして構成された第6実施例の燃料電池車510における排ガスや燃料電池スタック22により生成された水の放出の様子について説明する。燃料電池スタック22からの生成水を含む排ガスは、前述したように、加湿器46でエアコンプレッサ44からの空気を加湿した後に排気管547を流れて放出機構550から放出される。このとき、燃料電池スタック22の負荷が高いときには燃料電池スタック22から排出される生成水や排ガス流量が多くなる。従って、燃料電池スタック22が低負荷で運転されているときには、排ガス流量が少ないため、可動管552は鉛直下方に向いた状態で生成水を排ガスと共に外部に放出し、燃料電池スタック22が高負荷で運転されているときには、排ガス流量が多いため、可動管552は車両の側後方の水平方向に向けて可動した状態で生成水を排ガスと共に外部に放出する。燃料電池スタック22を高負荷で運転する状態は、車両の走行状態としては大きなエネルギが必要なときであるから、車両が比較的高速で走行しているときや低速であっても大きな加速度で加速しているときである。逆に、燃料電池スタック22を低負荷で運転する状態は、車両の走行状態としては小さなエネルギしか消費していないときであるから、停車状態を含めて車両が比較的低速で走行しているときや減速しているときである。従って、停車状態を含めて車両が比較的低速で走行しているときや減速しているときには、燃料電池スタック22からの生成水を鉛直下方に向けて外部に放出し、車両が比較的高速で走行しているときや低速であっても大きな加速度で加速しているときには燃料電池スタック22からの生成水を側後方の水平方向の成分をもって外部に放出することになる。走行中に水を車両の側方に向けて放出すれば、走行風の影響をあまり受けないようにすることができるから、放出された水が走行風により巻き上げられるのを抑制することができ、走行中に水を車両の後方に向けて放出すれば、放出された水の路面に対する相対速度を小さくすることができるから、路面に到達したときに水が飛び散るのを抑制することができる、このことを考えれば、走行中に燃料電池スタック22からの生成水を側後方の水平方向の成分をもって外部に放出することにより、放出した水が路面に到達するまでに走行風によって巻き上げられたり、放出した水の多くが路面に到達したときに飛び散って走行風に巻き上げられるのを抑制することができる。また、車両が停車しているときや低速で走行しているときに燃料電池スタック22からの生成水を鉛直下方に向けて外部に放出することにより、放出した水が路肩を歩いている人や建造物にかかるのを抑制することができる。
以上説明した第6実施例の燃料電池車510によれば、燃料電池スタック22からの排ガス流量が少ないときには燃料電池スタック22により生成された水と排ガスとを鉛直下方に向けて外部に放出すると共に燃料電池スタック22からの排ガス流量が多いときには燃料電池スタック22により生成された水と排ガスとを側後方の水平成分をもった方向に向けて外部に放出する放出機構550を備えることにより、放水した水が路肩を歩いている人や建造物にかかるのを抑制することができると共に放出した水が走行風により飛散して巻き上げられるのを抑制することができる。しかも、放出機構550を走行風の影響が小さな運転者側の後輪の後部に配置したから、放出機構550から放出される水が走行風に巻き上げられるのを更に抑制することができる。これらの結果、後方や側方を走行している車両に放出した水が飛散してかかる等の不都合を抑制することができる。
第6実施例の燃料電池車510では、放出機構550を固定管551の端部に回転可動自在に可動管552を取り付けて構成したが、図38の変形例の放出機構550Bに示すように、固定管551Bに蛇腹状のフレキシブル管552Bを取り付け、ガス流量が略0のときにフレキシブル管552Bの開口端が鉛直下向きとなると共にガス流量が多いときにガスの吐出力によりフレキシブル管552Bが略水平に持ち上げられるよう固定管551Bとフレキシブル管552Bとに張力を作用させるバネ554を取り付けた構成としてもよい。
第6実施例の燃料電池車510では、燃料電池スタック22により生成された生成水と排ガスとが排ガス流量に応じて車両の側方向の成分と後方向の成分とを有する方向に放出されるよう放出機構550を取り付けるものとしたが、燃料電池スタック22により生成された生成水と排ガスとが排ガス流量に応じて車両の側方向の成分だけを有する方向に放出されるよう放出機構550を取り付けるものとしてもよいし、燃料電池スタック22により生成された生成水と排ガスとが排ガス流量に応じて車両の後方向の成分だけを有する方向に放出されるよう放出機構550を取り付けるものとしてもよい。
第6実施例の燃料電池車510では、燃料電池スタック22により生成された生成水と排ガスとを運転席側の後輪の後方から放出するものとしたが、燃料電池スタック22により生成された生成水と排ガスとを放出する位置は運転席側の後輪の後方に限られず、例えば、運転席側の後輪の前方や助手席側の後輪の後方あるいは前方,運転席側あるいは助手席側の前輪の後方また前方,車両の中央後部あるいは中央前部など、如何なる位置としても構わない。
次に、本発明の第7実施例の燃料電池車510について説明する。 図39は、第7実施例としての車両1010の概略構成を示す説明図である。車両1010は、後部の燃料電池室1012に搭載された燃料電池1020を電源とし、モータ1030の動力によって駆動する。モータ1030は種々のタイプを適用可能であるが、本実施例では、同期電動機を用いるものとした。燃料電池1020から出力される直流は、インバータ1031によって三層交流に変換される。モータ1030は、この三層交流によって駆動される。モータ1030の動力は、回転軸1032を介して車輪1033に伝達され、車両1010を駆動する。
燃料電池1020は、水素と酸素の電気化学反応によって発電する。燃料電池1020には、種々のタイプを適用可能であるが、本実施例では、固体高分子型を用いた。酸素極には、供給管1024を介して外部から空気が供給される。水素は、屋根上の水素タンク室1011に設置された複数の水素タンク1050から供給管1022を介して順次、供給される。
インバータ1031など、車両1010に搭載された各機器の動作は、制御ユニット1040によって制御される。制御ユニット1040は、内部にCPU、ROM、RAMなどを備えたマイクロコンピュータとして構成されており、ROMに記憶された制御プログラムに従って、各ユニットの動作、および運転席1014に設けられた計器板1060への表示を制御する。
図の下方には、燃料電池室1012の酸素極の排気系を拡大図で示した。燃料電池1020の酸素極からの排気には、発電時の反応によって生じた生成水が含まれている。この排気は、配管1024Pを介して気液分離器1021に運ばれ、排気中の生成水が分離された後、排気管1025から排出される。分離された生成水は、ドレイン1026を介して車両1010の下面に設けられたバッファタンク1027に貯留される。バッファタンク1027内の生成水は、排出管1028によって外部に排出される。排出管1028はバッファタンク1027の前方に取り付けられている。排出管1028からの円滑な排水を実現するよう、バッファタンク1027の下面は後方の方が前方よりも高くなっている。排出管1028の開口端の路面からの高さH(以下、「開口端高さ」と称する)は、車両1010の走行中に気流の影響によって生成水が飛散しない程度に十分低く設定されている。
本実施例では、水素極からの排気は、発電で未消費の残留水素の有効活用を図るため、上述の排気系を介さず、供給管1022に循環させる。水素極からの排気も併せて、図中の排気系から排気するようにしても構わない。
図40はバッファタンク1027の作用を示す説明図である。図40(a)は、車両1010が停車している状態を示した。この状態では、バッファタンク1027に貯留している生成水は排出管1028から車外に排出される。但し、停車中なので、気流の影響で生成水が飛散することはない。
図40(b)は、車両1010が加速している状態を示した。この状態では、加速に伴う慣性力Aの作用によって、バッファタンク1027に貯留している生成水は、図示するように後方に押しやられる。この結果、生成水の水面が、排出管1028の取り付け部から離れるため、生成水の排出が抑制される。加速時には、車両下面に気流が生じているが、生成水の排出が抑制されるため、気流によって生成水が飛散する可能性も抑制される。
図40(c)は、車両1010が減速している状態を示した。この状態では、減速に伴う慣性力Aの作用によって、バッファタンク1027に貯留している生成水は、図示するように前方に押しやられ、排出管1028からの生成水の排出が促進される。車両下面には気流が生じているが、減速時には気流が弱まりつつある状態なので、生成水の飛散を比較的抑えることができる。排出管1028の開口端高さは、このような減速時における排出でも、生成水の飛散を抑えることが可能な程度に低く設定しておくことが好ましい。
以上で説明した第7実施例の車両1010によれば、排気系に設けられたバッファタンク1027および排出管1028の作用により、加速時における生成水の排出を抑制し、減速時における生成水の排出を促進することができる。走行中の車両は、一定速度で走行し続けることはあまり多くなく、加減速が行われることが多い。従って、減速時に生成水を十分に排出するとともに、加速時の排出を抑制することにより、走行中における生成水の飛散を後続車両の走行に支障を与えない程度には抑制することができる。
図41は第8実施例としての排気系の構造を示す説明図である。第8実施例では、バッファタンク1027の下面に、リード弁1028Vを備えた排出管1028Aを設けた。リード弁1028Vは、車両走行中の気流のラム圧、即ち気流をせき止めた時の圧力に応じて開閉する弁機構である。
図の下部に、リード弁1028Vの動作を説明するためのグラフを示した。排出管1028Aから排出された生成水は、車速が増して気流が速くなるにつれて、激しく飛散するようになる。ある速度Vrを超えると、飛散によって後続車両の走行に支障を与えるおそれが生じるため、水滴の飛散を抑制することが望まれるようになる。本実施例では、水滴の飛散を抑制する設計速度Vdを、この速度Vrよりも若干、低い値に設定した。
ラム圧は、曲線Pで示す通り、車速の2乗に比例して増加する。この曲線Pを参照することで、設計速度Vdに対応するラム圧Pdが求められる。本実施例では、ラム圧が値Pdよりも小さい場合には開弁し、Pd以上の範囲で閉弁するようリード弁1028Vの動作圧力を調整した。
このように調整することにより、第8実施例の車両では、車速が設計速度Vdを超えた範囲でリード弁1028Vが閉じられるため、生成水の排水を停止することができる。従って、後続車に支障を与える程の生成水の飛散を回避することができる。
第8実施例においては、排出管1028Aをバッファタンク1027の下部に設けたが、第1実施例と同様、前方に設けても構わない。また、車速がVdを超えた時点で、必ずしもリード弁1028Vを完全に閉弁する必要はなく、車速に応じて弁の開度が連続的または段階的に低減するような機構としてもよい。
第8実施例におけるリード弁1028Vに代えて電磁弁を用いても良い。この場合には、電磁弁の動作を制御するための制御装置を併せて設け、この制御装置に車速が設計速度Vdを超えた時点で、電磁弁の開度を低減または閉弁する制御を実行させればよい。
図42は変形例としての排気系の構造を示す説明図である。変形例では、バッファタンク1027Aの下面が、後方の方が前方よりもLだけ低くなる形状とした。こうすることにより、図42(a)に示すように、定常状態であっても、バッファタンク1027A内の生成水は排出管1028から離れるようになるため、生成水の排出が抑制される。従って、車両が定常走行している場合の排水、ひいては生成水の飛散を抑制することができる。
車両の加速時には図42(b)に示すように、慣性力Aの作用によって、やはり生成水の排出は抑制される。減速時には図42(c)に示すように、慣性力Aの作用によって、生成水が前方に押しやられるため、生成水が排出される。車両の走行時には必ず減速が行われる期間が存在するため、定常走行時における排水が抑制されたとしても、バッファタンク1027Aにおける生成水の貯留機能に支障が生じることはない。
図43は変形例としての排気系の構造を示す説明図である。変形例では、バッファタンク1027に、前方に開口する剛性のある排出管1028Bを設けた。図の例では、排出管1028Bの前面の断面積S0はバッファタンク1027への取り付け部の断面積S1よりも大きくなっている例を示した。排出管1028Bは、面積S0、S1が等しい形状、即ち円筒状としても構わない。
この変形例の構成によれば、排出管1028Bには、走行中にラム圧が作用する。バッファタンク1027内の生成水は、排出管1028Bを経て前方に流出しようとするから、ラム圧は、この流出を抑制する方向に作用することになる。かかる作用により、第2変形例の構成では、高速走行時における生成水の排水を抑制することができる。
図の下方には、断面積比S0/S1が上述した排水の抑制効果に与える影響を示した。先に説明した通り、生成水の飛散が要求される車速の下限値Vrに基づき設計速度Vdを設定したとする。この時のラム圧は、曲線Pに基づいてPaと求められる。生成水の排出を抑制するためには、このラム圧Paは、バッファタンク1027内の生成水が排出管1028Bから流出しようとする水圧よりも高くなくてはならない。生成水の水圧は、バッファタンク1027内の貯留水の量によって変動するが、例えば、代表的な走行状態で貯留している生成水量に基づいて設定することができる。変形例では、この水圧よりも若干高い範囲でラム圧の設計値Pdを設定した。
一般に管内の圧力は、断面積に応じて変化する。例えば、排出管1028Bの断面積比S0/S1を1以上の値とすることにより、排出管1028Bの取り付け口でのラム圧を、入口での値よりも上昇させることができる。変形例ではこの関係に基づき、設計速度Vdにおけるラム圧Paと、ラム圧の設計値Pdとの圧力比Rd(=Pd/Pa)の値に応じて求められる面積比Sdに従って、排出管1028Bの形状を設定した。こうすることにより、ラム圧で生成水の排水を抑制することが可能となる。
以上説明した実施例では、本発明を燃料電池を電力源として搭載した自動車に適用するものとしたが、自動車は燃料電池を搭載する他に燃料電池以外の電力源、例えば、二次電池やキャパシタなど種々の電力源を搭載するものとしてもよい。また、燃料電池を搭載する自動車に限定されるものではなく、自動車以外の列車などの車両を含む各種の地上移動体に適用するものとしてもよいし、地上移動体以外の移動体に適用するものとしてもよい。
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
本発明は、自動車産業に利用可能である。
10,110,110B,210,310,310G,410,510 燃料電池車、20,320,520 燃料電池システム、22 燃料電池スタック、30 水素供給系、31 高圧水素タンク、32 水素供給流路、33 水素循環路、34 水素ポンプ、38 気液分離器、40 空気給排系、42 供給管、43 マスフローメータ、44 エアコンプレッサ、46 加湿器、48,348,348C〜348G,448C,448D 気液分離器、50 冷却系、52 冷却水循環路、54 冷却水ポンプ、56,356 ラジエータ、60 放出系、61 希釈器、62a〜62c バッファタンク、63,263 管路、64b,64c,164,264 放出口、70 パワーコントロールユニット(PCU)、72 ラジエータ、180 導風路、180B ダクト、282
ロアアーム、283 エアダム、284 環状部、284a 取付部、284b 屈曲部、285 半円部、347,347H,447 排気管、349 排気屈曲管、349a 排気口、349B,349D,349F,349G 排ガス管、349b〜349g 放水管、350,350E,350F,350H ダクト、450,450B 放出管、452 下方放出部、454 上方放出部、456 放水管、458 排ガス管、460 ダクト、547 排気管、550,550B 放出機構、551,551B 固定管、552 可動管、552B フレキシブル管、553 ヒンジ、554 バネ、1010 車両、1011 水素タンク室、1012 燃料電池室、1014 運転席、1020 燃料電池、1021 気液分離器、1022 供給管、1024 供給管、1024P 配管、1025 排気管、1026 ドレイン、1027,1027A バッファタンク、1028,1028A,1028B 排出管、1028V リード弁,1030 モータ、1031 インバータ、1032 回転軸、1033 車輪、1040 制御ユニット、1050 水素タンク、1060 計器板。

Claims (4)

  1. 発電に伴って水を生成する燃料電池を電力源として搭載する移動体であって、
    前記燃料電池により生成された生成水を放出口から外部に放出する放出手段と、
    前記放出口から放出された生成水および/または前記放出口から放出され地面に至った後の生成水が移動体の移動に伴う空気の流れに基づいて後方に飛散するのを抑制する後方飛散抑制手段と、
    を備え、
    前記後方飛散抑制手段は、前記放出口の後方に鉛直下向きの成分を有する気体流を生成する手段である、
    移動体。
  2. 前記後方飛散抑制手段は、移動体の移動に伴う空気の流れを調整することにより前記気体流を生成する手段である請求項1記載の移動体。
  3. 前記空気流影響抑制手段は、移動体からの排気により前記気体流を生成する手段である請求項1記載の移動体。
  4. 前記空気流影響抑制手段は、前記燃料電池からの排気により前記気体流を生成する手段である請求項3記載の移動体。

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