本実施例では、プロジェクタの一実施例として、透過型液晶プロジェクタPに本発明を適用して説明する。図1は、本実施例の液晶プロジェクタPの外観の斜視図、図2は図1の液晶プロジェクタPの概略構成を説明する斜視図、図3は図1の液晶プロジェクタPの平面図、図4は液晶プロジェクタPを分解した状態の外観の斜視図をそれぞれ示している。
本実施例の液晶プロジェクタPは、本体1の内部に、光源2と、図示しない均一照明光学系及び色分離光学系と、光学素子群5と、投写レンズ10と、光学素子群5の冷却装置11とを設けて成る透過型液晶プロジェクタである。本体1は、放熱性に優れた素材、例えば、マグネシウムを素材として構成された略矩形状の筐体である。尚、図2では本体1内に設けられた各部材の説明のため、本体1を透視した状態で示している。即ち、図2において、本体1を破線で示し、本体1内の各部材を実線で示している。また、図3も同様に本体1内部の説明のため、本体1は上方を切断した平断面で示している。
上記光源2は、超高圧水銀ランプなどのランプと、ランプから発散される光(発散光)を前方に出射するためのリフレクタから構成されている。実施例の光源2は、複数(4つ)のランプにそれぞれリフレクタを取り付けて成るもので、本体1内に設けられたランプボックス3内に収容されている。
前記均一照明光学系は、光源2からの出射光を均一な輝度分布の光束とするものであり、インテグレータレンズ、集光レンズ及び全反射ミラー等から構成されている。また、前記色分離光学系は、上記均一照明光学系からの光束を各色R、G、Bの色光に分離するものであり、均一照明光学系からの光束を各色に分離し、分離された各色光束を光学素子群5に導くためのダイクロイックミラーなどにより構成されている。
光学素子群5は、表示素子である3枚の透過型液晶パネル(LCDパネル)6と、各液晶パネルの入射側及び出射側にそれぞれ間隔を存して設けられた偏光板類と、プリズム(ダイクロイッククロスプリズム)7等から構成されている(図3)。液晶パネル6は、上記色分離光学系により分離されて当該各液晶パネルに導かれた光を映像信号に応じて加工(変調)するものである。また、プリズム7は、各色の光を合成して投写光像を形成するものである。このプリズム7は、X状の誘電体多層膜から成る反射面を備えており、当該反射面を介して、各液晶パネル6からの光が単一の光束とされる。尚、前記投写レンズ10は、プリズム7からの投写光像(映像光)をスクリーンに拡大投写するものであり、本体1の壁面に形成された図示しない孔内に着脱可能に配設されている。尚、図2において、24は光源2からの出射光を各液晶パネル6及び偏光板等に導くための光路を被覆する箱体である。即ち、光源2から各液晶パネル6の入射側の偏光板に至るまでに光が通過する経路(光路)は箱体24内に形成されている。
以上の構成で動作を説明すると、光源2からの出射光は、均一照明光学系を介して均一な輝度分布の光束とされ、色分離光学系において各色R、G、Bに分離されて、それぞれ対応するライトバルブとして機能する液晶パネル6に入射側の偏光板を介して導かれる。液晶パネル6に導かれた各光束はそこで映像信号に応じて変調され、出射側の偏光板を経てプリズム7で単一の光束の投写光像とされた後、投写レンズ10によりスクリーンに拡大投写される。
ところで、従来よりプロジェクタでは、光源や光学素子群が発熱源となって本体内が高温状態となるので、本体内に複数のファンを設置して各ファンにより本体外部の空気(外気)を光学素子群及び光源に供給して、放熱させていた。具体的に一例を挙げて説明すると、本体の外部から空気を導入し、この空気を光学素子群に供給して放熱させた後、光学素子群を通過した空気を光源に供給して当該光源を放熱させる。その後、光源にて加熱された空気をファンにより本体外部に放出させていた。
上記光源は数百℃程とかなり高温となるので、液晶パネル通過後の空気を供給することで十分に放熱することが可能である。一方、光学素子群の液晶パネルの使用温度の上限は+70℃乃至+80℃程度と比較的低温であり、当該光学素子群(液晶パネル)を係る上限温度以下となるように冷却する必要がある。このため、光学素子群の放熱量は外気温度に大きく影響されることとなる。即ち、外気温度が低い場合には、光学素子群に供給される外気の温度が低いため、当該外気により十分に放熱させることが可能である。しかしながら、外気温度が高い場合には、ファンの風量を増加するなどして大量の外気を光学素子群に供給しなければ、液晶パネルの温度が使用温度の上限以下となるように維持することができなくなってしまう。これにより、ファンの運転により騒音が増大すると共に、ファンの運転による消費電力が著しく増加する問題が生じていた。
更に、当該本体内で加熱された空気は外部に放出されるが、この放出された空気が再びファンにより吸い込まれる、所謂、放熱後の空気のショートサイクルが発生する問題もあった。この場合、ファンにより吸い込まれる外気は光源と熱交換して加熱された高温であるため、係るショートサイクルが発生すると光学素子群の温度が上昇してしまう恐れがあり、効果的な放熱効果を得ることができなかった。
特に、近年プロジェクタの市場では、高輝度化の要望が強く、上記のような外気により光学素子群を冷却する方法では、光学素子群を十分に冷却することが困難となり、冷却方法の改善が切望されていた。
このような問題を解決するために、プロジェクタ本体内に電子冷却で低温空気を作り出す冷却手段を備えて、この冷却手段により作り出した低温空気を液晶パネル(光学素子群)に供給して、当該光学素子群を冷却するものも提案されているが、係る電子冷却により光学素子群を冷却する冷却手段は、エネルギー効率が悪く、且つ、電子冷却の発熱部が一体に構成されるため、冷却対象付近に外気への放熱手段(ヒートシンクやファン)が必要となり、空間的制約が生じて設計自由度が著しく低下すると云った不都合が生じていた。
そこで、本発明の液晶プロジェクタPは、本体1内に冷却装置11を備える。即ち、液晶プロジェクタPの本体1内には、冷却装置11が設置されている。この冷却装置11は、光学素子群5を冷却するための冷却手段であり、圧縮機12、放熱器14、減圧装置としての膨張弁16及び吸熱器18から冷媒回路が構成されている。本実施例で使用する圧縮機12は、密閉容器12A内に電動要素と、この電動要素により駆動される第1及び第2の圧縮要素を備えて(電動要素及び各圧縮要素は図示しない)、第1の圧縮要素で圧縮された冷媒を密閉容器12A内に吐出した後、第2の圧縮要素に吸い込んで圧縮する内部中間圧型のコンプレッサである。
即ち、圧縮機12の第1の圧縮要素の冷媒吸込側(圧縮機12の入口)には冷媒導入管13が接続され、圧縮機12の第2の圧縮要素の冷媒吐出側(圧縮機12の出口)には放熱器14に至る冷媒吐出管15が接続されている。放熱器14の出口には膨張弁16に至る冷媒配管17が接続されている。また、膨張弁16の出口は冷媒配管19を介して吸熱器18の入口に接続され、当該吸熱器18の出口には圧縮機12の冷媒導入管13が接続されて環状の冷媒回路が構成されている。本実施例の冷却装置11には、冷媒として二酸化炭素冷媒を用いるものとする。
尚、本実施例では冷媒を減圧する減圧装置として膨張弁16を用いるものとしたが、減圧装置は当該膨張弁16に限定されるものでなく、冷媒を減圧することができるものであれば、どのようなものであっても差し支えない。例えば、減圧装置としてキャピラリーチューブを用いるものとしても構わない。更に、圧縮機として密閉容器12A内に第1及び第2の圧縮要素を備えた内部中間圧型の多段圧縮機12を用いるものとしたが、圧縮機は実施例のものに限らず、冷媒を圧縮することができるものであればどのようなものであっても構わない。例えば、内部低圧型の圧縮機や密閉容器内に高圧の冷媒が吐出される内部高圧型の圧縮機であっても良いし、単段の圧縮機、3段以上の圧縮機であっても有効である。また、圧縮形式も特に限定されない。
一方、上記冷却装置11は本体1内に着脱自在に設けられると共に、本体1に取り付けられた状態で、吸熱器18と熱交換した空気を光学素子群5に供給し、冷却可能とされている。ここで、冷却装置11の具体的な構成を図5乃至図7を用いて説明する。図5は冷却装置11の斜視図、図6は冷却装置11の平面図、図7は冷却装置11の一側面図をそれぞれ示している。尚、図5及び図7は、冷却装置11の各部材の説明のため後述する放熱部60を被覆する箱体25及び吸熱器18が設けられた吸熱器側ダクト32及び連結ダクト33とを破線で示している。
各図5乃至図7に示すように冷却装置11の圧縮機12、放熱器14、膨張弁16及び吸熱器18はベース50上に設置されている。即ち、本実施例では冷却装置11が設置されたベース50が本体1内に着脱自在に構成されている。また、本実施例の冷却装置11は、圧縮機12及び放熱器14が設けられた放熱部60と、膨張弁26及び吸熱器18が設けられた空気冷却部62とから成り、空気冷却部62は後述する光学素子群側ダクト31に連結される吸熱器側ダクト32を有し、吸熱器18はこの吸熱器側ダクト32内に設けられている。即ち、本実施例では、ベース50上に冷却装置11の放熱部60と空気冷却部62とが設けられ、空気冷却部62の吸熱器18が吸熱器側ダクト32内に配置されている。
上記放熱部60は、箱体25にて被覆されている。当該箱体25には、放熱器14と膨張弁16とを接続する冷媒配管17を挿通するための開口部25Aと、圧縮機12と吸熱器18とを接続する冷媒導入管13を挿通するための開口部25Bが形成されている。この場合、箱体25の各開口部25A、25Bが形成された側壁面側に空気冷却部62が配置されることとなる。
また、冷却装置11が本体1に取り付けられた状態で後述するカバー20に形成された通気孔21に対応する位置の箱体25の側壁面には箱体25内の圧縮機12及び放熱器14に外気を通風するための通風部としての通風口27が形成されている。更に、通風口27が形成された側壁面に対向する箱体の側壁面には圧縮機12及び放熱器14に通風した外気を放熱部60から排出させるための取出口28が形成されており、当該取出口28に当接して箱体25内に放熱器14のファン14Fが設置されている。本実施例では、箱体25内の放熱部60の通風口27から取出口28に至る経路中に、圧縮機12、放熱器14及びファン14Fが圧縮機12、放熱器14及びファン14Fの順で配置されている。これにより、通風口27から箱体25内の放熱部60に流入した外気が圧縮機12、放熱器14を順次通過した後、ファン14Fに吸い込まれ、取出口28から放熱部60の外部、即ち、箱体25の外部であって本体1内の光源2の位置する側に吐出されることとなる。
また、本体1内の光源2の冷却装置11が設けられる側とは反対側となる側壁面には、本体1内の空気を排出するための排気口1Bが形成されており、この排気口1Bに対応する本体1内には複数(実施例では3機)のファン8が設置されている。各ファン8は、本体1内の空気を吸い込んで、本体1の外部に排出するものである。
即ち、本体1内には、ファン14F及びファン8の運転により通気孔21から外気が導入され、排気口1Bから排出される。具体的に、ファン14F及び各ファン8が運転されると、カバー21に形成された通気孔21から本体1内に外気が吸い込まれる。当該外気は、通風口27から箱体25内の放熱部60に流入し、そこに設けられた圧縮機12、放熱器14を順次通過してファン14Fに吸い込まれる。このように、圧縮機12の周囲に外気を通風させることで、運転により加熱した圧縮機12を冷却することができる。また、圧縮機12を通過した後の外気を放熱器14に流すことで、放熱させることができる。
一方、放熱器14を通過して、ファン14Fに吸い込まれた外気は取出口28より放熱部60から吐出され、本体1内の光源2を通過する。これにより、光源2は通風された外気に熱を放出して冷却される。このとき、光源2は前述したように非常に高温であるため、放熱器14を通過して冷媒により加熱された空気(外気)であっても光源2の温度より極めて低温であるため、当該放熱器14通過後の外気にて十分に冷却することができる。そして、光源2にて高温に加熱された空気は、その後、ファン8に吸い込まれて排気口1Bから本体1の外部に排出される。
尚、前記各図5乃至図7において、40は冷却装置11が載置されたベース50を持ち運びするための取っ手である。また、45は圧縮機12から発生する振動を吸収するための防振材であり、ゴム材などの振動吸収材から成る。即ち、圧縮機12の脚部は防振材45を介してベース50に固定されており、圧縮機12の振動がベースに伝わり難いように構成されている。
ところで、上記ベース50は本体1に対してスライド自在とされている。本実施例では、ベース50の底面に複数のローラ54が取り付けられると共に、当該ベース50の取付位置となる本体1の底面上に、上記各ローラ54に対応するガイドレール52が形成されている。また、ガイドレール52には冷却装置11を本体1の所定の取付位置に保持するための位置決め部53が形成されている。この位置決め部53は、ガイドレール52の一部を凹陥することにより形成されている。
この場合、冷却装置11を本体1に取り付けるには、ベース50の一端側の各ローラ54を本体1に形成された先端側(即ち、図1及び図2では手前側)のガイドレール52上に配置して、当該ベース50を本体1に収納する方向、即ち、ガイドレール52の末端側に動かすと、ローラ54がガイドレール52上を滑動する。そして、冷却装置11が本体1の所定の取付位置に到達すると、各ローラ54がそれぞれ位置決め部53に至り、当該位置決め部53に落ち込むこととなる。これにより、ローラ54の滑動が阻止されて、当該位置決め部53にて安定的に保持することができる。
尚、上述したように本実施例では、ローラ54がガイドレール52上を滑動して、それぞれ位置決め部53に到達すると、滑動が阻止されて、当該位置決め部53にて安定的に保持される、即ち、ローラ54がガイドレール52に形成された位置決め部53にて固定されるものとしたが、係る位置決め部53の保持力(固定力)だけでは不十分である場合には、別途ロック機構を設けて固定するものとしても構わない。
また、上記ベース50が位置する本体1の底面上には複数の防振材55が設けられており、ベース50はこれら防振材55を介して本体1に取り付けられることとなる。この防振材55は、冷却装置11の振動、特に、圧縮機12の振動がベース50を介して本体1に伝達されることを防ぐために設けられたものである。
他方、本体1には当該ベース50上に設けられた冷却装置11を挿脱するための開口1Aが形成され、当該開口1Aが前述したカバー20により開閉自在に閉塞可能に構成されている。
更に、液晶プロジェクタPは、冷却装置11が本体1に取り付けられた状態で、プロジェクタPの重心が本体1の中心、若しくは、その近傍に位置するように冷却装置11の圧縮機12、放熱器14及び吸熱器18を配置するものとする。特に、冷却装置11の各構成部材のうちで最も重量があり、且つ、運転により振動が発生する圧縮機12を本体1の中心軸上、若しくは、その近傍であって、本体1の中心、若しくは、その近傍に配置している。
この場合、本実施例の液晶プロジェクタPにおいて、本体1の中心軸とは投写レンズ10の光軸に平行し、且つ、本体1の中心を通過する線であり、本体1の中心とは、略矩形状の筐体により構成される本体1の対角線が交わる点となる。即ち、本実施例では、図3に示す一点鎖線が本体1の中心軸となり、点Cが本体1の中心となるので、圧縮機12は本体1の中心軸上であって、本体1の中心近傍に配置されている。
このように、液晶プロジェクタPの重心が本体1の中心、若しくはその近傍に位置するように冷却装置11の圧縮機12、放熱器14及び吸熱器18を配置することで、本体1の重量バランスが不安定となることなく、プロジェクタPを設置することができるようになる。
特に、冷却装置11の各構成部材のうちで最も重量があり、且つ、運転により振動が発生する圧縮機12を本体1の中心軸上に配置することで、プロジェクタPの作動動作に悪影響を及ぼす不都合を回避することができる。更に、当該圧縮機12を本体の中心近傍に配置することで、より一層安定性を高めることができる。
一方、前記冷却装置11の空気冷却部62の吸熱器18により冷却された冷気はダクト30を介して光学素子群5に供給されるよう構成されている。ダクト30は、光学素子群5が設けられた前述した光学素子群側ダクト31と、冷却装置11に設けられ、吸熱器18が取り付けられた吸熱器側ダクト32と、両ダクト31、32を連結するための連結ダクト33から成る。即ち、吸熱器側ダクト32が連結ダクト33を介して光学素子群側ダクト31と連結されることとなる。また、このように吸熱器側ダクト32と光学素子群側ダクト31とが連結ダクト33により連結されダクト30が形成された状態で、当該ダクト30は密閉、或いは、半密閉構造を呈する。尚、このダクト30は、光源2から出射され、光学素子群に導かれる光、光学素子群にて加工後に投写レンズ10に送出される投写光像を阻害することのないよう設置されていることは勿論云うまでもない。
上記連結ダクト33は、冷却装置11の振動、特に、冷却装置11の圧縮機12の振動が光学素子群側ダクト31を介してプロジェクタPに伝わる不都合を防ぐためのもので、ゴム等の振動吸収材から成る。
このように、光学素子群側ダクト31と吸熱器側ダクト32とが連結ダクト33を介して連結され、本体1に取り付けられることとなる。これにより、吸熱器18と熱交換した空気を光学素子群5に供給し、冷却することができるのである。
この場合、吸熱器側ダクト32は前述したベース50のスライド動作により、ベース50に設けられた冷却装置11が所定の取り付け位置に到達すると、吸熱器側ダクト32の開口32Aが光学素子群側ダクト31の開口に取り付けられた連結ダクト33内に嵌り込む。これにより、吸熱器側ダクト32は連結ダクト33を介して光学素子群側ダクト31と連結されることとなる。また、これら各ダクト31、32の連結部分である連結ダクト33は、本体1に冷却装置11が取り付けられた状態、即ち、吸熱器側ダクト32が連結ダクト33を介して光学素子群側ダクト31と連結された状態で本体1に形成された前記開口1A内に位置するよう構成されている。
そして、このように冷却装置11が本体1に取り付けられた状態で、吸熱器側ダクト32と光学素子群側ダクト31とは水平方向に並設されると共に、光学素子群5の投写レンズ10とは反対側に圧縮機12及び放熱器14が並設されている。更にまた、本実施例の液晶プロジェクタPでは、冷却装置11が本体に取り付けられた状態で、光学素子群5の投写レンズ10とは反対側の本体1内に圧縮機12、放熱器14及び光源2の順で配置されており、前述したように前記通気孔21からの外気が圧縮機12、放熱器14及び光源2の順で通風されるよう構成されている。
他方、吸熱器側ダクト32の底面は、光学素子群側ダクト31の方向とは異なる方向に低く傾斜している。具体的に、図7に示すように吸熱器側ダクト32の連結ダクト33が設けられる側とは反対側の底面、即ち、光学素子群側ダクト31が位置する側とは反対側の底面には他の面より低く傾斜する傾斜部35が形成されている。当該傾斜部35は吸熱器18にて凝結し、水滴となって降下する結露水が光学素子群5に流れる不都合を防ぐために設けられた結露水受け部である。
即ち、吸熱器18において冷媒と熱交換することで、ダクト30内を循環する空気中に含まれる水分は当該吸熱器18に凝結する。この場合、本実施例の如く略密閉構造を呈したダクト30内に光学素子群5及び吸熱器18を配置した場合であっても、プロジェクタPの1回の使用で数グラム程度の水分が回収される。この吸熱器18にて空気中の水分は凝結し、それが集まると、結露水となり、この結露水が光学素子群5に侵入し、光学素子群5が損傷したり、光源2からの出射光の加工に支障を来すといった問題が生じる恐れがあった。
そこで、吸熱器側ダクト32の底面に、光学素子群側ダクト31の方向とは異なる方向に低く傾斜する傾斜部35を形成することで、吸熱器18から降下した結露水は傾斜部35に流入することとなる。これにより、光学素子群5が設けられた光学素子群側31に吸熱器18からの結露水が侵入することを防止できる。
以上の構成で、本実施例の冷却装置11を用いた光学素子群5の冷却動作を説明する。圧縮機12が駆動されると、冷媒導入管13から密閉容器12A内の低段側となる第1の圧縮要素(図示せず)に低温低圧の冷媒が吸い込まれて、そこで中間圧まで圧縮される。圧縮されて中間圧となった冷媒は密閉容器12A内に吐出される。これにより、密閉容器12A内が中間圧力となる。その後、冷媒は高段側の第2の圧縮要素(図示せず)に吸い込まれて圧縮され、高温高圧となって圧縮機12の外部に吐出される。
そして、圧縮機12から吐出された高温高圧の冷媒は、冷媒吐出管15を介して放熱器14に流入し、そこで、周囲の空気と熱交換して放熱する。放熱器14にて放熱した冷媒は、冷媒配管17を経て膨張弁16に入り、当該膨張弁16を通過する過程で減圧され、この状態で配管19を介してダクト30内に設けられた吸熱器18に流入する。
吸熱器18に流入した冷媒は、そこでダクト30内の空気から熱を奪って蒸発する。一方、吸熱器18にて冷媒により熱を奪われて冷却された空気は、ダクト30内に設置された図示しないファンにより光学素子群5に供給される。これにより、光学素子群5は供給された空気(冷気)に熱を放出して冷却される。光学素子群5により加熱された空気は、その後、吸熱器18に戻り、そこで吸熱器18を流れる冷媒と熱交換して冷却され、再び、光学素子群5に供給される循環を繰り返す。
他方、吸熱器18にてダクト30内の空気と熱交換して蒸発した冷媒は、その後、冷媒導入管13から圧縮機12の第1の圧縮要素に吸い込まれて圧縮されるサイクルを繰り返す。
このように、冷却装置11を本体1内に備えて、吸熱器18と熱交換して、冷却されたダクト30内の空気(冷気)を光学素子群5に供給して冷却することができる。これにより、外気温度に影響されることなく光学素子群5を冷却することが可能となり、光学素子群5を常に最適な一定温度に維持することができるようになる。
また、光学素子群5には吸熱器18と熱交換した冷気を常に供給することが可能となるので、従来の外気を光学素子群に供給していたものと比較して放熱量が著しく改善されるため、本体1に設置されるファンを小型し、設置スペースの縮小を図ると共に、ファンの風量を減らして騒音の低減を図ることができる。更に、電子冷却により光学素子群を冷却するものと比べてエネルギー効率も著しく改善することができる。これにより、エネルギー効率の問題を解消しながら、光学素子群を効率よく冷却することが可能となる。
更にまた、光学素子群5の発熱により加熱された空気と冷却装置11の吸熱器18を流れる冷媒とを熱交換させることで、光学素子群5の熱を冷媒により搬送して、放熱器14に送り、当該放熱器14に通風される外気に放出することができるので、電子冷却により光学素子群5を冷却するものと異なり、空間的なレイアウト設計の自由度も向上する。
特に、本実施例の如く透過型液晶プロジェクタPでは、光学素子群5の液晶パネルとして透過型の液晶パネルが使用されるため、その光路を妨げること無く、液晶パネルを冷却しなければならない。即ち、反射型の液晶パネルを用いた液晶プロジェクタやDLPプロジェクタ(DLP(登録商標))では、液晶パネル(光学素子群)の背面に冷却器等の冷却手段を直接設置して、冷却することが可能であるが、透過型液晶パネルではパネルの背面も光路となるため、パネルに直接冷却手段を取り付けることができず、また、光路の妨げとならない位置に冷却手段を取り付ける必要があった。このため、冷却手段を本体内に配置することが困難であった。
これに対して、本発明によれば冷却装置11を本体1内に備えて、吸熱器18と熱交換して冷却されたダクト30内の空気(冷気)を光学素子群5に供給して冷却することができるので、冷却手段により光路が阻害されることなく効果的に光学素子群5を冷却することが可能となる。特に、吸熱器18を光学素子群5に並設すると共に、光学素子群5の投写レンズ10とは反対側に冷却装置11の圧縮機12及び放熱器14を並設したので、投写レンズ10から投写される映像に悪影響を及ぼすことなく本体1内に冷却装置11を容易に設置できると共に、冷却装置11の各配管の取り回しなどが複雑化する不都合も回避することができるようになる。
更に、本発明の如く冷却装置11を、本体1内に着脱自在に設けることで冷却装置11を本体1から容易に着脱することができる。また、このように冷却装置11を本体1に着脱自在に設けることで、メンテナンス性の向上も図ることができる。即ち、本体1の底面上に直接、冷却装置11の圧縮機12、放熱器14、膨張弁16及び吸熱器18等をそれぞれ配置した場合、冷却装置11のメンテナンスを行う際に、プロジェクタPの本体1の底面上の圧縮機12、放熱器14、膨張弁16及び吸熱器18等をそれぞれ取り出さなければならず、且つ、メンテナンス後には、取り出した圧縮機12、放熱器14、膨張弁16及び吸熱器18を再びそれぞれ本体1に取り付けなければならない。このため、メンテナンスの度に配置位置や本体1内に設置される他の部材に配慮して取出し及び取付け作業を行わなければならず、メンテナンス作業性の低下を招くこととなる。
これに対して、本発明によれば前述したように冷却装置11が本体1に着脱自在に設けられるため、冷却装置11を容易に着脱することができるので、メンテナンス性の向上を図ることができる。特に、本体1に構成されたガイドレール52及び位置決め部53と、冷却装置11に設けられ、ガイドレール53を滑動するローラ54とを備えることで、ガイドレール52上にローラ54を配置し、当該ローラ54を滑動させることで、冷却装置11が本体1に対してスライド自在とされ、容易に本体1に取り付けることができる。更に、ローラ54を滑動させて、当該ローラ54が冷却装置11の所定の取付位置に到達すると、位置決め部53に至り、ローラ54の滑動が阻止されるので、冷却装置11の位置決め及び冷却装置11取り付け後の固定も容易に行うことができるようになる。
これらにより、プロジェクタPの生産性及び施工性を極力低下させることなく、且つ、簡単な構造で冷却装置11により光学素子群5を効果的に冷却することができる。
更にまた、冷却装置11が本体1に取り付けられた状態で、連結ダクト33が冷却装置11を挿脱するための開口1A内に位置するので、当該開口1Aから吸熱器側ダクト32と光学素子群側ダクト31の連結及び連結の解除を容易に行うことができる。これにより、簡単な構造で冷却装置11の着脱作業をより一層容易に行うことが可能となる。
尚、本実施例では光学素子群5の投写レンズ10とは反対側に、圧縮機12、放熱器14及び光源2の順で配置し、カバー20に形成された通気孔21から本体1内に吸い込まれた外気を圧縮機12、放熱器14及び光源2の順で通風した後、通気孔22から本体1の外部に排出するものとしたが、圧縮機12、放熱器14及び光源2の配置や通風方向は実施例で説明したものに限定されるものでなく、どのようなものであっても差し支えない。
しかしながら、本実施例のように圧縮機12として内部中間圧型の圧縮機を使用する場合には、密閉容器12A内に中間圧の冷媒が吐出される関係で、圧縮機12の外周(即ち、密閉容器12Aの外壁面)、放熱器14、光源2の順で温度が高くなるため、最も温度が低い圧縮機12を最も風上側に配置し、最も高温となる光源2を風下側に配置する、即ち、圧縮機12、放熱器14及び光源2の順で配置し、外気を圧縮機12、放熱器14及び光源2の順で通風することが望ましい。また、内部低圧型の圧縮機を使用する場合にも、実施例の内部中間圧型の圧縮機12と同様に圧縮機12の密閉容器12Aの外壁面、放熱器14、光源2の順で温度が高くなるため、最も温度が低い圧縮機12を最も風上側に配置し、最も高温となる光源2を風下側に配置、即ち、圧縮機12、放熱器14及び光源2の順で配置し、外気を圧縮機12、放熱器14及び光源2の順で通風することが好ましい。
一方、圧縮機として内部高圧側の圧縮機が使用される場合には密閉容器12A内に高圧の冷媒が吐出されるため、圧縮機12の密閉容器12Aの外壁面と放熱器14の温度は殆ど同じである、放熱器、圧縮機及び光源の順であっても圧縮機、放熱器及び光源の順であっても構わない。他方、圧縮機12の放熱よりも放熱器14における放熱能力を優先させたい場合には放熱器14、圧縮機12及び光源2の順で配置することで、放熱器14に通気孔21から吸い込まれた外気を直接通風させることができるので、放熱器14における放熱能力を向上させることができるようになる。