JP5183375B2 - 針状体製造方法、針状体製造装置および針状体 - Google Patents

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本発明は、微細な針状体に関する。また、前記針状体を製造するのに適した、針状体の製造方法および製造装置に関する。
近年、生理活性物質を生体内に投与する方法として、微細な針状体を用いて経皮投与する方法が注目を集めている。微細な針状体を用いてバリア性の高い角質層を穿孔して生理活性物質の通過経路を形成することで、一般的な経皮投与に比べて高い生理活性物質浸透効率を得ることが可能である。このとき、微細な針状体が角質層を貫通し、毛細血管や神経まで到達しないように設計することで、使用時に出血や痛みを伴わないようにすることが出来る。
上記経皮投与の目的で微細な針状体を用いる場合、微細な針状体は、皮膚を穿孔するための十分な細さ、および先端角、皮膚の最外層である角質層を貫通し、かつ神経層へ到達しない長さ、を有していることが望ましく、具体的には、針状体の直径は数μmから100μm程度、針状体の先端は先鋭で、その角度は30度以下、針状体の長さは数十μmから数百μm程度、であることが望ましいとされている。
また、角質層に物質を投与する場合、針状体は角質層内に留まる長さ、具体的には100μm以下、であることが望ましい。
微細な針状体を構成する材料としては、仮に破損した針状体が体内に残留した場合でも、人体に悪影響を及ぼさない材料であることが望ましく、材料としては医療用シリコーン樹脂や、マルトース、ポリ乳酸、デキストラン、キチン、キトサン等の生体適合性材料が有望視されている(特許文献1参照)。
また、上述した微細な針状体を製造する方法として、X線リソグラフィにより針状体の原版を作製し、原版から複製版を作り、転写加工成形を行う製造方法が提案されている(特許文献2参照)。
一方、熱可塑性ポリマーであってしかも結晶化する結晶性ポリマーが知られている(特許文献3参照)。
特開2005−21677号公報 特開2005−246595号公報 特開2000−167835号公報
上述したような針状体では、押圧を加えて穿刺する際に、押圧により加えられた応力によって微細な針状体が破壊または変形するという問題がある。
特に、剛性の高い材料を用いた針状体は脆性破壊が起こりやすい。
また、剛性の低い材料では押圧時の針状体の脆性破壊は抑制されるが、押圧による応力により容易に形状変形し、針状体の穿刺性能が著しく低下する。
そこで、本発明は、脆性破壊および形状変形が抑制される針状体を製造できる針状体製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、脆性破壊は針状体の根元部で起こりやすく、形状変形は針状体の先鋭部で起こりやすいことを見出した。上記知見により、針状体先鋭部と針状体根元部で結晶化度の異なる針状体を製造することを想到するに至った。
請求項1に記載の本発明は、針状体形状を形成した金型を作製する工程と、前記金型に成形材料を充填する工程と、前記成形材料を加熱する工程と、前記金型と前記成形材料とを剥離する工程と、を備え、前記成形材料は、結晶性ポリマーであり、前記成形材料を加熱する工程にあたり、前記針状体形状の先鋭部に充填された成形材料は、前記針状体形状の根元部に充填された成形材料よりも高温に維持されることを特徴とする針状体製造方法である。
なお、本明細書において「結晶性ポリマー」とは、熱可塑性ポリマーであり熱処理により結晶化が促進されるポリマーをいう。
請求項2に記載の本発明は、針状体形状を形成した金型に成形材料を充填する針状体製造装置において、前記金型は、複数の層が積層されてなり、前記針状体形状の先鋭部は加熱手段と接続された加熱層からなる金型であることを特徴とする針状体製造装置である。
請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載の針状体製造装置であって、前記金型は、更に、前記針状体形状の根元部は冷却手段と接続された冷却層からなる金型であることを特徴とする針状体製造装置である。
請求項4に記載の本発明は、請求項3に記載の針状体製造装置であって、前記金型は、更に、前記冷却層と前記加熱層との間に断熱層を有する金型であることを特徴とする針状体製造装置を特徴とする針状体である。
請求項5に記載の本発明は、微細な針状体形状をなした針状体において、結晶性ポリマーからなり、前記針状体形状の先鋭部は、前記針状体形状の根元部よりも結晶化度が高いことを特徴とする針状体である。
本発明の針状体製造方法は、成形材料を結晶性ポリマーとし、加熱処理の際に、針状体形状の先鋭部に充填された成形材料を針状体形状の根元部に充填された成形材料よりも高温に維持することにより、針状体形状の先鋭部が針状体形状の根元部よりも結晶化度が高い針状体を製造できる。
一般的に、結晶化度が高いほと剛性が高くなることおよび結晶化度が低いほど柔性が備わることが知られている。このため、先鋭部の結晶化度を根元部と比べ相対的に大きくすることにより、先端部の剛性が高いために穿刺性能が高くかつ根元部に柔性が備わるため脆性破壊が抑制される針状体を提供することが出来る。
以下、本発明の針状体製造方法について説明を行う。
<針状体形状を形成した金型を作製する工程>
まず、針状体形状を形成した金型を作製する。
金型は、金型としての耐熱性や機械的強度、形状追従性を有していれば、特に材質の制約は無い。例えば、金属、樹脂、などを用いてよい。
金型に形成される針状体形状は、用途に応じて適宜設計されて良い。例えば、一本のみ屹立した針状体形状、複数本がアレイ状に配列された針状体形状、などであってもよい。ここで、「アレイ状」とは、各単位針状体が並んでいる状態を示すものであり、例えば、碁盤目状、蜂の巣状(ハニカム構造)、同心円状、ランダム配置などのパターンを含むものとする。
金型に形成される針状体形状の形成方法は、適宜公知の微細加工技術を用いて形成すれば良い。例えば、微細加工技術として、リソグラフィ法、ウェットエッチング法、ドライエッチング法、サンドブラスト法、レーザー加工法、精密機械加工法などを適宜組み合わせて用いても良い。
<金型に成形材料を充填する工程>
次に、金型に成形材料を充填する。
本発明で用いる成形材料は結晶性ポリマーである。ここで、「結晶性ポリマー」は、熱可塑性ポリマーであり熱処理により結晶化が促進されるポリマーであればよく、付加重合体、縮合重合体、開環重合体などどのような方法で製造したものであってもよい。例えば、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ブテンなどの重合体、あるいはこれらのモノマーと結晶性を失わない程度の量のその他のモノマーとの共重合体、グリコール類とジカルボン酸またはグリコール酸などの縮合体であるポリエステル、ジカルボン酸とジアミンまたはカルボキシアミンなどの縮合体であるアミド、テトラカルボン酸とジアミンの縮合体であるアミック酸またはイミド、主鎖にカーボネート基を有するポリカーボネート、ポリ乳酸、などが挙げられる。
特に、本発明の針状体製造方法で用いる成形材料としては、ポリ乳酸が好ましい。ポリ乳酸は生体適合性樹脂としても知られており、生体内で仮に破損した針状体が体内に残留した場合でも、人体に悪影響を及ぼさないという効果を奏する。
充填方法は、用いる成形材料に応じて適宜公知の適宜公知の転写成形方法を用いて良い。転写成形法としては、例えば、射出成形法、押し出し成形法、インプリント法、キャスティング法などを用いて良い。
また、針状体形状部位まで成形材料を充填した後、基板を針状体基底部側に貼り付けても良い。この場合、針状体形状を支持する基板部位のみを針状体形状を構成する部位とは異なる材料とすることが出来る。このとき、基板としては、針状体形状を支持するのに充分な機械特性を備えていれば、特に制限は無く、金属、無機材料、有機材料などを用いてよい。
針状体を生体皮膚に対して適用する場合、基板は生体適合性を有していることおよび生分解性を有していることが好ましい。また、生体皮膚などの可撓性を有する対象に対して針状体を適用する場合には、基板に可撓性を付与しても良い。
また、針状体形状部位の要する体積以上の成形材料を充填しても良い。この場合、針状体形状を支持する基板部位と針状体形状とを同一の材料により一体成形することが出来る。
<成形材料を加熱する工程>
次に、成形材料を加熱する。
本発明の針状体製造方法では、成形材料を加熱する工程にあたり、針状体形状の先鋭部に充填された成形材料は、針状体形状の根元部に充填された成形材料よりも高温に維持される。これにより、針状体先鋭部から針状体根元部に向けて温度勾配が出来る。よって、針状体先鋭部から針状体根元部にかけて、結晶度に勾配を備えた針状体を好適に製造できる。
一般的に、結晶化度が高いほと剛性が高くなることおよび結晶化度が低いほど柔性が備わることが知られており、先鋭部の結晶化度を根元部と比べ相対的に大きくすることにより、先端部の剛性が高いために穿刺性能が高くかつ根元部に柔性が備わるため脆性破壊が抑制される針状体を提供することが出来る。
<金型と成形材料とを剥離する工程>
次に、金型と成形材料とを剥離する。
剥離する方法としては、選択した金型、成形材料、充填方法、に応じて適宜公知の方法を選択してよい。例えば、物理的に剥離する方法、ウェットエッチングで金型のみを溶解する方法、などを用いても良い。
また、金型から成形品を剥離が困難な場合には、成形材料の充填前に予め金型表面に離型処理を施してもよい。離型処理方法としては特に制限は無く、金型の材質や形状に合わせて、適宜公知の方法を用いて良い。例えば金型が金属から形成される場合には、フッ素系ポリマーを主成分とする離型剤を好適に用いることができる。
本発明の針状体製造方法によって製造される針状体は、針状体形状の先鋭部に結晶化によって剛性が向上した層を有するため穿刺性能が高く、一方で針状体形状の根元部の結晶化が抑制されるため、穿刺時に応力の集中する基底部近傍の脆性破壊を抑制できる。同様の特性を有する針状体は、例えば、突起部先端部を剛性の高い材料で形成し、これとは別の剛性の低い材料で突起部基底部を形成することでも作製することが出来るが、微細な針状体の内部を、異なる2種類の材料層で精度良く構成することは難しく、また作製工程が非常に複雑になる。
以下、本発明の針状体製造装置について説明を行う。
本発明の針状体製造装置は、複数の層が積層されてなり前記針状体形状の先鋭部は加熱手段と接続された加熱層からなる金型を有する。これにより、針状体先鋭部のみを好適に針状体根元部よりも相対的に高温の維持することが出来る。一般に、温度は熱源からの距離に従って徐々下がる。このため、針状体先鋭部から針状体根元部に向けて温度勾配が出来る。よって、針状体先鋭部から針状体根元部にかけて、結晶度に勾配を備えた針状体を好適に製造できる。
加熱層は熱伝導に優れた材料からなることが好ましい。例えば、アルミ、ニッケル、銅、シリコンなどを好適に用いることが出来る。
また、加熱手段は熱を発生し、熱を伝播させるものであれば良く、一般的に良く知られた熱源を用いることが出来、特に限定されるものではない。例えば、抵抗加熱、ランプ加熱などを用いても良い。
また、更に、前記針状体形状の根元部は冷却手段と接続された冷却層からなる金型を用いても良い。根元部に冷却層を備えることで、針状体先鋭部から針状体根元部に向けて温度勾配を急峻にすることが出来る。このため、特に、針状体先鋭部から針状体根元部にかけて、結晶度の勾配が大きい針状体を好適に製造できる。
冷却層は熱伝導に優れた材料からなることが好ましい。例えば、アルミ、ニッケル、銅、シリコンなどを好適に用いることが出来る。
冷却手段は、冷却方法として一般的に良く知られている方法を用いればよく、特に限定されるものではない。例えば、ペルチェ素子、内部に冷媒を循環するブロックの接触、冷却層への冷媒の循環供給、などを用いても良い。
また、更に、前記冷却層と前記加熱層との間に断熱層を有する金型を用いても良い。冷却層と加熱層との間に断熱層を備えることで、針状体先鋭部から針状体根元部に向けた温度勾配において、不連続な区間を形成することが出来る。このため、特に、針状体先鋭部から針状体根元部にかけての特定部位で結晶度が特異的に大きく変化する針状体を好適に製造できる。
断熱層は、熱伝導率の低い材質で形成されることが好ましい。例えば、耐熱樹脂(ポリエーテルエーテルケトンなど)、グラスウール、ポリスチレンフォーム、石英ガラス、シリコーンゴム、フッ素樹脂などを好適に用いることが出来る。
本発明の針状体製造装置を用いることにより、穿刺性能が高くかつ穿刺時の破壊が抑制される針状体が得られる。また、金型の層構成を変更することで、製造される針状体の結晶化領域を変更することが出来る。
以下、本発明の針状体の製造方法の実施の一例として、具体的に図1を用いながら説明を行う。当然のことながら、本発明の針状体の製造方法は下記実施例に限定されず、類推できる他の製造方法をも含むものとする。また、本発明の針状体は、下記の実施例にて作製された針状体に限定されるものではない。
<実施例1:針状体製造方法>
まず、金型を作製するための基板として、厚さ900μmのニッケル層、厚さ100μmのポリエーテルエーテルケトン層、厚さ600μmのニッケル層からなる、3層基板を準備した。
次に、前記3層基板の、厚さ600μmのニッケル層側からレーザー加工を施し、図1(a)に示す、開口幅が約225μm、深さが約800μmの逆円錐状の針状体形状(凹型)24を形成し、金型14を得た。
金型14は、厚さ900μmのニッケルからなる加熱層11、厚さ100μmのポリエーテルエーテルケトンからなる断熱層12、および厚さ600μmのニッケルからなる冷却層13から構成される。
図1(a)に示されるように、針状体形状(凹型)24は、加熱層11、断熱層12、および冷却層13を縦断するように形成された。
次に、作製した金型14を純水中で超音波洗浄を施し、窒素ガスを吹き付けて十分に乾燥し、フッ素系ポリマーを主成分とする離型処理剤中に金型14を浸漬し、90℃のホットプレート上で10分間ベークし、離型剤リンス液で十分にリンスして、金型14の離型処理を実施した。
次に、図1(b)に示す通り、金型14上にポリ乳酸からなる成形材料6を供給し、熱インプリント法によって、針状体形状(凹型)24に成形材料6を充填し、金型14上に成形材料6が一体となった状態のまま、金型14と成形材料6を室温まで冷却した。
次に、針状体先端部を選択的に加熱した。図1(c)に示されるとおり、金型14の加熱層11に接続された抵抗加熱による加熱手段21によって、加熱層11を加熱し、同時に金型14の冷却層13に接続された内部に約15℃の冷却水を循環した冷却ブロックによる冷却手段22によって、冷却層13を冷却した。前記加熱時間は10分とした。加熱および冷却開始後5分間経過後の、加熱層11、および冷却層13の表面温度を熱電対によって測定したところ、加熱層11の温度は約120℃であり、冷却層13の温度は約40℃であった。加熱開始から10分間経過後、加熱層11の冷却を停止し、加熱終了後5分間経過した後に、冷却層13の冷却を停止した。冷却層13の冷却停止時の金型14の温度は、加熱層11、冷却層13共に25℃以下であった。
次に、金型14上から成形材料6を剥離し、図1(d)に示すように、基板1と針状体形状(凸型)2からなる針状体5が得られた。得られた針状体の針状体形状(凸型)2は、高さが約800μm、基底部の幅が約225μmの、概円錐形状であった。
<実施例2:評価>
実施例1で製造された針状体について、材料の状態を確認するため、突起部を偏光顕微鏡で観察した。
その結果、突起部先端部3の領域のみに、結晶化ポリマーの結晶化に由来する特有の光散乱を確認した。光散乱の観察結果から、突起部の先端から200μm程度の領域までが、特に結晶化が促進されていることが確認された。
以上より、針状体形状の根元部4を含む領域は結晶化が促進されず、一方で針状体形状の先鋭部3の領域では結晶化が促進されたことが確認された。
本発明の針状体製造方法は、錐形状の3次元構造パターンを形成することが求められる広範な分野に利用することが期待される。
前記広範な分野としては、例えば、半導体デバイス、光学素子、配線回路、データストレージメディア(ハードディスク、光学メディアなど)、医療用部材(分析検査用チップ、マイクロニードルなど)、化粧品用途マイクローニードル、バイオデバイス(バイオセンサ、細胞培養基板など)、精密検査機器用部材(検査プローブ、試料保持部材など)、ディスプレイパネル、パネル部材、エネルギーデバイス(太陽電池、燃料電池など)、マイクロ流路、マイクロリアクタ、MEMSデバイスなどが挙げられる。
本発明の針状体製造方法の一例を示す概略断面図である。
符号の説明
1……基板、
2……針状体形状(凸型)、
3……針状体形状の先鋭部、
4……針状体形状の根元部、
5……針状体、
6……成形材料、
11……加熱層、
12……断熱層、
13……冷却層、
14……金型、
21……加熱手段、
22……冷却手段、
24……針状体形状(凹型)

Claims (5)

  1. 針状体形状を形成した金型を作製する工程と、
    前記金型に成形材料を充填する工程と、
    前記成形材料を加熱する工程と、
    前記金型と前記成形材料とを剥離する工程と、を備え、
    前記成形材料は、結晶性ポリマーであり、
    前記成形材料を加熱する工程にあたり、前記針状体形状の先鋭部に充填された成形材料は、前記針状体形状の根元部に充填された成形材料よりも高温に維持されること
    を特徴とする針状体製造方法。
  2. 針状体形状を形成した金型に成形材料を充填する針状体製造装置において、
    前記金型は、複数の層が積層されてなり、前記針状体形状の先鋭部は加熱手段と接続された加熱層からなる金型であること
    を特徴とする針状体製造装置。
  3. 請求項2に記載の針状体製造装置であって、
    前記金型は、更に、前記針状体形状の根元部は冷却手段と接続された冷却層からなる金型であること
    を特徴とする針状体製造装置。
  4. 請求項3に記載の針状体製造装置であって、
    前記金型は、更に、前記冷却層と前記加熱層との間に断熱層を有する金型であること
    を特徴とする針状体製造装置。
  5. 微細な針状体形状をなした針状体において、
    結晶性ポリマーからなり、
    前記針状体形状の先鋭部は、前記針状体形状の根元部よりも結晶化度が高いこと
    を特徴とする針状体。
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