以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。本実施形態に係る引戸装置は、開閉移動する扉体が1個となっている引戸装置であり、この扉体は、扉体の上方に配置されたガイド部材であるガイドレールから吊り下げられ、このガイドレールに案内されて開閉移動を行う上吊り式の扉体となっている。このため、本実施形態に係る引戸装置は上吊式の引戸装置である。この上吊り式引戸装置は、扉体を収納する扉体収納部である戸袋を有するものであって、この戸袋は、壁の内部に収納された壁収納式の戸袋である。
図1は、例えば、建物内における廊下と部屋との間に配置され、扉体1で開閉される開口部が出入口2となっているこの上吊り式引戸装置の全体を示す正面図である。この上吊り式引戸装置の外枠組みは、上枠部材10と、扉体1が全閉位置に達して出入口2を閉じたときにこの扉体1の先端が当接する戸先側の竪枠部材11と、この戸先側の竪枠部材11とは扉体1の移動方向反対側に配置されている戸尻側の竪枠部材12と、これらの竪枠部材11と12の間に配置されているとともに、出入口2を開けたときの扉体1が収納される戸袋3における出入口2の側の端部に配置された竪額縁部材13と、床4における戸袋3の下端に配置された幅木14と、を含んで形成され、板材の折り曲げ品となっているこれらの上枠部材10と戸先側の竪枠部材11と戸尻側の竪枠部材12と竪額縁部材13と幅木14は、上吊り式引戸装置の外枠組みを形成する枠部材であり、また、開閉移動する扉体1に対して不動となった不動部材となっている。前記ガイドレールは、この不動部材である上枠部材10に設けられている。
出入口2は、これらの枠部材10〜14で形成された外枠組みの内側の一部の空間となっており、この出入口2は扉体1で開閉され、この出入口2を開けたときの扉体1が収納される戸袋3は、壁5の内部に収納された壁収納式の戸袋である。上枠部材10は、戸先側の竪枠部材11から戸尻側の竪枠部材12まで延びる長さを有し、上記枠部材10〜14のうちの1つとなっている竪額縁部材13は、戸袋3における出入口2側の見切り部材となっている。また、戸袋3は、図1のS2−S2線断面図である図2で示されているように、ハット形状の断面が、上枠部材10と幅木14の長手方向(図1では左右方向)に連続している補強部材20によって補強された構造となっており、この補強部材20は、扉体1の厚さ方向でもある戸袋3の厚さ方向の両側に設けられているとともに、竪枠部材11,12と竪額縁部材13の長手方向でもある上下方向に複数個配設されている。そして、これらの補強部材20の上下において、内側壁材21が接着テープ等による結合具で補強部材20に結合され、これらの内側壁材21の外側に外側壁材22が配置され、補強部材20にビスやステープル等の結合具で結合されているこの外側壁材22の表面に、クロス等の壁仕上げ材が取り付けられている。
このため、これらの内側壁材21と外側壁材22と壁仕上げ材により、戸袋3の部分の壁5が形成され、戸袋3は、補強部材20が構造材となって壁5の内部に形成されている。この壁5は、図1から分かるように、上枠部材10の上側や、戸先側の竪枠部材11に対して出入口2とは反対側の部分、戸尻側の竪枠部材12に対して戸袋3とは反対側にも設けられている。壁5のこれらの部分の表面は、戸袋3における壁5の部分の表面と面一状態となっている。
また、図1で示されている上下複数個の前記補強部材20のうち、上下寸法が大きい補強部材20Aが配置されている壁5の箇所には、手摺り6を設けることができ、この手摺り6は、補強部材20Aに達するビス等の取付具でこの補強部材20Aに取り付けることができる。
図3は図1のS3−S3線断面図であり、この図3で示されているように、竪額縁部材13は扉体1の厚さ方向両側に2個配設され、それぞれの竪額縁部材13は、戸袋3の内外方向に配置された内部材23と外部材24との組み合わせ品である。これらの内部材23と外部材24における戸尻側の竪枠部材12の側へ延びている後方延出部23Aと24Aの間の隙間に、補強部材20における戸先側の竪枠部材11の側の端部が挿入され、この端部は、ビス等の止着具25で外部材24の後方延出部24Aに止着され、補強部材20における戸尻側の竪枠部材12の側の端部は、ビス等の止着具26で戸尻側の竪枠部材12に止着されている。
図4は図1のS4−S4線断面図であり、図5はこの図4の上部の拡大図である。図5で示されているように、上枠部材10は、上枠部材10の上側の壁5の下地材27にアンカー部材28を介して結合された上面部10Aと、この上面部10Aにおける上枠部材10の幅方向(図5では左右方向)の一方の端部から垂下した垂下部10Bと、この垂下部10Bの下端から上記幅方向の外側へ延出した壁材見切り部10Cと、この壁材見切り部10Cの先端から起立した起立部10Dと、この起立部10Dから垂下部10B側へ屈曲した屈曲部10Eとを有する。これらの上面部10Aと垂下部10Bと壁材見切り部10Cと起立部10Dと屈曲部10Eのうち、上面部10Aと垂下部10Bは、上枠部材10の全長に渡って連続して設けられ、壁材見切り部10Cと起立部10Dと屈曲部10Eは、出入口2と対応する部分だけに設けられている。そして、壁材見切り部10Cの上側に、壁5における垂下部10Bの幅方向外側の部分を形成する内側壁材29と外側壁材30が配置され、これらの内側壁材29と外側壁材30は、壁材見切り部10Cとは上枠部材10の幅方向反対側において、上枠部材10の上側にも配置されている。そして、壁材見切り部10Cの上側に配置された内側壁材29と外側壁材30は、図2における戸袋3の左側では、図2で示されている内側壁材21と外側壁材22となっている。
また、上面部10Aにおける垂下部10Bとは反対側の幅方向の端部には、僅かに下方へ延びた下方延出部10Fが形成され、この下方延出部10Fの下端には、斜め上方であって、上記壁材見切り部10Cとは反対側の幅方向外側へ延出した傾斜延出部10Gが設けられている。これらの延出部10F,10Gは、図1で示されている出入口2と竪額縁部材13に対応するだけに設けられ、延出部10F、10G及び後述する点検カバー31と対応する高さ位置における戸袋3の上部箇所には、図1で示されている上下複数個の前記補強部材20のうち、最上部の補強部材20Bが配置されている。
図5で示されている下方延出部10Fの下方への延出量は小さいため、この下方延出部10Fの下側は、上枠部材10の開口部10Hとなっており、垂下部10Bとは上枠部材10の前記幅方向とは反対側に形成されているこの開口部10Hから、上枠部材10の内部空間に収納配置されている扉体移動機構についての点検及び整備を含む各種の作業を行えるようになっている。
通常時の開口部10Hは点検カバー31で塞がれており、この点検カバー31が出入口2の上方の上枠部材10から取り外し自在となっている。この点検カバー31は、上端に斜め下向きに形成され、上枠部材10の傾斜延出部10Gに係止される係止部31Aと、この係止部31Aから鉛直又は略鉛直下向きに延びている正面部31Bと、この正面部31Bの下端から上枠部材10の内側へ水平又は略水平に屈曲している下面部31Cと、この下面部31Cの先端から立ち上がった立上部31Dとを有する。係止部31Aと下面部31Cと立上部31Dにより、板金の折り曲げで形成されている点検カバー31の全体の剛性が確保されている。なお、図示されていないが、立上部31Dは、図1の左右方向であって上枠部材10の長手方向でもある点検カバー31の長手方向の全長に渡って設けられておらず、点検カバー31には、この長手方向の両端部において、立上部31Dが存在していない立上部欠損部が設けられている。
前述の開口部10Hを塞いでいるときの点検カバー31は、図5で示されているとおり、係止部31Aが上枠部材10の傾斜延出部10Gに係止され、これにより点検カバー31の重量が上枠部材10で支持されている。また、下面部31Cは、図1に示されているように、戸先側の竪枠部材11と竪額縁部材13に取り付けられているブラケットになっていて、点検カバー31の長手方向の両端部と対応する位置に設けられているブラケット32,33にねじ部材34,35で止められている。
また、前述した扉体移動機構についての点検等の作業を行うために、点検カバー31を取り外して上枠部材10の上記開口部10Hを開けるときには、ねじ部材34,35を取り外し、これにより、点検カバー31は、上端の係止部31Aを中心に上枠部材10の内外方向に揺動可能となるため、上枠部材10の外側方向へ揺動させることにより、係止部31Aを上枠部材10の傾斜延出部10Gから抜き取る。このようにして点検カバー31を取り外す際において、点検カバー31には、立上部31Dが存在していない図示されない前記立上部欠損部が点検カバー31の長手方向の両端部に設けられているため、言い換えると、ねじ部材34,35が配置される位置と対応する下面部31Cの先端の箇所は、立上部31Dが存在しない立上部欠損部となっているため、この点検カバー31の取り外し作業を、ブラケット32,33と立上部31Dとが干渉することなく行える。
また、ねじ部材34,35は、点検カバー31の下面部31Cとブラケット32,33とに下から上に挿入されるものであるため、点検カバー31の取り付け作業、取り外し作業のために作業者がねじ部材34,35について行う作業は、前記出入口2に立ったこの作業者が手を上に伸ばすことによって行え、この作業を容易に行える。
さらに、たとえ、何かの原因でねじ部材34,35が脱落することがあっても、点検カバー31の上端の係止部31Aは上枠部材10の傾斜延出部10Gに係止され、点検カバー31の下面部31Cの上側には、ねじ部材34,35の雄ねじ軸部を螺合させるブラケット32,33が存在するため、点検カバー31が上下の振動等によって上枠部材10から外れてしまうことを有効に防止することができる。
また、本実施形態では、図5で示されているように、上枠部材10の傾斜延出部10Gには、点検カバー31の係止部31Aがこの傾斜延出部10Gに直接接触することを防止するゴムや合成樹脂等による冠部材40が被せられ、これにより、上枠部材10と点検カバー31の材料である金属同士が直接接触して点検カバー31の取付作業時や取外作業時等において異音が発生することや、上枠部材10及び/又は点検カバー31に傷が生ずること等を防止している。
また、図5で示されているように、点検カバー31の正面部31Bの裏面(正面部31Bにおける上枠部材10の内側の面)に、例えば、ハット形状の断面が点検カバー31の長手方向に連続している補強部材41を接着剤や接着テープ等の結合具で結合し、これにより、正面部31Bの強度を補強し、正面部31Bの上下寸法や左右寸法が大きくても、正面部31Bに撓み変形等が発生しないようにしてもよい。
次に、上枠部材10の内部空間に収納配置されている前述の扉体移動機構について説明する。図6は、点検カバー31を取り外して示すこの扉体移動機構の拡大正面図である。
上枠部材10の内部には、この上枠部材10の略全長に渡る長さとなったガイドレール45が配置され、扉体1の直線の開閉移動を案内するガイド部材となっているこのガイドレール45は、図5に示されているように、上下に延びる基端部45Aを有する略L字形状であり、基端部45Aが上枠部材10の前記垂下部10Bにビス等の結合具46で結合されている。扉体1には、この扉体1の上方において、ガイドレール45に転動自在に係合している係合部であるローラ47がブラケット48を介して取り付けられ、このローラ47は、図6で示されているとおり、上枠部材10の長手方向である扉体1の開閉移動方向に2個設けられている。このため、本実施形態に係る上吊り式引戸装置は、扉体1が、2個のローラ47によってガイドレール45から吊り下げられた上吊り式引戸装置となっている。
また、上枠部材10の内部空間には、扉体1に閉じ側への移動力を付与する扉体自動閉鎖手段である渦巻きばね式の扉体自動閉鎖装置50が配置されており、この扉体自動閉鎖装置50は、上枠部材10における戸先側の竪枠部材11の近傍に配置され、この上枠部材10の垂下部10Bやガイドレール45の基端部45Aにビス等の結合具で結合されている。扉体自動閉鎖装置50からは、この扉体自動閉鎖装置50の内部に設けられている図示しない渦巻きばね機構に一端が連結された合成樹脂製等の紐状部材51が導出され、この紐状部材51の他端は、上記2個のローラ47のうち、戸先側のローラ47Aを回転自在に支持しているブラケット48Aに連結されている。扉体1の戸先側の端部となっている扉体1の先端が戸先側の竪枠部材11に当接していて扉体1が前記出入口2を全閉としているときに、図1で示す把持部52を握った手によって扉体1を開き移動させると、扉体自動閉鎖装置50から繰り出される紐状部材51により、上記渦巻きばね機構の渦巻きばねにばね力が蓄圧される。全開位置まで開き移動した扉体1は、具体的な構造を後述する扉体全開保持装置により全開状態が保持される。火災発生時等の非常時等に、外部からの制御信号を受信することにより、扉体全開保持装置により保持されていた扉体1の全開状態が解除されると、前記渦巻きばねに蓄圧されたばね力によって扉体1が自動的に全閉位置まで閉じ移動する。このため、本実施形態に係る上吊り式引戸装置は、自動閉鎖式の上吊り式引戸装置となっている。
図1で示されているように、扉体1が開閉移動する移動経路における前記竪額縁部材13の配置位置と対応する位置、言い換えると、前述した幅木14における戸先側の竪枠部材11の側の端部には、ガイドローラ64が配置されている。このガイドローラ64は、図4に示されているように、下方に向かって開口している扉体1の下端部に挿入され、扉体1のガイドレール45で案内される開閉移動は、扉体1の下端部がガイドローラ64で案内されながら行われる。
また、図6で示されているように、扉体1の上部にはロータリー式ブレーキ装置54が配置され、このブレーキ装置54は、上記2個のローラ47のうち、戸先側のローラ47Aを回転自在に支持しているブラケット48Aに取り付けられている。すなわち、本実施形態では、このブラケット48Aは、扉体1にローラ47Aとブレーキ装置54の両方を取り付けるための部材となっており、部材の兼用化が図られている。
ロータリー式ブレーキ装置54は、図5、図6及び後述する図10で示されているとおり、ラック構成体60に噛合するピニオンギア56を有し、このピニオンギア56の回転中心軸57は、図5に示すように、扉体1の厚さ方向に延びているとともに、この回転中心軸57の軸方向は水平又は略水平方向となっており、また、ガイドレール45に沿って扉体1を開閉移動させるための上記ローラ47の回転中心軸49も扉体1の厚さ方向に延びているとともに、この回転中心軸49の軸方向も水平又は略水平方向となっており、このため、これらの回転中心軸49と回転中心軸57は平行又は略平行となっている。
図5に示すように、ラック構成体60は、前記上枠部材10に取り付けられた保持部材61で保持されており、この保持部材61は、上枠部材10の垂下部10Bにビス等の結合具62で結合されていて、上下方向に延びている基端部61Aと、この基端部61Aの上端から扉体1の厚さ方向へ水平又は略水平に延びているアーム部61Bと、このアーム部61Bの先端部の下面に設けられ、ラック構成体60のベース部60Aを溝63の内部で保持する保持部61Cとを有する。これにより、ラック構成体60は、保持部材61の保持部61Cにおいて、ピニオンギア56が噛合する歯部60Bが下側となって下向きに保持され、扉体1に取り付けられているロータリー式ブレーキ装置54のピニオンギア56の上端が、ラック構成体60のこの歯部60Bに噛合している。
また、前記ガイドレール45の基端部45Aの上端には係合部45Dが形成され、保持部材61の基端部61Aの下端にも係合部61Dが形成され、これらの係合部45Dと61Dが互いに係合することにより、ガイドレール45と保持部材61が連結されている。
以上において、ラック構成体60と保持部材61は扉体1の開閉移動方向への長さを有しているとともに、これらのラック構成体60と保持部材61は、図6で示されているように、ガイドレール45の全長に渡る長さとなっておらず、ラック構成体60と保持部材61の戸先側の端部の位置は、扉体1の戸先側の端部が戸先側の竪枠部材11に当接したときに、言い換えると、扉体1が全閉位置に達したときに、ピニオンギア56が到達している位置と同じ位置又はこれよりも少し戸先側の位置となっている。また、図示されていないが、ラック構成体60と保持部材61の戸尻側の端部の位置は、扉体1の戸先側の端部と戸先側の竪枠部材11との間に人の肩幅と同じ程度の間隔が開いている位置まで扉体1が達しているときに、この扉体1におけるピニオンギア56と同じ位置又は略同じ位置となっている。
また、ロータリー式ブレーキ装置54の本体55の内部には、シリコンオイル等の粘性流体が充填され、この粘性流体の内部には、ピニオンギア56に前記回転中心軸57を介して結合されたブレードが収納され、ピニオンギア56が回転すると、このブレードも回転中心軸57を介して回転する。
このため、扉体1が、前述した扉体自動閉鎖装置50の渦巻きばね機構の渦巻きばねに蓄圧されたばね力による自動閉鎖力等によって全開位置側から全閉位置側へ閉じ移動し、この閉じ移動の途中において、ピニオンギア56がラック構成体60に噛合し始めたときには、このときからピニオンギア56がラック構成体60によって回転することにより、扉体1には、ロータリー式ブレーキ装置54の上記粘性流体がブレードで撹拌されることで生ずる粘性力の抵抗力による制動力が発生し、これにより、扉体1はロータリー式ブレーキ装置54で制動されて減速しながら全閉位置に達する。
なお、前述したように、図1で示した把持部52を握った手によって扉体1を開き移動させる場合にも、ラック構成体60と噛合しているピニオンギア56は回転するが、このピニオンギア56と回転中心軸57との間には一方向クラッチが介設されており、扉体1が全開位置へ向かって移動しているときのピニオンギア56の回転方向については、この一方向クラッチの接続は断絶されるため、扉体1の開き移動を、ロータリー式ブレーキ装置54による制動力を発生させずに小さな力で軽く行うことができる。
そして、図5で説明したガイドレール45の基端部45Aの係合部45Dと、保持部材61の基端部61Aの係合部61Dは、共に扉体1の開閉移動方向へ連続して形成されている。したがって、これらの係合部45Dと61Dによって形成されているガイドレール45と保持部材61との連結部は、ガイドレール45に対して保持部材61を扉体1の開閉移動方向に移動可能に連結するものとなっている。このため、前記結合具62で保持部材61を上枠部材10の垂下部10Bに結合する前に、ガイドレール45の基端部45Aの係合部45Dに保持部材61の基端部61Aの係合部61Dを係合させた状態で、保持部材61の位置を、前記結合具46で垂下部10Bに結合されているガイドレール45に対して扉体1の開閉移動方向へ移動させて調整する作業を行うことができ、この調整作業後に保持部材61を結合具62で上枠部材10の垂下部10Bに結合することにより、扉体1にロータリー式ブレーキ装置54による制動力を付与させ始める位置を適切な位置に変更することができるようになっている。
なお、以上のように、全閉位置へ向かって閉じ移動しているときの扉体1に制動力を作用させるための装置は、上記ロータリー式ブレーキ装置54に限定されず、例えば、上枠部材10の内部空間に配置され、戸尻側の竪枠部材12の側に向けて設けられたピストンロッドと、このピストンロッドが縮み作動することにより装置内部の空気を絞りながら排出するバルブと、を含んで構成されるシリンダー式ブレーキ装置でもよい。この場合には、例えば、扉体1の上記2個のローラ47のうち、戸尻側のローラ47Bを回転自在に支持しているブラケット48Bに、前記ピストンロッドの先端部と扉体1の開閉移動方向に対向する当接部材を取り付け、扉体1の閉じ移動中にこの当接部材がピストンロッドの先端部に当接することにより、ピストンロッドが縮み作動し、これにより、扉体1が前記バルブの絞り作用による制動力を受けるようにすればよい。
図1及び図3に示されているとおり、戸尻側の竪枠部材12の下部には、扉体1の開閉移動方向に扉体1と対向している戸当り部材65が取り付けられている。ゴム等の弾性材料からなるこの戸当り部材65は、扉体1の開き移動限位置である後退限位置を規定するものであり、扉体1の戸尻側の端部が戸当り部材65に当接したときに、扉体1は後退限位置、すなわち全開位置に達する。
なお、図3で示されているように、戸袋3における出入口2の側の端部に配置されているために、戸袋3における出入口2側の見切り部材となっているそれぞれの竪額縁部材13には、竪額縁部材13と扉体1との間隔を小さくし、これらの竪額縁部材13と扉体1との隙間に指等が挟まってしまうことを防止するための指詰め防止部材75が取り付けられている。
ゴムや軟質合成樹脂等の弾性材料又は軟質材料で形成されているこの指詰め防止部材75は、上下方向であって竪額縁部材13の長手方向ともなっている指詰め防止部材75の長手方向に連続して形成されている図示しない割り溝を有している。竪額縁部材13を構成する図3で説明した内部材23と外部材24のうち、外部材24には戸袋3の厚さ方向内側へ延出した内側延出部24Bが設けられており、この内側延出部24Bを前記割り溝に挿入することにより、指詰め防止部材75は竪額縁部材13に取り付けられる。
次に、本発明の一実施形態に係る扉体全開保持装置について説明する。図6に示すように、扉体の全開状態を保持するための本実施形態に係る扉体全開保持装置80は、上枠部材10における出入口2の上方に配置された本体81と、この本体81から扉体1の開き側に延びる係止部材110と、を含んで構成されている。そして、この係止部材110が、扉体1の戸先側のローラ47Aを扉体1に取り付けるための取付部材となっているブラケット48Aに設けられた被係止部材120(具体的な構造は後述する)に係止するものである。
図7は、図6に示されている扉体全開保持装置80の拡大正面図であり、図8は、図6に示されている扉体全開保持装置80の拡大平面図であり、図9は、図7に示されている扉体全開保持装置80のS9矢視図であり、図10は、扉体1が全開位置に達しているときの扉体全開保持装置80及び被係止部材120の正面図である。
図6に示すように、扉体全開保持装置80の本体81は、上枠部材10における全閉位置に達しているときの扉体1の戸尻側のローラ47Bの上方に配置されている。
図7及び図8に示すように、扉体1の開閉移動方向(図7では左右方向)への長さを有する板ばねで形成されている係止部材110は、扉体全開保持装置80の本体81に取り付けられており、この本体81における扉体1の開き側の端部からこの扉体1の開き側に延びている。この係止部材110は、扉体全開保持装置80の本体81に取り付けられる取付部111と、この取付部111から扉体1の開き側に延びる延出部112と、を含んで構成されており、この延出部112における扉体1の開き側の端部は略V字状に屈曲した屈曲部113となっている。このため、この屈曲部113が、被係止部材120に係止する部分、すなわち、係止部となっている。この屈曲部113は、係止部材110における扉体1の開き側の端部をプレス加工することにより形成されたものである。なお、この屈曲部113は、係止部材110とは別体とし、この係止部材110から取り付け、取り外し可能とするものでもよい。
図6及び図10に示されているように、係止部材110の屈曲部113の左右方向の位置、言い換えると、扉体1の開閉移動方向の位置は、戸袋3における出入口2側の見切り部材となっていて戸尻側の竪枠部材12側に配置されている竪額縁部材13の左右方向の位置と同じ又は略同じとなっている。すなわち、係止部材110の屈曲部113は、扉体収納部である戸袋3の内部に配置されるようになっている。
なお、係止部材110は、平常時、言い換えると、火災発生時等の非常時や全開保持装置の点検時等以外の時には、水平姿勢又は略水平姿勢が保持された状態となっており、前述した図4〜図10では、平常時の係止部材110が示されている。
図9に示されているように、係止部材110の取付部111は、上枠部材10の垂下部10B側へ水平方向に延びる水平部111A(図8も参照)と、この水平部111Aの先端から鉛直方向に垂下した垂下部111Bと、この垂下部111Bの下端から上枠部材10の垂下部10B側へ水平方向に延びる底部111Cとからなっている。この底部111Cは、扉体全開保持装置80の本体81を構成する具体的な構造を後述する第3アーム部材98の連結部98Bにビス等の結合具114で結合されている。
図11は、戸先側のローラ47Aのブラケット48Aに設けられ、前記係止部材110の屈曲部113が係止する被係止部材120の正面図であり、図12は、この被係止部材120の側面図である。
図11及び図12に示されているように、被係止部材120は、回転中心軸122を中心に回転自在な回転部材であるローラ123と、回転中心軸122を支持する支持部材121と、を含んで構成されている。この支持部材121は上下方向に長い長さ寸法を有する金属製の板材で形成されており、ローラ123はこの支持部材121の上部121Aに回転自在に取り付けられている。支持部材121の上下方向2箇所には、上下方向に長い貫通孔121Bが形成されており、この支持部材121は、図10に示されているように、戸先側のブラケット48Aにおける扉体1の閉じ側の端部近傍の上部に、前記2個の貫通孔121Bにそれぞれ挿通されたビス等の結合具124で結合されるようになっている(図5も参照)。
この図10からわかるように、支持部材121の左右方向である扉体1の開閉移動方向の幅寸法は、戸先側のブラケット48Aの前記幅寸法よりも小さくなっており、また、この支持部材121は、上部121Aが戸先側のブラケット48Aの上端から突出するようにこの戸先側のブラケット48Aに取り付けられている。また、図5及び図10からわかるように、被係止部材120が戸先側のブラケット48Aに取り付けられたときには、回転中心軸122の軸方向は扉体1の厚さ方向となる。すなわち、ローラ123は、扉体1の厚さ方向を軸方向とする回転中心軸122を中心に回転自在となっている。
なお、支持部材121に形成された前記2個の貫通孔121Bは、上下方向に長い形状を有している長孔となっているため、支持部材121の上下方向の位置を容易に調整することが可能となっている。このため、扉体全開保持装置80の本体81及び/又は係止部材110の上下方向の取付位置に誤差が生じた場合には、2個の結合具124を緩めた状態で支持部材121の上下方向の位置を調整すればよい。
次に、扉体全開保持装置80の本体81の構造について詳細に説明する。図7及び図8に示すように、本体81はケース82内部に収納されており、このケース82における扉体1の開閉移動方向の両端部は平板状となっており、このケース82の両端部は、ビス等の結合具83で上枠部材10の垂下部10Bに結合されている。
図13は、ケース82の上面部を取り除いて示した本体81の平面図であり、図14は、図13のS14−S14線断面図である。なお、図13及び図14では、左側が扉体1の閉じ側で、右側が扉体1の開き側となっている。また、図13及び図14は、係止部材110の回動が阻止され、この係止部材110が水平姿勢又は略水平姿勢の状態となっている平常時を示すものである。
図13に示されているように、本体81には、図示しない制御装置に外部からの制御信号(例えば、火災の発生を検知する図示しないセンサからの防災信号や、この扉体全開保持装置80を試験的に動作させるための試験信号等)が送られることにより、前記制御装置からリード線106を通じて供給されるDC24Vにより作動するソレノイド85が配置されている。このソレノイド85は、係止部材110の回動を阻止するための具体的な構造を後述する回動阻止手段89の構成部材となっている。
図14に示すように、ソレノイド85は、前記制御装置からリード線106を通じて供給されるDC24Vにより励磁されるコイル85Aと、このコイル85Aの内部に挿入配置され、図示されない略テーパ状の先端部(図14では左端部)を有するスライド自在な円柱状又は円筒状のプランジャ(可動鉄芯)86と、このプランジャ86の前記先端部が挿入されるように略テーパ状の窪み部を有する図示しないストッパと、を含んで構成されているプル型(引張型)のソレノイドであり、プランジャ86がソレノイド85の作動軸となっている。
図13及び図14に示すように、プランジャ86の後方部分は、コイル85Aにおけるプランジャ86を挿入するための挿入口から扉体1の開き側へ露出しており、この露出部分の先端部、言い換えると、プランジャ86の後端部は二股部86Aとなっている。前記露出部分のうちの二股部86Aを除く部分の外周には、コイルばね88が巻き回されており、このコイルばね88の一端(右端)は前記外周に係止されており、他端(左端)は前記挿入口の近傍に係止されている。また、二股部86Aの間には軸部材87が架設されており、この軸部材87の両端部は二股部86Aから突出している。
図13に示すように、ケース82の底部82Bには、底部84Aと、この底部84Aにおける扉体1の厚さ方向両端部からそれぞれ立ち上がった2個の立上部84Bと、を有する上向きに開口した縦断面略コ字形状の枠部材84が、ビス等の結合具で結合されており、前記3個のアーム部材90,92,98は、この枠部材84の内側に配置されている。
図13及び図14に示すように、第1アーム部材90は、扉体1の厚さ方向の離間した2個のアーム部90Aと、これらのアーム部90A同士を連結する連結部90Bとからなっており、この第1アーム部材90は、図14に示すように、前記枠部材84の2個の立上部84Bの下部の間に架設された回動中心軸91を中心に回動自在となっている。図13に示されているとおり、プランジャ86の二股部86Aの扉体1の厚さ方向の幅寸法は、第1アーム部材90の2個のアーム部90Aの間の長さ寸法よりも小さくなっており、このため、二股部86Aは、第1アーム部材90の2個のアーム部90Aの間に配置されている。2個のアーム部90Aには長孔90C(図14参照)がそれぞれ形成されており、これらの長孔90Cには、二股部86Aから突出した前記軸部材87の両端部が挿通されている。そして、図13に示すように、軸部材87の両端部には、この軸部材87が長孔90Cから抜け出すことを防止するための抜け止め部材87Aが取り付けられている。このため、第1アーム部材90は、軸部材87を介してプランジャ86に連結された状態となっている。
図13及び図14に示すように、第2アーム部材92は、扉体1の厚さ方向の離間した2個のアーム部92Aと、これらのアーム部92A同士を連結する第1連結部92Bと第2連結部92Cとからなっている。それぞれのアーム部92Aは、図14に示すように、扉体1の閉じ側に延びる延出部92Dと、この延出部92Dにおける扉体1の開き側の端部から斜め上方に延びる傾斜部92Eとからなる形状を有している。第1アーム部材90と同様に、この第2アーム部材92も、前記枠部材84の2個の立上部84Bの下部の間に架設された回動中心軸93を中心に回動自在となっている。
また、2個のアーム部92Aの傾斜部92Eの間には軸部材96が架設されており、一方、前記枠部材84の2個の立上部84Bにおける延出部92Dよりも上方の高さ位置には軸部材95が架設されている。そして、この軸部材95における扉体1の厚さ方向中央部又は略中央部にはコイルばね94の一端が係止されているとともに、前記軸部材96における扉体1の厚さ方向中央部又は略中央部にはこのコイルばね94の他端が係止されている。
図14に示されているように、第2アーム部材92のアーム部92Aの第1連結部92Bは、第1アーム部材90のアーム部90Aの連結部90Bに係合可能となっており、第2アーム部材92の前記第1連結部92Bが、第1アーム部材90の前記連結部90Bに係合しているときには、第2アーム部材92のアーム部92Aの延出部92Dの先端部が、第1アーム部材90のアーム部90Aに当接するようになっている。
図13及び図14に示すように、第3アーム部材98は、扉体1の厚さ方向に離間した2個のアーム部98Aと、これらのアーム部98A同士を連結する連結部98Bとからなっており、前記枠部材84の2個の立上部84Bの下部の間に架設された回動中心軸99を中心に回動自在となっている。
それぞれのアーム部98Aにおける扉体1の閉じ側の端部は、上片部98Dと下片部98Eとからなる二股部98Cとなっており、この二股部98Cよりも後方の部分は扉体1の開き側に延びる延出部98Fとなっている。そして、図9に示すように、それぞれのアーム部98Aの延出部98Fの下端同士が連結部98Bで連結されている。図14に示すように、これらの延出部98F及び連結部98Bは、ケース82における扉体1の開き側の側面部に形成された開口部82A(図9も参照)から扉体1の開き側へ露出している。
図9に示されているように、係止部材110の取付部111の垂下部111Bは、第3アーム部材98の2個のアーム部98Aうちの扉体1側(上枠部材10の垂下部10B側とは反対側)の延出部98Fに密着していると共に、前記取付部111の底部111Cは、第3アーム部材98の前記連結部98Bにビス等の2個の結合具114で結合されている。このため、係止部材110は、図14に示すように、第3アーム部材98と共に、扉体1の厚さ方向を軸方向とする回動中心軸99を中心に回動可能となっている。
図13及び図14に示されているように、第3アーム部材98のアーム部98Aの二股部98Cの上片部98Dの内側は、第2アーム部材92の2個の傾斜部92Eに架設されている軸部材96の軸受部材97に係合可能となっている。
また、2個のアーム部98Aの延出部98Fの間には軸部材102が架設されており、一方、前記枠部材84の2個の立上部84Bにおけるアーム部98Aの二股部98Cの上片部98Dよりも上方の高さ位置には、軸部材101が架設されている。そして、この軸部材101における扉体1の厚さ方向中央部又は略中央部にはコイルばね100の一端が係止されていると共に、前記軸部材102における扉体1の厚さ方向中央部又は略中央部にはこのコイルばね100の他端が係止されている。
前述したように、図13及び図14は、平常時の係止部材110を示すものである。この平常時における係止部材110は、水平姿勢又は略水平姿勢の状態が保持されるようになっており、このため、開き移動した扉体1の戸先側のローラ47Aのブラケット48Aに取り付けられた前記被係止部材120のローラ123が、係止部材110の屈曲部113の2個の傾斜面113A,113Bのうちの扉体1の開き側の傾斜面113Bに係止されるようになっている。
火災発生時等の非常時等には、前記制御装置からリード線106を通じて供給されるDC24Vによりソレノイド85のコイル85Aが励磁される。これにより、プランジャ86が図示しないストッパに吸引されるので、プランジャ86は扉体1の閉じ側にスライドし、前記ストッパの窪み部にプランジャ86の先端部が挿入される。一方、平常時においては、ソレノイド85のコイル85Aは励磁されておらず、このため、プランジャ86は扉体1の開閉移動方向にスライド可能となっている。
前述したように、プランジャ86の前記露出部分のうちの二股部86Aを除く部分の外周には、コイルばね88が巻き回されており、このコイルばね88の一端は前記外周に係止されていると共に、他端はコイル85Aの前記挿入口の近傍に係止されている。図14に示すように、係止部材110が水平姿勢又は略水平姿勢を保持している平常時においては、第2アーム部材92のアーム部92Aの第1連結部92Bの先端部の下面が、第1アーム部材90のアーム部90Aの連結部90Bの先端部の前面に係止すると共に、第2アーム部材92のアーム部90Aの先端部が、第1アーム部材90のアーム部90Aに当接しているが、このときのコイルばね88の状態は、縮んでばね力が蓄圧された状態となっている。このため、プランジャ86は、このコイルばね88に蓄圧されたばね力により、扉体1の開き側への付勢力が常時付与された状態となっている。
平常時において、扉体1が開き移動し、この扉体1が全開位置の近傍まで開き移動すると、扉体1の戸先側のブラケット48Aに取り付けられていた被係止部材120のローラ123は、まず、図14に示す係止部材110の屈曲部113の2個の傾斜面113A,113Bのうちの扉体1の閉じ側の傾斜面113Aに回転しながら当接するが、板ばねで形成されているこの係止部材110は、取付部111を支点として斜め上方に撓むので、被係止部材120のローラ123は、係止部材110の屈曲部113を通過することができる。この後、撓んだ係止部材110は再び水平姿勢又は略水平姿勢の状態に戻ると共に、扉体1は全開位置に達する。このとき、被係止部材120のローラ123は、図10に示されているように、水平姿勢又は略水平姿勢が保持された状態の係止部材110の屈曲部113における扉体1の開き側の傾斜面113Bに係止された状態となる。これにより、係止部材110は被係止部材120に係止した状態となり、扉体1の全開状態が保持されることになる。
上述したように、第1アーム部材90は、ソレノイド85の作動軸であるプランジャ86に軸部材87を介して連結されていると共に、第2アーム部材92に係脱自在となっている。また、この第2アーム部材92は、係止部材110が連結されている第3アーム部材98に係脱自在となっている。言い換えると、係止部材110は、第3アーム部材98を介して第2アーム部材92に係脱自在となっている。そして、第1アーム部材90が第2アーム部材92に係合し、かつ、第2アーム部材92が第3アーム部材98に係合しているときには、係止部材110の回動が阻止された状態となり、これにより、係止部材110は水平姿勢又は略水平姿勢が保持された状態となる。
このため、本実施形態では、係止部材110の回動を阻止する回動阻止手段89は、ソレノイド85の作動軸であるプランジャ86と、第2アーム部材92及び第3アーム部材98を介して係止部材110に係脱自在となっている係合部材である第1アーム部材90と、プランジャ86に巻き回され、このプランジャ86に扉体1の開き側への付勢力を付与するコイルばね88と、を含んで構成されており、このため、第2アーム部材92及び第3アーム部材98も回動阻止手段89を構成する部材となっている。
また、本実施形態では、第1アーム部材90と、第2アーム部材92と、第3アーム部材98は、ソレノイド85の作動軸であるプランジャ86のスライド動作を係止部材110の回動力に変換するため動力変換機構となっている。
次に、火災発生時等の非常時等における回動阻止手段89及び係止部材110の動作について、図14及び図15により説明する。
火災発生時等の非常時等に前記制御装置からリード線106を通じて供給されるDC24Vにより、ソレノイド85のコイル85Aが励磁されると、プランジャ86が図示しないストッパに吸引される。図15は、図14に示されているプランジャ86が扉体1の閉じ側(図15では左方向)にスライドし、このプランジャ86の先端部が前記ストッパの窪み部に挿入されたときの回動阻止手段89及び係止部材110の状態を示す図である。
前述したように、第1アーム部材90は、プランジャ86の二股部86Aに架設されていた軸部材87を介してこのプランジャ86に連結されており、図14及び図15に示されているとおり、プランジャ86が扉体1の閉じ側へスライドすることにより、前記軸部材87の両端部は、第1アーム部材90のアーム部90Aの長孔90Cの周縁部に当接しながら、この長孔90Cの下方から上方へ移動する。このため、第1アーム部材90は扉体1の閉じ側へ引っ張られるので、この第1アーム部材90は、扉体1の厚さ方向を軸方向とする回動中心軸91を中心に図14に示す矢印A方向(反時計回りの方向)へ回動することになる。
これにより、図15に示すように、第1アーム部材90の連結部90Bは第2アーム部材92の第1連結部92Bから離脱し、第1アーム部材90の連結部90Bと第2アーム部材92の第1連結部92Bとの係合状態は解除される。このため、第2アーム部材92は、この第2アーム部材92のアーム部92Aの第1連結部92Bが枠部材84の底部84Aに当接するまで、前記コイルばね94に蓄圧されていた収縮しようとするばね力による付勢力を付与されながら、扉体1の厚さ方向を軸方向とする回動中心軸93を中心に反時計回りである図14に示す矢印B方向(反時計回りの方向)へ回動する。
前述したように、第3アーム部材98のアーム部98Aの二股部98Cの上片部98Dは、第2アーム部材92のアーム部98Aの傾斜部92Eに架設されている軸部材96の軸受部材97に係合しているが、第2アーム部材92が前記矢印B方向に回動することにより、第3アーム部材98は、図14に示す矢印C方向とは反対の方向(時計回りの方向)に回動しようとする。
しかし、第3アーム部材98に連結している係止部材110の屈曲部113における扉体1の開き側の傾斜面113Bには、被係止部材120のローラ123が係止されているため、また、第3アーム部材98の二股部98Cの上片部98Dが前記軸部材101に当接するため、この第3アーム部材98の矢印C方向とは反対の方向への回動は阻止される。
一方、第2アーム部材92の回動は、前記コイルばね94に蓄圧されていたばね力による付勢力を付与されながら継続されるが、このコイルばね94には、第2アーム部材92の前記軸受部材97と、第3アーム部材98の前記上片部98Dとの係合状態が解除されるだけのばね力が蓄圧されるようになっているため、この後、第2アーム部材92の前記軸受部材97は第3アーム部材98の前記上片部98Dから離脱し、第2アーム部材92の前記軸受部材97と、第3アーム部材98の前記上片部98Dとの係合状態は解除されることになる。
この後、第3アーム部材98は、前記コイルばね100に蓄圧されていたばね力による付勢力を付与されながら、回動中心軸99を中心に反時計回りである図14に示す矢印C方向へ回動する。このため、第3アーム部材98の延出部98Fは、上向きに傾斜した状態となる。この結果、第3アーム部材98の延出部98Fに連結され、水平姿勢又は略水平姿勢を保持していた係止部材110は、図15に示すように、上向きに傾斜した姿勢の状態となる。
これにより、被係止部材120のローラ123が係止部材110の屈曲部113における扉体1の開き側の傾斜面113Bに係止されている状態は解除されるので、扉体1は前記扉体自動閉鎖装置50による閉じ移動を開始する。
なお、図示されていないが、係止部材110が上向きに傾斜した姿勢となった後は、ソレノイド85のコイル85Aは励磁されないため、ストッパに吸引されていたプランジャ86は、コイルばね88に蓄圧されていた伸長しようとするばね力で扉体1の開き側へスライドし、これにより、第1アーム部材90は、時計回りの方向へ回動した状態となっている。
次に、図15に示されているように、火災発生時等の非常時等のソレノイド85の作動により上向きに傾斜した姿勢となった係止部材110を、図14に示されているように、再び水平姿勢又は略水平姿勢が保持された状態に戻す手順を説明する。
まず、第2アーム部材92の第1連結部92Bが、第1アーム部材90の連結部90Bに係合すると共に、第2アーム部材92のアーム部92Aの延出部92Dの先端部が、第1アーム部材90のアーム部90Aに当接するように、第2アーム部材92を時計回りの方向(図14に示す矢印B方向とは反対の方向)に手動で回動させる。その際、第2アーム部材92が第1アーム部材90と干渉しないように、この第1アーム部材90を反時計回りの方向(図14に示す矢印A方向)に手動で回動させる。このとき、軸部材87を介して第1アーム部材90と連結しているソレノイド85のプランジャ86は、軸部材87が第1アーム部材90のアーム部90Aに形成されている長孔90Cを上方から下方に移動することにより、扉体1の閉じ側(図15では左側)へスライドする。これにより、第2アーム部材92を第1アーム部材90と干渉することなく回動させることができる。なお、プランジャ86が扉体1の閉じ側へスライドすることによりコイルばね88は圧縮され、このコイルばね88には、扉体1の開き側へ伸長しようとするばね力が蓄圧されることになる。
なお、本実施形態では、第2アーム部材92の第1連結部92Bが、第1アーム部材90の連結部90Bに係合すると共に、第2アーム部材92のアーム部92Aの延出部92Dの先端部が、第1アーム部材90のアーム部90Aに当接したときには、第3アーム部材98のアーム部98Aの二股部98Cの上片部98Dが、第2アーム部材92に架設されている軸部材96の軸受部材97に係合すると共に、第3アーム部材98に連結されている係止部材110は、水平姿勢又は略水平姿勢の状態となる。
図14に示すように、第2アーム部材92の第1連結部92Bが、第1アーム部材90の連結部90Bに係合すると共に、第2アーム部材92のアーム部92Aの延出部92Dが、第1アーム部材90のアーム部90Aに当接したときには、第1アーム部材90及び第2アーム部材92から手を離す。このとき、扉体1の閉じ側へスライドさせていたプランジャ86に巻き回されていたコイルばね88には、圧縮されていたことによるばね力(伸長しようとするばね力)が蓄圧されているため、軸部材87を介してプランジャ86に連結されている第1アーム部材90は、この蓄圧されていたコイルばね88のばね力で、第2アーム部材92を扉体1の開き側へ押圧する。言い換えると、第1アーム部材90は第2アーム部材92に圧接する。
これにより、第1アーム部材90と第2アーム部材92との係合状態は保持されると共に、この第2アーム部材92と第3アーム部材98との係合状態も保持されることになる。このため、係止部材110は水平姿勢又は略水平姿勢の状態が保持される。
なお、図14に示す状態において、一端が、ケース82の枠部材84の立上部84Bの上部に架設された軸部材95に係止され、他端が、第2アーム部材92のアーム部90Aの傾斜部92Eに架設された軸部材96に係止されているコイルばね94は、引っ張られてばね力が蓄圧された状態となっている。このため、係止部材110が水平姿勢又は略水平姿勢を保持している状態においては、第2アーム部材92のアーム部92Aの傾斜部92Eは、コイルばね94に蓄圧されたばね力で常時引っ張られた状態となっており、これにより、第2アーム部材92には、回動中心軸93を中心とする図14に示す矢印B方向への付勢力が常時付与されている。
また、図14に示す状態において、一端が、ケース82の枠部材84の立上部84Bの上部に架設された軸部材101に係止され、他端が、第3アーム部材98のアーム部98Aの延出部98Fに架設された軸部材102に係止されているコイルばね100も、引っ張られてばね力が蓄圧された状態となっている。このため、係止部材110が水平姿勢又は略水平姿勢を保持している状態においては、第3アーム部材98のアーム部98Aの延出部98Fは、コイルばね100に蓄圧されたばね力で常時引っ張られた状態となっており、これにより、第3アーム部材98は、回動中心軸99を中心とする図14に示す矢印C方向への回動力が常時付与されている。
なお、本実施形態では、係止部材110の被係止部材120との係止が解除された旨の信号を外部に伝達するためのマイクロスイッチ105が備えられており、図16は、平常時におけるこのマイクロスイッチ105の正面図である。この図16に示されているように、平常時において、本体81の枠部材84の2個の立上部84Bのうちの上枠部材10の垂下部10B側とは反対側の立上部84Bに取り付けられているマイクロスイッチ105のアクチュエータ105Aは、外力を受けていない状態となっている。
図13及び図16に示されているように、第2アーム部材92の2個のアーム部92Aの延出部92Dのうちのアクチュエータ105A側(上枠部材10の垂下部10B側とは反対側)の延出部92Dには、円柱形状のピン107が取り付けられており、このピン107は、図16に示すように、枠部材84の2個の立上部84Bのうちのアクチュエータ105A側の立上部84Bに形成された長孔90Cから突出している。アクチュエータ105Aに当接可能となっているピン107は、平常時には長孔84Cの上方に配置されており、アクチュエータ105Aから離間して配置されている。
前述したように、火災発生時等の非常時等には、ソレノイド85が励磁されることによるプランジャ86の扉体1の閉じ側へのスライドで、第2アーム部材92は、図15に示すように、回動中心軸93を中心に矢印B方向に回動する。すなわち、第2アーム部材92のアーム部92Aの延出部92Dは斜め下向きの姿勢となる。このため、図16に示されているように、この延出部92Dに取り付けられている前記ピン107も斜め下向きである矢印D方向に移動するため、長孔84Cから突出しているこのピン107は、マイクロスイッチ105の前記アクチュエータ105Aに当接し、このアクチュエータ105Aを押し下げる。
これにより、マイクロスイッチ105が作動するので、係止部材110の被係止部材120との係止が解除された旨の信号が、リード線105Bを通じて外部に伝達されるようになっている。
本実施形態では、係止部材110と被係止部材120との係止が解除されたとき、扉体1は扉体自動閉鎖装置50により自動的に閉じ移動するが、初期の扉体1の閉じ移動をより迅速なものとし、扉体1の閉じ移動の所要時間を短縮するために、扉体1に閉じ側への付勢力を付与するための付勢手段が備えられている。
図7及び図8に示されているように、本実施形態に係る付勢手段130は、第1部材131、第2部材136と、含んで構成されている。第1部材131は、上枠部材10の垂下部10Bにビス等の結合具135で固定された基部132と、この基部132の上部における扉体1の開閉移動方向(図7及び図8では左右方向)の両端部から、この扉体1の厚さ方向に互いに平行又は略平行に突出する2個の突出部133,134と、を有するものであり、これらは、金属製の板材の折り曲げにより形成されたものである。そして、図10のS17−S17線断面図である図17に示されているように、2個の突出部133,134のうちの一方である扉体1の閉じ側の突出部133には、扉体1の開閉移動方向に貫通する貫通孔133Aが形成されており、図示されていないが、他方の延出部である扉体1の開き側の突出部134にも、扉体1の開閉移動方向に貫通する貫通孔134Aが形成されており、これらの貫通孔133A,134Aは、互いに対向する位置に形成されている。言い換えると、これらの貫通孔133A,134Aは共に同じ又は略同じ形状を有し、かつ、これらの貫通孔133A,134Aが形成される上下方向の位置及び扉体1の厚さ方向である左右方向の位置は同じ又は略同じとなっている。
一方、第2部材136は、図7及び図8に示されているように、扉体1の開閉移動方向に延び、前記第1部材の2個の突出部133,134の前記貫通孔133A,134Aにスライド自在に挿通された金属製の板状部材137と、扉体1が全開位置に達した状態におけるこの付勢手段130の平面図である図18に示されているように、板状部材137における第1部材131の扉体1の開き側の突出部134に形成された貫通孔134Aから扉体1の開き側へ突出した部分から、被係止部材120側(上枠部材10の垂下部10B側とは反対側)へ延び、この被係止部材120の支持部材121における扉体1の開き側の端部121Cに当接可能な金属製の板状部材138と、を有している。
図8に示されているように、板状部材137は、扉体1の開閉移動方向への長さを有し、第1部材131の2個の突出部133,134に形成された2個の貫通孔133A,134Aにスライド自在に挿通された長辺部137Aと、この長辺部137Aにおける扉体1の閉じ側の端部から、上枠部材10の垂下部10B側へ直角に屈曲した短辺部137Bとからなっており、長辺部137Aが第2部材136の第1延出部となっている。なお、短辺部137Bは、長辺部137Aが第1部材131の扉体1の閉じ側の突出部133の貫通孔133Aから抜け出るのを防止するためのものであるが、長辺部137Aの長さが十分長い場合には、板状部材137にこの短辺部137Bを設ける必要はない。
また、板状部材138は、扉体1の開閉移動方向への長さを有する短辺部138Aと、この短辺部138Aにおける扉体1の閉じ側の端部から、被係止部材120側へ直角に屈曲した長辺部138Bとからなっており、短辺部138Aは、長辺部137Aにおける第1部材131の扉体1の開き側の突出部134の貫通孔134Aから突出した部分にビス等の結合具139で結合されている。なお、長辺部138Bが第2部材136の第2延出部となっている。
また、板状部材137の長辺部137Aにおける第1部材131の2個の突出部133,134の間の部分には、コイルばね140が巻き回されており、このコイルばね140の一端は長辺部137Aに係止され、他端は第1部材131の扉体1の開き側の突出部134に係止されている。
図18に示すように、扉体1を開き移動させ、この扉体1が全開位置まで開き移動すると、扉体1の戸先側のブラケット48Aに取り付けられた被係止部材120のローラ123が、係止部材110の屈曲部113における扉体1の開き側の傾斜面113Bに係止されるとともに、この被係止部材120の支持部材121の扉体1の開き側の端部121Cが、板状部材138の長辺部138Bに当接するので、第2部材136は、扉体1の開き側へスライドする。これにより、この第2部材136のスライドによりコイルばね140にはばね力が蓄圧されていく。そして、扉体1が全開位置に達したとき、係止部材110の被係止部材120との係止が保持され、また、コイルばね140に蓄圧されたばね力は最大となる。
前述したように、火災発生時等の非常時等には、係止部材110の被係止部材120との係止は、係止部材110が上向きに傾斜した姿勢となることで解除され、これにより、扉体1は前記扉体自動閉鎖装置50により自動的に閉じ移動することになる。そして、係止部材110の被係止部材120との係止が解除された直後は、第2部材136は、コイルばね140に蓄圧された伸長しようとするばね力により扉体1の閉じ側へスライドする。これにより、第2部材136の板状部材138の長辺部138Bは、図10に示すように、被係止部材120の支持部材121における扉体1の開き側の端部121Cを扉体1の閉じ側へ押し出す。すなわち、扉体1は、伸長しようとするばね力が蓄圧されていたコイルばね140から、扉体1の閉じ側への付勢力を付与される。これにより、扉体1は、付勢手段130を備えていない場合と比較して、閉じ移動の初期段階でより迅速な閉じ移動速度を得ることができる。
なお、平常時の係止部材110は水平姿勢又は略水平姿勢の状態が保持されており、この平常時において、人間が把持部52に手を掛けて扉体1を全開位置まで開き移動させた場合には、係止部材110が被係止部材120に係止し、扉体1は全開状態が保持される。この状態において、人間が、把持部52に手を掛けて扉体1に対して所定の閉じ側への外力(係止部材110の被係止部材120との係止が解除されるのに十分な閉じ側への外力)を加えた場合には、被係止部材120のローラ123は、係止部材110が撓み変形することでこの係止部材110の屈曲部113を通過することができる。これにより、係止部材110の被係止部材120との係止は解除され、扉体1は、前記扉体自動閉鎖装置50により自動的に閉じ移動を行うことになる。
以上説明した本実施形態では、被係止部材120に係止する係止部材110は、上枠部材10に配置された本体81に取り付けられ、この本体81から扉体1の開き側に延びている。
このため、本実施形態では、被係止部材120の構造は、従来のように、戸先側のローラ47Aのブラケット48Aから扉体1の閉じ側へ突出する(持ち出しする)構造となっておらず、その代わりに、本体81からの係止部材110の扉体1の開き側への延出量が、従来の戸先側のローラのブラケットからの被係止部材の扉体の閉じ側への突出量(持ち出し量)と同じ又はこれよりも大きくなっている。これにより、戸先側のローラ47Aのブラケット48Aからの被係止部材120の扉体1の閉じ側への突出量をゼロ又は略ゼロにすることが可能になっている。
このため、本実施形態によると、被係止部材120の小型化、構造の簡単化を図ることができるようになる。
また、本実施形態によると、扉体全開保持装置が、前述した特許文献1(特開2000−192708号公報)記載されている扉体全開保持装置(図1及び図2参照)と比較して小型化されているので、上枠部材10と点検カバー31とを含んで構成される無目内に収まるローラ47の回転中心と、上枠部材10の上面部10Aとの間の空間を小さくすることができ、これにより、無目全体をコンパクトにすることができる。
なお、本実施形態において、係止部材110は、扉体全開保持装置の本体81の上下寸法の範囲内で回動動作することが好ましい。これにより、扉体全開保持装置のコンパクト化を図ることができる。
なお、本実施形態では、本体81からの係止部材110の扉体1の開き側への延出量をより大きくしてもよい。これにより、本体81の扉体1の開閉移動方向の配置位置をより扉体1の閉じ側の位置とすることができる。このため、出入口2の上方に配置された点検カバー31を取り外したときの本体81の点検、整備等の作業がよりし易くなる。
また、本実施形態では、係止部材110の屈曲部113が配置される位置は、扉体1の戸袋3の内部となっているため、出入口2の上方に配置されている点検カバー31を取り外して、扉体全開保持装置80の本体81や、扉体1を開閉移動させるための扉体移動機構であるガイドレール45等の点検作業を行うときに、作業者が係止部材110の屈曲部113に引っ掛かり、これにより、係止部材110が損傷してしまうことが防止される。
また、本実施形態では、係止部材110が係止する被係止部材120の部分が回転部材であるローラ123となっているので、前記部分が回転部材となっていない場合と比較して、被係止部材120は、係止部材110の屈曲部113にスムーズに係止される。また、これにより、係止部材110と被係止部材120との間に生じる摩擦を軽減することができる。
また、本実施形態では、係止部材110の被係止部材120との係止が解除されたときに、扉体1に閉じ側への付勢力を付与するための付勢手段130が備えられているため、付勢手段130が備えられていない場合と比較して、係止部材110の被係止部材120との係止が解除されたときにおける扉体1の初期の閉じ移動速度をより速くすることができる。これにより、扉体1が全閉位置に達するまでの所要時間を短縮することができる。
図19〜図21は、別実施形態に係る付勢手段を示す図である。図19は、扉体1の全開状態が保持されているときの本実施形態に係る付勢手段150を上方から見た平面図である。また、図20及び図21は、本実施形態に係る付勢手段150を下方から見た平面図であり、図20は、扉体1が開き移動し、係止部材110の屈曲部113における扉体1の閉じ側の傾斜面113Aに被係止部材120のローラ123が当接した直後の状態の図であり、図21は、開き移動していた扉体1が全開位置に達し、係止部材110の屈曲部113における扉体1の開き側の傾斜面113Bに被係止部材120のローラ123が係止されている状態の図である。なお、図19及び図20に示されている矢印Eは扉体1の開き移動方向を示すものであり、図19に示されている矢印Fは扉体1の閉じ移動方向を示すものである。
図19に示されているように、本実施形態に係る付勢手段150は、水平方向に延びる水平部151Aと、この水平部151Aから垂下し、上枠部材10の垂下部10Bにビス等の結合具で結合された第1垂下部151Bと、前記水平部151Aにおける扉体1の開き側の端部から垂下した第2垂下部151Cと、を有する金属製の板材で形成された保持部材151と、金属製の板材で形成され、前記水平部151Aの下面にビス等の結合具で結合された回動部材153と、を含んで構成されている。そして、前記第1垂下部151Bが、不動部材である上枠部材10に固定された基部となっており、前記水平部151Aが、回動部材153が取り付けられる水平延出部となっている。
回動部材153は、扉体1の上下方向を軸方向とする回動中心軸154を中心に回動自在となっており、また、この回動部材153における扉体1の閉じ側の端部153Bは、被係止部材120の支持部材121における扉体1の開き側の端部121Cに当接可能となっている。なお、前記第2垂下部151Cは、図21に示されているように、被係止部材120に当接した回動部材153が、扉体1の開き側へ所定角度以上回動するのを阻止するためのストップ部材となっている。
図19及び図20に示されているように、保持部材151の下面における回動部材153よりも扉体1の閉じ側の部分には、この保持部材151にビス等の結合具164で取り付けられた水平部161と、この水平部161から垂下した第1垂下部162及び第2垂下部163と、を有する金属製の板状部材160が配置されており、この板状部材160は、被係止部材120側(上枠部材10の垂下部10B側とは反対側)に向かって斜めに配置されている。
板状部材160の水平部161における扉体1の開き側の端部から垂下した第2垂下部163は、回動部材153が被係止部材120に当接していないときに、この回動部材153が扉体1の閉じ側へ所定角度以上回動することを阻止するためのストップ部材となっている。
また、水平部161における上枠部材10の垂下部10Bと対向する側面部における扉体1の閉じ側の端部から垂下した第1垂下部162には、貫通孔162Aが形成されており、回動部材153にも貫通孔153Aが形成されている。そして、第1垂下部162の貫通孔162Aにはコイルばね165の一端が係止されると共に、回動部材153の貫通孔153Aにはコイルばね165の他端が係止されている。このため、回動部材153と、保持部材151における回動部材153の回動中心軸154よりも扉体1の閉じ側の部分とは、弾性部材であるコイルばね165で連結されている。
図20に示されているように、扉体1が矢印E方向に開き移動し、回動部材153における扉体1の閉じ側の端部153Bが、被係止部材120の支持部材121における扉体1の開き側の端部121Cに当接するまでは、コイルばね165にばね力は蓄圧されない。言い換えると、扉体1が矢印E方向に開き移動し、回動部材153における扉体1の閉じ側の端部153Bが、被係止部材120の支持部材121における扉体1の開き側の端部121Cに当接することにより、回動部材153が扉体1の開き側(矢印Gの方向)へ回動すると共に、コイルばね165が引っ張られてこのコイルばね165にばね力が蓄圧されていく。そして、図21に示すように、扉体1が全開位置に達し、係止部材110が被係止部材120に係止したときに、コイルばね165に蓄圧されたばね力は最大となる。
前述したように、火災発生時等の非常時等には、係止部材110の被係止部材120との係止は、係止部材110が上向きに傾斜した姿勢となることで解除され、これにより、扉体1は扉体自動閉鎖装置50により自動的に閉じ移動することになる。そして、係止部材110の被係止部材120との係止が解除された直後は、回動部材153は、コイルばね165に蓄圧されたばね力により扉体1の閉じ側(図20の矢印Gの方向とは逆の方向)へ回動する。これにより、この回動部材153における扉体1の閉じ側の端部153Bは、被係止部材120の支持部材121における扉体1の開き側の端部121Cを扉体1の閉じ側へ押し出す。すなわち、扉体1は、ばね力が蓄圧されていたコイルばね165から、扉体1の閉じ側への付勢力を付与される。これにより、扉体1は閉じ移動の初期段階で、より迅速な閉じ移動速度を得ることができる。
なお、図20及び図21に示されているように、回動部材153には、この回動部材153における扉体1の閉じ側の端部153Bが、被係止部材120の支持部材121における扉体1の開き側の端部121Cに当接した際に発生する衝突音を防止するためや、この当接に伴う回動部材153及び/又は支持部材121の損傷を防止するため等のカバー部材155が、ビス等の結合具156で取り付けられており、このカバー部材155は、ゴムや軟質合成樹脂等で形成されている。
なお、以上説明した付勢手段150において、回動部材153と、保持部材151における回動部材153の回動中心軸154よりも扉体1の閉じ側の部分とを連結するための弾性部材は、コイルばね165であったが、紐状のゴムでもよい。
以上説明した実施形態では、引戸装置の扉体の個数は1個であったが、複数個でもよい。扉体の個数が複数個である場合には、これらの扉体は、片引き式のものでもよく、引分け式のもの(例えば、左右1組の扉体により開口部が開閉されるものや、左右2組の第1及び第2扉体により開口部が開閉されるもの等)でもよい。
また、以上説明した実施形態では、扉体1の開閉移動方向は、直線方向であったが、曲線方向でもよく、これらを複合した方向でもよい。
以上説明した実施形態では、扉体1の開閉移動を案内するガイド部材は、ガイドレール45であったが、スライドレール(スライディングレール)でもよい。ガイド部材がスライドレールである場合には、係合部はこのスライドレールにスライド自在に係合するスライド部となる。
また、以上説明した実施形態において、扉体1を自動的に閉じ移動させるための扉体自動閉鎖手段は、扉体1の開閉移動を案内するガイドレール45を扉体1の閉じ側に向かって斜め下向きに傾斜させて配置したものでもよい。これによると、係止部材110の被係止部材120との係止が解除されたとき、全開位置に達していた扉体1は、この扉体1の自重により、傾斜したガイドレール45に案内されながら自動的に閉じ移動する。