JP5182876B2 - (メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法 - Google Patents

(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法 Download PDF

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Description

(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法に関する。
ヒドロシリル化反応は官能基変換や、架橋反応等に利用され、工業的に非常に有用な反応の一つである。例えば、分子鎖の末端に官能基としてアルケニル基を有する重合体はヒドロシリル基含有化合物を硬化剤として用いることにより、架橋硬化し、耐熱性、耐久性等の優れた硬化物を与えること、また、末端にアルケニル基を有する重合体に架橋性シリル基を有するヒドロシリル基含有化合物を反応させることにより、架橋性シリル基を末端に有する重合体が製造されることが知られている。これらのヒドロシリル化反応は加熱することにより進行するが、反応をより迅速に進めるために、ヒドロシリル化触媒が添加される。このようなヒドロシリル化触媒としては、有機過酸化物やアゾ化合物等のラジカル開始剤、および遷移金属触媒が挙げられる。特に、遷移金属触媒を用いると触媒量でヒドロシリル化を迅速に進めることができることが知られている。
我々は、近年制御重合の一つであるリビングラジカル重合(特に原子移動ラジカル重合)を利用することで分子量、分子量分布が制御されたアルケニル基又は架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体及びそれを用いた硬化性組成物の開発に成功した(特許文献1〜11)。
一方、原子移動ラジカル重合法を利用して製造された(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、重合触媒残渣等が遷移金属触媒等のヒドロシリル化触媒の触媒毒として作用し、ヒドロシリル化反応を著しく阻害することも判っている。この解決方法として我々は吸着精製法を開発し(特許文献12〜17)、特にアルミニウムシリケート等の酸性吸着剤とハイドロタルサイト等の塩基性吸着剤を併用することが効果的であることを明らかにした(特許文献17)。
また、原子移動ラジカル重合法を利用して得られる架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、重合触媒残渣や開始剤由来の酸性物質、重合体から遊離するハロゲン化水素等の影響により、製造中、貯蔵中に架橋反応が進行しやすく、これまでも様々な方法で安定化が図られてきた。例えば、脱水剤(若しくは安定剤)などを添加する方法(特許文献18、19)、重合体のハロゲン基を除去し、重合体そのものを安定化する方法(特許文献20、21)などが挙げられる。然しながら商業生産レベルになると原料の不純物の影響や製造・保管上の問題等、様々な要因により、保存安定性が改善されない場合があることが判ってきた。
更には、重合体は、通常製造工程時に溶媒としてトルエン、キシレンなどの芳香族化合物が用いられる。これはこれらの溶媒が重合体を溶解する性質が大きく、安価であるためである。しかし、シックハウス問題、半導体用クリ−ンル−ム内部の環境負荷軽減等の環境問題から芳香族化合物にかわる溶媒を用いることが社会的要望としてある(特許文献22)。
特開平09−272714号公報 特開平11−80571号公報 特開平09−272715号公報 特開平11−5815号公報 特開平11−80249号公報 特開平11−80250号公報 特開平11−116617号公報 特開平11−116763号公報 特開平11−130931号公報 特開2000−38404号公報 特開2000−44626号公報 特開平11−193307号公報 特開2001−323011号公報 特開2001−323012号公報 特開2001−323016号公報 特開2001−323021号公報 特開2003−96130号公報 特開平11−43512号公報 特開2004−51726号公報 特開2000−344831号公報 特開2003−292531号公報 特開2003−96106号公報
本発明は、非芳香族化合物である酢酸エステルを溶媒とする(メタ)アクリル酸エステル系重合体の高温吸着処理を行うに当たり、重合体の精製度を担保しつつ、酢酸エステルの加水分解を抑制する、経済的かつ効率的な(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法を提供するものである。
溶媒として芳香族化合物の替わりに酢酸エステルを使用し、150℃以上の温度で(メタ)アクリル酸エステル系重合体を吸着精製する。吸着剤としてはアルミニウムシリケート及びハイドロタルサイトを併用し、アルミニウムシリケートの使用量を重合体100重量部に対して0.05重量部以上、0.5重量部以下とする。
芳香族化合物を使用して得られる従来品と同等の精製度、ヒドロシリル化活性を発現する。また、溶媒である酢酸エステルの劣化を抑制し、溶媒の再利用を可能とする。更には、重合体の酸性化(酸価の上昇)を抑制し、その結果、架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の貯蔵安定性を改善することができる。
本発明は酢酸エステルを溶媒とする(メタ)アクリル酸エステル系重合体の高温吸着処理に関するものであるが、所望の精製度を得るために本発明以外のその他の精製方法を組合わせて実施しても良い。その他の精製方法としては詳述しないが、従来公知な方法が使用されて良い。
本発明は、原子移動ラジカル重合により製造される(メタ)アクリル酸エステル系重合体、特にアルケニル基を有する重合体に対するヒドロシリル化活性発現を主目的として開発したものであるが、アロマフリー化及び溶媒劣化の抑制、貯蔵安定性の改善等の効果もあるので、対象は原子移動ラジカル重合により製造される(メタ)アクリル酸エステル系重合体に限定されず、フリーラジカル重合法等の従来公知な方法により製造される種々の(メタ)アクリル酸エステル系重合体であっても良い。また同じ理由によりアルケニル基はなくても良いし、高温吸着処理に耐えうる官能基であれば特にアルケニル基に限定されず、アルケニル基以外の公知な官能基を有するものであっても良い。
原子移動ラジカル重合により製造される(メタ)アクリル酸エステル系重合体は重合触媒除去の技術的難易度が高いため、本発明の吸着精製を実施する前に予備的な精製(粗精製)を実施することが好ましい。予備的精製方法については特に限定されず従来公知な方法が使用されて良いが、本発明と同様に吸着精製法等の非水精製法を利用することが好ましく、本発明の趣旨に合わせアロマフリーな精製方法であることがより好ましい。
<吸着精製法について>
はじめに吸着精製方法について詳述する。吸着方式としては回分式、吸着塔などによる連続式いずれでも構わないが、溶媒で希釈し、吸着剤も添加して攪拌する回分方式が簡便である。予備的精製を実施する場合についても同様である。
<吸着精製時の溶媒について>
吸着時の溶媒としては環境対応の面から非芳香族化合物が使用されるが、一般的には極性の高い溶媒を用いると吸着能が低下するので低極性の溶媒であることが好ましい。溶媒として使用される溶剤は、吸着能及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体の溶解性を考慮し、酢酸エステルを使用することが好ましく、特に酢酸ブチルが好ましい。予備的精製を実施する場合についても同様であるが、特に限定されない。
溶媒量については特に限定なく、重合体の粘度(単量体種、分子量・分子量分布)、処理温度、吸着剤量等に合わせて調整することができる。一般的には、好ましくは重合体100重量部に対して1重量部以上、より好ましくは5重量部以上、更に好ましくは50重量部以上、特に好ましくは70重量部以上であり、好ましくは500重量部以下、より好ましくは300重量部以下、更に好ましくは200重量部以下、特に好ましくは150重量部以下である。また、回分式で吸着処理を行う場合には、吸着処理後に吸着剤を遠心沈降やろ過などにより除去する必要があるが、吸着処理後に更に溶剤を追加して遠心沈降やろ過などの吸着剤の除去を行ってもよい。例えば、吸着温度やろ過温度が160℃未満である場合には溶媒量は70重量部〜150重量部が好ましい。吸着温度やろ過温度が160℃以上である場合には重合体の粘度も低下するので溶媒量は少なくても良く、5重量部〜70重量部が好ましく、5重量部〜30重量部がより好ましい。予備的精製を実施する場合についても同様であるが、特に限定されない。
<吸着剤について>
吸着剤としては活性炭、イオン交換樹脂等の合成樹脂系吸着剤、ゼオライト等の無機系吸着剤などがあるが、本発明においては後述するアルミニウムシリケートとハイドロタルサイト類化合物を併用する。アルミニウムシリケートやハイドロタルサイト類化合物は、無機系吸着剤に分類される。無機系吸着剤は、一般的に固体酸、固体塩基を有し、粒子は多孔質構造を持っているため、吸着能は非常に高い。また、低温から高温まで使用可能であることも特徴の一つである。
アルミニウムシリケートは、珪酸の珪素の一部がアルミニウムに置換されたもので、軽石、フライアッシュ、カオリン、ベントナイト、活性白土、ケイソウ土等が知られている。この中でも、合成のアルミニウムシリケートは比表面積も大きく吸着能力が高い。合成アルミニウムシリケートとしてはキョーワード700シリーズ(協和化学製)などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
ハイドロタルサイト類化合物は、2価の金属(Mg2+,Mn2+,Fe2+,Co2+,Ni2+,Cu2+,Zn2+等)と3価の金属(Al3+,Fe3+,Cr3+,Co3+,In3++等)の含水水酸化物又は前記水酸化物の水酸基の一部をハロゲンイオン、NO3-,CO3 2-,SO4 2-,Fe(CN)6 3-,CH3CO2-,シュウ酸イオン、サリチル酸イオン等の陰イオンに交換したものである。これらのうち、2価の金属がMg2+、3価の金属がAl3+であって、水酸基の一部をCO3 2-に交換したハイドロタルサイト類が好ましく、例えば合成品としてはキョーワード500シリーズ、キョーワード1000シリーズ(いずれも協和化学(株)製)などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。また、上記ハイドロタルサイト類を焼成して得られる吸着剤も好適に使用される。そのなかでも2価の金属がMg2+、3価の金属がAl3+であるハイドロタルサイト類を焼成して得られるMgO−AlO3系固溶体が好ましく、例えばキョーワード2000(協和化学(株)製)などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。本発明においては、ハイドロタルサイト類の焼成品についてもハイドロタルサイト類として分類する。
予備的精製を行う場合においてもアルミニウムシリケートとハイドロタルサイト類化合物を併用することが好ましいが、特に限定されず、従来公知な吸着剤を使用してよい。例えば、二酸化珪素;酸化マグネシウム;シリカゲル;シリカ・アルミナ;マグネシウムシリケート;活性アルミナ;水酸化アルミニウム;酸性白土、活性白土等の粘土系吸着剤;珪酸アルミニウムナトリウム等の含水アルミノ珪酸塩鉱物群で総称されるゼオライト系吸着剤;ドーソナイト類化合物;等の無機系吸着剤が例示される。また吸着剤は単独で用いても2種以上を混合して用いてもかまわない。
<吸着剤量について>
本発明で使用するアルミニウムシリケートの量は重合体100重量部に対して0.05重量部以上、0.5重量部以下であり、好ましくは0.5重量部以上0.2重量部以下である。
アルミニウムシリケート量が過少では精製不良となり、目的とする十分なヒドロシリル化活性が発現しない。アルミニウムシリケート量が過多では高温加熱により酢酸エステルの加水分解が進行しやすくなり、酢酸やアルコールの発生量が多くなる。溶剤である酢酸エステルの劣化は重合体の品質低下に繋がるので避けなければならない。例えば、加水分解して発生した酢酸は(メタ)アクリル酸エステル系重合体と親和性が強く、重合体から完全に除去することは難しい。酢酸が重合体中に残留すると臭気の原因となったり、最終的に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の架橋反応の触媒として作用し、熱的安定性や貯蔵安定性等の低下の原因となったりする。また、溶媒である酢酸エステルは通常、重合体と分離・回収されて、再度吸着精製に溶媒として使用されるため、再利用の回数が多くなるにつれて酢酸やアルコールが酢酸エステル中に蓄積していくこととなる。蓄積量が多くなると吸着精製効率の低下や酢酸の重合体への残留量の増加などが起こるため、溶媒の再生、廃棄コスト等が必要となる。また、同様に(メタ)アクリル酸エステル系重合体の側鎖エステル基も加水分解されやすくなり、重合体そのものがダメージを受ける場合もある。酢酸やアルコールと同様に(メタ)アクリル酸エステル系重合体の側鎖エステル基が加水分解されて、カルボキシル基に変換されても同様に架橋反応の触媒として作用し、熱的安定性や貯蔵安定性等に悪影響を及ぼす場合があるので好ましくない。
ハイドロタルサイト類化合物の使用量は特に限定されないが、100重量部に対して0.05重量部以上10重量部以下であることが好ましく、0.5重量部以上5重量部以下であることがより好ましい。吸着剤を大量に使用すると重合体の収率が下がるので好ましくない。また、吸着剤の増量はろ過の長時間化や吸着剤の廃棄量増加に繋がるので必要最少量に留める事が望ましい。
予備的精製については吸着剤量に特に限定はないが、本発明と同様の条件、すなわちアルミニウムシリケートを使用し、酢酸エステル溶媒で高温吸着精製を行う場合には、本発明と同様にアルミニウムシリケートの量は重合体100重量部に対して0.05重量部以上、0.5重量部以下であり、好ましくは0.5重量部以上0.2重量部以下である。
<吸着温度について>
本発明の吸着温度は150℃以上であり、好ましくは170℃以上、より好ましくは190℃以上である。高温の方が、精製レベルが高くなり、ヒドロシリル化活性の発現が良好である。また、吸着剤の減量もしやすい。(メタ)アクリル酸エステル系重合体は高温耐性に優れるが、高温過ぎると重合体の劣化が進行するので230℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましい。
酢酸エステルにアルミニウムシリケートを存在させ、高温加熱すると積極的に水を加えなくとも吸着剤中に含まれる水分で加水分解が進行し、酢酸とアルコールが発生してしまう。一方、ハイドロタルサイト類化合物でも吸着剤中に水分は含まれるが、その量はアルミニウムシリケートより少なく、またハイドロタルサイト類は酸性物質を吸着するので酢酸の発生量も抑制される傾向にある。その面でも併用することが好ましい。
<(メタ)アクリル酸エステル系重合体について>
本発明は酢酸エステルを溶媒とする(メタ)アクリル酸エステル系重合体の高温吸着処理に関するものであり、アロマフリー化、溶媒劣化の抑制、貯蔵安定性の改善等様々な波及効果があるので、フリーラジカル重合法等の従来公知な方法により製造される種々の(メタ)アクリル酸エステル系重合体の吸着精製法として利用することもできる。その中でも原子移動ラジカル重合により製造される(メタ)アクリル酸エステル系重合体、特にアルケニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の精製において効果を発揮する。以下、アルケニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体について詳述する。
アルケニル基の数は特に限定されず、所望の硬化物の破断伸びや硬化速度が得られるように適宜定められるが、重合体1分子中に少なくとも1個、好ましくは1.2〜5個、より好ましくは1.4〜3個、特に好ましくは1.6〜2.5個存在するのがよい。重合体1分子中に含まれるアルケニル基の数が1個未満になると、ヒドロシリル化反応を経て得られる架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の硬化性が不十分になり、良好なゴム弾性挙動を発現しにくくなる。
アルケニル基は重合体分子鎖の末端に存在してもよく、内部(側鎖)に存在してもよい。分子鎖の末端に存在すると、架橋点間分子量が高くなるため、高伸びで低弾性率を示すゴム状硬化物が得られやすくなる。アルケニル基は重合体分子鎖の少なくとも片末端、好ましくは両末端に存在しているとよい。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体を構成する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては特に制約はなく、各種のものを用いることができる。例示するならば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。
上記の(メタ)アクリル酸エステル単量体の中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリルが好ましく、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸ステアリルが特に好ましく、これらの好ましい単量体が重量比で40%以上含まれていることが好ましく、60%以上含まれていることがより好ましく、80%以上含まれていることが特に好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル単量体とともに必要に応じてその他の単量体を共重合することもできる。その他の単量体としては例えば(メタ)アクリル酸;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニル単量体;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系単量体;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。
その他の単量体を共重合する場合には、その他の単量体が重量比で40%未満含まれていることが好ましく、20%未満含まれていることがより好ましく、10%未満含まれていることが特に好ましい。
アルケニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の数平均分子量は、特に制限されないが、下限は好ましくは3,000以上、より好ましくは5,000以上であり、上限は好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下である。つまり、3,000〜100,000が好ましく、5,000〜50,000がより好ましい。重合体の分子量分布、即ち、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、特に限定されないが、好ましくは1.8未満であり、より好ましくは1.7未満であり、さらに好ましくは1.5未満であり、特に好ましくは1.3未満である。なお、本発明での分子量及び分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したものであり、通常は移動相としてクロロホルムを用い、測定はポリスチレンゲルカラムにて行い、数平均分子量等はポリスチレン換算で求めることができる。
<原子移動ラジカル重合について>
原子移動ラジカル重合法とはリビングラジカル重合法の一つであって、有機ハロゲン化物あるいはハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤、遷移金属錯体を触媒として(メタ)アクリル酸エステル系単量体等のラジカル重合性単量体を重合制御する方法である。原子移動ラジカル重合法としては例えば、Matyjaszewskiら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)1995年、117巻、5614頁などが挙げられる。原子移動ラジカル重合を利用したアルケニル基又は架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法としては既に例示した文献(特許文献1〜22)等に開示された方法を参考にすることができるがこれらに限定されるわけではない。
例えば有機ハロゲン化物を開始剤として使用すると重合体末端がハロゲン基となり、官能基の変換反応がしやすい。また、比較的安価で商用的に使用可能な触媒(例えばペンタメチルジエチレントリアミン等を配位子とするハロゲン化銅の錯体)を使用することが好ましい。
<アルケニル基の重合体への導入方法>
アルケニル基の(メタ)アクリル酸エステル系重合体への導入方法としては種々の方法が挙げられるが、(メタ)アクリル酸エステル単量体の原子移動ラジカル重合の最中若しくはその終点で1,5−ヘキサンジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン等の複数個のアルケニル基を有する化合物を反応させる方法が好ましい。
予備的精製を実施する場合には、上記の「アルケニル基の重合体への導入方法」の後に実施することが好ましい。
<ハロゲン基の脱離処理方法について>
アルケニル基の(メタ)アクリル酸エステル系重合体への導入方法としては種々の方法が挙げられるが、上記の1,5−ヘキサンジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン等の複数個のアルケニル基を有する化合物を反応させる方法の場合、得られる重合体は、1,5−ヘキサンジエン等の分子内に複数個あるアルケニル基の一つに、重合活性な末端ハロゲン基が付加して停止した状態(α−ハロエステル構造の状態)にあり、重合体末端には依然としてハロゲン基が結合した状態で存在している。ハロゲン基を残存させたままでいると遊離して酸が発生し、基材の腐食原因となるので脱離除去することが好ましい。
ハロゲン基の脱離処理方法は例えばカルボン酸塩等の求核剤による求核置換反応、加熱や塩基による脱離反応等が挙げられるが、高温加熱処理法による除去が簡便であり好ましい。高温加熱処理することでハロゲン基に隣接するエステル基が関与した分子内環化反応(ラクトン環の形成)が進行し、アルキルハロゲンが脱離して、ハロゲン基が除去される。高温加熱処理法は重合体を高温に加熱すればよいが、好ましくは120℃〜250℃、より好ましくは150℃〜230℃、特に好ましくは170℃〜200℃である。揮発性のアルキルハロゲンの場合には脱揮により系外に除去しながら加熱処理することができる。
なお、重合触媒の除去が不充分な状態で、ハロゲン基処理の際に高極性の溶媒を使用したり、高温加熱を行ったりすると、重合触媒が重合体に溶け込んでしまい、重合体の精製が困難となってしまうので「ハロゲン基の脱離処理」を実施する前に、上述の予備的精製を実施することが好ましい。予備的精製の到達レベルとしては、好ましくは残存触媒量が金属量として重合体に対して500ppm以下、より好ましくは200ppm、特に好ましくは100ppm以下である。
ハロゲン基の脱離除去された(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、本発明の吸着精製処理が為され、目的とする(メタ)アクリル酸エステル系重合体が得られる。
予備的精製レベルが不十分である場合には、吸着剤存在下で高温加熱処理を実施すると、重合触媒の重合体への溶け込みを抑制することができるので、本来、本発明である吸着精製処理工程で使用される吸着剤の一部若しくは全部を予め高温加熱処理工程時に添加することもできる。吸着剤としては無機系吸着剤が好ましく、アルミニウムシリケート、ハイドロタルサイト類化合物がより好ましく、併用することが特に好ましい。
高温加熱処理時に吸着剤を添加する際には、吸着剤をろ過することなく本発明の吸着精製を実施することが好ましい。この場合、高温加熱処理時に使用される吸着剤は、本発明である吸着精製処理で使用される吸着剤の一部若しくは全部として使用されるので、高温加熱処理時及び吸着処理時に使用されるアルミニウムシリケートの総量は、重合体100重量部に対して0.05重量部以上、0.5重量部以下である。
<ヒドロシリル化反応について>
(メタ)アクリル酸エステル系重合体を本発明の吸着精製方法で精製することでヒドロシリル化反応の触媒毒を効率的に除去することができる。その結果、(メタ)アクリル酸エステル系重合体をヒドロシリル化反応することが可能となるが、例えば、架橋性シリル基を併せ持つSi−H基含有化合物を(メタ)アクリル酸エステル系重合体のアルケニル基の炭素−炭素二重結合に付加させることにより、重合体末端に架橋性シリル基を導入することができる。架橋性シリル基としては、限定はされないが、下記一般式で表わされるものが挙げられる。
−[Si(R12-b(Y)bO]m−Si(R23-a(Y)a
(式中、R1、R2は、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または(R’)3SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R1またはR2が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基または加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0,1,2,または3を、また、bは0,1,または2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする)。
上記Yで示される加水分解性基としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、具体的には、水素、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられ、加水分解性がマイルドで取り扱いやすいという点から、アルコキシ基が特に好ましい。該加水分解性基や水酸基は1個のケイ素原子に1〜3個の範囲で結合することができ、a+mb、すなわち、加水分解性基の総和は1〜5の範囲が好ましい。加水分解性基や水酸基が架橋性ケイ素基中に2個以上結合するときは、それらは同一であっても、異なっていてもよい。架橋性ケイ素化合物を構成するケイ素原子は1個でもよく、2個以上であってもよいが、シロキサン結合により連結されたケイ素原子の場合は20個程度まであってもよい。
1やR2の具体例としては、例えば、メチル基やエチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基などのアリール基、ベンジル基などのアラルキル基、R’がメチル基やフェニル基等である(R’)3SiO−で示されるトリオルガノシリル基等が挙げられる。
これらの架橋性シリル基の中でも、特に下記一般式
で表させるものが好ましい。
−Si(R23-a(Y)a
(式中、R2、Yは前記と同じ。aは1〜3の整数。)
具体例としては、−SiCl3、−Si(CH3)Cl2、−Si(CH32Cl、−Si(OCH33、−Si(CH3)(OCH32、−Si(CH32OCH3、−Si(OC253、−Si(CH3)(OC252、−Si(CH32OC25、−Si(OC373、−Si(C25)(OCH32、−Si(C252OCH3、−Si(C65)(OCH32、−Si(C652(OCH3)、−Si(CH3)(OC(O)CH32、−Si(CH32O−[Si(CH32O]2−Si(CH3)(OCH32、−Si(CH3)[O−N=C(CH322(但し、上記化学式中、C65はフェニル基を示す)である。
シラノール基又は加水分解性シリル基を併せ持つSi−H基含有化合物としては特に制限はないが、以下のものが挙げられる。
H−[Si(R12-b(Y)bO]m−Si(R23-a(Y)a
(式中、R1、R2、Y、a、m、は前記に同じ)
特に以下のものが入手容易な点から好ましい。
H−Si(R23-a(Y)a
具体例としては、
HSiCl3、HSi(CH3)Cl2、HSi(CH3)Cl2
HSi(OCH33、HSi(CH3)(OCH32、HSi(CH32OCH3、HSi(OC253、HSi(CH3)(OC252
HSi(CH32OC25、HSi(OC373
HSi(C25)(OCH32、HSi(C252OCH3
HSi(C65)(OCH32、HSi(C652(OCH3)、
HSi(CH3)(OC(O)CH32
HSi(CH32O−[Si(CH32O]2−Si(CH3)(OCH32
HSi(CH3)[O−N=C(CH322
(但し、上記化学式中、C65はフェニル基を示す)
等が挙げられる。
このような架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物を、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体に付加させる際に使用するヒドロシリル化白金触媒としては、白金単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に白金固体を分散させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体、白金(0)−1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン錯体が挙げられ、活性の高さから白金(0)−1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン錯体が好ましい。これらの触媒は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもかまわない。ヒドロシリル化白金触媒の使用量は、特に限定されないが、白金金属量として、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体1kgに対して0.1から30mgの範囲であることが好ましく、さらに反応が速やかに進行し生産性向上かつ経済性の観点から0.5から10mgの範囲であることがより好ましい。
架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物を、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体に付加させる際には、例えば、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体にヒドロシリル化白金触媒を混合しておき、架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物を滴下、分割添加して反応させてもよいし、上記の成分を一括で仕込み、反応させてもよい。
架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物を、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体に付加させる際には、不活性ガス雰囲気下であってもなくてもよいが、架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物の消費を抑制するためにも窒素雰囲気下であることが好ましい。
架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物を、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体に付加させる際には、反応温度は特に制限しないが、50〜150℃の範囲が好ましく、70〜120℃の範囲がより好ましい。
架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物を、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体に付加させる際には、加水分解性エステル化合物および/またはアルキルアルコールを添加すればゲル化が抑制されることから、必要に応じて加水分解性エステル化合物、および/またはアルキルアルコールを添加してもしなくてもよい。
加水分解性のエステル化合物としてはオルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル、オルトギ酸トリプロピル、オルトギ酸トリブチル等のオルトギ酸トリアルキル、オルト酢酸トリメチル、オルト酢酸トリエチル、オルト酢酸トリプロピル、オルト酢酸トリブチル等のオルト酢酸トリアルキルが例示される。
加水分解性のエステル化合物の他の例としては、式R4-nSiYn(式中、Yは加水分解可能な基、Rは1価の有機基で官能基を含んでいても含まなくともよい。nは1〜4の整数であり、好ましくは3または4である)で示される加水分解性有機シリコン化合物が挙げられ、その具体例としては、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、オルトケイ酸テトラメチル、オルトケイ酸テトラエチル、オルトケイ酸テトラプロピル、オルトケイ酸テトラブチル等が挙げられる。
加水分解性エステル化合物の使用量は、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体100重量部に対し、0.1〜50重量部が好ましく、0.1〜30重量部がより好ましい。
また、アルキルアルコールとしては炭素数が1〜10のアルコールが好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、ヘキサノール、オクタノール、セロソルブ等が挙げられる。アルキルアルコールは、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体100重量部に対し、0.1〜100重量部用いるのが好ましい。
加水分解性エステル化合物、およびアルキルアルコールは、それぞれ単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。また、加水分解性エステル化合物とアルキルアルコールを混合して用いてもかまわない。
加水分解性エステル化合物および/またはアルキルアルコールは、ヒドロシリル化反応中だけでなく、該反応が終了してから添加しても、充分にゲル化を抑制する効果を有する。
<硬化性組成物について>
本発明の吸着精製法を利用して得られる架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、重合体の酸性化(酸価の上昇)が抑制され、架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の熱的安定性、貯蔵安定性が改善されるので、従来よりも保存性、取扱い性に優れた重合体として硬化性組成物の一成分として利用することができる。また架橋成分である(メタ)アクリル酸エステル系重合体の貯蔵安定性が向上するということはそれを用いた硬化性組成物の貯蔵安定性も向上するということにほかならない。
次に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を含有する硬化性組成物について述べる。硬化性組成物は、架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体に加え、従来公知な架橋性シリル基を有するオキシアルキレン重合体を併用することができる。
架橋性シリル基を有するオキシアルキレン重合体の数平均分子量(Mn)としては6,000以上のものが有効に使用されうるが、好ましくは6,000〜60,000、より好ましくは7,000〜30,000である。
架橋性シリル素基を有するオキシアルキレン重合体の分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn))が1.60以下、さらには1.50以下、特には1.40以下と小さい場合、同じ分子量の重合体と比較した場合、重合体や組成物の粘度が低くなりシーリング材や接着剤に使用した場合に押し出し性や塗工性などの作業性がよくなる。また、Mw/Mnが1.60を超える場合、さらには1.71以上、1.73以上、1.75以上、特には1.80以上と大きい場合、同じ分子量の重合体と比較した場合、硬化物の破断強度が向上する。
架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体と架橋性シリル素基を有するオキシアルキレン重合体の混合比は特に限定されないが、混合比で1/99〜99/1の範囲が好ましいが、5/95〜95/5の範囲にあることがさらに好ましい。例えば(メタ)アクリル酸エステル系重合体の混合比が高いもの(例えば混合比で50/50以上、70/30以上、又は90/10以上)ほど貯蔵安定性の改善効果を発揮する。また(メタ)アクリル酸エステル系重合体又はオキシアルキレン重合体の何れか一方又はその両方の架橋性シリル基に硬化速度の大きいトリメトキシシリル基等が存在する場合にも貯蔵安定性の改善効果を発揮する。
硬化性組成物を硬化させるにあたっては縮合触媒を使用してもしなくてもよい。縮合触媒としてはテトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫オキシドとカルボン酸エステルあるいはカルボン酸あるいは水酸基含有化合物の反応物、オクチル酸錫、ナフテン酸錫等の有機錫化合物;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテートなどの有機アルミニウム化合物;ジルコニウムテトラアセチルアセトナートジルコニウムテトライソプロポキサイド、ジルコニウムテトラブトキサイドなどの有機ジルコニウム化合物;オクチル酸鉛などの有機鉛化合物;ブチルアミン、オクチルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、1,3−ジアザビシクロ(5,4,6)ウンデセン−7等のアミン系化合物あるいはそれらのカルボン酸塩;ラウリルアミンとオクチル酸錫の反応物あるいは混合物のようなアミン系化合物と有機錫化合物との反応物および混合物;過剰のポリアミンと多塩基酸から得られる低分子量ポリアミド樹脂;過剰のポリアミンとエポキシ化合物の反応生成物;アミノ基を有するシランカップリング剤、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等の公知のシラノール触媒1種または2種以上を必要に応じて用いればよい。使用量は架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体に対し、0〜10重量部の範囲で使用するのが好ましい。加水分解性基Yとしてアルコキシ基が使用される場合は、この重合体のみでは硬化速度が遅いので、硬化触媒を使用することが好ましい。
接着促進剤は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体自体がガラス、ガラス以外のセラミック類、金属等に対して接着性を有しており、各種プライマーを使用することにより広範囲の材料に対して接着させることが可能であるので必ずしも必要ではないが、各種基材、部品、支持体、被着体に対する安定的な接着性を得るために用いるのが好ましい。接着促進剤としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、アルキルフェノール、変性フェノール(たとえば、カシューオイル変性フェノール、トールオイル変性フェノールなど)などのフェノール系化合物とホルマリン、パラホルムアルデヒドなどのアルデヒド系化合物との反応により得られるレゾール型またはノボラック型のフェノール樹脂;硫黄;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂;テトラブチルチタネートなどのアルキルチタネート類、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのような一分子中にアミノ基と架橋性シリル基有する化合物;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのような一分子中にエポキシ基と架橋性シリル基有する化合物;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのような一分子中にメルカプト基と架橋性シリル基有する化合物;γ−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルメチルジメトキシシランなどのような一分子中にイソシアナート基と架橋性シリル基を有する化合物;上記のような一分子中にアミノ基と架橋性シリル基有する化合物と一分子中にエポキシ基と架橋性シリル基有する化合物あるいは一分子中にイソシアナート基と架橋性シリル基有する化合物の反応物;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどのような一分子中に(メタ)アクリロキシ基と架橋性シリル基有する化合物と上記のような一分子中にアミノ基と架橋性シリル基有する化合物の反応物;などが挙げられる。これらは単独で使用しても2種類以上併用しても良い。なかでも物性および接着性の制御が比較的容易な一分子中にアミノ基と架橋性シリル基有する化合物、一分子中にエポキシ基と架橋性シリル基有する化合物、一分子中にメルカプト基と架橋性シリル基有する化合物、一分子中にアミノ基と架橋性シリル基有する化合物と一分子中にエポキシ基と架橋性シリル基有する化合物の反応物、一分子中に(メタ)アクリロキシ基と架橋性シリル基有する化合物と一分子中にアミノ基と架橋性シリル基有する化合物の反応物などのような一分子中に窒素、酸素、硫黄原子のうちの少なくとも一つを有する有機基と架橋性シリル基を有する化合物が好ましい。接着性の高さから、上記の窒素、酸素、硫黄原子のうちの少なくとも一つを有する有機基が、アミノ基、イソシアネート基あるいはこれらが反応することにより生成する基である、一分子中に窒素原子を有する有機基と架橋性シリル基を有する化合物がさらに好ましい。
上記接着促進剤は、架橋性シリル基を少なくとも1個有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量部に対し、0.01から20重量部使用されるのが好ましい。0.01重量部では接着性の改善効果が発現しにくく、20重量部越えると硬化物の物性に悪影響を与える。接着促進剤の添加量は、好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部である。
接着性硬化性組成物を硬化させた時の硬度を上げたり、硬度を下げて伸びを出したりして物性を制御するために、物性調整剤を用いることができる。物性調整剤としては例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシランなどのアルキルアルコキシシラン類;ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシランなどのアルキルイソプロペノキシシラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランなどの各種シランカップリング剤、シリコーンワニス類;ポリシロキサン類等が必要に応じて添加される。架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体100重量部に対し、0〜20重量部の範囲で添加すれば好ましい結果が得られる。接着性硬化性組成物の硬化速度を速めたり、遅らせたりするために硬化性調整剤を、また貯蔵中の増粘を抑えるために貯蔵安定性改良剤を添加することができる。硬化性調整剤あるいは貯蔵安定性改良剤としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類;オルトギ酸メチルなどのオルトエステル類;テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどの架橋性シリル基有する化合物;2−エチルヘキサン酸などのカルボン酸類などが挙げられる。架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体100重量部に対し、0〜20重量部の範囲で添加すれば好ましい結果が得られる。
硬化性組成物はその他に、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウムなどの各種充填剤;ジ(2−エチルヘキシル)フタレートなどの芳香族二塩基酸エステル類、ジオクチルアジペート等の非芳香族二塩基酸エステル類;ポリプロピレングリコールなどのポリエーテル類、アクリルオリゴマーなどの各種可塑剤;トルエン、メチルエチルケトンなどの各種溶剤;各種シランカップリング剤、架橋性シリル基を有するポリシロキサンなどの各種変性剤;ポリアミドワックス、水添ヒマシ油、金属石鹸などのレオロジー特性調整剤;紫外線硬化性樹脂、酸素硬化性樹脂などの表面特性および/あるいは耐候性改良剤;顔料、染料などの着色剤;老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、難燃化剤などのような添加剤も任意に使用してもよい。
硬化性組成物をシーリング材組成物として用いる場合に、機械物性の調整を目的として添加できる充填材をさらに詳しく述べると、フュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸およびカーボンブラックのような補強性充填材;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛、活性亜鉛華およびシラスバルーンなどのような充填材;石綿、ガラス繊維およびフィラメントのような繊維状充填材が使用できる。これら充填材で強度の高い硬化物を得たい場合には、主にヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸、カーボンブラック、表面処理微細炭酸カルシウム、焼成クレー、クレーおよび活性亜鉛華などから選ばれる充填材を架橋性シリル基を有するビニル系重合体100重量部に対して1〜200重量部の範囲で添加すれば好ましい結果が得られる。また、低強度で伸びが大である硬化物を得たい場合には、主に酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、酸化第二鉄、酸化亜鉛およびシラスバルーンなどから選ばれる充填材を、架橋性シリル基を有するビニル系重合体100重量部に対して1〜200重量部の範囲で添加すれば好ましい結果が得られる。これら充填材は1種類で使用してもよいし、2種類以上混合使用してもよい。
また物性および粘度の調整のために添加できる可塑剤をさらに詳しく述べると、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル類;ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等の非芳香族二塩基酸エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート等のポリアルキレングリコールのエステル類;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類;ポリエリレングリコール、ポリプロピレングリコールあるいはこれらの水酸基を変換したポリエーテル類;塩化パラフィン類;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニル等の炭化水素系油等が挙げられ、これらを単独、または2種以上混合して使用することができるが、必ずしも必要とするものではない。なおこれら可塑剤は、重合体製造時に配合することも可能である。可塑剤量は、架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量部に対して0〜100重量部の範囲で添加すれば好ましい結果が得られる。本発明のシーリング材組成物は、すべての配合成分を予め配合密封保存し、施工後空気中の湿分を吸収することにより硬化する1成分型として調製することも可能であり、硬化剤として別途硬化触媒、充填材、可塑剤、水等の成分を配合しておき、該配合材と重合体組成物を使用前に混合する2成分型として調整することもできる。水分等を予め混合することの多い2成分型の方が更に貯蔵安定性の改善効果を発揮する。
硬化性組成物を粘着剤組成物として用いる場合、(メタ)アクリル酸エステル系重合体を主成分とするものであるため、粘着付与樹脂を添加する必要は必ずしもないが、必要に応じて、各種のものを使用することができる。具体例を挙げるならば、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、シクロペンタジエン−フェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジンエステル樹脂等である。
作業性を調節するために用いる溶剤についてさらに詳しく述べると、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸セロソルブ等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤等が挙げられる。それらの溶剤は重合体の製造時に用いてもよい。
前記粘着剤組成物はテープ、シート、ラベル、箔等に広く適用することができる。例えば、合成樹脂製または変成天然物製のフィルム、紙、あらゆる種類の布、金属箔、金属化プラスチック箔、アスベストまたはガラス繊維布などの基質材料に溶剤型、エマルション型またはホットメルト型等の形で前記粘着剤組成物を塗布し、湿気または水分に暴露し、常温硬化または加熱硬化させればよい。硬化性組成物をハイソリッドの塗料用組成物として用いることも可能である。
<硬化性組成物の用途について>
硬化性組成物の用途としては、限定はされないが、建築用弾性シーリング剤、サイジングボード用シーリング剤、複層ガラス用シーリング剤、車両用シーリング剤等建築用および工業用のシーリング剤、太陽電池裏面封止剤などの電気・電子部品材料、電線・ケーブル用絶縁被覆材などの電気絶縁材料、粘着剤、接着剤、弾性接着剤、コンタクト接着剤、タイル用接着剤、反応性ホットメルト接着剤、塗料、粉体塗料、コーティング材、発泡体、缶蓋等のシール材、電気電子用ポッティング剤、フィルム、ガスケット、注型材料、各種成形材料、人工大理石、および、網入りガラスや合わせガラス端面(切断部)の防錆・防水用封止材、自動車や船舶、家電等に使用される防振・制振・防音・免震材料、自動車部品、電機部品、各種機械部品などにおいて使用される液状シール剤、防水剤等の様々な用途に利用可能である。
硬化性組成物から得られたゴム弾性を示す成形体は、ガスケット、パッキン類を中心に広く使用することができる。例えば自動車分野ではボディ部品として、気密保持のためのシール材、ガラスの振動防止材、車体部位の防振材、特にウインドシールガスケット、ドアガラス用ガスケットに使用することができる。シャーシ部品として、防振、防音用のエンジンおよびサスペンジョンゴム、特にエンジンマウントラバーに使用することができる。エンジン部品としては、冷却用、燃料供給用、排気制御用などのホース類、エンジンオイル用シール材などに使用することができる。また、排ガス清浄装置部品、ブレーキ部品にも使用できる。家電分野では、パッキン、Oリング、ベルトなどに使用できる。具体的には、照明器具用の飾り類、防水パッキン類、防振ゴム類、防虫パッキン類、クリーナ用の防振・吸音と空気シール材、電気温水器用の防滴カバー、防水パッキン、ヒータ部パッキン、電極部パッキン、安全弁ダイアフラム、酒かん器用のホース類、防水パッキン、電磁弁、スチームオーブンレンジ及びジャー炊飯器用の防水パッキン、給水タンクパッキン、吸水バルブ、水受けパッキン、接続ホース、ベルト、保温ヒータ部パッキン、蒸気吹き出し口シールなど燃焼機器用のオイルパッキン、Oリング、ドレインパッキン、加圧チューブ、送風チューブ、送・吸気パッキン、防振ゴム、給油口パッキン、油量計パッキン、送油管、ダイアフラム弁、送気管など、音響機器用のスピーカーガスケット、スピーカーエッジ、ターンテーブルシート、ベルト、プーリー等が挙げられる。建築分野では、構造用ガスケット(ジッパーガスケット)、空気膜構造屋根材、防水材、定形シーリング材、防振材、防音材、セッティングブロック、摺動材等に使用できる。スポ−ツ分野では、スポーツ床として全天候型舗装材、体育館床等、スポーツシューズとして靴底材、中底材等、球技用ボールとしてゴルフボール等に使用できる。防振ゴム分野では、自動車用防振ゴム、鉄道車両用防振ゴム、航空機用防振ゴム、防舷材等に使用できる。海洋・土木分野では、構造用材料として、ゴム伸縮継手、支承、止水板、防水シート、ラバーダム、弾性舗装、防振パット、防護体等、工事副材料としてゴム型枠、ゴムパッカー、ゴムスカート、スポンジマット、モルタルホース、モルタルストレーナ等、工事補助材料としてゴムシート類、エアホース等、安全対策商品としてゴムブイ、消波材等、環境保全商品としてオイルフェンス、シルトフェンス、防汚材、マリンホース、ドレッジングホース、オイルスキマー等に使用できる。その他、板ゴム、マット、フォーム板等にも使用できる。
硬化性組成物は、シーリング材や接着剤として特に有用であり、特に耐候性や耐熱性が要求される用途や透明性が必要な用途に有用である。また、硬化性組成物は耐候性と接着性に優れるので、目地埋めなしでの外壁タイル接着用工法に使用できる。
以下に、この発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明するが、この発明は、下記実施例に限定されない。
下記実施例中、「数平均分子量」および「分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量の比)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。ただし、GPCカラムとしてポリスチレン架橋ゲルを充填したもの(shodex GPC K−804、shodex GPC K−802.5;昭和電工(株)製)、GPC溶媒としてクロロホルムを用いた。重合体1分子当たりに導入された官能基は、1H−NMR(400MHz)による官能基濃度分析(溶媒:重クロロホルム、測定温度:23℃)を行い、GPCにより求まる数平均分子量により算出した。
酸の量(酸価)は、試料をイソプロパノールで希釈し、0.1規定または0.01規定のKOHのイソプロパノール溶液を用いて電位差滴定を行い、中和点を求めることにより定量した。
<参考実施例1>
新品の酢酸ブチルを密閉下で190℃に加熱して2時間攪拌した。冷却後、酢酸ブチルにpH試験紙を浸したところほぼ中性を示した。
<参考実施例2>
新品の酢酸ブチル100重量部に対して0.1重量部の水を添加し、酢酸ブチルと水のみで密閉下で190℃に加熱して2時間攪拌した。冷却後、酢酸ブチルにpH試験紙を浸したところほぼ中性を示した。
<参考実施例3>
新品の酢酸ブチルの酸価は2.3KOHmmol/kgであった。新品の酢酸ブチル100重量部に対して吸着剤としてハイドロタルサイト(キョーワード500SH:協和化学製)3重量部を添加し、酢酸ブチルと吸着剤のみで密閉下で190℃に加熱して2時間攪拌した。冷却後、吸着剤をろ過した。ろ液である酢酸ブチルにpH試験紙を浸したところ酸性を示した。酸価を測定したところ、11KOHmmol/kgとなり、酸価が若干上昇した。
<参考実施例4>
新品の酢酸ブチルの酸価は2.3KOHmmol/kgであった。新品の酢酸ブチル100重量部に対して吸着剤としてアルミニウムシリケート(キョーワード700SEN:協和化学製)3重量部を添加し、酢酸ブチルと吸着剤のみで密閉下で190℃に加熱して2時間攪拌した。冷却後、吸着剤をろ過した。ろ液である酢酸ブチルにpH試験紙を浸したところ酸性を示した。酸価を測定したところ、180KOHmmol/kgとなり、酸価が大幅に上昇した。
<参考実施例5>
新品の酢酸ブチルの酸価は2.3KOHmmol/kgであった。新品の酢酸ブチル100重量部に対して吸着剤としてハイドロタルサイト(キョーワード500SH:協和化学製)3重量部及びアルミニウムシリケート(キョーワード700SEN:協和化学製)3重量部を添加し、酢酸ブチルと吸着剤のみで密閉下で190℃に加熱して2時間攪拌した。冷却後、吸着剤をろ過し、ろ液である酢酸ブチルの酸価を測定したところ、125KOHmmol/kgとなった。
参考実施例1、2にあるように酢酸ブチル単体若しくは少量の水存在下で高温加熱処理を行っても加水分解はほとんど進行せず、酢酸は発生しなかったが、参考実施例3〜5にあるように吸着剤存在下で酢酸ブチルを高温加熱すると加水分解が進行し、酢酸が発生して酸価が上昇した。特にアルミニウムシリケートを使用すると顕著に酸価が上昇し、アルミニウムシリケートの過剰使用は酸価の上昇の原因となることが判った。またハイドロタルサイトとアルミニウムシリケートと併用は酸価上昇の抑制効果があることがわかった。
<実施例1>
各原料の使用量を表1に示す。
(1)重合工程
攪拌機付ステンレス製反応容器の内部を脱酸素し、臭化第一銅、全アクリル酸エステルの一部を仕込み、加熱攪拌した。重合反応溶媒として比誘電率37.5(20℃)であるアセトニトリル(表1では重合用アセトニトリルと記載)、開始剤としてジエチル2,5−ジブロモアジペートを添加、混合し、混合液の温度を約80℃に調節した段階でペンタメチルジエチレントリアミン(以下、トリアミンと略す)を添加し、重合反応を開始した。残りのアクリル酸エステルを逐次添加し、重合反応を進めた。重合途中、適宜トリアミンを追加し、重合速度を調整した。重合時に使用したトリアミンの総量を重合用トリアミンとして表1に示す。重合が進行すると重合熱により内温が上昇するので内温を約80℃〜約90℃に調整した。単量体転化率(重合反応率)が約95%以上の時点で未反応の単量体及び重合用アセトニトリルを減圧脱揮して除去し、重合体濃縮物を得た。
(2)ジエン反応工程
上記濃縮物に1,7−オクタジエン(以下ジエン若しくはオクタジエンと略す)、ジエン反応溶媒としてアセトニトリル(表1ではジエン反応用アセトニトリルと記載)を添加し、トリアミン(表1ではジエン反応用トリアミンと記載)を追加することでジエン反応を開始した。内温を約80℃〜約90℃に調節しながら数時間加熱攪拌させて、重合体末端にオクタジエンを反応させた。反応液は使用した重合触媒により著しく着色していた。
(3)酸素処理工程
ジエン反応が終了した時点で反応容器気相部に酸素‐窒素混合ガスを導入した。内温を約80℃〜約90℃に保ちながらしながら反応液を数時間加熱攪拌して反応液中の重合触媒と酸素を接触させた。アセトニトリル及び未反応のオクタジエンを減圧脱揮して除去し、重合体を含有する濃縮物を得た。濃縮物は著しく着色していた。
(4)第一粗精製工程
非芳香族炭化水素系化合物として酢酸ブチル((比誘電率5.01(20℃))を重合体の希釈溶媒として使用した。重合体に対して100〜150重量部程度の酢酸ブチルで濃縮物を希釈し、ろ過助剤を添加して攪拌した後、不溶な触媒成分をろ過除去した。ろ液は重合触媒残渣によって着色および若干の濁りを有していた。
(5)第二粗精製工程
ろ液を攪拌機付ステンレス製反応容器に仕込み、吸着剤としてアルミニウムシリケート(キョーワード700SEN:協和化学製)、ハイドロタルサイト(キョーワード500SH:協和化学製)を添加した。気相部に酸素−窒素混合ガスを導入して約100℃で1時間加熱攪拌した後、吸着剤等の不溶成分をろ過除去した。着色は有するものの清澄なろ液を得た。ろ液を濃縮し、重合体粗精製物を得た。
(6)脱ハロゲン化工程(高温加熱処理工程)・吸着精製工程
重合体粗精製物、熱安定剤(スミライザーGS:住友化学(株)製)、吸着剤の一部(キョーワード700SEN、キョーワード500SH)を添加し、減圧脱揮、加熱攪拌しながら昇温し、約170℃〜約200℃の高温状態で数時間程度加熱攪拌、減圧脱揮を行ない、重合体中のハロゲン基の脱離、吸着精製を実施した。残りの吸着剤(キョーワード700SEN、キョーワード500SH)を追加し、希釈溶媒として重合体に対して約10重量部の酢酸ブチル(新品:酸価2.3KOHmmol/kg)を添加し、気相部を酸素−窒素混合ガス雰囲気にし、約170℃〜約200℃の高温状態で更に数時間程度加熱攪拌し、吸着精製を継続した。脱ハロゲン化工程・吸着精製工程で使用した吸着剤の総量はハイドロタルサイト1.5重量部、アルミニウムシリケート0.15重量部であった。処理液を更に重合体に対して90重量部の酢酸ブチル(新品:酸価2.3KOHmmol/kg)で希釈し、ろ過して吸着剤を除去した。ろ液を濃縮し、希釈溶媒である酢酸ブチルを回収するとともに、両末端にアルケニル基を有する重合体を得た。1回使用、回収された酢酸ブチルの酸価は4.4KOHmmol/kgであった。
(7)シリル化工程
上記方法により得られた重合体、メチルジメトキシシラン(DMS)、オルト蟻酸メチル(MOF)、白金触媒[ビス(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒のイソプロパノール溶液:以下白金触媒という]を所定量混合し、約100℃に加熱攪拌した。1時間程度加熱攪拌後、未反応のDMS等の揮発分を減圧留去し、両末端にメトキシシリル基を有する重合体を得た。得られた重合体の1分子あたりに導入されたシリル基数、分子量、分子量分布を表1に示す。
<比較例1>
各原料の使用量を表1に示す。
実施例1において(1)〜(5)、(7)は同様の操作で実施し、(6)については、吸着剤量以外は同様にして実施した。脱ハロゲン化工程・吸着精製工程で使用した吸着剤の総量はハイドロタルサイト2.0重量部、アルミニウムシリケート2.0重量部であった。回収された酢酸ブチルの酸価は24KOHmmol/kgであった。
実施例1と比較例1を比べると(6)の工程におけるアルミニウムシリケートの総量を1重量部から0.15重量部に削減することで、実際の重合体製造においても酸価の上昇が抑制されることが確認された。
<実施例2>
実施例1において(1)〜(5)、(7)の工程は同様の操作で実施し、(6)の工程については新品の酢酸ブチルではなく、1回使用回収された酢酸ブチルを再利用した(リサイクル回数1回)。(6)の工程の酢酸ブチルについて回収、使用することを繰り返し、3回使用回収された酢酸ブチル(リサイクル回数2回)の酸価を測定したところ15KOHmmol/kgであった。15回使用回収された酢酸ブチル(リサイクル回数14回)の酸価は23KOHmmol/kgであった。
<比較例2>
比較例1において(1)〜(5)、(7)の工程は同様の操作で実施し、(6)については新品の酢酸ブチルではなく、1回使用回収された酢酸ブチルを再利用した(リサイクル回数1回)。(6)の工程の酢酸ブチルについて回収、使用することを繰り返し、3回使用回収された酢酸ブチル(リサイクル回数2回)の酸価を測定したところ40KOHmmol/kgであった。
実施例2と比較例3を比べると(6)の工程においてアルミニウムシリケートの量を削減することで、酢酸ブチルを繰り返し使用しても酸の蓄積・酸価の上昇は抑制された。
<実施例3>
実施例1記載の方法により製造された両末端にメトキシシリル基を有する重合体及び重合体100重量部に対して0.1重量部の水をよく混合し、脱泡した後、粘度を23℃で測定した。ガラス製サンプル瓶に充填して密閉し、50℃で4週間加熱した。放冷後、23℃で粘度を測定した。50℃4週間保管前後の粘度変化を求めたところ、粘度増加率は2%であり、良好な貯蔵安定性・熱的安定性を示した。
<実施例4>
実施例2記載の方法(酢酸ブチルのリサイクル回数14回)により製造された両末端にメトキシシリル基を有する重合体及び重合体100重量部に対して0.1重量部の水をよく混合し、脱泡した後、粘度を23℃で測定した。ガラス製サンプル瓶に充填して密閉し、50℃で4週間加熱した。放冷後、23℃で粘度を測定した。50℃4週間保管前後の粘度変化を求めたところ、粘度増加率は7%であり、良好な貯蔵安定性・熱的安定性を示した。
実施例3、4にあるように本発明吸着精製により製造されるメトキシシリル基を有する重合体は良好な貯蔵安定性・熱的安定性を示した。
Figure 0005182876

Claims (2)

  1. (メタ)アクリル酸エステル系重合体、吸着剤としてアルミニウムシリケート及びハイドロタルサイト類化合物、溶媒として酢酸エステルを混合し、150℃以上の温度で高温吸着処理を行うに当たり、アルミニウムシリケートの使用量を重合体100重量部に対して0.05重量部以上、0.5重量部以下とすることを特徴とする(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法。
  2. 溶媒が酢酸ブチルであることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
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