JP4289037B2 - ハロゲン基含有ビニル系重合体を含有する溶液からの溶剤の回収 - Google Patents

ハロゲン基含有ビニル系重合体を含有する溶液からの溶剤の回収 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、精製ビニル系重合体を含有する溶液からのリサイクル可能な溶剤の回収に関する
【0002】
【従来の技術】
ヒドロシリル化反応は、官能基の変換や架橋反応などに利用されており、工業的に非常に有用な反応の1つである。
【0003】
たとえば、分子鎖の末端に官能基としてアルケニル基を有する重合体は、ヒドロシリル基含有化合物を硬化剤として用いることにより、架橋硬化し、耐熱性、耐久性などの優れた硬化物を与えること、また、末端にアルケニル基を有する重合体に架橋性シリル基を有するヒドロシリル基含有化合物を反応させることにより、架橋性シリル基を末端に有する重合体が製造されることが知られている。前記ヒドロシリル化反応は、加熱することにより進行するが、反応をより迅速に進めるために、ヒドロシリル化触媒が添加される。
【0004】
前記ヒドロシリル化触媒としては、有機過酸化物やアゾ化合物などのラジカル開始剤、遷移金属触媒があげられる。とくに、遷移金属触媒を用いると触媒量でヒドロシリル化を迅速に進めることができることが知られている。
【0005】
一方、重合体の精密合成法として、リビング重合法が一般に知られている。
【0006】
前記リビング重合は、分子量、分子量分布のコントロールが可能であるというだけでなく、末端構造が明確な重合体が得られる。したがって、リビング重合は重合体末端に官能基を導入する有効な方法の1つとしてあげられる。
【0007】
最近、ラジカル重合においても、リビング重合が可能な重合系が見出され、リビングラジカル重合の研究が活発に行なわれている。とくに、原子移動ラジカル重合を利用することにより、分子量分布の狭いビニル系重合体が得られる。
【0008】
前記原子移動ラジカル重合の例として、有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、第9族、第10族または第11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒とする重合系があげられる(たとえば、マティヤスゼウスキー(Matyjaszewski)ら、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカルソサイエティー(J.Am.Chem.Soc.)1995,117,5614、マクロモレキュルズ(Macromolecules)1995,28,7901、サイエンス(Science)1996,272,866、またはサワモト(Sawamoto)ら、マクロモレキュルズ(Macromolecules)1995,28,1721を参照)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、原子移動ラジカル重合法で製造されるビニル系重合体には、重合触媒である遷移金属錯体が残存するため、重合体の着色、物性面への影響および環境安全性などの問題がある。たとえば、原子移動ラジカル重合法を利用して製造された末端にアルケニル基を有するビニル系重合体においては、残存触媒などによる着色と残存触媒などがヒドロシリル化反応の触媒毒として働くため、ヒドロシリル化反応が阻害され、高価な遷移金属触媒が多く必要になるという問題がある。
【0010】
本発明者らは、原子移動ラジカル重合法で得られるビニル系重合体を珪酸アルミニウムなどの吸着剤に接触させて精製することにより、ヒドロシリル化活性が向上することを見出した(特開平11−193307号公報)。しかし、精製処理中に末端脱ハロゲン反応が進行し、精製阻害物質である有機ハロゲン化物が生成することがある。この場合、精製重合体溶液を蒸発して溶剤を回収すると、回収溶剤中に精製阻害物質が混入する。多量の精製阻害物質を含有する回収溶剤をリサイクルすることは好ましくない。すなわち、回収溶剤中に多量の精製阻害物質が含まれると、精製処理を行う際に使用する希釈溶剤、また吸着剤あるいは固体銅とビニル系重合体を固液分離する際に使用する希釈溶剤のリサイクルが困難となりコストが高くなるという問題がある。すなわち、リサイクルするためには、回収溶剤中から精製阻害物質を除去するためのコストが発生する。
ここで精製阻害とは、新品溶剤を使用して精製したビニル系重合体と比較して、精製処理後の銅濃度が高くなること、あるいは色調が濃くなることをいう。精製阻害物質とは、上記精製阻害の原因となる物質をいう。
【0011】
本発明は、前記課題を解決し、経済的かつ効率的に末端脱ハロゲン反応を抑制することにより、精製阻害物質の生成を抑制し、精製時に使用する希釈溶剤のリサイクルを容易にする方法を提供せんとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下のものである。
(1) 有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし遷移金属錯体を重合触媒とするビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を利用して製造された分子末端に少なくとも1個のアルケニル基及びハロゲンを含有するハロゲン基含有ビニル系重合体を精製し、精製した重合体溶液を蒸発して回収される溶剤であって、前記ハロゲン基含有ビニル系重合体が、原子移動ラジカル重合の重合中または重合終了後に、重合性の低い炭素−炭素2重結合を2個以上有する化合物を添加することにより製造されたものであり、精製時の処理温度及び溶剤回収時の温度をともに130℃以下とすることで前記重合体の末端の脱ハロゲン反応を抑制して回収された、遷移金属錯体を重合触媒とするビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を利用して製造されたハロゲン基含有ビニル系重合体を含有する溶液から回収された溶剤。
(2) 精製及び溶剤回収後のビニル系重合体の末端の脱ハロゲン反応率が15%以下である前記(1)記載の溶剤
(3) ハロゲン基含有ビニル系重合体溶液の精製時の処理温度及び溶剤回収時の温度をともに100℃以下とする前記(1)記載の溶剤
(4) 精製及び溶剤回収後のビニル系重合体の末端の脱ハロゲン反応率が10%以下である前記(3)記載の溶剤
(5) 遷移金属錯体の中心金属が周期律表第8族、第9族、第10族または第11族元素である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の溶剤
(6) 遷移金属錯体の中心金属が鉄、ニッケル、ルテニウムまたは銅である前記(5)記載の溶剤
(7) 遷移金属錯体の中心金属が銅である前記(6)記載の溶剤
(8) 原子移動ラジカル重合の触媒配位子としてポリアミン化合物を用いる前記(1)〜(7)のいずれかに記載の溶剤
(9) 原子移動ラジカル重合の触媒配位子としてトリアミン化合物を用いる前記(8)記載の溶剤
(10) ビニル系重合体が(メタ)アクリル系重合体である前記(1)〜(9)のいずれかに記載の溶剤
(11) ビニル系重合体がアクリル酸エステル系重合体である前記(10)記載の溶剤
(12) ビニル系重合体がアクリル酸ブチル系重合体である前記(11)記載の溶剤
(13) 有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし遷移金属錯体を重合触媒とするビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を利用して製造された分子末端に少なくとも1個のアルケニル基及びハロゲンを含有するハロゲン基含有ビニル系重合体を精製し、精製した重合体溶液を蒸発して溶剤を回収する方法であって、前記ハロゲン基含有ビニル系重合体が、原子移動ラジカル重合の重合中または重合終了後に、重合性の低い炭素−炭素2重結合を2個以上有する化合物を添加することにより製造されたものであり、精製時の処理温度及び溶剤回収時の温度をともに130℃以下とすることで前記重合体の末端の脱ハロゲン反応を抑制することを特徴とする、遷移金属錯体を重合触媒とするビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を利用して製造されたハロゲン基含有ビニル系重合体を含有する溶液から溶剤を回収する方法
(14) 精製及び溶剤回収後のビニル系重合体の末端の脱ハロゲン反応率が15%以下である前記(13)記載の溶剤を回収する方法
(15) ハロゲン基含有ビニル系重合体溶液の精製時の処理温度及び溶剤回収時の温度をともに100℃以下とする前記(13)記載の溶剤を回収する方法
(16) 精製及び溶剤回収後のビニル系重合体の末端の脱ハロゲン反応率が10%以下である前記(15)記載の溶剤を回収する方法
(17) 遷移金属錯体の中心金属が周期律表第8族、第9族、第10族または第11族元素である前記(13)〜(16)のいずれかに記載の溶剤を回収する方法
(18) 原子移動ラジカル重合の触媒配位子としてポリアミン化合物を用いる前記(13)〜(17)のいずれかに記載の溶剤を回収する方法
(19) ビニル系重合体が(メタ)アクリル系重合体である前記(13)〜(18)のいずれかに記載の溶剤を回収する方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、遷移金属錯体を重合触媒とするビニル系モノマーのラジカル重合を利用して製造されたビニル系重合体を精製する際の末端脱ハロゲン反応を抑制し、かつ溶剤をリサイクル可能とする
【0014】
前記末端脱ハロゲン反応というのは、精製阻害物である有機ハロゲン化物を生成物とする精製時の副反応である。
【0015】
また、前記ビニル系重合体というのは、分子内に少なくとも1個のアルケニル基、好ましくは分子末端に少なくとも1個のアルケニル基を有するビニル系重合体のみならず、アルケニル基を導入する前の中間段階のビニル系重合体やその他のビニル系重合体などをも含む概念である。
【0016】
前記中間段階のビニル系重合体(中間生成物)やその他のビニル系重合体は、分子内に反応性官能基を有していてもよい。分子内に反応性官能基を有する場合、側鎖または分子鎖末端のいずれに有していてもよい。
【0017】
前記反応性官能基にはとくに限定はないが、たとえば水酸基、アミノ基、架橋性シリル基などがあげられる。反応性官能基を1段階または数段階で別の適当な官能基へ変換することもできる。たとえば、水酸基などの反応性官能基を変換することによりアルケニル基を有するビニル系重合体を製造することができる。
【0018】
さらに、前記ラジカル重合としては、たとえば原子移動ラジカル重合、一般的なラジカル重合などがあげられる。
【0019】
はじめに、前記遷移金属錯体を重合触媒とするビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合について説明する。
【0020】
前記遷移金属錯体を重合触媒とするビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合とは、リビングラジカル重合の1つであり、有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物などを開始剤、遷移金属を中心金属とする金属錯体を触媒としてビニル系モノマーをラジカル重合する方法である。具体的には、たとえばマティヤスゼウスキー(Matyjaszewski)ら、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカルソサイエティー(J.Am.Chem.Soc.)1995年、117巻、5614頁、マクロモレキュルズ(Macromolecules)1995年、28巻、7901頁、サイエンス(Science)1996年、272巻、866頁、WO96/30421号パンフレット、WO97/18247号パンフレット、WO98/01480号パンフレット、WO98/40415号パンフレット、サワモト(Sawamoto)ら、マクロモレキュルズ(Macromolecules)1995年、28巻、1721頁、特開平9−208616号公報、特開平8−41117号公報などがあげられる。
【0021】
前記開始剤として用いられる有機ハロゲン化物としては、とくに反応性の高い炭素−ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物、たとえばα位にハロゲン原子を有するカルボニル化合物や、ベンジル位にハロゲン原子を有する化合物が好ましい。
【0022】
前記有機ハロゲン化物の具体例としては、たとえば
65−CH2X、C65−CHX−CH3、C65−C(X)(CH32
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)、
3−CHX−CO24、R3−CX(CH3)−CO24
3−CHX−CO−R4、R3−CX(CH3)−C(O)R4
(式中、R3、R4は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)
などがあげられる。
【0023】
前記開始剤として用いられるハロゲン化スルホニル化合物の具体例としては、たとえば
3−C64−SO2
(式中、R3は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)
などがあげられる。
【0024】
有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤としてビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を行なうことにより、一般式(1):
−CX(R1)(R2) (1)
(式中、R1およびR2はビニル系モノマーのエチレン性不飽和基に結合した基、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)
に示す末端構造を有するビニル系重合体が得られる。
【0025】
原子移動ラジカル重合の開始剤として、重合を開始する官能基とともに重合を開始しない特定の反応性官能基を併せもつ有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を用いることもできる。このような場合、一方の主鎖末端に特定の反応性官能基を、他方の主鎖末端に一般式(1)に示す末端構造を有するビニル系重合体が得られる。
【0026】
このような特定の反応性官能基としては、アルケニル基、架橋性シリル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基などがあげられる。これらの反応性官能基の反応性を利用して1段階または数段階の反応を経ることにより、ビニル系重合体に他の適当な官能基を導入することができる。
【0027】
アルケニル基を有する有機ハロゲン化物にはとくに限定はないが、たとえば一般式(2):
67CX−R8−R9−C(R5)=CH2 (2)
(式中、R5は水素原子またはメチル基、R6、R7は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基または他端において相互に連結したもの、R8は−COO−(エステル基)、−CO−(ケト基)またはo−,m−,p−フェニレン基、R9は直接結合または炭素数1〜20の2価の有機基で、1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)
で示される化合物が例示される。
【0028】
前記R6、R7の具体例としては、たとえば水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などがあげられる。R6とR7は他端において連結して環状骨格を形成していてもよい。
【0029】
また、前記R9の具体例としては、たとえば直接結合、炭素数1〜20のアルキレン基または1個以上のエーテル結合を含む基があげられる。前記炭素数1〜20のアルキレン基としては、−(CH2n−(nは0〜20の整数)が例示される。また、前記1個以上のエーテル結合を含む基としては、−O−(CH2n−、−(CH2n−O−、−(CH2n−O−(CH2m−(m、nはn+m=20を満たす1〜20の整数)があげられる。
【0030】
一般式(2)で示される、アルケニル基を有する有機ハロゲン化物の具体例としては、たとえば
XCH2COO(CH2nCH=CH2
CH3CHX−COO(CH2nCH=CH2
(CH32CX−COO(CH2nCH=CH2
CH3CH2CHX−COO(CH2nCH=CH2
【0031】
【化1】
Figure 0004289037
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、nは0〜20の整数)
XCH2COO(CH2nO(CH2mCH=CH2
CH3CHX−COO(CH2nO(CH2mCH=CH2
(CH32CX−COO(CH2nO(CH2mCH=CH2
CH3CH2CHX−COO(CH2nO(CH2mCH=CH2
【0032】
【化2】
Figure 0004289037
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、mは0〜20の整数、nは1〜20の整数)
o,m,p−XCH2−C64−(CH2n−CH=CH2
o,m,p−CH3CHX−C64−(CH2n−CH=CH2
o,m,p−CH3CH2CHX−C64−(CH2n−CH=CH2
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、nは0〜20の整数)
o,m,p−XCH2−C64−(CH2n−O−(CH2m−CH=CH2
o,m,p−CH3CHX−C64−(CH2n−O−(CH2m−CH=CH2
o,m,p−CH3CH2CHX−C64−(CH2n−O−(CH2mCH=CH2
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、mは0〜20の整数、nは1〜20の整数)
o,m,p−XCH2−C64−O−(CH2n−CH=CH2
o,m,p−CH3CHX−C64−O−(CH2n−CH=CH2
o,m,p−CH3CH2CHX−C64−O−(CH2n−CH=CH2
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、nは0〜20の整数)
o,m,p−XCH2−C64−O−(CH2n−O−(CH2m−CH=CH2
o,m,p−CH3CHX−C64−O−(CH2n−O−(CH2m−CH=CH2
o,m,p−CH3CH2CHX−C64−O−(CH2n−O−(CH2m−CH=CH2
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、mは0〜20の整数、nは1〜20の整数)
アルケニル基を有する有機ハロゲン化物としては、さらに一般式(3):
CH2=C(R5)−R9−CX(R6)−R10−R7 (3)
(式中、R5、R6、R7、R9、Xは前記に同じ、R10は、直接結合、−COO−(エステル基)、−CO−(ケト基)またはo−,m−,p−フェニレン基)
で示される化合物があげられる。
【0033】
9は直接結合または炭素数1〜20の2価の有機基(1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい)であるが、直接結合である場合には、ハロゲン原子の結合している炭素にビニル基が結合しており、ハロゲン化アリル化物になる。この場合、隣接ビニル基によって炭素−ハロゲン結合が活性化されているので、R10として−COO−やフェニレン基などを有する必要は必ずしもなく、直接結合であってもよい。R9が直接結合でない場合、炭素−ハロゲン結合を活性化するために、R10としては−COO−、−CO−、フェニレン基が好ましい。
【0034】
一般式(3)で表わされる化合物の具体例としては、たとえば
CH2=CHCH2X、CH2=C(CH3)CH2X、
CH2=CHCHX−CH3、CH2=C(CH3)CHX−CH3
CH2=CHCX(CH32、CH2=CHCHX−C25
CH2=CHCHX−CH(CH32、CH2=CHCHX−C65
CH2=CHCHX−CH265、CH2=CHCH2CHX−CO2R、
CH2=CH(CH22CHX−CO2R、
CH2=CH(CH23CHX−CO2R、
CH2=CH(CH28CHX−CO2R、CH2=CHCH2CHX−C65
CH2=CH(CH22CHX−C65
CH2=CH(CH23CHX−C65
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基)
などがあげられる。
【0035】
アルケニル基を有するハロゲン化スルホニル化合物の具体例としては、たとえば
o−,m−,p−CH2=CH−(CH2n−C64−SO2X、
o−,m−,p−CH2=CH−(CH2n−O−C64−SO2X、
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、nは0〜20の整数)などがあげられる。
【0036】
前記架橋性シリル基を有する有機ハロゲン化物にはとくに限定はなく、その例としては、たとえば一般式(4):
67CX−R8−R9−CH(R5)−CH2−[Si(R112-b(Y)bO]m−Si(R123-a(Y)a (4)
(式中、R5、R6、R7、R8、R9、Xは前記に同じ、R11、R12は、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基または(R’)3SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R11またはR12が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基または加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2または3、bは0、1または2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする)
で表わされる化合物が例示される。
【0037】
一般式(4)で表わされる化合物の具体例としては、たとえば
XCH2COO(CH2nSi(OCH33
CH3CHX−COO(CH2nSi(OCH33
(CH32CX−COO(CH2nSi(OCH33
XCH2COO(CH2nSi(CH3)(OCH32
CH3CHX−COO(CH2nSi(CH3)(OCH32
(CH32CX−COO(CH2nSi(CH3)(OCH32
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、nは0〜20の整数)
XCH2COO(CH2nO(CH2mSi(OCH33
3CCHX−COO(CH2nO(CH2mSi(OCH33
(H3C)2CX−COO(CH2nO(CH2mSi(OCH33
CH3CH2CHX−COO(CH2nO(CH2mSi(OCH33
XCH2COO(CH2nO(CH2mSi(CH3)(OCH32
3CCHX−COO(CH2nO(CH2mSi(CH3)(OCH32
(H3C)2CX−COO(CH2nO(CH2mSi(CH3)(OCH32
CH3CH2CHX−COO(CH2nO(CH2mSi(CH3)(OCH32
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、mは0〜20の整数、nは1〜20の整数)
o,m,p−XCH2−C64−(CH22Si(OCH33
o,m,p−CH3CHX−C64−(CH22Si(OCH33
o,m,p−CH3CH2CHX−C64−(CH22Si(OCH33
o,m,p−XCH2−C64−(CH23Si(OCH33
o,m,p−CH3CHX−C64−(CH23Si(OCH33
o,m,p−CH3CH2CHX−C64−(CH23Si(OCH33
o,m,p−XCH2−C64−(CH22−O−(CH23Si(OCH33
o,m,p−CH3CHX−C64−(CH22−O−(CH23Si(OCH33
o,m,p−CH3CH2CHX−C64−(CH22−O−(CH23Si(OCH33
o,m,p−XCH2−C64−O−(CH23Si(OCH33
o,m,p−CH3CHX−C64−O−(CH23Si(OCH33
o,m,p−CH3CH2CHX−C64−O−(CH23−Si(OCH33
o,m,p−XCH2−C64−O−(CH22−O−(CH23−Si(OCH33
o,m,p−CH3CHX−C64−O−(CH22−O−(CH23Si(OCH33
o,m,p−CH3CH2CHX−C64−O−(CH22−O−(CH23Si(OCH33
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)
などがあげられる。
【0038】
前記記架橋性シリル基を有する有機ハロゲン化物としては、さらに、一般式(5):
(R123-a(Y)aSi−[OSi(R112-b(Y)bm−CH2−CH(R5)−R9−CX(R6)−R10−R7 (5)
(式中、R5、R7、R8、R9、R10、R11、R12、a、b、m、X、Yは前記に同じ)で示される化合物が例示される。
【0039】
前記化合物の具体例としては、たとえば
(CH3O)3SiCH2CH2CHX−C65
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2CHX−C65
(CH3O)3Si(CH22CHX−CO2R、
(CH3O)2(CH3)Si(CH22CHX−CO2R、
(CH3O)3Si(CH23CHX−CO2R、
(CH3O)2(CH3)Si(CH23CHX−CO2R、
(CH3O)3Si(CH24CHX−CO2R、
(CH3O)2(CH3)Si(CH24CHX−CO2R、
(CH3O)3Si(CH29CHX−CO2R、
(CH3O)2(CH3)Si(CH29CHX−CO2R、
(CH3O)3Si(CH23CHX−C65
(CH3O)2(CH3)Si(CH23CHX−C65
(CH3O)3Si(CH24CHX−C65
(CH3O)2(CH3)Si(CH24CHX−C65
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基)
などがあげられる。
【0040】
前記ヒドロキシル基を持つ有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物にはとくに限定はなく、たとえば一般式:
HO−(CH2n−O−CO−CHX(R)
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、nは1〜20の整数)
で表わされる化合物が例示される。
【0041】
前記アミノ基を持つ有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物にはとくに限定はなく、たとえば一般式:
2N−(CH2n−OCO−CHX(R)
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、nは1〜20の整数)
で表わされる化合物が例示される。
【0042】
前記エポキシ基を持つ有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物にはとくに限定はなく、たとえば一般式:
【0043】
【化3】
Figure 0004289037
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、nは1〜20の整数)
で表わされる化合物が例示される。
【0044】
反応性官能基を1分子内に2つ以上有する重合体を得るためには、2つ以上の開始点を持つ有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤として用いるのが好ましい。
【0045】
前記開始剤の具体例としては、たとえば
【0046】
【化4】
Figure 0004289037
【0047】
【化5】
Figure 0004289037
などがあげられる。
【0048】
前記重合触媒として用いられる遷移金属錯体としては、たとえば周期律表第7族、第8族、第9族、第10族または第11族元素、好ましくは第8族、第9族、第10族または第11族元素を中心金属とする遷移金属錯体が用いられる。
【0049】
前記遷移金属錯体の中心金属としては、たとえば鉄、ニッケル、ルテニウム、銅などがあげられる。これらのうちでは、たとえば0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄、2価のニッケルが好ましく、なかでも0価または1価の銅が良好なビニル系重合体が得られる点から好ましい。
【0050】
前記遷移金属錯体を構成する金属化合物(配位子が配位する前の化合物)のうちの1価の銅化合物の具体例としては、たとえば塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅などがあげられる。
【0051】
また、前記遷移金属錯体を形成する配位子としては、たとえばポリアミン化合物、トリアミン化合物、ピリジン、ビピリジンなどがあげられる。これらのうちでは、ポリアミン化合物、トリアミン化合物が好ましい。
【0052】
銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために配位子として、たとえば2,2′−ビピリジル、その誘導体、1,10−フェナントロリン、その誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミンなどのポリアミンなどが添加される。
【0053】
また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl2(PPh33)も触媒として好適である。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類を添加するのが好ましい。
【0054】
さらに、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl2(PPh32)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl2(PPh32)、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr2(PBu32)も、触媒として好適である。
【0055】
前記ビニル系重合体の製造に用いられるビニル系モノマーにはとくに制限はなく、その具体例としては、たとえば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜50)、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル(環状アルキル基の炭素数5〜50)、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイルなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル(アリール基の炭素数6〜50)、(メタ)アクリル酸ベンジルなどの(メタ)アクリル酸アラルキルエステル(アラルキル基の炭素数7〜50)、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル(アルコキシ基の炭素数1〜50、アルキル基の炭素数1〜50)、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル(ヒドロキシアルキル基の炭素数1〜50)、(メタ)アクリル酸グリシジルなどの(メタ)アクリル酸エポキシ基含有アルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜50)、(メタ)アクリル酸2−アミノエチルなどの(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル(アミノアルキル基の炭素数1〜50)、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシランなどの(メタ)アクリル酸アルコキシシリル基含有アルキルエステル(アルコキシ基の炭素数1〜50、アルキル基の炭素数1〜50)、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物(エチレンオキサイド付加数2〜50)、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどの(メタ)アクリル酸含フッ素アルキルエステル(含フッ素アルキル基の炭素数1〜50)などの(メタ)アクリル酸系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸、その塩などのスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどのフッ素含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルアルコキシシランなどのケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどのビニルエステル類;エチレン、プロピレンなどのアルケン類;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコールなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、生成物の物性などの点から、スチレン系モノマーや(メタ)アクリル酸系モノマーが好ましく、さらにはアクリル酸エステルモノマーおよびメタクリル酸エステルモノマーが好ましく、とくにはアクリル酸エステル系モノマーが好ましく、さらにとくにはアクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−メトキシエチルが好ましい。
【0056】
本発明においては、これらの好ましいモノマーを他のモノマーと共重合、さらにはブロック共重合させても構わない。その際には、これらの好ましいモノマーが重量比で40%以上含まれていることが好ましい。
【0057】
なお、前記表現形式でたとえば(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を表わす。
【0058】
前記ビニル系モノマーからビニル系重合体への重合反応は、無溶媒でも可能であるが、各種の溶媒中で行なうこともできる。また、エマルジョン系または超臨界流体CO2を媒体とする系において重合を行なうこともできる。
【0059】
前記溶媒の種類にはとくに限定はなく、たとえばベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼンなどのエーテル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒などがあげられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
前記重合における重合溶媒、重合開始剤、重合触媒である遷移金属錯体、配位子、ビニル系モノマーの使用割合にはとくに限定はないが、重合開始剤1モルに対して、重合触媒0.1〜5モル、さらには0.5〜2モルであるのが、重合制御の点から好ましい。遷移金属錯体として銅化合物を使用する場合には、通常の原子移動ラジカル重合の条件では、遷移金属の配位座の数と、配位子の配位する基の数から決定され、ほぼ等しくなるように設定されている。たとえば、通常、2,2’−ビピリジルおよびその誘導体を銅化合物に対して加える量はモル比で2倍であり、ペンタメチルジエチレントリアミンの場合はモル比で1倍である。本発明の場合は、とくに限定はされないが、金属原子が配位子に対して過剰になる方が好ましい。配位座と配位する基の比は、好ましくは1.2倍以上であり、さらに好ましくは1.4倍以上であり、ことに好ましくは1.6倍以上であり、とくに好ましくは2倍以上である。また、重合開始剤とビニル系モノマーとの割合は、製造しようとするビニル系重合体の分子量により異なるため一概に決められないが、通常、重合開始剤1モルに対して、ビニル系モノマー5〜1000モル、さらには10〜500モルである。さらに、溶媒を使用する場合、前記重合溶媒の使用量は、重合系の触媒の溶解量または触媒の分散状態をよくする量であることが好ましく、具体的には、ビニル系モノマー100部に対して、0.1〜300部、さらには1〜100部、ことには5〜30部であるのが好ましい。
【0061】
前記のごとき割合になるように重合容器中に重合溶媒、重合開始剤および重合触媒である遷移金属錯体を仕込み、これらの存在下、ビニル系モノマーを滴下するごとき方法によりビニル系重合体が製造される。
【0062】
重合温度としては、通常、0〜200℃、さらには室温〜150℃の範囲であるのが、副反応が少ない点から好ましい。
【0063】
つぎに、前記のようにして製造されたビニル系重合体について説明する。
【0064】
ビニル系重合体にはとくに限定はないが、ビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合により製造されるものであるのが好ましい。
【0065】
前記ビニル系重合体の数平均分子量にはとくに制限はないが、500〜100,000、さらには1000〜100,000の範囲であるのが好ましい。分子量が低くなりすぎる場合、ビニル系重合体本来の特性が発現されにくく、また、逆に高くなりすぎる場合、取扱いが困難になる。重合体の数平均分子量、及び重量平均分子量/数平均分子量の値は、通常、ポリスチレンゲルを充填したカラム(移動相:クロロホルム)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる。
【0066】
前記ビニル系重合体の分子量分布、すなわち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量/数平均分子量にもとくに限定はないが、1.8未満、さらには1.7以下、ことには1.6以下、とくには1.5以下、さらにとくには1.4以下、ことにとくには1.3以下であるのが好ましい。
【0067】
前記GPC測定において、通常、移動相としてクロロホルムを用い、測定はポリスチレンゲルカラムにて行ない、数平均分子量などはポリスチレン換算で求めることができる。
【0068】
本発明のビニル系重合体がアルケニル基を有する場合、ヒドロシリル化反応性組成物の1成分として用いることができる。
【0069】
前記ビニル系重合体中のアルケニル基の数としては、1分子中に1〜30個であるのが好ましい。
【0070】
前記アルケニル基が含まれている位置にはとくに限定はないが、分子鎖の末端に存在すると、硬化物の架橋点間分子量が大きくなるので好ましい。
【0071】
前記ビニル系重合体としては、(メタ)アクリル系重合体であるのが良好な硬化物を与える点から好ましく、アクリル酸エステル系重合体であるのがさらに好ましく、アクリル酸ブチル系重合体であるのがことに好ましい。
【0072】
なお、前記アクリル酸ブチル系重合体などにおける系というのは、アクリル酸ブチル系重合体の場合、アクリル酸ブチル単位を40%以上含有することをいう。
アルケニル基を有するビニル系重合体
アルケニル基を有するビニル系重合体は、ヒドロシリル化反応性組成物の成分として用いることができる。たとえば、分子内に少なくとも1つのアルケニル基を有するビニル系重合体は、ヒドロシリル基含有化合物を硬化剤として用いてヒドロシリル化反応を行なうことにより、架橋し、硬化物を与えることができる。また、分子内に少なくとも1つアルケニル基を有するビニル系重合体に、架橋性官能基を有するヒドロシラン化合物をヒドロシリル化反応させることにより、架橋性官能基を有するビニル系重合体を得ることができる。
【0073】
アルケニル基を有するビニル系重合体は、たとえば原子移動ラジカル重合法を利用して製造される。
【0074】
本発明におけるアルケニル基にはとくに限定はないが、一般式(6):
CH2=C(R13)− (6)
(式中、R13は水素原子または炭素数1〜20の有機基)
で表わされる基であるのが好ましい。
【0075】
一般式(6)において、R13は水素原子または炭素数1〜20の有機基であるが、水素原子またはメチル基がより好ましい。炭素数1〜20の有機基にはとくに限定はないが、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリ−ル基、炭素数7〜20のアラルキル基が好ましく、具体的には以下のような基が例示される。
−(CH2n−CH3、−CH(CH3)−(CH2n−CH3、−CH(CH2CH3)−(CH2n−CH3、−CH(CH2CH32、−C(CH32−(CH2n−CH3、−C(CH3)(CH2CH3)−(CH2n−CH3、−C65、−C65(CH3)、−C65(CH32、−(CH2n−C65、−(CH2n−C65(CH3)、−(CH2n−C65(CH32
(nは0以上の整数で、各基の合計炭素数は20以下)。
【0076】
さらに、限定はされないが、ビニル系重合体のアルケニル基が、その炭素−炭素2重結合と共役するカルボニル基、アルケニル基、芳香族環により活性化されていないことが好ましい。
【0077】
アルケニル基と重合体の主鎖との結合形式にはとくに限定はないが、炭素−炭素結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、アミド結合、ウレタン結合などを介して結合されているのが好ましい。
【0078】
アルケニル基は、ビニル系重合体の分子内に存在すればよいが、後述する本発明の硬化性組成物からの硬化物にゴム的な性質がとくに要求される場合には、ゴム弾性に大きな影響を与える架橋点間分子量が大きくとれる点から、アルケニル基の少なくとも1個は分子鎖の末端にあることが好ましく、全てのアルケニル基が分子鎖末端にあることがさらに好ましい。
【0079】
アルケニル基の数にはとくに限定はないが、より架橋度の高い硬化物を得るためには、平均して1個以上、さらには1.2個以上、ことには1.5個以上であるのが好ましい。
【0080】
つぎに、アルケニル基を有するビニル系重合体の製造方法について説明するが、これらの方法に限定されるものではない。
【0081】
(A−a)原子移動ラジカル重合法によりビニル系重合体を製造する際に、たとえば一般式(9):
CH2=C(R14)−R15−R16−C(R17)=CH2 (9)
(式中、R14は水素原子またはメチル基、R15は−COO−またはo−,m−,p−フェニレン基、R16は直接結合または炭素数1〜20の2価の有機基を示し、1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい。R17は水素原子または炭素数1〜20の有機基)
に示されているような1分子中に重合性の高いアルケニル基と重合性の低いアルケニル基とを併有する化合物を第2のモノマーとして反応させる方法。
【0082】
一般式(9)において、R17は水素原子または炭素数1〜20の有機基であるが、水素原子またはメチル基が好ましい。炭素数1〜20の有機基にはとくに限定はないが、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリ−ル基、炭素数7〜20のアラルキル基が好ましく、具体的には以下のような基が例示される。
−(CH2n−CH3、−CH(CH3)−(CH2n−CH3、−CH(CH2CH3)−(CH2n−CH3、−CH(CH2CH32、−C(CH32−(CH2n−CH3、−C(CH3)(CH2CH3)−(CH2n−CH3、−C65、−C65(CH3)、−C65(CH32、−(CH2n−C65、−(CH2n−C65(CH3)、−(CH2n−C65(CH32
(nは0以上の整数で、各基の合計炭素数は20以下)。
【0083】
なお、1分子中に重合性の高いアルケニル基と重合性の低いアルケニル基を併有する化合物を反応させる時期に制限はないが、ビニル系重合体を硬化させて得られる硬化物にゴム的な性質を期待する場合には、重合反応の終期または所定のモノマーの反応終了後に第2のモノマーとして反応させるのが好ましい。
【0084】
(A−b)原子移動ラジカル重合法によりビニル系重合体を製造する際に、重合反応の終期または所定のモノマーの反応終了後に、たとえば1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエンなどのような重合性の低いアルケニル基を少なくとも2個有する化合物を反応させる方法。
【0085】
前記重合反応の終期というのは、モノマーの80%以上が重合したときのことである。
【0086】
また、所定のモノマーの反応終了後というのは、モノマーの95%以上が重合したのちのことである。
【0087】
(A−c)原子移動ラジカル重合法により得られる末端に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、たとえばアリルトリブチル錫、アリルトリオクチル錫などの有機錫のようなアルケニル基を有する各種の有機金属化合物を反応させてハロゲン原子を置換する方法。
【0088】
(A−d)原子移動ラジカル重合法により得られた末端に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、一般式(10):
+-(R18)(R19)−R20−C(R17)=CH2 (10)
(式中、R17は前記に同じ、R18、R19は、ともにカルバニオンC-を安定化する電子吸引基または一方が前記電子吸引基で他方が水素原子または炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基、R20は直接結合または炭素数1〜10の2価の有機基を示し、1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい、M+はアルカリ金属イオンまたは4級アンモニウムイオン)
にあげられるようなアルケニル基を有する安定化カルバニオンを反応させてハロゲン原子を置換する方法。
【0089】
18、R19の電子吸引基としては、−CO2R(エステル基)、−CO−R(ケト基)、−CONR2(アミド基)、−COSR(チオエステル基)、−CN(ニトリル基)、−NO2(ニトロ基)などがあげられるが、−CO2R、−CO−Rおよび−CNがとくに好ましい。なお、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基である。
【0090】
20の炭素数1〜10の2価の有機基としては、たとえば直接結合、炭素数1〜10のアルキレン基または1個以上のエーテル結合を含む基があげられる。前記炭素数1〜10のアルキレン基としては、−(CH2n−(nは0〜10の整数)が例示される。また、前記1個以上のエーテル結合を含む基としては、−O−(CH2n−、−(CH2n−O−、−(CH2n−O−(CH2m−(m、nはn+m=20を満たす1〜10の整数)あげられる。
【0091】
(A−e)原子移動ラジカル重合法により得られる末端に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、たとえば亜鉛のような金属単体または有機金属化合物を作用させてエノレートアニオンを調製し、しかるのちにハロゲン原子やアセチル基のような脱離基を有するアルケニル基含有化合物、アルケニル基を有するカルボニル化合物、アルケニル基を有するイソシアネート化合物、アルケニル基を有する酸ハロゲン化物などの、アルケニル基を有する求電子化合物と反応させる方法。
【0092】
(A−f)原子移動ラジカル重合により得られる末端に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、たとえば一般式(11):
CH2=C(R17)−R21−O-+ (11)
(式中、R17、M+は上記に同じ、R21は炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい)
または一般式(12):
CH2=C(R17)−R22−COO-+ (12)
(式中、R17、M+は前記に同じ、R22は直接結合または炭素数1〜20の2価の有機基で、1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい)
に示されるようなアルケニル基を有するオキシアニオンまたはカルボキシレートアニオンを反応させてハロゲン原子を置換する方法。
【0093】
(A−a)〜(A−f)の方法のなかでも制御がより容易である点から、(A−b)、(A−f)の方法が好ましい。以下に(A−b)、(A−f)の導入方法について詳述する。
ジエン系化合物添加法[(A−b)法]
(A−b)法は、ビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合により得られるビニル系重合体に、重合性の低いアルケニル基を少なくとも2個有する化合物(以下、「ジエン系化合物」という。)を反応させることを特徴とする。
【0094】
ジエン系化合物の少なくとも2つのアルケニル基は互いに同一または異なっていてもよい。アルケニル基としては末端アルケニル基[CH2=C(R)−R’:Rは水素原子または炭素数1〜20の有機基、R’は炭素数1〜20の有機基であり、RとR’は互いに結合して環状構造を有していてもよい]または内部アルケニル基[R’−C(R)=C(R)−R’:Rは水素原子または炭素数1〜20の有機基、R’は炭素数1〜20の有機基であり、2つのR(または2つのR’)は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。2つのRと2つのR’のうちのいずれか2つが互いに結合して環状構造を有していてもよい]のいずれでもよいが、末端アルケニル基であるのがより好ましい。
【0095】
Rは水素原子または炭素数1〜20の有機基であるが、炭素数1〜20の有機基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリ−ル基、炭素数7〜20のアラルキル基が好ましい。なかでも、水素原子またはメチル基が好ましい。
【0096】
また、ジエン系化合物のアルケニル基のうち、少なくとも2つのアルケニル基が共役していてもよい。
【0097】
ジエン系化合物の具体例としては、たとえばイソプレン、ピペリレン、ブタジエン、ミルセン、1、5−ヘキサジエン、1、7−オクタジエン、1、9−デカジエン、4−ビニル−1−シクロヘキセンなどがあげられる。これらのうちでは、1、5−ヘキサジエン、1、7−オクタジエン、1、9−デカジエンが好ましい。
【0098】
ビニル系モノマーのリビングラジカル重合を行ない、得られた重合体を重合系より単離したのち、単離した重合体とジエン系化合物をラジカル反応させることにより、目的とする末端にアルケニル基を有するビニル系重合体を得ることも可能であるが、重合反応の終期または所定のビニル系モノマーの反応終了後にジエン系化合物を重合反応系中に添加する方法が、簡便であり、より好ましい。
【0099】
ジエン系化合物の添加量は、ジエン系化合物のアルケニル基のラジカル反応性によって調節するのが好ましい。2つのアルケニル基の反応性に大きな差がある場合、重合成長末端に対してジエン系化合物は当量または小過剰量程度(1.5倍程度)でもよいが、2つのアルケニル基の反応性が等しいまたはあまり差がないときには、2つのアルケニル基の両方が反応し、重合末端同士がカップリングする可能性があるので、ジエン系化合物の添加量は、重合体生長末端に対して過剰量であるのが好ましい。具体的には、1.5倍以上、さらには3倍以上、とくには5倍以上であるのが好ましく、上限は50倍であるのが生産効率の点から好ましい。
求核置換法[(A−f)法]
(A−f)法は原子移動ラジカル重合により得られた末端に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、アルケニル基を有するオキシアニオンまたはカルボキシレートアニオンを反応させてハロゲン原子を置換することを特徴とする。
【0100】
アルケニル基を有するオキシアニオンまたはカルボキシレートアニオンにはとくに限定はないが、たとえば一般式(11)または(12)に示されるものがあげられる。
【0101】
前記オキシアニオンまたはカルボキシレートアニオンの具体例としては、たとえばアンモニア;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアルキルアミン;テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミンなどのポリアミン;ピリジン、ピコリンなどのピリジン系化合物などからのアニオンがあげられる。
【0102】
塩基性化合物の使用量は前駆物質に対して当量または小過剰量用いればよく、好ましくは1〜1.2当量である。
【0103】
前記前駆化合物と塩基性化合物とを反応させる際に用いられる溶媒としては、たとえばアリルアルコールなどのアルケニルアルコールの塩;エチレングリコールモノアリルエーテルなどのアリロキシアルコール類の塩;アリルフェノール、アリロキシフェノールなどのアルケニル基含有フェノール性水酸基塩;10−ウンデシレン酸、4−ペンテン酸、ビニル酢酸などのアルケニル基含有カルボン酸塩などがあげられる。
【0104】
+は対カチオンであり、M+の種類としては、アルカリ金属イオン、具体的にはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、4級アンモニウムイオンなどがあげられる。
【0105】
前記4級アンモニウムイオンとしては、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラベンジルアンモニウムイオン、トリメチルドデシルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、ジメチルピペリジニウムイオンなどがあげられる。
【0106】
これらのうちでは、ナトリウムイオン、カリウムイオンが好ましい。
【0107】
オキシアニオンまたはカルボキシレートアニオンの使用量は、ハロゲン原子に対して過剰量であればよく、1〜5当量、さらには1〜2当量、ことには1.0〜1.2当量であるのが好ましい。
【0108】
前記反応を行なう溶媒にはとくに限定はないが、比較的極性の高い溶媒が好ましく、たとえばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼンなどのエーテル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒などがあげられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのなかでもアセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、アセトニトリルなどの極性溶媒が、重合が円滑に進行する点から好ましい。
【0109】
反応温度にはとくに限定はないが、一般に0〜150℃、さらには室温〜100℃であるのが好ましい。
【0110】
また、反応促進剤として反応系にアミン類、アンモニウム塩、クラウンエーテル類などを添加してもよい。
【0111】
オキシアニオンまたはカルボキシレートアニオンのかわりに前駆体であるアルコールまたはカルボン酸を用いて反応系中で塩基と作用させることによりオキシアニオンまたはカルボキシレートアニオンを調製してもよい。
【0112】
ビニル系重合体の側差または主鎖中にエステル基が存在する場合、求核性の高いオキシアニオンを用いるとエステル交換を惹き起こす可能性があるので求核性の低いカルボキシレートアニオンを用いるのが好ましい。
水酸基からアルケニル基への変換方法
アルケニル基を少なくとも1個有するビニル系重合体は、水酸基を少なくとも1個有するビニル系重合体から得ることも可能であり、以下に例示する方法が利用できるが、これらに限定されるわけではない。
【0113】
(A−g)水酸基を少なくとも1個有するビニル系重合体の水酸基にナトリウムメトキシドのような塩基を作用させ、塩化アリルのようなアルケニル基含有ハロゲン化物と反応させる方法。
【0114】
(A−h)水酸基を少なくとも1個有するビニル系重合体の水酸基にアリルイソシアネートなどのアルケニル基含有イソシアネート化合物を反応させる方法。
【0115】
(A−i)水酸基を少なくとも1個有するビニル系重合体の水酸基に(メタ)アクリル酸クロリド、10−ウンデセン酸クロリドのようなアルケニル基含有酸ハロゲン化物をピリジンなどの塩基存在下に反応させる方法。
【0116】
(A−j)水酸基を少なくとも1個有するビニル系重合体の水酸基にアクリル酸、ペンテン酸、10−ウンデセン酸などのアルケニル基含有カルボン酸を酸触媒の存在下に反応させる方法。
【0117】
(A−k)水酸基を有するビニル系重合体に、ジイソシアネート化合物を反応させ、残存イソシアネート基にアルケニル基と水酸基を併せもつ化合物を反応させる方法。
【0118】
アルケニル基と水酸基を併せもつ化合物にはとくに限定はないが、具体例としては、たとえば10−ウンデセノール、5−ヘキセノール、アリルアルコールのようなアルケニルアルコールがあげられる。
【0119】
ジイソシアネート化合物にはとくに限定はないが、従来公知のものをいずれも使用することができる。具体例としては、たとえばトルイレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチルジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トルイレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのイソシアネート化合物などがあげられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、ブロックイソシアネートを使用しても構わない。
【0120】
よりすぐれた耐候性を生かすためには、たとえばヘキサメチレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香環を有しないジイソシアネート化合物を用いるのが好ましい。
水酸基を有するビニル系重合体の製造方法
(A−g)〜(A−k)の方法で用いる水酸基を少なくとも1個有するビニル系重合体の製造方法としては、以下のような方法が例示されるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0121】
(B−a)原子移動ラジカル重合法によりビニル系重合体を製造する際に、たとえば一般式(15):
CH2=C(R14)−R15−R16−OH (15)
(式中、R14、R15、R16は前記に同じ)
に示されているような1分子中に重合性のアルケニル基と水酸基を併せもつ化合物を第2のモノマーとして反応させる方法。
【0122】
なお、1分子中に重合性のアルケニル基と水酸基を併せもつ化合物を反応させる時期に制限はないが、とくにリビングラジカル重合で、ゴム的な性質を期待する場合、重合反応の終期または所定のモノマーの反応終了後に、第2のモノマーとして反応させるのが好ましい。
【0123】
(B−b)原子移動ラジカル重合法によりビニル系重合体を製造する際に、重合反応の終期または所定のモノマーの反応終了後に、たとえば10−ウンデセノール、5−ヘキセノール、アリルアルコールのようなアルケニルアルコールを反応させる方法。
【0124】
(B−f)原子移動ラジカル重合で得られる末端に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体のハロゲン原子を加水分解または水酸基含有化合物と反応させることにより、末端に水酸基を導入する方法。
【0125】
(B−g)原子移動ラジカル重合で得られる末端に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、一般式(16):
+-(R18)(R19)−R20−OH (16)
(式中、R18、R19、R20は前記に同じ)
に示されているような水酸基を有する安定化カルバニオンを反応させてハロゲン原子を置換する方法。
【0126】
18、R19の電子吸引基としては、−CO2R(エステル基)、−CO−R(ケト基)、−CONR2(アミド基)、−COSR(チオエステル基)、−CN(ニトリル基)、−NO2(ニトロ基)などがあげられるが、−CO2R、−CO−Rおよび−CNがとくに好ましい。
【0127】
なお、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基である。
【0128】
(B−h)原子移動ラジカル重合で得られる末端に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、たとえば亜鉛のような金属単体または有機金属化合物を作用させてエノレートアニオンを調製し、しかるのちにアルデヒド類またはケトン類を反応させる方法。
【0129】
(B−i)原子移動ラジカル重合で得られる末端に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、たとえば一般式(17):
HO−R21−O-+ (17)
(式中、R21およびM+は前記に同じ)
または一般式(18):
HO−R22−COO-+ (18)
(式中、R22およびM+は前記に同じ)
に示されるような水酸基を有するオキシアニオンまたはカルボキシレートアニオンを反応させてハロゲン原子を置換する方法。
【0130】
+、反応条件、溶媒などについては(A−f)の説明で述べたものすべてを好適に用いることができる。
【0131】
(B−j)原子移動ラジカル重合によりビニル系重合体を製造する際に、重合反応の終期または所定のモノマーの反応終了後に、第2のモノマーとして1分子中に重合性の低いアルケニル基および水酸基を有する化合物を反応させる方法。
【0132】
このような化合物にはとくに限定はないが、一般式(19):
CH2=C(R14)−R21−OH (19)
(式中、R14およびR21は前記のものと同様)
に示される化合物などがあげられる。
【0133】
前記一般式(19)に示される化合物にはとくに限定はないが、入手が容易であるという点から、10−ウンデセノール、5−ヘキセノール、アリルアルコールのようなアルケニルアルコールであるのが好ましい。
【0134】
(B−a)から(B−j)の製造方法のなかでも、制御が容易である点から(B−b)、(B−i)の方法が好ましい。
【0135】
つぎに精製処理について説明する。
【0136】
ビニル系重合体の精製方法
原子移動ラジカル重合の反応混合物に存在する固体銅などの重合触媒を予め固液分離操作(濾過や遠心分離など)で除去する処理、吸着処理などがあげられる。以下に示す精製方法は、精製時に新品の溶剤を使用して溶剤リサイクルを実施しない場合である。リサイクル溶剤を使用して、かつ溶剤リサイクルを実施する本発明の詳細な説明は後述する。
【0137】
精製処理の1つである前記固体銅除去処理の前処理法の一つとして、遷移金属錯体を含むビニル系重合体を、25℃における比誘電率が5以下の溶媒と混合し、ビニル系重合体を溶解するとともに残存する遷移金属錯体を不溶化、肥大させる精製方法が挙げられる。低誘電率の溶媒中で、遷移金属錯体は不溶化、肥大する。低誘電率溶媒は遷移金属錯体の貧溶媒であるため、低誘電率溶媒の添加により遷移金属錯体は容易に不溶化し、不溶化した遷移金属同士が衝突することによって肥大する。不溶化、肥大した遷移金属錯体および遷移金属は、自然沈降、遠心分離または濾過等により除去可能である。
本発明の精製法で用いる溶媒を以下に例示するが、これらの溶媒に限定されるものではなく、1種または2種以上を混合して用いても良い。脂肪族炭化水素として、例えばn-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、芳香族炭化水素としてトルエン、キシレンなどが挙げられる。これらの溶媒は、重合体が溶解する範囲内では単独で用いても混合して用いても良い。
【0138】
溶媒の使用量は、通常、ビニル系重合体100重量部に対して10から1000重量部であるが、より好ましくは50〜500重量部である。10重量部未満では不溶化、肥大効果が低く、逆に1000重量部以上では不溶化効果にほとんど差がなく、また溶剤回収コストを考えると実際の製造プロセスとしては無駄が多くなる。
【0139】
上記遷移金属錯体の肥大、不溶化は最終生成物であるビニル系重合体の溶液に対して行ってもよいが、該ビニル系重合体を製造するため中間生成物に対して行ってもよい。例えば、アルケニル基を有するビニル系重合体を最終生成物とする場合、該重合体はもちろんのこと、該ビニル系重合体を製造するための中間生成物として考えられる▲1▼反応性の高い炭素ハロゲン結合を有するビニル系重合体、▲2▼水酸基を有するビニル系重合体の溶液に対して、遷移金属錯体の不溶化、肥大を行うことが可能である。
【0140】
さらに本発明においては、遷移金属錯体を重合触媒とするビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合により製造されるビニル系重合体を高温で処理することにより、遷移金属錯体の肥大、不溶化を促進させることができる。高温では、溶媒中での遷移金属のブラウン運動が統計的に活発になり肥大、不溶化を促進させる。
【0141】
肥大、不溶化の温度については特に制限はないが、一般に0℃〜250℃、好ましくは20〜250℃、より好ましくは80℃〜250℃の範囲である。加熱する時間も特に制約はないが、好ましくは30〜300分である。
【0142】
本発明においては、低極性溶媒を添加することにより遷移金属錯体の不溶化が達成されるが、加熱しない場合は、発生した固体が非常に粒子径の小さなものとなることがあり、この場合、後の固液分離には多大な労力を必要とする。具体的には遠心分離方式においては微粒子を分離するために大きな遠心力が必要となること、また微粒子が装置内に滞留して詰まりなどを発生しやすく、安定運転の支障となることが挙げられる。一方、濾過方式においても、粒子径が小さければ多量の濾過助剤が必要となり、濾過速度も小さくなる結果、設備が大型化してしまう。また、濾過助剤中に残留する製品をいかに回収するか等の課題を抱えることになる。
【0143】
重合体溶液を加熱することにより、不溶化した遷移金属錯体の凝集が促進されて固液分離が容易となる。具体的には遠心分離装置を用いる場合は運転の安定性向上、濾過装置を用いる場合は濾過速度向上に伴う設備の小型化や、濾過助剤量の低減による製品収率の向上等が期待できる。
【0144】
重合体を溶媒に溶解させる装置としては特に制限はなく、例えばバッチ式では汎用の撹拌槽を、連続式ではラインミキサー等を用いることができる。
【0145】
以上の操作を実施することにより、ビニル系重合体溶液中の遷移金属錯体が不溶化し、固液分離を行うことによりビニル系重合体が精製される。具体的な固液分離の方式は特に制限されないが、本発明においては遠心分離、自然沈降分離または濾過方式を用いることができ、遠心分離、濾過方式を用いることが好ましい。遠心分離機のタイプとしては分離盤型(デラバル)、デカンタ、バスケットなど適宜選択可能である。なかでも高い遠心力を有する分離盤型が特に好ましい。
【0146】
濾過方式としては、フィルタープレス、ドラムフィルター、加圧ヌッチェ、加圧葉状濾過機等を用いることができる。また、濾過性を高めるために珪藻土に代表される濾過助剤を添加することができる。濾過助剤としては平均粒子径5〜100μm程度のものが好ましい。濾過後の清澄液は、添加した溶媒を蒸発するだけで精製されたビニル系重合体を得ることができる。
【0147】
上記の低極性溶媒の添加、溶液の加熱、不溶化した遷移金属錯体の分離操作を行うことにより、不純物である遷移金属錯体の含有量の少ないビニル系重合体を得ることができる。
【0148】
さらに、以下に述べる諸操作により、遷移金属錯体の含有量の少ないビニル系重合体をより効率的に得ることが可能となる。
〔1〕吸着剤の添加
精製処理の1つである前記吸着処理に使用する吸着剤としては、たとえば活性炭、イオン交換樹脂などの合成樹脂系吸着剤、ゼオライトなどの無機系吸着剤などがあげられる。これらは、いずれも好適に使用することができる。
【0149】
本発明1に用いられる吸着剤を以下の(D−a)〜(D−c)に例示するが、これらに限定されるものではない。
(D−a)活性炭
活性炭として、従来より知られている各種のものを使用することができる。
(D−b)合成樹脂系吸着剤
合成樹脂系吸着剤としては、たとえばイオン交換樹脂、キレート型イオン交換樹脂などが例示される。
【0150】
前記酸性イオン交換樹脂の官能基としては、たとえばカルボン酸基、スルホン酸基などが、塩基性イオン交換樹脂の官能基としては、たとえばアミノ基が、キレート型イオン交換樹脂の官能基としては、たとえばイミノジ酢酸基、ポリアミン基などが例示される。
(D−c)無機系吸着剤
無機系吸着剤は、固体酸、固体塩基または中性の性格を有し、粒子は多孔質構造を持っているため、吸着能は非常に高い。また、低温から高温まで使用可能であることも特徴の1つである。
【0151】
前記無機系吸着剤にはとくに限定はないが、代表的なものとしてアルミニウム、マグネシウム、ケイ素などを主成分とする単独もしくはこれらを組み合わせたものがあげられる。たとえば二酸化珪素;酸化マグネシウム;シリカゲル;シリカ・アルミナ、アルミニウムシリケート;マグネシウムシリケート;活性アルミナ;酸性白土、活性白土などの粘土系吸着剤;珪酸アルミニウムナトリウムなどの含水アルミノ珪酸塩鉱物群で総称されるゼオライト系吸着剤;ドーソナイト類化合物;ハイドロタルサイト類化合物が例示される。
【0152】
ゼオライトには天然産と合成品があるがいずれも使用することができる。
【0153】
二酸化ケイ素としては、結晶性、無定形、非晶質、ガラス状、合成品、天然品などが知られているが、ここでは、粉体状であれば使用することができる。
【0154】
二酸化ケイ素の具体例としては、活性白土を酸処理して得られる粘土鉱物から作られるケイ酸、カープレックスBS304、カープレックスBS304F、カープレックス#67、カープレックス#80(いずれもシオノギ製薬)などの合成ケイ酸があげられるが、これらに限定されるわけではない。
【0155】
また、アルミニウムシリケートの具体例としては、ケイ酸のケイ素の一部がアルミニウムに置換されたもので、軽石、フライアッシュ、カオリン、ベントナイト、活性白土、ケイソウ土などが知られている。この中でも、合成のアルミニウムシリケートは比表面積も大きく吸着能力が高い。合成アルミニウムシリケートとしてはキョーワード700シリーズ(協和化学(株)製)などがあげられるが、これらに限定されるわけではない。
【0156】
ハイドロタルサイト類化合物は2価の金属(Mg2+,Mn2+,Fe2+,Co2+,Ni2+,Cu2+,Zn2+など)と3価の金属(Al3+,Fe3+,Cr3+,Co3+,In3+など)の含水水酸化物または前記水酸化物の水酸基の一部をハロゲンイオン,NO3 -,CO3 2-,SO4 2-,Fe(CN)6 3-,CH3CO2 -,シュウ酸イオン、サリチル酸イオンなどの陰イオンに交換したものである。これらのうち2価の金属がMg2+、3価の金属がAl3+であって水酸基の一部をCO3 2-に交換したハイドロタルサイトものが好ましく、たとえば合成品としてはキョーワード500シリーズ、キョーワード1000シリーズ(いずれも協和化学(株)製)があげられるが、これらに限定されるわけではない。また、前記ハイドロタルサイト類を焼成して得られる吸着剤も好適に使用される。そのなかでも2価の金属がMg2+、3価の金属がAl3+であるハイドロタルサイト類を焼成して得られるMgO−AlO3系固溶体が好ましく、たとえばキョーワード2000(協和化学(株)製)があげられるが、これらに限定されるわけではない。本発明においてはハイドロタルサイト類の焼成品についてもハイドロタルサイト類として分類する。
【0157】
使用される吸着剤としては、(D−c)で例示した無機系吸着剤が好ましく、アルミニウムシリケート、ハイドロタルサイト類がより好ましい。また、アルミニウムシリケートとハイドロタルサイト類を併用することがとくに好ましい。
【0158】
吸着剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0159】
アルミニウムシリケートまたはハイドロタルサイト類と酸素を使用する場合について以下に詳述する。
【0160】
原子移動ラジカル重合により製造されるビニル系重合体は、アルミニウムシリケートまたはハイドロタルサイト類と接触させることにより精製することができる。その際、酸素と吸着剤の接触方法は、吸着剤と酸素を共存下で混合して接触させることもできるが、それぞれ酸素と接触させてから吸着剤処理をしてもよい。
【0161】
酸素の濃度にはとくに制限はないが、高濃度の酸素を充填した場合には、ビニル系重合体の品質、たとえば分子量分布などに悪影響をおよぼす可能性があるため好ましくない。
【0162】
吸着剤と接触させる際には、無溶剤でも溶剤で希釈しても構わない。
【0163】
前記希釈溶剤としては、一般的なものを使用することができる。また、溶剤を使用する場合には、爆発の危険性があるため、使用する溶剤の爆発下限界酸素濃度以下の酸素濃度で行なうべきである。
【0164】
吸着剤の使用量は、ビニル系重合体100部に対して0.001〜500部、さらには0.005〜10部、とくには0.01〜5部の範囲であるのが、経済性と操作面から好ましい。
【0165】
吸着剤と重合体または重合体溶液の固液接触には様々な実施態様が可能であるが、撹拌混合と固液分離を回分操作で行なう回分式のほか、吸着剤を容器に充填し、重合体溶液を通液する固定層方式、吸着剤の移動層に液を通じる移動層式、吸着剤を液で流動化して吸着を行なう流動層式なども利用することができる。さらに、必要に応じて、撹拌による混合分散に加えて、容器の振とう、超音波の利用など、分散効率を向上させる諸操作を取り入れることができる。
【0166】
このようにして、ビニル系重合体中の金属濃度、たとえば銅濃度を1000ppm以下、さらには500ppm以下にすることができる。
【0167】
重合体または重合体溶液を吸着剤に接触させたのち、濾過、遠心分離、沈降分離などの方法で吸着剤を除去し、必要に応じて希釈、水洗を加え、目的とする清澄な重合体溶液を得ることができる。
【0168】
〔2〕酸素の供給
本発明において、ビニル系重合体溶液の加熱時に、酸素を供給することも有効である。遷移金属錯体は比較的酸化されやすく、一般に、遷移金属錯体が酸化されると溶媒に対する溶解性が低下する。従って、前記の重合体溶液の加熱や、吸着剤の添加とともに、酸素を供給することにより、より不純物の少ないビニル系重合体を得ることが出来る。
【0169】
酸素源としては空気のほか、適宜酸素濃度を調整した窒素に代表される不活性ガスとの混合ガスを用いることができる。この場合、有機溶剤と酸素を混合することになるが、酸素濃度を爆発限界以下に抑えることにより安全性を確保できる。本発明の酸素源としては、その他、過酸化水素、過炭酸ナトリウムのような過酸化物も同様に使用可能である。
【0170】
酸素の必要量は酸化対象の遷移金属のモル数に対して規定することができ、遷移金属のモル数に対し、通常、酸素原子基準で0.01〜5000倍モル、好ましくは0.1〜10倍モル、より好ましくは0.1〜5倍モルの酸素を用いる。
【0171】
酸素供給方法としては、窒素との混合ガスの例では重合体溶液加熱時に撹拌槽の気相部に充填しておく方法がある。この場合、1回の充填操作で必要酸素量を供給することが困難な場合もあるが、このような場合には適宜混合ガスを置換して継続して酸化処理を継続することが可能である。また、これ以外に加熱前に重合体溶液に通気により接触させる方法、固液分離直前に通気させる方法など、固液分離前に接触させてやれば特にそれ以外の制約はない。
【0172】
過酸化水素、過炭酸ナトリウムの場合もこれに準じた考えで重合体溶液に添加してやれば良い。過酸化水素、過炭酸ナトリウムの必要量も酸素ガスと同様に遷移金属のモル数に対して規定することができ、遷移金属のモル数に対し、通常、酸素原子基準で0.1〜100倍モル、好ましくは0.1〜10倍モルの過酸化水素もしくは過炭酸ナトリウムを用いる。
【0173】
なお、上記の酸素/窒素混合ガス、過酸化水素、及び過炭酸ナトリウムは単独で用いても併用して用いても構わない。
〔3〕水の添加
本発明において、ビニル系重合体溶液に水を添加することにより、ビニル系重合体溶液中の遷移金属錯体量を低減させることが可能である。上記の方法により不溶化した遷移金属錯体は水との親和性が強く、このため水を添加することにより水相に遷移金属錯体を濃縮することが可能となる。遷移金属錯体を含有した水の比重は、重合体溶液に比べてかなり大きいため、遠心分離、濾過等が容易となるばかりではなく、自然沈降などの更に簡便な方法による分離が可能となる。
【0174】
水の添加量は、通常遷移金属の総モル数に対し、通常、0.1〜1000倍モル、好ましくは0.1〜500倍モルである。固液分離前であれば、水の添加方法、添加時期は特に制約は受けない。
【0175】
精製時に用いる溶剤をリサイクルする場合の精製方法
以上ビニル系重合体の精製方法について述べてきたが、重合体の精製時に用いる溶剤をリサイクルするためには、精製阻害物の生成を抑制し、回収した溶剤中の含有量を低減させる必要がある。精製阻害とは、新品溶剤を使用して精製したビニル系重合体と比較して、精製処理後の銅濃度が高くなること、あるいは色調が濃くなることをいう。精製後に単離した重合体中の不純物量が多いと、その後の末端官能基の変換反応が阻害される場合があるし、また重合体が着色していることは、例えばコーティング材に用いる場合には、製品として好ましくない。
【0176】
前記精製阻害物は、精製処理時の副反応である末端の脱ハロゲン反応によって生成する有機ハロゲン化物および前記有機ハロゲン化物が加水分解したアルコール類である。この有機ハロゲン化物は、ビニル系重合体の側鎖(一般的にはエステル残基)とハロゲンが結合したものである。ハロゲンとしては、塩素、臭素、よう素が挙げられる。側鎖は重合時に使用するモノマー種によって変わるが、例えば、水素、ブチル基、エチル基、2−メトキシエチル基などが挙げられる。またアルコールとしては、例えば、1−ブタノール、エタノール、2−メトキシエタノール等があげられる。これらの有機ハロゲン化物およびアルコール類は、一般的に精製に好適な溶剤に比べて誘電率が高く固体銅の凝集肥大化を阻害すると考えられる。この末端の脱ハロゲン反応は、温度依存性があり3時間後の末端のハロゲン量基準での反応率で比較すると150℃では通常80%以上が反応するが、130℃以下では通常10%以下さらには100℃以下では通常5%以下に抑制される。すなわち、温度が低いほど末端脱ハロゲン反応が抑制される。したがって、希釈溶剤をリサイクルするためには、精製時の処理温度を130℃以下さらには100℃以下にするのが好ましい。
溶剤の蒸発方法
希釈溶剤をリサイクルするためには、重合体溶液を蒸発して溶剤を回収する必要がある。重合体溶液を蒸発して溶剤を回収する方法としては、反応槽中で攪拌脱揮する方法、薄膜蒸発機を使用する方法、フラッシュ蒸発等が挙げられるが、特に制約はない。その際の重合体溶液の温度は、精製処理と同様に温度が低いほど末端脱ハロゲン反応が抑制される。したがって、蒸発中の重合体溶液の温度を130℃以下さらには100℃以下にするのが好ましい。
脱ハロゲン化方法
本発明では、通常、原子移動ラジカル重合を利用して製造されたハロゲン含有ビニル系重合体の精製処理の後で、末端の脱ハロゲン反応をおこなう。ビニル系重合体の脱ハロゲン化方法としては、たとえば以下に示す高温加熱処理があげられる。
【0177】
原子移動ラジカル重合を利用して製造されるハロゲン含有ビニル系重合体は加熱により脱ハロゲン化が可能である。処理温度にはとくに限定はない。処理時間の短縮のためにはより高温の方が好ましいが、高温にしすぎるとビニル系重合体の分解が起こるため、ビニル系重合体の分解が顕著に起こらない温度領域でビニル系重合体を加熱処理することが好ましい。具体的には120℃以上250℃以下が好ましく、140℃以上250℃以下がより好ましく、170℃以上250℃以下がさらに好ましく、190℃以上250℃以下がとくに好ましい。
【0178】
脱ハロゲン化の加熱処理は、原子移動ラジカル重合の反応混合物の状態で行なってもよいし、精製処理工程、官能基変換処理工程などの工程を経たのちまたは処理工程中に行なってもよい。
【0179】
脱ハロゲン化の際に重合体から遊離するハロゲン化合物が製品の品質、製造設備などに悪影響を与える場合には、減圧下でハロゲン化合物を除去しながら脱ハロゲン化反応をすることが好ましい。好ましくは約13.3kPa(100torr)以下、より好ましくは約2.67kPa(20torr)以下である。また、攪拌などにより表面更新が良好な状態で加熱減圧することがより好ましい。
ヒドロシリル化反応性組成物
本発明のヒドロシリル化反応性組成物としては、たとえば(A)分子内にアルケニル基を有する精製ビニル系重合体、(B)ヒドロシリル基含有化合物を含有するヒドロシリル化反応性組成物があげられる。
【0180】
(A)成分の精製ビニル系重合体は、前述の原子移動ラジカル重合などを利用して得られた分子内にアルケニル基を有する精製ビニル系重合体である。
【0181】
(B)成分のヒドロシリル基含有化合物にはとくに制限はなく、各種のものを用いることができる。たとえば、分子内に少なくとも1.1個のヒドロシリル基を有する化合物、架橋性シリル基を併せもつヒドロシラン化合物などがあげられる。
【0182】
以下に具体的なヒドロシリル化反応性組成物を示す。
<ヒドロシリル化反応性組成物(1)>
(B)成分が分子内に少なくとも1.1個のヒドロシリル基を有する化合物である場合には、ヒドロシリル化反応により、組成物は硬化物を与え得る。すなわち、ヒドロシリル化反応性組成物は硬化性組成物(硬化性組成物(I))であり得る。
【0183】
このような分子内に少なくとも1.1個のヒドロシリル基を有する化合物にはとくに限定はないが、たとえば、一般式(22)または(23):
23 3SiO−[Si(R232O]a−[Si(H)(R24)O]b−[Si(R24)(R25)O]c−SiR23 3 (22)
HR23 2SiO−[Si(R232O]a−[Si(H)(R24)O]b−[Si(R24)(R25)O]c−SiR23 2H (23)
(式中、R23およびR24は炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基、R25は炭素数1〜10のアルキル基または炭素数7〜10のアラルキル基、aは0≦a≦100、bは2≦b≦100、cは0≦c≦100を満たす整数)
で表わされる鎖状ポリシロキサン、一般式(24):
【0184】
【化6】
Figure 0004289037
(式中、R26およびR27は炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基、R28は炭素数1〜10のアルキル基または炭素数7〜10のアラルキル基、dは0≦d≦8、eは2≦e≦10、fは0≦f≦8の整数を表わし、かつ3≦d+e+f≦10を満たす)
で表わされる環状シロキサンなどの化合物を用いることができる。
【0185】
これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのシロキサンのなかでも(メタ)アクリル系重合体との相溶性の観点から、フェニル基を有する一般式(25)、(26)で表わされる鎖状シロキサンや、一般式(27)、(28)で表わされる環状シロキサンが好ましい。
(CH33SiO−[Si(H)(CH3)O]g−[Si(C652O]h−Si(CH33 (25)
(CH33SiO−[Si(H)(CH3)O]g−[Si(CH3){CH2C(H)(R24)C65}O]h−Si(CH33 (26)
(式中、R24は水素原子またはメチル基、gは2≦g≦100、hは0≦h≦100の整数)
【0186】
【化7】
Figure 0004289037
(式中、R29は水素原子またはメチル基、iは2≦i≦10、jは0≦j≦8、かつ3≦i+j≦10を満たす整数)
(B)成分の少なくとも1.1個のヒドロシリル基を有する化合物としては、さらに分子中に2個以上のアルケニル基を有する低分子化合物に対し、一般式(22)〜(28)に表わされるヒドロシリル基含有化合物を、反応後にも一部のヒドロシリル基が残るようにして付加反応させて得られる化合物を用いることもできる。
【0187】
分子中に2個以上のアルケニル基を有する化合物としては、各種のものを用いることができる。例示するならば、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエンなどの炭化水素系化合物、O,O’−ジアリルビスフェノールA、3,3’−ジアリルビスフェノールAなどのエーテル系化合物、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルトリメリテート、テトラアリルピロメリテートなどのエステル系化合物、ジエチレングリコールジアリルカーボネートなどのカーボネート系化合物などがあげられる。
【0188】
一般式(22)〜(28)に示した過剰量のヒドロシリル基含有化合物に対し、ヒドロシリル化触媒の存在下、前記アルケニル基含有化合物をゆっくり滴下することにより該化合物を得ることができる。このような化合物のうち、原料の入手容易性、過剰に用いたシロキサンの除去のしやすさ、さらにはビニル系重合体への相溶性を考慮して、下記のものが好ましい。
【0189】
【化8】
Figure 0004289037
(A)成分のビニル系重合体と(B)成分のヒドロシリル基含有化合物は任意の割合で混合することができるが、硬化性の面から、アルケニル基とヒドロシリル基のモル比が5〜0.2の範囲にあることが好ましく、さらに、2.5〜0.4であることが好ましい。モル比が5をこえると硬化が不充分でべとつきのある強度の小さい硬化物しか得られず、また、0.2より小さいと、硬化後も硬化物中に活性なヒドロシリル基が大量に残るので、クラック、ボイドが発生し、均一で強度のある硬化物が得られない。
【0190】
(A)成分のビニル系重合体と(B)成分のヒドロシリル基含有化合物との硬化反応は、2成分を混合して加熱することにより進行するが、反応をより迅速に進めるために、ヒドロシリル化触媒を添加することができる。このようなヒドロシリル化触媒にはとくに限定はなく、たとえば有機過酸化物やアゾ化合物などのラジカル開始剤、および遷移金属触媒などがあげられる。
【0191】
前記ラジカル開始剤にはとくに限定はないが、たとえばジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)イソプロピルベンゼンのようなジアルキルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、m−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドのようなジアシルペルオキシド、過安息香酸−t−ブチルのような過酸エステル、過ジ炭酸ジイソプロピル、過ジ炭酸ジ−2−エチルヘキシルのようなペルオキシジカーボネート、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンのようなペルオキシケタールなどがあげられる。
【0192】
また、前記遷移金属触媒にもとくに限定はないが、たとえば白金単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラックなどの担体に白金固体を分散させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトンなどとの錯体、白金−オレフィン錯体、白金(0)−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体などがあげられる。白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh33,RhCl3,RuCl3,IrCl3,FeCl3,AlCl3,PdCl2・H2O,NiCl2,TiCl4などがあげられる。これらの触媒は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0193】
前記触媒量にはとくに制限はないが、(A)成分のアルケニル基1molに対して10-1〜10-8mol、さらには10-3〜10-6molの範囲であるのが好ましい。触媒量が10-8molより少ない場合、硬化が充分に進行せず、また、10-1molをこえる場合、ヒドロシリル化触媒は一般に高価で腐食性であり、また、水素ガスを大量に発生して硬化物が発泡してしまう場合があるので、好ましくない。
【0194】
硬化温度にもとくに制限はないが、一般に0〜200℃、さらには30〜150℃、ことには80〜150℃であるのが好ましい。前記温度にすることにより、硬化性組成物を短時間で硬化させることができる。
<ヒドロシリル化反応性組成物(2)>
(B)成分のヒドロシリル基含有化合物として架橋性シリル基を併せもつヒドロシラン化合物を用いてもよい。
【0195】
架橋性シリル基を併せもつヒドロシラン化合物にはとくに制限はないが、代表的なものとしては、一般式(29):
H−[Si(R112-b(Y)bO]m−Si(R123-a(Y)a (29)
{式中、R11、R12は、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、または(R’)3SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R11またはR12が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基または加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0,1,2,または3を、また、bは0,1,または2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする}
で示される化合物が例示される。
【0196】
前記加水分解性基としては、たとえば水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などの一般に使用されている基があげられる。これらのうちでは、アルコキシ基、アミド基、アミノオキシ基が好ましいが、加水分解性がマイルドで取り扱いやすいという点から、アルコキシ基がとくに好ましい。
【0197】
加水分解性基や水酸基は、1個のケイ素原子に1〜3個の範囲で結合することができ、(a+Σb)は1〜5個の範囲が好ましい。加水分解性基や水酸基が架橋性シリル基中に2個以上結合する場合には、それらは同じであってもよいし、異なっていてもよい。架橋性シリル基を形成するケイ素原子は1個以上であるが、シロキサン結合などにより連結されたケイ素原子の場合には、20個以下であるのが好ましい。
【0198】
これらヒドロシラン化合物のなかでも、とくに一般式(30):
H−Si(R123-a(Y)a (30)
(式中、R12、Y、aは前記に同じ)
で示される架橋性基を有する化合物が入手容易な点から好ましい。
【0199】
(B)成分として前述のヒドロシラン化合物を用いたヒドロシリル化反応性組成物をヒドロシリル化することにより、分子内に架橋性シリル基を有するビニル系重合体が得られる。
【0200】
分子内に少なくとも1.1個架橋性シリル基を有するビニル系重合体は、架橋し、硬化物を与えることができる。
【0201】
前記記方法により得られる分子内に少なくとも1.1個の架橋性シリル基を有するビニル系重合体および該ビニル系重合体を含有する硬化性組成物(硬化性組成物(2))も本発明の1つである。
【0202】
前記架橋性シリル基としては、一般式(31):
−[Si(R112-b(Y)bO]m−Si(R123-a(Y)a (31)
{式中、R11、R12は、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基または(R’)3SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R11またはR12が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい、Yは水酸基または加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい、aは0、1、2または3を、bは0、1または2、mは0〜19の整数、ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする}
で表わされる基があげられる。
【0203】
前記加水分解性基としては、たとえば水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などの一般に使用されている基があげられる。これらのうちでは、アルコキシ基、アミド基、アミノオキシ基が好ましいが、加水分解性がマイルドで取り扱いやすいという点から、アルコキシ基がとくに好ましい。
【0204】
加水分解性基や水酸基は、1個のケイ素原子に1〜3個の範囲で結合することができ、(a+Σb)は1〜5個の範囲が好ましい。加水分解性基や水酸基が架橋性シリル基中に2個以上結合する場合には、それらは同じであってもよいし、異なっていてもよい。架橋性シリル基を形成するケイ素原子は1個以上であるが、シロキサン結合などにより連結されたケイ素原子の場合には、20個以下であることが好ましい。とくに、一般式(32):
−Si(R123-a(Y)a (32)
(式中、R10、Y、aは前記と同じ)で表わされる架橋性シリル基が、入手が容易であるので好ましい。
【0205】
本発明の架橋性シリル基を有するビニル系重合体を硬化させてなる硬化物にゴム的な性質がとくに要求される場合には、ゴム弾性に大きな影響を与える架橋点間分子量が大きくとれるため、架橋性シリル基の少なくとも1個は分子鎖の末端にあることが好ましく、全ての官能基を分子鎖末端に有するものであるのがより好ましい。
【0206】
(A)成分のビニル系重合体と(B)成分の架橋性シリル基を併せもつヒドロシラン化合物の割合にはとくに限定はないが、ヒドロシリル基がアルケニル基に対して当量以上であることが好ましい。
【0207】
ヒドロシリル化反応をより迅速に進めるために、ヒドロシリル化触媒を添加することができる。このようなヒドロシリル化触媒としては既に例示したものを使用することができる。
【0208】
反応温度についてはとくに制限はないが、一般に0〜200℃、さらには30〜150℃、ことには80〜150℃であるのが好ましい。
【0209】
硬化性組成物(2)を硬化させる場合には、縮合触媒を使用してもしなくてもよい。
【0210】
前記縮合触媒としては、たとえばテトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネートなどのチタン酸エステル;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジメトキシド、オクチル酸錫、ナフテン酸錫などの有機錫化合物;オクチル酸鉛、ブチルアミン、オクチルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、1,3−ジアザビシクロ(5,4,6)ウンデセン−7などのアミン系化合物またはそれらのカルボン酸塩;ラウリルアミンとオクチル酸錫との反応物または混合物のようなアミン系化合物と有機錫化合物との反応物または混合物;過剰のポリアミンと多塩基酸から得られる低分子量ポリアミド樹脂;過剰のポリアミンとエポキシ化合物の反応生成物;アミノ基を有するシランカップリング剤、たとえばγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランなどの公知のシラノール触媒1種または2種以上を必要に応じて用いればよい。
【0211】
前記縮合触媒の使用量としては、末端に架橋性シリル基を有するビニル系重合体に対し、0〜10重量%(以下、%という)使用するのが好ましい。加水分解性基Yとしてアルコキシ基が使用されている場合、この重合体のみでは硬化速度が遅いので、硬化触媒を使用するのが好ましい。
<硬化性組成物>
前記硬化性組成物(1)、硬化性組成物(2)には、物性を調整するために各種の添加剤、たとえば難燃剤、老化防止剤、充填材、可塑剤、物性調整剤、反応希釈剤、接着性付与剤、貯蔵安定性改良剤、溶剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤、光硬化性樹脂などを必要に応じて適宜配合してもよい。これらの各種添加剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0212】
また、ビニル系重合体は、本来、耐久性に優れた重合体であるので、老化防止剤は必ずしも必要ではないが、従来公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などを適宜用いることができる。
<充填材>
配合できる充填材にはとくに限定はないが、強度などの物性を付与するために、たとえば微粉末シリカ、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、珪藻土、硫酸バリウム、カーボンブラック、表面処理微細炭酸カルシウム、焼成クレー、クレーおよび活性亜鉛華などの補強性充填材などがあげられる。前記補強性充填材は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのなかでもシリカ微粉末が好ましく、湿式製造法などから得られる含水シリカ、乾式製造法などから得られる乾式シリカなどが好ましく用いられる。これらのうち、組成物に水分が多く含まれると硬化反応時に副反応などが起こる可能性があるため、無水シリカがとくに好ましい。さらに、無水シリカの表面を疎水処理したものが、成形に適した流動性を発現しやすいため好ましい。また、他に、増量あるいは物性調整のために補強性のあまり強くない充填材も用いることができる。
<可塑剤>
配合できる可塑剤にはとくに限定はないが、物性の調整、性状の調節などの目的により、たとえばジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸エステル類;ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、ジブチルセバケート、コハク酸イソデシルなどの非芳香族二塩基酸エステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシリノール酸メチルなどの脂肪族エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステルなどのポリアルキレングリコールのエステル類;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェートなどのリン酸エステル類;トリメリット酸エステル類;ポリスチレンやポリ−α−メチルスチレンなどのポリスチレン類;ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ブタジエン−アクリロニトリル、ポリクロロプレン;塩素化パラフィン類;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニル、などの炭化水素系油;プロセスオイル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルポリオールとこれらポリエーテルポリオールの水酸基をエステル基、エーテル基などに変換した誘導体などのポリエーテル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジルなどのエポキシ可塑剤類;セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸などの2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの2価アルコールから得られるポリエステル系可塑剤類;アクリル系可塑剤を始めとするビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体類などがあげられる。これらは単独でも、また2種以上組み合わせても使用することができるが、必ずしも必要とされるものではない。なお、これら可塑剤は、重合体製造時に配合することも可能である。
<貯蔵安定性改良剤>
配合できる貯蔵安定性改良剤は、本組成物の貯蔵時の増粘や、貯蔵後の硬化速度の著しい変化を抑えることができるものであればとくに限定されず、たとえば、ベンゾチアゾール、ジメチルマレートなどがあげられる。
<溶剤>
配合できる溶剤としては、たとえばトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸セロソルブなどのエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン系溶剤などがあげられる。これらの溶剤は重合体の製造時に用いてもよい。
<接着性付与剤>
配合できる接着性付与剤としては、硬化物に接着性を付与するものであればとくに限定はないが、架橋性シリル基含有化合物が好ましく、さらにはシランカップリング剤が好ましい。これらの具体例としては、たとえばメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシランなどのアルキルアルコキシシラン類;ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシランなどのアルキルイソプロペノキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクロイルオキシプロピルメチルトリエトキシシランなどのビニル型不飽和基含有シラン類;シリコーンワニス類;ポリシロキサン類などがあげられる。これらのなかでも分子中にエポキシ基、(メタ)アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、カルバメート基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基などの炭素原子および水素原子以外の原子を有する有機基と架橋性シリル基を併せもつシランカップリング剤が好ましい。これらを具体的に例示すると、イソシアネート基を有するアルコキシシラン類としては、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシランなどのイソシアネート基含有シラン類、;イソシアヌレート基を有するアルコキシシラン類としては、トリス(トリメトキシシリル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレートシラン類;アミノ基を有するアルコキシシラン類としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ基含有シラン類;メルカプト基を有するアルコキシシラン類としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどのメルカプト基含有シラン類;カルボキシル基を有するアルコキシシラン類としては、β−カルボキシエチルトリエトキシシラン、β−カルボキシエチルフェニルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−β−(カルボキシメチル)アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのカルボキシシラン類;ハロゲン基を有するアルコキシシラン類としては、γ−クロロプロピルトリメトキシシランなどのハロゲン含有シラン類などがあげられる。
【0213】
また、これらを変性した誘導体である、アミノ変性シリルポリマー、シリル化アミノポリマー、不飽和アミノシラン錯体、フェニルアミノ長鎖アルキルシラン、アミノシリル化シリコーン、シリル化ポリエステルなどもシランカップリング剤として用いることができる。
【0214】
さらに、これらのなかでも、硬化性および接着性の点から、分子中にエポキシ基または(メタ)アクリル基を有するアルコキシシラン類がより好ましい。これらをさらに具体的に例示すると、エポキシ基を有するアルコキシシラン類としては、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシランなどが、(メタ)アクリル基を有するアルコキシシラン類としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシランなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0215】
また、接着性をさらに向上させるために、架橋性シリル基縮合触媒を上記接着性付与剤とともに併用することができる。架橋性シリル基縮合触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫ジメトキシド、オクチル酸錫などの有機錫化合物、アルミニウムアセチルアセトナートなどの有機アルミニウム化合物、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどの有機チタン化合物などがあげられる。
【0216】
シランカップリング剤以外の具体例にはとくに限定はないが、たとえばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、硫黄、アルキルチタネート類、芳香族ポリイソシアネートなどがあげられる。
【0217】
前記接着性付与剤は、ビニル系重合体100部に対して、0.01〜20部配合するのが好ましい。0.01部未満では接着性の改善効果が小さく、20部をこえると硬化物物性に悪影響を与える。好ましくは0.1〜10部であり、さらには0.5〜5部である。
【0218】
前記接着性付与剤は1種で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これら接着性付与剤は添加することにより被着体に対する接着性を改善することができる。
<成形方法>
本発明の硬化性組成物を成形体として用いる場合の成形方法にはとくに限定はなく、一般に使用されている各種の成形方法を用いることができる。たとえば、注型成形、圧縮成形、トランフファー成形、射出成形、押出成形、回転成形、中空成形、熱成形などがあげられる。とくに自動化、連続化が可能で、生産性に優れるという観点から射出成形が好ましい。また、ガスケットとして用いる場合などには、フランジ面などに塗布した硬化性組成物を未硬化状態で両面から挟み付けたのち硬化させるウエットタイプと、硬化させてから挟み付けるドライタイプの両者が可能である。
<用途>
本発明の硬化性組成物は、限定はされないが、建築用弾性シーリング材や複層ガラス用シーリング材などにおけるシーリング材、太陽電池裏面封止材などの電気・電子部品材料、電線・ケーブル用絶縁被覆材などの電気絶縁材料、粘着剤、接着剤、弾性接着剤、塗料、粉体塗料、コーティング材、発泡体、電気電子用ポッティング材、フィルム、ガスケット、注型材料、人工大理石、各種成形材料や、網入りガラスや合わせガラス端面(切断部)の防錆・防水用封止材などの様々な用途に利用可能である。
【0219】
さらに、本発明の硬化性組成物から得られたゴム弾性を示す成形体は、ガスケット、パッキン類を中心に広く使用することができる。たとえば自動車分野では、ボディ部品として、気密保持のためのシール材、ガラスの振動防止材、車体部位の防振材、とくにウインドシールガスケット、ドアガラス用ガスケットに使用することができる。シャーシ部品として、防振、防音用のエンジンおよびサスペンジョンゴム、とくにエンジンマウントラバーに使用することができる。エンジン部品としては、冷却用、燃料供給用、排気制御用などのホース類、エンジンオイル用シール材などに使用することができる。また、排ガス清浄装置部品、ブレーキ部品にも使用することができる。家電分野では、パッキン、Oリング、ベルトなどに使用することができる。具体的には、照明器具用の飾り類、防水パッキン類、防振ゴム類、防虫パッキン類、クリーナ用の防振・吸音と空気シール材、電気温水器用の防滴カバー、防水パッキン、ヒータ部パッキン、電極部パッキン、安全弁ダイアフラム、酒かん器用のホース類、防水パッキン、電磁弁、スチームオーブンレンジおよびジャー炊飯器用の防水パッキン、給水タンクパッキン、吸水バルブ、水受けパッキン、接続ホース、ベルト、保温ヒータ部パッキン、蒸気吹き出し口シールなど燃焼機器用のオイルパッキン、Oリング、ドレインパッキン、加圧チューブ、送風チューブ、送・吸気パッキン、防振ゴム、給油口パッキン、油量計パッキン、送油管、ダイアフラム弁、送気管など、音響機器用のスピーカーガスケット、スピーカーエッジ、ターンテーブルシート、ベルト、プーリーなどに使用することができる。建築分野では、構造用ガスケット(ジッパーガスケット)、空気膜構造屋根材、防水材、定形シーリング材、防振材、防音材、セッティングブロック、摺動材などに使用することができる。スポ―ツ分野では、スポーツ床として全天候型舗装材、体育館床など、スポーツシューズとして靴底材、中底材など、球技用ボールとしてゴルフボールなどに使用することができる。防振ゴム分野では、自動車用防振ゴム、鉄道車両用防振ゴム、航空機用防振ゴム、防舷材などに使用することができる。海洋・土木分野では、構造用材料として、ゴム伸縮継手、支承、止水板、防水シート、ラバーダム、弾性舗装、防振パット、防護体など、工事副材料としてゴム型枠、ゴムパッカー、ゴムスカート、スポンジマット、モルタルホース、モルタルストレーナなど、工事補助材料としてゴムシート類、エアホースなど、安全対策商品としてゴムブイ、消波材など、環境保全商品としてオイルフェンス、シルトフェンス、防汚材、マリンホース、ドレッジングホース、オイルスキマーなどに使用することができる。その他、板ゴム、マット、フォーム板などにも使用することができる。
【0220】
【実施例】
以下に、本発明を具体的な実施例に基づいて説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0221】
脱末端ハロゲン反応率の測定法
脱末端ハロゲン反応率は、(脱離した末端ハロゲン量 / 末端ハロゲン量)×100(%)で定義される。脱離した末端ハロゲン量は、回収した溶剤をガスクロマトグラフィー分析して有機ハロゲン化物の濃度より求めることができる。末端ハロゲン量は、160/重量平均分子量で求めることができる。
製造例1(アルケニル末端ビニル系重合体の製造)
攪拌機、ジャケット付きの250L反応機にCuBr(1.09kg)を仕込み、反応容器内を窒素置換した。アセトニトリル(11.4kg)を加え、ジャケットに温水を通水し、80℃で30分間攪拌した。これにアクリル酸ブチル(130kg)、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル(2.28kg)を加え、さらに80℃で25分間撹拌した。これにトリアミンを加え、反応を開始した。反応途中トリアミンを適宜添加した(反応開始時およびそれから6時間以内に計220gを添加した)。重合反応開始から6時間後、1,7−オクタジエン(14.0kg)、トリアミン(439g)を添加してからさらに6時間撹拌を続けた。この重合体溶液を80℃、真空条件下で処理することによりアセトニトリル、1,7−オクタジエンを蒸発させた。
製造例2(アルケニル末端ビニル系重合体の製造)
攪拌機、ジャケット付きの250L反応機にCuBr(1.21kg)を仕込み、反応容器内を窒素置換した。アセトニトリル(10.8kg)を加え、ジャケットに温水を通水し80℃で30分間攪拌した。これにアクリル酸ブチル(36.00kg)、アクリル酸エチル(51.68kg)、アクリル酸メトキシエチル(42.36kg)、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル(3.37kg)を加え、さらに80℃で25分間撹拌した。これにトリアミンを加え、反応を開始した。反応途中トリアミンを適宜添加した(反応開始時およびそれから6時間以内に計440gを添加した)。反応開始から6時間後、80℃、真空条件下で処理することによりアセトニトリルを蒸発させ、重合体を得た。得られた重合体にアセトニトリル(32.54kg)、1,7−オクタジエン(30.92kg)、トリアミン(486g)を添加して6時間撹拌を続けた。この重合体溶液を80℃、真空条件下で処理することによりアセトニトリル、1,7−オクタジエンを蒸発させ重合体(2)を得た。
実施例1
攪拌機、ジャケット付の1L反応機に製造例1で得られた重合体(1)(30g)、メチルシクロヘキサン(300g)、ラジオライト#900(昭和化学工業(株)製)を重合体に対し1部添加し、100℃で3時間加熱攪拌した。得られた混合物からラジオライト#900および固体銅を固液分離して、真空条件下100℃で2時間加熱して濃縮することにより重合体および溶剤を得た。
【0222】
この溶剤をガスクロマトグラフィー(島津製作所製 使用カラムSUPELCOWAX−10 FUSED SILICA Capillary Column30m*0.25mm*0.25mm Film thickness)により分析した結果、脱末端ハロゲン反応率は8.3%であった。また重合体中の銅濃度は、ICP質量分析装置(横河アナリティカルシステムズ(株)製)による分析の結果、704ppmであった。また色調は、淡褐色であった。
実施例2
攪拌機、ジャケット付の1L反応機に製造例1で得られた重合体(1)(30g)、メチルシクロヘキサン(300g)、ラジオライト#900(昭和化学工業(株)製)を重合体に対し1部添加し、115℃で3時間加熱攪拌した。得られた混合物からラジオライト#900および固体銅を固液分離して、真空条件下100℃で2時間加熱して濃縮することにより重合体および溶剤を得た。
【0223】
この溶剤をガスクロマトグラフィー(島津製作所製 使用カラムSUPELCOWAX−10 FUSED SILICA Capillary Column30m*0.25mm*0.25mm Film thickness)により分析した結果、脱末端ハロゲン反応率は15.2%であった。
【0224】
実施例3
攪拌機、ジャケット付の1L反応機に製造例1で得られた重合体(1)(30g)、メチルシクロヘキサン(300g)、ラジオライト#900(昭和化学工業(株)製)を重合体に対し1部添加し、130℃で3時間加熱攪拌した。得られた混合物からラジオライト#900および固体銅を固液分離して、真空条件下100℃で2時間加熱して濃縮することにより重合体および溶剤を得た。
【0225】
この溶剤をガスクロマトグラフィー(島津製作所製 使用カラムSUPELCOWAX−10 FUSED SILICA Capillary Column30m*0.25mm*0.25mm Film thickness)により分析した結果、脱末端ハロゲン反応率は15.6%であった。
比較例1
攪拌機、ジャケット付の1L反応機に製造例1で得られた重合体(1)(30g)、メチルシクロヘキサン(300g)、ラジオライト#900(昭和化学工業(株)製)を重合体に対し1部添加し、100℃で3時間加熱攪拌した。得られた混合物からラジオライト#900および固体銅を固液分離した。得られたポリマー溶液を密閉下175℃8時間加熱後、真空条件下100℃で2時間加熱して濃縮することにより重合体および溶剤を得た。
【0226】
この溶剤をガスクロマトグラフィー(島津製作所製 使用カラムSUPELCOWAX−10 FUSED SILICA Capillary Column30m*0.25mm*0.25mm Film thickness)により分析した結果、脱末端ハロゲン反応率は63.0%であった。
【0227】
実施例1、2、および3と比較例1より精製処理温度を175℃から130℃および100℃に下げることにより脱末端ハロゲン反応率を63.0%から15.6%および8.3%に低下させることができた。
比較例2
攪拌機、ジャケット付の1L反応機に製造例1で得られた重合体(1)(30g)、メチルシクロヘキサン(300g)、有機ハロゲン化物として臭化ブチル66000ppm、1−ブタノール11000ppm、ラジオライト#900(昭和化学工業(株)製)を重合体に対し1部添加し、100℃で3時間加熱攪拌した。得られた混合物からラジオライト#900および固体銅を固液分離して、真空条件下100℃で2時間加熱して濃縮することにより重合体を得た。重合体中の銅濃度は、ICP質量分析装置(横河アナリティカルシステムズ(株)製)による分析の結果、1095ppmであった。また実施例1に比較して色調が悪化し褐色であった。
実施例1と比較例2より、有機ハロゲン化物の濃度が高い比較例2のほうが、精製処理後の銅濃度が高くなりまた色調も悪化した。
実施例4
攪拌機、ジャケット付の1L反応機に製造例1で得られた重合体(2)(30g)、トルエン(300g)、ラジオライト#900(昭和化学工業(株)製)を重合体に対し1部添加し、100℃で3時間加熱攪拌した。得られた混合物からラジオライト#900および固体銅を固液分離して、真空条件下100℃で2時間加熱して濃縮することにより重合体および溶剤を得た。
【0228】
この溶剤をガスクロマトグラフィー(島津製作所製 使用カラムSUPELCOWAX−10 FUSED SILICA Capillary Column30m*0.25mm*0.25mm Film thickness)により分析した結果、脱末端ハロゲン反応率は8.3%であった。
比較例3
攪拌機、ジャケット付の1L反応機に製造例1で得られた重合体(2)(30g)、トルエン(300g)、キョーワードKW700SH、キョーワードKW500SL(協和化学(株)製)を重合体に対し各1部添加し、150℃で3時間加熱攪拌した。得られた混合物からラジオライト#900および固体銅を固液分離して、真空条件下100℃で2時間加熱して濃縮することにより重合体および溶剤を得た。
【0229】
この溶剤をガスクロマトグラフィー(島津製作所製 使用カラムSUPELCOWAX−10 FUSED SILICA Capillary Column30m*0.25mm*0.25mm Film thickness)により分析した結果、脱末端ハロゲン反応率は92.5%であった。
【0230】
実施例4と比較例3より精製処理温度を150℃から100℃に下げることにより脱末端ハロゲン反応率を92.5%から8.3%に低下させることができた。
【0231】
前記結果を表1にまとめて示す。
【0232】
【表1】
Figure 0004289037
【0233】
【発明の効果】
原子移動ラジカル重合法で得られるビニル系重合体を精製するにあたり、精製処理中に末端脱ハロゲン反応が進行し、精製阻害物質である有機ハロゲン化物が生成する。精製処理を行う際に使用する希釈溶剤、また吸着剤、固体銅等とビニル系重合体を固液分離する際に使用する希釈溶剤のリサイクルを行うために精製処理温度を130℃以下好ましくは100℃以下にすることにより経済的かつ効率的に末端脱ハロゲン反応を抑制し溶剤中の蓄積物を減少させ、リサイクル溶剤を使用して精製処理を行い、ビニル系重合体を製造することができる。

Claims (19)

  1. 有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし遷移金属錯体を重合触媒とするビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を利用して製造された分子末端に少なくとも1個のアルケニル基及びハロゲンを含有するハロゲン基含有ビニル系重合体を精製し、精製した重合体溶液を蒸発して回収される溶剤であって、前記ハロゲン基含有ビニル系重合体が、原子移動ラジカル重合の重合中または重合終了後に、重合性の低い炭素−炭素2重結合を2個以上有する化合物を添加することにより製造されたものであり、精製時の処理温度及び溶剤回収時の温度をともに130℃以下とすることで前記重合体の末端の脱ハロゲン反応を抑制して回収された、遷移金属錯体を重合触媒とするビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を利用して製造されたハロゲン基含有ビニル系重合体を含有する溶液から回収された溶剤
  2. 精製及び溶剤回収後のビニル系重合体の末端の脱ハロゲン反応率が15%以下である請求項1記載の溶剤
  3. ハロゲン基含有ビニル系重合体溶液の精製時の処理温度及び溶剤回収時の温度をともに100℃以下とする請求項1記載の溶剤
  4. 精製及び溶剤回収後のビニル系重合体の末端の脱ハロゲン反応率が10%以下である請求項3記載の溶剤
  5. 遷移金属錯体の中心金属が周期律表第8族、第9族、第10族または第11族元素である請求項1〜4のいずれかに記載の溶剤
  6. 遷移金属錯体の中心金属が鉄、ニッケル、ルテニウムまたは銅である請求項記載の溶剤
  7. 遷移金属錯体の中心金属が銅である請求項記載の溶剤
  8. 原子移動ラジカル重合の触媒配位子としてポリアミン化合物を用いる請求項1〜7のいずれかに記載の溶剤
  9. 原子移動ラジカル重合の触媒配位子としてトリアミン化合物を用いる請求項8記載の溶剤
  10. ビニル系重合体が(メタ)アクリル系重合体である請求項1〜9のいずれかに記載の溶剤
  11. ビニル系重合体がアクリル酸エステル系重合体である請求項10記載の溶剤
  12. ビニル系重合体がアクリル酸ブチル系重合体である請求項11記載の溶剤
  13. 有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし遷移金属錯体を重合触媒とするビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を利用して製造された分子末端に少なくとも1個のアルケニル基及びハロゲンを含有するハロゲン基含有ビニル系重合体を精製し、精製した重合体溶液を蒸発して溶剤を回収する方法であって、前記ハロゲン基含有ビニル系重合体が、原子移動ラジカル重合の重合中または重合終了後に、重合性の低い炭素−炭素2重結合を2個以上有する化合物を添加することにより製造されたものであり、精製時の処理温度及び溶剤回収時の温度をともに130℃以下とすることで前記重合体の末端の脱ハロゲン反応を抑制することを特徴とする、遷移金属錯体を重合触媒とするビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を利用して製造されたハロゲン基含有ビニル系重合体を含有する溶液から溶剤を回収する方法
  14. 精製及び溶剤回収後のビニル系重合体の末端の脱ハロゲン反応率が15%以下である請求項13記載の溶剤を回収する方法
  15. ハロゲン基含有ビニル系重合体溶液の精製時の処理温度及び溶剤回収時の温度をともに100℃以下とする請求項13記載の溶剤を回収する方法
  16. 精製及び溶剤回収後のビニル系重合体の末端の脱ハロゲン反応率が10%以下である請求項15記載の溶剤を回収する方法
  17. 遷移金属錯体の中心金属が周期律表第8族、第9族、第10族または第11族元素である請求項13〜16のいずれかに記載の溶剤を回収する方法
  18. 原子移動ラジカル重合の触媒配位子としてポリアミン化合物を用いる請求項13〜17のいずれかに記載の溶剤を回収する方法
  19. ビニル系重合体が(メタ)アクリル系重合体である請求項13〜18のいずれかに記載の溶剤を回収する方法。
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