以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成のすべてが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
以下では、本発明に係る角度検出装置として、レゾルバを例に説明するが、本発明はレゾルバに限定されるものではない。
〔実施形態1〕
図1は、本発明に係る実施形態1におけるレゾルバの構成例の斜視図を表す。図1において、配線の図示を省略している。なお、図1では、外側に24個の突極部を有する1相励磁2相出力型のレゾルバを備え、内側に10個の突極部を有する1相励磁2相出力型のレゾルバを備える例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施形態1におけるレゾルバ100は、内側に備えられた、いわゆるアウターステータ型・インナーロータ型の角度検出装置と、外側に備えられた、いわゆるインナーステータ型・アウターロータ型の角度検出装置とが一体化された構成を有している。ここで、平面視において環状体(ロータ又はステータ)の内径を構成する縁部(円周部)を内周側(内径側、環状の中心部から近い側)、該環状体の外径を構成する縁部(円周部)を外周側(外径側、環状の中心部から遠い側)とすると、アウターステータ型・インナーロータ型の角度検出装置では、環状のロータの外周側において環状のステータの突極部との間で磁路が形成され、且つステータの突極部の内周側の面(内周面)がロータの外周側の面(外周面)と対向し、該ロータの回転角度に応じて、ステータに設けられた検出巻線からの信号が変化する。また、インナーステータ型・アウターロータ型の角度検出装置では、環状のロータの内周側において環状のステータの突極部との間で磁路が形成され、且つステータの突極部の外周側の面がロータの内周側の面と対向し、該ロータの回転角度に応じて、ステータに設けられた検出巻線からの信号が変化する。なお、アウターステータ型・インナーロータ型の角度検出装置とインナーステータ型・アウターロータ型の角度検出装置とは、互いに磁気的に完全に遮断されているか、又は互いに磁気的な影響を無視できる状態となっている。
実施形態1におけるレゾルバ100は、ステータ(固定子)200と、第1及び第2のロータ(回転子)300、400とを含む。ステータ200は、磁性材料である環(リング)状の平板の内周側(環状の平板の中心部に近い側)に突出して設けられた後に該平板面に対して起こされた10個の突極部2101〜21010(第1の突極部群)と、該平板の外周側(環状の平板の中心部に遠い側)に突出して設けられた後に該平板面に対して起こされた24個の突極部2401〜24024(第2の突極部群)とを有する。突極部2101〜21010は、環状の平板の内側(内径側)の縁部に形成され、ロータ300と対向する各突極部の内周側の面は平面ではなく環状の平板の中心部を中心とする円弧の一部を形成している。突極部2401〜24024は、環状の平板の外側(外径側)の縁部に形成され、ロータ400と対向する各突極部の外周側の面は平面ではなく環状の平板の中心部を中心とする円弧の一部を形成している。
また、各突極部には、巻線磁芯として、励磁用の巻線部材及び検出用の巻線部材が設けられている。即ち、突極部2101には、巻線磁芯として、励磁用及び検出用の巻線部材2201が設けられ、突極部2102には、巻線磁芯として、励磁用及び検出用の巻線部材2202が設けられ、突極部2103には、巻線磁芯として、励磁用及び検出用の巻線部材2203が設けられ、突極部2104には、巻線磁芯として、励磁用及び検出用の巻線部材2204が設けられ、突極部2105には、巻線磁芯として、励磁用及び検出用の巻線部材2205が設けられる。同様に、突極部2106には、巻線磁芯として、励磁用及び検出用の巻線部材2206が設けられ、突極部2107には、巻線磁芯として、励磁用及び検出用の巻線部材2207が設けられ、突極部2108には、巻線磁芯として、励磁用及び検出用の巻線部材2208が設けられ、突極部2109には、巻線磁芯として、励磁用及び検出用の巻線部材2209が設けられ、突極部21010には、巻線磁芯として、励磁用及び検出用の巻線部材22010が設けられる。
同様に、突極部2401〜24024のそれぞれには、巻線磁芯として、励磁用及び検出用の巻線部材2501〜25024のそれぞれが設けられる。
ステータ200が有する突極部2101〜21010、2401〜24024は、予め平板に形成された後に、折り曲げプレス加工(広義には折り曲げ加工)により、平板面に対してほぼ垂直となるように起こされている。
また、ステータ200には、平板の内周側と外周側との間の磁気的干渉度を低減させる磁気的干渉度低減手段500として、非磁性材が平板の円周方向に形成されている。この非磁性材としては、例えばアルミニウムを採用することができる。この磁気的干渉度低減手段500を設けることで、ロータ300の回転により突極部2101〜21010の各突極部を構成要素として形成される磁気回路と、ロータ400の回転により突極部2401〜24024の各突極部を構成要素として形成される磁気回路との間の磁気的な影響をほとんど無くすことができるようになっている。
ロータ300は、磁性材料からなり、ステータ200に対して回転自在に設けられている。より具体的には、ロータ300は、ロータ300の回転軸回りの回転によりステータ200の突極部2101〜21010の各突極部の内周側の面との間のギャップパーミアンスが変化するようにステータ200に対して回転可能に設けられる。実施形態1では、ロータ300の軸倍角が「6」であるものとする。即ち、上面視において、ロータ300の外周側の外形輪郭線の径が6周期で変化する。
ロータ400は、磁性材料からなり、ステータ200に対して回転自在に設けられている。より具体的には、ロータ400は、ロータ400の回転軸回りの回転によりステータ200の突極部2401〜24024の各突極部の外周側の面との間のギャップパーミアンスが変化するようにステータ200に対して回転可能に設けられる。実施形態1では、ロータ400の軸倍角が「1」であるものとする。実施形態1では、ロータ400が、偏心ロータであるものとする。偏心ロータとすることで、高調波成分が少ない信号を取り出すことができるので、角度の検出精度を高めることができる。
ここで、ロータ300、400の回転によって検出巻線から出力される検出信号を取り出すための励磁用及び検出用の巻線部材について説明する。
図2は、ステータ200の突極部に設けられる励磁用の巻線部材の説明図を表す。図2は、図1のロータ300又はロータ400の回転軸方向にステータ200を見た平面図であり、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。なお、図2では、ロータ300、400の図示を省略している。図2では、励磁用の巻線部材としての励磁巻線の巻き方向を模式的に示す。
図2に示すように、突極部2101〜21010には、励磁用の巻線部材が、隣接する突極部に設けられる巻線部材の巻線方向が互いに反対方向となるように設けられる。この励磁用の巻線部材を構成する巻線R1i、R2i間に、励磁信号が与えられる。また、突極部2401〜24024には、励磁用の巻線部材が、隣接する突極部に設けられる巻線部材の巻線方向が互いに反対方向となるように設けられる。この励磁用の巻線部材を構成する巻線R1o、R2o間に、励磁信号が与えられる。各突極部に設けられる励磁用の巻線部材は、例えばコイル巻線とすることができる。
図3は、ステータ200の突極部2101〜21010に設けられる検出用の巻線部材の説明図を表す。図3は、図1のロータ300又はロータ400の回転軸方向にステータ200を見た平面図であり、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。なお、図3では、ロータ300、400の図示を省略している。図3では、検出用の巻線部材としての励磁巻線の巻き方向を模式的に示す。
各ロータの回転により2相の検出信号を得るために、検出用の巻線部材はそれぞれ2組の巻線部材からなる。そこで、図3に示すように、突極部2101〜21010に設けられ2相の検出信号の第1相(例えばSIN相)の検出信号を得るための検出用の巻線部材は、例えば突極部2101から反時計回りに突極部2109まで、1つおきに各突極部に巻回される。一方、2相の検出信号の第2相(例えばCOS相)の検出信号を得るための検出用の巻線部材は、例えば突極部21010から反時計回りに突極部2108まで、1つおきに各突極部に巻回される。第1相の検出信号は、巻線S1i、S3i間の信号として検出され、第2相の検出信号は、巻線S2i、S4i間の信号として検出される。各突極部に設けられる検出用の巻線部材は、例えばコイル巻線とすることができる。
図4は、ステータ200の突極部2401〜24024に設けられる検出用の巻線部材の説明図を表す。図4は、図1のロータ300又はロータ400の回転軸方向にステータ200を見た平面図であり、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。なお、図4では、ロータ300、400の図示を省略している。図4では、検出用の巻線部材としての励磁巻線の巻き方向を模式的に示す。
図4に示すように、突極部2401〜24024に設けられ2相の検出信号を得るために、検出用の巻線部材は2組の巻線部材からなる。2相の検出信号の第1相(例えばSIN相)の検出信号を得るための検出用の巻線部材は、例えば突極部2401から反時計回りに突極部24023まで、1つおきに各突極部に巻回される。一方、2相の検出信号の第2相(例えばCOS相)の検出信号を得るための検出用の巻線部材は、例えば突極部24024から反時計回りに突極部24022まで、1つおきに各突極部に巻回される。第1相の検出信号は、巻線S1o、S3o間の信号として検出され、第2相の検出信号は、巻線S2o、S4o間の信号として検出される。各突極部に設けられる検出用の巻線部材は、例えばコイル巻線とすることができる。
なお、実施形態1では、励磁用の巻線部材の巻き方向は、図2に示す方向に限定されるものではない。また、実施形態1では、検出用の巻線部材の巻き方向は、図3、図4に示す方向に限定されるものではない。
以上のような構成を有するレゾルバ100では、ステータ200に対するロータ300、400の回転によって、次のような磁気回路が形成される。
図5は、図1のレゾルバ100に形成される磁気回路の説明図を表す。図5は、図1のロータ300又はロータ400の回転軸方向にレゾルバ100を見た平面図であり、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
図5は、ステータ200に対してロータ300、400が回転状態のときのある時刻における磁束の向きを模式的に示している。図5において、巻線磁芯としての各突極部を通る磁束の向きを模式的に示すと共に、突極部間の磁束の向きを模式的に示している。
ステータ200の各突極部には巻線部材が設けられており、ロータ300が回転すると、突極部2101〜21010において、ロータ300を介して隣接する突極部間で磁気回路が形成される。同様に、ロータ400が回転すると、突極部2401〜24024において、ロータ400を介して隣接する突極部間で磁気回路が形成される。実施形態1では、図5に示すように、隣接する突極部を通る磁束の向きが反対方向となるように各突極部に巻線部材が設けられている。この結果、ロータ300、400の回転によって、各突極部との間のギャップパーミアンスの変化に応じて、各突極部に巻回される巻線部材に発生する電流もまた変化し、例えば巻線部材に発生する電流波形を正弦波状にすることができる。
図6は、実施形態1におけるレゾルバ100の検出用の巻線部材から取り出された検出信号の波形の一例を表す。図6では、横軸に角度、縦軸に振幅を表す。
図6において、検出信号Esoは図5の巻線S1o、S3o間の信号、検出信号Ecoは図5の巻線S2o、S4o間の信号、検出信号Esiは図4の巻線S1i、S3i間の信号、検出信号Eciは図4の巻線S2i、S4i間の信号である。例えば、検出信号Esoの振幅がY1、検出信号Ecoの振幅がY2であるとき、絶対角度AA1を特定することができる。更に、検出信号Esiの振幅がy1、検出信号Eciの振幅がy2であるとき、絶対角度AA1付近の角度AA2をより精度良く特定できるようになる。
以上のような構成を有するレゾルバ100において、磁性材料からなるステータ200の材質は、積層電磁鋼板よりも、普通鋼であるSPCC(1枚の鋼板)又は機械構造用炭素鋼であるS10C(1枚の鋼板)であることが望ましい。SPCC(Steel Plate Cold Commercial)は、JIS G3141に規定される冷間圧延鋼板及び鋼帯である。S10Cは、JIS G 4051で規定される機械構造用炭素鋼鋼材で、0.10%程度の炭素を含有している。
図7は、ステータの材質の磁化特性の説明図を表す。図7の横軸は磁場の強さ(単位はH[A/m])であり、縦軸は磁束密度(単位はB[T])である。
積層電磁鋼板、SPCCやS10Cのような鋼板の場合、磁場が強くなると、ある磁場以上では磁束密度が飽和する。但し、積層電磁鋼板では高い磁束密度を得ることができるのに対し(T1)、SPCCやS10Cでは、より低い磁束密度で飽和してしまう(T2)。即ち、積層電磁鋼板をステータ200の材料として採用する方が、より高い磁束密度を得られる結果、検出信号の検出レベルを高くすることができる。従って、SPCCやS10Cをステータ200の材料として採用した場合、磁束密度が低いために検出信号の検出レベルが低くなる。
ところが、積層電磁鋼板は、材料費として高価であるばかりか、折り曲げプレス加工による曲げに弱く、曲げによる加工精度や信頼性を維持できにくいという性質がある。一方、SPCCやS10Cでは、材料費として安価であり、折り曲げプレス加工による曲げに強く、曲げによる加工精度や信頼性を維持しやすいという性質がある。従って、SPCCやS10Cをステータ200の材質として採用し、折り曲げ加工によって図1に示すように突極部を起こすように形成することで、安価な材料でステータ200を用意することができるようになる。また、検出レベルが低くても、検出精度が低下するわけではなく、検出信号の検出レベルを増幅するなどすることで、検出精度を低下させることなく、レゾルバの低コスト化を実現できるようになる。
また、実施形態1では、各突極部の先端形状がT字型形状を有し、各突極部の先端部を支持する支持部の周囲に励磁用の巻線部材及び検出用の巻線部材が設けられることが望ましい。
図8は、実施形態1における突極部の形状を模式的に表した説明図である。図8は、環状の平板面に設けられる突極部2101の先端部の平面図を示すが、突極部2101〜21010の他の突極部や突極部2401〜24024の他の突極部の形状も図8と同様である。
突極部2101は、先端部2121と、支持部2141とを有し、突極部2101の先端形状がT字型形状となるように形成されている。このような先端部2121及び支持部2141が、折り曲げ加工によって平板面に対して起こされる。平板面に対して起こされたとき、ロータ300と対向する先端部2121の面の幅(ロータ300の回転方向の幅)W1は、ロータ300と対向する支持部2141の面の幅(ロータ300の回転方向の幅)W2より大きい。図2に示す励磁用の巻線部材及び図3に示す検出用の巻線部材は、支持部2141の外側に巻回されるように設けられる。
同様に、例えば突極部2401は、先端部2421と、支持部2441とを有し(図示せず)、突極部2401の先端形状がT字型形状となるように形成されている。このような先端部2421及び支持部2441が、折り曲げ加工によって平板面に対して起こされる。平板面に対して起こされたとき、ロータ400と対向する先端部2421の面の幅(ロータ400の回転方向の幅)W3は、ロータ400と対向する支持部2441の面の幅(ロータ400の回転方向の幅)W4より大きい。図2に示す励磁用の巻線部材及び図4に示す検出用の巻線部材は、支持部2441の外側に巻回されるように設けられる。
このように、巻線部材が設けられる突極部の先端形状をT字型形状とすることで、ロータ300、400のスラスト方向ずれに対して磁気効率の変動を低減できるようになる。これにより、巻線部材近傍の磁束変化の影響を低減し、ステータ200に対するロータ300、400の回転角度の検出精度を向上させることができるようになる。また、突極部の先端形状としてT字型形状を採用することで、突極部の数を増加させた場合でも巻線磁芯を通る磁束の減少を抑えることができるので、検出精度の低下を抑えることができるようになる。
以上のように、実施形態1におけるレゾルバ100は、ステータ200、ロータ300、400及び巻線部材により構成されるため、特許文献1又は特許文献2のように多くの部品点数で複雑な構成のレゾルバを製造する場合に比べて、部品点数を大幅に削減でき、低コスト化と、信頼性の向上とを図ることができるようになる。
また、薄型で偏平タイプのレゾルバでありながら、ロータ400を偏心ロータとすることで絶対角度を検出できるようになり、零点の位置を決定して、精度良く角度を検出できるようになる。
更に、ステータ200の材質として、折り曲げ加工に対して加工精度や信頼性の高い安価な磁性材料を採用するようにしたので、レゾルバ100の低コスト化を実現できる。
図9は、実施形態1におけるステータ200の上面図を表す。図9において、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
実施形態1におけるステータ200は、図9に示すように、折り曲げプレス加工によって突極部を平板面に対して起こすことで、ステータ200の内径側に突起P1が存在しない。即ち、折り曲げ加工後のステータ200の最小内径が、各突極部における内径d1である。より具体的には、ステータ200の内径のうち、各突極部における内径d1が、ステータ200の内径のうち隣接する2つの突極部間における内径d2より小さい。このように、ステータ200の内径側の突起が形成されないように突極部を形成することで、内側に設けられる突極部を介した磁気回路によって磁気効率が向上し、レゾルバ100の変圧比を増大させることができるようになる。
また実施形態1におけるステータ200は、図9に示すように、折り曲げプレス加工によって突極部を平板面に対して起こすことで、ステータ200の外径側に突起P2が存在しない。即ち、折り曲げ加工後のステータ200の最大外径が、各突極部における外径d10である。より具体的には、ステータ200の外径のうち、各突極部における外径d10が、ステータ200の外径のうち隣接する2つの突極部間における外径d11より大きい。このように、ステータ200の外径側の突起が形成されないように突極部を形成することで、外径側に設けられる突極部を介した磁気回路によって磁気効率が向上し、レゾルバ100の変圧比を増大させることができるようになる。
以上のように、実施形態1によれば、検出精度を低下させることなく、低コスト化及び信頼性の向上を図ると共に、変圧比を増大させることができるようになる。
図10は、図9のA−B断面図を表す。
磁性材料の平板からなるステータ200には、内径側に形成される磁気回路と外径側に形成される磁気回路とが互いに影響させないようにする磁気的干渉度低減手段500として、非磁性材料の例えばアルミニウムが形成されている。これにより、両磁気回路の磁気的な遮断を図る。これにより、1つの平板の内径側と外径側とで独立して互いに影響することなく回転角度を検出できるようになり、薄型で偏平型の複速式レゾルバを提供できるようになる。
次に、上記のような構成を有し、上記した効果を奏することができる実施形態1におけるレゾルバ100の製造方法について説明する。
図11は、実施形態1におけるレゾルバ100の製造方法の一例のフロー図を表す。例えば、レゾルバ100の製造装置が図11に示すフローに従って各工程の処理を実行する。
図12は、折り曲げプレス加工前の実施形態1におけるステータ200の斜視図を表す。図12において、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
図13は、折り曲げプレス加工後の実施形態1におけるステータ200の斜視図を表す。図13において、図12と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
図14は、巻線部材取り付け工程後の実施形態1におけるステータ200の斜視図を表す。図14において、図1又は図13と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
図15は、実施形態1におけるロータ取り付け工程の説明図を表す。
実施形態1におけるレゾルバ100は、まず、ステータ形状加工工程においてステータ200の形状を加工した(ステップS10)後に、折り曲げプレス加工工程(折り曲げ工程)において、平板状のステータ200の突極部を折り曲げて、複数の突極部が平板面に対して起こされる(ステップS12)。そして、巻線部材取り付け工程として、ステップS12で起こされた突極部2101〜21010、2401〜24024の各突極部を巻線磁芯として、各突極部の外側に巻線部材が設けられる(ステップS14)。
即ち、ステップS10のステータ形状加工工程では、ステップS12の折り曲げプレス加工を行うために、図12に示すように、プレス加工により、普通鋼であるSPCC又は機械構造用炭素鋼であるS10Cを材質とする環状の磁性材料からなる平板の内径側の縁部に突極部2101〜21010、外径側の縁部に突極部2401〜24024が設けられて、ステータ200の形状が形成される。なお、この平板には、その内径側の領域と外径側の領域とを分離するように円周方向に非磁性材からなる磁気的干渉度低減手段500が形成されている。ここで、図8で説明したように、突極部2101〜21010、2401〜24024の各突極部の先端形状がT字型形状を有するように、ステータ200が形成される。
そして、ステップS12では、図13に示すように、ステータ200は、折り曲げプレス加工により、ステップS10において形成された複数の突極部を起こすように加工される。この結果、突極部2101〜21010、2401〜24024は、ステータ200の平板面に対してほぼ垂直となるように起こされる。これにより、折り曲げ加工後のステータ200の最小内径が突極部2101〜21010の各突極部における内径となり、且つ折り曲げ加工後のステータ200の最大外径が突極部2401〜24024の各突極部における外径となるように、ステータ200が形成される。なお、図13では、突極部2101〜21010が平板面に対して起こされる方向が、突極部2401〜24024平板面に対して起こされる方向と同じであるが、これらの方向が互いに反対方向であってもよい。
ステップS14では、図14に示すように、ステップS12において起こされた突極部のそれぞれに、各突極部の先端部を支持する支持部の周囲に励磁用の巻線部材及び検出用の巻線部材が設けられる。励磁用の巻線部材は、図2に示す巻き方向となるように、各突極部に取り付けられ、検出用の巻線部材は、図3及び図4に示す巻き方向となるように、各突極部に取り付けられる。
次に、別工程で、図15に示すロータ300、400がプレス加工により形成される。実施形態1では、ロータ300は、環状の平板であるが、所与の半径の円周線を基準に、該円周線の1周につき、平面視において外径側の外形輪郭線が6周期で変化する形状を有している。また、実施形態1では、ロータ400は、偏心ロータである。
そして、ロータ取り付け工程として、図15に示すような形状を有するロータ300が、ステータ200に対して回転自在となるように、平板面に対して起こされた突極部2101〜21010の各突極部の内周側の面とロータ300の外周側(外径側)の面とが対向するように設けられ、ロータ400が、ステータ200に対して回転自在となるように、平板面に対して起こされた突極部2401〜24024の各突極部の外周側の面とロータ400の内周側(内径側)の面とが対向するように設けられる(ステップS16)。より具体的には、ロータ取り付け工程において、ロータ300は、ロータ300の回転軸回りの回転によりロータ300の外側とステータ200の突極部2101〜21010の各突極部の内周側の面との間のギャップパーミアンスが変化するようにステータ200に対して回転可能に設けられる。また、ロータ取り付け工程において、ロータ400は、ロータ400の回転軸回りの回転によりロータ400の内側とステータ200の突極部2401〜24024の各突極部の外周側の面との間のギャップパーミアンスが変化するようにステータ200に対して回転可能に設けられる。以上のように、図1に示すような実施形態1におけるレゾルバ100が製造される。
以上説明したように、実施形態1によれば、検出精度を低下させることなく、簡素な方法で、部品点数が少ないレゾルバ100を低コストで製造できるようになる。また、ロータ400とステータ200の突極部2401〜24024によって形成される磁気回路によって絶対角度を検出でき、ロータ300とステータ200の突極部2101〜21010によって形成される磁気回路によって精度良く角度を検出できるようになる。従って、レゾルバ100を取り付け後の微調整(零点位置を決定するための微調整)が不要となり、低コストでレゾルバ100を取り付けることができるようになる。しかも、内側よりも外側に位置する多くの突極部を用いて絶対角度を検出できるので、内側で絶対角度を検出する場合に比べて検出精度を向上させることができる。
実施形態1では、上記の実施形態1におけるレゾルバ100からの2組の2相の検出信号に基づいて、回転角度に対応した出力データを出力することができる。
図16は、実施形態1における角度検出システムの構成例の機能ブロック図を表す。
実施形態1における角度検出システム700は、上記のレゾルバ100と、レゾルバ処理部600とを含む。レゾルバ処理部600は、励磁信号生成部610と、零点検出部620と、相対角度検出部630と、角度処理部640とを含む。
励磁信号生成部610は、レゾルバ100のロータ300により構成される内側のレゾルバの巻線R1i、R2i(図2参照)間の励磁信号を生成すると共に、レゾルバ100のロータ400により構成される外側のレゾルバの巻線R1o、R2o間の励磁信号を生成する。巻線R1i、R2i間の励磁信号と、巻線R1o、R2o間の励磁信号とは、互いに非同期の信号であってもよい。
零点検出部620は、レゾルバ100の外側のレゾルバの巻線S1o、S2o、S3o、S4o(図4参照)からの検出信号に基づいて絶対角度を検出し、該絶対角度を零点位置として決定する。零点検出部620は、図6に示すように、巻線S1o、S3o間の検出信号Esoと、巻線S2o、S4o間の検出信号Ecoにより、絶対角度を検出する。
相対角度検出部630は、レゾルバ100の内側のレゾルバの巻線S1i、S2i、S3i、S4i(図3参照)からの検出信号に基づいて相対角度を検出する。相対角度検出部630は、図6に示すように、巻線S1i、S3i間の検出信号Esiと、巻線S2i、S4i間の検出信号Eciにより、相対角度を検出する。
角度処理部640は、零点検出部620によって検出された零点位置と、相対角度検出部630によって検出された相対角度とに基づいて、検出角度を算出し、該検出角度に基づいて所与の処理を行うことができる。これにより、レゾルバ処理部600は、レゾルバ100のロータの回転によって変化する検出信号に基づいて高精度に検出された角度に基づいて所与の制御処理を行うことができる。このような角度検出システム700による処理後の出力データに対応した処理を実行することで、ステータに対するロータの回転角度に応じた処理を実現できる。
なお、図16では、レゾルバ処理部600がレゾルバ100とは独立に設けられていたが、レゾルバ100がレゾルバ処理部600のブロックの一部又は全部を内蔵するようにしてもよい。
〔実施形態2〕
実施形態1におけるレゾルバ100では、ステータ200に設けられた突極部の先端形状がT字型形状を有しているものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。ステータの突極部がいわゆるI字型形状を有していてもよい。
図17は、本発明に係る実施形態2におけるステータの構成例の斜視図を表す。図17において、図14と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
実施形態2におけるステータ800は、磁性材料である環状の平板の内周側に突出して設けられた後に該平板面に対して起こされた10個の突極部8101〜81010(第1の突極部群)と、該平板の外周側に突出して設けられた後に該平板面に対して起こされた24個の突極部8401〜84024(第2の突極部群)とを有する。突極部8101〜81010は、環状の平板の内側の縁部に形成され、ロータ300と対向する各突極部の内周側の面は平面ではなく環状の平板の中心部を中心とする円弧の一部を形成している。突極部8401〜84024は、環状の平板の外側の縁部に形成され、ロータ400と対向する各突極部の外周側の面は平面ではなく環状の平板の中心部を中心とする円弧の一部を形成している。そして、突極部8101〜81010、8401〜84024の各突極部は、いわゆるI字型形状を有し、突極部の先端部の幅と、該突極部の支持部の幅とがほぼ等しい。
なお、図17においても、ステータ800の内径側に、突極部間に突起が形成されておらず、折り曲げ加工後のステータ800の最小内径が、突極部8101〜81010の各突極部における内径となるように形成される。また、ステータ800の外径側に、突極部間に突起が形成されておらず、折り曲げ加工後のステータ800の最大外径が、突極部8401〜84024の各突極部における外径となるように形成される。
図18は、実施形態2におけるレゾルバの構成例の斜視図を表す。図18において、配線の図示を省略している。なお、図18において、図1又は図17と同一の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
実施形態2におけるレゾルバ900は、内側に備えられた、いわゆるアウターステータ型・インナーロータ型の角度検出装置と、外側に備えられた、いわゆるインナーステータ型・アウターロータ型の角度検出装置とが一体化された構成を有している。アウターステータ型・インナーロータ型の角度検出装置では、環状のロータ300の外周側において環状のステータ800の突極部8101〜81010との間で磁路が形成され、且つステータ800の突極部8101〜81010の内周側の面(内周面)がロータ300の外周側の面(外周面)と対向し、該ロータの回転角度に応じて、ステータ800に設けられた検出巻線からの信号が変化する。また、インナーステータ型・アウターロータ型の角度検出装置では、環状のロータ400の内周側において環状のステータ800の突極部8401〜84024との間で磁路が形成され、且つステータ800の突極部8401〜84024の外周側の面がロータ400の内周側の面と対向し、該ロータの回転角度に応じて、ステータ800に設けられた検出巻線からの信号が変化する。なお、アウターステータ型・インナーロータ型の角度検出装置とインナーステータ型・アウターロータ型の角度検出装置とは、互いに磁気的に完全に遮断されているか、又は互いに磁気的な影響を無視できる状態となっている。
実施形態2におけるレゾルバ900が実施形態1におけるレゾルバ100と異なる点は、ステータの突極部の先端形状がI字型形状を有している点である。実施形態2におけるレゾルバ900の製造工程において、ステータ800の突極部の先端形状がI字型形状である点を除けば、図11と同様の手順である。
このような実施形態2によれば、実施形態1のステータを加工するよりも加工工程を簡素化でき、実施形態1と同様に、部品点数を削減しながら、低コスト化及び信頼性の向上を図ることができるようになる。また、この実施形態2によれば、巻線磁芯を通る磁束を増加させることができるので、突極部の数が少ない場合には、検出精度をより一層向上させることができる。
なお、図16に示す角度検出システム700において、レゾルバ100に代えて実施形態2におけるレゾルバ900を適用することができる。実施形態2では、突極部8101〜81010及び突極部8401〜84024の先端形状がI字型形状であるものとして説明したが、突極部8101〜81010及び突極部8401〜84024の一方の突極部群を構成する各突極部の先端形状が、T字型形状であってもよい。
〔実施形態3〕
実施形態1におけるレゾルバ100では、ステータ200に設けられた突極部を巻線磁芯として、巻線部材としてのコイル巻線を設ける例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。ステータの内側の突極部に設けられる巻線部材及び該ステータの外側の突極部に設けられる巻線部材の少なくとも一方は、例えば各層にコイル部が形成された多層基板により実現されてもよい。
図19は、実施形態3におけるレゾルバの説明図を表す。図19において、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。図19では、ステータの内側及び外側の突極部に設けられる巻線部材が、各層にコイル部が形成された多層基板により実現された例を表している。
実施形態3におけるレゾルバ1000では、図19に示すように、図11のステップS14の巻線部材取り付け工程において、ステータ1100の突極部2101〜21010の各突極部の支持部の外側に巻回される巻線部材として、多層基板1110が取り付けられる。多層基板1110は、各層に、ステータ1100の突極部2101〜21010の各突極部の励磁用のコイル部及び検出用のコイル部として機能する渦巻き状の導電層が設けられた絶縁基板を積層させたものである。そして、各層のコイル部が、各層の絶縁基板に設けられたスルーホールを介して電気的に接続されるようになっている。このような多層基板1110には、ステータ1100に設けられた突極部2101〜21010がそれぞれ通る貫通孔が設けられる。各突極部を貫通孔に通すことで、図19に示すように、各突極部の外側に励磁用のコイル部及び検出用のコイル部が巻回されるように設けられる。
また、図19に示すように、図11のステップS14の巻線部材取り付け工程において、ステータ1100の突極部2401〜24024の各突極部の支持部の外側に巻回される巻線部材として、多層基板1120が取り付けられる。多層基板1120は、各層に、ステータ1100の突極部2401〜24024の各突極部の励磁用のコイル部及び検出用のコイル部として機能する渦巻き状の導電層が設けられた絶縁基板を積層させたものである。そして、各層のコイル部が、各層の絶縁基板に設けられたスルーホールを介して電気的に接続されるようになっている。このような多層基板1120には、ステータ1100に設けられた突極部2401〜24024がそれぞれ通る貫通孔が設けられる。各突極部を貫通孔に通すことで、図19に示すように、各突極部の外側に励磁用のコイル部及び検出用のコイル部が巻回されるように設けられる。
その後、図7のステップS16において、図19に示すロータ300、400を図19のステータ1100に取り付けることで、実施形態3におけるレゾルバ1000を製造できる。
即ち、実施形態3におけるレゾルバ1000が実施形態1におけるレゾルバ100と異なる点は、ステータの突極部の各突極部の支持部の外側に巻回される巻線部材がコイル巻線ではなく多層基板である点である。
実施形態3によれば、実施形態1の効果に加えて、励磁用の巻線部材や検出用の巻線部材を規格通りに精度良く形成できるようになり、励磁用の巻線部材や検出用の巻線部材のコンダクタンスのばらつきを極めて小さくして、検出精度を高めることができるようになる。また、励磁用の巻線数や検出用の巻線数を積層させる基板の数で調整することができ、巻線比を容易に調整することができるようになる。
なお、図16に示す角度検出システム700において、レゾルバ100に代えて実施形態3におけるレゾルバ1000を適用することができる。
〔実施形態4〕
実施形態1におけるレゾルバ100では、ステータ200の内径側と外径側とを分離する磁気的干渉度低減手段500として非磁性材を平板の円周方向に設けていたが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明に係る実施形態4におけるレゾルバでは、磁気的干渉度低減手段として、環状の平板の内周側と外周側とを分離するように該平板の円周方向に形成された複数のローブ形状の中空部を採用している。
図20は、本発明に係る実施形態4におけるレゾルバ1200の構成例の斜視図を表す。図20において、配線の図示を省略している。なお、図20において、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
実施形態4におけるレゾルバ1200は、内側に備えられた、いわゆるアウターステータ型・インナーロータ型の角度検出装置と、外側に備えられた、いわゆるインナーステータ型・アウターロータ型の角度検出装置とが一体化された構成を有している。ここで、アウターステータ型・インナーロータ型の角度検出装置では、環状のロータの外周側において環状のステータの突極部との間で磁路が形成され、且つステータの突極部の内周側の面(内周面)がロータの外周側の面(外周面)と対向し、該ロータの回転角度に応じて、ステータに設けられた検出巻線からの信号が変化する。また、インナーステータ型・アウターロータ型の角度検出装置では、環状のロータの内周側において環状のステータの突極部との間で磁路が形成され、且つステータの突極部の外周側の面がロータの内周側の面と対向し、該ロータの回転角度に応じて、ステータに設けられた検出巻線からの信号が変化する。
アウターステータ型・インナーロータ型の角度検出装置とインナーステータ型・アウターロータ型の角度検出装置とは、互いに磁気的な影響を無視できる状態となっている。
実施形態4におけるレゾルバ1200は、ステータ1300と、第1及び第2のロータ300、400とを含む。ステータ1300は、磁性材料からなる環状の平板の内周側に突出して設けられた後に該平板面に対して起こされた10個の突極部2101〜21010と、該平板の外周側に突出して設けられた後に該平板面に対して起こされた24個の突極部2401〜24024とを有する。突極部2101〜21010は、環状の平板の内側の縁部に形成され、ロータ300と対向する各突極部の内周側の面は平面ではなく環状の平板の中心部を中心とする円弧の一部を形成している。突極部2401〜24024は、環状の平板の外側の縁部に形成され、ロータ400と対向する各突極部の外周側の面は平面ではなく環状の平板の中心部を中心とする円弧の一部を形成している。
突極部2101〜21010、2401〜24024のそれぞれには、巻線磁芯として、励磁用及び検出用の巻線部材2201〜22010、2501〜25024のそれぞれが設けられる。
ステータ1300が有する突極部2101〜21010、2401〜24024は、予め平板に形成された後に、折り曲げプレス加工により、平板面に対してほぼ垂直となるように起こされている。実施形態4では、実施形態1の磁気的干渉度低減手段500の機能が、平板の内周側と外周側とを分離するように該平板の円周方向に形成された複数のローブ形状の中空部により実現されている。これにより、実施形態1の効果に加えて、磁気的干渉度低減手段を、簡素なプレス加工で実現でき、より一層の低コスト化を図ることができるようになる。
このような実施形態4におけるレゾルバ1200は、実施形態1と同様に図11に示す手順で製造することができる。
図21は、折り曲げプレス加工前の実施形態4におけるステータ1300の斜視図を表す。図21において、図20と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
図22は、折り曲げプレス加工後の実施形態4におけるステータ1300の斜視図を表す。図22において、図21と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
図23は、巻線部材取り付け工程後の実施形態4におけるステータ1300の斜視図を表す。図23において、図20又は図21と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
図24は、実施形態4におけるロータ取り付け工程の説明図を表す。
実施形態4におけるレゾルバ1200は、まず、ステータ形状加工工程においてステータ1300の形状を加工した(ステップS10)後に、折り曲げプレス加工工程(折り曲げ工程)において、平板状のステータ1300の突極部2101〜21010、2401〜24024を折り曲げて、複数の突極部が平板面に対して起こされる(ステップS12)。ステップS10では、既に、平板の内周側と外周側とを分離するように、その円周方向にローブ形状の中空部13101〜131010が形成されている。そして、巻線部材取り付け工程として、ステップS12で起こされた突極部2101〜21010、2401〜24024の各突極部を巻線磁芯として、各突極部の外側に巻線部材が設けられる(ステップS14)。
即ち、ステップS10のステータ形状加工工程では、ステップS12の折り曲げプレス加工を行うために、図21に示すように、プレス加工により、普通鋼であるSPCC又は機械構造用炭素鋼であるS10Cを材質とする環状の磁性材料からなる平板の内径側及び外径側の縁部に突極部2101〜21010、2401〜24024及び中空部13101〜131010が形成されて、ステータ1300の形状が形成される。このとき、図8で説明したように、突極部2101〜21010、2401〜24024の各突極部の先端形状がT字型形状を有するように、ステータ1300が形成される。
そして、ステップS12では、図22に示すように、折り曲げプレス加工により、ステップS10において形成された複数の突極部を起こすように加工される。この結果、突極部2101〜21010、2401〜24024は、ステータ1300の平板面に対してほぼ垂直となるように起こされる。これにより、折り曲げ加工後のステータ1300の最小内径が突極部2101〜21010の各突極部における外径となり、折り曲げ加工後のステータ1300の最大外径が突極部2401〜24024の各突極部における内径となるように、ステータ1300が形成される。
ステップS14では、図23に示すように、ステップS12において起こされた突極部のそれぞれに、各突極部の先端部を支持する支持部の周囲に励磁用の巻線部材及び検出用の巻線部材が設けられる。励磁用の巻線部材は、図2に示す巻き方向となるように、各突極部に取り付けられ、検出用の巻線部材は、図3及図4に示す巻き方向となるように、各突極部に取り付けられる。
次に、別工程で、図24に示すロータ300、400がプレス加工により形成される。実施形態4では、ロータ300は、環状の平板であるが、所与の半径の円周線を基準に、該円周線の1周につき、平面視において外径側の外形輪郭線が6周期で変化する形状を有している。ロータ400は、偏心ロータである。そして、ロータ取り付け工程として、図24に示すような形状を有するロータ300が、ステータ1300に対して回転自在となるように、平板面に対して起こされた突極部2101〜21010の各突極部の内周側の面とロータ300の外周側の面とが対向するように設けられる(ステップS16)。より具体的には、ロータ取り付け工程において、ロータ300は、ロータ300の回転軸回りの回転によりロータ300の外側とステータ1300の突極部2101〜21010の各突極部の内周側の面との間のギャップパーミアンスが変化するようにステータ1300に対して回転可能に設けられる。
また、ロータ取り付け工程として、図24に示すような形状を有するロータ400が、ステータ1300に対して回転自在となるように、平板面に対して起こされた突極部2401〜24024の各突極部の外周側の面とロータ400の内周側の面とが対向するように設けられる(ステップS16)。より具体的には、ロータ取り付け工程において、ロータ400は、ロータ400の回転軸回りの回転によりロータ400の内側とステータ1300の突極部2401〜24024の各突極部の外周側の面との間のギャップパーミアンスが変化するようにステータ1300に対して回転可能に設けられる。
以上のように、図20に示すような実施形態4におけるレゾルバ1200が製造される。
以上説明したように、実施形態4によれば、検出精度を低下させることなく、より一層低コスト且つ簡素な方法で、部品点数が少ないレゾルバ1200を低コストで製造できるようになる。このような実施形態4においても、実施形態1と同様に、レゾルバ1200からの2組の2相の検出信号に基づいて、高精度に角度に対応した出力データを出力することができる。実施形態4におけるレゾルバ1200が適用された角度検出システムは、図12と同様であるため、図示及び説明を省略する。
〔実施形態5〕
実施形態4におけるレゾルバを構成するステータでは、平板の内周側と外周側とを分離するように円周方向に1列の複数のローブ形状の中空部を形成していたが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明に係る実施形態5におけるレゾルバを構成するステータでは、平板の内周側と外周側とを分離するように該平板の円周方向に2列(広義には複数列)の複数のローブ形状の中空部を形成している。
図25は、折り曲げプレス加工前の実施形態5におけるステータ1400の斜視図を表す。図25において、図21と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
ステップS10のステータ形状加工工程では、ステップS12の折り曲げプレス加工を行うために、図25に示すように、プレス加工により、普通鋼であるSPCC又は機械構造用炭素鋼であるS10Cを材質とする環状の磁性材料からなる平板の内径側及び外径側の縁部に突極部2101〜21010、2401〜24024及び中空部14101〜141010、14201〜142010が形成されて、ステータ1400の形状が形成される。即ち、環状の平板の円周方向に2列に複数の中空部が形成されている。
ここで、ステータ1400の平板内においてその内周側と外周側とを最短距離で結ぶ直線が、中空部14101〜141010、14201〜142010の少なくとも1つを通るように、中空部14101〜141010、14201〜142010が設けられていることが望ましい。こうすることで、内周側と外周側との間の磁気的干渉度を、より一層確実に低減させることができる。
このようなステータ1400を用いることで、実施形態4と同様にレゾルバを製造することができる。実施形態5におけるステータ1400によれば、実施形態4に比べて、平板の外周側に形成される磁気回路と、該平板の内遊側に形成される磁気回路との影響をより一層低減させることができるようになる。これにより、実施形態4に比べて、より精度良く角度を検出できるようになる。
〔実施形態6〕
実施形態4では、外側のロータ400の軸倍角が「1」、内側のロータ300の軸倍角が「6」であるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明に係る実施形態6では、外側のロータの軸倍角が「6」、内側のロータの軸倍角が「1」である。
図26は、本発明に係る実施形態6におけるレゾルバ1500の構成例の斜視図を表す。図26において、配線の図示を省略している。なお、図26において、図20と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
実施形態6におけるレゾルバ1500は、内側に備えられた、いわゆるアウターステータ型・インナーロータ型の角度検出装置と、外側に備えられた、いわゆるインナーステータ型・アウターロータ型の角度検出装置とが一体化された構成を有している。アウターステータ型・インナーロータ型の角度検出装置では、環状のロータの外周側において環状のステータの突極部との間で磁路が形成され、且つステータの突極部の内周側の面(内周面)がロータの外周側の面(外周面)と対向し、該ロータの回転角度に応じて、ステータに設けられた検出巻線からの信号が変化する。また、インナーステータ型・アウターロータ型の角度検出装置では、環状のロータの内周側において環状のステータの突極部との間で磁路が形成され、且つステータの突極部の外周側の面がロータの内周側の面と対向し、該ロータの回転角度に応じて、ステータに設けられた検出巻線からの信号が変化する。
アウターステータ型・インナーロータ型の角度検出装置とインナーステータ型・アウターロータ型の角度検出装置とは、互いに磁気的な影響を無視できる状態となっている。
実施形態6におけるレゾルバ1500は、ステータ1300と、第1及び第2のロータ1600、1700とを含む。ステータ1300は、磁性材料からなる環状の平板の内周側に突出して設けられた後に該平板面に対して起こされた10個の突極部2101〜21010と、該平板の外周側に突出して設けられた後に該平板面に対して起こされた24個の突極部2401〜24024を有する。突極部2101〜21010は、環状の平板の内側の縁部に形成され、ロータ1600と対向する各突極部の内周側の面は平面ではなく環状の平板の中心部を中心とする円弧の一部を形成している。突極部2401〜24024は、環状の平板の外側の縁部に形成され、ロータ1700と対向する各突極部の外周側の面は平面ではなく環状の平板の中心部を中心とする円弧の一部を形成している。
突極部2101〜21010、2401〜24024のそれぞれには、巻線磁芯として、励磁用及び検出用の巻線部材2201〜22010、2501〜25024のそれぞれが設けられる。
ステータ1300が有する突極部2101〜21010、2401〜24024は、予め平板に形成された後に、折り曲げプレス加工により、平板面に対してほぼ垂直となるように起こされている。
ロータ1600は、磁性材料からなり、ステータ1300に対して回転自在に設けられている。より具体的には、ロータ1600は、ロータ1600の回転軸回りの回転によりステータ1300の突極部2101〜21010の各突極部の内周側の面との間のギャップパーミアンスが変化するようにステータ1300に対して回転可能に設けられる。実施形態6では、ロータ1600の軸倍角が「1」であるものとする。即ち、ロータ1600は、偏心ロータである。
ロータ1700は、磁性材料からなり、ステータ1300に対して回転自在に設けられている。より具体的には、ロータ1700は、ロータ1700の回転軸回りの回転によりステータ1300の突極部2401〜24024の各突極部の外周側の面との間のギャップパーミアンスが変化するようにステータ1300に対して回転可能に設けられる。実施形態6では、ロータ1700の軸倍角が「6」であるものとする。即ち、上面視において、ロータ1700の内周側の外形輪郭線の径が6周期で変化する。
このような実施形態6におけるレゾルバ1500は、実施形態4と同様に図11に示す手順で製造することができる。
実施形態6では、レゾルバ1500からの2組の2相の検出信号に基づいて、回転角度に対応した出力データを出力することができる。
図27は、実施形態6における角度検出システムの構成例の機能ブロック図を表す。
実施形態6における角度検出システム1800が、図16に示す実施形態1における角度検出システム700と異なる点は、零点検出部620が巻線S1i、S3i間の検出信号、巻線S2i、S4i間の検出信号に基づいて絶対角度を検出し、相対角度検出部630が巻線S1o、S3o間の検出信号、巻線S2o、S4o間の検出信号に基づいて相対角度を検出する点である。
以上のような角度検出システム1800からの出力データに対応した処理を実行することで、ステータに対するロータの回転角度に応じた処理を実現できるようになる。
なお、図27では、レゾルバ処理部600がレゾルバ1500とは独立に設けられていたが、レゾルバ1500がレゾルバ処理部600のブロックの一部又は全部を内蔵するようにしてもよい。
〔実施形態7〕
実施形態6におけるレゾルバ1500では、ステータ1300に設けられた突極部の先端形状がT字型形状を有しているものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。ステータの突極部がいわゆるI字型形状を有していてもよい。
図28は、実施形態7におけるレゾルバの構成例の斜視図を表す。図28において、配線の図示を省略している。なお、図28において、図18又は図26と同一の部分には同符号を付し、適宜説明を省略する。
実施形態7におけるレゾルバ1900は、内側に備えられた、いわゆるアウターステータ型・インナーロータ型の角度検出装置と、外側に備えられた、いわゆるインナーステータ型・アウターロータ型の角度検出装置とが一体化された構成を有している。アウターステータ型・インナーロータ型の角度検出装置では、環状のロータ1600の外周側において環状のステータ2000の突極部8101〜81010との間で磁路が形成され、且つステータ2000の突極部8101〜81010の内周側の面(内周面)がロータ1600の外周側の面(外周面)と対向し、該ロータの回転角度に応じて、ステータ2000に設けられた検出巻線からの信号が変化する。また、インナーステータ型・アウターロータ型の角度検出装置では、環状のロータ1700の内周側において環状のステータ2000の突極部8401〜84024との間で磁路が形成され、且つステータ2000の突極部8401〜84024の外周側の面がロータ1700の内周側の面と対向し、該ロータの回転角度に応じて、ステータ2000に設けられた検出巻線からの信号が変化する。なお、アウターステータ型・インナーロータ型の角度検出装置とインナーステータ型・アウターロータ型の角度検出装置とは、複数の中空部によって、互いに磁気的に完全に遮断されているか、又は互いに磁気的な影響を無視できる状態となっている。
実施形態7におけるレゾルバ1900が実施形態6におけるレゾルバ1500と異なる点は、ステータの突極部の先端形状がI字型形状を有している点である。実施形態7におけるレゾルバ1900の製造工程において、ステータ2000の突極部の先端形状がI字型形状である点を除けば、図11と同様の手順である。
このような実施形態7によれば、実施形態6のステータを加工するよりも、加工工程を簡素化でき、実施形態6と同様に、部品点数を削減しながら、低コスト化及び信頼性の向上を図ることができるようになる。また、この実施形態7によれば、巻線磁芯を通る磁束を増加させることができるので、突極部の数が少ない場合には、検出精度をより一層向上させることができる。
なお、図27に示す角度検出システム1800において、レゾルバ1500に代えて実施形態7におけるレゾルバ1900を適用することができる。実施形態7では、突極部8101〜81010及び突極部8401〜84024の先端形状がI字型形状であるものとして説明したが、突極部8101〜81010及び突極部8401〜84024の一方の突極部群を構成する各突極部の先端形状が、T字型形状であってもよい。
以上、本発明に係る角度検出装置を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
(1)上記の各実施形態では、角度検出装置としてのレゾルバが、1相励磁2相出力型であるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。上記の各実施形態におけるレゾルバが、励磁信号が1相以外の相を有する信号であったり、検出信号が2相以外の相を有する信号であってもよい。
(2)上記の各実施形態では、磁性材料からなるステータの材質が普通鋼や機械構造用炭素鋼鋼材であるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明に係るステータは、折り曲げプレス加工に対する信頼性を有している材質で形成されていればよい。
(3)上記の各実施形態では、軸倍角「1」のロータを偏心ロータで実現していたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ロータの回転軸を偏心させることなく、環状の平板であるロータの形状が、所与の半径の円周線を基準に、該円周線の1周につき、平面視において内径側又は外径側の外形輪郭線を1周期で変化する形状とするようにしてもよい。
(4)上記の実施形態3で説明した巻線部材として多層基板を採用する態様は、実施形態3に限定されるものではなく、上記の他の実施形態の巻線部材に適用してもよい。
(5)上記の実施形態4又は実施形態5で説明した1又は複数列の複数の中空部により磁気干渉度低減手段の機能を実現する態様は、実施形態4又は実施形態5に限定されるものではなく、上記の他の実施形態に適用してもよい。
(6)上記の各実施形態では、外側の突極部数を「24」、内側の突極部数を「10」として説明したが、本発明はこれらの突極部数に限定されるものではない。
(7)上記の各実施形態では、軸倍角が「1」のロータと、軸倍角が「6」のロータとを用いた複速式レゾルバを例に説明したが、軸倍角が「1」、「6」以外の「2」、「3」、「4」、「5」、「7」、「8」、「10」、「12」であってもよい。また、軸倍角が「1」以外のロータを2種類組み合わせた複速式レゾルバであってもよい。