JP5181729B2 - 放電ランプおよび光放射装置 - Google Patents

放電ランプおよび光放射装置 Download PDF

Info

Publication number
JP5181729B2
JP5181729B2 JP2008049945A JP2008049945A JP5181729B2 JP 5181729 B2 JP5181729 B2 JP 5181729B2 JP 2008049945 A JP2008049945 A JP 2008049945A JP 2008049945 A JP2008049945 A JP 2008049945A JP 5181729 B2 JP5181729 B2 JP 5181729B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
concentration
quartz glass
synthetic quartz
discharge vessel
surface layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2008049945A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2009206050A (ja
Inventor
幸裕 森本
賢一 広瀬
新一郎 野▲崎▼
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ushio Denki KK
Original Assignee
Ushio Denki KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ushio Denki KK filed Critical Ushio Denki KK
Priority to JP2008049945A priority Critical patent/JP5181729B2/ja
Publication of JP2009206050A publication Critical patent/JP2009206050A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5181729B2 publication Critical patent/JP5181729B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は放電ランプおよび光放射装置に関し、特に、放電ランプにおいては、放電容器全体あるいは例えば光放射用の窓部材などの放電容器の一部を形成する材料として、一方、光放射装置においては、光放射窓全体あるいは例えば光放射用部分の部材などの光放射窓の一部を形成する材料として、真空紫外光における短波長側の透過特性が改善された特定の合成石英ガラスが用いられた放電ランプおよび光放射装置に関する。
従来から、紫外光、特に真空紫外光を含む光を放射する放電ランプは、種々の分野で広く利用されており、例えば、キセノンエキシマランプを利用した液晶用ガラス基板洗浄装置や、重水素ランプを利用した真空紫外領域の分光測定装置などが知られている。
これらの放電ランプにおいては、当該放電ランプを構成する放電容器、あるいは例えば光放射用の窓部材などの放電容器の一部を形成する材料として、一般的に真空紫外光を含む光に対して光透過性を有する材料として知られている合成石英ガラスが広く用いられている。
近年においては、このような真空紫外光を放射する放電ランプに対しては、例えば真空紫外光を更に高出力で放射することが求められており、このような要請に対して、放電容器を形成する合成石英ガラスそれ自体の特性を改善することが行われている(例えば特許文献1〜特許文献4および非特許文献1参照)。
例えば、特許文献1には、波長165nmにおける分光透過率を65%以上とし、さらにフッ素を200〜10000wt.ppmの濃度で添加すると共に水素分子を5×1016個/cm3 未満の割合で含有させた合成石英ガラスが開示されていると共に、当該合成石英ガラスの放電ランプ等への利用可能性が示されている。
また、特許文献2には、波長200nm以下の発光スペクトルを有する紫外線ランプの発光容器を形成する材料として、波長165nmにおける分光透過率が65%以上であり、フッ素濃度が200〜10000wt.ppmであり、OH基の含有量が10wt.ppm以下である合成石英ガラスを利用することが記載されている。
また、特許文献3には、フッ素濃度が100ppm以上であると共に、OH基の含有量が100ppm以下であり、さらに仮想温度が1100℃以下である合成石英ガラスが開示されていると共に、紫外域から真空紫外域までの光を放射する、例えば低圧水銀ランプ、エキシマランプ、重水素ランプなどの封入管の形成材料としての利用可能性が示されている。
更に、特許文献4には、少なくとも0.1重量%のフッ素を含有したシリコン・オキシフルオライドガラスに酸素分子を溶解させる製法が開示されていると共に、この製法によって得られるVUV光透過性ガラスを光放射装置の光放射窓の形成材料として用いることが示されている。
これらの特許文献1〜特許文献4に記載された合成石英ガラスは、高い紫外線透過率を得ることを目的として、フッ素が含有されてなるものである。
このようなフッ素が含有されてなる合成石英ガラスを放電容器の形成材料として用いる場合には、当該合成石英ガラスを成形した成形体においては、その表面近傍のフッ素の存在形態が不安定となることから、当該表面にはエッチング処理が施されている。具体的に、放電容器は、図10に示すように、フッ素が含有されている合成石英ガラス(原材料)よりなるインゴットを作製する過程、インゴットを所期の形状(例えばパイプ状)に成形する過程および成形体の表面にエッチング処理を施す過程をこの順に経ることによって作製される。
このように、フッ素が含有されてなる合成石英ガラスよりなる放電容器は、表面エッチング処理過程を経ることにより、図11に示すように、その厚み方向において、合成石英ガラス中のSi−F結合の濃度が均一とされ、これにより、厚み全体に均質な耐紫外光特性、すなわち高紫外線透過率が得られることとなる。
ここに、図11のグラフは、厚みが2mmの放電容器(通常の厚みは、1〜2mmとされる。)のものであり、横軸が放電容器の厚み(左端側の「0」の値が外表面を示し、一方、右端側の「2000」の値が内表面を示す。)を示し、縦軸がフッ素の含有量(濃度)および酸素原子の濃度を示す。また、同図において、直線(イ)は、フッ素の含有量(濃度)を示し、直線(ハ)は、酸素原子の濃度を示す。
また、非特許文献1に記載された合成石英ガラスは、フッ素が含有されてなると共に、酸素がドープされてなるものであり、この合成石英ガラスよりなる放電容器は、図12に示すように、フッ素が含有されている合成石英ガラス(原材料)よりなるインゴットを作製する過程、インゴットを所期の形状(例えばパイプ状)に成形する過程、成形体の表面に光学研磨処理を施す過程および酸素ドープ処理(酸素雰囲気中において、加熱温度1000〜1100℃で加熱処理)を施す過程をこの順に経ることによって作製される。
特開2005−306650号公報 特開2005−310455号公報 特開2001−019450号公報 特表2004−530615号公報 H−D.Witzke,「172nm excimer lamp irradiation of F−doped SiO2 glasses with different pretreatments compared with pure and Cl−doped glasses」,Pliysics and Chemistry of Glasses,July 2001,Vol.43C2002,155−158
しかしながら、上記特許文献1〜特許文献4および非特許文献1に記載された合成石英ガラスのいずれのものを用いて放電ランプを構成した場合においても、十分な耐紫外光特性を得ることができないことが判明した。
具体的に、例えばキセノンエキシマランプを例に挙げて説明すると、キセノンエキシマランプにおける放電容器の内部では、キセノンのエキシマ放射として波長145〜160nmという合成石英ガラスにおける紫外吸収端の光も放射されており、この紫外吸収端付近の光が放電容器を形成する合成石英ガラスに吸収されることにより放電容器の温度が上昇する結果、合成石英ガラスにおける紫外吸収端が長波長側にシフトし、これにより、キセノンのエキシマ放射が合成石英ガラスに吸収される程度が更に増加して放電容器の温度が更に上昇する、という悪循環が生じる。
そして、紫外吸収端付近の光が放電容器を形成する合成石英ガラスに吸収され、またこれに起因して放電容器の温度が上昇することにより、当該合成石英ガラスに含有されているフッ素の存在形態が経時的に変化し、光放射強度を安定に維持することができなくなってしまう、という問題がある。
すなわち、放電容器を形成する合成石英ガラス中において、フッ素はSi−F結合を形成することによって存在しているが、当該合成石英ガラスが紫外吸収端付近の光を吸収することにより、放電容器の表面近傍に存在するSi−F結合が解離されてフッ素が遊離し、それに伴ってSi−Si結合が形成されることとなる。そして、このSi−Si結合の存在により、最大吸収波長163nmの吸収帯が生じることとなるため、放電容器の内部において放射される光の一部が当該放電容器を形成する合成石英ガラスに吸収されることによってエキシマランプからの光の出射が阻害され、エキシマランプから出射される光の光量(光放射強度)が減少する、つまり、光放射強度維持特性を低下させる原因となる。 しかも、合成石英ガラス中に存在するSi−Si結合は、紫外線歪を生じさせる原因となる、という問題もある。
このように、キセノンエキシマランプにおいては、放電容器を形成する合成石英ガラス自体の特性を、単にフッ素を含有させることのみによって改善したのでは、光放射強度維持特性の低下(劣化)を抑制し、長期間にわたって高い光放射強度特性を維持することができない。
また、このような問題は、キセノンエキシマランプに限らず、真空紫外光を含む光を放射する放電ランプにおいても同様に生ずる。更には、放電ランプに限らず、真空紫外光を含む光を放射する放電ランプを光源とし、当該放電ランプからの光を放射するための合成石英ガラス製の光放射窓を備えた構成の光放射装置においても、放電ランプの周囲に近接して配置される光放射窓の部材には、放電ランプから放射される紫外吸収端付近の光が照射され、しかも放電ランプの放電容器からの熱が享受されることから、同様の問題が生じることとなる。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、真空紫外光の放射強度が高く、しかも、長期間にわたって高い光放射強度特性を維持することができ、従って、優れた耐紫外光特性を有する放電ランプを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、真空紫外光の放射強度が高く、しかも、長期間にわたって高い光放射強度特性を維持することができ、従って優れた耐紫外光特性を有する光放射装置を提供することにある。
本発明の放電ランプは、合成石英ガラス製の放電容器を具備し、波長190nm以下の紫外光を含む光を放電容器の内部で放射する放電ランプにおいて、
前記放電容器の少なくとも一部において、当該放電容器を形成する合成石英ガラス中のフッ素の含有量が7000wt.ppm以上30000wt.ppm以下であり、少なくとも一方の表面において、表層を形成する合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度が、肉厚中心部を形成する合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度よりも低く、かつ、当該表面の表層を形成する合成石英ガラス中における酸素分子の濃度が、肉厚中心部を形成する合成石英ガラス中における酸素分子の濃度よりも高いことを特徴とする。
このような本発明の放電ランプにおいては、放電容器における前記少なくとも一方の表面の表層において、当該表層を形成する合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度が、肉厚中心部側から当該表面に向かう厚み方向に変化しており、
前記少なくとも一方の表面から深さ200μmまでの厚み部分における酸素分子の平均濃度が0.8×1016個/cc以上であることが好ましい。
本発明の放電ランプは、合成石英ガラス製の放電容器を具備し、波長190nm以下の紫外光を含む光を放電容器の内部で放射する放電ランプにおいて、
前記放電容器の少なくとも一部において、当該放電容器を形成する合成石英ガラス中のフッ素の含有量が7000wt.ppm以上30000wt.ppm以下であり、少なくとも一方の表面において、表層を形成する合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度が、肉厚中心部を形成する合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度よりも低く、かつ、当該表面の表層を形成する合成石英ガラス中におけるOH基の濃度が、肉厚中心部を形成する合成石英ガラス中におけるOH基の濃度よりも高いことを特徴とする。
このような本発明の放電ランプにおいては、放電容器における前記少なくとも一方の表面の表層において、当該表層を形成する合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度が、肉厚中心部側から当該表面に向かう厚み方向に変化しており、
前記少なくとも一方の表面から深さ100μmまでの厚み部分におけるOH基の平均濃度が70wt.ppm以上であることが好ましい。
本発明の光放射装置は、波長190nm以下の紫外光を含む光を放電容器の内部で放射する放電ランプを具備し、当該放電ランプからの光を放射するための合成石英ガラス製の光放射窓を備えた光放射装置において、
前記光放射窓の少なくとも一部において、当該光放射窓を形成する合成石英ガラス中のフッ素の含有量が7000wt.ppm以上30000wt.ppm以下であり、少なくとも一方の表面において、表層を形成する合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度が、肉厚中心部を形成する合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度よりも低く、かつ、当該表面の表層を形成する合成石英ガラス中における酸素分子の濃度が、肉厚中心部を形成する合成石英ガラス中における酸素分子の濃度よりも高いことを特徴とする。
このような本発明の光放射装置においては、光放射窓における前記少なくとも一方の表面の表層において、当該表層を形成する合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度が、肉厚中心部側から当該表面に向かう厚み方向に変化しており、
前記少なくとも一方の表面から深さ200μmまでの厚み部分における酸素分子の平均濃度が0.8×1016個/cc以上であることが好ましい。
本発明の光放射装置は、波長190nm以下の紫外光を含む光を放電容器の内部で放射する放電ランプを具備し、当該放電ランプからの光を放射するための合成石英ガラス製の光放射窓を備えた光放射装置において、
前記光放射窓の少なくとも一部において、当該光放射窓を形成する合成石英ガラス中のフッ素の含有量が7000wt.ppm以上30000wt.ppm以下であり、少なくとも一方の表面において、表層を形成する合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度が、肉厚中心部を形成する合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度よりも低く、かつ、当該表面の表層を形成する合成石英ガラス中におけるOH基の濃度が、肉厚中心部を形成する合成石英ガラス中におけるOH基の濃度よりも高いことを特徴とする。
このような本発明の光放射装置においては、光放射窓における前記少なくとも一方の表面の表層において、当該表層を形成する合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度が、肉厚中心部側から外表面に向かう厚み方向に変化しており、
前記少なくとも一方の表面から深さ100μmまでの厚み部分におけるOH基の平均濃度が70wt.ppm以上であることが好ましい。
本発明の放電ランプにおいては、放電容器として、当該放電容器の少なくとも一部を形成する合成石英ガラスのフッ素の含有量が適正化され、かつ、その少なくとも一方側の表層において、肉厚中心部との関係から、合成石英ガラス中のSi−F結合の濃度と共に、酸素分子の濃度およびOH基の濃度の少なくともいずれか一方が特定の範囲とされた特定の材質のものが用いられている。そして、このような放電容器の特定の部分において、その表層を形成する合成石英ガラス中に、光(紫外吸収端付近の光)が作用することによってSi−Si結合の生成源となりうるSi−F結合を形成することによって存在するフッ素量が小さくされていると共に、これに伴って遊離した状態のフッ素(フッ素分子)が存在し、それに加えて酸素分子およびOH基の少なくとも一方が存在しているため、これらの作用により、真空紫外光の放射強度の低下および紫外線歪の原因とされるSi−Si結合の形成が抑制されるため、合成石英ガラス中におけるSi−Si結合の濃度の増加が抑止され、その結果、合成石英ガラスにフッ素を含有すること自体によって得られる優れた特性が、長期間にわたって維持されることとなるため、放電容器を形成する合成石英ガラスが、紫外吸収端付近の光を吸収することによって当該合成石英ガラスに含有されているフッ素の存在形態が経時的に変化し、これに起因して光放射強度維持特性が低下することを抑制することができる。
従って、本発明の放電ランプによれば、真空紫外光の放射強度が高く、しかも、長期間にわたって高い光放射強度特性を維持することができ、従って、優れた耐紫外光特性を得ることができる。
また、放電容器が、その表層において、酸素分子およびOH基のいずれか一方を特定の濃度で含有するものであることにより、酸素分子の作用またはOH基の作用を確実に得ることができるので、高い耐紫外光特性を確実に得ることができ、放電ランプに、より一層優れた耐紫外光特性が得られる。
本発明の光放射装置によれば、光放射窓として、当該光放射窓の少なくとも一部を形成する合成石英ガラスのフッ素の含有量が適正化され、かつ、その少なくとも一方側の表層において、肉厚中心部との関係から、合成石英ガラス中のSi−F結合の濃度と共に、酸素分子の濃度およびOH基の濃度の少なくともいずれか一方が特定の範囲とされた特定の材質のものが用いられていることから、前述の本発明の放電ランプと同様の作用効果が得られ、その結果、真空紫外光の放射強度が高く、しかも、長期間にわたって高い光放射強度特性を維持することができ、従って、優れた耐紫外光特性を得ることができる。
<放電ランプ>
本発明の放電ランプは、放電容器として、当該放電容器全体あるいは例えば光放射用窓部材などの放電容器の一部を形成する合成石英ガラスのフッ素の含有量(濃度)が適正化され、かつ、その少なくとも一方側の表層において、肉厚中心部との関係から、合成石英ガラス中のSi−F結合の濃度と共に、酸素分子の濃度およびOH基の濃度の少なくともいずれか一方が特定の範囲とされた特定の材質のものが用いられ、真空紫外光における短波長側の透過特性が改善された構成のものである。以下においては、キセノンエキシマランプを例に挙げて本発明について説明する。
図1は、本発明に係るキセノンエキシマランプの一例における構成の概略を示す説明用断面図、図2は、図1に示すキセノンエキシマランプの、放電容器の管軸に垂直な断面(M−M断面)を示す断面図である。
このキセノンエキシマランプ(以下、単に「エキシマランプ」ともいう。)20は、合成石英ガラスよりなる円筒状の外側管22と、この外側管22内においてその管軸と同軸上に配置された、当該外側管22の内径より小さい外径を有する、合成石英ガラスよりなる円筒状の内側管23とを有し、外側管22と内側管23とが両端部において溶融接合されて外側管22と内側管23との間に気密に閉塞された環状の放電空間Hが形成されてなる二重管構造の放電容器21が備えられている。
この放電容器21の外側管22には、その外周面に密接して、例えば金網などの導電性材料よりなる網状の第1の電極(以下、「外側電極」ともいう。)24が外側管22の外周面に密接して設けられており、また内側管23には、その内周面に密接して、例えば円筒状(パイプ状)あるいは断面において一部に切欠きを有する概略C字状(樋状)のアルミニウム板よりなる第2の電極(以下、「内側電極」ともいう。)25が設けられている。これらの外部電極24および内側電極25は、例えば高周波電源よりなる電源装置26に接続されている。
そして、放電空間H内には、エキシマ放電によってエキシマ分子を形成する放電用ガスであるキセノンガスが充填されている。
この図の例において、内側電極25の形状は、円筒状(パイプ状)である。また、図1において、27は、その製造上、放電容器21にガスを封入する際に使用した排気管の残部である。
このエキシマランプ20において、合成石英ガラスよりなる放電容器21は、その少なくとも一部が、以下の条件(1)および条件(2)を満たすと共に、条件(3)または条件(4)を満たすものである。
本発明に係るエキシマランプ20は、放電容器21が条件(1)および条件(2)と共に、条件(3)または条件(4)のうちの少なくとも一方の条件を満たすものであればよいが、これらの条件(1)〜条件(4)のすべてを満たすものであることが好ましい。
(1)放電容器21を形成する合成石英ガラスが、フッ素含有量が7000wt.ppm以上30000wt.ppm以下である。
(2)放電容器21において、内表面および外表面の少なくとも一方側の表層を形成する合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度が、肉厚中心部を形成する合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度よりも低い。
(3)放電容器21において、前記少なくとも一方側の表層を形成する合成石英ガラス中における酸素分子の濃度が、肉厚中心部を形成する合成石英ガラス中における酸素分子の濃度よりも高い。
(4)放電容器21において、前記少なくとも一方側の表層を形成する合成石英ガラス中におけるOH基の濃度が、肉厚中心部を形成する合成石英ガラス中におけるOH基の濃度よりも高い。
ここに、本明細書中において、「肉厚中心部」とは、放電容器21の全厚み(全肉厚)の中心の40%(要するに±20%)の領域をいう。例えば、放電容器21の厚みが2mmの場合には、表面から深さ1mmの部分が肉厚中心となり、この肉厚中心から±0.2mm(0.4mm範囲)の領域が肉厚中心部とされる。
また、「表層」とは、一般的には、放電容器の表面から深さ100μm前後までの領域を示すが、放電容器の全厚み(全肉厚)によって変動するものであるから、本明細書中においては、放電容器の表面から深さ50〜250μmまでの領域と定義する。
上記条件(1)を満たす、すなわち放電容器21を形成する合成石英ガラスのフッ素含有量を7000wt.ppm以上30000wt.ppm以下とすることによっては、エキシマランプ20に高い紫外線透過率を得ることができる。
後述の実験例からも明らかなように、フッ素含有量が過小である場合には、エキシマランプの真空紫外光の放射強度が小さくなり、またランプ寿命(使用寿命)が短くなる。一方、フッ素含有量が過大である場合には、放電空間の内部にフッ素が析出するようになり、エキシマランプを所定の状態で動作させるために更に大きなランプ電圧、ランプ入力が必要となることに伴って放電容器の温度が上昇し、紫外吸収端が長波長側にシフトして真空紫外光の放射強度が低下すると共に、真空紫外光の放射による紫外光歪が蓄積されやすく、ランプ寿命が短くなる。
合成石英ガラス中におけるフッ素含有量は、例えばイオンクロマトグラフィー法、EPMA法(Electron Probe Micro−Analysis)、蛍光X線分光分析法、SIMS法(Secondary Ion Mass Spectrometry)などによって測定することができる。
上記条件(2)を満たす、すなわち放電容器21において、一方または両方の表面の表層を形成する合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度を、肉厚中心部を形成する合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度よりも低くすることによっては、放電容器21を形成する合成石英ガラスに、Si−Si結合の存在に起因する最大吸収波長163nmの吸収帯が生じることを抑制することができるため、長期間にわたって高い光放射強度特性を維持することができる。
その理由は、放電容器21の内部においてキセノンのエキシマ放射として放射される光のうちの紫外吸収端付近の光が当該放電容器21を形成する合成石英ガラスに吸収されることによってSi−F結合からSi−Si結合が形成され、これに起因して合成石英ガラス中におけるSi−Si結合濃度が増加することを抑制することができるからである。
すなわち、放電容器21の一方または両方の表面の表層における、Si−F結合の濃度の小さい部分(以下、「特定表層部」ともいう。)においては、Si−F結合を形成することなく、遊離した状態のフッ素が存在しており、この遊離した状態で存在するフッ素が、光(紫外吸収端付近の光)の作用によってSi−F結合の解離が生じた場合に、その切断されたSi−F結合に基づいて新たにSi−F結合を形成する、「フッ素のリザーバー」としての機能を有しており、その上、光の作用によるSi−F結合の解離が、放電容器21の表面から肉厚中心(内表面側)に向かって進行していくことから、放電容器21の内表面側および外表面側の少なくとも一方の表層に、Si−F結合の濃度の小さい特定表層部を形成し、Si−Si結合の生成源となりうるSi−F結合の濃度を小さくしておくことにより、光の作用によって新たに形成されるSi−Si結合の絶対数を減じることができる。
後述の実験からも明らかなように、特定表層部が形成されていない、すなわち両方の表面の表層に係るSi−F結合の濃度が肉厚中心部と同等である場合には、長期間にわたって高い光放射強度特性を得ることができない。
放電容器21における特定表層部は、放電容器21の表面から深さ50〜250μmまでの領域に形成される。
この図の例においては、特定表層部は、放電容器21の外表面側(具体的には、放電容器21の外側管22の外表面側)において、当該外表面から深さ200μmまでの領域に形成されている。
なお、このエキシマランプ20の放電容器21のような二重管構造などの複雑な形状の放電容器においては、光出射部となる外側管のみに特定表層部が形成されていてもよい。この場合には、放電容器の内側管には、特定表層部が、内表面側および外表面側のいずれか一方側に形成されていてもよく、また両方側に形成されていてもよい。
具体的に、放電容器21を形成する合成石英ガラスは、肉厚中心部においては、Si−F結合の濃度が略一定となっており、一方、特定表層部においては、その表面に向かうに従ってSi−F結合の濃度が小さくなる濃度勾配を有するよう、Si−F結合の濃度が変化している。
このようなSi−F結合の濃度の小さい部分(特定表層部)は、放電容器21の外表面側および内表面側の少なくとも一方の表層に形成されていることが必須であり、最も好ましくは、放電容器21の両方の表面の表層に、特定表層部が形成されていることが好ましい。
放電ランプ20において、放電空間H内で発生した波長163nmの光の吸収(放電容器21を形成すぐ合成石英ガラスによる吸収)を抑制するためには、放電容器21における内表面側の表層に、前記特定表層部が形成されていることが理論上好ましい態様として考えられるが、放電容器21の外表面側(外側管22の外表面側)のみに特定表層部が形成されている場合であっても、後述の実験例からも明らかなように、十分な効果が得られる。
合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度は、実際に測定することは難しいが、例えばSi−F結合が、Si−O結合とは光学的特性が異なる(吸収波長が異なることに起因して屈折率が異なる)ことを利用し、肉厚中心部における屈折率と、表層(特定表層部)における屈折率を測定し、その測定値に基づいて確認することができる。
上記条件(3)を満たす、すなわち放電容器21において、前記一方または両方の表面(特定表層部が形成されている表層に係る表面であって、以下、「特定表面」ともいう。)側の表層を形成する合成石英ガラス中における酸素分子の濃度を、肉厚中心部を形成する合成石英ガラス中における酸素分子の濃度よりも高くすることによっては、放電容器21を形成する合成石英ガラスに、Si−Si結合の存在に起因する最大吸収波長163nmの吸収帯が生じることを抑制することができるため、長期間にわたって高い光放射強度特性を維持することができる。
その理由は、酸素分子を存在させることにより、光(紫外吸収端付近の光)の作用によってSi−F結合の解離が生じた場合には、Si−O−Si結合が形成され、これによってSi−Si結合の形成が阻害されることとなるため、その結果、Si−Si結合の形成を抑制することができ、Si−F結合から形成されるSi−Si結合の絶対数を減じることができるからである。
また、後述のように、酸素分子を存在させることにより、結果的に、その製造工程において、Si−F結合の濃度を小さくすることに伴って存在することとなったSi−Si結合の濃度を、小さくすることができる。
後述の実験からも明らかなように、両方の表面の表層に係る酸素分子の濃度が肉厚中心部と同等である、すなわち特定表面側の表層に係る酸素分子の濃度が肉厚中心部と同等である場合には、長期間にわたって高い光放射強度特性を得ることができない。
具体的には、放電容器21の特定表面側において、表層を形成する合成石英ガラス中における酸素分子の濃度は、当該特定表面から深さ200μmまでの厚み部分において、その平均濃度が0.8×1016個/cc以上であることが好ましく、更に、特定表面からの深さ50μmまでの厚み部分よりなる最表面においては、その平均濃度が5.0×1016個/cc以上であることが特に好ましい。
このように特定表面から深さ200μmまでの厚み部分の酸素分子の平均濃度が0.8×1016個/cc以上であることにより、確実に長期間にわたって高い光放射強度特性を得ることができる。
合成石英ガラス中における酸素分子の濃度は、下記のようにして確認することができる。
すなわち、下記の文献(1)〜文献(3)によれば、シリカガラス中に含有(含浸)された酸素分子は、波長1272nmまたは波長765nmの光で励起され、波長1272nmの蛍光を発し、この蛍光強度が酸素分子の濃度(含浸酸素分子量)に比例して強くなることを利用することにより、酸素分子の濃度が明らかな標準サンプルと、酸素分子の濃度を測定すべき試料とのピーク強度比を得、これに基づいて定量することができるとされている。また、この定量の際には、蛍光ピーク強度が試料肉厚方向の積算値であることから、標準サンプルと試料との肉厚比も考慮する必要があることが記載されている。
このような手法における具体的な測定系として、文献(1)〜文献(3)には、Nd:YAGレーザーを励起光源とし、その蛍光をラマン分光分析装置にて測定することが記載されている。また、試料表層の酸素分子濃度を得るためには、以下のような方法を用いる。すなわち、酸素蛍光ピークの強度を、試料表面の深さ200μmの厚み部分をエッチング処理する前後で測定し、酸素蛍光ピークの強度差を得、このピーク強度差がエッチング処理した領域の酸素分子量を反映していることを利用し、エッチング深さに対するピーク強度差をエッチング深さの商を算出することにより、エッチング処理した領域の酸素分子濃度を得る。
文献(1)K.Kajihara,J.Appl.Phys,98,013527(2005)
文献(2)K.Kajihara,J.Appl.Phys,98,013528(2005)
文献(3)K.Kajihara,J.Appl.Phys,98,013529(2005)
上記条件(4)を満たす、すなわち放電容器21において、特定表面側の表層を形成する合成石英ガラス中におけるOH基の濃度を、肉厚中心部を形成する合成石英ガラス中におけるOH基の濃度よりも高くすることによっては、OH基の作用による紫外光歪の成長緩和効果が得られるため、放電容器21を形成する合成石英ガラスに対する真空紫外光によるダメージ、特に紫外光歪が蓄積されることを抑制することができ、優れた光学特性を得ることができることから、エキシマランプ20を、耐紫外光特性(紫外線耐久性)が高いものとすることができる。
後述の実験からも明らかなように、両方の表面の表層に係るOH基の濃度が肉厚中心部と同等である、すなわち特定表面側の表層に係るOH基の濃度が肉厚中心部と同等である場合には、長期間にわたって高い光放射強度特性を得ることができない。
具体的には、放電容器21の特定表面側において、表層を形成する合成石英ガラス中におけるOH基の濃度は、当該特定表面から深さ100μmまでの厚み部分において、その平均濃度が70wt.ppm以上であることが好ましく、特に70〜1300wt.ppmであることが好ましい。また、特定表面からの深さ50μmまでの厚み部分よりなる最表面においては、その平均濃度が100wt.ppm以上であることが好ましい。
このように特定表面からの深さ100μmの厚み部分のOH基の平均濃度が70wt.ppm以上であることにより、確実に長期間にわたって高い光放射強度特性を得ることができる。
また、特定表面から深さ100μmまでの厚み部分におけるOH基の濃度が1300wt.ppmを超える場合には、放電容器21に失透が生じるおそれがある。
合成石英ガラス中におけるOH基の濃度は、例えば赤外吸収スペクトルを測定し、得られる波長3670cm-1付近の吸光度に基づいて算出することができる。具体的な手法としては、(1)測定対象物のIR吸収測定を行い、(2)その後、測定対象物における測定対象部分(表層)を削り取った後、更にIR吸収測定を行い、(3)得られた表層の削り取り処理前後の測定値の差に基づいて、削り取った部分(表層)の濃度を算出する。
また、エキシマランプ20においては、放電容器21を形成する合成石英ガラスが、仮想温度Tfが700℃以上930℃以下であるものであることが好ましい。
ここに、「仮想温度Tf」とは、ガラス内部の構造を、温度と比容との関係で表される平衡状態の温度で示した場合におけるその平衡温度であり、ガラスの構造(密度)に関する指標を示す。
合成石英ガラスの仮想温度Tfを700℃以上930℃以下とすることにより、後述のエキシマランプ20を作製する工程中において、例えば合成石英ガラスよりなる成形体に変形が生じ、所望の形状の放電容器を形成することができなくなるなどの弊害を伴うことなく、条件(1)および条件(2)と共に、条件(3)および条件(4)の少なくとも一方を満たし、所望の耐紫外光特性を有する放電容器を得ることができる。
合成石英ガラスの仮想温度Tfは、次のようにして求めることができる。
すなわち、先ず、例えばランプ作製時と同一のガラス管の一部に対してランプと同様の処理を行い、互いに異なる複数箇所から、各々15mm角程度の大きさのサンプルを切り出す。
次いで、各々のサンプルについての赤外透過スペクトルを、例えば赤外分光装置「Magna760」(Nicoket社製)を用いて、透過法により、波数2000〜4000cm-1の範囲を、分解能2cm-1、波数間隔0.0625cm-1、32回積算で測定する。
これにより得られた赤外透過スペクトルデータにおける、波数2260cm-1の吸収帯におけるピーク波数を求め、各々のサンプルについてのピーク波数の平均値を、当該エキシマランプにおけるピーク波数A〔cm-1〕として、次式より算出されるものである。
Figure 0005181729
上記式1において、Tfは仮想温度〔℃〕、Aはピーク波数〔cm-1〕、αおよびβは、それぞれ、下記式2より得られる値であり、式2におけるFはフッ素含有量(濃度)〔mol%〕である。
Figure 0005181729
このような構成のエキシマランプ20は、例えば内側管23を構成する円筒状の内側管構成用素管を予め作製しておき、この内側管構成用素管の外径より大きい内径を有する、外側管22を構成する円筒状の外側管構成用素管の内部に、内側管構成用素管を挿入して同軸上に配置し、管軸方向外方側から例えばバーナーなどによって加熱することにより、外側管構成用素管の内周面と内側管構成用素管の端部部分の先端面とを溶着させ、これにより、外側管22と内側管23との間に管状の放電空間Hが形成された二重管構造の放電容器21を作製する。そして、作製した放電容器21における放電空間H内に放電用ガスであるキセノンガスを封入すると共に外側電極24および内側電極25を所定の位置に配設することにより製造することができる。
このような製造工程において、放電容器21の外側管22を構成する外側管構成用素管(以下、「放電容器用素管」ともいいう。)を作製する手法について、図3および図4のフローチャートを用いて詳細に説明する。
ここに、図3のフローチャートに係る手法は、少なくとも条件(1)〜条件(3)を満たす放電容器を作製するためのものであり、一方、図4のフローチャートに係る手法は、少なくとも条件(1)、条件(2)および条件(4)を満たす放電容器を作製するためのものである。
なお、図3および図4のフローチャートに係る手法のいずれによっても、内側管23を構成する内側管構成用素管を形成することもできる。
先ず、図3のフローチャートに係る手法について説明する。
(インゴット作製過程)
先ず、フッ素の含有量が上記範囲内(条件(1))である合成石英ガラス(原材料)からなるインゴット(円筒状の素管)を作製する。
このインゴットにおいては、当該インゴットを形成する合成石英ガラス中のフッ素の濃度およびSi−F結合の濃度は均一である。
(パイプ成形過程)
インゴットをパイプ状に成形することにより、パイプ状体を作製する。
このパイプ状体においても、当該パイプ状体を形成する合成石英ガラスに、その厚み方向において、フッ素の濃度およびSi−F結合の濃度のいずれの濃度にも勾配が生じることはほとんどない。
このパイプ成形過程においては、必要に応じて、得られたパイプ状の表面をエッチング処理することもできる。
この表面がエッチング処理されたパイプ状体においても、当該パイプ状体を形成する合成石英ガラス中のフッ素の濃度およびSi−F結合の濃度は均一である(図11参照)。
(熱処理過程)
この熱処理過程においては、パイプ形成過程において最終的に得られたパイプ状体に対して加熱処理を施すことによって外表面側の表層に特定表層部を形成し、これにより、熱処理体を作製する。
この熱処理体においては、図5に示すように、当該熱処理体を形成する合成石英ガラス中のSi−F結合の濃度は、肉厚中心部では略一定とされるが、特に外表面側の表層では、その厚み方向において、外表面に向かうに従って小さくなる濃度勾配が生じることとなる。
その理由は、パイプ形成過程において最終的に得られたパイプ状体を加熱処理することにより、当該パイプ状体を形成する合成石英ガラス中において、表面から中心に向かって順に、Si−F結合のうちの一部(結合が弱いもの)が切断され、このSi−F結合の解離によってフッ素が遊離されると共にSi−Si結合が形成されるためである。
ここに、図5において、横軸が熱処理体の厚み(左端側の「0」の値が外表面を示し、一方、右端側の「2000」の値が内表面を示す。)を示し、縦軸がフッ素の含有量(濃度)、Si−F結合、酸素原子およびSi−Si結合の各々の濃度を示す。また、同図において、直線(イ)は、フッ素の平均濃度、曲線(ロ)は、Si−F結合の濃度、直線(ハ)は、酸素原子の濃度、曲線(ニ)は、Si−Si結合の濃度を示す。
なお、酸素原子の濃度は、例えばSIMS法(Secondary Ion Mass Spectrometry)を用い、熱処理体の厚み方向における酸素分子の濃度分布を得ることによって確認することができる。
加熱処理は、例えば内部に円柱状の中空部を有する円筒状の加熱炉を用いることによって行なわれる。具体的には、大気中において、パイプ状体を、円筒状の加熱炉の内部を通過させることによって加熱する。
加熱処理条件は、例えば加熱温度1100〜1300℃、処理時間3〜30分間である。
ここに、Si−F結合の解離は、加熱温度、処理時間に依存して進行するため、加熱処理の状態を制御(加熱処理条件を調節)することにより、特定表層部を、内表面および外表面のいずれか一方の表面の表層に形成することもでき、また両方の表面の表層に形成することもできる。
この例においては、熱処理体の外表面側の表層においてSi−F結合の濃度が大きく減少して特定表層部が形成されており、また、当該熱処理体の内表面側の表層(特定内表面から深さ50μm未満の深さまでの領域)においても、その程度は小さいが、Si−F結合の濃度が減少している。
(酸素ドープ処理過程)
この酸素ドープ処理過程においては、熱処理過程において得られた熱処理体に対して酸素ドープ処理を施すことによって酸素分子を導入し、これにより、酸素ドープ処理体を作製する。
この酸素ドープ処理体においては、図6に示すように、その表層(特に外表面側の表層)において、当該酸素ドープ処理体を形成する合成石英ガラス中の酸素分子の濃度が大きくなっており、それと共に、Si−Si結合の濃度が、熱処理体を形成する合成石英ガラス中のSi−Si結合の濃度に比して小さくなっている。
なお、図6において、酸素ドープ処理体の外表面側および内表面側の表層において、各々、酸素原子の濃度が大きくなっているが、これによっても、Si−Si結合の濃度が小さくなっていることが示されている。
ここに、図6において、横軸が酸素ドープ処理体の厚み(左端側の「0」の値が外表面を示し、一方、右端側の「2000」の値が内表面を示す。)を示し、縦軸がフッ素の含有量(濃度)、Si−F結合、酸素分子、酸素原子およびSi−Si結合の各々の濃度を示す。また、同図において、直線(イ)は、フッ素の平均濃度を示し、曲線(ロ)は、Si−F結合の濃度、曲線(ハ)は、酸素原子の濃度、曲線(ニ)は、Si−Si結合の濃度、曲線(ホ)は、酸素分子の濃度、直線(ヘ)は、酸素ドープ処理前の酸素原子の濃度を示す。
酸素ドープ処理体において、熱処理過程において形成されたSi−Si結合の濃度が小さくなった理由は、熱処理体に対する酸素ドープ処理によれば、先ず、当該熱処理体の表層に存在するSi−Si結合に対してO(酸素原子)が作用し、Si−O−Si結合が形成され、このようにしてSi−Si結合からSi−O−Si結合が形成されることによってSi−Si結合の濃度が減少された後、酸素分子自体がその形態で導入されることとなるためである。
酸素ドープ処理は、酸素雰囲気下において、熱処理体を加熱することによって行なわれる。
酸素ドープ処理条件は、例えば酸素圧力(酸素濃度)0.3〜1.5気圧、加熱温度600〜1000℃、処理時間1〜300時間であり、特に加熱温度は750℃であることが好ましい。
このようにしてインゴット作製過程、パイプ成形過程、熱処理過程および酸素ドープ処理過程を経ることによって得られた酸素ドープ処理体は、そのままの状態で放電容器用素管として用いることもできるが、更に、後述のOH基ドープ処理を施すこともできる。 ここに、インゴット作製過程、パイプ成形過程、熱処理過程、酸素ドープ処理過程およびOH基ドープ処理過程をこの順に経ることによっては、条件(1)〜条件(4)のすべてを満たす放電容器を得ることができる。
次いで、図4のフローチャートに係る手法について説明する。
この手法は、図3に係る手法と同様にしてインゴット作製過程、パイプ成形過程および熱処理過程をこの順に経ることによって熱処理体を得、この熱処理体に対して、酸素ドープ処理に代えてOH基ドープ処理を施すものである。
(OH基ドープ処理過程)
このOH基ドープ処理過程においては、加熱処理過程において得られた熱処理体に対してOH基ドープ処理を施すことによってOH基を導入し、これにより、OH基ドープ処理体を作製する。
このOH基ドープ処理体においては、図7示すように、その表層(特に外表面側の表層)において、当該OH基ドープ処理体を形成する合成石英ガラス中のOH基の濃度が大きくなっており、それと共に、Si−Si結合の濃度が、熱処理体を形成する合成石英ガラス中のSi−Si結合の濃度に比して小さくなっている。
ここに、図7において、横軸がOH基ドープ処理体の厚み(左端側の「0」の値が外表面を示し、一方、右端側の「2000」の値が内表面を示す。)を示し、縦軸がフッ素の含有量(濃度)、Si−F結合、Si−Si結合およびOH基の各々の濃度を示す。また、同図において、直線(イ)は、フッ素の平均濃度を示し、曲線(ロ)は、Si−F結合の濃度、曲線(ニ)は、Si−Si結合の濃度、曲線(ト)は、OH基の濃度を示す。
OH基ドープ処理体において、熱処理過程において形成されたSi−Si結合の濃度が小さくなった理由は、熱処理体に対するOH基ドープ処理によれば、水分子(H2 O)の状態で導入されたOH基が、熱処理体の表層に存在するSi−Si結合と反応し、これによってSi−OHダングリングボンド(自由端)が形成されることとなるため、このようにしてSi−Si結合からSi−OHダングリングボンドが形成されることによってSi−Si結合の濃度が減少されるためである。
OH基ドープ処理は、例えば窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガス雰囲気下において、水蒸気を発生させつつ、熱処理体を加熱することによって行なわれる。
OH基ドープ処理条件は、例えば水蒸気濃度10〜80%、加熱温度600〜1000℃、処理時間0.2〜30時間であり、特に加熱温度は750℃であることが好ましい。
このようにしてインゴット作製過程、パイプ成形過程、熱処理過程およびOH基ドープ処理過程を経ることによって得られるOH基ドープ処理体は、そのままの状態で放電容器用素管として用いることもできるが、更に、前述の酸素ドープ処理を施すこともできる。
ここに、インゴット作製過程、パイプ成形過程、熱処理過程、OH基ドープ処理過程および酸素ドープ処理過程をこの順に経ることによっても、条件(1)〜条件(4)のすべてを満たす放電容器を得ることができる。
図8に、インゴット作製過程、パイプ成形過程、熱処理過程、OH基ドープ処理過程および酸素ドープ処理過程をこの順に経ることによって製造された、厚み2mmの合成石英ガラス製の放電容器(外側管)を形成する合成石英ガラスの組成を示す。この図8において、放電容器(外側管)の外表面側の表面近傍において、OH基ドープ処理体に比してOH基の濃度が小さくなっているが(図7参照)、これは、OH基ドープ処理の後に酸素ドープ処理を施したため、この表面近傍においてSi−OHダングリングボンドのOH基が切断されたためである。
ここに、図8において、横軸が放電容器(外側管)の厚み(左端側の「0」の値が外表面を示し、一方、右端側の「2000」の値が内表面を示す。)を示し、縦軸がフッ素の含有量(濃度)、Si−F結合、酸素分子、酸素原子、Si−Si結合およびOH基の各々の濃度を示す。また、同図において、直線(イ)は、フッ素の平均濃度を示し、曲線(ロ)は、Si−F結合の濃度、曲線(ハ)は、酸素原子の濃度、曲線(ニ)は、Si−Si結合の濃度、曲線(ホ)は、酸素分子の濃度、直線(ヘ)は、酸素ドープ処理前の酸素原子の濃度を示し、曲線(ト)は、OH基の濃度を示す。
以上のような図3に係る手法および図4に係る手法のいずれの手法によっても、酸素ドープ処理およびOH基ドープ処理を、熱処理過程において、パイプ状体の少なくとも一方の表面側の表層に、特定表層部、すなわちSi−F結合の濃度が小さい部分が形成された後に施すことことにより、当該表面側の表層を、熱処理過程において形成されたSi−Si結合の濃度が小さく、その上、酸素分子およびOH基と共に、遊離した状態のフッ素が存在している所望の状態とすることができる。
すなわち、熱処理過程を経ずに、パイプ成形過程において最終的に得られたパイプ状体に対して酸素ドープ処理またはOH基ドープ処理を施した場合(例えば、図12参照)には、酸素分子および/またはOH基が導入されていても、遊離した状態のフッ素が存在しないことから、徐々にSi−F結合からSi−Si結合が生成され、これに起因して真空紫外光の放射強度の維持率が徐々に低下してしまうこととなる。
このような構成を有するエキシマランプ20においては、例えば、適正な大きさに制御された高周波電圧が電源装置26によって外側電極24と内側電極25との間に印加されることにより、放電空間H内においてエキシマ放電が生じ、このエキシマ放電によってキセノンガス(放電用ガス)に由来するエキシマ分子が形成され、放電容器11の内部で、波長190nm以下の真空紫外光を含む光が放射される。
このエキシマランプ20において、放電容器21の内部では、キセノンのエキシマ放射として波長145〜160nmという合成石英ガラスにおける紫外吸収端付近の光も放射されており、この紫外吸収端付近の光が放電容器21を形成する合成石英ガラスに吸収されることとなる。
このようにして合成石英ガラスに紫外吸収端付近の光が吸収されることによっては、従来の単にフッ素が含有されてなる合成石英ガラスよりなる放電容器を備えた放電ランプにおいては、当該放電容器の表面近傍に存在するSi−F結合が解離されてフッ素が遊離し、それに伴って真空紫外光の光放射強度の低下および紫外線歪の原因とされるSi−Si結合が形成され、Si−Si結合の濃度が増加することとなる。
而して、エキシマランプ20においては、放電容器21として、当該放電容器21を形成する合成石英ガラスのフッ素の含有量が適正化され、かつ、内表面および外表面のいずれか一方、あるいは両表面の表層(具体的には、外側管22の外表面側の表層)において、肉厚中心部との関係から、合成石英ガラス中のSi−F結合の濃度と共に、酸素分子の濃度およびOH基の濃度の少なくともいずれか一方が特定の範囲とされた特定の材質のものが用いられていることから、放電容器の当該表層を形成する合成石英ガラス中において、フッ素が2つの存在形態で含有されている、具体的には、光(紫外吸収端付近の光)が作用することによってSi−Si結合の生成源となりうるSi−F結合を形成することによって存在するフッ素量が小さくされていると共に、これに伴って遊離した状態のフッ素(フッ素分子)が存在し、それに加えて酸素分子およびOH基の少なくとも一方が存在しているため、これらの作用により、真空紫外光の放射強度の低下および紫外線歪の原因とされるSi−Si結合の形成が抑制され、その結果、合成石英ガラス中におけるSi−Si結合の濃度の増加が抑止される。
従って、合成石英ガラスにフッ素を含有すること自体によって得られる優れた特性(高紫外線透過率)が、長期間にわたって維持されることとなるため、放電容器21を形成する合成石英ガラスが、紫外吸収端付近の光を吸収することによって当該合成石英ガラスに含有されているフッ素の存在形態が経時的に変化し、これに起因して光放射強度維持特性が低下することを抑制することができる。
すなわち、条件(1)〜条件(3)を満たす場合には、放電容器21の少なくとも一方側の表層を形成する合成石英ガラス中に、光が作用することによってSi−Si結合の生成源となりうるSi−F結合を形成することによって存在するフッ素量が小さくされ、これに伴って遊離した状態のフッ素(フッ素分子)が存在されることとなり、それに加えて酸素分子が存在しているため、光の作用によってSi−F結合に解離が生じた場合であっても、遊離した状態のフッ素のリザーバー機能によって切断されたSi−F結合に基づいて新たにSi−F結合が形成されると共に、酸素分子の作用によって切断されたSi−F結合に基づいてSi−O−Si結合が形成されることから、Si−Si結合の形成が阻害される。
また、条件(1)、条件(2)および条件(4)を満たす場合には、放電容器の少なくとも一方側の表層を形成する合成石英ガラス中に、光が作用することによってSi−Si結合の生成源となりうるSi−F結合を形成することによって存在するフッ素量が小さくされ、これに伴って遊離した状態のフッ素(フッ素分子)が存在されることとなり、それに加えてSi−OHダングリングボンドを形成することによって存在することとなるOH基が存在しているため、Si−F結合の濃度が小さくされていることに伴って遊離した状態のフッ素と共に存在することとなったSi−Si結合が、その製造工程において低減されてSi−Si結合の濃度自体が小さくされており、しかも光の作用によってSi−F結合に解離が生じた場合であっても、遊離した状態のフッ素のリザーバー機能によって切断されたSi−F結合に基づいて新たにSi−F結合が形成されると共に、OH基による紫外光歪の成長緩和効果により、Si−Si結合の形成が阻害される。
また、放電容器21が、少なくとも一方側の表層において、酸素分子およびOH基のいずれか一方を特定の濃度で含有するものであることにより、酸素分子の作用および/またはOH基の作用を確実に得ることができるので、高い耐紫外光特性を確実に得ることができ、放電ランプに、より一層優れた耐紫外光特性が得られる、すなわち高い真空紫外光の放射強度を得ることができると共に、長期間にわたって高い光放射強度特性を維持することができる。
<光放射装置>
本発明の光放射装置は、光源として、波長190nm以下の紫外光を含む光を放電容器の内部で放射する放電ランプが用いられており、この放電ランプからの光を放射するための合成石英ガラス製の光放射窓が備えられてなる構成を有してなるものである。
そして、この本発明の光放射装置においては、光放射窓として、当該光放射窓全体あるいは例えば光放射用部分の部材などの光放射窓の一部を形成する合成石英ガラスのフッ素含有量(濃度)が適正化され、かつ、少なくとも一方側の表層において、肉厚中心部との関係から、合成石英ガラス中のSi−F結合の濃度と共に、酸素分子の濃度およびOH基の濃度の少なくともいずれか一方が特定の範囲とされた特定の材質のものが用いられており、これにより、真空紫外光における短波長側の透過特性の改善が図られている。
すなわち、本発明の光放射装置においては、合成石英ガラスよりなる光放射窓は、本発明の放電ランプと同様に、上記の条件(1)および条件(2)を満たすと共に、条件(3)または条件(4)を満たすものである。
また、本発明の光放射装置は、光放射窓が条件(1)および条件(2)と共に、条件(3)または条件(4)のうちの少なくとも一方の条件を満たすものであればよいが、これらの条件(1)〜条件(4)のすべてを満たすものであることが好ましい。
以上の本発明の光放射装置においては、真空紫外光を含む光を放射する放電ランプを光源として用いていることから、当該放電ランプの周囲に近接して配置される光放射窓には、放電ランプから放射される、合成石英ガラスにおける紫外吸収端付近の光が照射され、しかも放電ランプの放電容器からの熱が享受されることなるが、光放射窓として、当該光放射窓の少なくとも一部を形成する合成石英ガラスのフッ素の含有量が適正化され、かつ、少なくとも一方側の表層において、肉厚中心部との関係から、合成石英ガラス中のSi−F結合の濃度と共に、酸素分子の濃度およびOH基の濃度の少なくともいずれか一方が特定の範囲とされた特定の材質のものが用いられていることから、前述の本発明の放電ランプと同様の作用効果が得られ、その結果、真空紫外光の放射強度が高く、しかも、長期間にわたって高い光放射強度特性を維持することができ、従って、優れた耐紫外光特性を得ることができる。
以下、本発明の効果を確認するために行った実験例について説明する。
<実験例1>
この実験例1は、合成石英ガラス中におけるフッ素の含有量を検討するために行なった。
〔エキシマランプの作製〕
各々フッ素が下記表1に従って互いに異なる含有量(濃度)で含有された8種類の合成石英ガラス(原材料)を用いて8つの放電容器を形成し、内側電極および外側電極を所定位置に配設すると共にキセノンガスを放電空間内に充填することにより、図1に示す構成を有する8本のエキシマランプ(「ランプ11」〜「ランプ18」)を作製した。
得られたランプ11〜ランプ18は、各々、放電容器の外側管および内側管を構成する放電容器用素管が、大気中において、加熱温度800℃の条件で5時間にわたって加熱処理することによって作製されたものである。また、具体的に、外側管の外径が40mm、外側管の肉厚が2mm、内側管の外径が20mm、内側管の肉厚が1mm、発光長が400mmである放電容器を備え、この放電容器の内部に、キセノンガスが封入量66kPaで封入されてなる構成を有している。
このようにして得られたランプ11〜ランプ18の各々について、ランプ寿命試験を行うと共に、波長190nm以下の真空紫外光の放射強度を測定した。結果を下記表1に示す。
寿命試験は、ランプをランプ電力が400Wとなる点灯条件で連続点灯させて、放電容器が破損するまでの時間を寿命時間とした。
放射強度は、ランプから30mm離れた位置にて光量計により測定した。
また、各ランプを構成するものと同一のガラス管(原材料)の一部に対してランプを作製する際と同様の処理を施した後、各々15mm角程度の大きさのサンプルを3個切り出し、上記方法により、肉厚中心における仮想温度Tfを測定した。結果を下記表1に示す。
Figure 0005181729
実験例1の結果から明らかなように、フッ素が7000wt.ppm以上30000wt.ppm以下の割合で含有された合成石英ガラスからなる放電容器を具えた、条件(1)を満たすランプ13〜ランプ17は、いずれも、真空紫外光を高い放射強度で放射することができると共に、長いランプ寿命を有することが確認された。
ここに、このような二重管構造のキセノンエキシマランプにおいては、例えば3000時間以上のランプ寿命が求められおり、ランプ13〜ランプ17は、このような要請を十分に満足するものであることが確認された。
これに対して、合成石英ガラスにおけるフッ素含有量が7000wt.ppmより少なく、条件(1)を満たさないランプ11およびランプ12は、ランプ13〜17に比して真空紫外光の放射強度が低く、しかも、上記要請を満足するランプ寿命が得られないことが確認された。また、合成石英ガラスにおけるフッ素含有量が30000wt.ppmより多く、条件(1)を満たさないランプ18も、ランプ13〜17に比して真空紫外光の放射強度が低く、しかも、上記要請を満足するランプ寿命が得られないことが確認された。
従って、放電ランプおよび光放射装置においては、放電容器および光放射窓を形成する合成石英ガラスにおけるフッ素の含有量を7000wt.ppm以上30000wt.ppm以下とすることにより、真空紫外光を高い放射強度で放射することができると共に長い使用寿命が得られることが確認された。
<実験例2>
この実験例2は、合成石英ガラス中における酸素分子の濃度を検討するために行なった。
〔エキシマランプの作製〕
フッ素の含有量(濃度)が7000wt.ppmの合成石英ガラス(原材料)を用いて5つの放電容器を形成し、内側電極および外側電極を所定位置に配設すると共にキセノンガスを放電空間内に充填することにより、図1に示す構成を有する4本のエキシマランプ(「ランプ21」〜「ランプ24」)を作製した。
得られたランプ21〜ランプ24は、各々、放電容器の外側管を構成する外側管構成用素管が、原材料である合成石英ガラスからなるインゴットを形成し、このインゴットを成形することによってパイプ状体を得、このパイプ状体を円筒状の加熱炉内に挿入し、この加熱炉内の温度を1150℃に保った状態で5〜10分間かけて通過させることによって加熱処理した後、表2に示す酸素ドープ処理条件にて酸素ドープ処理することによって作製されたものである。
なお、これらのエキシマランプは、実験例1において作製したエキシマランプと同様の具体的構成を有するものである。また、実験例2におけるランプ13は、実験例1で作製したものと同一のものである。
このようにして得られたランプ13およびランプ21〜ランプ24の各々について、波長190nm以下の真空紫外光の初期放射強度および3000時間連続点灯後の放射強度を測定した。また得られた初期放射強度と3000時間連続点灯後の放射強度とに基づいて放射強度維持率を算出した。結果を下記表2に示す。
放射強度は、ランプから30mm離れた位置にて光量計により測定した。
また、上記方法により、放電容器の表面から深さ200μmまでの厚み部分および肉厚中心部の各々を形成する合成石英ガラス中の酸素分子の平均濃度を確認した。結果を下記表2に示す。
更に、各エキシマランプについて、上記実験例1と同様にして、肉厚中心における仮想温度Tfを測定した。結果を下記表2に示す。
なお、この実験例においては、加熱処理することによってSi−F結合濃度の低下が顕著であった(ランプ21〜ランプ24に係る結果を参照)外表面側(外側管の外表面側)の測定値のみを代表例として示す。
Figure 0005181729
実験例2の結果から明らかなように、フッ素が7000wt.ppmで含有された合成石英ガラスからなる放電容器を具えたエキシマランプにおいて、当該放電容器の一部の少なくとも一方の表面における表層(具体的に、外側管の外表面側の表層)を形成する合成石英ガラス中のSi−F結合の濃度および酸素分子の濃度が肉厚中心部に係る各濃度よりも高く、条件(1)〜条件(2)を満たし、かつ前記少なくとも一方の表面から深さ200μmまでの厚み部分を形成する合成石英ガラスの酸素分子の平均濃度が0.8×1016個/cc以上である、ランプ21〜ランプ24は、真空紫外光を高い放射強度で放射することができると共に、高い真空紫外光の放射強度維持率を有することが確認された。
これに対して、合成石英ガラスがフッ素を適正な範囲で含有し、また放電容器の一部の少なくとも一方の表面における表層(具体的に、外側管の外表面側の表層)に係るSi−F結合の濃度が適正であるにも拘らず、当該表層および肉厚中心部における酸素分子の濃度が同等であって条件(3)を満たさず、かつ特定の厚み部分に係る酸素分子の平均濃度が0.8×1016個/cc未満である、ランプ13は、十分な真空紫外光の放射強度維持率を有さないことが確認された。
なお、ランプ21は、十分に高い真空紫外光の放射強度維持率を有するものであることが確認されたが、仮想温度が660℃と低いことから、このランプ21を作製するために200時間以上もの長い時間の酸素ドープ処理を施すことが必要とされた。
従って、放電ランプおよび光放射装置においては、放電容器および光放射窓を形成する合成石英ガラスにおける酸素分子の平均濃度を0.8×1016個/cc以上とすることにより、確実に所望の効果が得られることが確認された。
また、工業的観点から、仮想温度を700℃以上930℃以下とすることが好ましいことが確認された。
<実験例3>
この実験例3は、合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度と、酸素分子の濃度との関係を検討するために行なった。
〔エキシマランプの作製〕
フッ素の含有量(濃度)が10500wt.ppmまたは8000wt.ppmであって、上記方法により測定される仮想温度が表3に示す値である合成石英ガラス(原材料)を用いて4つの放電容器を形成し、内側電極および外側電極を所定位置に配設すると共にキセノンガスを放電空間内に充填することにより、図1に示す構成を有する4本のエキシマランプ(「ランプ31」〜「ランプ34」)を作製した。
得られたランプ31は、放電容器の外側管を構成する外側管構成用素管が、両方の表面の表層にSi−F結合の濃度の小さい部分を形成することなしに、酸素ドープ処理(酸素ドープ処理条件:酸素圧力1気圧、加熱温度750℃、処理時間4時間)をすることによって作製され、その結果、放電容器の両方の表面の表層および肉厚中心部の各々を形成する合成石英ガラス中のSi−F結合の濃度が同等であるものである。
また、ランプ32〜ランプ34は、各々、放電容器の外側管を構成する外側管構成用素管が、適宜の条件で加熱処理した後、酸素ドープ処理(酸素ドープ処理条件:酸素圧力1気圧、加熱温度800℃、処理時間5時間)することによって作製されたものである。
なお、これらのエキシマランプは、実験例1において作製したエキシマランプと同様の具体的構成を有するものである。また、実験例3におけるランプ15は、実験例1で作製したものと同一のものであり、放電容器の両方の表面の表層を形成する合成石英ガラスのSi−F結合の濃度および酸素分子の濃度が肉厚中心部と同等であるものである。
このようにして得られたランプ15およびランプ31〜ランプ34の各々について、実験例2と同様の手法によって初期放射強度および3000時間連続点灯後の放射強度を測定し、放射強度維持率を算出した。結果を下記表3に示す。
また、実験例2と同様にして、放電容器の表面から深さ200μmまでの厚み部分および肉厚中心部の各々を形成する合成石英ガラス中の酸素分子の平均濃度を確認した。結果を下記表3に示す。
更に、各ランプについて、上記実験例1と同様にして、肉厚中心における仮想温度Tfを測定した。結果を下記表3に示す。
なお、この実験例においては、加熱処理することによってSi−F結合濃度の低下が顕著であった(ランプ31〜ランプ34に係る結果を参照)外表面側(外側管の外表面側)の測定値のみを代表例として示す。
Figure 0005181729
実験例3の結果から明らかなように、フッ素が8000wt.ppmまたは10500wt.ppmで含有された合成石英ガラスからなる放電容器を具えたエキシマランプにおいて、当該放電容器の一部の少なくとも一方の表面における表層(具体的に、外側管の外表面側の表層)を形成する合成石英ガラス中のSi−F結合の濃度および酸素分子の濃度が肉厚中心部に係る各濃度よりも高く、条件(1)〜条件(2)を満たし、かつ放電容器の当該表面から深さ200μmまでの厚み部分を形成する合成石英ガラスの酸素分子の平均濃度が0.8×1016個/cc以上である、ランプ32〜ランプ34は、真空紫外光を高い放射強度で放射することができると共に、高い真空紫外光の放射強度維持率を有することが確認された。
これに対して、合成石英ガラスがフッ素を適正な範囲で含有したものであるにも拘らず、放電容器の両方の表面の表層および肉厚中心部の各々における、Si−F結合の濃度および酸素分子の濃度が共に同等であって条件(2)および条件(3)を満たさず、かつ特定の厚み部分に係る酸素分子の平均濃度が0.8×1016個/cc未満であるランプ15は、十分な真空紫外光の放射強度維持率を有さないことが確認された。
また、合成石英ガラスがフッ素を適正な範囲で含有し、また放電容器の一部の少なくとも一方の表面における表層(具体的に、外側管の外表面側の表層)に係る酸素分子の濃度が適正であるにも拘らず、当該表層および肉厚中心の各々におけるSi−F結合の濃度が同等である、条件(2)を満たさないランプ31は、十分な真空紫外光の放射強度維持率を有さないことが確認された。
従って、放電ランプおよび光放射装置においては、放電ランプおよび光放射装置においては、放電容器および光放射窓の少なくとも一方の表面の表層を形成する合成石英ガラス中に酸素分子と共に、遊離した状態のフッ素が存在することにより、所望の効果が得られることが確認された。
すなわち、両方の表面において、表層を形成する合成石英ガラス中に遊離した状態のフッ素が存在せず、酸素分子が存在することのみによっては、光放射強度維持特性の低下を十分に抑制することができない。
また、熱処理過程を経ずに、酸素ドープ処理を施した場合には、酸素分子を導入することができても、遊離した状態のフッ素を存在させることができないことが確認された。
<実験例4>
この実験例4は、合成石英ガラス中におけるOH基の濃度を検討するために行なった。
〔エキシマランプの作製〕
フッ素の含有量(濃度)が10500wt.ppmの合成石英ガラス(原材料)を用いて9つの放電容器を形成し、内側電極および外側電極を所定位置に配設すると共にキセノンガスを放電空間内に充填することにより、図1に示す構成を有する9本のエキシマランプ(「ランプ41」〜「ランプ48」)を作製した。
得られたランプ41およびランプ44は、各々、放電容器の外側管を構成する外側管構成用素管が、原材料である合成石英ガラスからなるインゴットを形成し、このインゴットを成形することによってパイプ状体を得、このパイプ状体を円筒状の加熱炉を用いて適宜の条件で加熱処理した後、電気炉を用い、予め求めた仮想温度に基づいて設定した条件(設定加熱温度および加熱時間)によって仮想温度Tfを整えた後、ドライ大気中において、加熱温度800℃の条件で5時間にわたって加熱処理し、その後、表4に示すOH基ドープ処理条件によってOH基ドープ処理することによって作製されたものである。
また、ランプ42は、放電容器の外側管を構成する外側管構成用素管が、前記ランプ41およびランプ44の作製方法と同様にして原料からインゴットを形成してパイプ状体を得、このパイプ状体を加熱処理して仮想温度Tfを整えた後、ドライ大気中において、加熱温度650℃の条件で200時間にわたって加熱処理し、その後、表4に示すOH基ドープ処理条件によってOH基ドープ処理することによって作製されたものである。
また、ランプ43は、放電容器の外側管を構成する外側管構成用素管が、前記ランプ41およびランプ44の作製方法と同様にして原料からインゴットを形成してパイプ状体を得、このパイプ状体を加熱処理して仮想温度Tfを整えた後、ドライ大気中において、加熱温度780℃の条件で5時間にわたって加熱処理し、その後、表4に示すOH基ドープ処理条件によってOH基ドープ処理することによって作製されたものである。
また、ランプ45〜ランプ48は、各々、放電容器の外側管を構成する外側管構成用素管が、前記ランプ41およびランプ44の作製方法と同様にして原料からインゴットを形成してパイプ状体を得、このパイプ状体を加熱処理した後、表4に示すOH基ドープ処理条件によってOH基ドープ処理することによって作製されたものである。
なお、これらのエキシマランプは、実験例1において作製したエキシマランプと同様の具体的構成を有するものである。また、実験例4におけるランプ15は、実験例1で作製したものと同一のものである。
このようにして得られたランプ15およびランプ41〜ランプ48の各々について、実験例2と同様の手法によって初期放射強度および3000時間連続点灯後の放射強度を測定し、放射強度維持率を算出した。結果を下記表4に示す。
また、FTIR法(フーリエ変換型赤外分光法)により、放電容器の表面から深さ100μmまでの厚み部分および肉厚中心部の各々を形成する合成石英ガラス中のOH基の平均濃度を確認した。結果を下記表4に示す。
更に、各ランプについて、上記実験例1と同様にして、肉厚中心における仮想温度Tfを測定した。結果を下記表4に示す。
なお、この実験例においては、加熱処理することによってSi−F結合濃度の低下が顕著であった(41〜ランプ48に係る結果を参照)外表面側(外側管の外表面側)の測定値のみを代表例として示す。
Figure 0005181729
表4において、「不活性ガス」とは、具体的に窒素ガスである。
実験例4の結果から明らかなように、フッ素が10500wt.ppmで含有された合成石英ガラスからなる放電容器を具えたエキシマランプにおいて、当該放電容器の一部の少なくとも一方の表面における表層(具体的に、外側管の外表面側の表層)を形成する合成石英ガラス中のSi−F結合の濃度および酸素分子の濃度が肉厚中心部に係る各濃度よりも高く、条件(1)および条件(3)を満たし、かつ当該表面から深さ100μmまでの厚み部分を形成する合成石英ガラスのOH基の平均濃度が70wt.ppm以上である、ランプ41〜ランプ48は、真空紫外光を高い放射強度で放射することができると共に、高い真空紫外光の放射強度維持率を有することが確認された。
これに対して、合成石英ガラスがフッ素を適正な範囲で含有したものであるにも拘らず、放電容器の両方の表面の表層および肉厚中心部の各々における、Si−F結合の濃度およびOH基の濃度が共に同等であって条件(2)および条件(4)を満たさず、かつ特定の厚み部分に係るOH基の平均濃度が70wt.ppm未満であるランプ15は、十分な真空紫外光の放射強度維持率を有さないことが確認された。
従って、放電ランプおよび光放射装置においては、放電容器および光放射窓を形成する合成石英ガラスにおけるOH基の平均濃度を70wt.ppm以上とすることにより、確実に所望の効果が得られることが確認された。
<実験例5>
この実験例5は、インゴット作製過程、パイプ成形過程および熱処理過程をこの順に経た後、酸素ドープ処理およびOH基ドープ処理を施す、すなわちインゴット作製過程、パイプ成形過程、熱処理過程、酸素ドープ処理過程およびOH基ドープ処理過程のすべてを経ることによって得られる放電容器の材質および特性を確認するために行なった。
〔エキシマランプの作製〕
フッ素の含有量(濃度)が10500wt.ppmの合成石英ガラス(原材料)を用いて7つの放電容器を形成し、内側電極および外側電極を所定位置に配設すると共にキセノンガスを放電空間内に充填することにより、図1に示す構成を有する7本のエキシマランプ(「ランプ51」〜「ランプ57」)を作製した。
得られたランプ51〜ランプ55は、各々、放電容器の外側管を構成する外側管構成用素管が、原材料である合成石英ガラスからなるインゴットを形成し、このインゴットを成形することによってパイプ状体を得、このパイプ状体を円筒状の加熱炉と用いて適宜の条件で加熱処理した後、大気中において、加熱温度750℃の条件で5時間にわたって加熱処理し、その後、酸素雰囲気中において水蒸気を発生させた環境下において適宜の条件(加熱温度600〜1000℃、処理時間1〜30時間)で加熱処理を行ない、これにより、OH基ドープ処理と酸素分子ドープ処理とを同時に施すことによって作製されたものである。
また、ランプ56は、放電容器の外側管を構成する外側管構成用素管が、原材料である合成石英ガラスからなるインゴットを形成し、このインゴットを成形することによってパイプ状体を得、このパイプ状体を円筒状の加熱炉と用いて適宜の条件で加熱処理した後、大気中において、加熱温度750℃の条件で5時間にわたって加熱処理し、その後、先ず、酸素分子ドープ処理(酸素ドープ処理条件:酸素圧力1気圧、加熱温度750℃、処理時間25時間)し、次いで、OH基ドープ処理(OH基ドープ処理条件:不活性ガス(窒素ガス)圧力1気圧、水蒸気濃度10%、加熱温度750℃、処理時間2時間)することによって作製されたものである。
また、ランプ57は、放電容器の外側管を構成する外側管構成用素管が、原材料である合成石英ガラスからなるインゴットを形成し、このインゴットを成形することによってパイプ状体を得、このパイプ状体を円筒状の加熱炉と用いて適宜の条件で加熱処理した後、大気中において、加熱温度750℃の条件で5時間にわたって加熱処理し、その後、先ずOH基ドープ処理(OH基ドープ処理条件:不活性ガス(窒素ガス)圧力1気圧、水蒸気濃度10%、加熱温度750℃、処理時間2.5時間)し、その後、酸素分子ドープ処理(酸素ドープ処理条件:酸素圧力1気圧、加熱温度750℃、処理時間25時間)することによって作製されたものである。
なお、これらのエキシマランプは、実験例1において作製したエキシマランプと同様の具体的構成を有するものである。また、いすれのランプの製造工程においても、円筒状の加熱炉を用いた加熱処理は、加熱温度の条件が1100〜1300℃の範囲、処理時間が3〜30分間の範囲の条件によって行なった。
このようにして得られたランプ51〜ランプ57の各々について、実験例2と同様の手法によって初期放射強度および3000時間連続点灯後の放射強度を測定し、放射強度維持率を算出した。結果を下記表5に示す。
また、実験例2と同様にして、放電容器の表面から深さ200μmまでの厚み部分および肉厚中心部の各々を形成する合成石英ガラス中の酸素分子の平均濃度を確認すると共に、実験例4と同様にして、放電容器の表面から深さ100μmまでの厚み部分および肉厚中心部の各々を形成する合成石英ガラス中のOH基の平均濃度を確認した。結果を下記表5に示す。
更に、各ランプについて、上記実験例1と同様にして、肉厚中心における仮想温度Tfを測定した。結果を下記表5に示す。
なお、この実験例においては、加熱処理することによってSi−F結合濃度の低下が顕著であった外表面側(外側管の外表面側)の測定値のみを代表例として示す。
Figure 0005181729
実験例5の結果から明らかなように、条件(1)〜条件(4)のすべてを満たすランプ51〜ランプ57は、真空紫外光を高い放射強度で放射することができると共に、高い真空紫外光の放射強度維持率を有することが確認された。
また、放電容器の製造工程において、インゴット作製過程、パイプ成形過程および熱処理過程をこの順に経た後、酸素ドープ処理およびOH基ドープ処理を共に施した場合には、条件(1)〜条件(4)のすべての条件を満たす放電容器が得られることが確認された。
また、インゴット作製過程、パイプ成形過程および熱処理過程をこの順に経た後であれば、酸素ドープ処理およびOH基ドープ処理を同時に施しても、また、個別に、いずれの処理を先に施した場合にも、条件(1)〜条件(4)のすべての条件を満たす放電容器が得られることが確認された。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、本発明の放電ランプは、キセノンエキシマランプに限らず、真空紫外光を含む光を放射する放電ランプであればよく、また、放電容器の一部が特定の材質を有するもの(例えば、二重管構造を有する放電容器の外側管のみが特定の材質のもの、および光放射用の窓部材のみが特定の材質のものなど)であってもよいが、勿論、放電容器全体が特定の材質を有するものであってもよい。
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
フッ素の含有量(濃度)が7000wt.ppmの合成石英ガラス(原材料)を用いて放電容器を形成し、内側電極および外側電極を所定位置に配設すると共にキセノンガスを放電空間内に充填することにより、図1に示す構成を有するエキシマランプ(以下、「放電ランプ(A)」ともいう。)を作製した。
この放電ランプ(A)は、放電容器の外側管を構成する外側管構成用素管が、図3のフローチャートに従って作製されたものであり、実験例2におけるランプ24と同様のものである。
この放電ランプ(A)について、ランプ電力が400Wとなる点灯条件で4000時間連続点灯させ、波長190nm以下の真空紫外光の初期放射強度および1000時間ごとの放射強度を、ランプから30mm離れた位置にて光量計によって測定した。結果を図9におけるプロット「●」によって示す。
〔実施例2〕
フッ素の含有量(濃度)が10500wt.ppmの合成石英ガラス(原材料)を用いて放電容器を形成し、内側電極および外側電極を所定位置に配設すると共にキセノンガスを放電空間内に充填することにより、図1に示す構成を有するエキシマランプ(以下、「放電ランプ(B)」ともいう。)を作製した。
この放電ランプ(B)は、放電容器の外側管を構成する外側管構成用素管が、図4のフローチャートに従って作製されたものであり、実験例4におけるランプ47と同様のものである。
この放電ランプ(B)について、実施例1と同様の手法によって放射強度を測定した。結果を図9におけるプロット「○」によって示す。
〔実施例3〕
実施例2において、OH基ドープ処理の後、更に酸素ドープ処理を施したこと以外は当該実施例2と同様にしてエキシマランプ(以下、「放電ランプ(C)」ともいう。)を作製した。
この放電ランプ(C)は、実験例5におけるランプ55と同様のものである。
この放電ランプ(C)について、実施例1と同様の手法によって放射強度を測定した。結果を図9におけるプロット「□」によって示す。
〔比較例1〕
フッ素の含有量(濃度)が7000wt.ppmの合成石英ガラス(原材料)を用いて放電容器を形成し、内側電極および外側電極を所定位置に配設すると共にキセノンガスを放電空間内に充填することにより、図1に示す構成を有するエキシマランプ(以下、「比較用放電ランプ(A)」ともいう。)を作製した。
この比較用放電ランプ(A)は、放電容器の外側管を構成する外側管構成用素管が、図10のフローチャートに従って作製されたものであり、放電容器の外側管が図11に示す組成を有するものである。
この比較用放電ランプ(A)について、実施例1と同様の手法によって放射強度を測定した。結果を図9におけるプロット「◆」によって示す。
以上の実施例1〜実施例3および比較例1の結果から、本発明に係る放電ランプによれば、真空紫外光の放射強度が大きく、長期間にわたって高い光放射強度特性が維持されることが確認された。
また、条件(1)〜条件(3)を満たすことによっては、高い光放射強度および光放射強度維持特性が得られ、また、条件(1)、条件(2)および条件(4)を満たすことによっては、条件(1)〜条件(3)を満たす場合に比してより一層高い光放射強度および光放射強度維持特性が得られることが確認された。
更に、条件(1)〜条件(4)のすべての条件を満たすことによっては、更に高い光放射強度維持特性が得られることが確認された。
本発明に係るキセノンエキシマランプの一例における構成の概略を示す説明用断面図である。 図1に示すキセノンエキシマランプの、放電容器の管軸に垂直な断面を示す断面図である。 図1に示すキセノンエキシマランプの放電容器の製造工程の一例を示すフローチャートである。 図1に示すキセノンエキシマランプの放電容器の製造工程の他の例を示すフローチャートである。 図1に示すキセノンエキシマランプの放電容器の製造工程における熱処理過程において得られる熱処理体を形成する合成石英ガラスの組成を示す説明図である。 図1に示すキセノンエキシマランプの放電容器の製造工程における酸素ドープ処理過程において得られる酸素ドープ処理体を形成する合成石英ガラスの組成を示す説明図である。 図1に示すキセノンエキシマランプの放電容器の製造工程におけるOH基ドープ過程において得られるOH基ドープ処理体を形成する合成石英ガラスの組成を示す説明図である。 図1に示すキセノンエキシマランプの放電容器を形成する合成石英ガラスの組成であって、図4のフローチャートに係るOH基ドープ処理過程後に、酸素ドープ処理を施すことによって得られた場合の合成石英ガラスの組成を示す説明図である。 実施例1〜実施例3および比較例1に係る放電ランプの真空紫外光の放射強度維持率を示すグラフである。 従来の合成石英ガラス製の放電容器の製造工程の一例を示すフローチャートである。 図10に示すフローチャートに従って製造された合成石英ガラス製の放電容器を形成する合成石英ガラスの組成を示す説明図である。 従来の合成石英ガラス製の放電容器の製造工程の他の例を示すフローチャートである。
符号の説明
20 エキシマランプ
21 放電容器
22 外側管
23 内側管
24 外側電極
25 内側電極
26 電源装置
27 排気管の残部
H 放電空間

Claims (8)

  1. 合成石英ガラス製の放電容器を具備し、波長190nm以下の紫外光を含む光を放電容器の内部で放射する放電ランプにおいて、
    前記放電容器の少なくとも一部において、当該放電容器を形成する合成石英ガラス中のフッ素の含有量が7000wt.ppm以上30000wt.ppm以下であり、少なくとも一方の表面において、表層を形成する合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度が、肉厚中心部を形成する合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度よりも低く、かつ、当該表面の表層を形成する合成石英ガラス中における酸素分子の濃度が、肉厚中心部を形成する合成石英ガラス中における酸素分子の濃度よりも高いことを特徴とする放電ランプ。
  2. 放電容器における前記少なくとも一方の表面の表層において、当該表層を形成する合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度が、肉厚中心部側から当該表面に向かう厚み方向に変化しており、
    前記少なくとも一方の表面から深さ200μmまでの厚み部分における酸素分子の平均濃度が0.8×1016個/cc以上であることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。
  3. 合成石英ガラス製の放電容器を具備し、波長190nm以下の紫外光を含む光を放電容器の内部で放射する放電ランプにおいて、
    前記放電容器の少なくとも一部において、当該放電容器を形成する合成石英ガラス中のフッ素の含有量が7000wt.ppm以上30000wt.ppm以下であり、少なくとも一方の表面において、表層を形成する合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度が、肉厚中心部を形成する合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度よりも低く、かつ、当該表面の表層を形成する合成石英ガラス中におけるOH基の濃度が、肉厚中心部を形成する合成石英ガラス中におけるOH基の濃度よりも高いことを特徴とする放電ランプ。
  4. 放電容器における前記少なくとも一方の表面の表層において、当該表層を形成する合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度が、肉厚中心部側から当該表面に向かう厚み方向に変化しており、
    前記少なくとも一方の表面から深さ100μmまでの厚み部分におけるOH基の平均濃度が70wt.ppm以上であることを特徴とする請求項3に記載の放電ランプ。
  5. 波長190nm以下の紫外光を含む光を放電容器の内部で放射する放電ランプを具備し、当該放電ランプからの光を放射するための合成石英ガラス製の光放射窓を備えた光放射装置において、
    前記光放射窓の少なくとも一部において、当該光放射窓を形成する合成石英ガラス中のフッ素の含有量が7000wt.ppm以上30000wt.ppm以下であり、少なくとも一方の表面において、表層を形成する合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度が、肉厚中心部を形成する合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度よりも低く、かつ、当該表面の表層を形成する合成石英ガラス中における酸素分子の濃度が、肉厚中心部を形成する合成石英ガラス中における酸素分子の濃度よりも高いことを特徴とする光放射装置。
  6. 光放射窓における前記少なくとも一方の表面の表層において、当該表層を形成する合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度が、肉厚中心部側から当該表面に向かう厚み方向に変化しており、
    前記少なくとも一方の表面から深さ200μmまでの厚み部分における酸素分子の平均濃度が0.8×1016個/cc以上であることを特徴とする請求項5に記載の光放射装置。
  7. 波長190nm以下の紫外光を含む光を放電容器の内部で放射する放電ランプを具備し、当該放電ランプからの光を放射するための合成石英ガラス製の光放射窓を備えた光放射装置において、
    前記光放射窓の少なくとも一部において、当該光放射窓を形成する合成石英ガラス中のフッ素の含有量が7000wt.ppm以上30000wt.ppm以下であり、少なくとも一方の表面において、表層を形成する合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度が、肉厚中心部を形成する合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度よりも低く、かつ、当該表面の表層を形成する合成石英ガラス中におけるOH基の濃度が、肉厚中心部を形成する合成石英ガラス中におけるOH基の濃度よりも高いことを特徴とする光放射装置。
  8. 光放射窓における前記少なくとも一方の表面の表層において、当該表層を形成する合成石英ガラス中におけるSi−F結合の濃度が、肉厚中心部側から外表面に向かう厚み方向に変化しており、
    前記少なくとも一方の表面から深さ100μmまでの厚み部分におけるOH基の平均濃度が70wt.ppm以上であることを特徴とする請求項7に記載の光放射装置。
JP2008049945A 2008-02-29 2008-02-29 放電ランプおよび光放射装置 Active JP5181729B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008049945A JP5181729B2 (ja) 2008-02-29 2008-02-29 放電ランプおよび光放射装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008049945A JP5181729B2 (ja) 2008-02-29 2008-02-29 放電ランプおよび光放射装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009206050A JP2009206050A (ja) 2009-09-10
JP5181729B2 true JP5181729B2 (ja) 2013-04-10

Family

ID=41148099

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008049945A Active JP5181729B2 (ja) 2008-02-29 2008-02-29 放電ランプおよび光放射装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5181729B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US10032620B2 (en) * 2014-04-30 2018-07-24 Kla-Tencor Corporation Broadband light source including transparent portion with high hydroxide content

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06338301A (ja) * 1993-05-27 1994-12-06 Ushio Inc 誘電体バリヤ放電ランプとそれを使用した処理方法
JP2002128536A (ja) * 2000-10-24 2002-05-09 Toshiba Ceramics Co Ltd 合成石英ガラス

Also Published As

Publication number Publication date
JP2009206050A (ja) 2009-09-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8410458B2 (en) Optical filter material made of gallium-doped quartz glass, filter component and method for irradiation by means of a UV radiation source
WO2009096557A1 (ja) エネルギー伝送用または紫外光伝送用光ファイバプリフォームおよびその製造方法
JP5706623B2 (ja) 合成シリカガラス及びその製造方法
JPH07215731A (ja) 紫外線ランプ用高純度シリカガラスおよびその製造方法
JP4470054B2 (ja) 合成石英ガラス及びその製造方法
JP4170719B2 (ja) 光学用合成石英ガラス部材の製造方法及び光学用合成石英ガラス部材
JP5181729B2 (ja) 放電ランプおよび光放射装置
JP4946960B2 (ja) 合成石英ガラスおよびその製造方法
JP4736900B2 (ja) ショートアーク型水銀ランプ
JP5365826B2 (ja) 放電ランプ
JP5368935B2 (ja) ファイバー用合成シリカガラス
JP4459608B2 (ja) 合成石英ガラス部材の製造方法
JP2008189482A (ja) 石英ガラスおよび石英ガラス成形品
JP2005310455A (ja) 紫外線ランプ
JP2003201124A (ja) 光学部材用合成石英ガラスおよびその製法
JP4294533B2 (ja) エキシマランプ用ガラス、エキシマランプ用放電容器及びエキシマランプ
JP2005306650A (ja) 合成石英管
JP2009203142A (ja) フッ素添加石英ガラス
JP4526844B2 (ja) 波長変換シリカガラス
JP2003201125A (ja) 合成石英ガラスおよびその製造方法
EP2508491B1 (en) A synthetic silica glass, especially for the cladding of an optical fiber
JPH07267674A (ja) 短波長紫外線ランプ用高純度シリカガラス
JP2003201126A (ja) 光学部材用合成石英ガラスおよびその製造方法
JP2024021634A (ja) エキシマランプ
JP4302460B2 (ja) 耐紫外線光学材料の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100917

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120418

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120424

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20121218

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20121231

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5181729

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20160125

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250