以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るガス検出装置を示す構成図である。図1に示すように、ガス検出装置1は、センサ出力をもとに有極性ガスの濃度を算出するものであって、制御部10と、接触燃焼式ガスセンサ21を有するガスセンサ部20とを備えている。ここで、有極性ガスとは、分子内で正電荷と負電荷との重心が一致しないため、分子が電気的な双極子を有するガスであって、単に極性ガスともいう。このような有極性ガスは、例えば、エタノール、酢酸、ホルムアルデヒド及びトルエンなどが該当する。
制御部10は、ガスセンサ部20の駆動制御、及び、ガス濃度の算出等を行うものであって、例えばMPU(Microprocessor Unit)により構成されている。この制御部10は、センサ駆動制御部11、センサ出力取得部12、記憶部(記憶手段)13、被毒量検出部(被毒量検出手段)14、及び、濃度算出部15を有している。
センサ駆動制御部11は、駆動信号を出力して接触燃焼式ガスセンサ21を駆動制御するものである。センサ出力取得部12は、センサ駆動制御部11により駆動制御された接触燃焼式ガスセンサ21の出力電圧の情報を取得するものである。記憶部13は、後述の被毒量及び被毒レベルを記憶する不揮発性メモリである。被毒量検出部14は、接触燃焼式ガスセンサ21の被毒量を検出するものである。濃度算出部15は、センサ出力取得部12により取得された接触燃焼式ガスセンサ21の出力電圧の値に基づいて有極性ガスの濃度を算出するものである。また、濃度算出部15は、補正部15aを有している。補正部15aは、被毒量検出部14により検出され記憶部13に記憶された被毒量に応じてセンサ出力取得部12からの出力を補正するものである。このため、濃度算出部15は、補正部15aにより補正された出力電圧に基づいて正確なガス濃度を算出することとなる。
ガスセンサ部20は、接触燃焼式ガスセンサ21に加えて、各種抵抗R1〜R3、ブリッジ駆動回路22、計装アンプ23、及びA/D変換器24を有している。
接触燃焼式ガスセンサ21は、図1に示すように、2つの抵抗Rr,Rsを有し、これら抵抗Rr,Rsが抵抗R1,R2と共にブリッジ回路を構成している。抵抗R1は、一端がブリッジ駆動回路22側に接続され、他端が接続点Bにつながっている。抵抗R2は、一端がブリッジ駆動回路22側に接続され、他端が接続点Aにつながっている。センサ抵抗Rsは、抵抗R2と直列接続され、一端が接続点Aにつながっており、他端がグランド接続されている。リファレンス抵抗Rrは、抵抗R1と直列接続され、一端が接続点Bにつながっており、他端がグランド接続されている。
ブリッジ駆動回路22は、センサ駆動制御部11からの駆動信号に基づいて、ブリッジ回路に印加する電圧を制御するものである。このため、ブリッジ駆動回路22は、センサ駆動制御部11と共に、接触燃焼式ガスセンサ21に印加する電圧を制御する電圧印加手段を構成している。
図2は、図1に示した接触燃焼式ガスセンサ21の詳細を示す外観図であり、(a)は上面図を示し、(b)は断面図を示している。なお、図2(b)は図2(a)のA−A断面を示している。
図2(a)及び図2(b)に示す接触燃焼式ガスセンサ21は、半導体製造プロセス技術を用いて製造された超小型センサである。この接触燃焼式ガスセンサ21は、シリコンウェハ21a上に、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、及び酸化ハフニウム膜等からなる絶縁膜21bが形成されており、絶縁膜21b上にセンサ抵抗Rsとリファレンス抵抗Rrが設けられている。
センサ抵抗Rsは、白金からなる抵抗体であって、この抵抗体を包むように触媒層21sが設けられている。触媒層21sは、例えばパラジウムを担持したアルミナからなるPd/Al2O3によって構成されている。また、リファレンス抵抗Rrは、センサ抵抗Rsと同様に白金からなる抵抗体であって、この抵抗体を包むようにアルミナ層21rが設けられている。
また、シリコンウェハ21a上には3つのボンディングパッド21c〜21eが形成されている。第1ボンディングパッド21cは接続点Aとなる。第2ボンディングパッド21dはグランド接続される。また、第3ボンディングパッド21eは、接続点Bとなる。
さらに、シリコンウェハ21aは、センサ抵抗Rs及びリファレンス抵抗Rrに対応する位置に、裏面から異方性エッチングによって凹部21f,21gが形成されている。接触燃焼式ガスセンサ21は、これらの凹部21f,21gによって熱容量が小さくなっている。
再度、図1を参照する。計装アンプ23は、非反転入力端子と反転入力端子に入力する電圧の差を増幅するものである。この計装アンプ23は、非反転入力端子が接続点Aにつながっており、反転入力端子が接続点Bにつながっている。このため、計装アンプ23は、接続点Aと接続点Bとの電圧差を増幅することとなる。また、計装アンプ23には、可変抵抗R3が接続されている。可変抵抗R3はオフセット調整するためのものである。A/D変換器24は、計装アンプ23から出力されたアナログの電圧を入力し、A/D変換したうえで、センサ出力取得部12に出力するものである。
次に、本実施形態に係るガス検出装置1の基本動作を説明する。まず、センサ駆動制御部11はブリッジ駆動回路22に駆動信号を出力し、ブリッジ駆動回路22は接触燃焼式ガスセンサ21を低温駆動させる。これにより、接触燃焼式ガスセンサ21は有極性ガスの燃焼温度未満となり、有極性ガスが存在する雰囲気においては、センサ抵抗Rsを包んで設けられる触媒層21sに有極性ガスが付着することとなる。その後、ブリッジ駆動回路22は、センサ駆動制御部11からの駆動信号により、接触燃焼式ガスセンサ21を高温駆動させる。これにより、接触燃焼式ガスセンサ21は有極性ガスの燃焼温度にまで達し、有極性ガスが存在する雰囲気においては、低温駆動時に触媒層21sに付着していた有極性ガスが燃焼することとなる。
低温駆動から高温駆動に切り替えた際、接触燃焼式ガスセンサ21の温度上昇は接触燃焼式ガスセンサ21に供給されるエネルギに依存する。このため、有極性ガスの無い雰囲気で両抵抗Rs,Rrを同電圧で駆動すれば、両抵抗Rs,Rrが所定温度まで達する時間は等しくなる。一方、有極性ガスが存在する雰囲気において両抵抗Rs,Rrを同電圧で駆動すると、センサ抵抗Rsは、有極性ガスの燃焼時のエネルギによって、リファレンス抵抗Rrよりも早くに所定温度に達する。そして、温度に差が生じることから、両抵抗Rs,Rrの抵抗値にも差が生じてブリッジ回路のバランスが崩れる。これにより、計装アンプ23からの出力は、付着していた有極性ガスの分子量(すなわち濃度)に応じた値を示すこととなる。そして、濃度算出部15は、得られた出力に基づいて有極性ガスの濃度を算出することとなる。
なお、上記では、接触燃焼式ガスセンサ21を低温駆動させる際に、接触燃焼式ガスセンサ21に電圧を印加しているが、これに限らず、接触燃焼式ガスセンサ21を低温駆動させる際に電圧を遮断する構成であってもよい。
次に、本実施形態に係るガス検出装置1の特徴的動作の詳細について説明する。図3は、センサ抵抗Rsを包む触媒層21sの温度等を示す概念図であり、(a)は低温駆動及び高温駆動時の温度等を示し、(b)はセンサ部分として機能する領域を示している。上記したように、接触燃焼式ガスセンサ21は、低温駆動を行って触媒層21sに付着した有極性ガスを、高温駆動時に燃焼させて出力を得る。このため、触媒層21sのうち、低温駆動時に燃焼温度未満の吸着温度となり、高温駆動時に燃焼温度以上となる領域のみがセンサ部分として機能することとなる。
具体的に本実施形態に係るガス検出装置1は、図3に示すように、触媒層21sの中央部にある第1領域31のみを、低温駆動時に吸着温度とし、高温駆動時に燃焼温度以上としている。このため、第1領域31のみがセンサ部分として機能することとなる。すなわち、センサ抵抗Rsによって触媒層21sの中央部分が温められ易くなり、第1領域31の外側の領域が温められ難くなるため、第1領域31のみがセンサ部分として機能することとなる。
ここで、接触燃焼式ガスセンサ21は、3つの条件が成立する場合にシリコーン被毒してしまう。具体的に、接触燃焼式ガスセンサ21は、(1)被検ガス中にシロキサンが存在すること、(2)触媒層21sを有すること、及び(3)触媒温度が高温となること、を条件としてSiO2が形成され、シリコーン被毒が発生してしまう。従って、3条件を満たす触媒層21s上の第1領域31は、長期の使用によりシリコーン被毒してしまう。
図4は、センサ抵抗Rsを包む触媒層21sの温度等を示す第2の概念図であり、(a)は低温駆動及び高温駆動時の温度等を示し、(b)はセンサ部分として機能する領域を示している。触媒層21sの第1領域31がシリコーン被毒してしまった場合、本実施形態に係るガス検出装置1は、接触燃焼式ガスセンサ21の高温駆動時の温度を上昇させる(図4(a)参照)。これにより、第1領域31を含む第2領域32をセンサ部分として機能させることができる(図4(b)参照)。さらに、第2領域32がシリコーン被毒してしまった場合、ガス検出装置1は、接触燃焼式ガスセンサ21の高温駆動時の温度をさらに上昇させる。これにより、第1領域31及び第2領域32を含む第3領域33をセンサ部分として機能させることができる(図4(b)参照)。以後、センサ部分として機能している領域がシリコーン被毒する度に、高温駆動時の温度を上昇させることで、さらに外側の領域をセンサ部分として機能させることができる。
なお、図4に示す例の場合において、ガス検出装置1は高温駆動時の温度を高めることにあわせて、低温駆動時の温度を高めているが、これに限らず、低温駆動時の温度を一定としたまま、高温駆動時の温度を高めるようにしてもよい。なお、高温駆動時の温度を高めることにあわせて、低温駆動時の温度を高めた場合、被毒した領域に対し低温駆動時に燃焼温度以上の温度をかけることが可能となり、被毒した領域でのガス吸着を防ぐことができる。すなわち、被毒した領域にガス感度が僅かに残っているような場合に、その僅かなガス感度によって影響を受けないようにすることができる。そして、どの検出領域をセンサ部分として機能させた場合においても吸着量のバラツキを抑えることができる。一方、低温駆動時の温度を一定とした場合、高温駆動時の温度のみを上昇させればよいため、制御の容易化を図ることができる。なお、この場合、センサ部分として機能させる領域が外側の領域となるにつれて、内側の領域にも有極性ガスが吸着し、有極性ガスの吸着が多くなるため、検出領域の調整を行うことが望ましい。
また、低温駆動及び高温駆動を行うことなく、接触燃焼式ガスセンサ21に常時電圧を印加するタイプのものであっても、上記の如く接触燃焼式ガスセンサ21に印加する電圧を順次上げていくことにより、シリコーン被毒していない領域をセンサ部分として機能させることもできる。
加えて、本実施形態では、第1領域31と第2領域32とを利用することにより、第1領域31の被毒量を検出できるようになっている。まず、第1領域31が被毒してしないと仮定する。この場合、第1領域31のみが燃焼温度以上となるように制御したときの出力から、第1領域を含む第2領域32が燃焼温度以上となるように制御したときの出力を除算した値は、C1(C1は定数)となる。
一方、第1領域31が被毒してしまってセンサ機能を殆ど果たしていないと仮定する。この場合、第1領域31のみが燃焼温度以上となるように制御したときの出力から、第1領域を含む第2領域32が燃焼温度以上となるように制御したときの出力を除算した値は、C2(C2はC1よりも小さい定数)となる。
従って、本実施形態に係る被毒量検出部14は、第1領域31のみが燃焼温度以上となるように制御したときの出力電圧と、第1領域を含む第2領域32が燃焼温度以上となるように制御したときの出力電圧との比較から、第1領域31の被毒量を検出できることとなる。なお、この理論は第2領域32の被毒量が少ない場合のみに成立するものである。このため、ガス検出装置1は、例えば第1領域31で一定期間繰り返して濃度検出を行った後に、1回だけ第2領域32で出力電圧を取得して第1領域31の被毒量を検出することが望ましい。これにより、第2領域32の使用回数が、第1領域31の使用回数よりも少なくなり、第2領域32の被毒の進行が抑えられるからである。
また、上記では、第1領域31と第2領域32とで説明したが、これに限らず、第2領域32と第3領域33とであっても、同様に第2領域32の被毒量を検出することができる。さらに、第3領域33や第3領域よりも外側の領域についても同様に被毒量を検出することができる。
次に、本実施形態に係るガス検出装置1の処理の概略について説明する。まず、センサ駆動部11及びブリッジ駆動回路22は、接触燃焼式ガスセンサ21の第1領域31が有極性ガスの燃焼温度未満となるように、接触燃焼式ガスセンサ21を低温駆動させる。そして、所定時間経過後にセンサ駆動部11及びブリッジ駆動回路22は、第1領域31が有極性ガスの燃焼温度以上となるように、接触燃焼式ガスセンサ21に第1電圧を印加して、高温駆動させる。
次に、ガス検出装置1が上記動作を一定期間繰り返して実行した後、被毒量検出部14は、第1領域31の被毒量を検出する。このとき、センサ駆動部11及びブリッジ駆動回路22は、接触燃焼式ガスセンサ21を低温駆動させた後に、第2領域32が有極性ガスの燃焼温度以上となるように、接触燃焼式ガスセンサ21に第1電圧よりも高い第2電圧を印加して、高温駆動させる。これにより、被毒量検出部15は、上記した理論に基づいて、第1領域31の被毒量を検出する。なお、被毒量を検出するにあたっては、接触燃焼式ガスセンサ21を低温駆動させた後に第2電圧を印加する一連の動作を2回繰り返し、2回目の出力を利用することが望ましい。1回目の出力を利用した場合、第2領域32には、第1領域31で検出を行っていた間に有極性ガスが吸着し続けていたこととなり、第1領域31と第2領域32との吸着時間に大きな差が出てしまうからである。
次いで、制御部10は、検出した被毒量を記憶部13に記憶させる。さらに、制御部10は、検出した被毒量が所定値未満である場合、記憶部13に被毒レベルを第1レベルであると記憶させる。一方、検出した被毒量が所定値以上である場合、制御部10は、記憶部13に被毒レベルを第2レベルであると記憶させる。
そして、検出した被毒量が所定値未満である場合、すなわち被毒レベルが第1レベルである場合、センサ駆動部11及びブリッジ駆動回路22は、第1領域31を対象に低温駆動させる動作と、第1領域31を対象に高温駆動させる動作とを繰り返し実行することとなる。
一方、検出した被毒量が所定値以上である場合、すなわち被毒レベルが第2レベルである場合、センサ駆動部11及びブリッジ駆動回路22は、接触燃焼式ガスセンサ21を低温駆動させた後に、第2領域32が有極性ガスの燃焼温度以上となるように、接触燃焼式ガスセンサ21に第2電圧を印加して、高温駆動させる。そして、ガス検出装置1は、今後第2領域32をセンサ部分として機能させ、被毒が進行した第1領域31のみによる検出を行わないようにする。
次いで、被毒量検出部14は、第2領域32をセンサ部分として機能させ、低温駆動と高温駆動とを一定期間繰り返して実行した後に、第2領域32の被毒量を検出する。このとき、センサ駆動部11及びブリッジ駆動回路22は、接触燃焼式ガスセンサ21を低温駆動させた後に、第3領域33が有極性ガスの燃焼温度以上となるように、接触燃焼式ガスセンサ21に第2電圧よりも高い第3電圧を印加して、高温駆動させる。これにより、被毒量検出部15は、上記した理論に基づいて、第2領域32の被毒量を検出する。なお、この場合においても、接触燃焼式ガスセンサ21を低温駆動させた後に第3電圧を印加する一連の動作を2回繰り返し、2回目の出力を利用することが望ましい。吸着時間に大きな差が出てしまうからである。
次いで、制御部10は、検出した被毒量を記憶部13に記憶させる。さらに、制御部10は、検出した被毒量が所定値未満である場合、記憶部13に被毒レベルを第2レベルであると記憶させる。一方、検出した被毒量が所定値以上である場合、制御部10は、記憶部13に被毒レベルを第3レベルであると記憶させる。
以後、ガス検出装置1は、上記の如く、被毒量の検出を行うと共に被毒が進行していると判断できる場合には、現在センサ部分として機能させている領域の外側の領域がセンサ部分として機能するように、印加電圧を調整することとなる。
次に、本実施形態に係るガス検出装置1の詳細動作をフローチャートを参照して説明する。図5及び図6は、本実施形態に係るガス検出装置1の詳細動作を示すフローチャートである。
まず、制御部10は、記憶部13に記憶されている被毒レベルと被毒量との情報を読み込む(S1)。次に、制御部10は、接触燃焼式ガスセンサ21を高温駆動させる際の電圧を設定する(S2)。この際、制御部10は、ステップS1において読み込まれた被毒レベルが第1レベルである場合、設定する電圧を第1電圧とし、被毒レベルが第2レベルである場合、設定する電圧を第2電圧とし、被毒レベルが第3レベルである場合、設定する電圧を第3電圧とする。なお、ステップS2において設定された電圧により接触燃焼式ガスセンサ21が駆動されたときの温度を「現検出温度」とする。
その後、制御部10は、接触燃焼式ガスセンサ21を低温駆動させる際の電圧を設定する(S3)。そして、センサ駆動制御部11及びブリッジ駆動回路22は、制御部10により設定された電圧をブリッジ回路に印加し、接触燃焼式ガスセンサ21を低温駆動させる(S4)。なお、ステップS3及びステップS4の処理において制御部10は、被毒レベルに応じて低温駆動させる際の電圧を変化させてもよいし、変化させなくてもよい。
ステップS4の処理後、制御部10は、所定時間経過したか否かを判断する(S5)。所定時間経過していないと判断された場合(S5:NO)、経過したと判断されるまで、この処理が繰り返される。一方、所定時間経過したと判断された場合(S5:YES)、処理はステップS6に移行する。このように、ガス検出装置1は、所定時間経過したか否かを判断することにより、接触燃焼式ガスセンサ21に有極性ガスを吸着させる吸着期間を実現している。
ステップS6において、制御部10は、被毒量を検出する被毒判定処理を実行するか否かを判断する(S6)。このとき、制御部10は、(1)現検出温度で一定期間ガス濃度の検出が行われ、且つ、(2)前回のガス濃度の検出値からガス反応があった場合に、被毒判定処理を実行すると判断する。現検出温度で一定期間ガス濃度の検出が行われていない場合に、被毒判定処理を実行してしまうと、頻繁に被毒判定処理を実行することとなってしまい、不都合だからである。すなわち、頻繁に被毒量を検出してしまうと、上記したように、被毒量を検出したい領域(例えば第1領域31)の外側の領域(例えば第2領域32)の使用回数が多くなり、外側の領域の被毒が進行してしまう可能性が高まるからである。また、前回のガス濃度の検出値からガス反応がない場合に被毒量を検出してしまうと、前回と今回との出力電圧から被毒量を求めることができなくなってしまうからである。
被毒判定処理を実行すると判断した場合(S6:YES)、制御部10は、ステップS2において設定した電圧に上書きするようなかたちで、新たな電圧を設定する(S7)。このとき、制御部10は、被毒レベルが第1レベルである場合、設定する電圧を第1電圧よりも高い第2電圧とする。また、制御部10は、被毒レベルが第2レベルである場合、設定する電圧を第2電圧よりも高い第3電圧とし、被毒レベルが第3レベルである場合、設定する電圧を第3電圧よりも高い第4電圧とする。これにより、制御部10は、現検出温度によりセンサ部分として機能させている領域の外側の領域をセンサ部分として機能させることとなる。なお、ステップS7において設定された電圧により接触燃焼式ガスセンサ21が駆動されたときの温度を「次期検出温度」とする。
一方、被毒判定処理を実行しないと判断した場合(S6:NO)、処理はステップS8に移行する。ステップS8においてセンサ駆動制御部11及びブリッジ駆動回路22は、制御部10により設定された電圧をブリッジ回路に印加し、接触燃焼式ガスセンサ21を高温駆動させる(S8)。すなわち、ステップS6の処理において被毒判定処理を実行すると判断された場合、接触燃焼式ガスセンサ21は次期検出温度で駆動され、被毒判定処理を実行しないと判断された場合、接触燃焼式ガスセンサ21は現検出温度で駆動されることとなる。
その後、制御部10は、現在被毒判定実行中であって、且つ、ステップS8におけるH温度駆動が1回目の駆動であるか否かを判断する(S9)。そして、現在被毒判定実行中であって、且つ、ステップS8におけるH温度駆動が1回目の駆動である場合(S9:YES)、処理はステップS3に移行する。一方、現在被毒判定実行中でない場合、又は、現在被毒判定実行中であるが、ステップS8におけるH温度駆動が2回目の駆動である場合(S9:NO)、制御部10は、ステップS8における高温駆動によって得られるセンサ出力を最低1回サンプリグし、得られたデータをGASnとして記憶部13に記憶させる(S10)。
そして、制御部10は、高温駆動時の温度が次期検出温度であったか否かを判断する(図6:S11)。すなわち、制御部10は、ステップS6において被毒判定処理が実行されたか否かを判断することとなる。高温駆動時の温度が次期検出温度でなかったと判断した場合(S11:NO)、被毒判定処理の実行中でないことから、ガス検出装置1は、ステップS12以降の被毒量及び被毒レベルの検出処理を実行することなく、処理はステップS18に移行する。
一方、高温駆動時の温度が次期検出温度であったと判断した場合(S11:YES)、被毒判定処理の実行中であることから、ガス検出装置1は、ステップS12以降の被毒量及び被毒レベルの検出処理を実行する。この検出処理において被毒量検出部14は、まず記憶部13に記憶される前回のサンプリングデータであるGASn−1から、今回のサンプリグデータであるGASnを除算して、被毒量を求める(S12)。次いで、制御部10は、被毒量が予め設定された設定値α未満であるか否かを判断する(S13)。
被毒量が予め設定された設定値α未満であると判断した場合(S13:YES)、すなわち現検出温度によりセンサ部分として機能している領域の被毒が進行している場合、制御部10は、次期検出温度が現検出温度となるように被毒レベルをインクリメントして記憶部13に記憶させる(S14)。この処理により、今までセンサ部分として機能させていた領域の外側の領域をセンサ部分として機能させることとなる。そして、制御部10は、記憶部13に記憶させていた被毒量の情報をリセットし(S15)、処理はステップS18に移行する。
被毒量が予め設定された設定値α未満でないと判断した場合(S13:NO)、すなわち現検出温度によりセンサ部分として機能している領域の被毒がそれほど進行していない場合、制御部10は、ステップS2と同様に接触燃焼式ガスセンサ21を高温駆動させる際の電圧を設定する(S16)。次に、制御部10は、ステップS12において求められた被毒量の情報を記憶部13に記憶させる(S17)。その後、処理はステップS18に移行する。
ステップS18において濃度算出部15の補正部15aは、被毒補正を実行する(S18)。この処理において補正部15aは、センサ出力取得部12により取得された出力電圧を記憶部13に記憶されている被毒量で除する。これにより、濃度算出部15は、出力電圧が補正されて被毒の影響が排除されたガス濃度を求めることができる。但し、ステップS11において「YES」と判断され、被毒判定実行中である場合、濃度算出部15は、次期検出温度で駆動されて得られた出力電圧をそのまま用いてガス濃度を求める。これにより、出力電圧の補正を行うことなく、処理が簡素化されると共に、使用回数が少ない外側の領域によって検出された出力電圧からガス濃度を求めることができ、ガス濃度の算出精度を高めることができるからである。
その後、制御部10は、ステップS18において算出されたガス濃度を、必要に応じて外部機器(例えばガス警報器等)に出力する(S19)。そして、図5及び図6に示した処理は終了する。なお、図5及び図6に示す処理は、ガス検出装置1の電源がオフされるまで、繰り返し実行される。
図7は、本実施形態に係るガス検出装置1において、触媒層21sを5つの領域に分け、被毒が進行する毎に外側の領域をセンサ部分として機能させた場合のセンサ出力を示すグラフである。なお、図7における縦軸のセンサ出力の値は、以下のようにして取得した。まず、一定濃度の有極性ガスが存在する雰囲気において、接触燃焼式ガスセンサ21からの出力を11ビットのA/DコンバータでAD変換し、得られたAD値を所定タイミングでサンプリングし、サンプリングされたAD値を積算する。その後、有極性ガスが存在しない状況下で、接触燃焼式ガスセンサ21からの出力を11ビットのA/DコンバータでAD変換し、得られたAD値を上記と同じタイミングでサンプリングし、サンプリングされたAD値を積算する。次いで、前者において得られた積算AD値を、後者の積算AD値で減算する。以上により、図7に示す縦軸の値を取得した。
図7に示すように、第1領域31において初期感度、すなわち被毒がない状態では、センサ出力の値は約「16000」を示している。そして、第1領域31が被毒してしまうと、センサ出力の値はほぼ「0」となってしまう。
しかし、本実施形態に係るガス検出装置1のように、第2領域32を新たにセンサ部分として機能させることにより、センサ出力の値は再び約「16000」を示すこととなる(第2領域32の初期感度参照)。このように、本実施形態では、実験からもセンサ出力が回復し、センサの超寿命化に寄与できることが明らかである。
そして、第2領域32が被毒してしまうと、センサ出力の値はほぼ「0」となってしまう。ところが、第3領域33を新たにセンサ部分として機能させることにより、センサ出力の値は再び約「16000」を示すこととなる(第3領域33の初期感度参照)。すなわち、領域を2つだけでなく3つ以上に分けて、被毒が進行するごとに順次センサ機能部分を変更することで、より一層センサの超寿命化に寄与できることが実験からも明らかとなっている。
以後、同様に、被毒が進行してセンサ出力の値がほぼ「0」となる毎に、センサ機能部分を変更することで、センサ出力の値は再び約「16000」に回復し、センサの超寿命化に寄与できる。
このようにして、本実施形態に係るガス検出装置1によれば、第1領域31における被毒量が所定値以上となる場合、接触燃焼式ガスセンサ21の第1領域31よりも広く第1領域31を含む第2領域32が有極性ガスを燃焼させる燃焼温度以上となるように、接触燃焼式ガスセンサ21に第1電圧よりも高い第2電圧を印加する。このため、第1領域31の被毒量が大きく、検出精度を維持できない場合に、接触燃焼式ガスセンサ21に印加する電圧を高めることとなる。そして、接触燃焼式ガスセンサ21に印加する電圧を高めることにより、第1領域31よりも広く第1領域31を含む第2領域32においても燃焼温度以上とすることができ、被毒が進行していない第2領域32をセンサ部分として機能させることができる。これにより、たとえ接触燃焼式ガスセンサ21から得られる出力が著しく低下したり、出力がゼロとなってしまったりしても、被毒の少ない新たな領域を使用してセンサ出力を得ることができる。従って、センサ寿命を長期化させて、ガス濃度の検出精度の低下を抑制することができる。
また、第2電圧が印加されている場合、第2領域32における被毒量を検出し、検出された第2領域32の被毒量が所定値以上となる場合、接触燃焼式ガスセンサ21の第2領域32よりも広く第2領域32を含む第3領域33が有極性ガスを燃焼させる燃焼温度以上となるように、接触燃焼式ガスセンサに第2電圧よりも高い第3電圧を印加する。このため、第2領域32の被毒が進行してしまっても、第2領域32よりもさらに広く第2領域32を含む第3領域33を使用してセンサ出力を得ることができる。従って、センサ寿命を一層長期化させて、ガス濃度の検出精度の低下を一層抑制することができる。
また、第1領域31の被毒量が所定値未満となる場合に被毒レベルを第1レベルと記憶し、第1領域31の被毒量が所定値以上となる場合に被毒レベルを第2レベルと記憶し、第2領域32の被毒量が所定値以上となる場合に被毒レベルを第3レベルと記憶する記憶部13をさらに備え、被毒量検出部14は、記憶部13に記憶される被毒レベルに応じて被毒量を検出する領域を決定する。このため、被毒量検出部14は、記憶部13に記憶される被毒レベルに応じて適切な領域の被毒量を検出することができる。従って、処理の適切化を図ることができる。
また、記憶部13は、不揮発性メモリによって構成されているため、ガス検出装置1の電源を一旦切ったとしても、被毒レベルの情報は保持されることとなり、電源投入時から適切な領域でガス濃度の検出と被毒量の検出とをすることができる。従って、一層処理の適切化を図ることができる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。例えば、上記実施形態において接触燃焼式ガスセンサ21は、リファレンス抵抗Rrとセンサ抵抗Rsと固定抵抗R1,R2とによってブリッジ回路を形成しているが、これら配置は適宜変更可能である。