JP5176199B2 - カーボンナノチューブ製造装置と製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、カーボンナノチューブの製造方法および該方法の実施に適した製造装置に関する。詳しくは、本発明は、生成したカーボンナノチューブをより効率的に回収することのできるカーボンナノチューブ製造方法および製造装置に関する。
カーボンナノチューブは、導電性、熱伝導性、機械的強度等の優れた特性を持つことから、多くの分野から注目を集めている新素材である。カーボンナノチューブは、一般に、炭素または炭素原料を必要に応じて触媒の存在下、高温条件に置くことにより合成される。この製造方法としては、主に、アーク放電法、レーザ蒸発法、化学気相成長法(すなわちCVD法)が知られている。
このうち特にアーク放電法は、欠陥が少なく品質の良いカーボンナノチューブが得られる点で優れている。アーク放電法では、少なくとも陽極に炭素を含有する一対の電極間にアーク放電を起こすことにより、陽極からカーボンを蒸発させ、カーボンナノチューブを含有する生成物を得ることができる。特許文献1には、アーク放電が生成された部分から蜘蛛の巣状または綿状に放出される生成物をからみ取って捕集する技術が記載されている。アーク放電により得られた炭素質生成物の回収に関する他の従来技術文献として特許文献2〜4が挙げられる。
特開2002−234713号公報 特開2002−234715号公報 特開2005−194127号公報 特開2003−183011号公報
しかし、特許文献1記載のように生成物を「絡み取って」捕集する技術によると、その捕集物に含まれるカーボンナノチューブは複雑に絡み合った状態となり、生成物中におけるカーボンナノチューブの配置(絡みの程度、配向性、折れや曲がりの程度等)が本来の配置から大きく崩れてしまう。
そこで本発明は、生成物中における配置がよりよく維持された状態のカーボンナノチューブを効率よく得ることのできるカーボンナノチューブ製造方法および該方法の実施に適した製造装置を提供することを目的とする。
本発明に係るカーボンナノチューブ製造装置は、反応容器と、反応容器内に配置された一対の電極とを備える。これら電極は、互いに対向するように(典型的には、スティック状の電極の一端が互いに対向するように)且つ隙間をあけて配置され、これら電極間にカーボンを蒸発させ得るアーク放電を発生させ得るように構成されている。また、この装置は、前記電極の上方に、前記蒸発したカーボンからなるカーボンナノチューブを捕捉し得る回収体を備える。この回収体は、前記反応容器内を水平方向に延びる二以上の横棒を含むスケルトン構造であって、それら二以上の横棒が上下に間隔をあけて配置された構成を有する。
かかる構成の製造装置では、まず一対の電極間にアーク放電を発生させることにより、該電極間においてカーボンを蒸発させる。その蒸発したカーボンから成るカーボンナノチューブを含む炭素質生成物(カーボンナノチューブ含有生成物)は、好ましくは、アーク放電に伴う熱により生じた上昇気流等のガス流(反応容器内を満たす雰囲気ガスの流れ)に乗って反応容器内を上昇する(吹き上げられる)。その上昇する生成物は、電極の上方に設けられたスケルトン構造の回収体によって捕捉される。ここで、該回収体は、水平方向に延びる二以上の横棒が上下に間隔をあけて配置された構成を有するので、上昇する生成物(上昇途上にある生成物)を、一の横棒と他の横棒との間に張り渡された状態(上下に延びた(広がった)ままの状態)で引っ掛けることができる。したがって、該回収体によると、生成物中における配置がよりよく維持された状態のカーボンナノチューブ(例えば、回収体に捕捉されることに起因する配向の乱れ、絡み等がよりよく抑制されたカーボンナノチューブ)を効率よく回収することができる。
なお、ここで上記横棒が「水平方向に延びる」とは、該横棒の延びる方向と水平とのなす角度が±45°以下(好ましくは±30°以下、より好ましくは±10°以下)であることをいう。上記横棒の延びる方向と水平とのなす角度がゼロ(以下、これを「厳密な水平方向」あるいは単に「水平」ということがある。)またはほぼゼロである回収体は、水平方向に延びる二以上の横棒を含む回収体の一つの典型例である。また、二以上の横棒が「上下に間隔をあけて配置されている」とは、上記回収体を水平に(真横から)見たとき一の横棒の少なくとも一部長さ(典型的には全長さ)が他の少なくとも一つの横棒と鉛直方向に離隔して見えることをいう。水平に延びる二以上の横棒を含み、鉛直方向からみたときに一の横棒の全体が他の横棒と重なって見える回収体は、水平方向に延びる二以上の横棒が上下に間隔をあけて配置された回収体の一つの典型例である。
ここに開示される装置の好ましい一態様では、該装置が、少なくとも一の前記横棒が前記水平方向の配置を保ちつつ前記反応容器内の空間を横切るように前記回収体を移動させる回収体移動機構をさらに備える。かかる構成の装置によると、反応容器内を上昇するカーボンナノチューブ含有生成物をその上昇方向に対して横方向(すなわち上昇方向と交差する方向)からすくい取ることにより、生成物中における配置がよく維持された状態のカーボンナノチューブを、より効率よく回収することができる。
ここに開示される装置の他の好ましい一態様では、前記回収体が、前記反応容器の上端から下方に延びる一の支柱を備える。前記二以上の横棒は、典型的にはそれら各横棒の中央部で前記支柱に支持されている。そして、それら二以上の横棒の両端は開放されている(すなわち開放端となっている)。このような構成の回収体によると、生成物中における配置がよく維持された状態のカーボンナノチューブを、より効率よく回収することができる。また、この回収体により捕捉された生成物を該回収体から分離しやすい。したがって、生成物中における配置がよりよく維持された状態のカーボンナノチューブ(例えば、回収体からの分離操作に起因する配向の乱れが抑制されたカーボンナノチューブ)を得ることができる。また、上記分離を行う際の作業性も良好である。
前記一対の電極は、該電極間の隙間が水平方向に形成されるように(すなわち、一対の電極の対向部分(対向面)が水平方向に隔たるように)配置されることが好ましい。かかる電極配置によると、カーボンナノチューブ含有生成物が電極に付着する(絡まる)事象を効果的に抑制することができる。したがって、より多くの上記生成物をガス流に乗せて上昇させ(吹き上げ)、上記回収体によって効率よく捕捉することができる。
ここに開示されるいずれかの装置は、前記一対の電極のうち少なくとも一方の電極の外周に付着したゴミ(蒸発したカーボンから生じた炭素質生成物であり得る。)を払い除け可能に構成された電極ワイパーをさらに備えることができる。かかる構成とすることによって、例えば本装置の運転中に上記ゴミの付着が発生した場合においても、上記電極ワイパーを作動させて上記ゴミを払い除ける(除去する)ことにより、上記ゴミにさらにカーボンナノチューブ含有生成物が絡まる等の不都合を効果的に抑制することができる。したがって、より多くの上記生成物をガス流に乗せて上昇させ(吹き上げ)、上記回収体によって効率よく捕捉することができる。
ここに開示されるいずれかの装置は、前記一対の電極のうち少なくとも陽極の先端部を該陽極の側方から打撃可能に構成されたスラグ除去器をさらに備えることができる。かかる構成とすることによって、例えば本装置の運転中に電極(特に陽極)の先端部を構成するカーボンの一部が蒸発し他部が蒸発しないまま残ることで該先端部に炭素質のスラグ(燃え殻、炭)が生じた場合等においても、上記スラグ除去器を作動させることによって、スラグ化した部分を除去する(折り取る、典型的には叩き落す)ことができる。このように必要に応じて電極の先端部を更新することにより、適切なアーク放電状態(カーボンの蒸発条件)を安定して維持することができる。
ここに開示されるいずれかの装置は、前記反応容器内の空間に面する回収面であって強制的に冷却可能に構成された回収面を有する第1補助回収部をさらに備えることができる。反応容器内で生成して該容器内を上昇したカーボンナノチューブは、上記回収体に全てが捕捉されずに、その捕捉されなかったカーボンナノチューブが例えば反応容器内のガス流に乗って該容器内を引き続き移動する場合がある。かかる場合に、上記回収体に捕捉されなかったカーボンナノチューブを上記第1補助回収部によって回収することにより、カーボンナノチューブの回収効率(収率)をさらに向上することができる。また、上記回収体および上記第1補助回収部を用いてカーボンナノチューブを回収することにより、特性(カーボンナノチューブの長さ、絡み具合、配向性等)の異なるカーボンナノチューブを分別して回収することができる。したがって、これら回収体および第1補助回収部による回収物を、目的に応じてそれぞれ有効に利用することができる。
ここに開示されるいずれかの装置は、前記反応容器内から排出される雰囲気ガス中から前記回収体において回収されなかったカーボンナノチューブを回収し得る第2補助回収部を該反応容器と連通して備えることができる。反応容器内で生成したカーボンナノチューブは、上記回収体(上記第1補助回収部をさらに備える構成では、上記回収体および上記第1補助回収部)に全てが捕捉されない場合がある。かかる場合に、上記回収体に捕捉されなかったカーボンナノチューブを上記第2補助回収部によって回収することにより、カーボンナノチューブの回収効率(収率)をさらに向上することができる。また、上記回収体および上記第2補助回収部(上記第1補助回収部をさらに備える構成では、上記回収体および上記第1,第2補助回収部)を用いてカーボンナノチューブを回収することにより、特性(カーボンナノチューブの長さ、絡み具合、配向性等)の異なるカーボンナノチューブを分別して回収することができる。したがって、これら回収体および第2補助回収部(または、回収体および第1,第2補助回収部)による回収物を、目的に応じてそれぞれ有効に利用することができる。
ここに開示されるいずれかの装置は、好ましい一態様として、上記一対の電極のうち少なくとも一方の電極をそれら電極間の隙間の大きさ(典型的には、両電極の対向面間の距離)を調節し得るように保持する電極保持部を備えることができる。上記隙間の大きさの調節は、例えば、一方の電極を他方の電極に対して少なくとも近づける方向(好ましくは、近づける方向および遠ざける方向の両方向)に移動させ得るように構成された電極保持部に該一方の電極を保持することにより行うことができる。あるいは、かかる構成の電極保持部に一方の電極および他方の電極の双方が保持されるようにしてもよい。カーボンナノチューブの製造中、カーボン蒸発に伴う陽極の消耗によって上記電極間の隙間が拡大し得るところ、この構成によれば、陽極の消耗に伴い一方または両方の電極を移動させることにより、両電極間の隙間を一定に保持することができる。このことによってアーク放電を安定化し、より品質の安定したカーボンナノチューブを製造することができる。
ここに開示されるいずれかの装置は、好ましい一態様として、少なくとも陽極としてスティック状のカーボン成形体を使用し、該スティック状電極をその軸の周囲に回転可能に保持する電極保持部を備えることができる。このようなスティック状陽極の消耗は、陰極に対向する面において不均一に進行する(例えば、該対向面の一端寄りの部分が他端寄りの部分に比べて多く消耗する片減り現象を起こす)場合がある。そこで、陽極を軸周りに回転させることによって、その消耗を陰極対向面の各部においてより均一に進行させることができる。このことによってアーク放電を安定化し、より品質の安定したカーボンナノチューブを製造することができる。
なお、上記スティック状陽極(好ましくはカーボン成形体)として、軸に垂直な断面における形状が多角形(典型的には直方体、より好ましくは正方形)の陽極を使用することは、例えば該断面形状が円形である陽極を使用する場合に比べて、かかる陽極の入手コスト等の観点から有利であることが多い。その一方で、このように断面形状(通常は、陰極との対向面の形状と概ね一致する。)が多角形の陽極では上記不均一な消耗が起こりやすい。上述のように陽極を回転させつつ該陽極と陰極との間にアーク放電を発生させることにより、コストの安い角型陽極を用いる場合においても品質の安定したカーボンナノチューブを製造することができる。したがって、このように陽極を回転させつつアーク放電を行う態様は、例えば断面形状が多角形(典型的には正方形)のスティック状陽極を用いてカーボンナノチューブを製造する場合において、特に好ましく適用され得る。
本発明はまた、他の側面として、アーク放電に基づくカーボンナノチューブ製造方法を提供する。本発明に係るカーボンナノチューブ製造方法は、反応容器内に一対の電極を対向して且つ隙間をあけて配置し、該電極間にアーク放電を発生させる。これにより該電極からカーボンを蒸発させる。そして、前記蒸発したカーボンから成り前記反応容器内を上方に吹き上がるカーボンナノチューブを、前記電極の上方に配置された回収体によって捕捉する。前記回収体としては、前記反応容器内を水平方向に延びる二以上の横棒を含むスケルトン構造であって、それらの横棒が上下に間隔を開けて配置された構成を有する回収体を用いる。
かかる構成のカーボンナノチューブ製造方法によると、アーク放電により蒸発したカーボンから成るカーボンナノチューブを、該カーボンナノチューブを含む炭素質生成物中における配置がよりよく維持された状態(例えば、配向の乱れ、絡み等がよりよく抑制された状態)で、効率よく回収することができる。本製造方法は、好適には、ここに開示されるいずれかのカーボンナノチューブ製造装置を用いて実施することができる。
ここに開示されるカーボンナノチューブ製造方法の好ましい一態様では、少なくとも一の前記横棒が前記水平方向の配置を保ちつつ前記反応容器内の空間を横切るように前記回収体を移動させて前記カーボンナノチューブを捕捉する。かかる構成の装置によると、反応容器内を上昇するカーボンナノチューブ含有生成物を横方向(上昇方向と交差する方向)からすくい取ることにより、生成物中における配置がよく維持された状態のカーボンナノチューブを、より効率よく回収することができる。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
本発明の装置では、アーク放電によって陽極からカーボンを蒸発させて、得られたカーボンナノチューブを回収体にて捕捉することができればよく、種々の材料および構成をその目的のために適用することができる。なお、ここで開示された製造装置は、単層カーボンナノチューブの製造に適する装置であるが、該装置を多層カーボンナノチューブの製造に使用することを制限するものではない。
次に、本発明の具体的な一実施形態に係るカーボンナノチューブの製造装置について図面を参照して説明する。
図1にカーボンナノチューブ製造装置1の一構成例を示す。この装置1は、大まかに言って、反応容器3と、一対の電極11,12と、回収体50を有するカーボンナノチューブ回収部5と、から構成される。
反応容器3は、密閉可能な耐圧容器であって、例えばステンレスにより全体として略円筒形状(例えば、直径25cm〜80cm程度、高さ約30cm〜150cmの略円筒形状)に構成されている。反応容器3の上端は開閉可能な蓋体3aにより塞がれている。蓋体3aの下面には、反応容器3の内壁に沿って電極11,12の若干上方まで延びる内筒32が取り付けられている。この内筒32は、後述のように回収体50によって捕捉されなかった生成物を回収する第1補助回収部30を構成するものであって、その壁面内には図示しない冷媒通路が内蔵されている。内筒32は、上記冷媒通路に適当な冷媒(例えば水)を流通させることにより、反応容器3内の空間に面する内壁面32aを強制的に冷却し得るように構成されている。また、反応容器3の側面は冷却ジャケット33により囲まれている。この冷却ジャケット33の内部にも冷媒を流通させることができる。これら冷媒通路および冷却ジャケット33の一方または両方の作用によって反応容器3の外周部分(側壁)を必要に応じて冷却することができる。かかる冷却を行うことは、後述するように内筒32の内壁面32aを回収面としてカーボンナノチューブ(回収体50により捕捉されなかった生成物)を回収するためのみならず、回収体50によるカーボンナノチューブの回収効率を高めるためにも有効である。すなわち、低温の側壁に沿って反応容器3内に下降気流を生じさせることにより、アーク放電に伴う熱等により反応容器3の中央部に(電極11,12間の隙間から上方に向けて)形成される上昇気流と相まって、反応容器3内にある雰囲気ガスの対流を促進することができる。したがって、該対流(上昇気流)に乗せてカーボンナノチューブ含有生成物(図4に示す生成物60)を効率よく吹き上げ、回収体50によって効率よく捕捉することができる。
一対の電極11,12は、陽極11および陰極12がいずれもスティック状に形成され、反応容器3においていずれもその中心軸を水平にして、互いに対向して配置されている。なお、各電極11,12の形状はスティック状に限られず、互いに対向させ得る面を有する形状であればよい。したがって、電極の形状は、例えば、いずれか一方または両方がタブレット状であってもよい。陽極11と陰極12との隙間のサイズは特に限定されないが、例えば、アーク放電による単層カーボンナノチューブ発生効率が高い0.1mm〜10mm、特に0.5mm〜5mm程度が好適である。なお、図1にはスティック状の陽極11と陰極12とをいずれもその軸が水平となるように配置した例を示しているが、これら電極11,12の配置はこれに限定されない。例えば、陽極11および陰極12の少なくとも一方を水平から外れた角度に配置することにより、陽極11の軸と陰極12の軸とのなす角度が鋭角となるように電極11,12を配置してもよい。この場合、陽極11と陰極12とが上方に向かって近づく配置(例えば、真横から見て概ねギリシャ文字の大文字ラムダ(Λ)形の配置)としてもよく、陽極11と陰極12とが下方に向かって近づく配置(例えば、真横から見て概ねV字形の配置)としてもよい。陽極11と陰極12とのなす角度は90°以下、例えば5°〜75°程度の角度とすることができる。
好ましくは、陽極11と陰極12の隙間が水平方向に形成されるように、一対の電極11,12を配置する。すなわち、陽極11と陰極12との対向面が水平方向(典型的には水平±45°以下、より好ましくは水平±30°以下、さらに好ましくは水平±10°以下の角度)に隔たるように電極11,12を配置するとよい。かかる配置によると、該対向面の間に下から上へ向かうガス流を通過させやすい。したがって、蒸発したカーボンから成るカーボンナノチューブを含む生成物60を、上記ガス流に乗せて、反応容器3の上方へと効率よく上昇させる(吹き上げる)ことができる。
なお、上記カーボンナノチューブ含有生成物が電極に絡まりにくいという観点から、使用する一対の電極の配置は上述のように両電極の隙間が水平方向に形成される配置とすることが好ましいが、上記隙間が例えば垂直方向に形成されるように一対の電極を配置した場合(例えば、対向する一対の電極を例えば垂直方向に配置した場合)であっても、本製造装置1によってカーボンナノチューブを製造することは可能である。
陽極11および陰極12には、これら電極11,12の間にアーク放電を発生し得る電圧を印加可能な直流電源16が接続されている。なお、ここでは電源を直流としているが、これを交流電源とすることもできる。このように交流を採用する場合には、電極11が陽極となり電極12が陰極となる時期と、電極11が陰極となり電極12が陽極となる時期とが交互に繰り返される。したがって、電極11および電極12のいずれもが、時期によって、それぞれ陽極として機能することとなる。
陽極11は、アーク放電によってカーボンを蒸発可能な材料(好ましくは、耐熱性を有する導電材料)から構成される。陽極11の構成材料として利用し得る材料としては、種々の炭素材料が例示されるが、特にグラファイトを好ましく採用することができる。単層カーボンナノチューブの製造を目的とする場合には、例えば、グラファイトに単層カーボンナノチューブ合成用触媒(例えば、鉄、ニッケル、コバルト等から選択される一種または二種以上の金属触媒)を含有させたものが好ましい。このような組成の陽極11は、例えば、グラファイト粉末に触媒粉末(例えば鉄粉末)を配合して圧粉成形することにより得ることができる。
陽極11の長手方向(軸方向)の一方の端部は、陰極12に対向する陰極対向面(陽極先端部)11aとなっている。陽極11の他方の端部(基部)11bにはモータ14が接続されている。このモータ14は、図示しない電極保持部に保持された陽極11を、その長軸を回転軸として典型的には上記電極保持部ごと回転可能に設置されている。
陰極12は、耐熱性を有する導電材料から構成される。陰極12の構成材料として利用し得る材料としては、炭素材料、銅等の金属材料を例示することができる。例えば、陰極12の構成材料として、陽極11と同様の炭素材料(特にグラファイト)を好ましく採用することができる。単層カーボンナノチューブの製造を目的とする場合には、陽極11と同様に炭素(特にグラファイト)に単層カーボンナノチューブ合成用触媒を含有させたものが好ましい。特に電源を交流とした場合には、このように同様の材料(組成)から構成された一対の電極を陽極11および陰極12として好ましく用いることができる。かかる構成は、電源を直流とした場合にも好ましく採用し得る。
この陰極12の長手方向(軸方向)の一方の端部は、陽極11に対向する陽極対向面(陰極先端部)12aとなっている。陰極12の他方の端部(基部)12bにはソレノイド15が接続されている。ソレノイド15は、図示しない電極保持部に保持された陰極12を、典型的には該電極保持部ごと水平方向(すなわち、陰極12を陽極11の陰極対向面(陽極先端部)11aに近づける方向、図1に示す例では右方向)に移動可能としている。したがって、カーボン蒸発による陽極11の消耗に伴い、陰極12を陽極11側に移動させて、両電極11,12間の隙間の大きさを一定に維持することができる。なお、陰極12の移動量を設定するにあたっては、陽極11の消耗量(先端部の減り具合)または両極間の隙間のサイズをセンサにより検知する、印加電圧から陽極11の消耗量を予測する、等の手法を適宜採用することにより、該消耗量に見合った(該消耗量を補填する)移動量が実現されるように設定するとよい。
なお、図1に示す構成のようにモータ14やソレノイド15を使用する代わりに、電極11,12の水平移動および/または回転を手動で行ってもよい。すなわち、例えば、陽極または陽極側の電極保持部にスティック状の移動および/または回転手段を設けておき、そのスティックの一端を反応容器外に配置するとともに、該一端を手動によって操作することで陽極あるいは陰極を水平移動および/または回転させるように構成されていてもよい。また、電極の移動および回転手段としてのモータ14およびソレノイド15の設置場所は図1に示す態様に限られず、例えば、陽極11側および陰極12側のいずれの側(両方の側でもよい。)にモータ、ソレノイドまたは手動の移動回転手段を設けてもよい。
ガス供給手段2は、反応容器3内に雰囲気ガスを供給し得るように構成されている。本実施形態に係るガス供給手段2は、雰囲気ガス供給用のボンベ(雰囲気ガスとして複数種類のガスの混合気体が用いられる場合には複数のボンベ。図1に示す例では2個のボンベ21A,21B)を有し、それぞれバルブ22A,22Bの開閉によって反応容器3の一部(ここでは底部)に設けられたガス供給口23から所定量の雰囲気ガスを反応容器3内に導入することができる。ここで、本実施形態では、水素ガス(H)とアルゴンガス(Ar)との混合ガスを雰囲気ガスとして使用するため、Hボンベ21A、Arボンベ21Bにそれぞれ連通するバルブ22A,22Bを適宜開閉調節することにより、所定の組成比の雰囲気ガス(H/Ar)を反応容器3内に導入する。ガス供給口23は、その先端23aがノズル状に形成され、陽極先端部11aと陰極先端部12aとの隙間に向かって配置されている。このように構成されていることにより、ガス供給口23の先端23aから電極11,12間の隙間に向けて雰囲気ガスを噴出することができる。雰囲気ガスとしては、アーク放電に基づいてカーボンナノチューブを製造し得る各種のガス(典型的には、水素ガスを含む混合ガス)を適宜採用することができ、特に制限されない。例えば、水素ガスと不活性ガス(例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガス等の不活性ガスから選択される一種または二種以上)との混合ガスを使用することができる。カーボンナノチューブ(特に単層カーボンナノチューブ)の製造効率向上およびコスト低減等の観点から、本実施形態のように水素ガスとアルゴンガスとの混合ガスを雰囲気ガスとして好ましく用いることができる。雰囲気ガスとして採用し得る他の好適例として、水素ガスと窒素ガスとの混合ガスが挙げられる。
カーボンナノチューブ回収部5は、反応容器3の内部に収容されたスケルトン状の回収体50を備える。この回収体50は、蓋部3aから下方(鉛直方向)に延びる支柱55と、支柱55と直交して水平方向(ここでは水平)に延びる三本の横棒51,52,53とを有する。これらの横棒51,52,53の形状は実質的に同一である。該横棒51,52,53は、それぞれ長手方向の略中央で支柱55に固定されており、反応容器3の下側からこの順に、隣り合う横棒との間に上下方向に典型的には5cm〜50cm(好ましくは5cm〜30cm、例えば5cm〜15cm)程度の間隔をあけて、略同一平面内に配置されている。また、隣り合う横棒との間に上下方向に10cm以上(例えば10cm〜20cm程度)の間隔を開けた配置も好ましい。横棒51,52,53の両端は外方(支柱55から遠ざかる側、すなわち反応容器3の外周側)に開放されている。このように、支柱から両側に延びる複数の横棒を有し、それらの横棒の両端が開放された形状(典型的には、魚の骨のような形状)の回収体50は、反応容器3内を上昇し(吹き上げられ)て該回収体50に捕捉されたカーボンナノチューブ含有生成物を回収体50から分離(例えば、該生成物の一部を掴んで引き剥がす等)しやすいという利点を有する。
なお、回収体50の構成材料は、所望の耐熱性および強度を備える材料であればよく、特に限定されない。例えば金属材料(ステンレス等)を好ましく採用することができる。また、回収体50を構成する各部材(ここでは支柱および横棒)の形状としては図1に示すような直線状の形状を好ましく採用し得るが、これに限定されず、例えば一または二以上の横棒の一部または全体が緩やかに湾曲していてもよく、鈍角で折れ曲がっていてもよい。生成物の分離容易性の観点から、上記各部材は平滑な表面を有するように形成されていることが好ましい。また、上記各部材の軸(長手方向)に垂直な断面形状は特に限定されず、例えば円形であってもよく多角形(例えば四角形)であってもよい。生成物の分離容易性の観点からは、各部材(特に横棒)が角のない断面形状(円形、長円形、楕円形等)に形成されていることが好ましい。
カーボンナノチューブ回収部5は、この回収体50を回転させる回収体移動機構を構成するモータ59をさらに備えることができる。このモータ59を作動させることにより、支柱55を回転軸として回収体50を一方向に回転させることができる。かかる回転により、水平方向(ここでは水平)に延びる横棒51,52,53が、その水平方向の配置(ここでは水平配置)を保ったまま、支柱55に支持された箇所を中心として反応容器3内の空間を水平に回転する。このとき、横棒51,52,53の各部は、支柱55からの距離に応じて異なる速度で、反応容器3内の空間を周方向に横切って水平に移動(回転移動)することとなる。また、横棒51,52,53はいずれも支柱55に固定されているので、上記回転によって回収体50自体が変形することはない。したがって回収体50は、横棒51,52,53が同一平面内に配置された姿勢を保ったまま回転する。
なお、直流電源16ならびにモータ14およびソレノイド15(および所望により回収体移動機構におけるモータ59)は、所定のプログラムまたはマニュアル操作に基づいて動作する制御機構17からの制御指令が入力される入出力回路18に接続され、電圧印加による電極11および/または電極12の移動および回転(および所望により回収体50の回転)を制御可能に構成されている。したがって、電極11,12間に印加された電圧からアーク放電状態を制御機構17で演算し、アーク放電で発生したカーボンナノチューブ含有生成物の成長に応じて電極11および/または電極12の移動、回転(および所望により回収体50の回転)を調整する制御信号を入出力回路18からモータ14およびソレノイド15(および所望によりモータ59)に出力することができる。このようにすると、安定条件下でのアーク放電が可能となり、品質(長さ、配向、単層カーボンナノチューブの割合等)の揃ったカーボンナノチューブ含有生成物を得ることができる。
本実施形態に係るカーボンナノチューブ製造装置1は、電極11,12の外周(電極の外周に電極保持部に保持された態様では、電極の外周および/または電極保持部の外周)に付着したゴミを除去(典型的には払い除け)可能に構成された電極ワイパー70を備える。図2は、図1に示す電極ワイパー70および電極11,12を上方から見た状態を模式的に示す説明図である。この図2によく示されるように、電極ワイパー70は、反応容器3の壁面を貫通して例えば水平に延びるスティック状のワイパー本体72と、このワイパー本体72を反応容器3の壁面(典型的には、電極11,12よりも若干上の側壁面)に取り付けるとともに該ワイパー本体72をその長手方向の一点を中心として左右に回転(回動)可能に支持するピン74とを備える。電極ワイパー70は、このようにワイパー本体72を回転させることによってワイパー本体72の先端部(反応容器3の内部に位置する側の端部)が電極11,12の外周近傍に沿って水平に移動するように構成されている。このとき、ワイパー本体72の外周と電極11,12の外周との間に若干の隙間があってもよく、ワイパー本体72が電極11,12を掠めるように移動してもよく、ワイパー本体72が電極11,12を軽く擦りながら移動してもよい。この電極ワイパー70を必要に応じて作動させる(例えば、ワイパー本体72の基部すなわち反応容器3の外部に引き出された部分を手動で左右に動かすことによりピン74を支点としてワイパー本体72を回転させる)ことにより、電極11,12の外周に付着したゴミ(蒸発したカーボンから生じた炭素質生成物であり得る。)を取り除くことができる。このような電極ワイパー70を備えた構成の装置1によると、反応容器3を開放することなく上記ゴミ除去操作を行うことができる。なお、図1,2には電極11および電極12の略全長を含む範囲にワイパー本体72を移動(回転移動)させ得るように電極ワイパー70を構成した例を示しているが、ワイパー本体72の移動範囲はこれに限定されず、例えば電極11,12のいずれか一方の略全長を含む範囲としてもよく、電極11,12のいずれか一方または両方の一部長さのみを含む範囲としてもよい。また、ワイパー本体72の構成材料としては、例えば、回収体50の構成材料と同様の材料を適宜採用することができる。
なお、電極の外周に付着したゴミを除去(典型的には払い除け)可能に構成された電極ワイパーを備えるカーボンナノチューブ製造装置としては、図1および図2に示す態様の他、例えば、図1に示す陽極11と同様に軸周りに回転させ得るように構成された電極の外周近傍に、固定式の電極ワイパー(棒状、板状等の形状であり得る。)が設置された態様を例示することができる。かかる態様によると、電極の回転により該電極の外周面が電極ワイパーに対して相対的に移動するので、電極の外周に付着したゴミを上記電極ワイパーによって該電極から取り除く(典型的には、周方向に払い除ける)ことができる。
本実施形態に係るカーボンナノチューブ製造装置1は、図1および図3に示すように、反応容器3の壁面を貫通して例えば水平に延びるスティック状の支軸82と、支軸82の先端部(反応容器3の内部に位置する側の端部)に固定され該支軸82と概ね直交して延びるスティック状の打撃棒84と、を含むスラグ除去器80を備える。このスラグ除去器80は、支軸82を回転させる(例えば、支軸82の基部すなわち反応容器3の外部に引き出された部分を手動で左右に回転させることにより支軸82の軸を中心として打撃棒84を回転させる)ことにより、陽極11の先端部(陰極12に対向する側の端部)をその側方から打撃可能に構成されている。したがって、図3に示すように陽極11の先端部(陰極に近い側の端部)にスラグ11cが生じた場合(すなわち、上記先端部がスラグ化した場合)等に、スラグ除去器80を作動させることによって(アーク放電をいったん停止した状態で作動させることが好ましい。)、陽極11の先端からスラグ化した部分を除去することができる。これにより陽極11の先端部を更新し(例えば、スラグ11cを叩き落して新たな陰極対向面11dを露出させ)て、適切なアーク放電状態を安定して維持することができる。打撃棒84が陽極11に当接する位置は、例えば支軸82を反応容器3内に押し込みまたは引き出すことにより、陽極11の軸方向に調節することができる。これにより、陽極11の位置やスラグ11cの発生状況に応じて、スラグ11cを除去するのに適した位置に打撃棒84を叩きつけることができる。このようなスラグ除去器80を備えた構成の装置1によると、反応容器3を開放することなく上記スラグ除去操作を行うことができる。
なお、このように構成されたスラグ除去器80は、例えば蒸発したカーボンから生じた炭素質生成物が陽極11および/または陰極12の先端または該電極間の隙間に絡まった場合等に、その絡まった生成物を電極11,12から除去する(払い除ける)ためにも利用することができる。
次に、このような構成の製造装置1を用いて単層カーボンナノチューブを製造する方法の好ましい一態様を説明する。すなわち、まずスティック状(具体例としては、断面形状が6mm角の正方形、8mm角の正方形または直径8mmの円形等のスティック状)の陽極11および陰極12を用意し、これらを反応容器3内の図示しない電極保持部にそれぞれセットする。このとき、対向面11a,12a間の距離が所定間隔となるように陽極11および/または陰極12の配置を調節する。陽極11を保持する電極保持部(図示せず)は、例えば、陽極11の一方の端部(先端部11a側)から所定長さの部分(例えば、先端部11a側から10mm〜50mm程度の長さ部分)を反応容器3内に露出させ、陽極11の残りの部分を収容する穴を備えた構成とすることができる。この電極保持部は、例えば適当な冷媒(典型的には水)を流通可能な冷媒通路を内蔵することにより、これに保持された陽極11を冷却し得るように構成されていてもよい。かかる構成の電極保持部によると、未使用の電極部分(すなわち、先端部11aから離れているため未だカーボンの蒸発源としては利用されない電極部分)が不必要に高温に曝されることを回避するという効果が得られる。なお、陰極12を保持する電極保持部も同様の構成とすることができる。
容器3に設けられた排気管27のバルブ27Aを開け、当該排気管27に接続する油回転ポンプ等の真空ポンプ26を作動させて反応容器3内の気体を排気し、これにより反応容器3内を減圧する。容器3内の圧力が低下し、例えば13×10−3Pa〜1.3×10−3Pa程度の高い真空度になったらバルブ27Aの開度を絞り、その後、ガス供給手段2から雰囲気ガスを導入する。例えば、バルブ22A,22Bの開度を調節してHボンベ21AおよびArボンベ21Bからそれぞれ水素ガスおよびアルゴンガスを20:80〜80:20の流量比(体積比)で流出させることにより、これらのガスの体積混合比が20:80〜80:20である混合ガス(雰囲気ガス)を反応容器3内に導入する。そして、真空ポンプ26の作動による排気量とガス供給手段2からのガス供給量とのバランスにより、例えば、反応容器3内の雰囲気ガス組成および圧力を、水素ガス分圧1.3×104Pa、アルゴンガス分圧1.3×104Pa程度に調整する。
反応容器3内の雰囲気ガス組成および圧力が安定したら、鉄(0.5モル%〜5モル%)を含む陽極11と陰極12との間に電圧を印加し、直流電源16から電流(例えば50A〜100A)を供給する。この結果発生したアーク放電によるアーク熱で、陽極11からカーボンが蒸発する。上記電圧の大きさは所望のカーボン蒸発速度に応じて適宜選択され、例えば20V〜40V程度とすることができる。また、印加された電圧からアーク放電状態を制御機構17で演算し、アーク放電で蒸発したカーボンによる陽極11の消耗に応じて制御信号を入出力回路18からモータ14およびソレノイド15に出力し、必要に応じて陽極11および陰極12の移動や回転を調節して好ましいアーク放電状態が維持されるようにする。
蒸発したカーボンは、主として電極間の隙間でアーク熱と触媒作用により単層カーボンナノチューブを含む生成物60(図4,図5参照)を形成する。また、反応容器3内には、上記アーク熱によって雰囲気ガスが加熱されることや電極11,12間の隙間の下方に設置されたガス供給口23から雰囲気ガスが供給されること等によって、上記電極間の隙間を下から上へ通過してさらに反応容器3の上方に向かうガス流(上昇気流)が生じる。カーボンナノチューブ含有生成物60は、このガス流に乗って反応容器3の上方へと吹き上がり、回収体50へと誘導される。ここで、回収体50は水平方向に延びる複数(ここでは三本)の横棒51,52,53が上下に間隔をあけて配置されたスケルトン状の構造を有し、しかも全体としてその骨格が一平面内に収まる形状に構成されている(したがって、下方からみると略直線状であって投影面積が小さい)ので、細かい生成物は回収体50に引っ掛かりにくい。一方、相対的に長い(大きい)生成物は、より短い(細かい)生成物に比べて回収体50に捕捉されやすい。これは、ある程度以上の長さを有する生成物は、例えば図5に示すように、複数の横棒間に張り渡された状態で回収体50に効率よく引っ掛かることができるからである。このように回収体50に捕捉されやすい形状の生成物は、該生成物を構成する個々のカーボンナノチューブ(典型的には、主として単層カーボンナノチューブ)の長さが比較的大きく、また、該カーボンナノチューブを一方向(典型的には、該生成物の長尺方向)によく配向した状態で含むことが多い。ここに開示されるカーボンナノチューブ製造方法および装置によると、このように長くてよく配向したカーボンナノチューブ(該カーボンナノチューブを含む生成物60)を回収体50によって効率よく(例えば、より短い生成物に比べて優先的に)捕捉することができる。また、上記生成物が典型的には複数の横棒間にまたがって張り渡された(掛け渡された)状態で回収されるので、生成物中における配置がよりよく維持された状態のカーボンナノチューブを効率よく回収(製造)することができる。
上記生成物60を捕捉するにあたり、好ましくは、モータ59を作動させて回収体50を支柱55の周囲に(支柱55を回転軸として)回転させる。この回転により、図4に示すように、カーボンナノチューブ含有生成物60が長尺方向に広がった状態で反応容器3内を下から上(図4では右から左)へと吹き上がるのに対して、回収体50を構成する横棒51,52,53が反応容器3内の空間を横切るように(したがって生成物60の吹き上がり経路を横切るように)移動する。その結果、反応容器3内を吹き上がる生成物60を、その吹き上がり経路と交差する方向から(例えば、吹き上がり経路との間に形成される角度が±45°以下、好ましくは±30°以下、より好ましくは±10°以下となる方向、典型的には直交する方向)から、横棒51,52,53によりすくい取って(すくい上げて)回収することができる。ここで、回収体50はスケルトン形状であるので、該回収体50を回転させても反応容器3内における雰囲気ガスの流れ(例えば、生成物60を吹き上げる上昇気流)を不必要に乱すことはない。このように回収体50を回転させることにより、長くてよく配向したカーボンナノチューブ(該カーボンナノチューブを含む生成物60)を、より効率よく捕捉することができる。
なお、このように回収体50を回転させつつ生成物60を捕捉する場合、生成物60の上昇速度や上昇量(生成量)に対して回収体50の回転速度が高すぎると、上下に隣り合う横棒にまたがって引っ掛かる生成物(典型的には、主として該生成物に含まれるカーボンナノチューブの配向方向が概ね上下方向となるように捕捉された生成物)よりも、回収体の周方向に絡みつく生成物(すなわち、該生成物に含まれるカーボンナノチューブの配向方向が概ね周方向(換言すれば水平方向)となるように捕捉された生成物)のほうが優勢になることがあり得る。このように絡みついた生成物は、カーボンナノチューブの配置(絡みの程度、配向性、折れや曲がりの程度等)が崩れたものとなりやすい。したがって、かかる周方向の絡みつきが抑制されるように回収体50の回転速度を設定するとよい。
生成物60の吹き上げおよび回収体50による回収を効率よく行うためには、電極11,12の先端が配置された位置(アーク放電を発生させる位置)から反応容器3の上端までの間に十分な高さのある空間が確保されていることが好ましい。特に限定するものではないが、電極11,12の先端が配置された位置から反応容器3の上端までの高さを例えば20cm〜140cm程度(好ましくは例えば20cm〜100cm程度)とすることができる。この高さを例えば40cm以上(典型的には40cm〜140cm程度、例えば60cm〜120cm程度)としてもよい。かかる空間に回収体50が配置された構成の装置1は、この回収体50によって一方向によく配向した多数の長いカーボンナノチューブを含む生成物を効率よく(特性の異なる生成物から効果的に分離して)回収するのに適している。また、電極11,12の先端が配置された位置から回収体50の下端(特に、最も下方に配置された横棒すなわち横棒51)までの高さを例えば10cm〜50cm(好ましくは例えば10cm〜30cm)程度とすることができる。より品質の揃った生成物を得るという観点から、回収体50の外周端(ここでは、横棒51,52,53の先端)と反応容器3の側面(図1に示す例では内筒32の内壁面32a)との間に多少の(典型的には1cm〜15cm程度、例えば1cm〜5cm程度の)間隔をあけることが好ましい。同様に、最も上方に配置された横棒(ここでは横棒53)と反応容器の上端(蓋体3aの下面)との間に多少の(典型的には2cm〜20cm程度、例えば2cm〜5cm程度の)間隔をあけることが好ましい。
回収体50に捕捉されたカーボンナノチューブ含有生成物60は、本装置を作動して単層カーボンナノチューブを所定量堆積させた後に、反応容器3の上部を開閉可能に設けられた蓋体3aを開いて反応容器3から回収体50を取り出し、該回収体50に捕捉された(付着した)生成物60を例えばピンセット等で掴んで引き剥がすことによって回収体50から分離することができる。あるいは、蓋体3aを開いて、反応容器3内にある回収体50から(すなわち、回収体50を反応容器3から取り出すことなく)生成物60を引き剥がし(分離し)てもよい。本装置によると、単層カーボンナノチューブ含有生成物60は、主として回収体50の横棒間に張り渡された状態で捕捉されているので(図5参照)、ピンセット等の簡易な器具によっても容易に回収体50から分離することができる。
通常、このようにして得られた生成物には、単層カーボンナノチューブとともに、触媒(例えば鉄粉末)および不純物炭素が含まれている。該生成物に対し、これら触媒および不純物炭素の含有量を低減する処理(すなわち生成物を精製する処理)を施すことができる。この精製処理は、加熱処理および酸処理を含むことができる。加熱処理としては、例えば、得られた生成物を670K〜720Kの温度で25分〜35分間加熱することで、生成物中の不純物炭素をCOまたはCO等に酸化してガスとして除去するとともに触媒を酸化する処理を採用することができる。酸処理としては、加熱処理後の生成物を例えば塩酸等で処理することで、先行する加熱処理等によって酸化された触媒を生成物から除去する処理を採用することができる。
本発明に係る製造装置および/または製造方法によれば、カーボンナノチューブ(好ましくは、主として単層カーボンナノチューブ)を含む生成物を、該生成物中におけるカーボンナノチューブの配置がよりよく維持された状態で、回収体50により捕捉して回収することができる。したがって、回収操作に起因する配向の乱れ、絡み等がよりよく抑制されたカーボンナノチューブ(カーボンナノチューブ含有生成物)が得られる。この装置および/または方法により得られる(製造される)好ましい生成物は、一方向によく配向した多数の長いカーボンナノチューブを含む(したがってカーボンナノチューブの絡み(乱れ)の少ない)生成物である。かかる生成物は、典型的には、図5に模式的に示すように、生成物60に含まれるカーボンナノチューブの配向方向が概ね上下方向となるようにして回収体50を構成する複数の横棒の間に膜状もしくはカーテン状に張り渡された状態で捕捉される。また、本発明の装置および/または方法により製造されたカーボンナノチューブ(カーボンナノチューブ含有生成物)の好適例は、上記のように一方向によく配向した多数の長いカーボンナノチューブを含む薄い膜状もしくはカーテン状であって、該膜の一部をピンセット等で掴んで横方向に引っ張ると縦方向(上下方向)にきれいに裂ける一方、縦方向への引っ張りに対しては横方向よりも明らかに高い強度を示すカーボンナノチューブ(カーボンナノチューブ含有生成物)である。かかるカーボンナノチューブ含有生成物は、典型的には、上記のように縦方向に裂けるときに、薄布を裂くような引裂き音を発する。また、該カーボンナノチューブ含有生成物は、典型的には、捕捉されたままの状態では典型的には艶のない黒色を呈するが、上記膜の表面をカーボンナノチューブの配向方向に静かに撫で付けることにより金属光沢のある外観を呈するようになる。本発明の装置および/または方法により製造されたカーボンナノチューブ(カーボンナノチューブ含有生成物)は、かかる特異な性質を有することによって、従来の装置または方法により得られたカーボンナノチューブ(カーボンナノチューブ含有生成物)から明白に区別されるものであり得る。
このように一方向によく配向した多数の長いカーボンナノチューブを含む生成物(典型的には薄膜状の生成物)は、該生成物を構成するカーボンナノチューブの長さの割にほぐれやすいので、後続する処理(精製処理、加工処理等)を行いやすいという利点を有する。したがって、例えば該生成物の精製を効率よく行うことができる。また、このような生成物は該生成物を糸状に紡ぐ(フィラメントに加工する)のに適している。
一方、回収体50に捕捉されなかったカーボンナノチューブ含有生成物は、例えば以下のようにして回収することができる。
図1に示す電極11,12間の隙間にアーク放電を発生させると、反応容器3の中央部(典型的には上記隙間の上方)に上昇気流が生じる一方、反応容器3の側壁は中央部に比べて低温であるため、反応容器3の周辺部(外周付近)に下降気流が生じる。その結果、反応容器3の内部には、中央部で上昇して周辺部で下降するガス流(雰囲気ガスの対流)が形成される。内筒32内の冷媒通路および冷却ジャケット33の一方または両方に適当な冷媒(例えば水)を供給して内筒32および/または反応容器3を強制的に冷却することにより、反応容器3内の中央部と周辺部との温度差を増大させて対流を促進することができる。少なくとも内筒32内の冷媒通路に冷媒を流通させて内壁面32aを強制冷却することが好ましい。上記ガス流(上昇気流)に乗って電極11,12から上方に吹き上げられたが回収体50に捕捉されなかった生成物60は、引き続き上記ガス流(今度は下降気流)に乗って反応容器3の周辺部を降下する。この生成物60が、内筒32および/または反応容器3の内壁面、典型的には主として電極11,12よりも上方に位置する内筒32の内壁面32a(特に、強制冷却された内壁面32a)に付着する。なお、この内壁面32aは平滑な金属面、例えばステンレス製であることが、カーボンナノチューブ(生成物60)をそのファンデルワールス力によって付着させ易いため好ましい。また、内壁面32aの強制冷却は、例えば、該内壁面32aの温度が所定の温度、具体的には例えば15℃〜30℃(好ましくは18℃〜25℃)程度となるように行うとよい。
上記方法および装置を用いたカーボンナノチューブの製造において、回収体50に捕捉されず内筒32の内壁面32aに付着したカーボンナノチューブ含有生成物(すなわち、第1補助回収部30により回収された生成物)は、通常、回収体50に捕捉された生成物とはその特性(単層カーボンナノチューブの割合、カーボンナノチューブの長さ、配向の程度、絡みの程度等)が異なる。典型的には、回収体50に捕捉された生成物は、第1補助回収部30により回収された生成物に比べて、より長いカーボンナノチューブに富み且つ該カーボンナノチューブの配向性が高い。したがって、アーク放電による生成物を回収体50と第1補助回収部30とに分けて回収することにより、特性の異なるカーボンナノチューブ含有生成物(カーボンナノチューブ)を同時に(並行して)製造し、且つその生成物を特性に応じて分別して回収することができる。また、上記アーク放電により生成したカーボンナノチューブの回収率を高めることができる。
なお、第1補助回収部30の内壁面(回収面)32aに付着した生成物60は、例えば蓋体3aを開いて反応容器3から内筒32を取り出し、該内筒32の内壁面32aに捕捉された(付着した)生成物60を例えばピンセット等で掴んで引き剥がすことによって内壁面32aから分離することができる。第1補助回収部30によって回収された生成物には、例えば、回収体50に捕捉されて回収された生成物と同様に精製処理を施すことができる。
また、回収体50に捕捉されなかったカーボンナノチューブ含有生成物は、さらに、例えば図13に示す構成のカーボンナノチューブ製造装置7を用いて、以下のようにして回収することができる。なお、図13に示す装置7において、図1に示す装置1と同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付している。この装置7は、反応容器3と連通する第2補助回収部40を追加的に備える点を除いては、図1に示す装置1と概ね同様に構成されている。ただし、図13では、図を見やすくするために一部の図示を省略している。
第2補助回収部40は、反応容器3の上部側面に設けられた排出管41を介して反応容器3内の空間と連通する分離室42と、この分離室42の内部に配置されたフィルタ(例えばHEPAフィルタ)43と、分離室42に接続された油回転ポンプ等の真空ポンプ45と含む。真空ポンプ45の作動により反応容器3内から雰囲気ガスを吸引すると(このとき、初期の雰囲気調整に用いた排気管27側では図1に示すバルブ27Aを閉じておくとよい。)、回収体50に捕捉されなかった生成物60のうち比較的軽い(細かい)ものは該雰囲気ガスの流れに乗って排出管41から分離室42へと導入される。この雰囲気ガスをフィルタ43に通すことにより、該雰囲気ガスに含まれる生成物60をフィルタ43により捕捉することができる。フィルタ43を通過した雰囲気ガスは、そのまま(または必要に応じて適切な処理を施した後に)系外に排出してもよく、あるいは反応容器3の例えば底部に設けられたガス戻し口48から反応容器3内に戻してもよい。このように雰囲気ガスを循環利用(リサイクル)することによって、装置の運転コスト(ひいてはカーボンナノチューブの製造コスト)を低減することができる。
一方、回収体50に捕捉されなかった生成物60のうち反応容器3から吸い出されなかったものは、反応容器3の周辺部を下降気流に乗って降下し、上記と同様に内筒32の内壁面32aに付着する。したがって、図13に示す構成の装置7によると、カーボンナノチューブ回収部5(回収体50)、第2補助回収部40および第1補助回収部30の三つの機構によって生成物を回収することができる。
上記方法および装置を用いたカーボンナノチューブの製造において、回収体50に捕捉されたカーボンナノチューブ含有生成物と、回収体50に捕捉されず第2補助回収部40のフィルタ43により捕捉された生成物と、回収体50にも第2補助回収部40にも捕捉されず第1補助回収部30により回収された生成物とは、通常、それぞれ特性(単層カーボンナノチューブの割合、カーボンナノチューブの長さ、配向の程度、絡みの程度等)が異なる。典型的には、第2補助回収部40により捕捉された生成物は、回収体50または第1補助回収部30により回収された生成物に比べて、より短いカーボンナノチューブに富む。したがって、アーク放電による生成物を回収体50、第1補助回収部30および第2補助回収部40に分けて回収することにより、特性の異なるカーボンナノチューブ含有生成物(カーボンナノチューブ)を同時に(並行して)製造し、且つその生成物を分別して回収することができる。また、上記アーク放電により生成したカーボンナノチューブの回収率を高めることができる。
なお、図13には分離室42内に3枚のフィルタ43を配置した例を示しているが、フィルタの枚数は特に限定されず、例えば1枚〜10枚(好ましくは2枚〜5枚)とすることができる。また、第2補助回収部40の構成は図13に示すものに限られず、反応容器3から排出された雰囲気ガスの流路にフィルタを配置して該フィルタによって雰囲気ガスからカーボンナノチューブ含有生成物を濾別し得る種々の構成を採用し得る。例えば、反応容器3と分離室42とを接続する位置(排出管41を設ける位置)を内筒32よりも下方(典型的には、内筒32の下端よりも低く電極11,12よりも高い位置)としてもよい。第2補助回収部40によって回収された生成物には、例えば、回収体50に捕捉されて回収された生成物と同様に精製処理を施すことができる。
以上、本発明の好適な実施態様を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した態様を様々に変形、変更したものが含まれる。
例えば、横棒51,52,53が水平方向の配置を保ちつつ反応容器3内の空間を横切るように回収体50を移動させる態様として、図1および図13には、支柱55を回転軸として回収体50を一方向に回転(回転移動)させる態様を例示しているが、例えば図6に示すように、横棒51,52,53の軸に直交する方向(すなわち、横棒51,52,53を含む平面に直交する方向)に支柱55を往復移動させてもよい。これにより、横棒51,52,53が水平方向の配置を保ったまま、それらの軸に直交する方向に反応容器内の空間を水平に横切って往復移動する。また、図7に示すように、横棒51,52,53の軸に直交する方向への移動を含む所定の軌道(ここでは、前記直交方向を長軸方向とする長円状の軌道)に沿って支柱55を移動(周回)させてもよい。あるいは、図8に示すように、支柱55の上端を支点として、横棒51,52,53の軸に直交する方向に回収体50を振り子運動させてもよい。これらの態様によっても、反応容器3内の空間を横切る横棒51,52,53によって、反応容器3内に形成された上昇気流のなかから生成物60を適切にすくい取る(捕捉する)ことができる。
また、回収体50の構成(形状)に係る変形例として、例えば図9〜図12に示す例が挙げられる。
図9は一変形例に係る回収体150を反応容器3(図1参照)の上方からみた状態を示す模式図である。この回収体150は、図1に示す支柱55と同様に蓋体3aから下方に延びる支柱155と、支柱155の上端から約1/3の位置から外方へと水平に延びるように120°間隔で設けられたスティック状の横棒153a,153b,153cと、支柱155の上端から約2/3の位置から外方へと水平に延びるように120°間隔で設けられたスティック状の横棒152a,152b,152cと、支柱155の下端から外方へと水平に延びるように120°間隔で設けられたスティック状の横棒151a,151b,151cとを有するスケルトン構造である。これらの横棒はいずれも略同一形状であって、横棒152aおよび横棒151aは横棒153aの真下に、同様に横棒152bおよび横棒151bは横棒153bの真下に、横棒152cおよび横棒151cは横棒153cの真下にそれぞれ配置されている。
図10は、他の一変形例に係る回収体250を反応容器3(図1参照)の上方からみた状態を示す模式図である。この回収体250は、図1に示す支柱55と同様に蓋体3aから下方に延びる支柱255と、支柱255と直交して水平に延びる三本の同一形状の横棒251,252,253とを有するスケルトン構造である。これらの横棒251,252,253は、それぞれ長手方向の略中央で、支柱255の下端、該下端から約1/3の位置、および該下端から約2/3の位置にこの順で固定されている。ただし、三つの横棒が同一平面内に配置された図1に示す例(回収体50)とは異なり、本変形例に係る回収体250では横棒251,252,253が螺旋状に配置されている。
図11は、他の一変形例に係る回収体350を横方向からみた状態を示す模式図である。この回収体350は、図1に示す支柱55と同様に蓋体3aから下方に延びる支柱355と、中央部が支柱355の下端に固定されて水平に延びる横棒353と、横棒353の両端からそれぞれ下方に延びる同一形状の縦棒356,357と、縦棒356,357の中央部を接続するように水平に配置された横棒352と、縦棒356,357の下端を接続するように水平に配置された横棒351とを有するスケルトン構造である。これらの横棒、縦棒および支柱はいずれも略同一平面内に配置されている。すなわち、この回収体350は、図1に示す回収体50と同様に、全体として平面状(下方からみて略直線状)に形成されている。
図12は、他の一変形例に係る回収体450を横方向からみた状態を示す模式図である。この回収体450は、図1に示す支柱55と同様に蓋体3aから下方に延びる支柱455と、中央部が支柱455の下端に固定されて水平に延びる横棒452と、横棒452の両端からそれぞれ下方に延びる同一形状の縦棒456,457と、縦棒456,457の下端を接続するように水平に配置された横棒451と、縦棒456の上端と縦棒457の下端とを接続する斜交棒458と、縦棒456の下端と縦棒457の上端とを接続する斜交棒459とを有するスケルトン構造である。これらの横棒、縦棒、斜交棒および支柱はいずれも略同一平面内に配置されている。すなわち、この回収体450は、図1に示す回収体50と同様に、全体として平面状(下方からみて略直線状)に形成されている。
このような種々の形状の回収体により、好ましくは該回収体の備える横棒のうち少なくとも一つが反応容器内の空間を横切るように該回収体を移動(回転移動、往復移動、所定の軌道に沿った移動、振り子移動等であり得る、)させることにより、反応容器3内に形成された上昇気流のなかから生成物60をすくい取る(捕捉する)ことができる。
また、回収体50により捕捉されなかった生成物を回収する第1補助回収部としては、上述のように強制冷却可能な内壁面32aを備える内筒32を用いる態様の他、例えば、特開2005−194127号公報または特開2005−343788号公報に記載された種々の態様を採用することができる。
一実施形態に係るカーボンナノチューブ製造装置の構成を示す模式図。 一実施形態に係る電極ワイパーの構成および作動を説明する模式図。 一実施形態に係るスラグ除去器の構成および作動を説明する模式図。 カーボンナノチューブを回収体ですくい取る様子を示す模式図。 カーボンナノチューブを捕捉した回収体を示す模式的正面図。 回収体の移動に係る変形例を示す模式的斜視図。 回収体の移動に係る変形例を示す模式的斜視図。 回収体の移動に係る変形例を示す模式的斜視図。 回収体の構成に係る変形例を示す模式的平面図。 回収体の構成に係る変形例を示す模式的平面図。 回収体の構成に係る変形例を示す模式的正面図。 回収体の構成に係る変形例を示す模式的正面図。 他の実施形態に係るカーボンナノチューブ製造装置の構成を示す模式図。
符号の説明
1,7 カーボンナノチューブ製造装置
3 反応容器
3a 蓋体
5 カーボンナノチューブ回収部
11 陽極(電極)
11a 陰極対向面(陽極先端部)
12 陰極(電極)
12a 陽極対向面(陰極先端部)
30 第1補助回収部
32 内筒
32a 内壁面(回収面)
40 第2補助回収部
43 フィルタ
45 真空ポンプ
50,150,250,350,450 回収体
51,52,53,151a〜c,152a〜c,153a〜c,251,252,253,351,352,353,451,452 横棒
55,155,255,355,455 支柱
59 モータ(回収体移動機構)
60 生成物
70 電極ワイパー
80 スラグ除去器

Claims (10)

  1. 反応容器と、
    該反応容器内に対向して且つ隙間をあけて配置された一対の電極であって該電極間においてカーボンを蒸発させ得るアーク放電を発生させる一対の電極と、
    前記蒸発したカーボンからなるカーボンナノチューブを捕捉し得る回収体であって前記電極の上方に配置された回収体と、
    を備え、
    ここで、前記回収体は、前記反応容器内を水平方向に延びる二以上の横棒を含むスケルトン構造であって、それらの横棒が上下に間隔をあけて配置された構成を有する、カーボンナノチューブ製造装置。
  2. 少なくとも一の前記横棒が前記水平方向の配置を保ちつつ前記反応容器内の空間を横切るように前記回収体を移動させる回収体移動機構をさらに備える、請求項1に記載の装置。
  3. 前記回収体は、前記反応容器の上端から下方に延びる一の支柱を備え、前記二以上の横棒の中央部は前記支柱に支持されており、それらの横棒の両端は開放されている、請求項1または2に記載の装置。
  4. 前記一対の電極は、該電極間の隙間が水平方向に形成されるように配置される、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
  5. 前記一対の電極のうち少なくとも一方の電極の外周に付着したゴミを払い除け可能に構成された電極ワイパーをさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
  6. 前記一対の電極のうち少なくとも陽極の先端部を該陽極の側方から打撃可能に構成されたスラグ除去器をさらに備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
  7. 前記反応容器内の空間に面する回収面であって強制的に冷却可能に構成された回収面を有する第1補助回収部をさらに備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
  8. 前記反応容器内から排出される雰囲気ガス中から前記回収体において回収されなかったカーボンナノチューブを回収し得る第2補助回収部を該反応容器と連通して備える、請求項1から7のいずれかに記載の製造装置。
  9. 反応容器内に一対の電極を対向して且つ隙間をあけて配置し、該電極間にアーク放電を発生させ、該電極からカーボンを蒸発させるとともに、その蒸発したカーボンから成り前記反応容器内を上方に吹き上がるカーボンナノチューブを前記電極の上方に配置された回収体によって捕捉するカーボンナノチューブ製造方法であって、
    ここで、前記回収体として、前記反応容器内を水平方向に延びる二以上の横棒を含むスケルトン構造であって、それらの横棒が上下に間隔をあけて配置された構成を有する回収体を用いる、カーボンナノチューブ製造方法。
  10. 少なくとも一の前記横棒が前記水平方向の配置を保ちつつ前記反応容器内の空間を横切るように前記回収体を移動させて前記カーボンナノチューブを捕捉する、請求項9に記載の方法。
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