(第1の実施形態)
本発明に係る第1の実施形態について、図1から図5を参照して説明する。図1は、本実施形態の内視鏡システムの全体構成を示していて、処置対象の内部に挿入して、対象物を観察し、また、該対象物の処置を行うものである。図1に示すように、内視鏡システム1は、処置対象内部に挿入される内視鏡挿入部3を有する内視鏡装置2と、処置対象内部において対象物を把持することが可能な処置具10とを備える。
内視鏡装置2は、上記内視鏡挿入部3と、内視鏡挿入部3の基端に設けられた内視鏡操作部4と、内視鏡操作部4と接続された内視鏡本体部5とで構成されている。内視鏡挿入部3は、処置対象の内部形状に応じて湾曲可能な可撓性を有する可撓管部3aと、可撓管部3aの先端に設けられ、内視鏡操作部4による操作で湾曲自在な湾曲部3bと、湾曲部3bの先端に設けられた硬質の先端部3cとを有する。内視鏡操作部4にはジョイスティック4aが設けられており、該ジョイスティック4aの操作により内視鏡挿入部3の湾曲部3bを四方向に自在に湾曲させることが可能である。また、内視鏡挿入部3の先端部3cには、処置対象を観察するための観察手段6が設けられている。観察手段6は、先端部3cに内蔵された図示しない撮像素子であるCCDと、先端部3cの先端面3dに露出するように設けられてCCDに結像させる対物レンズ6aとを有する。内視鏡本体部5には表示部としてディスプレイ5aが設けられており、観察手段6の図示しないCCDで取得された画像を表示することが可能となっている。また、内視鏡挿入部3において先端部3cにはLEDなどで構成された照明手段7が設けられており、先端側を照明することが可能となっている。また、内視鏡挿入部3及び内視鏡操作部4とには、先端側で内視鏡挿入部3の先端面3dに先端開口8aを有するとともに、基端側で内視鏡操作部4に基端開口8bを有するチャンネル8が形成されており、以下のように処置具10の挿入部11が挿通されている。
図2及び図3に示すように、処置具10は、チャンネル8に挿通される略管状の挿入部11と、挿入部11の内部に進退可能に配設された操作部材である操作ワイヤ12と、挿入部11の基端に設けられた操作部13と、挿入部11の先端に設けられた二つの把持部30、31とを備える。挿入部11は、略管状の外シース14と、該外シース14の内部に配設され、内部に操作ワイヤ12が進退可能に配設された略管状の内シース15とを有する。外シース14及び内シース15は、ともに樹脂などで形成されていて可撓性を有し、挿入された内視鏡装置2の内視鏡挿入部3とともに処置対象内部で湾曲させることが可能である。
図3に示すように、外シース14の基端には、基端口管16が設けられており、基端口管16からは外シース14の内部に配設された内シース15の基端側が突出している。そして、基端口管16には内シース15を固定する基端固定部17が設けられている。基端固定部17は、基端口管16に螺合された略筒状の固定部材18と、固定部材18の内部に配設されたOリング19及びワッシャ20とを有する。固定部材18の内周面には雌ネジ18aが形成されており、基端口管16の外周面に形成された雄ネジ16aに螺合されている。そして、固定部材18は基端口管16から基端側に突出しているとともに、基端内周面には、内周側に略環状に内フランジ18bが突出して形成されている。また、Oリング19は、ゴムなどの弾性変形可能な材質で形成されている。このため、固定部材18を基端口管16に締め込むことで、Oリング19は、固定部材18の内フランジ18bと基端口管16との間でワッシャ20を介して押し潰され、内周側に膨出することとなる。このため、内フランジ18bは、Oリング19に締め付けられ、これにより外シース14に対して内シース15を固定することができる。
また、図2に示すように、操作部13は、内シース15の基端に固定されている。操作部13は、内シース15と連通する略管状の本体部材21と、本体部材21に対して進退可能に外装された把持部材22とを有する。本体部材21の内部には、内シース15の内部に配設された操作ワイヤ12の基端側が延設されている。また、本体部材21は、軸方向に沿って形成され、内部まで連通するガイド溝21aを有している。そして、把持部材22には、本体部材21のガイド溝21a内に突出する凸部22aが形成されており、凸部22aの先端には操作ワイヤ12の基端が固定されている。このため、把持部材22は、本体部材21のガイド溝21aに沿って軸方向に進退可能であるとともに、操作力を与えて進退させることで凸部22aに固定された操作ワイヤ12を軸方向に進退させることが可能となっている。なお、把持部材22には、本体部材21に向かって突没可能なストッパー22bが設けられている。ストッパー22bは、図示しない付勢手段によって本体部材21に向かって付勢され、本体部材21に対して把持部材22を係止した状態となっている。一方、外部から付勢手段による付勢に抗してストッパー22bを押圧することで、本体部材21に対する把持部材22の係止状態が解除され、把持部材22を軸方向に進退させることが可能となっている。
また、図3に示すように、外シース14の先端内周面には略筒状の先端外口金23が、内シース15の先端外周面には略筒状の先端内口金24がそれぞれ嵌合固定されている。先端内口金24の外径は、先端外口金23の内径よりも大きく設定されている。このため、基端固定部17による固定を解除することで上記のとおり外シース14に対して内シース15を軸方向に進退可能とするとともに、先端外口金23と先端内口金24とによって一定量以上外シース14に対して内シース15が先端側へ進出しないように規制している。また、先端内口金24は、内シース15の先端側に配設された略筒状で硬質の材質で形成された筒部材25にも嵌合固定されており、これにより筒部材25と内シース15とを同軸に連結していて、後述するように把持部30、31の各第二のバネ材36の基端は、筒部材25を介して内シース15に固定されている。
また、二つの把持部30、31のそれぞれは、略板状の第一のバネ材35と、略板状で第一のバネ材35の径方向外側に互いに対向するように配設された第二のバネ材36とを有する。第一のバネ材35は、基端で、操作ワイヤ12の先端に固定された略管状の連結部材37を介して操作ワイヤ12と接続されて、軸方向先端側へ延設されているとともに、先端側に向かって次第に径方向外側へ、径方向内側に凸として湾曲するように、全体として略90度湾曲するように形成されている。そして、第一のバネ材35は、先端35aで第二のバネ材36の先端36aと連結されている。第二のバネ材36は、第一のバネ材35よりも大きな曲率半径で湾曲し、基端で内シース15に連結された筒部材25の外周面に固定されている。また、各把持部30、31の互いに対向する把持面30a、31aにおいて、先端側の範囲には、把持した対象物を保持するための保持手段として摩擦板38が設けられている。摩擦板38は、例えばゴムなどで形成されている。
ここで、本実施形態では、第一のバネ材35及び第二のバネ材36からなる二つの把持部30、31は、一つの板バネ39によって一体的に構成されている。すなわち、板バネ39は、一端39aを一方の把持部30の第二のバネ材36の基端36bとして筒部材25の外周面に固定されるとともに、先端側に向かって湾曲しながら配設され、第二のバネ材36の先端36aとなる位置で径方向内側に折り返されて、第一のバネ材35を構成している。そして、板バネ39は、一方の把持部30の第一のバネ材35として先端側から基端側に向かって湾曲し、第一のバネ材35の基端35bとなる位置で折り返されて折返部39bを構成し、該折返部39bが連結部材37の内周面に嵌合することで固定されている。そして、折返部39bで折り返された板バネ39は、他方の把持部31の第一のバネ材35として基端側から先端側に向かって湾曲しながら配設されている。そして、板バネ39は、他方の把持部31の第一のバネ材35の先端35aとなる位置で径方向外側に折り返され、第二のバネ材36として湾曲しながら基端側へ配設され、他端39cが第二のバネ材36の基端36bとして筒部材25の外周面において一端39aが固定された位置と反対側の位置に固定されている。
なお、第一のバネ材35と第二のバネ材36とは、先端35a、36aで折り返した連続する構造としたが、2つの独立したバネ材を先端で接合した構造としても良い。
次に、この実施形態の内視鏡システム1及び処置具10の作用を説明する。図1に示すように、処置対象の内部に位置する対象物を処置具10で把持する場合には、処置具10の挿入部11を内視鏡装置2のチャンネル8に挿通させた状態で、内視鏡挿入部3を、観察手段6によって内部の状況を確認しながら、処置対象の内部に挿入していく。そして、目的の近傍となる位置まで内視鏡挿入部3を挿入させたら、処置具10の操作部13を把持して押し込むことで、内視鏡挿入部3のチャンネル8の先端開口8aから処置具10の把持部30、31を突出させ、対象物に対する把持部30、31の位置を調整する。この際、基端固定部17による固定を解除して外シース14に対して内シース15を進退させるようにして微調整することで、より正確に対象物に対する把持部30、31の位置を調整することができる。
次に、操作部13の把持部材22に操作力を与えて該把持部材22を基端側へスライドさせる。これにより操作ワイヤ12は、与えられた操作力に応じて挿入部11の内シース15内部において基端側へ後退することとなり、操作ワイヤ12の先端側に接続された各把持部30、31の第一のバネ材35は基端側へ牽引されることなる。また、各把持部30、31において、それぞれの第二のバネ材36は、先端36a、35a同士で第一のバネ材35と連結されているとともに、基端36bが挿入部11の内シース15に筒部材25を介して固定されており操作ワイヤ12の進退に対して拘束されている。このため、図4に示すように、各把持部30、31において先端35a、36a同士が連結された第一のバネ材35及び第二のバネ材36は、操作ワイヤ12を後退させるのに応じて湾曲した状態から引っ張られて径方向内側に向かって変形することとなり、これにより両把持部30、31は互いに重なり合うようにして閉じた状態になろうとする。このため、両把持部30、31の間に配置された対象物S1は、各把持部30、31の第一のバネ材35の把持面30a、31aに挟み込まれるようにして把持されることとなる。この際、各把持面30a、31aには、保持手段としてゴムで形成された摩擦板38が設けられ、該摩擦板38に対象物S1が当接することとなる。このため、摩擦板38により摩擦力を高めて対象物S1を把持することができ、より確実に対象物S1を把持することができる。
また、図5に示すように、図4に示された対象物S1よりも小さい、具体的には、把持部30、31同士の間隔と略等しい程度の対象物S2の場合には、さらに操作ワイヤ12を牽引することで、把持部30、31同士が閉じることとなり、これにより対象物S2を把持することができる。この際、摩擦板38は、上記同様に対象物S2との摩擦力を高めることができるとともに、摩擦板38により形成される段部38aによって対象物S2を係止することができ、より確実に対象物S2を把持することができる。また、さらに操作ワイヤ12を牽引すると、図6に示すように、各把持部30、31の第一のバネ材35及び第二のバネ材36は、径方向内側に凸となるように湾曲した状態から、次第に径方向外側に凸となるように湾曲した状態に変形することとなり、これにより対象物S2を包み込むようにして把持することができ、より確実に把持された状態とすることができる。
以上のように、本実施形態の処置具10では、操作ワイヤ12を牽引して二つの把持部30、31を開いた状態から閉じた状態とすることで、対象物を把持することが可能である。そして、把持動作を行う各把持部30、31が第一のバネ材35及び第二のバネ材36からなり、両者は、単に互いに先端35a、36aが連結されているとともに、一方の基端35bが操作ワイヤ12に接続され、他方の基端36bで挿入部11に固定されているのみである。このため、弾性的に湾曲変形することで対象物を把持可能としつつ、簡単な構造とすることができ、部品コスト、組立コストの低減を図ることができる。特に、二つの把持部30、31の第一のバネ材35及び第二のバネ材36が、一つの板バネ39を折り返して構成されているので、より簡単な構造とし、さらにコストの低減を図ることができる。さらに、各把持部30、31を構成する第一のバネ材35及び第二のバネ材36は、上記のとおり板バネ39を折り返して構成されていることで、それぞれ略板状の部材として互いに対向するように配設された構成となっている。このため、操作部13に与えられた操作力により操作ワイヤ12を基端側に牽引することで、該操作量に応じて互いに対向する径方向の一方向に自在に湾曲可能であるとともに、径方向において一方向と直交する他方向には高い剛性を有するものとすることができる。このため、各把持部30、31の第一のバネ材35及び第二のバネ材36をより自在に開閉可能とするとともに、把持部30、31同士により確実に対象物を把持することができる。
また、本実施形態では、把持部30、31は、第一のバネ材35及び第二のバネ材36が、先端側が径方向外側に向かって湾曲した状態から、操作ワイヤ12の牽引に応じて軸方向に沿って配設されるように弾性変形することで対象物S1、S2を把持することができる。すなわち、把持部30、31同士は、操作部13によって操作力を与えない時に開いた状態であるとともに、操作部13に操作力を与えて操作ワイヤ12を進退させた時に把持する構造となっているので、与えた操作力に応じてより確実に対象物S1、S2を把持することができる。
なお、上記においては、処置具10の挿入部11は、内視鏡装置2のチャンネル8に挿通され使用されるものとしたが、これに限るものでは無く、直接処置対象の内部に挿入して使用するものとしても良い。また、把持部30、31によって対象物を把持する際に、把持した対象物を確実に保持するための保持手段として、摩擦板38が設けられるものとしたが、これに限るものではない。図7は、この実施形態の処置具の第1の変形例を示している。図7に示すように、本変形例の処置具40では、把持部30、31の各把持面30a、31aに、保持手段として、先端が先鋭状に形成された凸部41が複数形成されている。このような凸部41においても、把持部30、31によって対象物を把持する際に、先鋭状に形成された凸部41が直接対象物に当接することで、対象物を係止し、保持することができる。
また、図8は、この実施形態の処置具の第2の変形例を示している。図8に示すように、本変形例の処置具45では、把持部30、31の各把持面30a、31aに、保持手段として、平坦面46aを有し、磁石からなる凸部46が間隔を有して複数形成されている。このような凸部46においては、把持部30、31によって磁石や磁性体からなる対象物を把持する際に、磁石からなる凸部46との間で磁力が生じることで保持することができる。なお、磁石や磁性体ではない対象物に対しても、複数の凸部46が係止することで保持手段として把持部30、31によって把持された対象物を保持する作用を有する。
また、上記実施形態では、挿入部11の外シース14及び内シース15は、可撓性を有する材質で基端から先端まで形成されているものとしたが、これに限るものでは無く、例えば、その一部に内視鏡挿入部3の湾曲部3b同様に基端側からの操作によって湾曲可能とするものとしても良い。また、湾曲状態を維持可能な構成を備えるものとしても良い。図9は、この実施形態の処置具の第3の変形例を示している。図9に示すように、本変形例の処置具50では、挿入部51の外シース52において先端側の部分に湾曲状態を維持可能な湾曲保持部52を有している。湾曲保持部52は、軟鉄などの塑性変形可能な材質で形成されている。このため、外力を作用させることで容易に湾曲させることが可能であるとともに、所望の形状に湾曲した状態を維持することができる。このため、挿入部51の挿入方向に対して側方に位置する対象物でも、先端側に設けられた把持部30、31を側方に向かうようにして確実に把持することができる。
図10から図12は、この実施形態の第4の変形例を示している。図10に示すように、本変形例の処置具55は、各把持部30、31の第一のバネ材35の先端35aにおいて、各把持面30a、31aとなる面から突出する略板状の係止部56が設けられている。そして、第一のバネ材35の先端35aに第二のバネ材36の先端36aが溶接等で接合され、第二のバネ材36の基端36bは、筒部材25に固定されている。そして、操作ワイヤ12が牽引されていない状態では、各把持部30、31が基端側から先端側へ径方向外側に向かって湾曲していて、操作ワイヤ12を牽引することで、係止部56は閉じることとなる。
図11に示すように、この変形例の処置具55では、把持部30、31により把持された対象物S3は、先端側において係止部56によって係止されることとなり、把持された状態を確実に保つことができる。また、図12に示すように、対象物S4の大きさが把持部30、31に対して大きく、先端部分でしか把持することができなくても、係止部56が対象物を係止することにより、確実に把持することができる。
図13は、この実施形態の第5の変形例を示している。図13に示すように、本変形例の処置具60は、第一のバネ材35及び第二のバネ材36で構成される四組の把持部61、62、63、64が、挿入部11の軸線回りに等間隔に配列されている。このような変形例の処置具60では、上記の他の例のように二組の把持部30、31で両側から挟むだけでなく、さらに他の方向からも挟み込むことができるので、より確実に対象物を把持することができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図14及び図15は、本発明の第2の実施形態を示したものである。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図14に示すように、この実施形態の処置具70は、挿入部71と、挿入部71の内部に進退可能に配設された操作部材である可撓性を有する操作用チューブ72と、挿入部71の基端に設けられた図示しない操作部と、挿入部71の先端に設けられた二つの把持部73、74とを備える。なお、操作部は、図示しないが、基本的な構成は第1の実施形態の操作部13と同様であり、把持部材22の操作により操作用チューブ72を進退させることが可能となっている。
また、挿入部71は、可撓性を有する略環状のシース71aと、シース71aの先端内周面に嵌合固定された先端口金71bとを有する。また、把持部73、74のそれぞれは、略板状で弾性的に湾曲可能な第一のバネ材75及び第二のバネ材76を有する。各把持部73、74の第一のバネ材75は、先端75aが屈曲して係止部77を構成している。また、各把持部73、74の第一のバネ材75は、一つの板バネ78を折曲部78aで折り曲げることで、一体的に構成されており、各第一のバネ材75の基端75bとなる折曲部78aが操作用チューブ72の先端に嵌合し固定されている。また、各把持部73、74の第二のバネ材76は、対応する第一のバネ材75に対向するようにして配設されている。第二のバネ材76の先端76aは、第一のバネ材75に沿って屈曲し、第一のバネ材75の先端75aと溶接等により接合されている。また、第二のバネ材76の基端76bは、挿入部71の先端口金71bの内周面に固定されている。
このような実施形態の処置具70でも、同様に、操作部材である操作用チューブ72を図示しない操作部により牽引することで、第一のバネ材75の基端75bが引き込まれ、これにより把持部73、74hが、弾性的に湾曲して閉じた状態とすることができる。このため、把持部73、74によって対象物S5を把持することができ、また、係止部77によって先端側を係止することで、確実に把持した状態とすることができる。また、本実施形態では、操作部材を操作用チューブ72とし、また、挿入部11を単独のシースとしている。このため、部品数を減らして、より簡単な構造でコストを低減させることができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図16及び図17は、本発明の第3の実施形態を示したものである。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図16及び図17に示すように、この実施形態の処置具80は、挿入部81と、挿入部81の内部に進退可能に配設された操作部材である操作ワイヤ12と、挿入部81の基端に設けられた図示しない操作部と、挿入部81の先端に設けられた二つの把持部82、83とを備える。なお、操作部は、図示しないが、基本的な構成は第1の実施形態の操作部13と同様であり、把持部材の操作により操作ワイヤ12を進退させることが可能となっている。
また、挿入部81は、可撓性を有する略環状のシース84と、シース84の先端内周面に嵌合固定された略管状の先端口金85とを有する。先端口金85は、本体部86と、本体部86の基端側に設けられた嵌合部87とを有する。嵌合部87は、シース84の先端内周面に嵌合し固定されており、本体部86は、シース84の先端側に突出するように配設されている。また、本体部86は、シース84の先端開口を閉塞する壁部86aを有している。該壁部86aには各把持部82、83とそれぞれ対応するように二つの貫通孔86b、86cが形成されている。また、壁部86aにおいて先端側の面には、凹部86dが形成されており、筒部材88の基端が嵌合して固定されている。
また、把持部82、83のそれぞれは、略板状で弾性的に湾曲可能な第一のバネ材90及び第二のバネ材91を有する。各把持部82、83の第一のバネ材90は、一つの板バネ92を折曲部92aで折り曲げることで、一体的に構成されている。そして、各第一のバネ材90の基端90aとなる折曲部92aが筒部材88に嵌合し固定されており、これにより第一のバネ材90は、筒部材88を介して挿入部81の先端口金85に固定されている。
また、各把持部82、83の第二のバネ材91は、一つの板バネ93を略コノ字状に折り返すことで一体的に形成されており、操作ワイヤ12の先端に固定された連結部材94を介して操作ワイヤ12に接続されている。より具体的には、板バネ93は、一方の把持部82の第二のバネ材91として、先端側から基端側に向かって配設され、先端口金85の一方の貫通孔86bに挿通されてシース84の内部まで配設されている。そして、板バネ93は、上記のとおり略コノ字状に折り返されて、連結部材94に径方向に連通するように形成された挿通孔94aに挿通されて、他方の把持部83の第二のバネ材91として、先端口金85の他方の貫通孔86cに挿通され、先端側へ配設されている。そして、各把持部82、83の第二のバネ材91の先端91aは、それぞれ対応する第一のバネ材90の先端90bと溶接等により接合されている。また、各把持部82、83の第一のバネ材90の間には袋部95が設けられている。袋部95は、膜状の部材で、弛んだ状態で縁部が把持部82、83の第一のバネ材90に固定されている。なお、図16及び図17は、操作ワイヤ12が基端側へ後退し、各把持部82、83の第二のバネ材91が牽引されることにより、把持部82、83同士が開いた状態を示している。そして、本実施形態では、操作ワイヤ12に与えている操作力を解除することで、第一のバネ材90及び第二のバネ材91の復元力により把持部82、83を互いに重なり合って閉じた状態とすることができる。
このため、本実施形態の処置具80では、対象物を把持する際には、図16及び図17に示すように、操作ワイヤ12に操作力を与えて牽引して把持部82、83を開いた状態にさせる。そして、把持部82、83の間に対象物を配置した状態で操作ワイヤ12に与えた操作力を解除することで、第一のバネ材90及び第二のバネ材91の復元力によって対象物を把持することができる。また、本実施形態では、把持部82、83の間に袋部95が設けられていることで、把持された対象物は、袋部95によって包み込まれることとなる。このため、本実施形態の処置具80では、対象物が把持部82、83に把持された状態をより確実なものとすることができる。
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図18から図21は、本発明の第4の実施形態を示したものである。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図18及び図19に示すように、この実施形態の処置具100は、挿入部101と、挿入部101の先端に設けられた二つの把持部102、103とを備える。挿入部101は、略管状で可撓性を有するシース105と、シース105の内部に進退可能に配設されたワイヤ106とを有する。そして、各把持部102、103は、筒部材107を介して挿入部101のワイヤ106に接続されている。また、各把持部102、103は、略板状の第一のバネ材110と、略板状で第一のバネ材110の径方向外側に互いに対向するように配設された第二のバネ材111とを有する。
各把持部102、103の第一のバネ材110は、一つの板バネ112を折返部112aでU字状に折り返すことで一体的に構成されている。第一のバネ材110の基端となる板バネ112の折返部112aには、基端側に向かって嵌合部112bが突出していて、挿入部101のワイヤ106の先端に固定された筒部材107に嵌合し固定されている。また、各把持部102、103の第一のバネ材110の先端110aには、それぞれ互いに対向する把持面102a、103aとなる側に突出する係止部114と、反対側に突出する固定部115とが一体的に形成されおり、固定部115には対応する第二のバネ材111の先端111aが、挟持部材115aとによって挟み込まれて固定されている。また、各把持部102、103の第二のバネ材111は、挿入部101のシース105の内部において軸方向基端側に向かって配設されている。
そして、図示しないが、挿入部101の基端には操作部が設けられており、各把持部102、103の第二のバネ材111の基端が接続されていて、操作部による操作によって第二のバネ材111を進退させることが可能となっている。すなわち、第二のバネ材111は、各把持部102、103を構成するとともに、各把持部102、103を開閉させるための操作部材としての機能も有している。また、挿入部101のワイヤ106も図示しない上記操作部に接続されている。そして、図示しない操作部は、第二のバネ材111を単独で進退させることが可能であるとともに、ワイヤ106とともに一体的に進退させることが可能な構成となっている。ここで、挿入部101において、シース105には、外周面から内周面まで連通し、先端に開口して基端側に延びる切欠き116が形成されている。また、ワイヤ106の先端に接続された筒部材107の外周面には、シース105の切欠き116に挿入可能な凸部117が形成されている。このため、ワイヤ106は図示しない操作部により筒部材107の凸部117が切欠き116の基端116aに当接するまで基端側に後退させることが可能となっている。
次に、この実施形態の処置具100の作用を説明する。図18に示すように、凸部117が切欠き116の先端116bまたは切欠き116よりも先端側の位置A1となるようにワイヤ106及びワイヤ106に接続された把持部102、103を位置させた場合、各把持部102、103の第一のバネ材110は基端から先端まで全体が挿入部101の先端側に露出した状態となっている。このため、この状態で各第二のバネ材111を牽引すると、図20に示すように、第二のバネ材111がシース105の先端内周面に当接するまで径方向外側に湾曲し、把持部102、103同士の第一のバネ材110の先端110aが間隔B1となるように開くことができる。一方、図18に示すように、凸部117が切欠き116の基端116a近傍の位置A2となるようにワイヤ106及びワイヤ106に接続された把持部102、103を位置させた場合、各把持部102、103の第一のバネ材110は先端側の一部で挿入部101の先端側に露出した状態となっている。このため、この状態で各第二のバネ材111を牽引すると、図21に示すように、第二のバネ材111がシース105の先端内周面に当接するまで径方向外側に湾曲するが、把持部102、103同士の第一のバネ材110の先端の間隔B2が凸部117を位置A1とした場合の間隔B1に比べて小さくなるように開くこととなる。
すなわち、大きな対象物に対しては、凸部117を例えば位置A1となるように先端側に位置させることで、把持部102、103同士の第一のバネ材110の先端110aの間隔が大きくなるように開いて、容易に把持させることが可能となる。一方、小さな対象物に対しては、凸部117を例えば位置A2となるように基端側に位置させることで、把持部102、103同士の第一のバネ材110の先端110aの間隔が小さくなるように開かせることができ、不用意に大きく開いて把持動作が不安定になってしまうことを防止し、確実に把持させることが可能となる。また、本実施形態では、凸部117が切欠き116に挿入された状態である場合、該切欠き16によってシース115に対して凸部117が設けられた筒部材107に接続された把持部102、103の軸回りの回転を規制することができる。このため、対象物をより確実に把持することができる。
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。図22は、本発明の第5の実施形態を示したものである。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図22に示すように、この実施形態の処置具120は、挿入部11と、挿入部11の内部に進退可能に配設された操作部材である操作ワイヤ12と、挿入部11の基端に設けられた図示しない操作部と、挿入部11の先端に設けられた二つの把持部121、122とを備える。なお、操作部は、図示しないが、基本的な構成は第1の実施形態の操作部13と同様であり、把持部材の操作により操作ワイヤ12を進退させることが可能となっている。
挿入部11において、内シース15の先端内周面には略円柱状の支持部材123が嵌合されている。また、各把持部121、122は、略板状の第一のバネ材125と、略板状で第一のバネ材125の径方向外側に互いに対向するように配設された第二のバネ材126とを有する。各把持部121、122の第一のバネ材125は、一つの板バネ127を折返部127aでU字状に折り返すことで一体的に構成されている。第一のバネ材125の基端125aとなる板バネ127の折返部127aには、基端側に向かって嵌合部127bが突出していて、挿入部11の内シース15に固定された支持部材123の先端面に形成された凹部123aに嵌合し固定されている。また、各把持部121、122の第一のバネ材125は、分岐部125bから二股に分岐し、先端側に向かうに従って互いに離間するように設けられた二つの先端部125c、125dを有し、両先端部125c、125dによって対象物に当接し、把持することが可能となっている。
また、各把持部121、122の第二のバネ部126は、一つの板バネ128を折返部128aでコノ字状に折り返すことで一体的に構成されている。具体的には、板バネ128は、一方の把持部121の第二のバネ材126の先端126aとして、一端が対応する第一のバネ材125の分岐部125bの基端側に固定されて基端側に向かって配設されている。そして、支持部材123の外周面に軸方向に沿って形成された一対の溝部123b、123cの一方に挿通されて内シース15の内部まで配設されている。そして、板バネ128は、上記のとおり略コノ字状に折り返されて、折返部128aで操作ワイヤ12の先端が固定されている。折返部128aで折り返された板バネ128は、他方の把持部122の第二のバネ材126として先端側へ配設され、支持部材123の他方の溝部123cに挿通され、他端が第二のバネ材126の先端126aとして対応する第一のバネ材125の分岐部125bの基端側に固定されている。また、両先端部125c、125dの先端は、物体を把持しやすいように把持先端拡大部125e、125fを有し、把持した物体を落ちにくくしている。
そして、この実施形態の処置具120においては、操作ワイヤ12に操作力を与えて牽引することで、各把持部121、122の第二のバネ材126が牽引され、これにより把持部121、122同士を開いた状態とすることができる。そして、操作ワイヤ12に与えた操作力を解除することで、第一のバネ材125及び第二のバネ材126の復元力によって、把持部121、122は閉じようとし、これにより両者の間に位置する対象物を把持することができる。ここで、各把持部121、122の第一のバネ材125が分岐部125bから先端側で二つの先端部125c、125dに分岐し、両者で対象物を把持することができるので、対象物に当接する面積を大きくして確実に把持することができる。また、図22に示す状態から外シース14に対して内シース15を基端側に後退させると、各把持部121、122の第一のバネ材125の先端部125c、125d同士の間隔を狭めることができる。すなわち、対象物の大きさに応じて内シース15を進退させることで、先端部125c、125dによって当接可能な範囲を対象物を把持するのに最適な大きさとして対象物を把持することができる。
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。図23及び図24は、本発明の第6の実施形態を示したものである。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図23及び図24に示すように、この実施形態の処置具130は、挿入部131と、挿入部131の内部に進退可能に配設された操作部材である二つの操作ワイヤ132、133と、挿入部131の基端に設けられた図示しない操作部と、挿入部131の先端に設けられた二つの把持部135、136とを備える。なお、操作部は、図示しないが、基本的な構成は第1の実施形態の操作部13と基本的に同様であり、本実施形態では、把持部材の操作により二つの操作ワイヤ132、133を各々独立して進退させることが可能となっている。
挿入部131は、略管状で可撓性を有する外シース137と、外シース137の内部に、各把持部135、136と対応するように配設された略管状で可撓性を有する二つの内シース138、139と、外シース137の先端に固定された先端外口金140と、各内シース138、139のそれぞれの先端に固定された略管状の先端内口金141とを有する。先端外口金140は、略円柱状の部材で、外シース137の先端内周面に嵌合し、固定されている。先端外口金140には、基端面から先端面まで貫通する貫通孔140a、140bが形成されており、各内シース138、139は、それぞれ先端外口金140の貫通孔140a、140bに挿通されて外シース137の先端側に突出している。そして、二つの操作ワイヤ132、133は、それぞれ対応するいずれかの内シース138、139の内部に進退可能に配設されている。また、先端内口金141は、本体部141aと、本体部141aの基端側に突出し、内シース138、139の先端内周面に嵌合し固定された嵌合部141bとを有し、本体部141aが内シース138、139の先端側に突出した状態となっている。また、先端内口金141の本体部141a及び嵌合部141bには先端面から基端面まで連通する大小径の異なる二つの貫通孔141c、141dが形成されている。
また、各把持部135、136は、略板状の第一のバネ材142と、略板状で第一のバネ材142の径方向外側に互いに対向するように配設された第二のバネ材143とを有する。第一のバネ材142は、基端142aが挿入部131の先端内口金141の一方の径の小さい貫通孔141cに嵌合して固定されていて、先端側に向かって突出している。また、第二のバネ材143は、先端143aが第一のバネ材142の先端142bと溶接等により接合されているとともに、基端143bが挿入部131の先端内口金141の他方の径の大きい貫通孔141dの内部に挿入されている。そして、第二のバネ材143の基端143bは、他方の貫通孔141d内に進退可能に配設され、各操作ワイヤ132、133の先端にそれぞれ接続された筒部材144に嵌合し固定されている。
この実施形態の処置具130においては、二つの把持部135、136のそれぞれと対応して操作ワイヤ132、133が設けられている。そして、例えば、一方の操作ワイヤ132に操作力を与えて牽引すれば、対応する把持部135の第二のバネ部材143が牽引されることなり、これにより一方の把持部135の第一のバネ材142及び第二のバネ材143のみが、径方向外側へ湾曲して開いた状態となる。同様に、他方の操作ワイヤ133に操作力を与えて牽引すれば、他方の把持部136の第一のバネ材142及び第二のバネ材143のみが径方向外側へ湾曲して開いた状態となる。このように各把持部135、136を独立して開閉させることができるので、位置、形状、大きさ等、条件の異なる様々な対象物それぞれに対応して各把持部135、136の開閉を調整することができ、より容易かつ確実に対象物を把持することができる。
(第7の実施形態)
次に、本発明の第7の実施形態について説明する。図25及び図26は、本発明の第7の実施形態を示したものである。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図25に示すように、この実施形態の処置具150は、挿入部151と、挿入部151の内部に進退可能に配設された操作部材である操作ワイヤ12と、挿入部151の基端に設けられた図示しない操作部と、挿入部151の先端に設けられた二つの把持部152、153とを備える。なお、操作部は、図示しないが、基本的な構成は第1の実施形態の操作部13と同様であり、把持部材の操作により操作ワイヤ12を進退させることが可能となっている。挿入部151は、略管状で可撓性を有するシース154と、シース154の先端内周面に嵌合された略円柱状の先端口金155とを有する。先端口金155には、後述する各把持部152、153の第二のバネ材157と対応して先端面から基端面まで貫通する二つの貫通孔155a、155bが形成されている。
また、各把持部152、153は、略板状の第一のバネ材156と、略板状で第一のバネ材156の径方向外側に互いに対向するように配設された第二のバネ材157とを有する。各把持部152、153の第一のバネ材156は、基端156aが挿入部151の先端口金155の先端面に溶接等により固定され、軸方向先端側へ延設されている。また、各把持部152、153の第一のバネ材156の先端156bは、ともに湾曲し、軸方向と直交する同一方向に向かって配設されている。
また、各把持部152、153の第二のバネ材157は、一つの板バネ158を折返部でU字状に折り返すことで一体的に構成されている。具体的には、板バネ158は、一方の把持部152の第二のバネ材157の先端157aとして、一端が対応する第一のバネ材156の先端156bに固定されて基端側に向かって配設されている。そして、先端口金155の一方の貫通孔155aに挿通され、シース154の内部に配設されている。そして、板バネ158は、一方の把持部152の第二のバネ材157の基端157bとなる位置で折返部158aとして上記のとおり略U字状に折り返されて、他方の把持部153の第二のバネ材157として先端側へ配設されている。他方の把持部153の第二のバネ材157は、先端口金155の他方の貫通孔155bに挿通され、対応する第一のバネ材156の先端156bに固定されている。また、各把持部152、153の第二のバネ材157の基端157bとなる板バネ158の折返部158aには、基端側に嵌合部158bが突出して設けられていて、操作ワイヤ12の先端に接続された筒部材159に嵌合し固定されている。
図26に示すように、本実施形態の処置具150においても、操作ワイヤ12に操作力を与えて牽引することで、各把持部152、153の第二のバネ材157が牽引され、第一のバネ材156及び第二のバネ材157は湾曲することとなり、これにより把持部152、153同士は、開いた状態となる。ここで、各把持部152、153の第一のバネ材156がともに軸方向に直交する同一方向に湾曲していることから、把持部152、153により挿入部151の側方に位置する対象物を把持することができる。
(第8の実施形態)
次に、本発明の第8の実施形態について説明する。図27から図28は、本発明の第8の実施形態を示したものである。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
この実施形態では、内視鏡装置と処置具とが一体的に構成され、内視鏡装置の内視鏡挿入部3によって処置具の挿入部が構成されている点で、上記他の実施形態とは異なっている。具体的には、図27に示すように、この実施形態の内視鏡装置160は、処置対象内部に挿入される内視鏡挿入部3と、内視鏡挿入部3の基端に設けられた内視鏡操作部4と、内視鏡操作部4と接続された図示しない内視鏡本体部とを有する。また、内視鏡挿入部3と内視鏡操作部4とには第1の実施形態同様にチャンネル8が形成されている。そして、内視鏡挿入部3は、第1の実施形態同様に可撓管部3aと、湾曲部3bと、先端部3cとで構成されているが、先端部3cの先端面3dに形成されているチャンネル8の先端開口8aに、以下に示す把持手段161の把持ユニット162が取り付けられている点で異なっている。なお、図30に示すように、チャンネル8は、内視鏡挿入部3及び内視鏡操作部4内に配設される可撓性を有する略管状のチューブ体8cと、チューブ体8cの先端に嵌合されるとともに、内視鏡挿入部3において先端部3cの先端面3dに固定された略筒状の口金部材8dとを有している。
図27から図29に示すように、把持手段161は、内視鏡挿入部3の先端面3dに取り付けられる上記把持ユニット162と、チャンネル8内に挿入され把持ユニット162に操作力を与える操作ユニット163とを有する。操作ユニット163は、チャンネル8に基端側から挿入される操作部材である操作ワイヤ163aと、操作ワイヤ163aの基端に接続され、操作ワイヤ163aを進退させる操作部163bとを備える。操作ワイヤ163aの先端には、外周面に雄ネジ164aが形成された先端部材164が取り付けられている。なお、操作部163bの基本的な構成は、第1の実施形態の処置具10の操作部13(図2参照)と同じであるので説明を省略する。
図29及び図30に示すように、把持ユニット162は、二つの把持部165、166と、該把持部165、166を内視鏡挿入部3の先端部3cに固定する固定部材167と、把持部165、166と操作ユニット163の操作ワイヤ163aとを接続する連結部材168とを有する。固定部材167は、略管状の部材で、外周面に環状に突出したフランジ部167aを有する。また、固定部材167の外周面においてフランジ部167aの基端側には雄ネジ167bが形成されている。そして、固定部材167は、雄ネジ167bがチャンネル8の口金部材8dの内周面に形成された雌ネジ8eに螺合されるとともに、フランジ部167aが先端面3dに当接していることで内視鏡挿入部3の先端に固定されている。また、連結部材168は、固定部材167の内部に配設された略管状の部材で、基端内周面には雌ネジ168aが形成され、該雌ネジ168aに操作ワイヤ163aの先端部材164の雄ネジ164aが螺合されていることで操作ワイヤ163aと接続されている。
また、二つの把持部165、166のそれぞれは、略板状の第一のバネ材35と、略板状で第一のバネ材35の径方向外側に互いに対向するように配設された第二のバネ材36とを有し、第1の実施形態同様に、一つの板バネ39で一体的に構成されている。そして、第一のバネ材35の基端35bである板バネ39の折返部39bは、連結部材168の先端内周面に嵌合することで固定され、これにより各把持部165、166は連結部材168を介して操作ワイヤ163aと接続されている。また、各把持部165、166の第二のバネ材36の基端36bは、固定部材167の先端外周面に固定されている。なお、各把持部165、166の第一のバネ材35の先端35aにおいて、各把持面30a、31aとなる面からは、略板状の係止部56が突出して設けられている。
以上のように、本実施形態の内視鏡装置160では、内視鏡挿入部3の先端部3cに把持手段161の把持ユニット162が取り付けられており、内視鏡挿入部3の観察手段6によって処置対象内部を観察しながら挿入し、さらに、先端部3cに取り付けられた把持ユニット162の二つの把持部165、166によって対象物を把持することができる。なお、把持手段161は、把持ユニット162の固定部材167をチャンネル8の口金部材8dから取外した後に、連結部材168から操作ワイヤ163aを取り外すことによって、把持ユニット162と操作ユニット163とを分解しつつ、内視鏡挿入部3から取り外すことができる。そして、このようにすることで内視鏡挿入部3は、把持部165、166を有していない状態としても使用することが可能である。逆に、改めてチャンネル8の基端開口8bから操作ユニット163の操作ワイヤ163aを挿入し、先端側で把持ユニット162と組み立てた後にチャンネル8の口金部材8dに取り付ければ、内視鏡挿入部3と把持部165、166とを容易に一体化することも可能である。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、上記各実施形態では、各把持部を構成する第一のバネ材及び第二のバネ材は、略板状の部材で構成されているものとしたが、これに限らず、棒状の部材などでも良く、少なくとも操作部材の操作力によって弾性的に湾曲変形可能な部材であれば良い。また、把持部は、互いに閉じた状態として対象物を把持するものとして利用されているが、例えば、各把持部に目盛りを付けて、対象物の寸法を測定するための定規として利用しても良い。