JP5172074B2 - 抗菌剤の製造法及び抗菌剤 - Google Patents

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Description

本発明は、銀イオン又は銅イオンを担持したフッ素雲母系の抗菌剤とその製造法に関する。
従来、モンモリロナイトやテニオライトなどの粘土鉱物に重金属イオンを担持せしめた抗菌剤は公知である。例えば、銀イオンモンモリロナイトから成る抗菌剤については、石膏石灰学会発行「Gypsum & Lime No.239(1992)」P49〜P55に記載の「粘土鉱物を担体とする抗菌抗黴剤」と題する論文には、銀イオン担持モンモリロナイトは、銀イオン担持力が弱く、溶出し易く早期に抗菌性が失われる問題があることに鑑み、この問題を解消するため、銀イオンを強い抗黴性をもつ有機試剤でキレート化してからモンモリロナイトに担持させて成る抗菌性と抗黴性を有する各種の銀/キレート抗菌抗黴剤を開示している。
一方、特開平9−100116号公報には、従来の重金属担持ゼオライトは原材料費、製造工程の複雑さ等の点から、非常に高価な材料となるという問題と特公平7−68094号公報に開示のLi型テニオライトを出発物質とし、これに銀イオンを担持させた抗菌剤は、銀の溶出が非常に多いため不適であるという問題を解消した金属担持テニオライトの発明が開示されている。
石膏石灰学会発行「Gypsum & Lime」 No.239(1992)PP49〜55 特開平9−100116公報 特公平7−68094号公報
上記の非特許文献1に開示の銀イオンの易溶出性を防止した銀/キレート抗菌抗黴剤は、有機試剤を必要とすると共にキレート化の製造工程が加わり、且つ製造コストが増大し、高価な製品となる不都合を生ずる。
上記の特許文献1に開示の重金属イオン担持のテニオライトから成る抗菌剤の製造は、Na型テニオライト、その出発原料であるNa型テニオライトを合成しなければならない。その合成は、MgO、Li2Oなどの酸化物とフッ化物Na2SiF6を混合し、約1400℃の温度で加熱溶融することにより得られる筈であるが、目的とする合成品Na型テニオライトNaMg2Li(Si410)・F2・xH2Oのうち、特に、Mg2LiというMgに対するLiの特定の配合割合を確実に合成することが極めて難しく、製造ロスを生じ勝ちで、その合成Na型テニオライトの生産効率が悪い欠点がある。また、このNa型テニオライトを出発原料とし、イオン交換により製造した重金属イオン担持テニオライトは、粉末として得られるので、その運搬、使用時の取り扱いや使用範囲が限られる不利を生じる。
本発明は、製造工程が簡単で且つ安価に製造でき、而もNa型テニオライトの上記の課題を解消するべく、製造ロスなく合成し易いNa型四ケイ素雲母を出発原料とし、粉末状の他、所望の焼結成形体として使用時の取り扱いを便利にすると共に使用形態や範囲を拡大でき、而も金属イオン担持力が強く、優れた抗菌剤を安価に提供することを目的とする。
本発明は、請求項1に記載の通り、
示性式NaMg2.5(Si10)F・xHO(但、x=1〜3)で示されるNa−四ケイ素雲母を原料とし、その粉体をAg,Cu又はCu2+の金属イオンが解離し、且つpH3〜10の範囲の水溶液に浸漬し、その層間Naイオンを該金属イオンでイオン交換を行うことを特徴とする合成による該金属イオン担持四ケイ素雲母から成る抗菌剤の製造法に存する。
更に本発明は、請求項2に記載の通り、請求項1に記載のイオン交換反応後、固液分離により分取した湿潤スラリー状の該金属イオン担持四ケイ素雲母を乾燥した後、その粉体を400〜800℃で焼結処理することを特徴とする焼結体から成る抗菌剤の製造法に存する。
更に本発明は、請求項3に記載の通り、請求項1又は2に記載の抗菌剤の粉体にカオリナイトとケイフッ化カリウムの混合物の粉体又はアルミナ架橋四ケイ素フッ素雲母の粉体から成る無機結合剤粉体を添加混合し、これを加圧成形したものを400〜800℃で焼結することを特徴とする多孔質焼結成形体から成る抗菌剤の製造法に存する。
更に本発明は、請求項4に記載の通り、請求項1又は2に記載の少なくとも30%以上のイオン交換率を有する抗菌剤の粉体20〜80重量%と前記の無機結合剤粉体80〜20重量%を混合し、これを成形したものを、400〜800℃で焼結したことを特徴とする請求項3に記載の多孔質焼結成形体から成る抗菌剤の製造法に存する。
更に本発明は、請求項5に記載の通り、請求項1〜4のいずれか1つに記載の製造法で得られた抗菌剤に存する。
本発明は、上記の出発原料、Na−TSM、即ち、NaMg2.5(Si416 )F 2・xH2Oは、Liを成分として含まないので、溶融法により合成し易く、製造ロスがない。該Na−TSMは自由膨潤性を有し、大きなイオン交換能を有するものが得られ、而して、次のイオン交換反応を前記水溶液のpH3〜10の範囲で行うので、層間Naイオンの一部又は全部を銀イオン又は銅イオンで置換を容易且つ効率良く行うことができ、銀イオン又は銅イオン担持のAg+−TSM、Cu2+−TSM又はCu2+−TSMから成る抗菌剤が得られる。銀イオン又は銅イオン担持の抗菌剤は、後述で明らかにするように、優れた抗菌力を有する。
また、本発明抗菌剤は、化学式・Na−TSMを出発原料とし、そのNaイオンを重金属イオンで交換した後、分取して得られる湿潤したスラリー状の重金属イオン担持TSMを凍結乾燥、自然乾燥、熱風乾燥などで乾燥処理したものは、粉体製品として得られるばかりでなく、また、400〜800℃の範囲で加熱焼結処理することによりNa−TSMのフッ素成分(F)の揮発を防止し、焼結前の粉状の殺菌剤と変わらない抗菌力を維持した多孔質焼結体の抗菌剤が得られる。また、加熱乾燥したものは常温に戻ると、空気中の湿気を吸い、もとの良好なイオン交換能を回復する。更に、本発明の抗菌剤と無機結合剤を添加混合したものを焼結し、多孔質の焼結体、或いは柱状、板状、容器状、ハニカム状など所望の形状の多孔質の焼結成形体として製品の形態を拡大し、優れた抗菌性を発揮し、粉体と異なり、取り扱いを容易にすると共に、飲料水の殺菌、食品製造用水など所望の産業、試験研究分野など使用分野の拡大をもたらす。
更に、本発明の抗菌剤粉体20〜80wt.%対該無機結合剤粉体80〜20wt.%の配合割合で混合したものを成形し、これを400〜800℃で加熱焼結するときは、大きな抗圧強度を有し、水崩壊性のない且つ抗菌作用の低下のない多孔質焼結成形体から成る抗菌剤が得られる。
本発明の抗菌剤の製造法の出発原料であるNa−ケイ素雲母(以下、Na−TSMと称する)、即ち、Na−TSM化学式NaMg2.5(Si410)・F2で示されるNa−TSMの合成は、該化学式に見合った原料配合物、例えば、モル比で1/2MのNa2Oと1.5MのMgOと1MのMgF 2 4MのSiO2の各配合物を混合したものを電気炉で例えば、1380℃で6時間溶融した後、急冷することにより合成される。この塊状の合成物を粉砕して粉体とする。Na−TSMの合成は、Ni型テニオライトの場合と相異し、原料配合物としてLi配合物を配合する必要がないので、安価に且つ確実に合成できる利点を有する。
この合成品は、他の合成フッ素雲母とは異なる結晶構造や特有の物性を有する。
即ち、その結晶構造は層状構造であり、層間イオン−ケイ酸四面体(SiO4)−八面体(Mg2.5)−ケイ酸四面体(SiO4)が一単位となり、これが累積されている。層間イオンは、隣接する次の層との間にあって、ケイ酸四面体の酸素6個と6個の間に挟まれる形でイオン結合で配位している。層間イオンの成因は、八面体のMgイオンが、6席について1席空洞になっており、電荷が、プラス1イオン不足しており、それを補うため(チャージバランス)、Naイオンが1個イオン結合で配位されている。層間のNa+は、他の金属イオンと容易にイオン交換ができる。また、Na−TSMの膨潤特性は、一水層からゲルまでの自由膨潤性である。これに対し、Mg2Liの6配位イオンをもつ前記のNa型テニオライトの膨潤性は、二水層までの限定形である。更にまた、このように層間にNaイオンを配位したNa−TSMの特徴は、固体酸点はなく、中性であることである。これに対し、モンモリロナイト、ヘクトライト、Li−テニオライト、Na−テニオライトには、層間で水分子が金属イオンに配位しH2O+Mn+−→Hδ+…HOδ-・M2nのように固体酸点がある。Na−TSMは固体酸点がなく、中性であるということは、抗菌性金属イオンを担持した場合、温度に対する安定であり、抗菌性金属イオン担持力が向上し、溶出性を一層困難にし、抗菌寿命が延長するなどの好影響をもたらす。
上記のように合成したNa−TSMに抗菌性金属イオンである銀イオン又は銅イオンを担持せしめるイオン交換反応を行うには、塊状で得られる該Na−TSMを粉砕機で粉砕して粉末とする。これを所望の濃度の銀イオン又は銅イオンが解離した水溶液に浸漬し、撹拌し乍ら陽イオン交換反応を行う。該陽イオン交換反応においては、水中で成分が十分解離している銀塩又は銅塩の水溶液が好ましい。一般には、夫々の硝酸塩又は硫酸塩水溶液が推奨される。その濃度は所望に選択される。陽イオン交換は、夫々の水溶液のpH値が3〜10の範囲で行う。pHが3より低いと各金属イオンよりも水素イオンがイオン交換し易くなる傾向がある。一方、pHが10より高いと銀イオンや銅イオンは塩基性塩として沈殿し易くなる傾向がある。イオン交換反応時間は少なくとも30分程度でよい。そのイオン交換反応時間を適当に選択することにより、層間Naイオンの一部又は殆ど全部を銀イオン又は銅イオンに交換するイオン交換量を調節できるが、イオン交換平衡に達するまで行うことが好ましい。Na−TSMの最大のイオン交換容量CECは、200〜220meq/100gである。
所望時間イオン交換反応を行った後、遠心分離機などにより固液分離し、固相として、銀イオン担持四ケイ素雲母Ag+Mg2.5(Si410)・F2・xH2O(以下Ag+−TSMと略称)、銅イオン担持四ケイ素雲母Cu+Mg2.5(Si410)・F2・xH2O又はCu2+Mg2.5(Si410)・F2・xH2O(以下Cu+−TSM又はCu2+−TSMと略称)から成る湿潤したスラリー状の重金属イオン担持の製品を得る。次いで、これを洗浄した後、凍結乾燥や50℃以上の範囲の温度で乾燥し、本発明の粉末状のAg+−TSMから成る抗菌剤、Cu+−TSM又はCu2+−TSMから成る粉状又は団塊状の乾燥製品を得る。団塊物はほぐして粉状とする。乾燥手段は、天日乾燥や熱風乾燥でもよい。
銀イオン及び銅イオンの担持量、即ち、イオン交換容量は、Na−TSM(分子量400.09)当たり一価の銀84.87gが理論的には最高であり、2.36mmol/gである。実際にはイオン交換平衡があり、銀イオン及び銅イオンの最大のイオン交換率は略100%、即ち、98〜99%である。しかし乍ら、実用上、銀イオンの交換率25%以上、銅イオン交換率30%以上で抗菌剤としての抗菌作用は支障なく行われる。
上記のNa−TSMの層間Naイオンの上記の抗菌性金属イオンとの良好なイオン交換反応には、Na−TSMの自由膨潤性が寄与する。即ち、粉状のNa−TSMの吸水性は、空気中(20℃ RH=70%)では、層間に吸水して、1水層型(層間に水分を配位し、1分子当たり(12.34Å−9.56Å)膨れる現象)で、層間間隔値は12.34Åとなる。これを100℃以上で加熱すれば無水型(層間間隔値9.56Å)になる。また、粉状のNa−TSMを水中に浸漬すると、に水層型(層間間隔増大値d2=2.83Å)、三水層型(層間間隔増大値d3=3.19Å)を経て、無限膨順に達し最終的にはゾル体を形成する。かくして、自由膨潤性(一水層型〜ゾル)をもつNa−TSMは、上記の銀イオン又は銅イオンの解離した水溶液中で良好な層間Naイオンのイオン交換反応を示す。
本発明者等は、かゝる銀イオン又は銅イオン担持の抗菌剤は、粉状であると、その運搬、取り扱いが面倒であり、殺菌するべき液体、例えば、水の殺菌浄化に使用するに当たり、その都度、その所定量を計量する必要があり、これを投入後は、水中に分散するので、爾後の濾過分離が必要であり、微多孔性の通水性容器に収容して使用しなければならないなどの不便を生じ、多量の無菌化処理水、食品加工における仕込水の無菌処理、食品などの洗浄水の無菌処理などを得る作業には非能率である。
そこで、この粉状の抗菌剤を無機結合剤を介し或いは介することなく焼結し、多孔質の焼結体とし、或いは板状、筒状、蜂の巣状など所望形状の多孔質の焼結成形体としても、良好な抗菌性を保持した抗菌剤が得られないかとの着想に立ち、その粉状抗菌剤を400℃以上の高温で加熱処理して多孔質の焼結体、或いは焼結成形体とし、これをX線回折法によりイオン交換性を測定したところ、400℃〜800℃の範囲の高温での加熱処理で、焼結前の粉状の抗菌剤と変わらない抗菌力を有していること、850℃位となるとNa−TSMのフッ素(F)成分が揮発してしまうことを知見した。
かゝる試験結果に徴し、本発明は、Na−TSMの抗菌剤は、その粉体をそのまゝ400〜800℃の高温で加熱処理し、多孔質の焼結体から成る抗菌剤に製造すること、或いはその粉体に、無機結合剤を適当配合し、その混合物を所望形状の金型などに収容し加圧成形し、その成形体を400〜800℃の焼結温度で加熱処理することにより、所望形状の多孔質焼結成形体から成る抗菌剤に製造することが好ましい。
かくして、これらの多孔質の焼結体は、親水性で表面に抗菌剤の銀イオン又は銅イオンが無数の気孔を介し殺菌するべき水と接触しイオン交換性を確保できる多孔質であり、且つ耐圧性で且つ機械的強度の大きい安定堅牢な組織から成るので、取り扱いが容易であり、例えば、菌で汚染された被処理水を無菌処理するに当たり、該多孔質焼結体を処理水に投入したり、濾材などとして使用することにより、無菌化処理水を効率良く得ることができる。
次に、Na−TSM粉体を400〜800℃で加熱処理し、多孔質の焼結体とした抗菌剤は、常温に冷えれば、焼結前の粉体のイオン交換能と変わりがないイオン交換能を示すことを明らかにする詳細な実施例につき説明する。
Ag+−TSMの粉体を加熱炉で、300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃、850℃で夫々各2時間加熱処理した後取り出し、常温になるまで放置した。これらの焼結体サンプルにつき、X線回折法によりイオン交換を測定した。そのX線回折(001面)の結果を図1に示す。これから明らかなように、300℃〜700℃、2時間の加熱処理したサンプルのイオン交換性は、未加熱のAg+-TSMの粉体のイオン交換性と変わらないことが判る。800℃、2時間加熱処理したイオン交換性は、700℃、2時間のものと全く同じであるので、図面上省略した。850℃、2時間加熱処理のものは、分析の結果、フッ素が揮発消失し、その結晶構造が破壊されていた。
このように、800℃までの加熱処理したもので、その加熱処理で付着水が蒸発除去されても、放置により常温に戻ると、空気中の湿気を吸って一水層型(12.34Å)に復帰するため、加熱処理前の付着水を有する粉体と同様のイオン交換を回復するからであることが判った。
尚、この場合、加熱減量については、未加熱の粉体を基準とし、300℃加熱体は1.48%減、400℃加熱体は1.56%減、500℃加熱体は2.8%減、600℃加熱体は2.85%減、700℃加熱体は2.88%減、800℃加熱体は3.0%減であった。
また、Cu2+−TSM粉体について、段落0011のAg+−TSM粉体についてと同様の300℃〜800℃までの7種類の加熱処理を施し、同様に、これらにつき、常温に戻った段階で、X線回折法により、同様に測定した。その結果は、図1に示すと同様の結果を得た。
更に本発明は、上記のように、Ag+−TSMの粉体又はCu2+−TSMの粉体は、800℃までの高温で加熱処理しても、もとの粉体と変わらないイオン交換能を有することが判ったことに基づき、種々の用途に応じて、これに適した形状と大きさを持ち、且つ抗菌性を保持した焼結成形体から成る抗菌剤を得るため、有機質結合剤又は無機質結合剤をAg+−TSM粉体及びCu2+−TSM粉体の夫々に添加混合し、この混合物を、成形用金型に入れ、400℃〜800℃までの焼結温度で加熱して、多孔質の焼結成形体の製造を試みたところ、合成樹脂などの有機質の結合剤では、抗菌剤の表面露出部分が激減し、抗菌力が著しく低下したり、減量が著しいなどで、良好な抗菌剤製品は得られなかったが、無機結合剤は、かゝる不都合がなく、良好な多孔質焼結成形体が得られることが判明した。
無機結合剤としては、Ag+−TSM粉体又はCu2+−TSM粉体の800℃までの焼結温度において、変質しないで焼結作用を有し、多孔質を形成するものが好ましい。その1つは、400〜800℃の加熱で白雲母系セラミックスができる天然又は合成のカオリナイト〔Al2Si25(OH)4〕とケイフッ化カリウム(K2SiF6)の混合物、例えば、(カオリナイト1.5molとケイフッ化カリウム0.5〜1.0molとの配合混合物である。)カオリナイトとしては、粘土学会標準品であるSiO246wt.%とAl2339.52wt.%、灼熱減量13.98wt.%が好ましい。この混合物をAg+−TSM粉体又はCu2+−TSM粉体に添加混合したものを加熱焼結することにより、多孔質焼結成形体から成る抗菌剤が夫々得られる。
他の1つは、アルミナ架橋フッ素雲母である。このものは、膨潤性フッ素雲母の水性懸濁液に多核ヒドロキソアルミニウムを添加し、該フッ素雲母の層間(約17Å)にインターカレーションにより多核ヒドロアルミニウムイオンを挿入して得られる。該アルミナ架橋フッ素雲母をAg+−TSM粉体又はCu2+−TSM粉体に添加混合したものを、加熱焼結することにより、多孔質焼結成形体から成る抗菌剤が夫々得られる。
Ag+−TSM又はCu2+−TSMから成る本発明の抗菌剤粉体と前記の混合物又はアルミナ架橋フッ素雲母から成る無機結合剤粉体との配合割合は、20〜80wt.%対80〜20wt.%が好ましい。かゝる配合割合で混合したものを所望の形状に成形したものを400〜800℃で加熱処理することにより、抗菌剤粉体の有するイオン交換能を保持すると共に、多孔質でその無数の連通気孔から成る多孔質で而も大きな抗圧強度を有する焼結成形体から成る抗菌剤が得られる。Na−TSM(84.87g)の金属イオン交換理論量2.36mmol/gの少なくとも30%以上のイオン交換率を有するAg+又はCu2+で担持された抗菌剤粉体を最小20wt.%を配合していれば、上記の無機結合剤粉体を最大80wt%配合しても、無機結合剤により、該抗菌剤の有する抗菌作用を低下することなく、多孔質焼結成形体を製造できる。一方、該無機結合剤粉体を最小20wt.%配合すれば、該抗菌剤の比重2.3〜2.8、無機結合剤の比重1.87〜2.04と略等しいので、80wt.%の抗菌剤粉体を均一に結着できると共に、少なくとも抗圧100Kg/cm2を保持した水崩壊性のない多孔質焼結成形体を製造できる。
実施例1
以下本発明を実施例により説明する。
Na−TSMの示性式NaMg2.5(Si410)・F2に見合った原料配合物、例えば、モル比NaF0.5MgF22.0MgO・4SiOで配合した原料を白金箔で封蔵したものを、電気炉中で1400℃で2時間、加熱溶融した後、取り出して放冷して結晶塊を得た。該結晶をほぐした粉末を各20g脱イオン水2000ml中に浸漬しゾル化を行い、その浮遊物を採取し、乾燥し、抗菌剤の出発原料Na−TSM粉体を得た。このものはフレーク状粒子で平均粒子径2〜3μm、比表面積は29.5m2/gであった。
このようにして得られたNa−TSM各10gをビーカー内の10mmolの硝酸銀水溶液4000mlに投入したものを5個用意し、これらを25℃の恒温槽内で、撹拌しながらイオン交換反応を1時間、2時間、3時間、4時間、5時間に分けて行った後、遠心分離機により固液分離し、その各固形分を蒸留水で洗浄し、60℃で乾燥して夫々の銀イオン担持抗菌剤(Ag+−TSM)粉体を製造した。これらの抗菌剤につき、Agのイオン交換率を測定したところ、イオン交換反応1時間の抗菌剤Aは90%、同2時間の抗菌剤Bは95%、同3時間の抗菌剤Cは97%、同4時間の抗菌剤Dは98%、同5時間の抗菌剤Eは98%であった。
実施例2
実施例1に使用した10mmol濃度の硫酸銀水溶液に代え、10mmolの硫酸銅水溶液を用いた以外は、実施例1と同様に実施して、夫々の銅イオン担持抗菌剤(Cu2+−TSM)粉体を製造した。これらの抗菌剤につき、Cu2+のイオン交換率を測定したところ、イオン交換反応1時間の抗菌剤Fは30%、同2時間の抗菌剤Gは40%、同3時間の抗菌剤Hは50%、同4時間の抗菌剤Iは60%、同5時間の抗菌剤Jは60%であった。
抗菌力テストI:
次に、上記実施例1で製造した抗菌剤A〜Eの各抗菌剤につき、大腸菌に対する抗菌力試験を次のように行い、その菌発育阻止濃度(MIC)を求めた。
a)感受性測定用培地の調製:
各L字管に、培地としてマラー ヒントン培養液(ディフコ),Muller Hinton Broth(Difco)を10ml入れ、その各培地に、実施例1で製造した本発明の抗菌剤を180℃で120時間乾熱殺菌したものを検体とし、この検体32,16,8,4,2,1及び0.5mgを夫々添加し,7種類の感受性測定用培地を調製した。
b)試験用菌液(接種用菌液)の調製:
大腸菌、エシエリキア コリ IFO 3972(Escherichia coli IFO 3972)を試験菌とし、これを、栄研株式会社製の普通寒天培地に接種し、36℃±1℃、24時間培養した後、その増殖した菌体をマラー ヒントン培養液(ディフコ)に接種し、36℃±1℃、16〜24時間培養した後、菌数が1.0〜5.0×104/mlとなるように前記の増菌用培地で希釈し、接種用菌液を調製した。
c)前記の調製した7種類の各感受性測定用培地に、前記の接種用菌液0.1mlを添加、混合した後、36℃±1℃、24時間振とう培養(150γ/min)した。
d)判定:
前記の培養後、抗技協2003年度版の「抗菌剤の抗菌力評価試験法最小発育阻止濃度測定法」により検体の大腸菌に対する検体のMIC(最小発育阻止濃度)を測定した。
e)判定結果:
上記の抗菌力テストを上記の抗菌剤A〜Eにつき行った結果、最小イオン交換率の抗菌剤AでもMICは60μg/ml、最大のイオン交換率の抗菌剤EのMICは50μg/mlの結果を得た。従って、Ag+−TSMから成る抗菌剤A〜Eの全ては、優れた抗菌力を有することが確認された。また、多くの銀イオン交換率の異なるAg+−TSMの抗菌剤につき、抗菌力テストを測定したところ、イオン交換率10%でもMIC80μg/mlという抗菌力を有するものが得られた。
尚、比較のため、Ag+−TSMの抗菌剤を添加しない、接種用菌液を36℃±1℃で振とう培養した場合は、大腸菌の生菌数は2.4×106に増殖していた。
上記の抗菌力テストを、上記のCu2+−TSM抗菌剤F〜Jにつき行ったところ、イオン交換率最小の30%の抗菌剤FのMICは250μg/ml、抗菌剤GのMICは240μg/ml、抗菌剤HのMICは200μg/ml、イオン交換率が最大の60%の抗菌剤JのMICは200μg/mlの判定結果を得た。
実施例3
また、上記の粉状のAg+−TSMから成る抗菌剤A〜E及びCu2+−TSMから成る抗菌剤F〜Jにつき、夫々800℃に加熱し焼結したものを作製し、その夫々につき、上記の抗菌力テストを行い、その夫々のMIC値を測定したところ、粉末のときとほゞ同じ値を得た。この試験結果から、粉状の抗菌剤を500〜800℃の高温に加熱し焼結体としても、抗菌力に悪影響を与えないことが判明した。焼結体は、常温まで温度が下がると、空気中の湿気を吸い、付着水が付与されるので、粉体と同様の抗菌力をもたらすことが判った。
実施例4
無機結合剤として、粘土学会標準品である白雲母系カオリナイト1.5molとケイフッ化カリウムK2SiF6 0.6mmolを良く混合したものを560℃で3時間加熱焼結して、白雲母に形成し、次いでこれを粉砕して白雲母の焼結粉体を用意した。
実施例1で製造したAg+−TSM抗菌剤Eの粉体と上記の白雲母の焼結粉体から成る無機結合剤とを下記表1に示すように配合割合を異にして7種類の配合物(試料No.1〜No.7)を調製し、その各配合物につき、ボールミルで2時間結合し微細に粉砕した。この混合物にPVAの1〜10%水溶液を少量添加し、粘稠な混合物としたものを、孔径5mm、深さ7mmの円柱状の成形用キャビティーを多数固配設した鉄製鋳型内の各キャビティー内に充填し、成形圧37.5MPaで加圧成形した後、径5mm、厚さ7mmの各成形品を100℃で1時間乾燥し、次いで、これらの乾燥成形品を、ムライト製の耐火物から成る載置板上に載置した後、これをマッフル式電気炉に装入し、毎時150℃上昇の昇温速度で加熱し、600〜700℃の範囲で2〜1時間焼結処理を行って、7種類の多孔質焼結成形体から成る抗菌剤試料No.1〜No.7を製造した。
Figure 0005172074
上記の実施例4で製造された表1に示す夫々の配合割合の混合物を用いて製造された配合物試料No.1〜No.7に対応する多孔質のAg+−TSM焼結成形体から成る抗菌剤試料No.1〜No.7の物性は下記表2に示す通りであった。これから明らかなように、良好な物性を有することが判る。また、これら抗菌剤試料No.1〜No.7は、常温で空気中の湿気を吸収し、一水層型を示していた。また、一般に、抗菌剤20〜80%と無機結合剤20〜80%の配合混合物を600〜700℃で加熱処理することにより、良好な機械的強度、吸水性を有し且つ軽量な多孔質焼結成形体の抗菌剤が得られることが判る。
Figure 0005172074
実施例1で製造したイオン交換率の異なる5種類のAg+−TSM抗菌剤A〜Eの各粉体につき、抗菌剤30wt.%と前記の白雲母焼結から成る無機結合剤粉体70wt.%とを混合し、ボールミルで微粉砕とした混合粉を少量のPVA水溶液で混練したものを成形用鋳型に充填し、加圧成形した後、120℃で加熱し、乾燥した成形品の夫々を、マッフル式電気炉に装入し、750℃で1時間焼結処理を行って、5種類の多孔質成形体から成る抗菌剤試料A′〜E′を製造した。これらの抗菌剤A′〜E′を検体とし、前記の段落0018に記載の大腸菌に対する抗菌力テストと同様にして抗菌力テストを行った。その結果、これら抗菌剤A′〜E′の夫々のMIC値は、乾燥粉末の抗菌剤A〜Eの夫々対応するMIC値と略同じ値を示した。これにより、焼結成形体は、粉体の抗菌剤と同様の抗菌力を有することが確認された。
実施例5
無機結合剤として、膨潤性フッ素雲母の懸濁液に、OH/Al比が1.5以上の多核ヒドロキソアルミニウムの水溶液に添加し、撹拌して、室温で2時間インターカレーションを行い、該フッ素雲母の層間にアルミナが挿入されたアルミナ架橋フッ素雲母を生成せしめた後、固液分離し、取得したアルミナ架橋フッ素雲母を洗浄し、次いで700℃で3時間加熱し、次いでこれを粉砕して得られたアルミナ架橋フッ素雲母の焼結剤を用意した。
実施例1で製造したAg+−TSM抗菌剤Eの粉体と上記のアルミナ架橋フッ素雲母の焼結粉体から成る無機結合剤とを下記表3に示すように配合割合を異にして7種類の配合物試料No.8〜No.14を調製し、その各配合物につき、ボールミルで2時間結合し微細に粉砕した。この混合物にPVAの1〜10%水溶液を少量添加し、粘稠な混合物としたものを、孔径5mm、深さ7mmの円柱状の成形用キャビティーを多数固配設した鉄製鋳型内の各キャビティー内に充填し、成形圧37.5MPaで加圧成形した後、径5mm、厚さ7mmの各成形品を100℃で1時間乾燥し、次いで、これらの乾燥成形品を、ムライト製の耐火物から成る載置板上に載置した後、これをマッフル式電気炉に装入し、毎時150℃上昇の昇温速度で加熱し、600〜700℃の範囲で2〜1時間焼結処理を行って、7種類の多孔質焼結成形体から成る抗菌剤試料No.8〜No.14を製造した。
Figure 0005172074
上記の実施例5で製造された表3に示す夫々の配合割合の混合物を用いて製造された配合物試料No.8〜No.14に対応する多孔質のAg+−TSM焼結成形体から成る抗菌剤試料No.8〜No.14の物性は下記表4に示す通りであった。これから明らかなように、良好な物性を有することが判る。また、これら抗菌剤試料No.8〜No.14は、常温で空気中の湿気を吸収し、一水層型を示していた。また、一般に、抗菌剤20〜80wt.%と無機結合剤20〜80wt.%の配合混合物を600〜700℃で加熱処理することにより、良好な機械的強度、吸水性を有し且つ軽量な多孔質焼結成形体から成る抗菌剤が得られることが判る。
Figure 0005172074
実施例1で製造したAg+−TSM抗菌剤A〜E粉体の夫々を抗菌剤30wt.%と前記のアルミナ架橋焼結から成る無機結合剤粉体70wt.%とを混合し、ボールミルで微粉砕とした混合粉を少量のPVA水溶液で混練したものを成形用鋳型に充填し、加圧成形した後、120℃で加熱し、乾燥した成形品の夫々を、マッフル式電気炉に装入し、750℃で1時間焼結処理を行って、7種類の多孔質性形態から成る抗菌剤試料A″〜E″を製造した。これらの抗菌剤A″〜E″を検体とし、前記の段落0018に記載の大腸菌に対する抗菌テストの容量で抗菌テストを行った。その結果、これら抗菌剤A″〜E″の夫々のMIC値は、乾燥粉末の抗菌剤A〜Eの夫々対応するMIC値と略同じ値を示した。
実施例6
無機結合剤として、実施例4で用意した白雲母の焼結粉体と実施例2で製造したCu2+−TSM抗菌剤J粉体とを下記表5に示すように配合割合を異にして7種類の配合物(試料No.15〜No.21)を調製し、その各配合物につき、実施例4と同じ要領で加圧成形、焼結処理を行って、7種類の多孔質焼結成形体から成る抗菌剤試料No.15〜No.21を製造した。
Figure 0005172074
上記の実施例6で製造された表5に示す夫々の配合割合の混合物を用いて製造された配合物試料No.15〜No.21に対応する多孔質のCu2+−TSM焼結成形体から成る抗菌剤試料No.15〜No.21の物性は下記表6に示す通りであった。これから明らかなように、良好な物性を有することが判る。また、これら抗菌剤試料No.15〜No.21は、加熱後冷却され、常温になったとき、空気中の湿気を吸収し、一水層型を示していた。また、一般に、抗菌剤20〜80%と無機結合剤20〜80%の配合混合物を600〜700℃で加熱処理することにより、良好な機械的強度、吸水性を有し且つ軽量な多孔質焼結成形体の抗菌剤が得られることが判る。
Figure 0005172074
実施例2で製造したイオン交換率の異なる5種類のCu2+−TSM抗菌剤F〜J粉体の夫々を抗菌剤30wt.%と前記の白雲母焼結から成る無機結合剤粉体70wt.%とを混合し、ボールミルで微粉砕とした混合粉を少量のPVA水溶液で混練したものを成形用鋳型に充填し、加圧成形した後、120℃で加熱し、乾燥した成形品の夫々を、マッフル式電気炉に装入し、750℃で1時間焼結処理を行って、5種類の多孔質成形体から成る抗菌剤試料F′〜J′を製造した。これらの抗菌剤F′〜J′を検体とし、前記の段落0018に記載の大腸菌に対する抗菌テストの要領で抗菌テストを行った。その結果、これら抗菌剤F′〜J′の夫々のMIC値は、乾燥粉末の抗菌剤F〜Jの夫々対応するMIC値と略同じ値を示した。
実施例7
実施例2で製造したCu2+−TSM抗菌剤Jの粉体と実施例5で製造したアルミナ架橋フッ素雲母の焼結粉体から成る無機結合剤とを下記表7に示すように配合割合を異にして7種類の配合物試料No.22〜No.28を調製し、その各配合物につき、ボールミルで2時間結合し微細に粉砕した。この混合物にPVAの1〜10%水溶液を少量添加し、粘稠な混合物としたものを、孔径5mm、深さ7mmの円柱状の成形用キャビティーを多数固配設した鉄製鋳型内の各キャビティー内に充填し、成形圧37.5MPaで加圧成形した後、径5mm、厚さ7mmの各成形品を100℃で1時間乾燥し、次いで、これらの乾燥成形品を、ムライト製の耐火物から成る載置板上に載置した後、これをマッフル式電気炉に装入し、毎時150℃上昇の昇温速度で加熱し、600〜700℃の範囲で2〜1時間焼結処理を行って、7種類の多孔質焼結成形体から成る抗菌剤試料No.22〜No.28を製造した。
Figure 0005172074
上記の実施例7で製造された表7に示す夫々の配合割合の混合物を用いて製造された配合物試料No.22〜No.28に対応する多孔質のCu+−TSM焼結成形体から成る抗菌剤試料No.22〜No.28の物性は下記表8に示す通りであった。これから明らかなように、良好な物性を有することが判る。また、これら抗菌剤試料No.22〜No.28は、常温で空気中の湿気を吸収し、一水層型を示していた。また、一般に、抗菌剤20〜80wt.%と無機結合剤20〜80wt.%の配合混合物を600〜700℃で加熱処理することにより、良好な機械的強度、吸水性を有し且つ軽量な多孔質焼結成形体から成る抗菌剤が得られることが判る。
Figure 0005172074
実施例2で製造したCu2+−TSM抗菌剤F〜J粉体各粉体につき、抗菌剤30wt.%と前記のアルミナ架橋フッ素雲母焼結から成る無機結合剤粉体70wt.%とを混合し、ボールミルで微粉砕とした混合粉を少量のPVA水溶液で混練したものを成形用鋳型に充填し、加圧成形した後、120℃で加熱し、乾燥した成形品の夫々を、マッフル式電気炉に装入し、750℃で1時間焼結処理を行って、7種類の多孔質性形態から成る抗菌剤試料F″〜J″を製造した。これらの抗菌剤を検体とし、前記の段落0018に記載の大腸菌に対する抗菌テストの容量で抗菌テストを行った。その結果、これら抗菌剤F″〜J″の夫々のMIC値は、乾燥粉末の抗菌剤F〜Jの夫々対応するMIC値と略同じ値を示した。
実施例8
次に、一価の銅イオン担持TSM(以下、Cu+−TSMと略称)と無機結合剤との混合物の多孔質焼結成形体の製造法の実施例を示す。
密栓し得るビン内にCuO2gを約25%の塩酸HCl25mlに加え、更に、これに約2gのCu粉を加え、更に、ビンの底からビンの首に達する螺旋状に巻いたCu線を挿入した後、密栓し、3日間放置して内容物が無色となるまで3日間放置して一価の銅イオン溶液入りのビンを5個用意した。
その各ビンを開栓し、その夫々にNa−TSM粉末10gを添加し、再び密栓した後、これらのビンを常温で1時間、2時間、3時間、4時間、5時間と反応時間を異にして、イオン交換反応を行った後、開栓し、その各ビン内の反応液を濾過し、各固形分を分取し、その夫々を蒸留水で洗浄した後、60℃で乾燥してイオン交換反応時間の異なる5種類の銅イオン担持抗菌剤(Cu+−TSM)粉体を製造した。これらの抗菌剤につき、Cuのイオン交換率を測定したところ、イオン交換反応1時間の抗菌剤Kは32%、同2時間の抗菌剤Lは45%、同3時間の抗菌剤Mは55%、同4時間の抗菌剤Nは65%、同5時間の抗菌剤Oは65%であった。
実施例9
次いで、上記のCu+担持抗菌剤(Cu+−TSM)Oの粉体と無機結合剤として、実施例4で製造した白雲母焼結粉体とを下記表9に示すように配合割合を異にして混合して7種類の配合物試料No.29〜No.35を調製し、その各配合物試料につき、ボールミルで2時間結合し微細に粉砕した。この混合物にPVAの1〜10%水溶液を少量添加し、粘稠な混合物としたものを、孔径5mm、深さ7mmの円柱状の成形用キャビティーを多数固配設した鉄製鋳型内の各キャビティー内に充填し、成形圧37.5MPaで加圧成形した後、径5mm、厚さ7mmの各成形品を100℃で1時間乾燥し、次いで、これらの乾燥成形品を、ムライト製の耐火物から成る載置板上に載置した後、これをマッフル式電気炉に装入し、毎時150℃上昇の昇温速度で加熱し、700℃で1時間焼結処理を行って、7種類の多孔質焼結成形体から成る抗菌剤試料No.29〜No.35を製造した。
Figure 0005172074
上記の実施例9で製造された表9に示す夫々の配合割合の混合物を用いて製造された配合物試料No.29〜No.35に対応する多孔質のCu+−TSM焼結成形体から成る抗菌剤試料No.29〜No.35の物性は下記表10に示す通りであった。これから明らかなように、良好な物性を有することが判る。また、これら抗菌剤試料No.29〜No.35は、常温で空気中の湿気を吸収し、一水層型を示していた。また、一般に、抗菌剤20〜80%と無機結合剤20〜80%の配合混合物を600〜700℃で加熱処理することにより、良好な機械的強度、吸水性を有し且つ軽量な多孔質焼結成形体の抗菌剤が得られることが判る。
Figure 0005172074
抗菌テストII:
次に、上記実施例9で製造したCu+担持抗菌剤試料No.29〜35の各試料につき、下記の抗菌テストを行った。
黄色ブドウ状球菌(Staphylococcus Aureus IFO 12732)を通常の培地に接種し、37℃、20時間培養した後、これを1/500普通培液に懸濁させ、且つリン酸緩衝液(pH7)を注入し、菌数を2.0×105/mlの菌液を調製した。
一方、U字管(管径10mm、直立部200mm、底部10mm)を7本用意し、その各U字管にNo.29〜35の各試料をそのU字管の底部に堰として装填し、上記に調製した菌液を各該U字管の一方の口より注入し、該堰を透過させ、該U字管の他方の口より1分間に2ml排出するようにし、10分間行い、その排出する試験液をビーカーに採取し、更に、該ビーカーに採取した試験液を再び該U字管の入り口より注入し、同様にして出口より排出する試験液をビーカーに採取し、1回透過液と2回透過液について、夫々180回/分振とう培養し、1時間後、試験液中の菌数を、混釈平板培養法により求めた。その結果は、表11に示す通りであった。
Figure 0005172074
表7から明らかなように、菌数2.0×105個を含む当初の試験液を抗菌剤No.29〜No.35を1回透過させると、ブドウ状球菌は殆ど除菌され、2回透過させると無菌液となる優れた除菌効果をもたらす。
比較のため、上記の抗菌剤無添加のコントロール試料である当初の試験液に含有する菌数2.0×105個は、1回目の透過作業を終了した時点では、菌数2.1×105個と菌が増殖しており、2回透過作業経過作業を終了した時点では、2.7×105個と増殖していた。
実施例9で使用したCu+−TSM抗菌剤Oに代え、Cu+−TSM抗菌剤K〜Nの各粉体につき、実施例9と同様に処理して7種類の多孔質焼結成形体試料を製造し、次いで、これらを上記の抗菌力テストを行った結果、表10に示すと同様の物性が得られると共に、表11に示すと略同じ除菌効果を示した。
実施例10
上記のCu+−TSM粉体と無機結合剤としてアルミナ架橋粉体とをCu+−TSM粉体20wt.%〜80wt.%とアルミナ架橋粉体80wt.%〜20wt.%の範囲で、表7に示すと同様の配合割合で配合し、7種類の配合試料を調製した後、その各試料につき、前記と同様に加圧成形し、500〜800℃で焼結して抗菌剤No.36〜42を製造した。この各試料につき、抗菌力テストを上記の抗菌力テストIIと同様に行った。その結果を下記表12に示す。上記の実施例9で示す白雲母粉体を配合した焼結成形体の抗菌剤と略と同様の除菌効果が得られた。
Figure 0005172074
実施例11
前記の実施例4で製造したAg+−TSM抗菌剤Eの粉体と白雲母粉体との径5mm、厚さ7mmの焼結成形体から成る7種類の抗菌剤試料につき、上記の抗菌力テストIIの要領で抗菌力テストを行った。その結果は、表13に示す通りであった。
Figure 0005172074
表13から明らかなように、Ag+−TSMの焼結成形体を抗菌剤No.1〜No.7の場合は、1回目の透過で無菌液となるCu+−TSMに比し、優れた除菌効果が認められた。
実施例4で製造したAg+−TSM抗菌剤粉体A〜Dの各粉体と白雲母との焼結成形体から成る7種類の抗菌剤につき、抗菌力テストIIの要領で抗菌力テストを行ったところ、夫々表13に示すと同様の結果を得た。
また、更なる多くの試験研究の結果、Ag+−TSM、Cu2+−TSM、Cu+−TSMの夫々の理論量に対するイオン交換率が銀イオンの場合はイオン交換率約30%以上、銅イオンの場合は40%以上あれば、実用的な抗菌性を有することが認められた。
尚、本発明の上記の各種抗菌剤は、多くの抗菌力テストの結果、芽胞生成菌、ジフテリヤ菌、黄色ブドウ状球菌などのグラム陽性菌、大腸菌、淋菌等のグラム陰性菌などの細菌、藻菌類、担子菌類、黒コウジカビなどの黴類等の真菌、動植物の病原菌ウイルスなどに有効である。
加熱処理後のAg+TSMのX線回折グラフを示す。 加熱処理後のAg+TSMの水湿潤下でのX線回折グラフを示す。

Claims (5)

  1. 示性式NaMg2.5(Si10)F・xHO(但、x=1〜3)で示されるNa−四ケイ素雲母を原料とし、その粉体をAg,Cu又はCu2+の金属イオンが解離し、且つpH3〜10の範囲の水溶液に浸漬し、その層間Naイオンを該金属イオンでイオン交換を行うことを特徴とする合成による該金属イオン担持四ケイ素雲母から成る抗菌剤の製造法。
  2. 請求項1に記載のイオン交換反応後、固液分離により分取した湿潤したスラリー状の該金属イオン担持四ケイ素雲母を乾燥した後、その粉体を400〜800℃で焼結処理することを特徴とする焼結体から成る抗菌剤の製造法。
  3. 請求項1又は2に記載の抗菌剤の粉体にカオリナイトとケイフッ化カリウムの混合物の粉体又はアルミナ架橋四ケイ素フッ素雲母の粉体から成る無機結合剤粉体を添加混合し、これを加圧成形したものを400〜800℃で焼結することを特徴とする多孔質焼結成形体から成る抗菌剤の製造法。
  4. 請求項1又は2に記載の少なくとも30%以上のイオン交換率を有する抗菌剤の粉体20〜80重量%と前記の無機結合剤粉体80〜20重量%を混合し、これを成形したものを、400〜800℃で焼結したことを特徴とする請求項3に記載の多孔質焼結成形体から成る抗菌剤の製造法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つに記載の製造法で得られた抗菌剤。
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