JP5169691B2 - 転写印刷シートおよび転写印刷物ならびにそれらの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、転写印刷シートおよびその製造方法、ならびに転写印刷シートを使った転写印刷物および転写印刷物の製造方法に関するものである。
各種製品表面に直接に絵柄や文字などを印刷する方法のひとつとして、基材フィルム表面にあらかじめ印刷しておいた絵柄を製品表面に転写する転写印刷方法がある。
この転写印刷に使用される転写印刷シートの、従来の層構成および製造方法は次のようなものである。まず、基材フィルム上に剥離層などと呼ばれる剥離しやすい界面を形成し、その上に、グラビア印刷またはスクリーン印刷などでインキ層を形成する。所望の絵柄や文字などはこのインキ層によって形成しておく。さらにこのインキ層の上に接着剤を塗布して接着剤層を形成し、転写印刷シートを得る。
一般的には、剥離層の剥離強度は基材強度の1/30〜1/10であり、例えば0.1〜0.5N/15mmである。
また、転写印刷工程では、接着剤層と被転写物表面が接するように転写印刷シートを被転写物に圧着し、被転写物とインキ層の剥離強度が基材フィルムの強度以上、例えば約3N/15mm以上となった時点で基材フィルムの剥離をおこなう。
転写印刷シートと被転写物を圧着した状態のものの各層(基材フィルム、剥離層、インキ層、接着剤層、被転写物)の間の接着強度は、インキ層と剥離層の間の強度がもっとも弱い。従って剥離層で剥離が進むので、基材をはがすと、インキ層と接着剤層が被転写物の表面上に残り、転写印刷が完了する。
また、従来の転写印刷方法では、上述の転写印刷シートの製造までをまず行い、この転写印刷シートを例えばロール状に巻き取っておく。そして次の転写印刷工程において、転写印刷シートを加熱して、接着剤層を活性化した後、被転写物表面へ転写することが行われている。
しかし、転写印刷シートの最外層に接着剤層が配置されている。そのため、転写印刷シートをロール状に巻き取った場合に、接着剤層と次の周の基材フィルムの裏面が接触する。接触時の圧力によっては、巻き取った次の周の基材フィルム裏面に接着剤層が接着し、基材フィルムと剥離層の間で剥離が起こり、接着剤層とインキ層が次の周の基材フィルム裏面に転移するブロッキングと呼ばれている現象が発生することがある。つまり、剥離層の剥離強度が弱い場合や、接着剤層と次の周の基材フィルム裏面との接着強度が強い場合に、転写印刷前の転写印刷シート内で剥離が発生するという問題があった。
他にも、転写フィルムは、フィルム自重も含めて、剥離層の剥離強度以下の圧力しかかからないように保管しなければならならず、1000m以下の少ない量で巻き取り保管しなければならないという問題があった。
また、転写印刷よりも安価な従来の印刷技術のひとつである、パッケージグラビア印刷は、印刷する巻き取りフィルムへ直接印刷し、後加工で袋などに加工する工程をおこなう。このため、加工ロス・予備分も含めた印刷が必要で、印刷フィルム使用量が多くなるという問題があった。
特開平6−238115号公報
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、従来の転写印刷技術の工程面、取り扱い面、コスト面を改良し、転写印刷シートに印刷したグラビア印刷をシート状に加工し、グラビア印刷のインキ層の品質や色再現性をそのまま、所望の数量だけ被転写物へ転写できるようにすることを目的とするものである。
上記の課題を解決するために、本発明の請求項においては、熱可塑性樹脂を材質とするフィルムの少なくとも一方の面にシリカまたはアルミナを蒸着した基材フィルムの、シリカまたはアルミナの蒸着面に、印刷により形成されたインキ層を有する転写印刷シートの前記インキ層の面と対向するように、
帯電させた被転写物表面を密着させ、
所定時間のあいだ加圧および加熱することにより、前記転写印刷シートの延伸量が6〜12%となるよう延伸させ、
その後に基材フィルムを剥離することを特徴とする転写印刷物としたものである。
シリカ又はアルミナなどを蒸着した基材フィルムに、インキ(例えばグラビアインキなど)を印刷した場合、基材フィルムの延伸によって基材フィルム−インキ間の剥離強度が変化する性質があることを見いだした。すなわち本発明の転写印刷シートでは、転写印刷時に基材フィルム伸びを与えることで、基材フィルム−インキ間の剥離強度を小さくすることができる。これにより、印刷インキを基材フィルムから比較的容易に剥がすことができるようになる。
また、被転写フィルムを帯電させた状態で、本発明の転写印刷シートのインキ面に密着させ加圧および加温した状態で、基材フィルムの延伸をおこなうと、転写印刷シートのインキ面が延伸し、インキ面−被転写フィルム間の剥離強度が増加することを見出した。これにより、接着剤層がなくてもインキと被転写フィルムを接着することができる。
以上のような転写印刷シートおよび転写印刷工程とすることによって、転写印刷シートを剥離層や接着剤層のないものすることが可能である。このように剥離層や接着剤層を省略することでコストダウンが可能である。また、転写印刷シートをロール状に巻き取った状態で保管する際にも、剥離層および接着剤層がないのでブロッキングが発生しにくくなるという利点がある。
まず、本発明の実施形態である転写印刷シートの構成および製造方法について図面を参照して説明する。図1は本実施形態の転写印刷シートの側断面を模式的に示したものである。
基材フィルム11は、熱可塑性樹脂を材質とし少なくとも一方の面12に酸化ケイ素(シリカ)または酸化アルミニウム(アルミナ)などの無機化合物を蒸着させたものを用いる。面12のことを、以下、蒸着面12と呼ぶことにする。
なお、基材フィルム11の材質としては、ナイロン・延伸ポリプロピレン・ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を用いることができる。
この基材フィルム11の蒸着面12に、グラビア印刷などにより印刷インキ層13を形成する。印刷インキとしては、導電率の低いインキ(例えば、顔料−樹脂比率において樹脂比率の多いウレタン樹脂系のインキ)を用いる。印刷するのは各種の絵柄や文字などの所定のパターンや、所定領域をインキで塗りつぶしたパターンなど、印刷可能なパターンであればなんでもよい。
基材フィルム11は長尺のものを用い、印刷機にてロール状に巻かれたものをいったん巻き出して、グラビア印刷などにより印刷インキ層13を形成し、印刷が済んだらまたロール状に巻き取る。これで本発明の転写印刷シート10が出来上がる。
次に、本発明の転写印刷物および転写印刷方法について説明する。まず、転写印刷シート10と被転写フィルム20を重ねる作業を行なう。所望の転写印刷物の枚数が比較的少ない場合は、転写印刷シート10を巻き出して所定のサイズにカットしたものと、被転写フィルム20を所定のサイズにカットしたものを準備し、重ねていく作業を行なってもよい。この作業をより効率的に行なうのであれば、転写印刷シート10と被転写フィルム20を同時に巻きだして重ねた状態にしてから、2枚一緒に所定のサイズにカットするようにすればよい。この重ね合わせの際に、被転写フィルム20は静電気を帯電した状態になるようにする。
次に図2に示したように、転写印刷シート10と被転写フィルム20の1枚ずつを重ねたものの複数組を重ね合わせて、2枚のシリコンゴム板30の間に挟み込む。
転写印刷シート10と被転写フィルム20の複数組を2枚のシリコンゴム板30の間に挟み込んだ状態で、プレス機にかけて所定温度および所定圧力の状態を所定時間保つようにする。このプレス機の圧力により、転写印刷シート10と被転写フィルム20をx方向及びy方向に延伸させる。
この後、転写印刷シート10と被転写フィルム20の複数組を、プレス機およびシリコンゴム板30から外して常温に戻す。以上の工程で、印刷インキ層13が被転写フィルム20の表面に転写されているので、基材フィルム11を剥がせば、本発明の転写印刷物が出来上がる。
転写印刷シート10の基材フィルム11として透明なものを選んでおき、プレスする際のシリコンゴム板30に透明ガラス窓をつけておけば印刷インキ層13の延伸量(すなわち転写印刷シート10の延伸量)を直接観察でき、転写印刷条件の管理が可能である。
転写印刷シートの基材フィルムとしては、熱可塑性樹脂からなる一軸ないし二軸延伸フィルムに、酸化ケイ素(シリカ)または酸化アルミニウム(アルミナ)などの無機化合物を蒸着させた、透明なフィルム(凸版印刷株式会社製 商品名GL−ARHフィルム 12μm)を用いた。
この基材フィルムの蒸着面側に、軟包装材ウレタン系グラビアインキ(東洋インキ株式会社製 商品名 N740ファインスターR631白などの色インキ)をグラビア印刷でベタ印刷または重ね刷り(乾燥時の塗布重量 1.2g/m 〜 2.2g/m )して印刷インキ層を形成し、ロール状に巻き取った。
このようにして得られた転写印刷シートの基材フィルム−印刷インキ層間の剥離強度を調べたところ、3.0N/15mm以上であった。これは、基材フィルムの強度と同程度である。
被転写フィルムとしては、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用した。ともに100mm×100mmの大きさにカットした転写印刷シートおよび被転写フィルムを用意し、転写印刷シートの印刷インキ面と被転写フィルムの面が接するようにしたものを1〜40セット重ねた。この重ね合わせの際、被転写フィルムには静電気を帯電させるようにした。
このように転写印刷シートと被転写フィルムの複数組を重ねたものを、3mm厚さのシリコンゴム板の間に挟んでプレス機に装着し、所定の条件下で転写印刷を行なった。この転写印刷の際の各条件を表1に示す。転写印刷時には、転写印刷シートの延伸量を評価値とし、温湿度、圧力条件を管理した。
Figure 0005169691
転写印刷シートの延伸量が6〜12%の場合は、印刷インキ層が被転写フィルム面に転移した。このときの転写印刷シートの基材フィルム−インキ層間の剥離強度は、1.5N/15mm以下であり、元の剥離強度3.0N/15mmの半分以下の値となっていた。
また、被転写フィルム表面に転写された印刷インキ層は、グラビアインキの塗膜の微小形状、光沢、性質、濃度が、そのまま転写されており、色品質面では転写前と違いが見られなかった。
一方、フィルムの延伸量が0〜4%の場合は、印刷インキ層は被転写フィルム面に転移しなかった。
表1の条件で試験を行った結果、本実施例の転写印刷シートを使って転写印刷をおこなうには、温度60℃以上、圧力10MPa以上、加熱加圧時間60分以上の条件が必要であり、どれかを満たさない場合は、印刷インキ層が転写されなかった。
転写印刷シートの延伸量は、プレス圧力、ゴム板形状、転写印刷シート−被転写フィルム間の密着度と関係する。特に湿度が下がると密着度が向上し、転写印刷シートの延伸量が増加する。逆に湿度が50%の場合には、転写基材フィルムと被転写フィルムの密着が悪く、均一な転写印刷ができなかった。
次に基材フィルムとして、酸化ケイ素(シリカ)または酸化アルミニウム(アルミナ)などの無機化合物を蒸着させていないOPPフィルム(東セロ製 商品名OP U−1 厚み20μm)を使用し、その他は前述と同じ条件で転写印刷シートを作製した。また、表1と同じ条件で転写印刷を試みたが、基材フィルムと印刷インキ層の間の剥離強度が低下せず、転写印刷ができなかった。
本発明の転写印刷シートの構成を示す側断面模式図。 本発明の転写印刷時の状態を示す側断面模式図。
符号の説明
10・・・転写印刷シート
11・・・基材フィルム
12・・・基材フィルムのシリカ(またはアルミナ)蒸着面
13・・・印刷インキ層
20・・・被転写フィルム
30・・・シリコンゴム板

Claims (1)

  1. 熱可塑性樹脂を材質とするフィルムの少なくとも一方の面にシリカまたはアルミナを蒸着した基材フィルムの、シリカまたはアルミナの蒸着面に、印刷により形成されたインキ層を有する転写印刷シートの前記インキ層の面と対向するように、
    帯電させた被転写物表面を密着させ、
    所定時間のあいだ加圧および加熱することにより、前記転写印刷シートの延伸量が6〜12%となるよう延伸させ、
    その後に基材フィルムを剥離することを特徴とする転写印刷物。
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