JP5166657B2 - 燐含有添加剤を添加したポリマー−ポリアミドブレンド物 - Google Patents
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Description
本出願は、1998年8月26日付けで提出した暫定的米国出願番号60/097,992の利点を請求するものである。
【0002】
(発明の背景)
発明の分野
本発明は、燐含有化合物の種類から選択した形態制御剤(morphology controlling reagent)も含有させたポリマー/ポリアミドブレンド系に関する。
関連技術の説明
本発明者は、以前に、ポリアミドと中和エチレン酸コポリマー(neutralized ethylene acid copolymers)の特定ブレンド物が特にじん性、高光沢、耐摩耗/引っ掻き性、耐UV性、高温特性(high temperature properties)および剛性の組み合わせが要求される成形品などの如き用途で用いるに有用な組成物を与えることを見いだした。このような以前に見いだしたブレンド物は、具体的には、ポリアミドが40から60重量パーセントで中和エチレン酸コポリマーが相対的に60から40重量パーセントの組成物に関する。このようなブレンド物ではポリアミドが連続もしくは共連続(co−continuous)相を形成していてそれらの間に中和エチレン酸コポリマーが粒子形態で分散している。このような組成物で他の賦形剤(excipients)を多数種用いたが、それには熱安定剤、例えば有機燐化合物などが含まれる。
【0003】
指定パーセントでブレンドしたそのようなブレンド物は成形品用途で用いるに有用な均衡の取れた物性を達成するが、今までのところ、ポリアミドの量を40重量%未満にしたブレンド物が有用な組成物を与えるに充分な均衡の取れた物性を与えることはなかった。本発明者は、ポリアミド含有量(残りの中和エチレン酸コポリマー部分に相対して(relative to))が40重量%未満のブレンド物に燐含有塩、例えば次亜燐酸ナトリウム(NaH2PO2)などを添加すると形態特性(morphological property)および機械的特性が有意に向上した組成物が生じることをここに見いだした。このように見いだした事によって、ポリアミド/中和エチレンコポリマーブレンド物が成形品用途で示す有用性のスペクトルが幅広くなり得る。加うるに、本発明者は、アルファ−オレフィン/アルファ,ベータ−不飽和カルボン酸のコポリマーもしくはターポリマーの中和品に相対してポリアミドが40%以上のブレンド物に賦形剤である次亜燐酸塩を添加することでもまた前記ブレンド物に予想外な利点を与えることができることも見いだした。
【0004】
不飽和モノカルボン酸を含めたエチレンのコポリマーと成形、コーティングまたは接着剤用途の範囲で用いるに有用なポリアミドの両方を含有させた組成物もブレンド物も今までにいくつかの従来技術文献に開示されていた。例えば、米国特許第5,091,478号には、熱可塑性樹脂(ポリアミドを包含)とエチレンコポリマー[エチレン酸コポリマー(これは金属イオンで中和されているいてもよい)を包含]に加えてエポキシド、イソシアネート、アジリジン、シラン、アルキル化剤から選択される高分子量のグラフト化剤(grafting reagents)のブレンド物が教示されている。そのようなグラフト化剤はエチレン酸コポリマーの酸含有部分と反応しかつ追加的に前記熱可塑性樹脂の反応性グラフト部位とも反応し、その結果として、反応性基を特定量で有する部分グラフト化(partially grafted)軟質熱可塑性プラスチック組成物が生じる。この開示には、前記組成物に次亜燐酸塩を用いることも燐含有塩を用いることも全く記述されていない。
【0005】
EPO 574 532 B1およびそこに引用されている技術にも同様にポリアミド/エチレンコポリマーブレンド物が開示されている。この文献には、特に、ポリアミドをゼロより多い量から50重量%、少なくとも1種の修飾(modified)エチレン/プロピレンコポリマーを1から49重量%、およびアルファ−オレフィンに由来する単位とアルファ,ベータエチレン系不飽和カルボン酸に由来する単位を有する少なくとも1種のオレフィン酸コポリマー(olefinic acid copolymer)に中和を10−100%受けさせたアイオノマーを1から49重量%含有させた成形用熱可塑性プラスチック組成物が開示されている。この上で行った教示と同様にまた前記組成物1種または2種以上に無機燐含有化合物を用いることは開示も示唆も全く成されていない。
【0006】
(発明の簡単な要約)
本発明は、幅広い意味で、ポリアミド、中和もしくは部分中和アルファ−オレフィン/アルファ,ベータ不飽和カルボン酸コポリマーもしくはターポリマーまたは他の中和酸含有ポリマーもしくは他のポリアミドポリマーおよび有機もしくは無機燐含有塩、例えばナトリウム、リチウムまたはカリウムの次亜燐酸塩(MH2PO2)などを含んで成るか或はから本質的に成る組成物に関する。
【0007】
この組成物にまた追加的高分子量もしくは非高分子量(non−polymeric)成分を添加することも可能である。例えば追加的高分子量成分は、米国特許第5,420,206号(引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている如き修飾弾性コポリマー(modified elastomeric copolymers)から選択可能である。適切な非高分子量成分にはUV安定剤、抗酸化剤、熱安定剤、加工助剤、顔料などが含まれる。
【0008】
本発明は、好適には、ポリアミドの量が中和エチレンコポリマーを基準にして40重量%未満であるこの上に記述した如きブレンド物を包含する。このようなブレンド物に添加剤である次亜燐酸塩を添加すると、高温の引張り強度およびビーカー軟化点が有意に向上する[中和エチレンコポリマー粒子が連続もしくは共連続ポリアミドドメイン(domains)間に分散していることに関連した特性を保持しながら]。
【0009】
(詳細な説明)
この上に要約したように、本発明は、追加的形態向上用賦形剤を含有させたポリアミド/エチレンコポリマーのブレンド物に関する。中和アルファ−オレフィン/アルファ−ベータ−不飽和カルボン酸に相対してポリアミドが40重量%未満のブレンド物にそのような形態向上剤を添加すると特定の成形品および加工品が要求される機械的特性および必須物性を保持するようになる。加うるに、この形態向上剤をポリアミドの量が40重量%以上のポリアミド/アルファ−オレフィンコポリマーブレンド物に添加した時にもそれの物性が向上する。
【0010】
このようなブレンド物に含めるポリアミドは、半結晶性ポリアミド、または半結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドのブレンド物から選択可能である。本ブレンド物に含めるアルファ−オレフィンを基とするコポリマーは、カルボン酸もしくはそれの誘導体または前駆体がコポリマー鎖の一部[例えばバックボーン内(in or within the backbone)]として存在するか或はポリマーもしくはコポリマー鎖にグラフト化(例えばバックボーンにグラフト化)しているか或はそれらのブレンド物であるコポリマー類から選択可能である。例えば、アルファ−オレフィン、例えばエチレンなどをアルファ,ベータ−不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸またはメタアクリル酸などと一緒に共重合させた後、それに「中和」(これは、酸部分を金属塩である程度または完全に中和させることを意味する)を受けさせることで、中和エチレン/メタアクリル酸もしくはアクリル酸コポリマーを生じさせることができる。次に、この中和コポリマー(これはエチレンをいろいろなパーセントで有しかつ酸部分またはそれの中和版をいろいろなパーセントで有する)をポリアミドおよび次亜燐酸塩と一緒にすることで、本発明の組成物を生じさせる。
【0011】
そのようなアルファ−オレフィンを基とするポリマーを、追加的に、例えばEPDMにカルボキシル含有分子、例えば無水マレイン酸などをグラフト化させた(grafted)ポリマー、または例えば非メタロセン(non−metallocene)またはメタロセンを用いて生じさせたポリマーもしくはコポリマーに極性のカルボン酸含有部分をグラフト化させたポリマーなどから選択することも可能である。このようなグラフト化ポリマーを次にポリアミドおよび次亜燐酸塩と一緒にブレンドすることで本発明の組成物を生じさせる。また、カルボン酸部分をポリマーバックボーン鎖内に有するコポリマーとグラフト化コポリマーのブレンド物をポリアミドおよび次亜燐酸塩と一緒にすることでも本発明の組成物を生じさせることも可能である。全てのケースで、そのような組成物は加工品、例えば成形された自動車バンパーなどを生じさせる加工で用いるに適する。好適な組成物を、半結晶性ポリアミド、例えばナイロン−6などと中和エチレン酸コポリマーと次亜燐酸ナトリウムのブレンド物から選択する。
【0012】
本発明は、特に、
(a)アルファ−オレフィンを基にしていて中和を受けたポリマーを40から75重量%と
(b)ポリアミドを(a)と(b)を一緒にした重量を基準にして60から25重量%と
(c)次亜燐酸塩、
を含有するブレンド物を含んで成る組成物に関する。
【0013】
好適な組成物は、成分(c)の量が(a)+(b)+(c)を一緒にした重量を基準にして3重量%未満の組成物であり、最も好適なパーセントは1パーセント未満である。アルファ−オレフィンを基にしていて中和を受けた好適なポリマーは、エチレン/メタアクリル酸ポリマーの中和品であり、好適なポリアミドは半結晶性ポリアミドであるナイロン6である。
【0014】
このような中和酸含有ポリマー(neutralized acid−containing−polymer)をエチレン/アルファ,ベータ−不飽和酸のコポリマーもしくはターポリマーの中和品から選択する場合、これを好適にはポリアミドの体積よりも多い体積パーセントで存在させて連続もしくは共連続ポリアミド相内に分散させる。このような中和コポリマーは好適には小さい粒子を形成していて、この粒子の形状は、共連続ポリアミド相内では好適には引き伸ばされた曲線(oblong and curvilinear)または楕円であり、或は連続ポリアミド相内では本質的に球形である。このような本質的に球形の粒子の場合の平均直径(引き伸ばされた/楕円形の粒子の場合の断面直径もしくは短い方の軸の長さ)は、好適には、約0.1から約0.2ミクロメートル(μm)である。
【0015】
そのようなポリアミド/中和酸含有ポリマーブレンド物に次亜燐酸塩もしくは同様な作用を示す燐含有塩を添加するとビーカー軟化点が向上しかつ引張り強度が向上することに加えてまたそのような組成物で用いるに有用なポリアミド重量パーセントの範囲が広がる。例えば、ポリアミド/中和エチレンコポリマーブレンド物に次亜燐酸塩を1重量%未満のレベルで添加すると、そのようなブレンド物で用いるポリアミドの量を40重量%未満から約30重量%のポリアミド量にすることができる。そのようなブレンド物が本明細書に述べる最終使用用途で要求される形態特性および良好な物性を維持または達成するようにしようとする場合に今まで適切であったポリアミド量は40%またはそれ以上(例えば40−60重量%)であった。勿論、じん性(toughening)組成物のような他の用途では、ポリアミドのパーセントを追加的高分子量成分(同時にまた次亜燐酸塩も含有する)に相対して60−98重量%にまで高くすることも可能である。
ポリアミド類:
使用に適したポリアミド類には、繰り返すアミド基をポリマーバックボーンの一部として有する長鎖重合体アミド類(long chain polymeric amides)が含まれ、これらは好適には末端基の滴定で測定して約10,000から50,000の数平均分子量を有する。本明細書で用いるに適したポリアミド類は従来技術で公知の便利な手段いずれかで製造可能である。
【0016】
ポリアミド類には、アミン末端基間の炭素原子数が2以上のジアミンとジカルボン酸を等モル比で重合させることで入手可能なポリアミド類、或はまたモノアミノカルボン酸もしくはそれの内部ラクタムの重合をジアミンとジカルボン酸を等モル比で用いて行うことで入手可能なポリアミド類が含まれる。更に、アミノ基とカルボン酸基の間の炭素原子数が少なくとも2のモノアミノカルボン酸またはそれの内部ラクタムの重縮合ばかりでなく他の手段を用いて適切なポリアミド類を生じさせることも可能である。ポリアミド類の製造で用いるに有用な一般的手順は本技術分野で良く知られており、そのような製造の詳細がJohn Wiley & Sons,Inc.が出版したEncyclopedia of Polymer Science and Technology(1969)の10巻、487−491頁の見出し「Polyamides」の下に詳細に記述されている。
【0017】
適切なジアミン類には、式
H2N(CH2)nNH2
[式中、nは1−16の整数値を有する]
で表されるジアミン類(これにはトリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、ヘキサデカメチレンジアミンの如き化合物が含まれる)、芳香族ジアミン類、例えばp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4‘−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなど、アルキル置換ジアミン、例えば2,2−ジメチルペンタメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンおよび2,4,4−トリメチルペンタメチレンジアミンなどばかりでなく、環状脂肪族ジアミン類、例えばジアミノジシクロヘキシルメタンなど、そして他の化合物が含まれる。
【0018】
ポリアミド類の製造で用いるに有用なジカルボン酸は、好適には、一般式
HOOC−Z−COOH
[式中のZの例は炭素原子を少なくとも2個含む二価の脂肪基である]で表されるジカルボン酸、例えばアジピン酸、セバシン酸、オクタデカン二酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸およびグルタル酸などである。このジカルボン酸は脂肪酸または芳香酸、例えばイソフタル酸およびテレフタル酸などであってもよい。
【0019】
適切なポリアミド類にはポリピロリドン(ナイロン4)、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリヘプトラクタム(ナイロン7)、ポリカプリルラクタム(ナイロン8)、ポリノナノラクタム(ナイロン9)、ポリウンデカノラクタム(ナイロン11)、ポリドデカノラクタム(ナイロン12)、ポリ(テトラメチレンジアミン−コ−しゅう酸)(ナイロン4,2)、ポリ(テトラメチレンジアミン−コ−アジピン酸)(ナイロン4,6)、ポリ(テトラメチレンジアミン−コ−イソフタル酸)(ナイロン4,I)、ポリヘキサメチレンアゼライアミド(ナイロン6,9)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6,10)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6,IP)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMSD:6)、n−ドデカン二酸とヘキサメチレンジアミンから作られたポリアミド(ナイロン6,12)、ドデカメチレンジアミンとn−ドデカン二酸から作られたポリアミド(ナイロン12,12)ばかりでなく、それらのコポリマー類が含まれ、それらにはヘキサメチレンアジパミド−カプロラクタム(ナイロン6,6/6)、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレン−イソフタルアミド(ナイロン6,6/6IP)、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6,6/6T)、トリメチレンアジパミド−ヘキサメチレン−アゼライアミド(ナイロントリメチル6,2/6,2)、およびヘキサメチレンアジパミド−ヘキサメチレン−アゼライアミドカプロラクタム(ナイロン6,6/6,9/6)が含まれるばかりでなく、ここで特別には挙げなかった他のポリアミド類も含まれる。
【0020】
このようなポリアミド類の中で好適なポリアミド類には、ポリカプロラクタム(これはまた通常はナイロン6とも呼ばれる)、そしてナイロン6と他のポリアミド(非晶性ポリアミド類を包含)の混合物が含まれる。
【0021】
P.Schlackの米国特許第2,241,321号に開示されているように、イプシロン−アミノカプロン酸を水と一緒に加熱してナイロン6を生じさせることを通して、ナイロン6の合成を進行させることができる。他の適切な方法も本技術分野で良く知られており、それらには、米国特許2,234,566;2,249,177;2,970,997;3,000,877;3,000,878;3,000,879;3,016,375に記述されている方法ばかりでなく他の方法も含まれる。ナイロン6およびナイロン6,6などの如きポリアミド類は多様な末端官能性を有し、そのような末端官能性に包含される好適な末端官能性は、ポリアミド鎖の両末端基としてのカルボキシル基、ポリアミド鎖の一方の末端に結合しているカルボキシル基とこのポリアミド鎖のもう一方の末端に結合しているアミド基、ポリアミド鎖の両末端に結合しているアミノ基、そしてポリアミド鎖の一方の末端に結合しているカルボキシル基ともう一方の末端に結合している1つのアミノ基である。モノカルボン酸もしくはジカルボン酸を用いてポリアミド鎖を終結させることができ、そのようなカルボン酸には酢酸、アゼライン酸またはセバシン酸が含まれる。好適なポリアミド類は、アミン基の数と酸基の数が等しい(また末端基の「均衡が取れている」とも呼ばれる)ことを特徴とするポリアミド類ばかりでなく、酸基に比べてアミン基の数が多いことを特徴とするポリアミド類である。
【0022】
好適な態様のナイロン6、ナイロン6,6またはそれらのブレンド物は、数平均分子量が約10,000から約50,000、好適には約15,000から約40,000,最も好適には約15,000から20,000no範囲であることを特徴とする。このような好適さの個々の等級の基準は、数平均分子量を約20,000にまで高めると機械的特性が急速に向上することと数平均分子量が約30,000に近づきそして/またはそれを越えると加工がより困難になることを観察したことを基礎にしている。
【0023】
本発明で用いるに適した半結晶性ポリアミド類は、一般に、ラクタム類またはアミノ酸からか、或はヘキサメチレンジアミンの如きジアミンとセバシン酸の如き二塩基性酸の縮合で生じる。また、このようなポリアミド類のコポリマー類およびターポリマー類も包含される。好適な半結晶性ポリアミド類はポリイプシロンカプロラクタム(ナイロン−6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、最も好適にはナイロン−6である。本発明で用いるに有用な他の半結晶性ポリアミド類には、ナイロン−11、ナイロン−12、ナイロン−12,12、そしてコポリマー類およびターポリマー類、例えばナイロン−6/66、ナイロン−6/610、ナイロン−6/12、ナイロン−66/12、ナイロン−6/66/610およびナイロン−6/6Tが含まれる。
【0024】
ナイロン相が示すガラス転移温度(Tg)を上昇させる目的で前記半結晶性ポリアミドのいくらかを非晶性ポリアミドに置き換えることも可能である。非晶性ポリアミドの量はポリアミド相の約10重量%以下、好適には約5重量%以下の量であってもよい。用語「非晶性ポリアミド」は本分野の技術者に良く知られている。本明細書で用いる如き「非晶性ポリアミド」は、示差走査熱量測定装置(「DSC」)を用いて10℃/分の加熱速度で測定(ASTM D−3417)した時に結晶溶融吸熱ピークが存在しないことで示されるように結晶性が欠如しているポリアミド類を指す。
【0025】
使用可能な非晶性ポリアミド類の例には、ヘキサメチレンジアミンのイソフタルアミド、ヘキサメチレンジアミンのイソフタルアミド/テレフタルアミドターポリマー(イソフタル酸部分の比率が100/0から60/40)、2,2,4−と2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン混合物のテレフタルアミド、ヘキサメチレンジアミンと2−メチルペンタメチレンジアミンとイソ−もしくはテレフタル酸もしくはこれらの酸の混合物から作られたコポリマー類が含まれる。また、ヘキサメチレンジアミンのイソ/テレフタルアミドを基にしていてテレフタル酸部分のレベルが高いポリアミド類も有用であるが、但し加工可能な非晶性ポリマーが生じるように2番目のジアミン、例えば2−メチルジアミノペンタンなどが組み込まれていることを条件とする。非晶性ポリアミド類は、ラクタム種、例えばカプロラクタムまたはラウリルラクタムなど[このようなモノマーのみを基にしたポリマー類は非晶性ではないが]をコモノマーとして少量含有させたポリアミドであってもよい(それらが当該ポリアミドに結晶性を与えない限り)。加うるに、このような非晶性ポリアミドに液状もしくは固体状の可塑剤、例えばグリセロール、ソルビトール、マンニトールまたは芳香族スルホンアミド化合物(例えばMonsantoの「Santicizer 8」)などを約10重量%以下の量で含有させることも可能である。
【0026】
このような非晶性ポリアミドは、エチレンビニルアルコールと非晶性ナイロンのブレンド物(ポリアミド成分がEVOHとポリアミドの全組成の約5から約95重量%、好適には約15から約70重量%、最も好適には約15から約30重量%を構成する)であってもよい。
【0027】
このようなポリアミド成分が溶融ブレンド(melt−blend)条件下で示す粘度は、機械的特性が得られるように充分に高くなければならないが、本発明の相関係(phase relation)を作り出すに充分なほど低くなければならない。このポリアミドの粘度は、エチレン−酸コポリマーまたは中和レベルが低いアイオノマーが示す粘度よりも高くなければならないが、中和レベルが高いアイオノマーのそれよりも低くなければならない。
追加的高分子量成分
本発明の組成物を生じさせる時にポリアミドに添加する追加的高分子量成分を、幅広い種類の適切な高分子量化合物から選択する。この「種類」は、主に、エチレンに加えてまた例えばアルファ−オレフィン、アルファ,ベータ−不飽和カルボン酸もしくはそれらの誘導体ばかりでなく以下に同定する他のモノマー類から選択される追加的モノマーを含めたポリマー類を基にした種類である。それに、また、この上で選択したポリアミドと一緒にした時に異なるポリアミド類の1つが連続もしくは共連続相を形成するように1番目のポリアミドとは異なる2番目もしくは異なるポリアミドを含めることも可能である(いろいろなポリアミド類から成るブレンド物が生じるように)。好適な追加的高分子量成分を中和エチレン酸含有(neutralized ethylene acid containing)コポリマー類もしくはターポリマー類から選択する。
【0028】
本発明の中和酸含有ポリマー類は、例えば、エチレンの如きアルファ−オレフィンとα,β−エチレン系不飽和C3−C8カルボン酸から作られたダイレクトコポリマー(direct copolymers)(「エチレン−酸コポリマー」)に金属イオンを用いた中和を受けさせることで誘導可能である。「ダイレクトコポリマー」は、「グラフトコポリマー」(この場合には現存するポリマー鎖にモノマーを結合または重合させる)から区別されるように、モノマー2種以上を同時に一緒に重合させることで作られたコポリマーを意味する。そのような中和エチレン−酸コポリマー類の製造方法は良く知られていて、米国特許第3,264,272号(引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている。中和種(neutralized species)の基になるダイレクトエチレン−酸コポリマー類の製造は米国特許第4,351,931号(これもまた引用することによって本明細書に組み入れら)に記述されている。
【0029】
酸のレベルが高いエチレン−酸コポリマー類を連続重合装置で製造するのは困難である、と言うのは、モノマー−ポリマーが相分離を起こすからである。しかしながら、米国特許第5,028,674号(これもまた引用することによって本明細書に組み入れら)に記述されている如き「共溶媒技術」を用いるか或は酸の量が低いコポリマーが生じ得る圧力よりも若干高い圧力を用いることを通して、そのような困難さを回避することができる。
【0030】
本発明の中和コポリマーの製造で用いるエチレン−酸コポリマー類は、E/X/Yおよび/またはE/Yコポリマー類[ここで、Eはエチレンであり、Xは軟化用コモノマー(softening comonomer)でありそしてYはα,β−エチレン系不飽和C3−C8カルボン酸、特にアクリル酸またはメタアクリル酸である]であってもよい。しかしながら、好適には、このエチレン−酸コポリマーはジポリマー(軟化用コモノマーを用いていない)である。好適な酸部分はメタアクリル酸およびアクリル酸である。
【0031】
「軟化用」は、当該ポリマーがあまり結晶性を示さないことを意味する。適切な「軟化用」コモノマー(X)は、アクリル酸アルキルおよびメタアクリル酸アルキル(アルキル基の炭素原子数が1−12)から選択されるモノマーであり、これらを存在させる場合、これの量を当該エチレン−酸コポリマーの30重量%以下(好適には25重量%以下、最も好適には15重量%以下)にしてもよい。
【0032】
好適なエチレン−酸ジポリマー類はエチレン/アクリル酸およびエチレン/メタアクリル酸ジポリマー類である。他の具体的なコポリマー類には、エチレン/アクリル酸n−ブチル/アクリル酸、エチレン/アクリル酸n−ブチル/メタアクリル酸、エチレン/アクリル酸イソブチル/メタアクリル酸、エチレン/アクリル酸イソブチル/アクリル酸、エチレン/メタアクリル酸n−ブチル/メタアクリル酸、エチレン/メタアクリル酸メチル/アクリル酸、エチレン/アクリル酸メチル/アクリル酸、エチレン/アクリル酸メチル/メタアクリル酸、エチレン/メタアクリル酸メチル/メタアクリル酸およびエチレン/メタアクリル酸n−ブチル/アクリル酸コポリマー類が含まれる。
【0033】
本発明の中和コポリマー類の製造で用いるエチレン−酸コポリマー類は酸部分が多い量で存在するコポリマー類である。「多い」として見なす量は、どの酸部分を用いるかに依存し、特に酸部分の分子量に依存するであろう。エチレン/メタアクリル酸コポリマーの場合の好適な酸レベルは、このコポリマーの15から25(好適である18から25、より好適には19から22)重量%である。エチレン/アクリル酸コポリマーの場合の好適な酸レベルは、このコポリマーの14から25(好適である16から25、より好適には18から22)重量%である。良好な光沢レベルおよび耐摩耗性を得ようとする場合には「酸の量を多く」する方が一般に望ましい。
【0034】
2種以上のコポリマーをブレンドする時には中和前の平均酸レベルが好適な高いパーセントの酸のレベル内になるならば本発明の「多い」範囲の外側の1種以上の任意酸レベルであってもよいことは理解されるであろう。ブレンド物の場合、好適には、アイオノマー成分を生じさせる元の酸コポリマーの各々に含まれる酸の重量パーセントを前記好適な範囲に近づけるべきであり、最も好適には前記範囲内にすべきである。
【0035】
前記酸部分に金属カチオン、特に一価および/または二価金属カチオンによる中和を好適には高度に受けさせる。ポリアミドに適合し得る金属カチオン、即ちまたポリアミドのアミド結合とも相互作用するカチオンを用いて中和を行うのが好適である。カルボン酸部分に好適な金属カチオンにはリチウム、マグネシウム、カルシウムおよび亜鉛、または前記カチオンの組み合わせが含まれる。亜鉛が最も好適である。カリウムおよびナトリウムは一般にあまり適切ではない。カリウムによる中和を受けさせたエチレン/酸コポリマー類は水を吸収する傾向があることでナイロンに悪影響を与える傾向がある。ナトリウムによる中和を受けさせた化合物をUV光に対して安定にするのが困難である。好適にはマグネシウムおよびカルシウムを亜鉛と組み合わせて用いる。
【0036】
中和剤(例えば酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムなど)を固体形態で添加することも可能ではあるが、好適には、それをエチレン−酸コポリマーである担体に入っている濃縮物として添加する。エチレン−酸コポリマーを注意深く選択しかつ中和剤が担体をあまり中和しないことを確保するブレンド条件を選択することを通して、そのような濃縮物を生じさせる。このような中和用濃縮物にまた前記金属カチオンの1種以上の塩(例えば酢酸塩およびステアリン酸塩など)を少量(約2重量%以下)含有させることも可能である。
【0037】
適切な中和エチレンコポリマー類がデュポン社(E.I.du Pont de Nemours and Company)(Wilmington、Delaware)の如き供給業者から多数種商業的に入手可能である。例えば商標SURLYNR(個々の番号表示を伴う)下で販売されている樹脂が有用であり、それには、これらに限定するものでないが、SURLYNR9120,SURLYNR9220,SURLYNR9520,SURLYNR9320,SURLYNR9020またはそれらのブレンド物が含まれる。また、他の供給業者の樹脂、例えばExxonが商標IOTEKRの下で販売している樹脂なども適切である。SURLYN(商標)樹脂とIOTEK(商標)樹脂のブレンド物も同様に適切である。このようなブレンド物の物性は、中和を受けさせる前の酸含有樹脂中の酸含有量に応じて多様である。酸のパーセントが高いのが好適である。
【0038】
ポリアミドおよび次亜燐酸塩と一緒にブレンド可能な追加的酸含有ポリマー類には、例えばポリアミドマトリックス(matrix)樹脂と米国特許第4,174,358号(「Epstein」)(引用することによって本明細書に組み入れられる)に挙げられているポリマー類から選択される他の少なくとも1種のポリマーを含んで成る粘り強い多相組成物(toughened multiphase compositions)に含まれている非ポリアミド成分などが含まれる。この場合、そこに記述されている酸含有ポリマー類は中和を受けてはいないが、本発明の範囲内に含まれる。
【0039】
更に、本組成物はa)ポリアミド、b)追加的ポリマーおよびc)次亜燐酸塩を含んで成り、前記次亜燐酸塩を添加するとそのようなブレンド物の形態特性または物性が向上する。このような「向上」は、そのようなブレンド物が示すビーカー軟化点および引張り特性が向上することに関係し、好適には、ブレンド物に成分b)を酸含有ポリマーとして含有させた時に向上が得られる。ポリアミド/中和エチレン酸/次亜燐酸塩ブレンド物の場合には、次亜燐酸塩を添加しなかった時のビーカー温度値からのデルタまたは変化としてビーカー値が約+40から約+100℃向上する。高温の張力は、次亜燐酸塩を含有させていないポリアミドブレンド物に比較して約4倍から約10倍向上する。
【0040】
そのような「追加的ポリマー」を、特に、モノマーA−Hをいずれかの順で用いて生じさせた式:
A(a)-B(b)-C(c)-D(d)-E(e)-F(f)-G(g)-H(h)
[式中、
Aは、エチレンであり、
Bは、一酸化炭素であり、
Cは、炭素原子数が3から8のアルファ,ベータ−エチレン系不飽和カルボン酸およびそれらの誘導体[炭素原子数が1から29のアルコールとジカルボン酸から作られたモノエステル、およびジカルボン酸の無水物、そしてジカルボン酸のモノカルボン酸、ジカルボン酸およびモノエステルの金属塩(カルボン酸基の0から100パーセントが金属イオンによる中和でイオン化している)から成る種類から選択される]から成る種類から選択される不飽和モノマーであり、
Dは、炭素原子数が4から11の不飽和エポキシドであり、
Eは、カルボン酸{炭素原子数が7から12のモノカルボン酸およびジカルボン酸およびそれらの誘導体[炭素原子数が1から29のアルコールとジカルボン酸から作られたモノエステル、およびジカルボン酸の無水物、そしてジカルボン酸のモノカルボン酸、ジカルボン酸およびモノエステルの金属塩(カルボン酸基の0から100パーセントが金属イオンによる中和でイオン化している)から成る種類から選択される]から成る種類から選択される}で置換されている芳香族スルホニルアジドから窒素が失われることで生じる残基であり、
Fは、炭素原子数が4から22のアクリル酸エステル、炭素原子数が1から20の酸のビニルエステル(酸が実質的に残存していない)、炭素原子数が3から20のビニルエーテル類、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデンおよび炭素原子数が3から6のニトリル類から成る種類から選択される不飽和モノマーであり、
Gは、C、DおよびEで定義した種類の少なくとも1種の反応性基を有するモノマーがグラフト化し得る炭素原子数が1から12のペンダント型炭化水素鎖と全炭素原子数が14以下のペンダント型芳香族基(置換基を1から6個持っていてもよい)を有する不飽和モノマーであり、そして
Hは、C、DおよびEで定義した種類の少なくとも1種の反応性基を有するモノマーがグラフト化し得る追加的非共役不飽和炭素−炭素結合を少なくとも1つ有する炭素原子数が4から14の分枝、直鎖および環状化合物から成る種類から選択される不飽和モノマーである]
で表される分枝および直鎖ポリマー類から選択する。各モノマーのモル分率は、全成分の総量が1.0のモル分率になるように、(a)0-.95;(b)0-0.3;(c)0-0.5;(d)0-0.5;(e)0-0.5;(f)0-0.99;(g)0-0.99;および(h)0-0.99であってもよい。
【0041】
この上に指定した範囲内の具体的なポリマー類がEpsteinに更に記述されている。加うるに、中和エチレン酸コポリマーはこの上に記述した一般的記述の範囲内であるが、特にポリアミドが40重量%未満のブレンド組成物で用いるに有用である。この上に記述したか或はEpsteinに記述されている追加的ポリマー類の大部分は、ポリアミド成分を少なくとも60重量%(例えば70、80または90%)の量で存在させるポリアミドブレンド組成物で用いるにも有用である。次亜燐酸塩が形態を向上させる効果は、恐らくは、ポリアミドのパーセントを高くすると有意ではなくなるであろう(このような組成物も特定用途では適切であろうが)。
【0042】
本発明の組成物で使用可能なさらなる成分は、修飾もしくは未修飾弾性重合体であり、これを本明細書および本技術分野でまたエラストマーまたはゴム状ポリマーとも互換的に呼ぶ。後で修飾を受けさせることができるそのような有用な弾性重合体には、エチレンとエチレン以外のアルファ−オレフィンから作られたコポリマーが含まれる。そのようなアルファ−オレフィンは好適には少なくとも1種のC3−C8から選択されるアルファ−オレフィンであり、好適には少なくとも1種のC3−C6アルファ−オレフィンから選択されるアルファ−オレフィンである。プロピレンがC3−C8アルファ−オレフィンコポリマーを生じさせる時に選択する好適なモノマーである。本組成物に関連して使用可能な他のC3−C6アルファ−オレフィンには1−ブテン、1−ペンテンおよび1−ヘキセンが含まれ、これらは前記ポリマーに含めるプロピレンの代わりにか或は追加的に使用可能である。
【0043】
このようなコポリマーに反応性部分をコポリマー分子当たり平均で少なくとも2つ、好適には2から10、より好適には2から6、最も好適には2から4持たせるが、好適にはこれを前記コポリマーにグラフト化させる。このような反応性コポリマーの反応性部分基(reactive moiety groups)の数が2以上であるとこの反応性コポリマーとポリアミドが有するアミン末端基の間で生じる網状組織化(networking)が増大すると考えている。そのような反応性部分はカルボキシルまたはカルボキシレート官能性であってもよく、エチレン/C3−C6アルファ−オレフィンコポリマーを炭素原子数が4から8のアルファ,ベータ−エチレン系不飽和ジカルボン酸またはそれらの誘導体[このような誘導体には、ジカルボン酸の無水物、またはジカルボン酸の酸またはモノエステルの金属塩(カルボン酸基の0から100パーセントが塩基性金属塩による中和でイオン化している)などが含まれる]から成る種類から選択される不飽和反応性部分と反応させることを通して、そのような官能性を与えることができる。そのような酸および誘導体の例はマレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸のモノエチルエステル、マレイン酸モノエチルエステルの金属塩、フマル酸、フマル酸のモノエチルエステル、イタコン酸、ビニルフタル酸、またはフマル酸モノエチルエステルの金属塩である。酸修飾グラフトコポリマー(acid−modified graft copolymer)を本明細書で用いる場合には、これを単独の酸含有ポリマーとして用いた時に適切な最大の物性を達成することができるように、グラフト化のレベルまたはパーセントを充分に高くすべきである。酸修飾グラフトコポリマーを中和エチレンコポリマーとブレンドして用いる場合には、そのような修飾コポリマーの酸のパーセントを低くしてもよい。最終的なポリアミドブレンド物が結果として示す物性の評価に関するそのような均衡は、本明細書の教示が与えられたならば、本分野の通常の技術を持つ人が理解し得る範囲内である。
次亜燐酸塩
ポリアミドと酸含有コポリマーのブレンド物に燐含有化合物である次亜燐酸塩(hypophosphite salt)(有機または無機形態)を添加すると、前記ブレンド物の形態および特性が有意に向上する。本明細書で用いる燐含有化合物を、式:R1R2P(O)OHおよびそれの塩[ここで、R1およびR2は、独立して、水素または炭素原子数が1−16の有機基から選択される]で表される化合物から選択する。金属塩をナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩から選択する。好適な化合物をHHP(O)ONa、即ちNaH2PO2から選択する。
【0044】
この上に示した好適な燐化合物を燐の酸およびそれらの塩の種類から選択する。この種類には一般式H3POn(オルト酸)およびHPOn−1(メタ形態)で表されるオキソ酸および一般式H4P2On(n=4−8)で表される二酸が含まれ、これらは下記の表(表1)に示す如きいろいろな酸化状態を有する。
【0045】
【表1】
【0046】
水溶液に入っているホスフィン酸、ホスホン酸および燐酸のアニオンは燐酸塩(PO4)3−、亜燐酸塩(HPO3)2−および次亜燐酸塩(H2PO2)1−として知られる。次亜燐酸塩(ホスフィン酸塩)アニオンは一塩基性であり、本発明で金属カチオンによる中和を受けさせる好適なアニオンである。他のアニオンおよびそれらの塩も前記ポリアミド/ポリマーブレンド物の形態特性がそのような燐含有化合物を添加していない以外は同じブレンド物に比較して向上することを条件として同様に適切である。この上に記述した簡単なアニオンに加えて、一般式Hn+2PnO3n+1で表される多数種のポリ燐酸が存在し、これらは分子中にP−O−P結合を含む燐原子を3個以上とP−P結合を含む酸を伴い、これらもまた本明細書で用いるに適する。例えば、アニオン[HPO2O−PO2H]−2を伴うジホスホン酸またはH4P2O5、またはアニオン[OPO2OPO2O]−4を伴う二燐酸またはピロ燐酸H4P2O7も同様に適切である。この上に示したように、対イオンは、均衡を取る電荷を有する適切な如何なる金属対イオンから選択されてもよく、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、または元素周期律表に示されている如き他の金属から選択可能である。次亜燐酸塩の場合の好適な金属はナトリウムである。
他の成分
プラスチックに通常配合される添加剤、例えばUV安定剤、抗酸化剤および熱安定剤、加工助剤、顔料などを本ブレンド物に含めてもよい。このような成分を含める場合、これらを好適には前記アイオノマー/ポリアミドブレンド物100重量部当たり約1から約3(好適には約1.5から約3)部の量で存在させるが、より少ない量でか或はより多い量で存在させることも可能である。
【0047】
部品(part)が紫外(UV)光にさらされる時には、ナイロン用およびアイオノマー用のUV安定剤を1種以上含めるのが特に重要である。有用な典型的UV安定剤には、ベンゾフェノン類、例えばヒドロキシドデシルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、スルホン基を含有するヒドロキシベンゾフェノン類など、トリアゾール類、例えば2−フェニル−4−(2’,2’−ジヒドロキシベンゾイル)−トリアゾール類など、置換ベンゾチアゾール類、例えばヒドロキシ−フェニルチアゾール類など、トリアジン類、例えばトリアジンの3,5−ジアルキル−4−ヒドロキシフェニル誘導体、ジアルキル−4−ヒドロキシフェニルトリアジンの硫黄含有誘導体、ヒドロキシフェニル−1,3,5−トリアジンなど、ベンゾエート類、例えばジフェニロールプロパンのジベンゾエート、ジフェニロールプロパンの第三ブチルベンゾエートなど、そして他の物、例えば低級アルキルチオメチレン含有フェノール類、置換ベンゼン類、例えば1,3−ビス−(2’−ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸の金属誘導体、不斉しゅう酸のジアリールアミド類、アルキルヒドロキシ−フェニル−チオアルカン酸エステル、およびヒンダードアミンであるビピペリジル誘導体が含まれる。
【0048】
好適なUV安定剤はTINUVIN(商標)234(2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール)、TINUVIN(商標)327(2−(3’,5’−ジ−t−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)、TINUVIN(商標)328(2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール)、TINUVIN(商標)329(2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール)、TINUVIN(商標)765(ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート)、TINUVIN(商標)770(ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)デカンジオエート)、およびCHIMASSORB(商標)944(N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,6−ヘキサジアミンと2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンと2,4,4−トリメチル−1,2−ペンタナミンから作られた重合体)であり、これらは全部Ciba Geigyから入手可能である。
【0049】
好適な熱安定剤はIRGANOX(商標)259(ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)、IRGANOX(商標)1010(3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロピオン酸の2,2−ビス[[3−[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]−1−オキソプロポキシ]メチル]1,3−プロパンジイルエステル)、IRGANOX(商標)1076(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ桂皮酸オクタデシル)、IRGANOX(商標)1098(N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマミド)、IRGANOX(商標)B215(IRGANOX(商標)1010とトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトの33/67ブレンド物)、IRGANOX(商標)B225(IRGANOX(商標)1010とトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトの50/50ブレンド物)およびIRGANOX(商標)B1171(IRGANOX(商標)1098とトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトの50/50ブレンド物)であり、これらは全部Ciba Geigyから入手可能である。
【0050】
好適な加工助剤には、二ステアリン酸アルミニウムおよびステアリン酸亜鉛、特にステアリン酸亜鉛が含まれる。
【0051】
顔料には、透明な顔料、例えば無機ケイ質顔料(例えばシリカ顔料)などとコーティング組成物で用いられる通常の顔料の両方が含まれる。通常の顔料には金属酸化物、例えば二酸化チタンおよび酸化鉄など、金属の水酸化物、金属フレーク、例えばアルミニウムフレークなど、クロム酸塩、例えばクロム酸鉛など、亜硫酸塩、硫酸塩、炭酸塩、カーボンブラック、シリカ、タルク、白土、フタロシアニンブルーおよびグリーン、オルガノレッド、オルガノマローンおよび他の有機顔料および染料が含まれる。高温で安定な顔料が特に好適である。
【0052】
一般に、顔料を添加すべき材料と同じか或はそれに相溶し得る分散用樹脂と一緒に顔料を混合することを通して、顔料を調合してミルベース(millbase)を生じさせる。通常手段、例えばサンドグラインディング(sand grinding)、ボ−ルミリング(ball milling)、アトリター(attritor)グラインディングまたは2本ロール混練りなどで顔料分散物を生じさせる。
【0053】
一般的には必要でないか或は使用しないが、他の添加剤、例えばガラス繊維および鉱物繊維、抗スリップ剤(anti−slip agents)、可塑剤、核形成剤などを添加することも可能である。
製造方法
本ブレンド物の所望形態および所望特性を得るには、一般に、エチレン酸(ethylene acid)の体積パーセントの方がポリアミドの体積パーセントよりも大きい時でも中和酸コポリマー(好適には高度に中和された)が連続もしくは共連続ポリアミド相内にしっかりと固定されるようにする必要がある。本発明における好適な組成物のポリアミド含有量は実際に中和酸エチレンコポリマーに相対して40重量%未満である。形態向上剤である次亜燐酸塩を用いると実際にポリアミドの相対重量パーセントを40%未満にすることが可能になり、それと同時にまた、中和酸が連続もしくは共連続ポリアミド相内に存在することに関連した良好な形態特性も維持される。
【0054】
所望の形態を達成するには、エチレン−酸コポリマー(好適にはナイロンに適合し得るカチオンによる中和をある程度受けさせておいた)とポリアミドを強力な混合条件(高せん断)下で溶融ブレンドすることでブレンドを行いながらさらなる中和を起こさせるべきである。混合を所望の形態が得られるに充分な強度、温度および滞留時間で行うべきである。この中和過程中に生じる水を除去するには効率の良い揮発物除去装置(devolatilization system)を用いる必要がある。中和の度合が低いか或は中和を全く行わないで出発する場合には水がより多い量で生じることから揮発物除去の効率がより重要になる。この溶融コンパウンド化(melt compounding)では、水分を除去する目的で、少なくとも1つの真空ゾーンの所に好適には少なくとも630mmHgの真空度をかけるべきである。
【0055】
最初に、通常は「塩とコショウ」ブレンドと呼ばれるブレンドでいろいろな出発材料を互いに一緒にしてもよい。また、それらを同時または個別に計量することでそれらを一緒にしてもよいか、或は混合装置、例えば押出し加工機、バンバリーミキサー、バスニーダー、ファレル連続ミキサーなどの1つ以上の混合セクションに1回以上通すことで、それらを分割してブレンドすることも可能である。供給ゾーンを2カ所以上利用できる場合には、ナイロン、中和剤(好適には濃縮物として)およびアイオノマーのいくらかを最も後方に位置する供給口の所で添加して、残りのアイオノマーを後方の供給ゾーンの所で添加してもよい。押出し加工機から出るポリマーストランド(strands)を好適には水浴に入れて急冷した後、切断してペレットを生じさせる。本分野の技術者がペレット化に関して良好に認識している代替方法を用いることも可能であり、そのような方法には水面下の切断および空気による急冷が含まれる。
【0056】
好適な混合装置は、本実施例で用いる如き装置、特に場合により固定式ミキサー(例えばKenics Companyが販売している如き)[押出し加工機の軸とダイスの間に位置する]が備わっていてもよい2軸押出し加工機などである。本実施例で用いる押出し加工機の場合には、これを好適には175から250rpmの軸速度で回転させる。ブッシング(bushings)のセクションは供給セクション、混練りブロック混合(反応)セクション、逆ピッチスクリューを伴う真空押出し加工セクションおよびダイスセクションを含んで成る。
【0057】
この混合および中和度を、好適には、混合装置内で相反転(体積パーセントが高い方のアイオノマーが連続もしくは共連続ナイロン相内に分散する)がもたらされるに充分な度合にすべきである。しかしながら、そのような混合装置内で完全には反転が起こらない可能性があり、その結果として、前記ブレンド物を射出成形操作で更に加工してプラーク(plaques)などを生じさせてもよいと認識されるべきである。
【0058】
ポリアミドのパーセントが高い適切なブレンド物、例えばポリアミドのパーセントが40重量%に等しいか或はそれ以上のブレンド物には、以下に示す組成を持たせることに加えて燐化合物(例えば次亜燐酸ナトリウム)を2重量%またはそれ以下の量で含有させたブレンド物が含まれる。以下に記述するブレンド物におけるZnまたはZnOによる中和は、酸ポリマーにZnO濃縮物(この濃縮物に関しては本実施例に更に記述する)による中和を受けさせる過程を指す。適切なブレンド物には下記が含まれる:
1)ナイロン−6が49.8重量%、SURLYN(商標)9220[エチレンメタアクリル酸20%(E/20%MAA)に中和をZn塩含有量が34%になるように受けさせておいた](亜鉛による中和を更に受けさせて約75%にしておいた)が48.6重量%、添加剤および安定剤パッケージが1.6重量%、
2)この上に示したブレンド物1と同じブレンド物にZnOを4重量%用いた追加的中和を受けさせた、
3)SURLYN(商標)9220に亜鉛による中和を67%になるように受けさせる以外はブレンド物1と同じ、
4)SURLYN(商標)9220に亜鉛による中和を72%になるように受けさせた後、これを40重量%とナイロン−6を55重量%と安定剤パッケージを1.3重量%用いてそれらを一緒にし、このブレンド物にZnOを3.7重量%用いたさらなる中和を約100%になるまで受けさせた、
5)前記ブレンド物4の72%中和SURLYN(商標)9220が40重量%、ナイロン−6が50重量%、非晶性ナイロンであるSELAR(商標)PA(6−イソフタル酸/6−テレフタル酸)が5重量%、ZnO濃縮物が3.7重量%、および安定剤パッケージが1.3重量%、
6)前記ブレンド物4の72%中和SURLYN(商標)9220が35重量%、ナイロン−6が55重量%、SELAR(商標)PAが5重量%、ZnO濃縮物が3.7重量%、および安定剤パッケージが1.3重量%、
7)ナイロン−6が55重量%、Mg2+による中和をMg塩含有量が約40%になるように受けさせておいたE/20%MAAが37重量%、および安定剤パッケージが1.3重量%、このブレンド物に30%ZnO濃縮物を6.7重量%用いたさらなる中和を受けさせて約100%中和にした、
8)SURLYN(商標)9220が37.2重量%、ナイロン−6が54重量%、および安定剤パッケージが1.3重量%、これに30%ZnOを7.5重量%用いた中和を受けさせて約100%にした、
9)ナイロン−6が46重量%、SURLYN(商標)9120(エチレン/メタアクリル酸19重量%にZnを38%用いた中和を受けさせておいた)が43.6重量%、安定剤パッケージが1.8重量%、これに30%ZnO濃縮物を8.6重量%用いたさらなる中和を受けさせて約97%中和にした、
10)ナイロン−6が43重量%、SURLYN(商標)9120が46.05重量%、および安定剤パッケージが1.8重量%、これに30%ZnO濃縮物を8.6重量%およびCaO粉末を0.55%用いたさらなる中和を受けさせて約100%中和にした、
11)ナイロン−6が40重量%、SURLYN(商標)9120が48.95重量%、および安定剤パッケージが1.8重量%、これにZnO濃縮物を8.7重量%およびCaO粉末を0.55重量%用いたさらなる中和を受けさせて約100%中和にした、
12)ナイロン−6が46重量%、SURLYN(商標)9520(亜鉛による中和を72%中和になるように受けさせておいたE/10重量%MAA)が49.6重量%、および安定剤パッケージが1.8重量%、これに更に30%ZnO濃縮物を2.6重量%混合することで約100%中和にした、
13)ナイロン−6が45重量%、SURLYN(商標)9320(亜鉛で67%中和しておいたE/24重量%nBA/約10重量%MAA)が50.7重量%、および安定剤パッケージが1.8重量%、これに30%ZnO濃縮物を2.5重量%用いたさらなる中和を受けさせて約95%中和にした、
14)ナイロン−6が45重量%、SURLYN(商標)9320が25.4重量%に加えてSURLYN(商標)9520が25.3重量%、および安定剤パッケージが1.8重量%、これに30%ZnO濃縮物を2.5重量%用いたさらなる中和を受けさせて約95%中和にした、
15)ナイロン−6が45重量%、SURLYN(商標)9320が25.2重量%に加えてSURLYN(商標)9520が25.3重量%、および安定剤パッケージが1.8重量%、これに30%ZnOを2.5重量%およびCaOを0.2重量%用いたさらなる中和を受けさせて約100%中和にした、
16)ナイロン−6が45重量%、SURLYN(商標)9020(73%中和しておいたE/10重量%iBA/10重量%MAA)が50.7重量%、および安定剤パッケージが1.8重量%、これに30%ZnO濃縮物を2.5重量%用いたさらなる中和を受けさせて約95%中和にした、
17)ナイロン−6が45重量%、SURLYN(商標)9520が25.2重量%、高酸性SURLYN(商標)9120が22.3重量%、および安定剤パッケージが1.8重量%、これに30%ZnO濃縮物を5.7重量%用いたさらなる中和を受けさせて約97%中和にした、
18)ナイロン−6が45重量%、SURLYN(商標)9320が25.2重量%、SURLYN(商標)9120が22.3重量%、および安定剤パッケージが1.8重量%、これに30%ZnO濃縮物を5.7重量%用いたさらなる中和を受けさせて約97%中和にした、
19)ナイロン6が45重量%、SURLYN(商標)9120が44.2重量%、安定剤パッケージが1.8重量%、およびステアリン酸亜鉛が0.5%、これに30%ZnO濃縮物を8.5重量%用いたさらなる中和を受けさせて約93%中和にした、
20)ULTRAMID(商標)ナイロン6が44重量%、SURLYN(商標)9120が45.7重量%、安定剤パッケージが1.9重量%、およびステアリン酸亜鉛が0.5%、これに30%ZnO濃縮物を7.4重量%用いたさらなる中和を受けさせて約88%中和にした、
21)ULTRAMID(商標)ナイロン−6が44重量%、SURLYN(商標)9120が46.9重量%、安定剤パッケージが1.9重量%、およびステアリン酸亜鉛が1.0%、これに30%ZnOを6.2重量%用いたさらなる中和を受けさせて約80%中和にした。
【0059】
ポリアミドが40重量%未満のブレンド物を本明細書の実施例セクションに例示し、これにこの上に記述した如き全ての加工助剤および中和エチレンコポリマーもしくはコポリマーブレンド物をより大きな相対パーセントで含めてもよい。ポリアミドの量がこの上に記述した量よりも多くかつ中和エチレンコポリマーもしくはコポリマーブレンド物がより少ないブレンド物も、また燐含有反応体も含有させかつそのような反応体が前記ブレンド物が示す有用な形態特性もしくは物性向上利点をある程度与えることを条件として、本発明の範囲内である。
【0060】
本分野で通常の技術を有する人は、本明細書の教示に従ういろいろな賦形剤をいろいろな比率で容易に混合することができ、燐含有反応体、例えば次亜燐酸ナトリウムなどを5重量%以下の量で含めて、形態特性または物性が向上する効果を測定することができるであろう。
【0061】
示差走査熱量測定装置(DSC)を用いて冷却中の発熱を容易かつ迅速に測定することができ、これは形態の有用な指標でありかつ混合条件が所望形態にとって充分であることを示す有用な指標である。DSC冷却中の発熱は使用するナイロンに応じて異なるが、本分野の技術者はそれを容易に測定することができるであろう。ナイロン6を用いた時のDSC冷却中の発熱は、好適には、冷却を速い速度(例えば30℃/分)で実施した時には160℃から180℃であるべきである。このような発熱が存在することは所望の相関係(phase relationship)が達成されたことを示している。
【0062】
また、引張り試験も製品形態の有用な指標である。形態が正しい時には、高温(150℃)の時の破壊時伸び(TB)に対する室温(23℃)の時の破壊時伸び(TB)の比率は好適には約10未満である。
【0063】
標準的な射出成形技術を用いて製造した本発明のブレンド物の成形品(molded parts)は、ライトグレイニング(light graining)を行う必要なく高い光沢と向上した耐傷性を示す。このような成形品は、これにライトグレイニングを受けさせなくても、少なくとも80のDOIを示し、90から95の如き高いDOIを示す。一様な金属色を組み込む(incorporated)ことができかつ部品(parts)を塗装することができる。本ブレンド物が高温で示す特性は、焼き付け段階中に部品形状(part shape)を維持する目的で特殊なジグもハンガーも用いる必要なく成形品のOEM塗装を行うことができるに充分なほどの特性である。
【0064】
本発明のブレンド物にアイオノマー用およびポリアミド用両方の標準的なUV安定剤を添加して成形した部品は驚くべきほどの耐候性を示し、特に紫外光に長期間さらされた時に安定性を示す。このような成形品は、例えばCIE 1976(CIE LAB)カラースケールなどを用いて測定した時に低いカラーシフト(color shift)を示し、このことは、成形品を外壁用途で用いる時に必要とされる。それらをキセノンアーク耐候試験機(SAE J1960)で2500キロジュール/平方メートルにさらした時にそれらが示すΔEカラーシフト値は約3未満(自動車の外壁用途で用いるに適するとして見なされるレベル)である。本発明のブレンド物を用いると少なくとも80のDOIを示しかつ優れた耐傷性を示す改良された自動車用ファシアを製造することができる。
【0065】
自動車用ファシア(バンパーなど)の如き用途では、ある種の商業的樹脂に固有の耐傷性よりも高い耐傷性が要求される。従って、例えばデュポン社から入手可能なBEXLOY(商標)W樹脂を用いる時には、耐傷性を向上させる目的で典型的に前記樹脂の表面にライトグレイン(light grain)を塗布する。しかしながら、何らかのグレイニング、即ちライトおよびグロシー(glossy)グレイニングを行うと、「画像の明確さ(Distinctness of Image)」(DOI)、即ち自動車産業における外壁仕上げで感知される品質の評価で用いられる鍵となる指標が実質的に害される。DOI、即ち着色仕上げされた状態の物が示す反射の「クリスプネス(crispness)」または「鮮明度(degree of definition)」を実際の物自身と比較した時の尺度を、球形表面から反射して来る光線の角度から測定する。Hunterlab Model No. D47R-6F Doigon Gloss Meterを用いてDOIを測定することができる。テストパネルをインストルメントセンサー(instrument sensor)の上に置いて、反射して来る画像の鮮明さを測定する。DOI試験手順の詳細がGM Test Specification TM-204-Mに記述されている。自動車産業において滑らか、即ち「クラスA」表面で満足される仕上げは、典型的に、DOI値が少なくとも60、好適には80以上のフィニッシュ(finish)を持つであろう。
【0066】
本発明は、光沢をより高くする(20°で測定した時の値が少なくとも60でありかつ60°で測定した時の値が少なくとも75である)こと、DOIをより高く(少なくとも60に)すること、加工をより迅速に行うこと、高温特性をより良好にすること、ライトグレイニングを行う必要なく耐傷性を向上させることの必要性を他の重要な性能特性を保持しながら満足させるものである。また、金属色を組み込むことができること、そしてまた、成形品の塗装をより高い光沢、より迅速な加工、より良好な高温特性、およびライトグレイニングを行う必要なく向上した耐傷性を伴わせて行うことができるようにする必要性も達成された。ガラス繊維による補強を行う必要性がなくなった。本発明のブレンド物を用いて作成した成形品は高い光沢を有し、滑らか、即ち「クラスA」の表面への最良の塗装仕上げに少なくとも匹敵するDOIを示し、特に80を越え、90から95の如き高いDOIを示す。一様な金属色を組み込むことができ、かつ部品を塗装することができる。高温特性は、焼き付け段階中に部品の形状を保持する目的で特殊なジグもハンガーも用いる必要なくOEM塗装を行うことができるほどの特性である。中和コポリマーとポリアミドの両方と次亜燐酸塩に標準的UV安定剤を添加して成形した部品は良好な耐候性を示し、特に紫外線に長期間さらされた時に安定性を示す。本発明のブレンド物を用いて少なくとも80のDOIを示しかつ優れた耐傷性を示す改良された自動車用ファシアを製造することができる。
試験方法
1)ビーカー軟化点
ビーカー(VICAT)軟化点測定のASTMはASTM 1525である。このビーカーは、上限有効温度(upper end temperature capability)(材料が「柔らかく」なる点)の尺度である。熱変形温度(HDT)は加熱サイクル中に耐えるかけられた負荷を示す点で、ビーカーとHDTは異なる。ビーカーは針のような探針であり、この先端が、軟化点に到達した時点で表面を貫通する。
【0067】
ビーカー値が低いことは、当該材料がビーカー値近くおよびそれより高い温度で用いるに適さないことを意味する。本発明では、次亜燐酸塩を存在させるとビーカーが驚くべきほど高くなるが、これは形態が変化することによるものである。ナイロンが連続相材料(continuous phase mateiral)である時には、ナイロンは高い溶融温度(melt temperature)、即ち高い軟化点を示すことから、我々は、高いビーカーを得る。中和エチレン/酸コポリマーが連続相の時のビーカーは低い−−−このような中和エチレンコポリマーは一般に低い融点を示す。
引張り強度
張力値は、ビーカー値として150℃を選択していることから、高温における材料強度と連続相材料の間の関係と同じ関係を示す、と言うのは、この温度は中和エチレン酸コポリマーの融点よりもずっと高いからである。従って、引張り強度を基にして連続相材料間の差を示すことができる。
【0068】
本実施例に報告する射出成形試験片(場合により盤またはプラーク)に対して行った試験は23℃および150℃における破壊時張力(ASTM D1708)および破壊時伸び(ASTM D1708)そして23℃における曲げ応力(ASTM D790A)であった。
【0069】
また、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて試験片の形態も検査した。ミクロトームを用いて試験片の非常に薄い断片サンプルを機械方向(流れに対して平行)および横方向(流れに対して垂直)の両方に関して低温で作成した。このサンプルをホスホタングステン酸で染色すると、これはナイロン成分に結合して透過図のコントラストが高くなる(高倍率の写真で見るとアイオノマーの方が明るく見えかつナイロンの方が暗く見える)。
【0070】
Novo−Gloss Meterを用いて光沢を60°の角度で測定した(黒色標準=93.64)。
【0071】
(実施例)
本実施例の各々で特に明記しない限り加熱ゾーンが5ゾーン備わっている28mmの2軸押出し加工機に場合によりKenics Companyの固定式ミキサーを押出し加工機の先端と単一穴ダイスプレートの間に取り付けて混合を行った。この押出し加工機を各場合とも1分当たり200回転(rpm)の軸速度で操作し、真空口を約630mm水銀真空度にして、材料を押出し加工機の後方供給ゾーンに1時間当たり約10ポンドの供給速度で供給した。供給用ホッパー上に窒素ブランケット(blanket)を維持した。押出し加工機の長さ方向に渡る温度プロファイルは下記の通りであった:スロート:約25℃、ゾーン1:220℃、ゾーン2、3、4および5:250℃、アダプタ1および2:250℃、およびダイス:265℃。サンプルの滞留時間は約2.5分であった。サンプルを水浴(約23℃)中で急冷した後、切断してペレットにした。
【0072】
各場合とも特に明記しない限り、一般目的のスクリューが使用されている容量が6オンスの射出成形機を用い、バレル温度を260℃レンジ(range)の溶融物温度が達成されるように設定して、サンプルの射出成形を行った。用いた成形条件は下記の通りであった:速いラム進行速度(fast ram forward speed)、60rpmの軸速度、1平方インチゲージ当たり50ポンド(psig)の背圧、400−800psigの注入圧力、20秒(sec.)間の注入時間、30秒間の保持時間、および5/32インチのノズル。
【0073】
各場合とも標準的な添加剤/安定剤パッケージを用いた。好適なパッケージにはナイロン用およびアイオノマー用の安定剤が含まれている。このようなパッケージには、例えば、この上で考察した如きいろいろな成分が含まれている可能性があり、例えばIRGANOXR,TINUVINR,およびCHIMMASORBR安定剤などが含まれている可能性がある。
【0074】
本実施例で用いた中和剤濃縮物は、エチレン/低(5から10)重量%のメタアクリル酸から作られたコポリマーである担体(この担体の製造をこれの有意な中和が起こらないことを確保する条件下で行った)に主(principle)中和剤が入っているブレンド物(例えばZnO濃縮物には酸化亜鉛が入っており、そしてMgO濃縮物には水酸化マグネシウムが入っている)である。そのような濃縮物にまた金属塩、例えば酢酸塩およびステアリン酸塩などを低レベル(2重量%以下)で含有させることも可能である。この濃縮物に関して示す「パーセント」は、この濃縮物の主中和剤の重量パーセント(濃縮物の総重量を基準)である。即ち、本実施例で用いる50%MgO濃縮物の場合には、酸化マグネシウムがエチレン/5重量%メタアクリル酸から作られたコポリマーに50重量%(濃縮物の総重量を基準)入っている。30%ZnO濃縮物の場合には、酸化亜鉛がエチレン/5重量%メタアクリル酸から作られたコポリマーに30重量%(濃縮物の総重量を基準)入っており、そして45%ZnO濃縮物の場合には、酸化亜鉛がエチレン/10重量%メタアクリル酸から作られたコポリマーに45重量%(濃縮物の総重量を基準)入っている。
【0075】
以下に示す実施例では、次亜燐酸塩、例えばNaH2PO2などをポリアミドと中和酸含有コポリマーのブレンド物に添加した時の機械的特性の効果を立証する。以下の表2に実施例番号、組成および各成分の相対重量パーセントを示す。表3および4に本実施例および比較実施例(燐含有添加剤を含有させていない)が示したビーカー値および張力値を示す。これらの実施例は、ポリアミドが40重量%に等しいか或はそれ以下のブレンド物には有意な相対的性能(significant relative performance)が見られることを明らかに立証している。
【0076】
実施例1−4に、ポリアミドが40から33重量%で次亜燐酸塩が0.2重量%の4種類のブレンド物の調製を記述する。150°で比較的高いビーカー軟化点と張力を得る(以下の表3および4を参照)。表3および4にまた比較実施例C1−C4に関するそのようなデータも示す。一般的には、NaH2PO2を添加すると高温の張力が驚くべきことに4から10倍向上することが観察された。ビーカー軟化点が80℃中央の範囲から130℃−180℃の範囲にまで高くなる。従って、本発明は、ポリアミドブレンド物が示す高温の張力およびビーカー軟化点を高くする方法に関し、この方法は、本明細書に記述する燐含有反応体を前記ブレンド物に添加することを含んで成る。特にポリアミド/酸含有量が高いポリマーのブレンド物に改良、即ち向上が見られる。
実施例1
40重量%の量のナイロン−6を50重量%の量のSURLYN(商標)9120、6.2重量%の量のZnO濃縮物、1.7重量%の量のステアリン酸亜鉛、1.9重量%の量のUVおよび熱安定剤、そして0.2重量%の量の次亜燐酸ナトリウムと一緒にして、28mmの2軸押出し加工機(この上に示した一般的混合条件に関する本文を参照)の後方部分に供給した。押出されたストランドを細断してペレットにし、乾燥させた後、場合によりペレット/ペレットミックス(pellet/pellet mix)を用いて着色剤と一緒にしてもよい。このミックスを6オンスの射出成形機に加えることで、試験バーおよびプラークを製造した(この上に示した一般的成形機条件を参照)。
実施例2
35重量%の量のナイロン−6を52.4重量%の量のSURLYN(商標)9120、8.8重量%の量のZnO濃縮物、1.7重量%の量のステアリン酸亜鉛、1.9重量%の量のUVおよび熱安定剤パッケージ、そして0.2重量%の量の次亜燐酸ナトリウムと一緒にして、28mmの2軸押出し加工機(この上に示した一般的混合条件を参照)の後方部分に供給した。押出されたストランドを細断してペレットにし、乾燥させた後、場合によりペレット/ペレットミックスを用いて着色剤と一緒にしてもよい。このミックスを6オンスの射出成形機に加えることで、試験バーおよびプラークを製造した(この上に示した一般的成形機条件を参照)。
実施例3
33重量%の量のナイロン−6を53.8重量%の量のSURLYN(商標)9120、9.4重量%の量のZnO濃縮物、1.7重量%の量のステアリン酸亜鉛、1.9重量%の量のUVおよび熱安定剤、そして0.2重量%の量の次亜燐酸ナトリウムと一緒にして、28mmの2軸押出し加工機(この上に示した一般的混合条件を参照)の後方部分に供給した。押出されたストランドを細断してペレットにし、乾燥させた後、場合によりペレット/ペレットミックスを用いて着色剤と一緒にしてもよい。このミックスを6オンスの射出成形機に加えることで、試験バーおよびプラークを製造した(この上に示した一般的成形機条件を参照)。
実施例4
40重量%の量のナイロン−6を49重量%の量のSURLYN(商標)9120、6.2重量%の量のZnO濃縮物、1.7重量%の量のステアリン酸亜鉛、2.9重量%の量のUVおよび熱安定剤、そして0.2重量%の量の次亜燐酸ナトリウムと一緒にして、28mmの2軸押出し加工機(この上に示した一般的混合条件を参照)の後方部分に供給した。押出されたストランドを細断してペレットにし、乾燥させた後、場合によりペレット/ペレットミックス)を用いて着色剤と一緒にしてもよい。このミックスを6オンスの射出成形機に加えることで、試験バーおよびプラークを製造した(この上に示した一般的成形機条件を参照)。
比較実施例C1−C4
各場合とも次亜燐酸ナトリウムを添加しない以外は上述した実施例1−4に示した手順に従って実施例C1−C4の調製を行った。また、加工手順および成形条件もこの上に記述した手順および条件と同じであった。
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
本実施例のブレンド物が示した形態特性は、中和エチレンコポリマーがポリアミド連続相もしくは共連続相の中に分散していることに一致している。
【0081】
本実施例は限定的でないと見なし、本分野の通常の技術を持つ人は、燐含有添加剤を添加する結果として向上した形態特性を有するポリマーブレンド物(polymeric blends)に到達するように、本明細書に一般的および具体的に教示した如きブレンドのパーセントおよび個々の成分を変えることができるであろう。従って、本発明は、ポリアミドブレンド物の形態特性を向上させる目的で次亜燐酸塩を用いる方法に向けたものであり、この方法は、前記ポリアミドブレンド物に次亜燐酸塩を形態向上有効量(morphologial improving effective amount)で添加することを含んで成る。このような燐含有化合物の好適な重量%(本ブレンド物に含める材料の総重量を基準)は2パーセント以下である。
Claims (7)
- 組成物であって、
(a)ポリアミドを25重量パーセントから40重量パーセント未満、
(b)酸レベルが15から25重量%である部分的に中和されたダイレクトエチレン/メタアクリル酸コポリマーまたは酸レベルが14から25重量%である部分的に中和されたダイレクトエチレン/アクリル酸コポリマーである中和酸含有ポリマーを40から75重量パーセント、および
(c)次亜燐酸塩を0.2から3重量パーセント、含んで成り、
(a)、(b)及び(c)の重量パーセントが組成物の合計重量に基づいている組成物。 - 前記ポリアミドが半結晶性ポリアミド、非晶性ポリアミドまたは半結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドのブレンド物から選択されて30%から40%未満の重量パーセントで存在している請求項1記載の組成物。
- 中和酸含有ポリマーが生じるように前記カルボン酸部分が金属塩で中和されている請求項1記載の組成物。
- 前記酸含有ポリマーが式:E/X/Yおよび/またはE/Y[式中、Eはエチレンであり、Xは軟化用コモノマーでありそしてYはα,β−エチレン系不飽和C3−C8カルボン酸であり、そしてここで、Yの相対重量パーセントは15から25重量%である]で表される化合物から選択される請求項1記載の組成物。
- 連続もしくは共連続ポリアミド相を有するポリアミドブレンド物の形態特性を向上させる方法であって、a)25重量パーセントから40重量パーセント未満の量のポリアミド、b)40から75重量パーセントの量の、酸レベルが15から25重量%である部分的に中和されたダイレクトエチレン/メタアクリル酸コポリマーまたは酸レベルが14から25重量%である部分的に中和されたダイレクトエチレン/アクリル酸コポリマーである中和酸含有ポリマーおよびc)0.2から3重量%の量の次亜燐酸塩から選択される少なくとも3種類の材料を混合した後に押出し加工することを含んで成っていて、
成分(c)が、i)23℃で測定された破壊時張力とii)150℃で測定された破壊時張力との比を10未満とすることによって前記ポリアミドブレンド物の形態を向上させ、
破壊時張力がASTM D1708に従って測定され、
(a)、(b)及び(c)の重量パーセントがポリアミドブレンド物の合計重量に基づいている方法。 - 前記ポリアミドを半結晶性もしくは非晶性ポリアミドまたはそれらのブレンド物から選択して、前記ポリアミドを30%から40%未満の重量パーセント範囲で存在させる請求項5記載の方法。
- 請求項1記載のブレンド物を含んで成る成形品もしくは押出し加工品。
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