JP5166201B2 - 圧力容器の製造方法、製造装置及び圧力容器 - Google Patents

圧力容器の製造方法、製造装置及び圧力容器 Download PDF

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Description

本発明は、銅系材料などからなるパイプを気体や液体を封入する圧力容器の本体部品に拡散接合する工程を備える圧力容器の製造方法、その製造方法によって造られる圧力容器に関する。
同種の金属材料同士や、鉄系材料とステンレス材料、あるいは鉄系材料と銅系材料、又は鉄系材料とアルミニウム系材料など、融点や導電率など特性の異なる異種金属材料を接合する方法が種々提案されているが、異種金属材料の接合は硬ロウによる接合、あるいは超音波接合、又はかしめ、ボルト締めなど機械的な結合などがあった。
また、同種の金属材料同士の接合でも、導電率が非常に良好な銅系材料からなる銅製部材と銅製部材同士の接合、又は導電率が非常に良好なアルミニウム系材料からなるアルミニウム製部材とアルミニウム製部材同士、あるいは銅製部材とアルミニウム製部材との接合なども同様の手段で行われていることが多いが、このような接合方法では、導電率が非常に良好な銅製部材、アルミニウム製部材を用いるという用途から見て、導電率が非常に良好な部材同士の接合部の抵抗を無視できるほどには小さくできない。
このような問題点を解決する接合方法の一例が既に開示されている(例えば、特許文献1参照)。この接合方法は、導電率が非常に良好な銅系材料からなる銅製のパイプなどを鉄系材料からなる鉄製圧力容器などに接合する方法であり、銅製のパイプなどに予めプロジェクションを設けておき、銅製のパイプの前記プロジェクションと圧力容器とを加圧した状態でこれらに7ミリ秒以下のパルス電流を流し、接合が完了するまで前記加圧力を維持することを特徴としている。この接合方法は、コンデンサに蓄えたエネルギーを短時間で放出して鉄製圧力容器に銅製のパイプを接合できるので、短時間で接合工程を行えるという点、ロウ付け方法のように熟練した作業者でなくとも所期の接合結果を得ることができるという点などで、非常に有効な接合方法と言える。しかし、プロジェクションの形成の費用が高価である欠点がある。
特開平9−295161号公報(特許第3537262号)
しかし、最近の気体や液体を封入する圧力容器では以前に比べてかなり高い圧力が要求されるものも多くなってきており、また、圧力容器が組み込まれる機器によっては圧力容器に絶えず振動が加わることもある。この振動による力は圧力容器の本体とこれに接合されたパイプとの間にかかる。前掲特許文献1で開示された方法にあっては、例えば銅製のパイプの先端にプロジェクションを形成し、そのプロジェクションを鉄製圧力容器などに外側から押し当てて接合するので、前記増大した内部圧力による加圧力又は振動に対して長期間にわたって耐え得るだけの機械的強度を有することが難しい。この問題は、銅製のパイプだけでなく、鉄製のパイプ又はアルミニウム製のパイプなどのようなパイプを、鉄系材料などからなる圧力容器に接合する場合にも起こる。
また、銅製のパイプを圧力容器の本体に接合する接合装置の面から見ても、前掲の特許文献1では、7ミリ秒以下のパルス電流で接合しているが、このような極めて短い時間で接合するには、銅製のパイプと圧力容器とを加圧する加圧機構の応答速度を非常に高速化しなければならず、汎用のコンデンサ式の接合装置では信頼性の高い接合結果を得ることができないという問題がある。
本発明は前述の問題点を解決し、銅製のパイプを圧力容器本体に容易かつ安価に拡散接合することができ、しかも接合強度及び外観など接合品質の高い接合結果が得られる圧力容器の製造法、その製造方法で造られた圧力容器、及びその圧力容器の製造装置を提供することを主目的としている。
本発明は、複数の容器本体部品を組み合わせて結合される圧力容器において、貫通孔を有する前記容器本体部品の前記貫通孔に銅製のパイプを接合して、前記圧力容器を製造する圧力容器の製造方法であって、前記銅製のパイプの一部分を所定の傾斜で拡げて、前記貫通孔の直径よりも大きな最大径をもつテーパー部Tを形成するパイプ加工工程と、前記接合する前記銅製のパイプの前記テーパー部Tと前記容器本体部品の前記貫通孔近傍のいずれか一方又は双方に低融点金属メッキ膜を形成するメッキ膜形成工程と、前記銅製のパイプの前記テーパー部Tを前記容器本体部品の接合箇所に当接させる当接工程と、前記銅製のパイプと前記容器本体部品との間に加圧力をかけた状態で通電して、前記銅製のパイプの前記テーパー部Tを前記容器本体部品の前記貫通孔に拡散接合する拡散接合工程と、前記銅製のパイプが拡散接合された前記容器本体部品と他の前記容器本体部品とを組み合わせて結合する結合工程と、を備えていることを特徴とする圧力容器の製造方法を提供するものである。
第2の発明は、前記第1の発明において、前記容器本体部品の前記接合箇所は、前記容器本体部品の前記貫通孔を囲む角部であり、前記銅製のパイプの前記テーパー部Tの外側のテーパー面TSと前記容器本体部品の前記貫通孔を囲む前記角部とで拡散接合が行われることを特徴とする圧力容器の製造方法を提供するものである。
第3の発明は、前記第1の発明又は前記第2の発明において、前記接合する前記容器本体部品における前記貫通孔の周囲の面である接合面を平坦面にしてから拡散接合することを特徴とする圧力容器の製造方法を提供するものである。
第4の発明は、前記第1の発明ないしは前記第3の発明のいずれかの製造方法で造られた前記圧力容器であることを特徴とする圧力容器を提供するものである。
第5の発明は、一部分が所定の傾斜で拡がる漏斗状のテーパー部となっている銅製のパイプと、該銅製のパイプの外径よりも大きくかつ前記テーパー部の最大径よりも小さい直径の貫通孔を有する容器本体部品との間に、電源部から第1の接合電極と第2の接合電極とを通して接合電流を流し、前記銅製のパイプを前記容器本体部品に拡散接合して圧力容器を製造する製造装置であって、前記第1の接合電極は、前記銅製のパイプの外径よりも大きな内径の穴を有する円環状の電極であり、前記第2の接合電極は、前記銅製のパイプの前記テーパー部の内側の面に適した形状を有する電極であり、前記銅製のパイプを前記容器本体部品の前記貫通穴に挿し込み、前記テーパー部の外側のテーパー面と前記容器本体部品の前記貫通孔の周囲とを低融点金属メッキ膜を介在させて当接させ、前記第1の接合電極の前記穴に前記貫通孔を合わせて前記容器本体部品と前記第1の接合電極とを当接させ、前記銅製のパイプの前記テーパー部の前記内側の面と前記第2の接合電極とを当接させ、前記第1の接合電極と前記第2の接合電極との間に所定の加圧力をかけた状態で通電し、前記第1の接合電極から前記第2の接合電極までを短い電流路で接合電流を流して、前記銅製のパイプを前記容器本体部品に拡散接合することを特徴とする圧力容器の製造装置を提供するものである。
本発明によれば、圧力容器の本体に接合される銅製のパイプの一端を安価に加工できる所定の傾斜で拡がるテーパー部とし、そのテーパー部と圧力容器の容器本体部品との間に低融点メッキ膜を介在させているので、従来不可能であった前記銅製のパイプと圧力容器本体との拡散接合を可能とし、圧力容器内の圧力及び圧力容器の振動などによっても接合部が損傷することのない信頼性の高く、安全で、また寿命の長い圧力容器を安価に製造することができる。
前記第3の発明によれば、接合面が平坦であるので、銅製のパイプと容器本体部品との間に空隙ができないためにチリが発生し難い。したがって、チリの除去工程が不要、又は簡単になり、経済的である。
前記第4の発明によれば、圧力容器内の圧力及び圧力容器の振動などによっても接合部が損傷することのない安価で信頼性の高い、また寿命の長い圧力容器を提供できる。
前記第5の発明によれば、圧力容器内の圧力及び圧力容器の振動などによっても接合部が損傷することのない信頼性の高い、また寿命の長い圧力容器を製造することができる構成の簡単な接合装置を提供する。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。実施形態1では、銅系材料の導電率が非常に高いために接合が困難とされている、銅製のパイプを鉄製の圧力容器の本体を構成する容器本体部品に拡散接合する例を説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一の名称の部材を示すものとする。
[実施形態1]
図1は、本発明によって製造された圧力容器の本体1の一例を示す図であり、その一部分を断面で示している。この圧力容器の本体1は鉄系材料からなり、一般的には中央に位置する円筒状の第1の容器本体部品1Aと、第1の容器本体部品1Aの一方側に固定される第2の容器本体部品1Bと、第1の容器本体部品1Aの他方側に固定される第3の容器本体部品1Cの三つの容器本体部品からなる場合が多い。容器本体部品1Aの接合面WSには貫通孔1aが設けられており、その貫通孔1aを通して内側から外側に銅系材料からなる銅製のパイプ2が延びている。同様に、容器本体部品1Bの一部分には貫通孔1bが設けられており、その貫通孔1bを通して内側から外側に向けて銅製のパイプ3が延びている。
後で詳述するが、図2で示すように、銅製のパイプ2と3の一端側は所定の角度で拡げられた漏斗状のテーパー部Tに加工されており、テーパー部Tは外側のテーパー面TSとその反対側の内側のテーパー状の面TRを有する。この実施形態1では、銅製のパイプ2のテーパー部Tを利用して容器本体部品1Aと拡散接合し、また、銅製のパイプ3のテーパー部Tを利用して容器本体部品1Bと拡散接合している。そして、銅製のパイプ2と3の各テーパー部Tの接合部分が圧力容器の本体1の内部に存在するように、三つの容器本体部品1A〜1Cを組み合わせて結合し、圧力容器を形成している。このように、銅製のパイプ2と3のテーパー部Tと接合部とが圧力容器の内部に存在するので、実際の圧力容器ではテーパー部Tが大きな圧力で常時、圧力容器の本体1の内壁に押し付けられている。したがって、この圧力容器は圧力による悪影響を受けないだけでなく、圧力容器の振動などによっても接合部が傷損し難くなっている。
なお、圧力容器の本体1は二つの容器本体部品又は四つ以上の容器本体部品を組み合わせて結合するもであってもよい。それらの結合は、抵抗溶接又はアーク溶接などの電気的な接合が好ましいが、ロウ付けなど非電気的な接合であっても構わない。また、必要に応じて前記容器本体部品に2本以上の銅製のパイプが接合されていてもよし、銅製のパイプが接合されていない容器本体部品が含まれていても良い。
銅製のパイプ2、3の各テーパー部Tが拡散接合される容器本体部品1A、1Bの接合面WSは平坦であることが好ましい。ここで、接合面WSとは少なくとも貫通孔1bの比較的近傍の周囲の面をいう。図1では、接合面WSを圧力容器1の外側から内側に沈ませて平坦にしたが、内側から外側に盛り上げて平坦にしても勿論よい。容器本体部品1A、1Bの接合面が平坦であると、拡散接合時に発生するチリをほとんどゼロにすることができる。本体部品1A、1Bの接合面WSが平坦でなく、円弧状などであると、銅製のパイプ2、3の接合部と容器本体部品の接合部との間に微小な隙間ができるので、拡散接合時にチリが発生し易い。チリが発生しても構わない場合には、容器本体部品1A、1Bの接合面WSを平坦にする必要は無く、チリの発生を除いて接合結果にほとんど差異はない。
図2ないし図4によって、容器本体部品1Bの接合面WSに形成された貫通孔1b及び銅製のパイプ3のテーパー部Tの形成、それらの関係などについて説明する。容器本体部品1Aと銅製のパイプ2とについても拡散接合方法は同様であるので、以下ではこれらについて説明を省略する。一般的には、不図示のプレス機などによって、容器本体部品1Bの接合面WSからプレスすることにより貫通孔1bが形成される。この場合には、接合面WSの貫通孔1bの周囲の角部1cが丸まるので、適度な狭い幅の円周の接合面が得られ、拡散接合を行う上で都合が良い。成形工程で貫通孔1bが形成される場合には、貫通孔1bの孔壁と接合面WSとの交わりはほぼ直角の角部1cになるが、この場合にも拡散接合に支障は生じない。
銅製のパイプ3は容器本体部品1Bの貫通孔1bの直径よりも小さな外径のものでなければいけない。また、銅製のパイプ3のテーパー部Tの最大の直径は容器本体部品1Bの貫通孔1bの直径よりも大きくなければいけない。貫通孔1bに銅製のパイプ3を挿入したとき、ほぼ全周で0.5mm程度以上の隙間ができることが好ましい。この場合には、塑性流動化した銅及び鉄が前記隙間に移動することにより、塑性流動を促進させることができる。
銅製のパイプ3の一方の先端部の加工について説明すると、銅製のパイプ3は、その一端側の拡散接合される部分が漏斗状に加工され、パイプの内側から放射外方向へ所定の傾斜で広がるテーパー部Tの外側であるテーパー面TS、その反対側のテーパー状の面TRからなる。このテーパー部Tは、テーパー状の面TRと角度がほぼ等しい不図示のテーパー治具で前記一端側を加圧することにより容易に形成される。銅製のパイプ3の一端側の拡散接合される部分に適切なプロジェクションを形成する従来の場合に比べて、容易かつ安価に形成できる。このことは実際の製造工程において非常に大きな効果となる。本発明は、このように容易かつ安価に形成できるテーパー部Tを銅製のパイプ3の一端側に形成し、このテーパー部Tを利用して銅製のパイプを容器本体部部品に拡散接合し、銅製のパイプ3が内側から外側に延びる圧力容器を製造するところに特徴がある。なお、テーパー面TSの開き角度θは90〜120度の範囲が好ましいが、この範囲以外の開き角度でも後述する拡散接合に支障はない。
次に、図3(A)に示すように、少なくとも銅製のパイプ3のテーパー面TSに低融点金属メッキ膜4を形成するか、あるいは図3(B)に示すように、少なくとも容器本体部品1Bの接合面WSに低融点金属メッキ膜4を形成する。低融点金属メッキ膜4は、銅系材料及び容器本体部品1Bの鉄系材料の融点よりも低い温度で溶融する金属材料からなり、例えばスズ又はハンダなどからなる。低融点金属メッキ膜4は、例えば3〜10μm程度の薄膜であり、一般的な電解メッキ工程で形成される。この電解メッキ工程は一般的な電解メッキ装置で行われ、特に電解メッキ装置を制限するものでない。
電解メッキ法で低融点金属メッキ膜4を形成すると、銅製のパイプ3のテーパー面TS又は容器本体部品1Bの接合面WSの汚れ又は酸化膜などは除去され、銅製のパイプ3の銅系材料又は容器本体部品1Bの鉄系材料の地肌、つまり新生面に低融点金属メッキ膜4が直接形成される。なお、低融点金属メッキ膜4は銅製のパイプ3と容器本体部品1Bのいずれか、又は双方に形成されても構わないが、鉄系材料よりも導電率の高い銅系材料からなる銅製のパイプ3に形成されるのが好ましい。また、拡散接合時に接合電極が汚れないという面から、テーパー部Tの面TRには低融点金属メッキ膜4が形成されていない方が望ましい。
次に図4によって、低融点金属メッキ膜4が形成されたテーパー面TSを有する銅製のパイプ3と貫通孔1bを有する容器本体部品1Bとを組み合わせて拡散接合する接合工程及び接合装置について説明する。図4において、記号5は容器本体部品1Bに当接する接合電極である。接合電極5は、銅製のパイプ3の外径D1に比べて大きな径D2の円形状の穴5Aを有する。この穴5Aは容器本体部品1Bの貫通孔1bの直径とほぼ同等か、あるいは幾分大きい直径の円形の穴であることが望ましく、このようにすることにより、接合電流が流れる電流路を最短にできると共に、接合部全周の電流密度を均一化できる。ここでは、円形状の穴5Aを有するので、接合電極5を円環状の接合電極と言うが、接合電極5の外形は任意である。
他方の接合電極6は、銅製のパイプ3の漏斗状のテーパー部Tのテーパー面TSとは反対側のテーパー状の面TRに適したテーパー形状の先端部分を有し、このテーパー形状の先端部分は、円錐の頂部側が除去された円錐形状であって、断面が台形状になっている。接合装置の電源部7は導体8、9によって接合電極5、接合電極6にそれぞれ接続され、所望の接合電力を供給できるものである。電源部7は、コンデンサ式接合装置のようにコンデンサに蓄えたエネルギーを短時間で放出できる構成のものが経済性、大きさなどの面で好ましいが、比較的短時間で所望の電力を供給できる電源部であるならばコンデンサ式に制限するものではない。なお、図4において、銅製のパイプ3のテーパー部Tが拡散接合される容器本体部品1Bの接合面WSは、図1に示す圧力容器の本体1の内側面に存在する。
拡散接合に当たって、先ず、容器本体部品1Bの貫通孔1bを円環状の溶接電極5の穴5Aに合わせ、容器本体部品1Bを接合電極5上に配置する。次に、銅製のパイプ3を容器本体部品1Bの貫通孔1bに挿入し、低融点金属メッキ膜4が形成されたテーパー面TSを容器本体部品1Bの貫通孔1bの接合面WSに当接させる当接工程を行う。これら手順は逆であっても構わない。厳密に言えば、貫通孔1bを形成する孔壁と接合面WSとの交わる角部分1cとテーパー面TSとが低融点金属メッキ膜4を介して当接するので、接合電流は角部分1cとテーパー面TSとの狭い幅の円周の面積に集中して流れることになる。なお、前記当接工程では、図示しない簡便な位置決め構造によって、銅製のパイプ3自身が貫通孔1bを形成する孔壁に接触しないように位置決めする方が好ましい。
次に、図示しない加圧機構によって接合電極5と接合電極6との間に予め決められた加圧曲線に従って加圧力をかける。この加圧力をかけているときに、電源部7が動作し、接合電極5と接合電極6を通して容器本体部品1Bの前記角部分1c、低融点金属メッキ膜4及びテーパー部Tに電流を流して拡散接合工程を行う。通電時、従来のように銅製のパイプにプロジェクションが形成されていれば、プロジェクションに接合電流が集中するので熱が発生し易く、プロジェクションを中心に塑性流動化し易いが、本発明ではテーパー部Tに接合電極6が密接していることもあって、テーパー部Tの熱が接合電極6に伝導されるために拡散接合部の温度が上昇し難く、したがって、拡散接合部の銅系材料及び鉄系材料が塑性流動化し難い。
したがって、本発明の拡散接合工程では、通電によって先ず低融点金属メッキ膜4とテーパー面TSとの拡散接合境界との抵抗、低融点金属メッキ膜4自身の抵抗、及び低融点金属メッキ膜4と容器本体部品1Bとの拡散接合境界の抵抗で熱を発生させ、先ず低融点金属メッキ膜4を溶融させることによって、テーパー部Tと容器本体部品1Bの角部分1cの塑性流動化を促す。低融点金属メッキ膜4が溶融すると、その溶融した低融点金属は接合電極5と6間の加圧力によって拡散接合面の周囲に押し出され、拡散接合面に存在しなくなる。このようにして銅製のパイプ3のテーパー面TSから低融点金属メッキ膜4が除去されると、テーパー面TSは汚れの無い銅系材料そのものの地肌、つまり新生面となり、また、容器本体部品1Bの角部分1cの汚れなども一緒に除去されるので、テーパー面TSと容器本体部品1Bの角部分1cとの拡散接合がし易くなる。
通電時間の経過に伴い、テーパー部Tのテーパー面TSと容器本体部品1Bとの接触部及びその近傍で塑性流動化が進み、比較的浅い領域でテーパー部Tの銅系材料と容器本体部品1Bの角部1cの鉄系材料とがなじみ、拡散接合が行われる。テーパー面TSと容器本体部品1Bの角部分1cとの拡散接合部は、前述したように、全周にわたって連続した狭い幅の円環状になっており、いずれの箇所をとっても、接合電極5と前記拡散接合部との間の距離、及び接合電極6と前記拡散接合部との間の距離はほぼ最短で一様であるので、接合電流密度を大きくできることもあって、全周にわたって均一に拡散接合をすることができ、一様な接合強度を得ることができる。このとき、塑性流動化した銅系材料と鉄系材料の一部分は加圧力によって拡散接合部の周囲に押し出され、この押し出された塑性流動化した金属材料は銅製のパイプ3と貫通孔1bの孔壁との隙間に納まり、その隙間を埋める。このことは、拡散接合の進捗をスムーズにする。
次に、銅製のパイプ3が拡散接合された容器本体部品1Bの接合面WS側を圧力容器の内側、つまりテーパー部Tが圧力容器の内側に位置するように、容器本体部品1Aに組み合わせて結合する結合工程を行う。この結合工程は、一般的な抵抗溶接又はアーク溶接、硬ロウによるロウ付け、超音波接合などによる結合、又はかしめ、ボルト締めなど機械的な結合などにより行われる。結合方法を特に限定するものではない。また、前記結合方法を行う結合装置も一般的なもので足りる。
この場合、容器本体部品1Aにも前述と同様にして銅製のパイプ2が拡散接合されており、銅製のパイプ2のテーパー部が圧力容器の内側に位置するように容器本体部品1Bと組み合わされる。また、容器本体部品1Cも容器本体部品1Aに組み合わされて結合される。このようにして、図1に示した圧力容器が造られる。したがって、このような圧力容器では、圧力容器の内部の気圧又は液圧が高ければ、常にテーパー部が圧力容器の内壁に強い力で押し付けられているので、従来の接合構造に比べて拡散接合部が圧力の悪影響を受けず、また、圧力容器の振動の影響も受け難いので、信頼性が高く、寿命の長い圧力容器を製造することができる。
なお、円筒状の容器本体部品1Aに銅製のパイプ2を拡散接合する場合も前述と同様であるが、この場合には、円筒状の容器本体部品1Aの内側から貫通孔に銅製のパイプ2を挿し込んで、そのテーパー部を容器本体部品1Aの内面に当接させる。この拡散接合の場合、図4に示した接合電極6は円筒状の容器本体部品1Aの内側に位置して、銅製のパイプ2のテーパー部を加圧する。図4に示した円環状の接合電極5は円筒状の容器本体部品1Aの外側に位置する。つまり、図4では、接合電極5が円筒状の容器本体部品1Aの外側で、接合電極6が円筒状の容器本体部品1Aの内側である。
以上の説明では、好ましい例として銅製のパイプ3の一端側に形成されたテーパー部Tが鉄製の圧力容器の内側に位置する場合について説明したが、図5に示すように、知られている加工方法などによってテーパー部Tを銅製のパイプ3の途中に形成した場合には、銅製のパイプ3のテーパー部Tを圧力容器の外側に位置させ、銅製のパイプ3の一部分を貫通孔1bを通して圧力容器の内側に伸ばした状態で、テーパー部Tの外側のテーパー面TSを圧力容器の外部に接合する場合についても前述と同様にして拡散接合することができる。なお、テーパー部Tの接合電極6が当接する面TRはテーパー状の面であってもよいが、接合電極6と均一に当接するという面からは平坦である方が好ましい。圧力容器内の圧力が比較的小さく、あるいは振動が小さい用途の圧力容器の場合には、銅製のパイプ3のテーパー部Tの外側のテーパー面TSを圧力容器の外部に拡散接合しても要求される機械的強度を満足させることが可能である。
また、圧力容器が別の金属材料、例えば銅系材料からなる場合にも、あるいはパイプが銅系材料でない金属材料、例えば鉄系材料などからなる場合にも、接合電流や加圧力などの条件を選ぶことによって、前述と同様にして圧力容器を製造できる。圧力容器は特定の圧力容器に限定されるものではない。
以上述べたように、本発明では銅製のパイプの一端又は途中の所定箇所が前述したテーパー部に加工されており、そのテーパー部が圧力容器の本体の貫通孔を囲む角部に接合される構造になっているので、経済性に優れた信頼性の高い圧力容器の製造方法、この製造方法で造られた圧力容器を提供できる。
本発明の実施形態1にかかる製造方法で造られた圧力容器の一例を示す図面である。 実施形態1を説明する図であって、圧力容器の本体と銅製のパイプとの接合部を説明するための図である。 実施形態1を説明する図であって、銅製のパイプの一部分と圧力容器の本体の一部分とを示す図である。 本発明の実施形態1にかかる製造方法を説明するための図面である。 実施形態1の他の例を説明する図であって、圧力容器の本体の外側に銅製のパイプのテーパー部を拡散接合する図面である。
符号の説明
1・・・圧力容器の本体
1A〜1C・・・容器本体部品
1a、1b・・・容器本体部品1A、1Bの貫通孔
WS・・・容器本体部品1A、1Bの接合面
2、3・・・銅製の又は他種の金属材料のパイプ
T・・・容器本体部品1A、1Cのテーパー部
TS・・・テーパー部Tのテーパー面
TR・・・テーパー面TSの反対側の面
4・・・低融点金属メッキ膜
5・・・円環状の接合電極
6・・・接合電極
7・・・接合装置の電源部
8、9・・・導体

Claims (5)

  1. 複数の容器本体部品を組み合わせて結合される圧力容器において、貫通孔を有する前記容器本体部品の前記貫通孔に銅製のパイプを接合して、前記圧力容器を製造する圧力容器の製造方法であって、
    前記銅製のパイプの一部分を所定の傾斜で拡げて、前記貫通孔の直径よりも大きな最大径をもつテーパー部Tを形成するパイプ加工工程と、
    前記接合する前記銅製のパイプの前記テーパー部Tと前記容器本体部品の前記貫通孔近傍のいずれか一方又は双方に低融点金属メッキ膜を形成するメッキ膜形成工程と、
    前記銅製のパイプの前記テーパー部Tを前記容器本体部品の接合箇所に当接させる当接工程と、
    前記銅製のパイプと前記容器本体部品との間に加圧力をかけた状態で通電して、前記銅製のパイプの前記テーパー部Tを前記容器本体部品の前記貫通孔に拡散接合する拡散接合工程と、
    前記銅製のパイプが拡散接合された前記容器本体部品と他の前記容器本体部品とを組み合わせて結合する結合工程と、
    を備えていることを特徴とする圧力容器の製造方法。
  2. 請求項1において、
    前記容器本体部品の前記接合箇所は、前記容器本体部品の前記貫通孔を囲む角部であり、
    前記銅製のパイプの前記テーパー部Tの外側のテーパー面TSと前記容器本体部品の前記貫通孔を囲む前記角部とで拡散接合が行われることを特徴とする圧力容器の製造方法。
  3. 請求項1又は請求項2において、
    前記接合する前記容器本体部品における前記貫通孔の周囲の面である接合面を平坦面にしてから拡散接合することを特徴とする圧力容器の製造方法。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかの製造方法で造られた前記圧力容器であることを特徴とする圧力容器。
  5. 一部分が所定の傾斜で拡がる漏斗状のテーパー部となっている銅製のパイプと、該銅製のパイプの外径よりも大きくかつ前記テーパー部の最大径よりも小さい直径の貫通孔を有する容器本体部品との間に、電源部から第1の接合電極と第2の接合電極とを通して接合電流を流し、前記銅製のパイプを前記容器本体部品に拡散接合して圧力容器を製造する製造装置であって、
    前記第1の接合電極は、前記銅製のパイプの外径よりも大きな内径の穴を有する円環状の電極であり、
    前記第2の接合電極は、前記銅製のパイプの前記テーパー部の当接する面に適した形状を有する電極であり、
    前記銅製のパイプを前記容器本体部品の前記貫通穴に挿し込み、前記テーパー部の外側のテーパー面と前記容器本体部品の前記貫通孔の周囲とを低融点金属メッキ膜を介在させて当接させ、
    前記第1の接合電極の前記穴に前記貫通孔を合わせて前記容器本体部品と前記第1の接合電極とを当接させ、
    前記銅製のパイプの前記テーパー部と前記第2の接合電極とを当接させ、
    前記第1の接合電極と前記第2の接合電極との間に所定の加圧力をかけた状態で通電し、前記第1の接合電極から前記第2の接合電極までを短い電流路で接合電流を流して、前記銅製のパイプを前記容器本体部品に拡散接合することを特徴とする圧力容器の製造装置。
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