JP3594449B2 - 薄肉金属パイプ状被溶接物の抵抗溶接方法 - Google Patents
薄肉金属パイプ状被溶接物の抵抗溶接方法 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は,薄肉金属パイプ状被溶接物をそのパイプ穴に通じる穴をもつ被溶接物に溶接する抵抗溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図4に示すように、金属パイプ状被溶接物1’と他の被溶接物2との抵抗溶接は溶接電極兼用クランプ機構3’を用いて古くから行われている。この溶接方法は、複数の爪3’Aが開いたり、閉じたりする拡径動作と縮径動作を行う溶接電極兼用クランプ機構3’により、金属パイプ状被溶接物1’をクランプし、その長手方向、つまり軸線方向Xに所定の加圧力を加えながら、溶接電極兼用クランプ機構3’を通して溶接電流を流して抵抗溶接を行う。
【0003】
この場合、溶接電極兼用クランプ機構3’が金属パイプ状被溶接物1’をクランプしながら溶接電極兼用クランプ機構3’を軸線方向Xに動作させて、溶接に必要な加圧力を被溶接物1’と2間に与える方法と、溶接電極兼用クランプ機構3’が金属パイプ状被溶接物1をクランプした状態で、別途備えられた加圧機構4が金属パイプ状被溶接物1’の上端部から軸線方向Xの加圧力を与える方法の二つがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
溶接電極兼用クランプ機構3’が金属パイプ状被溶接物1’をクランプしながら加圧力を被溶接物1’と2間に与える方法は、溶接電極兼用クランプ機構3’のクランプ力と被溶接物への加圧力とは互いに直角方向になる関係にあり、また溶接電極兼用クランプ機構3’と金属パイプ状被溶接物1’との間にスベリがあるから、溶接電極兼用クランプ機構3’は前記加圧力の数倍の力で金属パイプ状被溶接物1’をクランプしなければならない。しかし、一般に1mmを越える肉厚をもつ金属パイプ状被溶接物の場合には、パイプ径及び材質にもよるが、前記クランプ力と加圧力によって金属パイプ状被溶接物1’が歪んだり、曲がったりすることがほとんどなく、実質的に溶接に支障を来さない。
【0005】
また、溶接電極兼用クランプ機構3’が金属パイプ状被溶接物1’をクランプし、加圧機構4が金属パイプ状被溶接物1’の上端部から軸線方向Xの加圧力を与えて溶接する方法も、パイプ径及び材質にもよるが、一般に1mmを越える肉厚をもつ金属パイプ状被溶接物の場合には、前記クランプ力は前述の場合に比べてかなり小さくて済むので問題なく、また軸線方向Xの加圧力によって金属パイプ状被溶接物1’が歪んだり、曲がったりすることがほとんどなく、実質的に溶接に支障を来さない。
【0006】
しかし、金属パイプ状被溶接物1’が1mm以下の肉厚からなる場合には、前者の場合、溶接電極兼用クランプ機構3’がクランプする部分の金属パイプ状被溶接物1’がクランプ力で凹んだり、押し潰されたりする問題が起こる。また、後者の場合には、軸線方向Xの加圧力によって金属パイプ状被溶接物1’が部分的に軸線方向Xに押し潰される問題が起こる。特に、金属パイプ状被溶接物の肉厚が薄い場合、又はクランプ機構と溶接箇所間の金属パイプ状被溶接物の出し代、つまりフリーの部分が長い場合にはこの傾向が強い。
【0007】
したがって、本発明はこのような従来の問題点を解決し,金属パイプ状被溶接物1’が1mm以下の薄い肉厚からなる場合にも、支障なく溶接を行える抵抗溶接方法を提供することを主目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前述のような問題を解決するため、第1の発明は、薄肉金属パイプ状被溶接物の軸線方向に加圧力を加えた状態で上記薄肉金属パイプ状被溶接物と他方の被溶接物との間に電流を流して溶接する抵抗溶接方法において、上記薄肉金属パイプ状被溶接物の溶接部がパイプの内側から放射外方向へ拡径されて形成された拡径部と上記拡径部は放射方向に拡がるテーパー部と上記テーパー部から上記薄肉金属パイプ状被溶接物の軸線方向に延びる輪状突出部からなり、上記薄肉金属パイプ状被溶接物の上記テーパー部に適合したテーパー部を有する溶接電極が、上記拡径部に軸線方向に加圧力を加えた状態で溶接することを特徴とする薄肉金属パイプ状被溶接物の抵抗溶接方法を提供するものである。
【0009】
前述のような問題を解決するため、第2の発明は、上記薄肉金属パイプ状被溶接物の溶接部の内径が他の部分の内径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の薄肉金属パイプ状被溶接物の抵抗溶接方法を提供するものである。
【0010】
前述のような問題を解決するため、第3の発明は、上記薄肉金属パイプ状被溶接物は上記溶接部から延びるパイプ状の先端部を有し、そのパイプ状の先端部の外径が上記他方の被溶接物の穴よりも小さく、かつ上記溶接部は上記穴よりも大きな内径をもつ上記輪状突出部を備え、上記パイプ状の先端部を上記他方の被溶接物の穴に挿入した状態で上記輪状突出部を上記他方の被溶接物に溶接することを特徴とする請求項1に記載の薄肉金属パイプ状被溶接物の抵抗溶接方法を提供するものである。
【0011】
【発明を実施するための形態】
以下図面により本発明を実施するための各形態について説明する。
【0012】
先ず本発明の第1の実施の形態を示す図1において、薄肉金属パイプ状被溶接物1の溶接端部はパイプの内側から放射外方向へ拡径する力を与えて形成された拡径部1Aとなっている。この拡径部1Aは放射外方向に拡がるテーパー部1aとテーパー部1aから薄肉金属パイプ状被溶接物1の長手方向、つまり軸線方向Xに延びる輪状部分1bとからなる。輪状部分1bの輪状先端面は内側に沿ってある角度で削り取られており、プロジェクション1cを形成している。テーパー部1aは軸線方向Xに対して作り易い角度、例えば45度程度に形成されが、形成時の難易が同じであれば、軸線方向Xに対して90度までの角度で形成することができる。
【0013】
そして、薄肉金属パイプ状被溶接物1の拡径部1Aの輪状部分1bの内径は、タンク容器などの壁材料の一部分を示す他方の被溶接物2の穴2Aの径と同等以上の大きさである。溶接電極3は薄肉金属パイプ状被溶接物1の拡径されていない部分の外径よりも幾分大きな穴3Aを有すると共に、薄肉金属パイプ状被溶接物1の拡径部1Aのテーパー部1aに適合する円錐台形状テーパー部3Bを有する。
【0014】
したがって、溶接を行うときには、図1に示すように薄肉金属パイプ状被溶接物1を溶接電極3にセットして支承させ、図示していない搬送装置で他方の被溶接物2を搬送して薄肉金属パイプ状被溶接物1に位置合わせし、しかる後に図示していない他方の溶接電極を降下させて所定の加圧力をかけ、それら溶接電極を通して被溶接物1と2に溶接電流を流して抵抗溶接を行う。
【0015】
このような抵抗溶接方法では、軸線方向Xの加圧力は薄肉金属パイプ状被溶接物1の拡径部1Aにかかるだけであり、それ以外の部分には印加されないので、それ以外のパイプ状部分が歪んだり、押し潰されたりすることは実質的にない。また、薄肉金属パイプ状被溶接物1のテーパー部1aが円錐台形状テーパー部1aを受け、輪状部分1bは最小で溶け込みに必要な高さ(例えば、1mmから数mm)を持てばよいので、結局、クランプ圧力により薄肉金属パイプ状被溶接物1の拡径部1Aが不都合を生じる程度に歪んだり、押し潰されたりすることはない。仮に、薄肉金属パイプ状被溶接物1の拡径部1Aが幾分歪んだり、押し潰されることがあっても、薄肉金属パイプ状被溶接物1の拡径部1A以外のパイプ状部分は溶接電極3の穴の中で規制されているので、他方の被溶接物2に対して不都合を生じる程度に曲がって溶接されることはない。
【0016】
さらに、溶接電極3は従来のようなクランプ機能を持つ必要がなく、円錐台形状テーパー部3Bで薄肉金属パイプ状被溶接物1のテーパー部1aを受けるだけで良いので、製作の容易性の面から単体又は複数のブロックから構成するにしろ、溶接装置の構造を簡単化できる。
【0017】
次に本発明実施例するための第2の形態について説明すると、図2において、薄肉金属パイプ状被溶接物1の拡径部1Aを形成する箇所の軸線方向Xの両側から逆の力を印加することにより、軸線方向Xに薄肉金属パイプ状被溶接物1の一部分を押し潰して部分的に二重にし、フランジ構造を形成する。しかる後、図示していない断面V字状の環状溝を有する鋳型を利用して加圧成形し、フランジ構造の下側に延びる環状プロジェクション1dをもつ拡径部1Aを形成する。環状プロジェクション1dは図3(a),(b),(c)に示すように、種々の形状のものが考えられるが、製作し易いものを選択すれば良い。
【0018】
このような薄肉金属パイプ状被溶接物1を抵抗溶接する場合には、先ず拡径部1Aの下側のパイブ状部分を他方の被溶接物2の穴2Aの中に挿入すると共に、拡径部1Aの上側のパイブ状部分を溶接電極3の穴3Aの中に挿入し、環状プロジェクション1dを他方の被溶接物2に当接させた状態で、溶接電極3を下降させ、拡径部1Aに軸線方向Xの所定の加圧力を加える。この状態で図示していない電流供給装置から溶接電流を流すことにより、その溶接電流は溶接電極3から薄肉金属パイプ状被溶接物1の拡径部1Aの環状プロジェクション1dに集中して被溶接物2に流れ、抵抗溶接が行われる。
【0019】
この実施例では、拡径部1Aが薄肉金属パイプ状被溶接物1の外方向にほぼ直角に延びているので、溶接電極3による軸線方向Xの加圧力は他方向に分散されないので、この実施例においても加圧力による拡径部1Aの不都合な歪みや押し潰しは発生しない。また、ここで重要なのは、拡径部1Aの下側のパイブ状部分を他方の被溶接物2の穴2Aの中に挿入されているので、溶接時に散りが発生しても被溶接物2の裏側への悪影響はほとんどなく、特にパイブ状部分の外径と被溶接物2の穴2Aの径との差が小さければ、散りの悪影響は実質的に問題とならない。したがって、他方の被溶接物2が容器のように中側に散りを飛散させたくないものの場合には特に効果が大きい。また、図3(a),(b),(c)に示す構造のものも同様な効果が得られる。
【0020】
【発明の効果】
以上述べたように、溶接の前に予め加工し易い1mm以下の肉厚をもつ薄肉金属パイプ状被溶接物の溶接部を拡径構造にし、溶接電極間加圧力でその拡径部に軸線方向Xの加圧力を与えているので、肉厚が1mm以下の肉厚をもつ薄肉金属パイプ状被溶接物でも前記加圧力で凹んだり、押し潰されることがなく、良好な薄肉金属パイプの抵抗溶接を行うことができる。
【0021】
また、薄肉金属パイプ状被溶接物をクランプする構造が不要なので、溶接装置を簡単化することができるのは勿論のこと、クランプ時間が不要なので溶接タクトの短縮化を図ることができる。また、溶接装置のコストを低減できる。
【0022】
特に、薄肉金属パイプ状被溶接物が銅材料のような導電性の良い金属からなる場合、溶接時の溶接部分の軟化にともなって加圧力の応答性を高めるために、鉄材料の場合に比べて加圧力を1.3から1.5倍に大きくするのが好ましいが、この抵抗溶接方法によれば、薄肉金属パイプ状被溶接物を大きな力でクランプする必要が全くないので、不都合なく導電性の良い金属又は異種金属からなる薄肉金属パイプ状被溶接物の抵抗溶接も行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施するための第1の形態を説明するための図である。
【図2】本発明の実施するための第2の形態を説明するための図である。
【図3】本発明の実施するための他の形態を説明するための図である。
【図4】従来の抵抗溶接方法を説明するための図である。
【符号の説明】
1・・・・薄肉金属パイプ状被溶接物 2・・・・他方の被溶接物
1A・・・被溶接物1の拡径部 3・・・・溶接電極
1a・・・拡径部1Aのテーパー部
1b・・・拡径部1Aの輪状部分
1c,1d・・プロジェクション
Claims (3)
- 薄肉金属パイプ状被溶接物の軸線方向に加圧力を加えた状態で上記薄肉金属パイプ状被溶接物と他方の被溶接物との間に電流を流して溶接する抵抗溶接方法において、
上記薄肉金属パイプ状被溶接物の溶接部がパイプの内側から放射外方向へ拡径されて形成された拡径部と
上記拡径部は放射方向に拡がるテーパー部と上記テーパー部から上記薄肉金属パイプ状被溶接物の軸線方向に延びる輪状突出部からなり、
上記薄肉金属パイプ状被溶接物の上記テーパー部に適合したテーパー部を有する溶接電極が、上記拡径部に軸線方向に加圧力を加えた状態で溶接することを特徴とする薄肉金属パイプ状被溶接物の抵抗溶接方法。 - 上記薄肉金属パイプ状被溶接物の溶接部の内径が他の部分の内径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の薄肉金属パイプ状被溶接物の抵抗溶接方法。
- 上記薄肉金属パイプ状被溶接物は上記溶接部から延びるパイプ状の先端部を有し、そのパイプ状の先端部の外径が上記他方の被溶接物の穴よりも小さく、かつ上記溶接部は上記穴よりも大きな内径をもつ上記輪状突出部を備え、上記パイプ状の先端部を上記他方の被溶接物の穴に挿入した状態で上記輪状突出部を上記他方の被溶接物に溶接することを特徴とする請求項1に記載の薄肉金属パイプ状被溶接物の抵抗溶接方法。
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