JP5165924B2 - 錠剤の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、粉末を圧縮成形により打錠して錠剤を製造する方法に関する。
食品や医薬品などで、錠剤の形態の製品は非常に多くの種類が商品化されている。錠剤が安定に生産できるかどうかは、粉末層と打錠機と打錠条件に依存している。特に粉末層の力学的な特性は大きく影響する。例えば、粉末層の引張強度が著しく低いと、打錠後の錠剤の強度は低くなってしまう。
錠剤を成形する装置は、大きく分類するとロータリー式、エキセントリック式(レシプロ式)、直動式(モーターで駆動)の3種類がある。ロータリー式に比べて、エキセントリック式や直動式は打錠速度が低速であるため、これらは実験機として使用されることが多く、商業生産では一般的にはロータリー式の打錠機が使用されている。各方式では杵の動作(位置と速度)が異なり、また粉末充填後の状態も各方式によって異なっているかもしれないので、各方式の打錠性(打錠のしやすさ)を単純に比較することはできない。
打錠を安定に行えるかどうかは、打錠条件も大きく影響する。特に、ロータリー式では高速で打錠するので、打錠中に粉末層に存在していた空気が粉末層の外部に排出されにくくなり、結果的にキャッピングが生じ易くなる。そのため、通常ロータリー式では多段圧縮を採用している。例えば、二段圧縮では、予圧ロールを用いて比較的低圧で粉末層を予備圧縮し、その後、本圧ロールで所望の密度に打錠する。これによって錠剤内の空気が少なくなってキャッピングが生じにくくなる。キャッピングとは、錠剤の成分粒子相互の接着が十分でないために、錠剤の上面が帽子のように剥がれる現象である。
特許文献1では、所望の空隙率になるように上下の杵間距離を求め、その距離になるまで圧縮成形を行い、そのときの圧縮力・壁面力・錠剤の排出力などを測定してキャッピングのしやすさを評価している。しかし、キャッピングには打錠後の空気圧も影響するところ、同文献ではこれが考慮されておらず、キャッピング特性の評価には不十分である。
特許文献2及び3には、二段圧縮機において、杵の自重やガイドレールによる杵の押しつけ力で、杵で粉末層を予備圧縮して空気を抜くと、キャッピングしにくくなると記載されている。本圧の前に空気を排出しておけば、打錠後の錠剤内の空気圧は低減するので、相対的にはキャッピングしにくくなる。しかし、二段圧縮においては、予圧前の圧縮よりも、予圧(一段目)と本圧(二段目)の圧縮量(変位量)や、予圧・本圧間の時間(空気圧の緩和が起こるから)が、キャッピング特性に大きく影響する。特許文献2及び3では、その点に着目していない。また、上述の特許文献1とは逆に、これらの特許文献では粉末層の強度との関係が明確になっていない。
特許文献4では、臼とのクリアランスを0.01〜0.035mmに設定した杵や、そのクリアランスで1.5〜3.5mmの長さのチップが付いた杵を使用している。特許文献5では、真空吸引源と接続して、臼内の空気を逃げやすくして錠剤内の空気圧を低減させている。しかし、これらの特許文献は、粉末層の強度が考慮されていない点で、上述の特許文献2及び3と同様である。
いずれにしても、キャッピングの発生に対しては、粉末層の強度などの力学特性、臼・杵からの外力による応力、錠剤内の空気圧を総合的に評価することが不可欠であり、上述の各特許文献に記載の操作条件は必要条件ではあるが、十分条件にはなっていない。
特開平3−291548号公報 特開平4−111997号公報 特開平9−206998号公報 特開平7−8540号公報 実公平7−19679号公報
したがって本発明の目的は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る錠剤の製造方法を提供することにある。
本発明は、粉末を圧縮成形により打錠して錠剤を製造する方法において、
目的とする錠剤内の空気圧を、打錠機で打錠する時の運転速度に応じて導出する第1のステップと、目的とする錠剤の最大引張応力を導出する第2のステップと、前記空気圧及び前記最大引張応力からキャッピングを起さない最大運転速度を導出する第3のステップと、粉末の打錠を、前記最大運転速度以下で行う第4のステップとを含む錠剤の製造方法を提供するものである。
また本発明は、粉末を圧縮成形により打錠して錠剤を製造する方法において、
目的とする錠剤の最大引張応力を導出する第1のステップと、目的とする錠剤内の空気圧を、打錠機で打錠する時の運転速度に応じて導出する第2のステップと、前記空気圧及び前記最大引張り応力からキャッピングを起さない最大運転速度を導出する第3のステップと、粉末の打錠を、前記最大運転速度以下で行う第4のステップとを含む錠剤の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、キャッピングの起こりにくい錠剤を容易に製造できる。したがって本発明によれば、錠剤の製造時におけるリードタイムの短縮化、製造経費の低減、生産性の向上が可能になる。更にキャッピングが起こりにくくなることに起因して、粉末の処方の自由度が広がり、錠剤の効能の向上が図られる。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本発明の製造方法を実施するために用いられる打錠機は、水平方向に搬送されるコンベアや垂直な軸を中心として回転する円盤等の搬送手段上に、一定間隔で貫通臼穴を設け、各臼穴のそれぞれに垂直方向の上下からそれぞれ上杵及び下杵を嵌装し、臼穴内の上杵と下杵との間に粉末を充填し、上杵と下杵をそれぞれ垂直方向に加圧して粉末を圧縮成形して錠剤を製造するものである。
図1には、本発明の製造方法に好適に使用される打錠機の模式図が示されている。図1(a)に示す打錠機10においては、台座11の中央部上に立シャフト12が配設されている。立シャフト12は、台座11に取り付けられた軸受(図示せず)によって軸支されている。立シャフト12には、ベルト(図示せず)を介してモーター(図示せず)の回転駆動力が伝達され、同図中、矢印で示す方向に回転するようになっている。立シャフト12には、所定の厚みを有する盤状体である円形のロータリーテーブル13が固定されている。ロータリーテーブル13はその中心が、立シャフト12の軸心と一致するように立シャフト12に取り付けられている。ロータリーテーブル13は、立シャフト12に固定された状態で、該ロータリーテーブル13の水平面内において立シャフト12と同方向に回転するようになっている。
ロータリーテーブル13には、複数の臼孔14が設けられている。臼孔14は、ロータリーテーブル13をその厚み方向に貫通している。臼孔14は、ロータリーテーブルの円周と同心であって、且つロータリーテーブルよりも半径の小さな円の円周上に一定間隔を置いて配置されている。
ロータリーテーブル13の上部には、臼孔14の数と同数の上杵15が設置されている。一方、ロータリーテーブル13の下部には、同様に臼孔14の数と同数の下杵16が設置されている。上杵15及び下杵16はその横断面形状が臼孔14の横断面形状と同じになっており、臼孔14内に隙間なく貫入可能になっている。上杵15及び下杵16はそれらの軸心が、臼孔14の中心と一致する位置に設置されている。
上杵15及び下杵16は、ロータリーテーブル13の回転移動に同期して該ロータリーテーブル13と同方向に回転移動が可能になっている。したがって、ロータリーテーブル13が回転移動しても、上杵15及び下杵16の軸心と、臼孔14の中心との位置関係は変化しない。これと共に上杵15及び下杵16は、その軸心に沿って上下方向へ摺動可能になっている。これによって上杵15及び下杵16は、臼孔14内へ挿入可能になっている。
図1(b)に示すように、上杵15の垂直方向の高さは、上杵搬送レール21により制御される。一方、下杵16の垂直方向の高さは、下杵16の底部が摺動する下杵搬送レール22により制御される。
打錠機10には更に、粉末貯留枡としてのフィードシュー17が設置されている。フィードシュー17は、先に述べたロータリーテーブル13の上面に近接して位置している。ロータリーテーブル13と異なり、フィードシュー17は固定状態になっている。ロータリーテーブル13は、フィードシュー17の下面に近接して水平方向に移動する。フィードシュー17は、ロータリーテーブル13の水平面と直交する複数の壁部18から構成されている。壁部18の上面及び下面の少なくとも一部は開放されている。壁部18は、原料粉末の漏れ出しを防ぐために閉鎖形をなしている。
フィードシュー17上には、粉末供給装置19が設置されている。そして粉末供給装置19からフィードシュー17内に原料粉末20が連続的に又は断続的に供給されるようになっている。
フィードシュー17から見て、ロータリーテーブル13の回転方向の下流側には、摺切板25が設置されている。摺切板25は固定状態になっており、且つその下面がロータリーテーブル13の上面と接するように設置されている。ロータリーテーブル13はその上面が摺切板25の下面と接しながら摺動し、それによって臼孔14内に充填され、そこから溢れ出た原料粉末が除去されるようになっている。
ロータリーテーブル13の回転方向(臼孔14の搬送方向)の摺切板25の下流側には、上下一対の予圧ローラ23a,23bと同じく上下一対の本圧ローラ24a,24bが、ロータリーテーブル13、上杵15及び下杵16を挟むように順に設けられている。したがって、予圧ローラ23aと本圧ローラ24aにより上杵15の杵面を垂直下方に押下げ、同時に、予圧ローラ23bと本圧ローラ24bにより下杵16の杵面を垂直上方に押し上げることにより、臼孔14内の粉末を錠剤に圧縮成形する。打錠後は、上杵15が上方に退避すると共に、下杵16が上昇することで成形された錠剤が臼孔14内から取り出される。
以上の構成を有する打錠機10を用いて製造される錠剤の形状に特に制限はなく、従来公知の様々な形状を採用することができる。錠剤の大きさにも特に制限はなく、例えば直径は2〜100mm、高さは1〜50mmとすることができる。目的とする錠剤の形状、大きさに応じて、打錠機の臼孔14、上杵15及び下杵16の形状、大きさを変えることができる。
打錠開始から打錠終了までは、臼孔14内の粉末層には臼や杵から力が作用しており、粉末層は三次元的に圧縮されることになるので、錠剤にキャッピングなどの破壊が生じることはない。しかし、打錠終了後に上杵15が粉末層から離れた状態では、粉末層に作用する外力は臼による壁面圧のみになってしまうので、粉末層には大きなせん断応力が発生する。また、下杵16で排出される時には、臼の壁面から摩擦力を受けることになり、更に大きなせん断応力が生じる。また、排出の途中で錠剤の一部が臼孔14から外部に出た状態では、錠剤の側面では部分的に壁面圧及び摩擦力が作用しているため、局所的に大きなせん断応力が生じることになる。このように、打錠終了から錠剤の排出までの間で、粉末層には高いせん断応力が生じており、粉末層がその強度よりも大きな応力状態にあると、錠剤にはキャッピングなどの欠陥(部分的に破壊した状態)が生じてしまう。
比較的低速で打錠される場合は、上述のように外力のみによる応力状態を考えればよいが、比較的高速で打錠する場合は、それ以外に錠剤内の空気圧を考慮しなければならない。なぜならば、粉末層が比較的高速に圧縮されると粉末層の内部に存在する空気が粉末層の外部に移動することができなくなり、その結果、錠剤内部に空気圧が発生するからである。事実、比較的低速で打錠しているときにはキャッピングが発生しづらいが、高速で打錠するとキャッピングが発生しやすくなるので、空気圧の影響は大きいと考えられる。
本発明者らは、打錠のプロセスにおいて粉末層に生じている応力を予測し、予め定量化しておいた粉末層の強度曲線との大小関係からキャッピングが生じない条件を見出し、その条件下で打錠を行うことが有利であることを見出した。具体的には、打錠終了後の錠剤内の空気圧を予測し、錠剤内の空気圧が錠剤の最大引張応力よりも小さくなればキャッピングが生じにくくなることを見出した。
まず、目的とする錠剤内の空気圧を、打錠機で打錠する時の運転速度に応じて導出する第1のステップについて説明する。
図2に示すように、実際に打錠を行う打錠機に備えられている臼及び杵と同じ臼30及び杵31を用意し、杵30と臼31とのクリアランスを、実際に打錠を行う打錠機と同じに設定しておく。臼内に、実際に打錠を行う原料粉末と同じ粉末を充填する。比較的低速(おおよそ10mm/min以下)の圧縮速度で粉末を圧縮して、所望の密度になるように打錠する。そのままの状態下に、ポンプ32で所定の時間にわたり圧力をかけて粉末層33内に空気を透過させる。その時に差圧計35で圧力を測定する。そして透過した空気を空気貯め34で捕捉して、その体積を測定する。この操作を複数点の密度で測定しておく。このようにして、打錠開始から打錠終了までの粉末層33における密度(g/cm)と、空気透過係数(m/(sec・Pa))との関係を求める。両者の関係は、例えば図3に示すように、密度と、空気透過係数の対数とが直線関係となることがわかった。
図3に示す結果を得た後に、その結果と、錠剤内の空気圧に関する数理モデルとを用いて錠剤内の空気圧を算出する。圧縮過程での錠剤内の空気圧に関するモデルと記号を図4に示す。図4の下部が錠剤内部を表し、それに連結している同図の上部が錠剤外部を表している。錠剤の体積に対して、粉体の真密度に相当する体積を除いた部分が空気の体積になる。錠剤内部の空気は、圧縮によって外部に移動しようとする。高速に圧縮されると、外部に移動しきれない空気が錠剤内部に残存するので、残存した体積に応じて圧力が上昇する。圧縮過程における圧力と空気の流量との関係は、空気透過係数Cを使うと(1)式で表される。なお、空気透過係数Cは、図3に示したように、錠剤の密度ρの関数である。
Figure 0005165924
粉末は高速に圧縮されるので、空気の体積と圧力との関係は断熱圧縮に近いと考えられる。したがって、空気を理想気体と考えれば、(2)式のようにポリトロープ変化の式が成り立つ。断熱圧縮を仮定しているので、本発明ではポリトロープ指数κをκ=1.4とした。
Figure 0005165924
臼内への充填時に粉末に随伴していた空気は、圧縮過程で一部が錠剤内に残存し、残りは外部に排出される。排出量の計算に、(3)式で表される空気の保存則と、(4)式で表される空気の状態式を用いる。
Figure 0005165924
Figure 0005165924
これらの式を展開して、最終的に圧縮過程の空気圧に関する基礎式として、以下に示す(5)式を得る。
Figure 0005165924
(5)式中の空隙体積及び空隙体積の時間変化は、錠剤高さを用いればそれぞれ以下に示す(6)式と(7)式で表される。
Figure 0005165924
Figure 0005165924
(6)式及び(7)式を(5)式に代入すると、以下に示す(8)式が得られる。
Figure 0005165924
なお(8)式のままでは錠剤内の空気圧の解析解を得ることが困難である。そこで微小時間によって離散化する。即ち、分割数をn、打錠開始から打錠終了までの時間をtとすると、微小時間はΔt=t/nで表され、ステップi(0≦i≦n−1)における空気圧や錠剤高さは、以下のように置き換えられる。
Figure 0005165924
これらを前記の(8)式に代入すると、以下に示す(9)式が得られる。
Figure 0005165924
(9)式において、各時刻における杵の位置は幾何学的に求められるので、錠剤高さはすべてのステップi(0≦i≦n−1)で既知量である。また空気圧の初期値(i=0)は既知量、即ち大気圧であり、時間を発展させていけば各時刻における空気圧を求めることができる。したがって(9)式を用いれば、打錠機の運転速度(即ち、粉末層の圧縮速度)や粉末の処方などの各種の条件下で圧縮されたときの錠剤内の空気圧を算出することができる。本実施形態においては、ロータリー式の打錠機を用いているので、ここで言う運転速度とは、ロータリーテーブルの回転速度のことである。なお(9)式は陽的に解いているので、分割数が少ないと解が振動したり、場合によっては圧力が負圧になったりする。本発明者らは、そのような不都合が生じない分割数は10000以上であることを確認している。
以上の操作によって、図5に示すように、打錠開始から打錠終了までの粉末層における空気透過特性を利用して、打錠機の運転速度と、打錠後の錠剤内の空気圧との関係が得られる。なお図5において、運転速度の単位がrpmとなっているのは、本実施形態においては打錠機としてロータリー式のものを用いているからである。以上の操作においては、粉末層の空気透過特性を一度だけ測定しておけば、種々の運転速度に対しても、空気圧を求めることができるので、非常に有利である。なお、生産機で空気圧を実測することが現実的には困難であったため、前記のように計算によって空気圧を予測したが、測定が可能であれば空気圧を実測してもよい。
次に、目的とする錠剤の最大引張応力を導出する第2のステップについて説明する。本発明においては、上記のように図5に示す関係を求めるステップとは別に、目的とする錠剤の最大引張応力を予め求めておくものである。これら第1のステップと第2のステップとは独立の工程であり、それらの順序は問わない。
錠剤の最大引張応力は、図6(a)に示す方向で錠剤が破断する力である。図6(a)において錠剤の断面積をA、最大荷重をPとすると、最大引張応力σは、σ=P/Aで表される。しかし、錠剤は一般に小形のものであり、且つ硬度が十分に高くないので、引張試験機のチャックに把持させることが容易でない。したがって図6(a)に示す方法で最大引張応力σを測定することは容易でない。
そこで本発明者らは種々検討した結果、目的とする錠剤の最大引張応力σを予め求めるための試料として、該錠剤と同一組成を有する中実円筒状の試料を用い、図6(b)に示す方法で圧縮試験を行って得られた最大荷重の値から、最大引張応力σが求められることを見出した。図6(b)に示す測定方法を採用することで、小形であり、且つ硬度が十分に高くない測定試料である錠剤、つまり粉末の圧縮成形物の最大引張応力を容易に求めることができる。
測定試料Sは、図6(b)に示す中実円筒状の形状をしており、半径がb、厚みがhである。図6(b)は測定試料Sを平面視した図である。測定試料の半径方向に沿う断面は矩形状をしている。測定試料Sは、その内部に空気が含まれないようにするために、できるだけ低速で圧縮して成形する。例えば1mm/min又はそれ以下の圧縮速度で圧縮することで、空気の影響が十分に排除された測定試料を得ることができる。また、測定試料Sの密度は、目的とする錠剤の密度になるようにする。このように調製された試料Sを、図6(b)に示すような状態となるように試験器に設置し、一定の圧縮速度で圧縮する。圧縮速度は0.1〜1mm/minとすることが、再現性の良い結果が得られる観点から好ましい。圧縮試験によって測定試料Sが破壊するまでの最大荷重Pが得られる。この値Pと、上述のb、hの値から、以下の演算を行うことで、最大引張応力σが得られる(参考文献:小林繁夫、近藤恭平著、「工学基礎講座7 弾性力学」、培風館、昭和62年5月30日、p.83〜84)。
Figure 0005165924
以上のようにして、目的とする錠剤の最大引張応力σが求められる。続いて、この値、及び先に求めた粉末層に対する打錠機の運転速度と打錠後の錠剤内の空気圧との関係に基づき、打錠機の最大運転速度を決定する(第3のステップ)。その上で、対象とする粉末の打錠を、当該最大運転速度以下で行う(第4のステップ)。
詳細には、錠剤内の空気圧が最大引張応力σを超えないような打錠機の運転速度で行う。このようにして得られた錠剤においては、錠剤の強度が空気圧に優っているので、該錠剤にキャッピングが発生しにくくなる。打錠機の運転速度は、空気圧が最大引張応力σを超えない限り、その値に特に制限はないが、錠剤の生産性を考慮すると、錠剤内の空気圧が最大引張応力σを超えないような最大運転速度で打錠を行うことが好ましい。なお、図1に示す打錠機10を用いた打錠においては、予圧及び本圧のうち、少なくとも本圧の打錠条件を上述のようにすることで、キャッピングの起こりにくい錠剤を首尾良く製造することができる。
以上のとおり、上述の圧縮条件を採用することで、キャッピングの起こりにくい錠剤を生産性よく容易に製造することができる。したがって、錠剤の製造時におけるリードタイムの短縮化を図ることができ、また製造経費の低減、生産性の向上が可能になる。更にキャッピングが起こりにくくなることに起因して、錠剤を構成する粉末の処方の自由度が広がる。このことは、錠剤の効能の向上につながる。
本実施形態においては、粉末の圧縮成形を多段で行う場合には、以下の条件を採用することで、キャッピングの発生を一層効果的に防止することが可能になる。本発明者らが検討した結果、多段の圧縮成形において、最終の圧縮を行う圧縮変位の値に応じて、打錠終了後の錠剤内の空気圧が変化することが判明した。したがって、図7に示すような多段圧縮を行う場合、打錠開始時の粉末層の高さと打錠終了時(つまり本圧後)の粉末層の高さとの差をAとし、最終の圧縮を行う前(つまり予圧後)の粉末層の高さと打錠終了時(つまり本圧後)の粉末層の高さとの差をBとし、Aに対するBの比率(B/A)を本圧比率と定義したとき、目的とする錠剤内の空気圧が最小となる本圧比率を予め求めておき、求められた本圧比率となるように粉末の打錠を行うことで、キャッピングが一層起こりにくくなる。
本圧比率と錠剤内の空気圧との関係は、錠剤内の空気圧と打錠時の運転速度との関係を求めることに関して上述した手順と同様の手順により求めることができる。この場合、打錠機の運転速度を一定にしておき、本圧比率を種々変更して錠剤内の空気圧を求める。これによって、ある運転速度下での本圧比率と錠剤内の空気圧との関係が決定される。つまり、ある運転速度下で、空気圧が最小となる本圧比率(以下、最小空気圧本圧比率という)が決定される。この操作を種々の運転速度にて行うとより安定な打錠ができる。そして、先に述べた手順で決定された打錠機の運転速度に対応する最小空気圧本圧比率を採用して、この最小空気圧本圧比率となるように粉末の圧縮を行う。以上の操作においては、粉末層の空気透過特性を一度だけ測定しておけば、種々の運転速度や本圧比率に対しても、空気圧を求めることができるので、非常に有利である。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においては、打錠機としてロータリー式の打錠機を用いた場合を例にとり説明したが、本発明の製造方法は他の形式の打錠機、例えばエキセントリック式や直動式の打錠機を用いても行うことができる。
また中実円筒状の測定試料を用いた圧縮試験によって目的とする錠剤の最大引張応力を求めるためには、前記実施形態のように数理モデルを用いることができる他に、例えば有限要素法等による数値計算を用いてもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されない。
〔実施例1〕
炭酸ナトリウムを40%(重量%、以下同じ)、フマル酸を52%、ポリエチレングリコール6000を5%、デキストリンを2%、香料を1%、色素を微量の処方で、2種類の処方の粉末組成物を調製した(処方1及び処方2)。処方2の平均粒径は0.135mmである。処方1は、処方2と同じ組成物に、同じ組成物を予め直径1mm、長さ2mm程度の針状の粒子として造粒した粉体を1%混合したものである。
各処方の粉末組成物に対して、空気透過性の測定を図2に示すように行って、粉末組成物の充填後から打錠終了までの空気透過性のデータを得た。得られた空気透過性のデータを用いて、錠剤の密度が1.45g/cmになるように、多段式のロータリー式打錠機で打錠したときに、キャッピングが生じなかった運転速度は両処方とも16rpm(ラウンド/分)以下であった。そこで、10rpm、13rpm、16rpmの運転速度に対する打錠終了時の錠剤内の空気圧を計算した。処方1は0.12MPa、0.13MPa、0.14MPaであり、処方2は0.17MPa、0.20MPa、0.23MPaであった。なお、本圧比率は25%に設定した。
一方、それぞれの処方に対して、中実円柱状の錠剤を製作し、それを図6(b)に示すように圧縮した。中実円柱状の錠剤は、処方1及び処方2の両方とも、半径bが30mm、高さhが18.2mm、密度が1.45g/cmになるように、それぞれ3個ずつ成形した。それぞれの錠剤の最大荷重を測定した結果、処方1については223.5N、244.5N、251.0Nであり、処方2については428.0N、403.5N、386.0Nであった。上述のとおり、円柱状の錠剤では、最大荷重P、半径b、高さhとすれば、最大引張応力は前記の式(10)で得られる。この式を用いて、それぞれの処方の最大引張応力を算出し、算出結果を平均すると、処方1では0.14MPa、処方2では0.24MPaであった。以上のように、キャッピングが生じない速度の場合は、空気圧が最大引張応力よりも小さくなっていることが確認された。
〔比較例1〕
実施例1と同様の処方を用い、実施例1よりも高い速度で打錠を行った。その結果、得られた錠剤にキャッピングが生じやすくなった。19rpmの速度の場合で空気圧を算出すると、処方1では0.15MPa、処方2は0.25MPであった。これは実施例1で示した各処方の最大引張応力よりも大きくなっている。
〔比較例2〕
実施例1では本圧比率を25%に設定した。なぜならば、その本圧比率で空気圧が最小となったからである。比較例2として、実施例1において本圧比率を50%とした場合の空気圧を計算した。その結果、16rpmの速度で、処方1では0.24MPa、処方2は0.30MPaであった。これは実施例1で示した各処方の最大引張応力よりも大きくなっている。
本発明の製造方法に好適に用いられる打錠機の一例を示す模式図である。 粉末層の空気透過性を利用して、錠剤内の空気圧と打錠機の運転速度との関係を求める装置を示す模式図である。 錠剤の密度と空気透過係数との関係を示すグラフである。 圧縮過程での錠剤内の空気圧に関するモデルと記号を示す説明図である。 打錠機の運転速度と打錠後の錠剤内の空気圧との関係を示すグラフである。 錠剤の最大引張応力の測定方法を示す模式図である。 本圧比率の定義を示す模式図である。
符号の説明
10 打錠機
13 ロータリーテーブル
14 臼孔
15 上杵
16 下杵
17 フィードシュー
18 壁部
19 粉末供給装置
20 原料粉末

Claims (5)

  1. 粉末を圧縮成形により打錠して錠剤を製造する方法において、
    目的とする錠剤内の空気圧を、打錠機で打錠する時の運転速度に応じて導出する第1のステップと、目的とする錠剤の最大引張応力を導出する第2のステップと、前記空気圧及び前記最大引張応力からキャッピングを起さない最大運転速度を導出する第3のステップと、粉末の打錠を、前記最大運転速度以下で行う第4のステップとを含む錠剤の製造方法。
  2. 前記第1のステップでは、予め求めた粉末層の密度と、該粉末層の空気透過係数の関係とを利用して、目的とする錠剤内の空気圧を導出する請求項1に記載の錠剤の製造方法。
  3. 前記第2のステップでは、目的とする錠剤の前記最大引張応力を予め求めるための試料として、該錠剤と同一組成を有する中実円筒状の試料を用い、該試料をその半径方向へ圧縮したときに得られる最大荷重から、該錠剤の最大引張応力を求める請求項1又は2記載の錠剤の製造方法。
  4. 粉末の圧縮成形を多段で行い、
    打錠開始時の粉末層の高さと打錠終了時の粉末層の高さとの差をAとし、最終の圧縮を行う前の粉末層の高さと打錠終了時の粉末層の高さとの差をBとし、Aに対するBの比率(B/A)を本圧比率と定義したとき、目的とする錠剤内の空気圧が最小となる本圧比率を予め求めておき、
    求められた本圧比率となるように粉末の打錠を行う請求項1ないし3の何れかに記載の錠剤の製造方法。
  5. 粉末を圧縮成形により打錠して錠剤を製造する方法において、
    目的とする錠剤の最大引張応力を導出する第1のステップと、目的とする錠剤内の空気圧を、打錠機で打錠する時の運転速度に応じて導出する第2のステップと、前記空気圧及び前記最大引張り応力からキャッピングを起さない最大運転速度を導出する第3のステップと、粉末の打錠を、前記最大運転速度以下で行う第4のステップとを含む錠剤の製造方法。
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