JP5163513B2 - インクジェットインク及び金属パターン形成方法 - Google Patents
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(酸性基を有する高分子化合物)
本発明のインクは、酸性基を有する高分子化合物を含むことを特徴とする。酸性基の具体例としてはカルボキシル基、スルホ基などが挙げられるが、カルボキシル基がパラジウムイオンの可溶化、安定化の観点から好ましい。酸性基は、塩基性化合物に中和されていても未中和であっても構わないが、インク中に高分子化合物を均一に存在させるという点で中和されていることが好ましい。酸性基を中和する塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物や、アンモニア、アルカノールアミン、アルキルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。
本発明のインクは、二価のパラジウムイオンを含有することを特徴とする。パラジウムイオンの濃度は、好ましくは1ppm以上10000ppm以下、より好ましくは100ppm以上5000ppm以下である。このような範囲とすることにより、インクの安定性と金属パターンの形成性を両立させやすくなる。
本発明のインクのpHは、好ましくは7以上10以下である。このようなpHとすることにより、インクの安定性を確保し、かつインクジェットヘッドの部材への悪影響を抑制しやすくなる。pH調整剤としては、一般的な酸性化合物や、アルカリ金属の水酸化物、アミン系化合物等の塩基性化合物を用いることができる。
本発明のインクに適用可能な溶媒としては、例えば、アルカンポリオール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、アルキレングリコールアルキルエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環化合物(例えば、2−ピロリジノン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)等が挙げられる。
本発明のインクには、めっきパターンの視認性を向上させる目的で色材が含まれていても良いが、その含有量は少ないことが好ましい。めっき形成効率の観点から、色材の含有量は好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下である。さらには、実質的に色材が含まれていないインクとすることが好ましい。
本発明のインクジェットインクは水を含むことを特徴とする。インクにおける水の含有量は、好ましくは10質量%以上80質量%以下である。この範囲とすることにより、良好な記録特性とインクの乾燥性を両立させやすくなる。
本発明のインクに界面活性剤を用いることもできる。界面活性剤の添加によりインクの表面張力、記録する基板への濡れ性をコントロール可能であり、必要に応じて用いることが好ましい。使用できる界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド等の活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤、シリコーン系もしくはフッ素系界面活性剤等が挙げられる。
本発明のインクの粘度は特に限定されないが、25℃において1mPa・s以上15mPa・s以下であることが好ましい。
本発明のインクの表面張力は、22mN/m以上40mN/m以下であることが好ましく、さらには22mN/m以上30mN/m以下であることが好ましい。表面張力を22mN/m以上とすることにより、インクの射出状態を安定化しやすくなり、40mN/m以下とすることにより、金属パターンの均一性が良好になりやすい。
本発明の金属パターン形成方法に適用可能な基板としては、絶縁性を備えたものであれば特に制限はなく、例えば、ガラスやセラミックス等の剛性の強いものから、PET(ポリエチレンテレフタレート)やポリイミドなどの樹脂から構成されるフィルム状のものが挙げられる。
本発明の金属パターン形成方法について説明する。まず、触媒を含有する本発明のインクをインクジェットヘッドにより基板に吐出し、触媒のパターンを形成させる。その後、無電解めっき処理を行うことにより基板上に金属パターンを形成させる。
使用可能なインクジェットヘッドに制限はなく、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)等のインクジェットヘッドを挙げることができる。インクジェットヘッドのコストや生産性の観点からは、電気−機械変換方式、または電気−熱変換方式のヘッドを用いることが好ましい。吐出させるインク液滴の大きさに制限はないが、回路配線に適用する場合は微細なパターン形成が必要となるため15pl以下、好ましくは4pl以下、さらに好ましくは2pl以下の液滴量にする。
基板にインクを記録する際、基板を加熱して記録しても良い。加熱して記録を行う場合、基板の表面温度は、好ましくは40℃以上70℃以下である。40℃以上にすることでインクの乾燥を促進してドット同士液寄りを抑制し、金属パターンの再現性を良好なものとしやすい。また、加熱温度を70℃以下とすることで、基材に対する熱のダメージを抑えることができる。
本発明の金属パターン形成方法に用いるインクジェット記録装置の記録解像度は、720dpi以上7200dpi以下であることが好ましく、1440dpi以上7200dpi以下であることがさらに好ましい。720dpi以上とすることで微細な金属パターンを形成しやすくなり、7200dpi以下とすることにより、装置における画像処理時間、信号転送時間、画像記録時間を短縮化させやすい。
本発明の金属パターン形成方法における無電解めっき処理について説明する。
本発明の記録方法において、パターン形成工程と前述の無電解めっき処理を行う工程の間に、触媒活性化工程を実施することが好ましい。
(高分子化合物Aの合成)
窒素気流下で、1Lのセパラブルフラスコにスチレンを20g、アクリル酸を20g、メタクリル酸メチルを40g、メタクリル酸ブチルを20g、酢酸エチルを180g入れ、80℃に加熱した。アゾビスイソブチロニトリル2gを1時間かけて添加し、更に5時間加熱撹拌を続けた。その後、アゾビスイソブチロニトリル0.2gを更に加え、85℃に昇温して1時間加熱した。
(インク1の調製)
溶媒:エチレングリコール 30部
溶媒:ジエチレングリコールモノブチルエーテル 5部
パラジウム塩:酢酸パラジウム 0.1部
酸性基を有する高分子化合物:高分子化合物A 固形分として2部
さらに全体が100部となるようにイオン交換水を添加し、水酸化ナトリウムにてインクのpHを9.8に調整した後、活性剤であるBYK347(ビックケミー製)により表面張力を30mN/mに調整して、本発明のインク1を得た。インク1における二価のパラジウムイオンの濃度を分析したところ、480ppmであった。
インクの各種構成材料、調整するpH値を表1に記載のものに変更した以外は、インク1と同様の方法により、本発明のインク2〜9を調製した。ジョンクリル70(酸価240、重量平均分子量16500)、PDX−6102B(酸価65、重量平均分子量65000)は、ジョンソンポリマー社製の高分子化合物である。また、各インクのpHは、水酸化ナトリウムもしくは塩酸により、表1に記載の値に調整した。
インクの各種構成材料、調整するpH値を表1に記載のものに変更した以外は、インク1と同様の方法により、比較例のインク10、11を調製した。
〔記録方法1〕
(パターン形成)
ノズル口径20μm、液適量2pl、最大駆動周波数25kHz、ノズル数1024、ノズル密度360dpiであるピエゾ型のインクジェットヘッドを搭載し、入力する画像を8パスのインターリーブ方式で記録可能であり、主走査、副走査方向の記録解像度がともに1440dpiであり、1回の走査ごとに記録部分の温風乾燥が可能なインクジェット装置を構成した。パターンを形成する基板として厚さ100μmのポリイミドを、金属パターンを形成する元画像として幅100μm、長さ30mmの細線10本からなる画像を用意した。基板の表面温度を50℃に加熱しながら、めっき触媒を含むインク1を基板に吐出して、触媒のパターンを形成した基板1Aを得た。
前記の方法でパターン形成した基板1Aを乾燥させて表面の溶媒を完全に除去した後、ホウ素系還元剤を含有した下記の溶液に、室温で15分浸漬した。これにより、パターン上のPdイオンを還元してPd金属のパターンを形成した。その後、純水で洗浄し、Pdの金属パターンを形成した基板1Bを得た。
アルカップMRD2−C(上村工業社製) 6質量%
純水 残量
(無電解めっき工程)
メルプレートCU−5100A(メルテックス社製) 6質量%
メルプレートCU−5100B(メルテックス社製) 5.5質量%
メルプレートCU−5100C(メルテックス社製) 2.0質量%
メルプレートCU−5100M(メルテックス社製) 4.0質量%
純水 残量
上記組成からなる無電解銅めっき溶液を調製した。仕上がりのめっき液は、銅濃度として2.5質量%、ホルマリン濃度が1質量%、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)濃度が2.5質量%である。また、水酸化ナトリウムでめっき液のpHを13.0に調整した。
前記の記録方法1において、インク1をインク2〜9に変更した以外は同様にして、本発明の記録方法2〜9により金属パターンを形成した基板2C〜9C、2c〜9cを得た。
前記の記録方法1において、インク1をインク10、11に変更した以外は同様にして、比較例の記録方法10、11により金属パターンを形成した基板10C、11C、10c、11cを得た。
金属パターンを形成した基板1C〜11C、1c〜11cについて、以下の各評価を行った。
基板1C〜11Cにおいて形成した銅の細線パターンを、下記の基準に従って目視観察し、インク充填直後のパターン再現性を評価した。
△:銅の細線パターンの線幅に若干バラつきが生じているが、インク充填直後のパターン形成性はおおむね良好である
×:細線パターンにあきらかな欠けが見られ、インク充填直後のパターン形成性は不良である
〔インク保存後のパターン形成性の評価〕
基板1c〜11cにおいて形成した銅の細線パターンを、下記の基準に従って目視観察し、インク保存後のパターン再現性を評価した。
△:銅の細線パターンの線幅に若干バラつきが生じているが、インク保存後のパターン形成性はおおむね良好である
×:細線パターンにあきらかな欠けが見られ、インク保存後のパターン形成性は不良である
以上により得られた結果を表2に示す。
Claims (6)
- インクジェットヘッドによりインクを吐出して基板上にパターンを形成した後、無電解めっき処理により該パターン上に金属層を形成する金属パターン形成方法に用いるインクであって、少なくとも、水、二価のパラジウムイオン、酸性基を有する高分子化合物を含有することを特徴とするインクジェットインク。
- 前記酸性基がカルボキシル基であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットインク。
- 前記二価のパラジウムイオンの濃度が100ppm以上5000ppm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットインク。
- pHが7以上10以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
- 色材の含有量が0.1質量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェットインクを、インクジェットヘッドにより吐出して基板上にパターンを形成した後、無電解めっき処理によって該パターン上に金属層を形成することを特徴とする金属パターン形成方法。
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