JP5160336B2 - 樹脂発泡成形体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
また、特許文献2においては、耐熱性、耐衝撃性、耐シンナー性を向上させた熱可塑性樹脂組成物を得るために、ポリカーボネート樹脂に特定の2種類のABS系の樹脂を配合することが開示されている。
また、特許文献2においては、所定の特性に優れた組成物を開示しているに過ぎず、外観の悪化及び強度の低下を図るための工夫はなされていない。
上記化学発泡剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、0.05〜5質量部であり、
上記超臨界流体の含有量は、上記熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、0.05〜5質量部であり、
上記熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)とゴム強化ビニル系樹脂(B)とを、(A)が20〜80質量%、(B)が80〜20質量%になる比率で含有しており、
該ゴム強化ビニル系樹脂(B)は、ゴム質重合体(b1)の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体(b2)を重合して得られるグラフト共重合体(B1)、又はビニル系単量体(b3)の共重合体(B2)と上記グラフト共重合体(B1)との混合物からなることを特徴とする樹脂発泡成形体の製造方法にある(請求項1)。
具体的には、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記ポリカーボネート樹脂(A)と上記ゴム強化ビニル系樹脂(B)とを、(A)が20〜80質量%、(B)が80〜20質量%になる比率で含有して構成してある。また、ゴム強化ビニル系樹脂(B)は、ゴム質重合体(b1)の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体(b2)を重合して得られるグラフト共重合体(B1)から構成するか、又はビニル系単量体(b3)の共重合体(B2)とグラフト共重合体(B1)との混合物から構成している。
また、上記熱可塑性樹脂組成物を用いることにより、上記キャビティの容積を拡大させるときには、溶融樹脂の内部に発泡層を形成し、成形する樹脂発泡成形体において、発泡によるセル径をより均一にすることができ、樹脂発泡成形体の外観が悪化することを抑制することができる。
さらに、本発明においては、化学発泡剤と超臨界流体とを併用することにより、成形する樹脂発泡成形体の発泡によるセル径をより均一にすることができ、その外観をより良好にすることができる。
本発明の樹脂発泡成形体によれば、安定したスキン層の形成によって、強度を向上させることができ、発泡によるセル径をより均一にして、外観が悪化することを抑制することができる。
第1、第2の発明において、上記熱可塑性樹脂組成物100質量部に対する上記化学発泡剤の含有量が0.05質量部未満である場合には、化学発泡剤の含有量が少なくて、発泡の各セル径を均一にすることが困難になる。一方、上記熱可塑性樹脂組成物100質量部に対する上記化学発泡剤の含有量が5質量部を超える場合には、化学発泡剤の含有量が多くて、化学発泡剤の残渣による金型汚染が生じ、外観に優れた樹脂発泡成形体を得ることが困難になる。
また、上記第1型部と上記第2型部との相対移動による上記キャビティの容積の拡大率は、1.1〜1.7倍とすることができる。この拡大率は、上記樹脂発泡成形体の発泡倍率となる。
また、他の樹脂成分は、特に限定されないが、(B)成分を除く、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂(PA)、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、エチレン系共重合体等が挙げられる。これらは一種を単独で用いることができ、二種以上を組み合わせて用いることもできる。
この場合には、熱可塑性樹脂組成物において、ゴム強化ビニル系樹脂(B)の含有量に比べて、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の含有量が多いことにより、樹脂発泡成形体の表面に、より安定してスキン層を形成することができる。
そのため、上記充填用隙間を形成した工夫により、樹脂発泡成形体の全周の表面に安定してスキン層を形成することができる。
この場合には、充填工程において、キャビティ及び充填用隙間の全体に溶融樹脂を充填した後に可動工程を行うことにより、樹脂発泡成形体の全周の表面に、より安定してスキン層を形成することができる。
この場合には、樹脂発泡成形体を製造するための装置の構成を、より簡単にすることができる。
この場合には、より強度及び外観に優れた樹脂発泡成形体を成形することができる。
この場合には、化学発泡材が適切であり、キャビティ内に充填した溶融樹脂を安定して発泡させることができる。
この場合には、ゴム強化ビニル系樹脂の各物性が適切であり、強度及び外観に優れた樹脂発泡成形体をより容易に成形することができる。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が12,000未満であると、耐衝撃性が低下する場合があり、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が40,000を超えると、流動性が低下し、均一なセルが得られず、樹脂発泡成形体の外観が低下する場合がある。
この場合には、樹脂発泡成形体の発泡倍率が適切であり、表面に毛羽立ちがなく、発泡によるセル径が均一で外観に優れ、さらに機械的強度にも優れる樹脂発泡成形体を得ることができる。
なお、樹脂発泡成形体の発泡倍率が1.1倍未満である場合には、発泡による軽量化等の効果があまり得られない。一方、樹脂発泡成形体の発泡倍率が1.7倍を超える場合には、キャビティ内に充填した溶融樹脂が十分に拡張せず、成形した樹脂発泡成形体の表面に波打ちが生じるおそれがある。
また、樹脂発泡成形体の発泡倍率は、より好ましくは1.2〜1.6倍とすることができる。
本発明の樹脂発泡成形体は、表示板等の土木・建築関連資材、車両用内外装関連資材、容器、トレー等の日用雑貨用品、電気・電子部品、スポーツ用品、壁、床、機枠、家具、化粧シート、間仕切り、ラティス、フェンス、雨樋、サイジングボード、カーポート等の住宅・事務所用内外装材、玩具、遊技機等の緩衝材、補強材、断熱材、芯材、代替合板等として用いることができる。
さらに、本発明の樹脂発泡成形体は、用途によっては、他の成形品、部材等と一体化させ、複合化させてなる物品として用いることができ、上記用途に適用可能である。
(ポリカーボネート樹脂(A))
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂(A)としては、種々のジヒドロキシアリール化合物とホスゲンとの反応によって得られるもの(ホスゲン法)、あるいはジヒドロキシアリール化合物とジフェニルカーボネートとのエステル交換反応によって得られるもの(エステル交換法)が挙げられる。好ましいポリカーボネート樹脂は、芳香族ポリカーボネート樹脂である。代表的な芳香族ポリカーボネート樹脂としては、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、すなわちビスフェノールAとホスゲンとの反応によって得られるポリカーボネート樹脂である。
また、本発明に用いられる熱可塑性樹脂組成物中のポリカーボネート樹脂(A)の含有量は、20〜80質量%、好ましくは30〜75質量%、さらに好ましくは50〜70質量%である。ポリカーボネート樹脂(A)の含有量が20質量%未満では、均一なセル径を有する発泡成形体を得ることが困難となり、一方、ポリカーボネート樹脂(A)の含有量が80質量%を超えると、優れた外観を有する樹脂発泡成形体を得ることが困難となる傾向がある。
(ゴム質重合体(b1))
本発明において用いられる上記ゴム質重合体(b1)は、室温でゴム質であれば、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよいが、非ジエン系重合体(非ジエン系ゴム質重合体)及びジエン系重合体(ジエン系ゴム質重合体)が好ましい。更に、上記ゴム質重合体(b1)は、架橋重合体であってもよいし、非架橋重合体であってもよい。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ゴム強化ビニル系樹脂(B)の形成に用いる上記ビニル系単量体(b2)は、芳香族ビニル化合物を含む。このビニル系単量体(b2)は、芳香族ビニル化合物のみであってよいし、この芳香族ビニル化合物と、例えば、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、酸無水物等の芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物との組合せであってもよい。上記の芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
従って、上記ビニル系単量体(b2)としては、芳香族ビニル化合物の1種以上からなる単量体(x)、又は芳香族ビニル化合物の1種以上と、この芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物の1種以上とを組み合わせた単量体(y)を用いることができる。
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、(メタ)アクリル酸メチルが好ましい。
また、上記化合物以外に、必要に応じ、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、アミド基、カルボキシル基、オキサゾリン基等の官能基を有するビニル系化合物を用いることができる。例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ヒドロキシスチレン、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、N,N−ジエチル−p−アミノメチルスチレン、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−オキシシクロヘキシル、ビニルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メタクリルアミド、アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
尚、前述のように、上記ゴム強化ビニル系樹脂(B)は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(B)(グラフト共重合体(B1))のみであってよいし、このゴム強化ビニル系樹脂(B)と、ビニル系単量体(b3)の(共)重合体(以下、「(共)重合体(B2)」という。)とからなる混合物であってもよい。
この(共)重合体(B2)の形成に用いるビニル系単量体(b3)は、上記ビニル系単量体(b2)として例示した化合物を用いることができる。従って、上記(共)重合体(B2)は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(B)の形成に用いた上記ビニル系単量体(b2)と全く同じ組成の成分を重合して得られる重合体であってもよいし、異なる組成で同じ種類の単量体を重合して得られる重合体であってもよいし、更には、異なる組成で異なる種類の単量体を重合して得られる重合体であってもよい。これらの各重合体が2種以上含まれるものであってもよい。
上記ゴム強化ビニル系樹脂(B)としてのグラフト共重合体(B1)は、上記ゴム質重合体(b1)の存在下に、上記ビニル系単量体(b2)を重合することにより製造することができる。重合方法としては、乳化重合、溶液重合、塊状重合、及び、塊状−懸濁重合が好ましい。
ここで、グラフト率(%)は、グラフト共重合体(B1)成分中のゴム成分をx(g)、グラフト共重合体(B1)成分中のアセトン不溶分をy(g)とすると、下記の計算式により求められた値である。
グラフト率(%)=((y−x)/x)×100
上記極限粘度は、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤などの種類や量、さらに重合時間、重合温度などを変えることにより、容易に制御することができる。
なお、上記芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物や他のビニル系単量体は、ゴム強化ビニル系樹脂(B)に用いられる単量体成分と同様である。
また、ゴム強化ビニル系樹脂(B)中のゴム質重合体(b1)の割合は、通常4〜40質量%、好ましくは6〜35質量%、さらに好ましくは8〜30質量%である。
また、AES樹脂は、耐熱劣化性に優れる。本発明で用いられる熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)を含有するが、そのため成形温度を高くすることが求められる。この点において、AES樹脂は耐熱劣化性に優れ、加工性に優れるという要求を満たすことができる。
炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられ、好ましくはプロピレン、1−ブテン、1−オクテン、さらに好ましくはプロピレンである。これらのα−オレフィンは、1種単独で、あるいは2種以上を併用することができる。α−オレフィンの炭素数は、3〜20であるが、好ましくは3〜12、さらに好ましくは3〜8である。炭素数が20を超えると、共重合性が極端に低下するため好ましくない。エチレンとα−オレフィンの重量比は、好ましくは5〜95/95〜5、さらに好ましくは60〜88/40〜12、特に好ましくは70〜85/30〜15である。
また、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体は、ポリスチレン換算の重量平均分子量100万以上の成分の含有率が好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。このようなゴム質重合体は、分子量調節剤の種類・量、触媒の種類・量を変更することにより、製造することができる。さらに、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−110〜−40℃、さらに好ましくは−70〜−50℃、融点(Tm)は、好ましくは30〜110℃、さらに好ましくは40〜70℃である。
溶融状態可塑性樹脂への発泡剤の配合方法としては、熱可塑性樹脂組成物のペレットと発泡剤マスターバッチペレットをドライブレンドした後、成形機に供給し、成形機内で樹脂を可塑化させ、金型内で発泡させる方法が好ましく用いられる。また、物理発泡剤を併用してもよい。物理発泡剤としては、具体的には、プロパン、ブタン、水、炭酸ガス等が挙げられる。
溶融した熱可塑性樹脂に対する超臨界流体の含有量は、上記熱可塑性樹脂組成物に対して0.05〜5質量%の範囲、好ましくは0.1〜4質量%、さらに好ましくは0.2〜3質量%である。0.05質量%未満では、化学発泡剤と超臨界流体とを併用することによる効果を十分に得られず、一方、5質量%超過では、均一なセルが得られず外観に優れた樹脂発泡成形体を得ることが困難になる。
熱老化防止剤としては、フェノール系、リン系、硫黄系などが挙げられ、好ましくはフェノール系、リン系および硫黄系の3種混合系である。熱老化防止剤として、この3種混合系を用いると、長時間、高温下に曝された時の、引張り伸び率を保持するという効果が得られる。
硫黄系としては、3,3’−チオビスプロピオン酸ジドデシルエステル、3,3’−チオビスプロピオン酸ジオクタデシルエステル、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルプロピオネート)、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネートなどが挙げられる。
このうち、耐候剤としては、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系などが好ましい。滑剤としては、エチレンビスステアリルアミド、硬化ヒマシ油などが好ましい。着色剤としては、カーボンブラック、ベンガラなどが挙げられる。帯電防止剤としては、ポリエーテル、アルキル基を有するスルホン酸塩などが挙げられる。
(実施例)
本例の樹脂発泡成形体6の製造方法は、図1〜図4に示すごとく、第1型部2と、第1型部2に対して相対的に可動する第2型部3とを用いて、樹脂発泡成形体6の表面にスキン層61を形成すると共に、スキン層61の内側部分に発泡層62を形成する方法である。そして、本例の製造方法においては、充填工程として、図2、図3に示すごとく、第2型部3と第1型部2との間に形成したキャビティ41A内に、化学発泡剤を混練すると共に超臨界流体を浸透させた熱可塑性樹脂組成物からなる溶融樹脂60を充填してキャビティ41Aの表面に接触する溶融樹脂60の部分にスキン層61を形成し、可動工程として、図4に示すごとく、第1型部2と第2型部3とをキャビティ41Aの容積が拡大する離隔方向Rに相対的に可動させて、スキン層61に対する内側部分に溶融樹脂60を発泡させた発泡層62を形成する。
なお、ゴム強化ビニル系樹脂(B)は、ビニル系単量体(b3)の共重合体(B2)と上記グラフト共重合体(B1)との混合物から構成することもできる。
本例の樹脂発泡成形体6の製造方法は、化学発泡剤及び超臨界流体を用いると共に溶融樹脂60を充填したキャビティ41Aの容積を拡大させて、溶融樹脂60を発泡させる方法であり、発泡成形する樹脂発泡成形体6の全周の表面に、溶融樹脂60がほとんど発泡せずに硬化したスキン層61を効果的に形成することができるものである。
本例においては、図1、図4に示すごとく、第1型部2と第2型部3とを備えた製造装置1を用いて、樹脂発泡成形体6を成形する。本例の第1型部2は、キャビティ41内に溶融樹脂60を充填するための樹脂注入口22を設けた固定型部である。本例の第2型部3は、第1型部2に対して離隔方向Rに可動する可動型部である。
図2、図3に示すごとく、本例の製造装置1は、第1型部2に設けた樹脂注入口22に接続して、上記キャビティ41内に溶融樹脂60を注入するための注入ノズル25を有している。本例の第2型部3は、油圧、空気圧、電力等によって動作する駆動源によって、第1型部2に対して進退する(可動方向Dに移動する)よう構成してある。
図4に示すごとく、本例の第2型部3は、キャビティ形成凸部31の先端面312が充填用隙間42の可動方向Dの端部まで移動するまで第1型部2に対して離隔方向Rに可動するよう構成してある。
第2型部3が第1型部2に対する原位置301にあるときには、キャビティ41に連通して、溶融樹脂60を充填するための充填用隙間42が形成される。そして、図1、図2に示すごとく、第2型部3が離隔方向Rに可動する前の原位置301にあるときには、第2型部3と第1型部2との間には、容積が縮小したキャビティ41A及び充填用隙間42が形成されると共に、図4に示すごとく、第2型部3が離隔方向Rに可動した可動位置302にあるときには、第2型部3と第1型部2との間には、容積が拡大したキャビティ41Bが形成される。
第1型部2のキャビティ形成凹部21における内側面211、及び第2型部3のキャビティ形成凸部31における外側面311は、可動方向Dに平行に形成してある。
そして、製造装置1は、第1型部2に対して第2型部3を離隔方向Rに可動させるときには、第2型部3における外側面311が閉塞型部5における内周面51と摺動することにより、充填用隙間42を形成した状態を維持して、キャビティ41Aの容積を拡大させるよう構成してある。
なお、成形する樹脂発泡成形体6の形状によっては、第2型部3における先端面312と閉塞型部5における内側端面52とが一致するまでは第2型部3を離隔方向Rに可動させずに、樹脂発泡成形体6からスキン層61による突出部が突出した形状を形成することもできる。
本例においては、まず、充填工程として、図2、図3に示すごとく、注入ノズル25に保持する溶融樹脂60を、第1型部2における樹脂注入口22から縮小した状態のキャビティ41A内に注入する。このとき、溶融樹脂60は、キャビティ41Aから充填用隙間42へと流入し、縮小した状態のキャビティ41及び充填用隙間42の全体に溶融樹脂60が充填される。そして、第1型部2のキャビティ形成凹部21の表面及び第2型部3のキャビティ形成凸部31の表面に接触する溶融樹脂60の部分は、他の部分よりも早く冷却硬化して半硬化状態のスキン層61が形成される。
こうして、樹脂発泡成形体6の内部に溶融樹脂60が発泡した発泡層62を形成すると共に、樹脂発泡成形体6の全周の表面にスキン層61を形成することができる。そのため、全周の表面に安定してスキン層61を形成することができ、発泡成形した樹脂発泡成形体6の強度を効果的に向上させることができる。
また、本例においては、樹脂成形を行う所定の温度において、粘度が高い芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の存在により、発泡によるセル径をできるだけ均一にすることができ、樹脂発泡成形体6の外観を向上させることができる。また、樹脂成形を行う所定の温度において、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)よりも粘度が低いゴム強化スチレン系樹脂(B)の存在により、樹脂発泡成形体6の表面に安定してスキン層61を形成することができる。
さらに、本例においては、化学発泡剤と超臨界流体とを併用することにより、成形する樹脂発泡成形体6の発泡によるセル径をより均一にすることができ、その外観をより良好にすることができる。
本確認試験においては、上記熱可塑性樹脂組成物を用いて成形した樹脂発泡成形体6(発明品1〜7)の優れた効果を確認した。具体的には、成形した樹脂発泡成形体6について、表面外観の観察、強度としての曲げ弾性率(MPa)の測定、内部断面の観察を行い、それらが優れているかの評価を行った。樹脂発泡成形体6(発明品1〜7)についての評価結果を表1に示し、比較のために、発明品1〜7とは異なる熱可塑性樹脂組成物を用いて成形した樹脂発泡成形体6(比較品1〜6)の評価結果を表2に示す。
(1)ポリカーボネート樹脂(A)(表1においてはPCで示す。)
芳香族ポリカーボネート樹脂として、三菱エンジニアリングプラスチックス社製「ノバレックス 7022PJ」を用いた。
(AES樹脂の調製)
リボン型撹拌翼を備えた内容積10リットルのステンレス製オートクレーブに、EPDM(JSR(株)製、EP−82)30部、スチレン(芳香族ビニル化合物)45.5部、アクリロニトリル(シアン化ビニル化合物)24.5部およびトルエン100部を仕込み、撹拌後、昇温し、ゴム質重合体(b1)を完全溶解し均一溶液を得た。次いで、t−ドデシルメルカプタン0.1部とベンゾイルパーオキサイド0.5部、ジクミルパーオキサイド0.1部を添加し、95℃に一定に制御しながら撹拌回転数200rpmで重合反応を行った。反応開始後6時間目から1時間を要して120℃まで昇温し、さらに2時間反応を行って終了した。重合転化率は、97%であった。100℃まで冷却後、2,2−メチレン−ビス−4−メチル−6−ブチルフェノール0.2部を添加したのち、反応混合物をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒を留去し細かく砕いたのち、40mmφベント付き押し出し機(220℃、700mmHg)にて、実質的に揮発分を留去するとともに、重合体をペレット化した。グラフト率は60%、極限粘度(メチルエチルケトン中、30℃で測定)は0.42dl/g、体積平均粒子径は500nmであった。
撹拌装置を備えた内容積7リットルのガラス製フラスコに、イオン交換水100部、不均化ロジン酸ナトリウム1.5部、t−ドデシルメルカプタン0.1部、ポリブタジエン(JSR(株)製、#0700)40部(固形分換算)、スチレン15部およびアクリロニトリル5部を加え、撹拌しながら昇温した。温度が45℃に達した時点で、エチレンジアミン4酢酸ナトリウム0.1部、硫酸第1鉄0.003部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート・2水和物0.2部およびイオン交換水15部よりなる活性剤水溶液、ならびにジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド0.1部を添加し、1時間反応を続けた。その後、イオン交換水50部、不均化ロジン酸ナトリウム1部、t−ドデシルメルカプタン0.1部、ジイソプロピルヒドロパーオキサイド0.2部、スチレン30部およびアクリロニトリル10部からなるインクレメント重合成分を3時間にわたって連続的に添加し重合反応を続けた。添加終了後、さらに撹拌を1時間続けたのち、2,2−メチレン−ビス(4−エチレン−6−t−ブチルフェノール)0.2部を添加し、反応生成物をフラスコより取り出した。反応生成物のラテックスを硫酸2部で凝固し、反応生成物をよく水洗したのち、75℃で24時間乾燥し、白色粉末を得た。重合転化率は97.2%、グラフト率は75%、極限粘度は0.44dl/gであった。
テクノポリマー社製のAS樹脂(サンレックス SAN−C)、スチレン/アクリロニトリル=76/24(%)の共重合体を用いた。極限粘度は0.58dl/gであった。
酸化防止剤としては、ADEKA社製アデカスタブAO−412S(AO1)と、ADEKA社製アデカスタブ2112(AO2)と、住友化学工業社製スミライザーGS(AO3)とを用いた。表1、表2において、酸化防止剤の添加量(質量部)は、熱可塑性樹脂組成物100質量部に対する質量部によって示す。
化学発泡剤としては、永和化成工業社製「ポリスレンEB207」、マスターバッチ(炭酸水素ナトリウム/ABS=20/80(質量比))を用いた。
超臨界流体としては、二酸化炭素を用いた。
また、曲げ弾性率(曲げモジュラス)(MPa)の測定においては、ASTMD790に準拠して行った。曲げ弾性率の値が大きいほど、樹脂発泡成形体6の強度が高いことを意味する。なお、曲げ弾性率は、樹脂発泡成形体6が波打っていたり、歪んでいた場合には、測定を実施しなかった。この場合は、表中に「−」と記載した。
また、内部断面の観察においては、樹脂発泡成形体6の断面が均一で微細な発泡セルが形成されていた場合は○、発泡セルの外径に大小の分布があった場合は△、発泡セルのほとんどが大きな外径になっていた場合は×とした。
また、本確認試験においては、ポリカーボネート樹脂(A)とゴム強化ビニル系樹脂(B)とをブレンダーにてブレンドした後、日本製鋼所製の二軸押出機TEX44を用いて、250℃にて押し出し、このペレットを用いて試験を行い、結果を評価した。発泡成形機としては、日本製鋼所製180(t)電動成形機を用いた。また、得られた熱可塑性樹脂ペレットと発泡剤マスターバッチをドライブレンドして発泡成形機に供給した。
また、超臨界二酸化炭素発生装置で発生させた超臨界状態の二酸化炭素を、接続管を通して射出成形機に導入した。
発明品1〜7について、化学発泡剤と超臨界流体とを併合して用い、ポリカーボネート樹脂(A)とゴム強化ビニル系樹脂(B)との比率も適切であったことにより、良好な結果が得られたと考えられる。
発泡倍率については、1.4倍、1.55倍、1.67倍として、試験を行ったところ、いずれにおいても良好な結果が得られた。従って、発泡倍率は、1.1〜1.7倍の範囲がよいことがわかった。
2 第1型部
21 キャビティ形成凹部
211 内側面
22 樹脂注入口
3 第2型部
31 キャビティ形成凸部
311 外側面
41A、B キャビティ
42 充填用隙間
6 樹脂発泡成形体
60 溶融樹脂
61 スキン層
62 発泡層
D 可動方向
R 離隔方向
Claims (10)
- 第1型部と、該第1型部に対して相対的に可動する第2型部とを用い、該第2型部と上記第1型部との間に形成したキャビティ内に、化学発泡剤を混練すると共に超臨界流体を浸透させた熱可塑性樹脂組成物からなる溶融樹脂を充填する充填工程と、上記第1型部と上記第2型部とを上記キャビティの容積が拡大する離隔方向に相対的に可動させる可動工程とを行って、樹脂発泡成形体を製造する方法において、
上記化学発泡剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、0.05〜5質量部であり、
上記超臨界流体の含有量は、上記熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、0.05〜5質量部であり、
上記熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)とゴム強化ビニル系樹脂(B)とを、(A)が20〜80質量%、(B)が80〜20質量%になる比率で含有しており、
該ゴム強化ビニル系樹脂(B)は、ゴム質重合体(b1)の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体(b2)を重合して得られるグラフト共重合体(B1)、又はビニル系単量体(b3)の共重合体(B2)と上記グラフト共重合体(B1)との混合物からなることを特徴とする樹脂発泡成形体の製造方法。 - 請求項1において、上記熱可塑性樹脂組成物は、上記ポリカーボネート樹脂(A)としての芳香族ポリカーボネート樹脂を50〜70質量%含有し、残部が上記ゴム強化ビニル系樹脂(B)からなることを特徴とする樹脂発泡成形体の製造方法。
- 請求項1又は2において、上記第2型部は、上記第1型部に設けたキャビティ形成凹部内に配置するキャビティ形成凸部を設けてなり、
上記キャビティ形成凹部において上記第1型部と上記第2型部との可動方向に平行に形成した内側面と、上記キャビティ形成凸部において上記可動方向に平行に形成した外側面との間には、上記溶融樹脂を充填するための充填用隙間が上記キャビティと連通して形成されており、
上記充填工程においては、上記溶融樹脂を上記キャビティに充填すると共に上記充填用隙間に充填し、
上記可動工程においては、上記キャビティ及び上記充填用隙間への上記溶融樹脂の充填を行った後、上記第1型部と上記第2型部とを上記離隔方向に相対的に可動させることを特徴とする樹脂発泡成形体の製造方法。 - 請求項1〜3のいずれか一項において、上記充填工程において、上記キャビティ及び上記充填用隙間の全体への上記溶融樹脂の充填を行って、該溶融樹脂を半硬化させて未発泡のスキン層を形成した後、上記可動工程において、上記第1型部と上記第2型部とを上記離隔方向に相対的に可動させ、上記スキン層に対する内側部分に上記溶融樹脂を発泡させた発泡層を形成して、上記樹脂発泡成形体を製造することを特徴とする樹脂発泡成形体の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか一項において、上記第1型部は、上記キャビティ内に上記溶融樹脂を充填するための樹脂注入口を設けた固定型部であり、
上記第2型部は、上記第1型部に対して上記離隔方向に可動する可動型部であることを特徴とする樹脂発泡成形体の製造方法。 - 請求項1〜5のいずれか一項において、上記ゴム質重合体(b1)は、エチレン・α−オレフィン系ゴムであることを特徴とする樹脂発泡成形体の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか一項において、上記化学発泡剤は、炭酸水素ナトリウム、アゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)の群から選択されたものであることを特徴とする樹脂発泡成形体の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれか一項において、上記ゴム強化ビニル系樹脂(B)は、グラフト率が10〜150%であり、アセトン可溶部の極限粘度(メチルエチルケトン中、30℃で測定)が0.2〜0.8dl/gであり、
上記ポリカーボネート樹脂(A)は、粘度平均分子量が12,000〜40,000であることを特徴とする樹脂発泡成形体の製造方法。 - 請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法によって得られたことを特徴とする樹脂発泡成形体。
- 請求項9において、発泡倍率が1.1〜1.7倍であることを特徴とする樹脂発泡成形体。
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