本発明の実施の形態に係るプラズマディスプレイパネル(PDP)について図を参照して説明する。
(実施の形態1)
図1から図4は本発明の実施の形態1に係るPDPの構成を示す。図1は実施の形態1に係るPDPの分解斜視図である。図2は実施の形態1に係るPDPを前方から見た正面図である。図3は図2のXX線における断面図である。図4は図2のYY線における断面図である。なお、図3および図4では、図1の上下を反転させた状態を示す。ここで、前方とは、前面基板を基準に背面基板の反対側に離れた側をいう。また、前方から見るとは、前方から前面基板に対して垂直な方向から見ることをいう。
PDP101は、一般的な交流面放電型PDPと概ね同じ構造を有し、図1に示すように前面基板102と背面基板103とを備える。
前面基板102は、前面ガラス基板104と、走査電極105および維持電極106を有する表示電極107と、リブ108と、ブラックストライプ109と、誘電体層および保護層を有する被覆部110とを有する。
前面ガラス基板104は、透明な長方形のガラス板であって、例えば硼硅酸ナトリウム系ガラスを材料とする。前面ガラス基板104は、例えばフロート法を用いて製造される。
表示電極107は、前面ガラス基板104の一面にストライプ状に複数配置される電極である。表示電極107の各々は、一対の走査電極105と維持電極106とを有する。走査電極105と維持電極106とはいずれも、互いに平行に配置された帯状のバス電極である。
走査電極105は、黒色電極111と白色電極112とから構成される2層構造を有する。黒色電極111は、前面ガラス基板104の上に形成される黒色の電極である。白色電極112は、黒色電極111の上に形成される導通性の優れた電極である。維持電極106も同様に黒色電極113と白色電極114とから構成される。これらの電極の材料については後述する。
白色電極112,114は、図3に示すようにいずれも、リブ108(詳細は後述する。)が接続する位置では、その長手方向から見た場合に外側に位置する両端部に、背面基板103に向けて大きく突き出す突出部115,116を有する。これに対して、内側に位置する端部(内側端部)117,118は、突出部115,116に比べてほとんど突き出していない。すなわち、前面ガラス基板104から垂直方向の距離を高さとすると、突出部115,116の方が、内側端部117,118よりも高くなる。
また、図4に示すようにリブ108が設けられていない位置では、白色電極112,114のすべての端部が、背面基板103に向けて突き出す。
リブ108は、黒色電極111,113とほぼ同じ厚さを有して前面ガラス基板104上に設けられており、1つの表示電極107を構成する一対の走査電極105と維持電極106との間を接続する。
ブラックストライプ109は、黒色材料からなる遮光層ともいわれる部材であって、コントラスト向上などのために、隣接する表示電極107の間にストライプ状に複数設けられる。
被覆部110は、前面基板102の表示電極107が設けられる面を覆っており、1つの層として図示するが誘電体層と保護層とを有する。被覆部110の表面は、表示電極107とリブ108とブラックストライプ109とが設けられた前面ガラス基板104の形状に概ね沿った形状を有する。そのため、突出部115,116の上を覆う被膜部110は、前面基板102の他の部分よりも突き出ており、そこには背面基板103に当接する当接部115a,116aが形成される。
誘電体層は、表示電極107を覆ってコンデンサとして機能する。誘電体層は、表示電極107とブラックストライプ109との上にそれらを覆うように形成される。誘電体層に使用される材料については、後述する。なお、誘電体層の膜厚が薄いほどパネル輝度の向上と消費電力を低減する効果は著しい。そのため、誘電体層の膜厚は絶縁耐圧が確保される範囲内であれば、できる限り薄い方(例えば、30μm以下)が望ましい。保護層は、例えば酸化マグネシウム(MgO)からなり、誘電体層の上にそれを覆うように形成される。
背面基板103は、背面ガラス基板119と、アドレス電極120と、下地誘電体層121と、隔壁122と、蛍光体層123とを有する。
背面ガラス基板119は、前面ガラス基板104と同様の透明な長方形のガラス板である。
アドレス電極120は、背面ガラス基板119の一面にストライプ状に形成される。アドレス電極120は、PDP101を前方から見た場合に表示電極107と直交する方向に配置される。
下地誘電体層121は、背面ガラス基板119とアドレス電極120とを覆う。
隔壁122は、下地誘電体層121の上に形成され、前面基板102の方向へ突き出す壁である。隔壁122は縦横に延び、縦隔壁124はアドレス電極120と平行方向に形成され、横隔壁125はアドレス電極120と垂直方向に形成される。
対向する一対の縦隔壁124および横隔壁125と下地誘電体層121とは、それらで囲まれた空間である放電セル126を形成する。隔壁122によって仕切られた放電セル126には、Ne−Xeなどを含む放電ガスが53000Pa〜100000Paの圧力で封入される。表示電極107とアドレス電極120とに選択的に電圧を印加することによって、放電セル126の放電空間127において放電が生じる。放電空間127は、放電セル126のうち、前方から見た場合に走査電極105と維持電極106との間に位置する空間およびその近傍である。
蛍光体層123は、放電セル126を形成する隔壁122および下地誘電体層121に塗布された蛍光体である。蛍光層体123は、放電によって発生する紫外線で励起されて発光する。蛍光体が発光する色は、赤色、緑色または青色である。すなわち、各放電セル126は、放電によって赤色、緑色または青色に発光する。1つの画素は、3色の放電セルによって表示される。1画素を表示する放電セル126は、例えば、表示電極107方向に並んだ赤色、青色、緑色のそれぞれに発光する3つの放電セル126で構成される。
これまで説明した前面基板102と背面基板103とは、前方から見た場合に、リブ108と縦隔壁124とが互いに対向するように配置され、また、表示電極107およびアドレス電極120が交差する位置と放電セル126とが重なるように対向して配置される。前面基板102と背面基板103とは、ガラスフリットなどによって、放電セル126の気密性を保持できるように、それぞれの外周部(図示せず)で接合される。
リブ108と縦隔壁124とが互いに対向することによって、表示電極107に沿って隣接する放電空間127の間は縦隔壁124とリブ108とによって仕切られ、上記の隣接する放電空間127の間はわずかな隙間で連通することになる。従って、隣接する放電空間127の一方での放電が他方の放電空間127に影響することがほとんどなくなり、誤放電を低減することができる。
また、当接部115a,116aが縦隔壁124に当接することになるため、前面基板102と背面基板103とは放電空間127から離れた部分で当接する。そのため、組み立て時などに異物が発生したとしても、異物が放電空間127に入り込むことは少なくなり、異物が入り込むことによる不灯を低減することができる。
ここまで、実施の形態1に係るPDP101の構造について説明した。続けて、実施の形態1に係るPDP101の製造方法について説明する。
前面基板102と背面基板103とは別個に製造される(工程1および工程2)。前面基板102の製造工程(工程1)と背面基板の製造工程(工程2)とのそれぞれについては、後述する。前面基板102と背面基板103とはそれぞれの外周部で接合される(工程3)。これによって、放電セル126が、気密性を保持して、前面基板102と背面基板103との間に形成される。接合時に、走査電極105とアドレス電極120とが前方から見た場合に直交するように、また、縦隔壁124とリブ108とが対向するように、前面基板102と背面基板103とは配置される。前面基板102と背面基板103との間の放電セル126に、放電ガスが封入される(工程4)。これによって、PDP101が完成する。
前面基板102の製造工程(工程1)の概要について説明する。
表示電極107とリブ108とブラックストライプ109とが、前面ガラス基板104上に形成される(工程11)。この工程の詳細は後述する。
誘電体ペーストが、表示電極107とリブ108とブラックストライプ109とを覆うようにスクリーン印刷法によって塗布される(工程12)。誘電体ペーストを塗布した後、所定の時間放置することによって塗布された誘電体ペースト表面がレベリングされて平坦な表面になる。60〜200℃で乾燥させ、誘電体ペーストの軟化温度以上で焼成することによって、誘電体ペーストは固化する。これによって、被覆部110に含まれる誘電体層が形成される。
なお、誘電体層を形成する材料の塗布方法として、ダイコート法が用いられてもよい。ダイコート法は、スリットダイから前面ガラス基板104に向けて誘電体ゾルを吐出する方法である。ダイコート法の場合、所定時間の放置することで誘電体ゾル表面を平坦にした後、加熱乾燥して脱水縮合反応をさせることによって、誘電体層が形成される。
スクリーン印刷法およびダイコート法のいずれの方法を用いても、各工程を繰り返すことによって、所望の膜厚の誘電体層を形成することができる。
被覆部110に含まれる保護層が、真空蒸着法、印刷法、ダイコート法などによって、誘電体層を覆うように形成される(工程13)。これにより、前面ガラス基板104上に所定の構成部材が形成され、前面基板102が完成する。
ここから、表示電極107とリブ108とブラックストライプ109とを前面ガラス基板104上に形成する工程(工程11)の詳細について、図5から図7を参照して、説明する。
前面ガラス基板104の一面の全体に黒色電極ペーストを塗布することによって、黒色電極ペーストの膜を形成し、その膜を乾燥する(工程21)。これによって、例えば3〜10μm程度の厚みの黒色電極膜128が、図5(A)に示すように、前面ガラス基板104上に形成される。
ここで、黒色電極ペーストの塗布には例えばスクリーン印刷法などが用いられる。乾燥時の温度は、好ましくは60〜200℃である。なお、黒色電極膜を形成する材料の塗布方法として、ダイコート法が用いられてもよい。ダイコート法の場合、黒色電極ゾルの膜を加熱乾燥して脱水縮合反応をさせることによって、黒色電極膜128が形成される。
黒色電極膜128のうち、リブ108およびブラックストライプ109のそれぞれを形成すべき部分(帯状領域)129,130が露光される(工程22、図5(B)参照)。工程22における露光には所定の露光マスクが使用される。当該部分129,130は、例えば10〜50μmの幅で積算光量50〜500mJ/cm2となるように露光される。
黒色電極膜128の全体の上に白色電極ペーストを塗布することによって、白色電極ペーストの膜を形成し、その膜を乾燥する(工程23)。これによって、例えば3〜10μm程度の厚みの白色電極膜131が、図6(A)に示すように、黒色電極膜128上に形成される。
白色電極膜131を形成するために、スクリーン印刷法またはダイコート法が用いられる。これは、上述の黒色電極膜128の形成と同様である。
白色電極膜131のうち、白色電極112,114を形成すべき部分(帯状領域)133,134が対をなして露光される(工程24、図6(B))。この時、白色電極112,114を形成すべき部分(帯状領域)133,134は、前面ガラス基板104を前方から見た場合に、その幅方向において部分的に、工程22において形成したリブ108を形成すべき部分の両端部の一部と重なり合っている。
工程24における露光には所定の露光マスクが使用される。工程24において露光される部分133,134は、例えば積算光量50〜500mJ/cm2となるように露光される。これによって、工程24において露光される部分133,134の下に位置する黒色電極膜128も同時に露光されるか、または、当該部分133,134が露光により光硬化し、その反応が当該部分133,134の下に位置する黒色電極膜128にまで伝達して当該部分133,134の下に位置する黒色電極膜128が硬化する。すなわち、工程24において、表示電極107を形成すべき部分が露光された状態となる。なお、走査電極105の白色電極112を形成すべき部分133と、維持電極106の白色電極112を形成すべき部分134とは、同時に露光されてもよく、順次露光されてもよい。
白色電極膜131が露光された後、現像することによって、パターニングする(工程25)。これによって、図7に示すように、前面ガラス基板104上に、表示電極107とリブ108とブラックストライプ109とのそれぞれを形成する膜の部分129,130,133,134が残る。
現像液には、未露光の黒色電極膜128および白色電極膜131を溶融することができる液体が使用され、例えば、0.1〜10重量%の炭酸水素ナトリウム溶液などのアルカリ溶液が使用される。好ましくは、現像は、白色電極膜131が形成された後、24時間以内に行われる。
黒色電極111および白色電極112を形成するガラスフリットの軟化温度以上で所定時間焼成する(工程26)。続けて、誘電体層と保護層と(被覆部110)が形成され(工程27)、前面基板102が完成する。
以上の工程を経て形成した前面基板102は、上述の図3および図4に示す構造を有する。なお、図3および図4は、SEM(Scanning Electron Microscope)を用いて前面基板102を観察したものである。
以上の工程によって、同一の放電セル126における放電に関与する一対の走査電極105と維持電極106との間で、これらの電極105,106に沿って隣接する放電空間127を仕切るリブ108が形成される。リブ108は、一対の走査電極105と維持電極106とを導通させない材料を用いて、両電極105,106を接続するように形成される。すなわち、上述の工程では、走査電極105の黒色電極111と、維持電極106の黒色電極113と、リブ108とが同一の黒色電極膜128から形成される。そのため、黒色電極膜128には、例えば、絶縁性を有する材料であって、白色電極112,114に含まれる銀などの成分が内部に拡散することによって導通することができるものが選択される。このような材料であれば、白色電極112,114と接触することによって、黒色電極111,113の白色電極112,114と接触する部分の近傍(黒色電極111,113の表示電極107を形成する部分)は導通する一方で、リブ108の絶縁性は保たれ、走査電極105と維持電極106とを絶縁状態で維持することができる。
また、上述の工程によって、白色電極112,114には、リブ108との接続位置において、対をなす白色電極112,114の長手方向から見た場合に、対をなす白色電極112,114の外側に位置する端部(放電空間127から離れた端部)に突出部115,116が形成される。これに対して、対をなす白色電極112,114の内側に位置する端部(放電空間127に近い側の端部)117,118はほとんど突き出さない。そのため、8〜45μm程度の薄い誘電体層を含む被覆部110を形成すると、その表面は、表示電極107の形状に追従して、当接部115a,116aが内側端部117,118より高くなる。従って、当接部115a,116aは放電空間127から離れて形成される。また、背面基板103において前面基板102に向けて突き出すのは隔壁122であり、組み立て時に縦隔壁124とリブ108とが対向して配置されるため、放電空間127に近い部分は背面基板103に当接しない。このように、前面基板102と背面基板103とが当接する部分を制御することができるため、仮に被覆部110と背面基板103との当接によって異物が発生した場合であっても、その異物が放電空間127に入り込むことは極めて少なくなる。従って、異物による不灯を低減することが可能になる。
ここで、突出部115,116が形成される理由を説明する。黒色電極111,113を形成する部分は、白色電極膜131の露光工程(工程24)において、白色電極112,114を形成する部分133,134とともに一括して露光される。そのため、黒色電極111,113を形成する部分は、十分に露光されにくい。しかし、黒色電極111,113の端部のうち、リブ108と接続するは、リブなどを露光する工程(工程22)において十分に露光されている。
現像工程(工程25)において、十分に露光されない黒色電極膜128は現像液によって除去されやすく、そのため、白色電極112,114を形成する部分133,134と同時に露光される黒色電極膜128は、現像液によって除去されやすい。現像液と接触するのは、当該部分133,134の端部の下に位置する黒色電極膜128であるため、その位置にある黒色電極膜128は、現像液によって、概ね全体的に除去される。ただし、当該部分133,134の端部の下に位置する黒色電極膜128のうち、リブ108を形成すべき部分129と接続する部分は、工程22において十分に露光されており、またリブ108を形成すべき部分129と接続して現像液と接触しないため、現像液によって除去されることはない。その結果、白色電極112,114を形成する部分133,134の外側端部は、前面ガラス基板104との間に空間を形成して浮いた状態になる。それを焼成すると(工程26)、白色電極112,114を形成する部分133,134の表面が収縮し、当該部分133,134の外側端部は上方へ反り返る。このようにして、白色電極112,114の突出部115,116が形成されると考えられる。
背面基板103の製造工程(工程2)について説明する。
背面ガラス基板119上に、アドレス電極120が形成される(工程31)。アドレス電極120は、アドレス電極120の位置および形状に形成された材料層を所定の温度で焼成することにより形成される。材料層は、銀(Ag)材料を含むペーストをスクリーン印刷する方法、金属膜を全面に形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングする方法などを用いて形成される。
アドレス電極120が形成された背面ガラス基板119上に、下地誘電体層121が形成される(工程32)。下地誘電体層121は、ダイコート法などによりアドレス電極120を覆うように誘電体ペーストを塗布して誘電体ペースト層を形成した後、誘電体ペースト層を焼成することによって、形成される。なお、誘電体ペーストはガラス粉末などの誘電体材料とバインダおよび溶剤を含んだ塗料である。
下地誘電体層121上に、隔壁122が形成される(工程33)。隔壁122は、隔壁材料を含む隔壁用ペーストを塗布して所定の形状にパターニングすることによって、形成される。ここで、下地誘電体層121上に塗布した隔壁用ペーストをパターニングする方法として、フォトリソグラフィ法、サンドブラスト法などが使用できる。
隣接する隔壁122間の下地誘電体層121上および隔壁122の側面に蛍光体材料を含む蛍光体ペーストを塗布し、焼成することにより蛍光体層123が形成される(工程34)。以上の工程により、背面ガラス基板119上に所定の部材が設けられた背面基板103が完成する。
以上、本実施の形態に係るPDP101の製造方法について説明した。続けて、各部を形成するために使用する材料およびその製造方法について、詳述する。
黒色電極111,113を形成する材料およびその製法について詳細に説明する。
上記黒色電極ペーストは、黒色電極ガラス粉末15重量%〜30重量%と、バインダ成分10重量%〜45重量%と、黒色顔料5重量%〜15重量%とを、三本ロールで十分に混練することによって製造される。黒色電極ペーストには、適宜、可塑剤としてフタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリブチルを添加し、分散剤としてグリセロールモノオレート、ソルビタンセスキオレヘート、ホモゲノール(登録商標)、アルキルアリル基のリン酸エステルなどが添加されてもよい。これらを添加することによって、印刷性が向上する。
上記黒色電極ガラス粉末は、酸化ビスマス(Bi2O3)15〜40重量%と、酸化珪素(SiO2)3〜20重量%と、酸化硼素(B2O3)10〜45重量%とを基本成分とするガラス材料を、湿式ジェットミルやボールミルで平均粒径が0.5μm〜2.5μmとなるように粉砕された粉末である。ガラス粉末の各成分の含有量は、均一にガラス化するように、適宜調整される。ガラス材料は、軟化点、電極の色などを調整するために遷移金属などの添加剤を含んでもよい。
上記バインダ成分は、アクリル樹脂5重量%〜25重量%を含むエチレングリコールであり、5重量%以下の感光性開始剤を含有する。
なお、本実施の形態では、黒色電極111,113とブラックストライプ109が同一材料で形成される。この場合、ブラックストライプ109を通じて画像表示時の誤放電等が発生しないように、材料成分および各成分の含有量が適宜選択される。
白色電極112を形成する材料およびその製法について詳細に説明する。
上記白色電極ペーストは、白色電極ガラス粉末0.5重量%〜20重量%と、バインダ成分1重量%〜20重量%、AgやPtなどの導電性粒子50重量%〜85重量%とを三本ロールでよく混練して製造される。白色電極ペーストには、必要に応じて可塑剤としてフタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリブチルを添加し、分散剤としてグリセロールモノオレート、ソルビタンセスキオレヘート、ホモゲノール(登録商標)、アルキルアリル基のリン酸エステルなどを添加してもよい。これによって、印刷性が向上する。
上記白色電極ガラス粉末は、白色電極ガラス材料を湿式ジェットミルやボールミルで平均粒径が0.5μm〜2.5μmとなるように粉砕して製造される。なお、白色電極用ガラス材料の含有量が多い場合は均一にガラス化しない可能性が考えられるため、状況に応じて含有量を調整することが効果的である。
上記白色電極用ガラス材料は、酸化ビスマス(Bi2O3)を15〜40重量%を含み、酸化珪素(SiO2)3〜20重量%、酸化硼素(B2O3)10〜45重量%を基本成分としており、導電性を確保する目的として、AgやPt、Auなど等の遷移金属を導電材料として含有する。
バインダ成分はアクリル樹脂1重量%〜20重量%を含むエチレングリコールであり5重量%以下の感光性開始剤を含有する。
誘電体層を形成する材料およびその製法について詳細に説明する。
ダイコート用または印刷用の誘電体ペーストは、誘電体材料を、湿式ジェットミルやボールミルで平均粒径が0.5μm〜2.5μmとなるように粉砕して誘電体材料粉末を作製する。次にこの誘電体材料粉末55重量%〜70重量%と、バインダ成分30重量%〜45重量%とを三本ロールでよく混練して製造される。バインダ成分はエチルセルロースあるいはアクリル樹脂1重量%〜20重量%を含むターピネオールあるいはブチルカルビトールアセテートである。
誘電体ペーストには、必要に応じて可塑剤としてフタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリブチルを添加し、分散剤としてグリセロールモノオレート、ソルビタンセスキオレヘート、ホモゲノール(登録商標)、アルキルアリル基のリン酸エステルなどを添加してもよい。これによって、印刷性が向上する。
誘電体材料は、酸化ビスマス(Bi2O3)を5重量%〜40重量%と酸化カルシウム(CaO)を0.5重量%〜15重量%を含んでおり、さらに酸化モリブデン(MoO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化セリウム(CeO2)、酸化マンガン(MnO2)から選ばれる少なくとも1種を0.1重量%〜7重量%含む。さらに、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)から選ばれる少なくとも1種を0.5重量%〜12重量%含む。
なお、誘電体材料は、酸化モリブデン(MoO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化セリウム(CeO2)、酸化マンガン(MnO2)に代えて、酸化銅(CuO)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化コバルト(Co2O3)、酸化バナジウム(V2O7)、酸化アンチモン(Sb2O3)から選ばれる少なくとも1種を0.1重量%〜7重量%含んでいてもよい。また、誘電体材料は、上記以外の成分として、酸化亜鉛(ZnO)を0重量%〜40重量%、酸化硼素(B2O3)を0重量%〜35重量%、酸化硅素(SiO2)を0重量%〜15重量%、酸化アルミニウム(Al2O3)を0重量%〜10重量%など、鉛成分を含まない材料組成が含んでもよく、これらの材料組成の含有量に特に限定はない。
なお、ダイコート法を用いて誘電体層が形成される場合など、誘電体層を形成する材料には、ゾルゲル溶液が使用されてもよい。ゾルゲル溶液とは、シリコン系のアルコキシドを水やアルコール系などの溶媒により希釈した溶液である。ここで溶媒の希釈率によりアルコキシドの濃度を調整して使用するが、この濃度によって収縮率(=乾燥後膜厚/塗布後膜厚)が変化するため、最終誘電体膜厚の目標値に合わせて微調整することが可能である。しかし濃度が薄いとインクの粘度が低下し膜厚制御が困難であり、逆に濃度が高いとアルコキシド自体が縮合反応しやすくなり、塗布装置の溶液タンク内で反応が進行し均一な膜質を得ることが困難である。
さらに、アルコキシドの縮合反応による収縮を抑えることで応力緩和および厚膜化を可能にする目的で、前記ゾルゲル溶液にガラス粉末などの微粒子を添加することも有効である。ここで、添加する微粒子は、体積比率5%〜80%程度が望ましい。これは5%以下では応力を緩和する効果が小さく、80%以上では誘電体層としての透過率が悪化するためである。また微粒子の粒子径は、10nm〜100nmが望ましく、これは10nm以下では凝集しやすく100nm以上では微粒子の沈降が速くなり、安定した品質が得られないためである。
さらに上記アルコキシドは、膜厚や光学特性等の調整のために側鎖として脂肪族基や芳香族基などのアルキル基を組合せた材料を用いることも可能である。
上記のゾルゲル溶液をダイコート法などによって塗布することによって、誘電体層が設けられる。この場合、誘電体層が多層化されてもよい。例えば、上記の誘電体ペーストによって形成された誘電体層の上に、ゾルゲル溶液によって形成された誘電体層が形成される。
より詳細には、誘電体ペーストによって形成された誘電体層の上に、ゾルゲル溶液が、基板上に所定の膜厚になるように塗布される。室温で1〜10分程度放置することで塗布されたゾルゲル溶液の表面凹凸がレベリングさせる。その後50〜300℃の温度で所定時間加熱乾燥し、その後300〜600℃で加熱して脱水・縮合反応により固化することで、ゾルゲル溶液によって形成された誘電体層が形成される。ここで塗布膜厚は10〜300μm程度の膜厚を塗布すると、誘電体として0.1〜30μm程度の膜厚を形成する。なお、必要に応じて数回に分けて上記工程を繰り返すことで所定の膜厚を確保することも可能である。
以上、本発明の実施の形態1について説明したが、本実施の形態に係るPDPはこれに限定されない。
例えば、本実施の形態では維持電極106と走査電極105とはバス電極であるとしたが、維持電極106と走査電極105とがバス電極に加えて透明電極を有してもよい。この場合の例を図8および図9に示す。図8は、透明電極を有する場合の図2のXX線における断面図に相当する図である。図9は、透明電極を有する場合の図2のYY線における断面図に相当する図である。維持電極135と走査電極137とはそれぞれ、黒色電極111,113と白色電極112,114と透明電極138,139とから構成される3層構造となる。透明電極138,139は例えば、黒色電極111,113と前面ガラス基板104との間に、黒色電極111,113よりも幅が広い帯状で配置される。透明電極は例えば、酸化インジウムスズ(ITO)や酸化スズ(SnO2)などを材料として、薄膜プロセスなどを用いて形成される。
また例えば、本実施の形態のPDP101のブラックストライプ109の材料は、黒色電極111と同一であるとしたが、黒色電極111と異なってもよい。この場合、前面基板102を製造するとき、黒色電極111とブラックストライプ109とが別の材料を用いた別工程において形成される。
黒色電極111とブラックストライプ109とが別工程で形成される場合の工程の一例について説明する。
まず、ブラックストライプ109が形成される。詳細には、黒色顔料を含むブラックストライプ109の原料ペーストが前面ガラス基板に印刷される。ブラックストライプ109の原料ペーストを乾燥させた後、フォトリソグラフィ法で予め定めた位置にパターンニングが行われる。パターンを形成する材料を焼成して、ブラックストライプは形成される。
次に、走査電極105および維持電極106が形成される。詳細には、黒色電極111,113の原料ペーストが、ブラックストライプ109が形成された前面ガラス基板104の上に印刷される。黒色電極111の原料ペーストは黒色顔料を含む。黒色電極111の原料ペーストを乾燥させた後、白色電極112の原料ペーストが、乾燥した黒色電極111の原料ペーストの上に印刷される。白色電極112の原料ペーストは銀(Ag)などの導電性材料を含む。白色電極112の原料ペーストを乾燥させた後、フォトリソグラフィ法で予め定めた位置にパターニングが行われる。パターンを形成する材料を焼成して、黒色電極111と白色電極112とから構成されるバス電極が形成される。
また例えば、本実施の形態のPDP101はブラックストライプ109を有するとしたが、ブラックストライプ109は設けられなくてもよい。
以上のような実施の形態1によると、リブ108が、表示電極107の長さ方向に沿って隣接する放電空間127を仕切る。そのため、放電が隣接する放電空間127に影響することを防止することができ、誤放電を防止することが可能になる。
また、リブ108が、表示電極107を構成する走査電極105と維持電極106とを接続するように設けられる。これによって、表示電極107の外側が、表示電極107の内側よりも前面ガラス基板104から離れる方向に突き出す。そのため、表示電極107の上方を覆う被覆部110である当接部115a,116aで異物が発生したとしても、異物が発生する場所が放電空間から離れているため、発生した異物が放電空間に入り込むことは少ない。従って、異物による不灯を低減することが可能になる。
また、リブ108は縦隔壁124に対向して配置される。横隔壁125に対向して配置されるブラックストライプ109によってコントラストを向上させることができるのと同様に、リブ108はコントラスト向上の効果も奏する。
また、実際の背面基板140の隔壁141の頂部は、図10および図11に示すようにうねりを有する場合がある。図10は、この場合の図2のXX線における断面図に相当する。図11は、この場合の図2のYY線における断面図に相当する。これらの図に示すように、隔壁141の頂部のうねりは、表示電極107に向けて盛り上がるものが多い。本実施の形態の表示電極107であれば、背面基板140の隔壁141の頂部が凹凸を有する場合であっても、図10に示すように、前面基板102は、確実に放電空間127から遠い部分で背面基板103に当接する。従って、異物による不灯を確実に低減することが可能になる。
(実施の形態2)
実施の形態1では、走査電極および維持電極が1列の帯状の部材からなる場合を例に説明したが、実施の形態2では、走査電極および維持電極のそれぞれが、網目形状を有する場合について説明する。
図12は実施の形態2に係るPDP201を正面図である。図13は図12のXX線における断面図である。図14は図12のYY線における断面図である。
本実施の形態の表示電極207は、走査電極205と維持電極206とを有する。走査電極205と維持電極206とは、それぞれ、前方から見た場合に、網目形状の一例としてはしご型の形状を有する。
走査電極205は、一対の平行な第1および第2電極205a,205bと、第1電極205aおよび第2電極205bを接続する第3電極205cとを有する。第1電極205aは、対をなす維持電極206の近くに配置される電極である。第2電極205bは、対をなす維持電極206の遠くに配置される電極である。第1および第2電極205a,205bと、第3電極205cとは、互いに直交する。第3電極205cは、放電空間127の近傍に設けられる。
維持電極206も、走査電極205と同様に、対をなす走査電極205の近くに配置される第1電極206aと、第1電極と平行に対をなす維持電極の遠くに配置される第2電極206bと、第1電極206aおよび第2電極206bと互いに直交する第3電極206cとを有する。
このように第3電極205c,206cを有することによって、第1電極205a,206aまたは第2電極205b,206bの一部で断線が生じた場合であっても、第3電極205c,206cを介して導通を確保することができる。
リブ208は、表示電極207の長さ方向から見た場合に、対をなす走査電極205および維持電極206の第1電極205a,206a同士を接続するが、第2電極205b,206bには接続しない。
このような構成によると、リブ208が接続している第1電極205a,206aに含まれる白色電極212a,214aは、背面基板103の方向へほとんど突き出さない。これに対して、リブ208が接続しない第2電極205b,206bに含まれる白色電極212b,214bは、浮いた状態になり、実施の形態1の突出部115,116の形成と同様の理由により、背面基板103の方向へ突き出す。
本実施の形態においても、リブ208によって誤放電が防止されるとともに、コントラストが向上する。また、前面基板202と背面基板103とは、放電空間127から遠い部分で当接する。そのため、前面基板202と背面基板103とが当接して異物が発生した場合であっても、放電空間127に入り込むことはきわめて少なくなる。従って、異物による不灯を低減することが可能になる。
(実施の形態3)
図15は、実施の形態1に係るリブ108の周辺を拡大して示す正面図である。図16は、実施の形態3に係るリブの周辺を拡大して示す正面図である。
図15は、正面から見た場合に、リブ108から隔壁122の頂部分がはみだす状態を示す。この状態では、点線の丸で囲った部分342において、維持電極306の突出部115,116と縦隔壁324が当接する。このような状態は、表示電極107の露光時、前面基板102と背面基板103との接合時などにアライメントなどがずれることによって生じることがある。
図15は、露光時および接合時にアライメントのずれが生じた例を示す。図15では、露光時に、表示電極107を露光する位置が、本来の位置105,106(図15の点線)から、位置305,306(図15の実線)にずれている。また、接合時に、本来の縦隔壁124の向きが、同図の縦隔壁324のように傾いている。
この場合、放電空間127に近い部分342が前面基板102と背面基板103とが当接する。そのため、放電空間127に異物が入りやすくなり、不灯が生じやすくなる。このような走査電極105または維持電極106の突き出した端部と隔壁122が当接することを防ぐために、リブ108の幅を全体に太くすることが考えられる。しかし、これでは、パネル輝度が低下する。
本実施の形態3に係るリブ308a,308bは、リブ308a,308bの長さ方向の中央部分よりも、走査電極105aおよび維持電極106bへ接続部分の近傍でリブ308a,308bの幅が太い。これによって、上述のようなアライメントなどのずれが生じた場合であっても、縦隔壁324は、リブ308a,308bが設けられた範囲におさまる。そのため、露光時および接合時などにアライメントなどのずれが生じた場合であっても、走査電極105または維持電極106の突き出した端部と隔壁122が当接することを防ぐことができる。また、全体を太くするよりも、パネルの輝度の低下を抑えることができる。
(実施の形態4)
ブラックストライプは、コントラスト向上のために、種々の形状で設けられる。例えば、図17では、リブ108に対向する部分のブラックストライプ409が、表示電極107の方向へ突き出している。
このように、ブラックストライプ409の面積を大きくすることによってコントラストを向上させることができる。他方、ブラックストライプ409があまり大きいと、PDP101の内部に形成される放電セル126から十分にガスを除去できなくなる。それでは、放電ガスを全体に充填できず、PDP101の不良をもたらす。
そこで、ブラックストライプ409と、走査電極105または維持電極106との間隔は、一定以上、確保される必要がある。この間隔は、被覆部110を設けた場合に、ブラックストライプ409と、走査電極105または維持電極106との間に溝が確実に形成される距離である。望ましい当該間隔を決定するために、実験を行った。
図18は、実験装置の概要を示す。実験装置443は、前面ガラス基板104に相当するダミー基板444の上に、ブラックストライプ409に相当する第1膜445と、走査電極105または維持電極106に相当する第2膜446とを備える。ダミー基板444と第1膜445と第2膜446との上に、ダミー被膜部447が設けられる。第1膜445および第2膜446の厚さ448は、1〜5μmである。ダミー被膜部447の厚さ449は、約10〜30μmである。第1膜445および第2膜446の間隔450を変更した場合に、第1膜445および第2膜446の間に形成される溝の深さ451を接触式段差計によって計測した。
図19は、図18に示す実験装置443を使用して得られた実験結果を示す。横軸は、第1膜445と第2膜446との間隔を示す。縦軸は、第1膜445と第2膜446との間に設けられたダミー被覆部447に形成される溝の深さ451を示す。図19から分かるように、間隔450が20μm以下になると溝の深さ451が極端に減少する傾向がある。従って、間隔450は20μm以上であることが望ましい。
本実施の形態では、ブラックストライプ409は、ブラックストライプ409と走査電極105または維持電極106との間に溝が形成されるように、走査電極105または維持電極106から20μm以上の間隔をあけて設けられる。これによって、製造時のガスの除去に支障をきたすことなく、ブラックストライプ409によるコントラスト向上を図ることが可能になる。
なお、本実施の形態は、他の実施の形態においても適用することができ、その場合も、ブラックストライプによってコントラストを向上させながら、製造時に支障なくガスを除去することが可能になる。