JP5156377B2 - 光学活性エリスロ−β−アミノアルコールの製法 - Google Patents
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Description
〔1〕一般式(I):
で表されるα-アミノケトン化合物またはその塩のエナンチオマー混合物に対して、ノカルディア(Nocardia)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、クライシア(Kuraishia)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、スポリジオボラス(Sporidiobolus)属、ピチア(Pichia)属、キャンディダ(Candida)属に属する微生物群から選ばれる少なくとも一つの微生物の菌体、菌体処理物又は培養液を作用させ、
一般式(II)又は一般式(III):
で表される光学活性なエリスロ-β-アミノアルコール化合物を生成せしめることを特徴とする光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物の製造方法。
〔3〕一般式(I)で表されるα-アミノケトン化合物またはその塩のエナンチオマー混合物に対してスポリジオボラス(Sporidiobolus)属に属する微生物の菌体、菌体処理物又は培養液を作用させ、一般式(III)で表される光学活性なエリスロ-β-アミノアルコール化合物を生成せしめることを特徴とする上記〔1〕に記載の製造方法。
〔4〕一般式(I)で表されるα-アミノケトン化合物の不斉還元、ラセミ化同時進行反応により1R,2S-エリスロ-β-アミノアルコールを得ることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕に記載の製造方法。
〔5〕一般式(I)で表されるα-アミノケトン化合物の不斉還元、ラセミ化同時進行反応により1S,2R-エリスロ-β-アミノアルコールを得ることを特徴とする上記〔1〕又は〔3〕に記載の製造方法。
〔6〕微生物が、ノカルディア サルモニカラ アウランチアカ亜種(Nocardia salmonicolor subsp. aurantiaca)、ロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)、クライシア カプスラタ(Kuraishia capsulata)、ロドトルラ ミヌタ(Rhodotorula minuta)、スポリジオボラス ルイネニアエ(Sporidiobolus ruineniae)、ピチア カプスラタ(Pichia capsulata)、キャンディダ モリシアナ(Candida molischiana)、ロドコッカス ルバー(Rhodococcus ruber)、ロドコッカス ゾフィー(Rhodococcus zopfii)、ロドコッカス グロベルルス(Rhodococcus globerulus)、及びロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)から成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔5〕のいずれか一記載の製造方法。
〔7〕微生物が、ノカルディア サルモニカラ アウランチアカ亜種 IFO-14426 (Nocardia salmonicolor subsp. aurantiaca IFO-14426)、ロドコッカス エリスロポリス JCM-2893 (Rhodococcus erythropolis JCM-2893)、クライシア カプスラタ IFO-0974 (Kuraishia capsulata IFO-0974)、ロドトルラ ミヌタ IFO-0715 (Rhodotorula minuta IFO-0715)、スポリジオボラス ルイネニアエ IFO-1689 (Sporidiobolus ruineniae IFO-1689)、ピチア カプスラタ(Pichia capsulata NBRC-0721)、キャンディダ モリシアナ(Candida molischiana NBRC-10780)、ロドコッカス ルバー(Rhodococcus ruber NBRC-15591)、ロドコッカス ゾフィ―(Rhodococcus zopfii NBRC-100606)、ロドコッカス グロベルルス(Rhodococcus globerulus NBRC-14531)、ロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous MBRC-15564)、ロドコッカス sp. JCM-6198 (Rhodococcus sp. JCM-6198)、ロドコッカス sp. JCM-6199 (Rhodococcus sp. JCM-6199)、及びロドコッカス sp. NBRC-13165 (Rhodococcus sp. NBRC-13165)から成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔5〕のいずれか一記載の製造方法。
〔8〕一般式(II)又は(III)の光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物が、メタラミノール、スプリフェン又はメトキサミンであることを特徴とする上記〔1〕〜〔7〕のいずれか一記載の製造方法。
〔9〕上記〔1〕記載の製造方法により得られた一般式(II)又は(III)の光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物を、公知の方法で反応させジフェネチルアミン誘導体を得ることを特徴とするジフェネチルアミン誘導体の製法。
〔10〕公知の方法が、国際公開第99/05090号パンフレット(WO99/05090)、国際公開第99/31045号パンフレット(WO99/31045)、国際公開第00/02846号パンフレット(WO00/02846)、及び特開平10-152460公報から成る群から選ばれたものに開示の方法であることを特徴とする上記〔9〕記載の製法。
〔11〕上記〔1〕記載の製造方法により一般式(II)の光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物(式中X、n、R1、R2及びR3は上記と同義であり、*は不斉炭素を示す。)を製造し、次に得られた光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物(II)を、アルキル化剤で処理する工程を経由し、2-[4-[2-[[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ]エチル]フェノキシ]酢酸を得ることを特徴とする2-[4-[2-[[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ]エチル]フェノキシ]酢酸の製法。
〔12〕上記〔1〕記載の製造方法で得られた(1R,2S)-2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オールを用いた2-[4-[2-[[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ]エチル]フェノキシ]酢酸の製法。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
上記「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などである。上記「低級アルキル基」とは、炭素原子数1〜6個の直鎖状又は分岐鎖のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基などである。
上記「スルホニル基」とは、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、クロロメタンスルホニル基、クロロエタンスルホニル基、トリクロロメタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基、o-ニトロベンゼンスルホニル基、m-ニトロベンゼンスルホニル基、p-ニトロベンゼンスルホニル基、o-クロロベンゼンスルホニル基、m-クロロベンゼンスルホニル基、p-クロロベンゼンスルホニル基などである。
好ましくは、該保護基としては、水で処理して除去可能なもの、酸または弱塩基で除去可能なもの、水素添加にて除去可能なもの、ルイス酸触媒およびチオ尿素などで除去可能なものなどが挙げられる。さらに、好ましくは、ベンジル基、2,6-ジメチルベンジル基、4-メトキシベンジル基、2,6-ジクロロベンジル基、9-アントラニルメチル基、ジフェニルメチル基、フェネチル基、トリフェニルメチル基等のベンジル型保護基;ベンゾイル基、p-メチルベンゾイル基、p-クロロベンゾイル基、o-クロロベンゾイル基、p-ニトロベンゾイル基等のアロイル型保護基;メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、クロロメタンスルホニル基、クロロエタンスルホニル基、トリクロロメタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基、o-ニトロベンゼンスルホニル基、m-ニトロベンゼンスルホニル基、p-ニトロベンゼンスルホニル基、o-クロロベンゼンスルホニル基、m-クロロベンゼンスルホニル基、p-クロロベンゼンスルホニル基等のスルホニル型保護基などが挙げられる。保護基の導入および除去方法としては、それ自体公知またはそれに準じる方法(上記保護基を記載の文献参照)が用いられるが、除去方法としては、例えば酸、塩基、還元、紫外光、ヒドラジン、フェニルヒドラジン、N-メチルジチオカルバミン酸ナトリウム、テトラブチルアンモニウムフロリド、酢酸パラジウムなどで処理する方法が用いられる。
本発明で使用される微生物は、前記一般式(I)の化合物に作用して、対応する一般式(II)又は(III) で表される光学活性なエリスロ-β-アミノアルコールを生成する能力を有する微生物である限り、野生株、変異株、または細胞融合等の細胞工学的手法若しくはDNA クローニング、遺伝子操作等の遺伝子工学的手法により誘導される組換え株などのいずれの株も使用できる。本発明中、化合物(II)又は(III)の合成で使用される微生物としては、ノカルディア属、ロドコッカス属、クライシア属、ロドトルラ属、スポリジオボラス属、ピチア(Pichia)属、及びキャンディダ(Candida)属などが挙げられ、具体的には、ノカルディア サルモニカラ アウランチアカ亜種(Nocardia salmonicolor subsp. aurantiaca)、ロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)、クライシア カプスラタ(Kuraishia capsulata)、ロドトルラ ミヌタ(Rhodotorula minuta)、スポリジオボラス ルイネニアエ(Sporidiobolus ruineniae)、ピチア カプスラタ(Pichia capsulata)、キャンディダ モリシアナ(Candida molischiana)、ロドコッカス ルバー(Rhodococcus ruber)、ロドコッカス ゾフィー(Rhodococcus zopfii)、ロドコッカス グロベルルス(Rhodococcus globerulus)、ロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)などが挙げられる。
代表的な菌株としては、例えば、ノカルディア サルモニカラ アウランチアカ亜種 IFO-14426 (Nocardia salmonicolor subsp. aurantiaca IFO-14426)、ロドコッカス エリスロポリス JCM-2893 (Rhodococcus erythropolis JCM-2893)、クライシア カプスラタ IFO-0974(Kuraishia capsulata IFO-0974)、ロドトルラ ミヌタ IFO-0715(Rhodotorula minuta IFO-0715)、スポリジオボラス ルイネニアエ IFO-1689(Sporidiobolus ruineniae IFO-1689)、ピチア カプスラタ NBRC-0721(Pichia capsulata NBRC-0721)、キャンディダ モリシアナ NBRC-10780(Candida molischiana NBRC-10780)、ロドコッカス ルバー NBRC-15591(Rhodococcus ruber NBRC-15591)、ロドコッカス ゾフィー NBRC-100606(Rhodococcus zopfii NBRC-100606)、ロドコッカス グロベルルス NBRC-14531(Rhodococcus globerulus NBRC-14531)、ロドコッカス ロドクロウス NBRC-15564(Rhodococcus rhodochrous NBRC-15564)、ロドコッカス sp. JCM-6198(Rhodococcus sp. JCM-6198)、ロドコッカス sp. JCM-6199(Rhodococcus sp. JCM-6199)、ロドコッカス sp. NBRC-13165(Rhodococcus sp. NBRC-13165)などが挙げられる。当該微生物は、微生物カタログ、例えば、List of cultures - Microorganisms 11th edition 2000, p.233, p.62, p.94, p.126 (財団法人醗酵研究所); Catalogue of strains 8th edition 2002, p.169 (ISBN4-89114-024-0; Japan Collection of Microrganisms)などに記載がある。微生物の番号中IFOと記載されているものは、2000年当時、IFOの保存菌株であり、現在はNBRCに移管されており、微生物株はそこから入手可能で、微生物の番号中JCMと記載されているものは、JCMの保存菌株であり、微生物株はそこから入手可能である。このような微生物を用いることによって、前記一般式(II)又は(III)で表される光学活性β-アミノアルコールとしてエリスロ体、(1R,2S)-又は(1S,2R)-アミノアルコールが高収率かつ高選択的に簡易な工程で得られる。本発明にかかる微生物には、前記光学活性β-アミノアルコール化合物のうち(1R,2S)体を選択的に生産する(1R,2S)アミノアルコール生成菌および(1S,2R)体を選択的に生産する(1S,2R)アミノアルコール生成菌が含まれる。本発明によれば、エリスロ体を選択的に生成することができる。得られた(1R,2S)体はそれを反転させることにより対応する(1S,2S)体にすることができる。また、得られた(1S,2R)体はそれを反転させることにより対応する(1R,2R)体にすることができる。
本製造方法で得られる光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物を公知の方法で反応させ得られるジフェネチルアミン誘導体としては、具体的には、国際公開第99/05090号パンフレット(WO99/05090)、国際公開第99/31045号パンフレット(WO99/31045)、国際公開第00/02846号パンフレット(WO00/02846)、特開平10-152460公報などに記載の化合物が挙げられ、代表的には2-[4-[2-[[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ]エチル]フェノキシ]酢酸、N-[2-クロロ-4-[[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ]エチル]フェニル]アミノ酢酸、(1R,2S)-1-(4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-2-[[2-[4-(2-メトキシエトキシ)フェニル]エチル]アミノ]プロパン-1-オールなどが挙げられる。
本発明の光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物の製法は、既存の製法と比較して、次のような有利な点を持っている。
(1)光学活性な有機酸を利用してジオステレオマーを形成してそれを光学分割する方法ではラセミ回収が困難であり収率は低いが、本法では原料のラセミ化を伴いながら一種の光学活性体を生成するため収率的に有利である。
(2)光学活性なアミノ酸など(L-アラニンなど)の不斉源を用いる方法と比較すると工程が単純である。
(3)アルデヒド化合物を出発原料として醗酵法でアセチルカルビノール化合物を経由する方法と比較しても収率的に有利である。
(4)エリスロ体を簡便に製造できる。
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
実施例1〜36、45〜46で用いた基質の2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オン及び、実施例37で用いた基質の 2-メチルアミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オンは1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オンから、実施例38〜41で用いた基質の2-アミノ-1-(3-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オンは3-ヒドロキシベンズアルデヒドから、実施例42、43で用いた基質の2-アミノ-1-(2,5-ジメトキシフェニル)プロパン-1-オンは2-アミノ-1-(2,5-ジメトキシフェニル)プロパン-1-オールからそれぞれ一般的手法に基づき合成した。
一般的手法としては、国際公開第99/05090号パンフレット(WO99/05090)、国際公開第99/31045号パンフレット(WO99/31045)、国際公開第00/02846号パンフレット(WO00/02846)、特開平10-152460公報、インド特許173945(1970)、国際公開第01/73100号パンフレット(WO01/73100)、国際公開第02/38532号パンフレット(WO02/38532)、特開2003-327564公報、国際公開第03/104186号パンフレット(WO03/104186)、国際公開第2004/005251号パンフレット(WO2004/005251)に開示のものが挙げられる。
〔エリスロ-2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オールの生成〕
グルコース1%、ペプトン0.5%、酵母エキス0.3%を含む培地5mLを試験管に投入、121℃、20分滅菌した。冷却後ノカルディア サルモニカラ アウランチアカ亜種 (Nocardia salmonicolor subsp. aurantiaca) IFO-14426をスラントより一白金耳取り、植菌した。25℃、3日間好気的に振とう培養し、1000G、10分の遠心分離によって捕集した。水を加え750μLの懸濁液とした。
得られた菌体懸濁液に1Mリン酸ナトリウム緩衝液pH6.0を50μL、基質の2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オンを1mg、グルコース20mg、水を加え1mLとし混合後、30℃で振とう反応24時間した。
得られた反応液をHPLCにて分析し、エリスロ-2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オールの生成量(カラム=InertsilODS-3(ジーエルサイエンス社製、径4.6mm、長さ75mm)、溶離液5%アセトニトリル、0.1%TFA、流速1.0mL/min、検出UV220nm)、光学純度(カラム=ダイセル社製CROWNPAKCR―(径4mm、長さ150mm)、溶離液過塩素酸水溶液pH2、流速0.5mL/min、検出UV220nm)で分析した。
ノカルディア サルモニカラ アウランチアカ亜種 IFO-14426に代えて表1、2及び3に示す微生物を使用した以外は、上記と同様にしてエリスロ-2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オールを得た。その結果を表1、2及び3に示した。
〔エリスロ-2-メチルアミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オールの生成〕
以下の表4〜7に記載の培養条件は次のとおりである。
培養条件(1): グルコース1%、ペプトン0.5%、酵母エキス0.3%を含む培地100mL(pH7.0)に微生物を植菌し、25℃、振とう200rpmの条件で94時間培養した。
ロドトルラ ミヌタ(Rhodotorula minuta)IFO-0715株をグルコース1%、ペプトン0.5%、酵母エキス0.3%を含む培地100mL(pH7.0)で25℃、94時間振とう培養した。遠心分離によって菌体を得た。これに適量の水、1Mリン酸緩衝液(pH7.0)0.1mL、グルコース20mg、2-メチルアミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オンの塩酸塩1mgを加え混合し、その1mLを30℃、48時間振とう反応した。反応液を遠心分離し、上清をHPLC(Inertsil Ph-3ジーエルサイエンス社製、径4.6mm、長さ75mm、溶離液0.05Mリン酸二水素ナトリウム二水和物(アセトニトリル7%含有)、pH4.6、流速0.5mL/分、検出波長UV220nm)で分析した。その結果、エリスロ-2-メチルアミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オール塩酸塩0.03mg/mLの生成を確認した。生成物の光学純度を決定するため、サンプルをHPLC(住化分析社製カラムOA-4900、径4.6mm、長さ250mm、溶離液へキサン:1,2-ジクロロエタン:メタノール:トリフロロ酢酸=240:140:40:1、流速0.5mL/分、検出波長UV254nm)で分析した。その結果を表4に示す。生成物は(光学純度100%)であることが判明した。
〔エリスロ-2-アミノ-1-(3-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オールの生成〕
表5に示した微生物を用い、表5の培養条件に従い、実施例6と同様に2-アミノ-1-(3-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オンの反応を行い、エリスロ-2-アミノ-1-(3-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オールを得た。反応液を遠心分離し、上清をHPLC(Inertsil Ph-3ジーエルサイエンス社製、径4.6mm、長さ75mm、溶離液0.05Mリン酸二水素ナトリウム二水和物(アセトニトリル7%含有)、pH4.6、流速0.5mL/分、検出波長UV220nm)で分析した。更に生成物の光学純度を決定するため、サンプルをHPLC(ダイセル化学社製カラムCROWNPAK CR(-)、径4mm、長さ150mm、過塩素酸水溶液、pH2.0、流速0.5mL/分、検出波長UV220nm)で分析した。その結果を表5に示す。
〔エリスロ-2-アミノ-1-(2,5-ジメトキシフェニル)プロパン-1-オールの生成〕
表6に示した微生物を用い、表6の培養条件に従い、実施例6と同様に2-アミノ-1-(2,5-ジメトキシフェニル)プロパン-1-オンを反応させ、分析を行った。光学活性エリスロ-2-アミノ-1-(2,5-ジメトキシフェニル)プロパン-1-オールを得た。その結果を表6に示す。
〔2-〔4-〔2-〔〔(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル〕アミノ〕エチル〕フェノキシ〕酢酸の製造〕
実施例1〜4で得られた2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オールから国際公開第99/05090号パンフレット(WO99/05090)の実施例6に記載の方法で2-〔4-〔2-〔〔(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル〕アミノ〕エチル〕フェノキシ〕酢酸を製造できる。
具体的には、(1R,2S)-2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オールに2-[4-(2-ブロモエチル)フェノキシ]酢酸エチルを反応させ2-〔4-〔2-〔〔(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル〕アミノ〕エチル〕フェノキシ〕酢酸エチルを得、そのエタノール溶液に水酸化ナトリウム水溶液を反応させることにより、2-〔4-〔2-〔〔(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル〕アミノ〕エチル〕フェノキシ〕酢酸を得ることができる。
〔抽出酵素を用いた(1R,2S)-2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オールの生成〕
ノカルディア サルモニカラ アウランチアカ亜種(Nocardia salmonicolor subsp. aurantiaca) IFO-14426株をグルコース1%、ペプトン0.5%、酵母エキス0.3%を含む培地100mL(pH7.0)で25℃、93時間振とう培養した。遠心分離によって菌体を得た。これに0.3g湿重量/mLになるように20mMリン酸緩衝液(pH5.5)を加え、懸濁した後、氷中にて超音波処理(300μA、1分、5回)を行い、菌体を破砕した。更に遠心分離によって上清である抽出酵素液を得た。抽出酵素液 0.5mLに適量の水、1Mリン酸緩衝液(pH6.0) 0.05mL、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH) 5mg、2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オン1mgを加え混合し1mLとした。その1mLを30℃、48時間振とう反応した。反応液を遠心分離し、上清をHPLC(Inertsil ODS-3ジーエルサイエンス社製、径4.6mm、長さ75mm、溶離液 5%アセトニトリル、0.1% TFA含有水溶液、pH2.0、流速1.0mL/分、検出波長UV220nm)で分析した。その結果、2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オール0.02mg/mLの生成を確認した。生成物の光学純度を決定するため、サンプルをHPLC(ダイセル化学社製カラムCROWNPAK CR(-)、径4mm、長さ150mm、過塩素酸水溶液、pH2.0、流速0.5mL/分、検出波長UV220nm)で分析した。その結果、生成物は光学純度100%であることが判明した。
ノカルディア サルモニカラ アウランチアカ亜種IFO-14426株に代えて表7に示す微生物を使用した以外は、上記と同様にして(1R,2S)-2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オールを得た。その結果を表7に示した。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。
Claims (9)
- 一般式(I):
で表されるα-アミノケトン化合物またはその塩のエナンチオマー混合物に対して、ノカルディア(Nocardia)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、クライシア(Kuraishia)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、ピチア(Pichia)属、キャンディダ(Candida)属に属する微生物群から選ばれる少なくとも一つの微生物の菌体、菌体処理物又は培養液を作用させ、
一般式(II):
で表される光学活性なエリスロ-β-アミノアルコール化合物を生成せしめることを特徴とする光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物の製造方法。 - 請求項1に記載の一般式(I)(式中X、n、R 1 、R 2 、R 3 及び*は請求項1に記載の定義と同義である)で表されるα-アミノケトン化合物またはその塩のエナンチオマー混合物に対して、スポリジオボラス(Sporidiobolus)属に属する微生物の菌体、菌体処理物又は培養液を作用させ、
一般式(III):
で表される光学活性なエリスロ-β-アミノアルコール化合物を生成せしめることを特徴とする光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物の製造方法。 - 一般式(I)で表されるα-アミノケトン化合物の不斉還元、ラセミ化同時進行反応により1R,2S-エリスロ-β-アミノアルコールを得ることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 一般式(I)で表されるα-アミノケトン化合物の不斉還元、ラセミ化同時進行反応により1S,2R-エリスロ-β-アミノアルコールを得ることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
- 微生物が、ノカルディアサルモニカラアウランチアカ亜種(Nocardia salmonicolor subsp. aurantiaca)、ロドコッカスエリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)、クライシアカプスラタ(Kuraishia capsulata)、ロドトルラミヌタ(Rhodotorula minuta)、スポリジオボラスルイネニアエ(Sporidiobolus ruineniae)、ピチアカプスラタ(Pichia capsulata)、キャンディダモリシアナ(Candida molischiana)、ロドコッカスルバー(Rhodococcus ruber)、ロドコッカスゾフィー(Rhodococcus zopfii)、ロドコッカスグロベルルス(Rhodococcus globerulus)、及びロドコッカスロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)から成る群から選ばれたものであることを特徴とする請求項1又は3に記載の製造方法。
- 微生物が、ノカルディアサルモニカラアウランチアカ亜種 IFO-14426 (Nocardia salmonicolor subsp. aurantiaca IFO-14426)、クライシアカプスラタ IFO-0974 (Kuraishia capsulata IFO-0974)、ロドトルラミヌタ IFO-0715 (Rhodotorula minuta IFO-0715)、スポリジオボラスルイネニアエ IFO-1689 (Sporidiobolus ruineniae IFO-1689)、ピチアカプスラタ NBRC-0721(Pichia capsulata NBRC-0721)、キャンディダモリシアナNBRC-10780(Candida molischiana NBRC-10780)、ロドコッカスルバーNBRC-15591(Rhodococcus ruber NBRC-15591)、ロドコッカスゾフィー NBRC-100606(Rhodococcus zopfii NBRC-100606)、ロドコッカスグロベルルス NBRC-14531(Rhodococcus globerulus NBRC-14531)、ロドコッカスロドクロウス NBRC-15564(Rhodococcus rhodochrous NBRC-15564)、ロドコッカス sp. JCM-6198(Rhodococcus sp. JCM-6198)、ロドコッカス sp. JCM-6199(Rhodococcus sp. JCM-6199)、及びロドコッカス sp. NBRC-13165(Rhodococcus sp. NBRC-13165)から成る群から選ばれたものであることを特徴とする請求項1、3又は5のいずれか1項に記載の製造方法。
- 請求項1に記載の一般式(I)(式中X、n、R 1 、R 2 、R 3 及び*は請求項1に記載の定義と同義である)で表されるα-アミノケトン化合物またはその塩のエナンチオマー混合物に対して、ノカルディア(Nocardia)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、クライシア(Kuraishia)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、ピチア(Pichia)属、キャンディダ(Candida)属に属する微生物群から選ばれる少なくとも一つの微生物の菌体、菌体処理物又は培養液を作用させ、一般式(II):(式中X、n、R 1 、R 2 、R 3 及び*は上記一般式(I)における定義と同義である。)で表される光学活性なエリスロ-β-アミノアルコール化合物を生成せしめ、得られた光学活性なエリスロ-β-アミノアルコール化合物をジフェネチルアミン誘導体に変換することを特徴とするジフェネチルアミン誘導体の製造方法。
- α-アミノケトン化合物が2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オンであり、光学活性なエリスロ-β-アミノアルコール化合物が(1R,2S)-2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オールであり、ジフェネチルアミン誘導体が2-[4-[2-[[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ]エチル]フェノキシ]酢酸である請求項7に記載の製造方法。
- 請求項1に記載の一般式(I)(式中X、n、R 1 、R 2 、R 3 及び*は請求項1に記載の定義と同義である)で表されるα-アミノケトン化合物またはその塩のエナンチオマー混合物に対して、スポリジオボラス(Sporidiobolus)属に属する微生物の菌体、菌体処理物又は培養液を作用させ、一般式(III):(式中X、n、R 1 、R 2 、R 3 及び*は上記一般式(I)における定義と同義である。)で表される光学活性なエリスロ-β-アミノアルコール化合物を生成せしめ、得られた光学活性なエリスロ-β-アミノアルコール化合物をジフェネチルアミン誘導体に変換することを特徴とするジフェネチルアミン誘導体の製造方法。
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