JP5156377B2 - 光学活性エリスロ−β−アミノアルコールの製法 - Google Patents

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Description

本発明は、医薬品もしくは医薬品中間体として利用価値の高い光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物の合成法に関するものである。
β-アミノアルコール類はその分子中に不斉炭素を少なくとも2個隣接して有している構造を持つことから、例えば、エリスロ体及びスレオ体といった立体配置の異なる光学活性なβ-アミノアルコール化合物が存在する。β-アミノアルコール類は有用な医薬品の製造中間体として広範に利用されているが、医薬品では、その一方の立体配置のものを選択的に使用することが不可欠である。特に、エリスロ体の光学活性β-アミノアルコール化合物、例えば、(1R,2S)-エリスロ-2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オールなどのエリスロ-β-アミノアルコール化合物は、医薬品の製造中間体として注目されており、例えば、肥満症、高血糖症、腸管運動亢進に起因する疾患の予防又は治療剤として有用な2-アミノプロパノール誘導体〔特許文献7〕、アドレナリン受容体刺激作用を有して医薬として有用なアミノエチルフェノキシ酢酸誘導体〔特許文献8〕やフェノキシ酢酸誘導体〔特許文献9〕などの製造上有用である。
そこで、これらの有用な光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物を、容易に入手可能であり且つ安価な原料を出発物質として用いて、光学純度良く、安価に、安定的に、そして簡単な工程で且つ効率的に製造することが必要となっている。光学活性β-アミノアルコール誘導体の製造のための従来の技術においては、工業的に困難であるか、または非常にコストの高い方法しか知られておらず、より安価で、より簡便な新規製造法が強く望まれている。従来、所望の光学活性を有するβ-アミノアルコールの製造方法としては、ラセミ体のβ-アミノアルコールを得た後、光学分割あるいは不斉合成等によって特定の光学活性体を製造する方法などが用いられていた。しかし、ラセミ体のβ-アミノアルコールは、その分子内に2個の不斉炭素を有するため、特定の光学活性体を得るためには煩雑な工程を経なければならなかった。
特に、光学活性エリスロ-β-アミノアルコール誘導体の製造に関連している従来技術としては、(1)L-アラニンを不斉源とする製法〔特許文献1〕、(2)L-アラニンからヒドロキシオキサゾリジンを経て光学活性アミノアルコールを得る方法〔特許文献2〕、(3)(R)-フェネチルアミンを利用してアミノ基導入し、光学分割後、脱離する製法〔特許文献3〕、及び(4)p-ヒドロキシベンズアルデヒドより発酵により光学活性p-ヒドロキシフェニルアセチルカルビノールを得、還元的アミノ化により、2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オールを得る方法〔特許文献4及び5〕があるが、いずれも満足できるようなものではない。例えば、上記(1)の手法では、L-アラニンから、フタルイミド化、フリーデルクラフト反応を経ているので原料費も大きく、収率も低いと考えられる。また工程が多く、操作も煩雑である。上記(2)の手法では、L-アラニンのベンジルオキシ化、オキサゾリジノン化、グリニヤ反応、還元反応など工程が多く、原料費も大きく、収率も低く、さらにその操作も煩雑である。上記(3)の手法では、光学分割の収率が43%程度と低く、光学分割に多大な手間がかかり、煩雑である。上記(4)の手法では、発酵の収率、濃度も低いと考えられ、その還元的アミノ化の選択性も低く、工程も多いので、その操作も煩雑であるし、コストがかかるものとなる。
α-アミノケトン化合物またはその塩のエナンチオマー混合物から所望の光学活性を有するβ-アミノアルコール類を醗酵法で製造する技術〔特許文献6〕もあり、それは極めて優れた方法である。該技術はスレオ体を選択的に製造できるが、エリスロ体を得るためには、化合物の立体配置の反転工程が不可欠であり、工程が多くなり、その処理操作も煩雑となり、コストがかかるものとなる。
国際公開第2004/005251号パンフレット(WO2004/005251) 国際公開第02/38532号パンフレット(WO02/38532) 国際公開第03/104186号パンフレット(WO03/104186) 特開2003-327564 インド特許173945(1970) 国際公開第01/73100号パンフレット(WO01/73100) 特開2001-114736 国際公開第99/05090号パンフレット(WO99/05090) 国際公開第00/02846号パンフレット(WO00/02846)
有用な光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物を、容易に入手可能であり且つ安価な原料を出発物質として用いて、光学純度良く、安価に、安定的に、そして簡単な工程で且つ効率的に製造することが必要となっている。本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、α-アミノケトン化合物またはその塩のエナンチオマー混合物からジアステレオマー副生成物の生成を十分に防止しつつ、所望の光学活性を有するエリスロ-β-アミノアルコールを高収率かつ高選択的に簡易な工程で製造することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の微生物を用いることにより、α-アミノケトン化合物またはその塩のエナンチオマー混合物の一方の鏡像異性体のみを還元し、対応するβ-アミノアルコールの4種の異性体のうち、所望の種のみを高選択的かつ高収率で製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明では、次なる態様を提供している。
〔1〕一般式(I):
(式中Xは、同一または異なっていてもよく、ハロゲン原子、低級アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、ニトロ基およびスルホニル基からなる群より選ばれる少なくとも一種を示し、nは0〜3の整数を示し、R1は低級アルキル基を示し、R2及びR3は同一または異なっていてもよく、水素原子および低級アルキル基からなる群より選ばれる少なくとも一種を示し、*は不斉炭素を示す。)
で表されるα-アミノケトン化合物またはその塩のエナンチオマー混合物に対して、ノカルディア(Nocardia)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、クライシア(Kuraishia)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、スポリジオボラス(Sporidiobolus)属、ピチア(Pichia)属、キャンディダ(Candida)属に属する微生物群から選ばれる少なくとも一つの微生物の菌体、菌体処理物又は培養液を作用させ、
一般式(II)又は一般式(III):
(式中X、n、R1、R2及びR3は上記と同義であり、*は不斉炭素を示す。)
で表される光学活性なエリスロ-β-アミノアルコール化合物を生成せしめることを特徴とする光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物の製造方法。
〔2〕一般式(I)で表されるα-アミノケトン化合物またはその塩のエナンチオマー混合物に対して、ノカルディア(Nocardia)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、クライシア(Kuraishia)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、ピチア(Pichia)属、キャンディダ(Candida)属に属する微生物群から選ばれる少なくとも一つの微生物の菌体、菌体処理物又は培養液を作用させ、一般式(II)で表される光学活性なエリスロ-β-アミノアルコール化合物を生成せしめることを特徴とする上記〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕一般式(I)で表されるα-アミノケトン化合物またはその塩のエナンチオマー混合物に対してスポリジオボラス(Sporidiobolus)属に属する微生物の菌体、菌体処理物又は培養液を作用させ、一般式(III)で表される光学活性なエリスロ-β-アミノアルコール化合物を生成せしめることを特徴とする上記〔1〕に記載の製造方法。
〔4〕一般式(I)で表されるα-アミノケトン化合物の不斉還元、ラセミ化同時進行反応により1R,2S-エリスロ-β-アミノアルコールを得ることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕に記載の製造方法。
〔5〕一般式(I)で表されるα-アミノケトン化合物の不斉還元、ラセミ化同時進行反応により1S,2R-エリスロ-β-アミノアルコールを得ることを特徴とする上記〔1〕又は〔3〕に記載の製造方法。
〔6〕微生物が、ノカルディア サルモニカラ アウランチアカ亜種(Nocardia salmonicolor subsp. aurantiaca)、ロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)、クライシア カプスラタ(Kuraishia capsulata)、ロドトルラ ミヌタ(Rhodotorula minuta)、スポリジオボラス ルイネニアエ(Sporidiobolus ruineniae)、ピチア カプスラタ(Pichia capsulata)、キャンディダ モリシアナ(Candida molischiana)、ロドコッカス ルバー(Rhodococcus ruber)、ロドコッカス ゾフィー(Rhodococcus zopfii)、ロドコッカス グロベルルス(Rhodococcus globerulus)、及びロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)から成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔5〕のいずれか一記載の製造方法。
〔7〕微生物が、ノカルディア サルモニカラ アウランチアカ亜種 IFO-14426 (Nocardia salmonicolor subsp. aurantiaca IFO-14426)、ロドコッカス エリスロポリス JCM-2893 (Rhodococcus erythropolis JCM-2893)、クライシア カプスラタ IFO-0974 (Kuraishia capsulata IFO-0974)、ロドトルラ ミヌタ IFO-0715 (Rhodotorula minuta IFO-0715)、スポリジオボラス ルイネニアエ IFO-1689 (Sporidiobolus ruineniae IFO-1689)、ピチア カプスラタ(Pichia capsulata NBRC-0721)、キャンディダ モリシアナ(Candida molischiana NBRC-10780)、ロドコッカス ルバー(Rhodococcus ruber NBRC-15591)、ロドコッカス ゾフィ―(Rhodococcus zopfii NBRC-100606)、ロドコッカス グロベルルス(Rhodococcus globerulus NBRC-14531)、ロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous MBRC-15564)、ロドコッカス sp. JCM-6198 (Rhodococcus sp. JCM-6198)、ロドコッカス sp. JCM-6199 (Rhodococcus sp. JCM-6199)、及びロドコッカス sp. NBRC-13165 (Rhodococcus sp. NBRC-13165)から成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔5〕のいずれか一記載の製造方法。
〔8〕一般式(II)又は(III)の光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物が、メタラミノール、スプリフェン又はメトキサミンであることを特徴とする上記〔1〕〜〔7〕のいずれか一記載の製造方法。
〔9〕上記〔1〕記載の製造方法により得られた一般式(II)又は(III)の光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物を、公知の方法で反応させジフェネチルアミン誘導体を得ることを特徴とするジフェネチルアミン誘導体の製法。
〔10〕公知の方法が、国際公開第99/05090号パンフレット(WO99/05090)、国際公開第99/31045号パンフレット(WO99/31045)、国際公開第00/02846号パンフレット(WO00/02846)、及び特開平10-152460公報から成る群から選ばれたものに開示の方法であることを特徴とする上記〔9〕記載の製法。
〔11〕上記〔1〕記載の製造方法により一般式(II)の光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物(式中X、n、R1、R2及びR3は上記と同義であり、*は不斉炭素を示す。)を製造し、次に得られた光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物(II)を、アルキル化剤で処理する工程を経由し、2-[4-[2-[[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ]エチル]フェノキシ]酢酸を得ることを特徴とする2-[4-[2-[[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ]エチル]フェノキシ]酢酸の製法。
〔12〕上記〔1〕記載の製造方法で得られた(1R,2S)-2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オールを用いた2-[4-[2-[[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ]エチル]フェノキシ]酢酸の製法。
本発明の方法により、有用な光学活性医薬品製造中間体が高い光学純度で、かつ簡便に製造される。本発明の方法は、化学的な方法により還元を行う場合と異なり、高価な不斉触媒や特別な装置を必要とせず、容易に所望の光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物を製造することができるという利点がある。しかも、得られる光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物の化学的及び光学的収率が高いという利点がある。本発明の方法は、光学活性医薬、例えば、2-[4-[2-[[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ]エチル]フェノキシ]酢酸製造における重要な光学活性製造中間体(1R,2S)-2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オール及びその類縁体を簡単且つ効率良く製造するに有用である。また、安価に入手可能な出発原料を用いるばかりでなく、処理・操作が簡単で、副生物の生成が少なく、高い化学的、高い光学純度及び光学的収率でもって、光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物を製造することが可能で、工業的な製法として優れている。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
本発明は上記一般式(I)(式中、Xは、同一または異なっていてもよく、ハロゲン原子、低級アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、ニトロ基およびスルホニル基からなる群より選ばれる少なくとも一種を示し、nは0〜3の整数を示し、R1は低級アルキル基を示し、R2及びR3は同一または異なっていてもよく、水素原子および低級アルキル基からなる群より選ばれる少なくとも一種を示し、*は不斉炭素を示す。)で表されるα-アミノケトン化合物またはその塩のエナンチオマー混合物に対して、ノカルディア(Nocardia)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、クライシア(Kuraishia)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、スポリジオボラス(Sporidiobolus)属、ピチア(Pichia)属、及びキャンディダ(Candida)属に属する微生物から成る群から選ばれる少なくとも一つの微生物の菌体、菌体処理物又は培養液を作用させ、上記一般式(II)又は(III)(式中X、n、R1、R2及びR3は、上記と同様の意味を有し、*は不斉炭素を示す。)で表される光学活性なエリスロ-β-アミノアルコール化合物を生成せしめることを特徴とする光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物の製造方法に関する。
上記「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などである。上記「低級アルキル基」とは、炭素原子数1〜6個の直鎖状又は分岐鎖のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基などである。
上記「スルホニル基」とは、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、クロロメタンスルホニル基、クロロエタンスルホニル基、トリクロロメタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基、o-ニトロベンゼンスルホニル基、m-ニトロベンゼンスルホニル基、p-ニトロベンゼンスルホニル基、o-クロロベンゼンスルホニル基、m-クロロベンゼンスルホニル基、p-クロロベンゼンスルホニル基などである。
「保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基」におけるヒドロキシル基の保護基としては、例えば、Protective Groups in Organic Chemistry (J. F. W. McOmie et al., Plenum Press; Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Edition (Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts, John Wiley & Sons, Inc. (ISBN: 0-471-16019-9), April 1999)に記載の保護基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基、メトキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、メチルチオメチル基、フェニルチオメチル基、テトラヒドロピラニル基、p-ブロモフェナシル基、アリル基、シクロヘキシル基等のエーテル型保護基;ベンジル基、2,6-ジメチルベンジル基、4-メトキシベンジル基、2,6-ジクロロベンジル基、9-アントラニルメチル基、ジフェニルメチル基、フェネチル基、トリフェニルメチル基等のベンジル型保護基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基等のシリル型保護基;アセチル基、クロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、ピバロイル基等のアシル型保護基;ベンゾイル基、p-メチルベンゾイル基、p-クロロベンゾイル基、o-クロロベンゾイル基、p-ニトロベンゾイル基等のアロイル型保護基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、p-メチルベンジルオキシカルボニル基等のカーボネート型保護基;ジメチルホスフィニル基、ジエチルホスフィニル基等のホスフィネート型保護基;メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、クロロメタンスルホニル基、クロロエタンスルホニル基、トリクロロメタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基、o-ニトロベンゼンスルホニル基、m-ニトロベンゼンスルホニル基、p-ニトロベンゼンスルホニル基、o-クロロベンゼンスルホニル基、m-クロロベンゼンスルホニル基、p-クロロベンゼンスルホニル基等のスルホニル型保護基などが挙げられる。
好ましくは、該保護基としては、水で処理して除去可能なもの、酸または弱塩基で除去可能なもの、水素添加にて除去可能なもの、ルイス酸触媒およびチオ尿素などで除去可能なものなどが挙げられる。さらに、好ましくは、ベンジル基、2,6-ジメチルベンジル基、4-メトキシベンジル基、2,6-ジクロロベンジル基、9-アントラニルメチル基、ジフェニルメチル基、フェネチル基、トリフェニルメチル基等のベンジル型保護基;ベンゾイル基、p-メチルベンゾイル基、p-クロロベンゾイル基、o-クロロベンゾイル基、p-ニトロベンゾイル基等のアロイル型保護基;メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、クロロメタンスルホニル基、クロロエタンスルホニル基、トリクロロメタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基、o-ニトロベンゼンスルホニル基、m-ニトロベンゼンスルホニル基、p-ニトロベンゼンスルホニル基、o-クロロベンゼンスルホニル基、m-クロロベンゼンスルホニル基、p-クロロベンゼンスルホニル基等のスルホニル型保護基などが挙げられる。保護基の導入および除去方法としては、それ自体公知またはそれに準じる方法(上記保護基を記載の文献参照)が用いられるが、除去方法としては、例えば酸、塩基、還元、紫外光、ヒドラジン、フェニルヒドラジン、N-メチルジチオカルバミン酸ナトリウム、テトラブチルアンモニウムフロリド、酢酸パラジウムなどで処理する方法が用いられる。
本発明では、微生物の菌体又はその微生物培養物を使用する場合、エネルギー源の存在下に処理を行うことができる。
本発明で使用される微生物は、前記一般式(I)の化合物に作用して、対応する一般式(II)又は(III) で表される光学活性なエリスロ-β-アミノアルコールを生成する能力を有する微生物である限り、野生株、変異株、または細胞融合等の細胞工学的手法若しくはDNA クローニング、遺伝子操作等の遺伝子工学的手法により誘導される組換え株などのいずれの株も使用できる。本発明中、化合物(II)又は(III)の合成で使用される微生物としては、ノカルディア属、ロドコッカス属、クライシア属、ロドトルラ属、スポリジオボラス属、ピチア(Pichia)属、及びキャンディダ(Candida)属などが挙げられ、具体的には、ノカルディア サルモニカラ アウランチアカ亜種(Nocardia salmonicolor subsp. aurantiaca)、ロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)、クライシア カプスラタ(Kuraishia capsulata)、ロドトルラ ミヌタ(Rhodotorula minuta)、スポリジオボラス ルイネニアエ(Sporidiobolus ruineniae)、ピチア カプスラタ(Pichia capsulata)、キャンディダ モリシアナ(Candida molischiana)、ロドコッカス ルバー(Rhodococcus ruber)、ロドコッカス ゾフィー(Rhodococcus zopfii)、ロドコッカス グロベルルス(Rhodococcus globerulus)、ロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)などが挙げられる。
本発明で使用できる微生物は種々の微生物保存機関より入手することができ、例えば、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, International Patent Organism Depositary: IPOD) (旧名称:経済産業省産業技術総合研究所生命工学工業技術研究所(NIBH))、東京大学分子細胞生物学研究所(Institute of Molecular and Cellular Biosciences (IMCB), The University of Tokyo: IAM) (旧名称:東京大学応用微生物研究所)、広島大学工学部(HUT)、大阪大学大学院工学研究科応用微生物専攻: OUT)(旧名称:大阪大学工学部)、あるいは独立行政法人製品評価技術基盤機構生物遺伝資源部門(National Institute of Technology and Evaluation, Biological Resource Center: NBRC)、同特許生物寄託センター(NPMD: NITE Patent Microorganisms Depository) (旧名称:同生物遺伝資源センター、郵便番号292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)(従来財団法人醗酵研究所(IFO: 2000年当時、郵便番号532-8686 大阪市淀川区十三本町2丁目17-85)保管の微生物などの生物資源を移転して承継、なお、IFO番号はNBRC番号と同一)、独立行政法人 理化学研究所(RIKEN: JCM) (旧名称:同バイオリソースセンター 微生物材料開発室)(郵便番号351-0198 埼玉県和光市広沢2-1)、米国のアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)等から、これらの属の適当な菌を入手することができ、実施例を参考に通常の試験により容易にその効果を確かめることができる。
代表的な菌株としては、例えば、ノカルディア サルモニカラ アウランチアカ亜種 IFO-14426 (Nocardia salmonicolor subsp. aurantiaca IFO-14426)、ロドコッカス エリスロポリス JCM-2893 (Rhodococcus erythropolis JCM-2893)、クライシア カプスラタ IFO-0974(Kuraishia capsulata IFO-0974)、ロドトルラ ミヌタ IFO-0715(Rhodotorula minuta IFO-0715)、スポリジオボラス ルイネニアエ IFO-1689(Sporidiobolus ruineniae IFO-1689)、ピチア カプスラタ NBRC-0721(Pichia capsulata NBRC-0721)、キャンディダ モリシアナ NBRC-10780(Candida molischiana NBRC-10780)、ロドコッカス ルバー NBRC-15591(Rhodococcus ruber NBRC-15591)、ロドコッカス ゾフィー NBRC-100606(Rhodococcus zopfii NBRC-100606)、ロドコッカス グロベルルス NBRC-14531(Rhodococcus globerulus NBRC-14531)、ロドコッカス ロドクロウス NBRC-15564(Rhodococcus rhodochrous NBRC-15564)、ロドコッカス sp. JCM-6198(Rhodococcus sp. JCM-6198)、ロドコッカス sp. JCM-6199(Rhodococcus sp. JCM-6199)、ロドコッカス sp. NBRC-13165(Rhodococcus sp. NBRC-13165)などが挙げられる。当該微生物は、微生物カタログ、例えば、List of cultures - Microorganisms 11th edition 2000, p.233, p.62, p.94, p.126 (財団法人醗酵研究所); Catalogue of strains 8th edition 2002, p.169 (ISBN4-89114-024-0; Japan Collection of Microrganisms)などに記載がある。微生物の番号中IFOと記載されているものは、2000年当時、IFOの保存菌株であり、現在はNBRCに移管されており、微生物株はそこから入手可能で、微生物の番号中JCMと記載されているものは、JCMの保存菌株であり、微生物株はそこから入手可能である。このような微生物を用いることによって、前記一般式(II)又は(III)で表される光学活性β-アミノアルコールとしてエリスロ体、(1R,2S)-又は(1S,2R)-アミノアルコールが高収率かつ高選択的に簡易な工程で得られる。本発明にかかる微生物には、前記光学活性β-アミノアルコール化合物のうち(1R,2S)体を選択的に生産する(1R,2S)アミノアルコール生成菌および(1S,2R)体を選択的に生産する(1S,2R)アミノアルコール生成菌が含まれる。本発明によれば、エリスロ体を選択的に生成することができる。得られた(1R,2S)体はそれを反転させることにより対応する(1S,2S)体にすることができる。また、得られた(1S,2R)体はそれを反転させることにより対応する(1R,2R)体にすることができる。
菌体としては、上記微生物を培養液より収穫したものあるいは培養液より集菌洗浄したもの、乾燥又はアセトンパウダー処理したもの等を挙げることができる。菌体は、そのままか、或いは固定化した形で使用することができる。固定化は、当業者に周知の方法(例えば、架橋法、物理的吸着法、包括法等)で行い得る。固定化担体としては、一般に用いられているものであれば何れでもよく、例えば、セルロース、アガロース、デキストラン、κ−カラギナン、アルギン酸、ゼラチン、酢酸セルロース等の多糖類;例えばグルテン等の天然高分子;例えば活性炭、ガラス、白土、カオリナイト、アルミナ、シリカゲル、ベントナイト、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウム等の無機物;ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリプロピレングリコール、ウレタン等の合成高分子などが挙げられる。また、菌体は、マイクロカプセルに封入した形で使用することもでき、当該分野で知られた方法から適宜選択して使用できる。
培養物としては、上記微生物を適当な培地で培養したものを挙げることができる。前記微生物の処理物及び抽出物としては、菌体又は培養物を、必要に応じて、緩衝液に懸濁させ、得られた懸濁液を自己消化して得たもの、あるいはフレンチプレス、超音波、ホモジナイザー等の物理的方法、更にはリゾチーム等の酵素的方法を組み合わせて破砕するなどして得られた菌体破砕物を指してもよいし、そうして得られた生成物から、水もしくは適当な緩衝液で抽出したもの、該抽出液に硫安もしくはアルコールを加えることにより得られる沈殿物及び該抽出液を限外濾過、ゲル濾過、疎水クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー等を用いて分画したものを挙げることができる。また、該微生物の処理物及び抽出物としては、菌体又は培養物を、必要に応じて、熱処理したものあるいは該熱処理物に上記の処理を施したものなどであってもよい。該熱処理は、当該分野で知られた方法で行うことができ、具体的な条件については目的にあわせて実験などにより適宜それを決定することができる。熱処理の温度としては、約37℃以上の温度が挙げられるが、例えば約40〜70℃、好ましくは約45〜60℃である。熱処理の時間としては、処理温度にもよるが、例えば、約5分間〜約24時間、好ましくは約30分間〜10時間、より好ましくは約1〜5時間である、代表的な熱処理は、例えば約45℃、約50℃あるいは約55℃で約2〜4時間処理するものであるが、好ましくは約45〜55℃で約3時間程度処理するものである。熱処理されたものを使用することにより、選択性、転換率などを含めて良好な結果を得ることもできる。
前記微生物の培養方法における諸条件は、特に制限はなく、通常用いられる方法で行われ、細菌、真菌、酵母それぞれに適した培地で行われる。通常、炭素源、窒素源、その他の栄養素を含む液体培地が使用される。培地の炭素源としては、上記微生物が利用可能であればいずれのものも使用できる。具体的には、資化性のものが挙げられ、例えば、グルコース、フルクトース、シュクロース、デキストリン、デンプン、ソルビトールなどの糖類、メタノール、エタノール、グリセロールなどのアルコール類、フマル酸、クエン酸、酢酸、プロピオン酸などの有機酸類及びその塩類、パラフィンなどの炭化水素類、糖蜜、あるいはこれらの混合物などが使用できる。窒素源としては、上記微生物が利用可能であればいずれのものも使用できる。具体的には、資化性のものが挙げられ、例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなどの無機酸のアンモニウム塩、フマル酸アンモニウム、クエン酸アンモニウムなどの有機酸のアンモニウム塩、硝酸ナトリウム、硝酸カリウムなどの硝酸塩、肉エキス、酵母エキス、麦芽エキス、ペプトン、コーンスティープリカー、大豆タンパク加水分解物などの無機または有機含窒素化合物、あるいはこれらの混合物などが使用できる。また、培地には、リン酸カリウム、硫酸鉄、硫酸亜鉛、硫酸マンガン等の無機塩、微量金属塩、ビタミン類などの通常の培養に用いられる栄養源を適宜添加してもよい。また、必要に応じて、培地には、微生物の活性を誘導する物質、培地のpH保持に有効な緩衝物質、消泡剤、さらにはシリコン、アデカノール、プルロニックなどを添加してもよい。
微生物の培養は、生育に適した条件下で行うことができる。具体的には、培地のpH3〜10、好ましくは4〜9、温度0〜50℃、好ましくは20〜40℃で行うことができる。微生物の培養は、好気的または嫌気的条件下で行うことができる。培養時間は、1〜300 時間、より好ましくは10〜300 時間であるが、それぞれの微生物により適宜決められるべきである。本発明に係る光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物(II)又は(III)の製造における反応方法としては、前記一般式(I)で表されるα-アミノケトン化合物またはその塩のエナンチオマー混合物に前記微生物、あるいはその培養物、それらの処理物並びに抽出物から成る群から選ばれたものが作用して、対応する一般式(II)又は(III)で表される光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物を生成する方法であれば特に限定されず、原料化合物の水溶液に、緩衝液または水などで洗浄した菌体、あるいは該微生物培養物、それらの処理物並びに抽出物から成る群から選ばれたものを混合することで反応を開始する。反応は、通常、水中、或いは水に実質的に不溶性ないし難溶解性の有機溶媒と水との液体二相系で行うことができるが、一般的には水性系で行うことが好ましい。また、前記一般式(I) に示されるα-アミノケトン化合物またはその塩のエナンチオマー混合物は、必要に応じて、適当な有機溶媒、例えばエタノール、メタノール、ジオキサン、ジメチルスルホキシド等に溶解した後に、該溶解液を水性溶液にして用いることもできる。
また、反応条件は、一般式(II)又は(III)で表される光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物の生成を損なわない範囲で選択できる。代表的には、菌体量は、乾燥菌体として式(I)の化合物に対して、好ましくは100分の1〜1000倍、より好ましくは10分の1〜100倍である。また、基質である式(I)の化合物の濃度は、好ましくは0.01〜20%、より好ましくは0.1〜10% である。さらに、反応液のpHは、好ましくは5〜9、より好ましくは6〜8であり、反応温度は好ましくは10〜50℃、より好ましくは20〜40℃である。pHを安定させるために緩衝液を使用することもできる。さらに、pHを調節するために、酸、塩基を使用して調節することもできる。また、反応時間は、1〜200時間、好ましくは5〜150時間であるが、それぞれの微生物により適宜決められるべきである。
また、反応をより効率的に進行させるために、グルコースなどの糖類、酢酸などの有機酸、エタノール、グリセロールなどのエネルギー物質を添加することができる。これらは、各々単独で用いてもよく、それらの混合物の形態で用いてもよい。添加量は、基質に対して好ましくは100分の1〜10倍量である。また、補酵素等を添加することもできる。補酵素としては、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド (NAD)、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド (NADH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸 (NADP)、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸 (NADPH)などが挙げられ、それらは各々単独で用いてもよく、それらの混合物の形態で用いてもよく、その添加量は、基質化合物に対して、好ましくは1000分の1〜5分の1倍量である。また、これらの補酵素に加えて、補酵素再生酵素、例えば、グルコースデヒドロゲナーゼなどを添加することができ、添加量は、基質化合物に対して、好ましくは1000分の1〜5分の1倍量である。また、補酵素再生酵素の基質、例えばグルコースを添加することもでき、その添加量は、基質化合物に対して、好ましくは100分の1〜10倍量である。さらに、グルコースなどの糖類、酢酸などの有機酸、グリセロールなどのエネルギー物質、補酵素、補酵素再生酵素および補酵素再生酵素の基質をそれぞれ組み合わせて用いてもよい。これらは、本来、菌体中に蓄積されているが、必要に応じてこれら物質を添加することにより、反応速度、収率等を上昇させることができる場合があり、適宜選択され得る。
場合によっては、さらに、反応液が上記になるように特定の塩を加え、その条件下で反応させると、未反応のα-アミノケトン異性体のラセミ化が促進され、微生物の基質となる鏡像異性体への変換をより効率的に進行させることができる。これにより、原料から50%以上の高収率で目的のアミノアルコールが得られる傾向にある。未反応のα-アミノケトンのラセミ化を促進する塩としては、酢酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、リン酸塩、炭酸塩、パラニトロフェノール塩、亜硫酸塩およびホウ酸塩などの弱酸の塩であればよいが、好ましくはリン酸塩(例えば、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素アンモニウム)、炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム)、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸アンモニウム)などが使用される。また、これらの混合物も使用でき、pH6.0〜8.0の緩衝液として、最終濃度が0.01〜1Mとなるよう添加することが望ましい。例えば、リン酸塩の場合、リン酸二水素ナトリウム及びリン酸−水素ナトリウムを、9対1から5対95の割合で混合するとよい。
必要に応じて反応系内には、基質、微生物の菌体、その培養物、それらの処理物並びに抽出物から成る群から選ばれたもの、さらにはその他のものを、逐次添加したり、連続的に添加することも可能である。生成物を連続的に取り出しながら反応を行うことにより、反応速度を高めることなどもできる。反応によって生成した光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物(II)又は(III)は、慣用の分離精製手段によって単離精製できる。例えば、反応液から直接または菌体を分離した後、膜分離、有機溶媒(例えば、トルエン、クロロホルムなど)による抽出、カラムクロマトグラフィー、減圧濃縮、蒸溜、晶析、再結晶などの通常の精製方法に供することができる。例えば、反応終了後、酢酸ブチル、酢酸エチル、トルエン、クロロホルム等の有機溶媒で反応液から生成物を抽出し、溶媒を留去することにより粗生成物を得ることができる。該粗生成物は、それをそのまま次の工程に使用してもよいが、必要によりシリカゲルカラムクロマトグラフィー等の手段により精製した後、さらにセルロース誘導体等の光学活性担体を使用した高速液体クロマトグラフィー等の手段により精製してもよい。
本発明で使用される前記一般式(I)のα-アミノケトン化合物は、公知の方法で得ることができ、例えば、国際公開第99/05090号パンフレット(WO99/05090)、国際公開第99/31045号パンフレット(WO99/31045)、国際公開第00/02846号パンフレット(WO00/02846)、特開平10-152460公報、さらにはインド特許173945(1970)、国際公開第01/73100号パンフレット(WO01/73100)、国際公開第02/38532号パンフレット(WO02/38532)、特開2003-327564公報、国際公開第03/104186号パンフレット(WO03/104186)、国際公開第2004/005251号パンフレット(WO2004/005251)に開示されたもの及びそこに開示の方法で合成することもできる。また、前記α-アミノケトン化合物の塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩などの無機酸の塩、または、酢酸、クエン酸などの有機酸の塩が挙げられる。前記α-アミノケトンは、対応する1-フェニルケトン誘導体のα炭素をハロゲン化、例えば、ブロム化後、ブロム基などのハロゲンをアミンに置換することによって容易に合成できる(Ger. (East) 11, 332, Mar. 12, 1956)。
本製造方法で得られる光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物を公知の方法で反応させ得られるジフェネチルアミン誘導体としては、具体的には、国際公開第99/05090号パンフレット(WO99/05090)、国際公開第99/31045号パンフレット(WO99/31045)、国際公開第00/02846号パンフレット(WO00/02846)、特開平10-152460公報などに記載の化合物が挙げられ、代表的には2-[4-[2-[[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ]エチル]フェノキシ]酢酸、N-[2-クロロ-4-[[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ]エチル]フェニル]アミノ酢酸、(1R,2S)-1-(4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-2-[[2-[4-(2-メトキシエトキシ)フェニル]エチル]アミノ]プロパン-1-オールなどが挙げられる。
本製造方法で得られる化合物は、国際公開第99/05090号パンフレット(WO99/05090)、国際公開第99/31045号パンフレット(WO99/31045)、国際公開第00/02846号パンフレット(WO00/02846)、特開平10-152460公報などに記載の化合物の中間体、代表的には2-[4-[2-[[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ]エチル]フェノキシ]酢酸を含む医薬品の中間体、あるいはメタラミノール(2-アミノ-1-(3-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オール)、スプリフェン(2-メチルアミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オール)、メトキサミン(2-アミノ-1-(2,5-ジメトキシフェニル)プロパン-1-オール)などの医薬品として有用である。例えば、(1R,2S)-2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オールは、2-[4-[2-[[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ]エチル]フェノキシ]酢酸の合成中間体として非常に価値がある。
本発明の光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物の製法は、既存の製法と比較して、次のような有利な点を持っている。
(1)光学活性な有機酸を利用してジオステレオマーを形成してそれを光学分割する方法ではラセミ回収が困難であり収率は低いが、本法では原料のラセミ化を伴いながら一種の光学活性体を生成するため収率的に有利である。
(2)光学活性なアミノ酸など(L-アラニンなど)の不斉源を用いる方法と比較すると工程が単純である。
(3)アルデヒド化合物を出発原料として醗酵法でアセチルカルビノール化合物を経由する方法と比較しても収率的に有利である。
(4)エリスロ体を簡便に製造できる。
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
〔製造例 基質の製造〕
実施例1〜36、45〜46で用いた基質の2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オン及び、実施例37で用いた基質の 2-メチルアミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オンは1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オンから、実施例38〜41で用いた基質の2-アミノ-1-(3-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オンは3-ヒドロキシベンズアルデヒドから、実施例42、43で用いた基質の2-アミノ-1-(2,5-ジメトキシフェニル)プロパン-1-オンは2-アミノ-1-(2,5-ジメトキシフェニル)プロパン-1-オールからそれぞれ一般的手法に基づき合成した。
一般的手法としては、国際公開第99/05090号パンフレット(WO99/05090)、国際公開第99/31045号パンフレット(WO99/31045)、国際公開第00/02846号パンフレット(WO00/02846)、特開平10-152460公報、インド特許173945(1970)、国際公開第01/73100号パンフレット(WO01/73100)、国際公開第02/38532号パンフレット(WO02/38532)、特開2003-327564公報、国際公開第03/104186号パンフレット(WO03/104186)、国際公開第2004/005251号パンフレット(WO2004/005251)に開示のものが挙げられる。
〔実施例1〜36〕
〔エリスロ-2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オールの生成〕
グルコース1%、ペプトン0.5%、酵母エキス0.3%を含む培地5mLを試験管に投入、121℃、20分滅菌した。冷却後ノカルディア サルモニカラ アウランチアカ亜種 (Nocardia salmonicolor subsp. aurantiaca) IFO-14426をスラントより一白金耳取り、植菌した。25℃、3日間好気的に振とう培養し、1000G、10分の遠心分離によって捕集した。水を加え750μLの懸濁液とした。
得られた菌体懸濁液に1Mリン酸ナトリウム緩衝液pH6.0を50μL、基質の2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オンを1mg、グルコース20mg、水を加え1mLとし混合後、30℃で振とう反応24時間した。
得られた反応液をHPLCにて分析し、エリスロ-2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オールの生成量(カラム=InertsilODS-3(ジーエルサイエンス社製、径4.6mm、長さ75mm)、溶離液5%アセトニトリル、0.1%TFA、流速1.0mL/min、検出UV220nm)、光学純度(カラム=ダイセル社製CROWNPAKCR―(径4mm、長さ150mm)、溶離液過塩素酸水溶液pH2、流速0.5mL/min、検出UV220nm)で分析した。
ノカルディア サルモニカラ アウランチアカ亜種 IFO-14426に代えて表1、2及び3に示す微生物を使用した以外は、上記と同様にしてエリスロ-2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オールを得た。その結果を表1、2及び3に示した。
〔実施例37〕
〔エリスロ-2-メチルアミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オールの生成〕
以下の表4〜7に記載の培養条件は次のとおりである。
培養条件(1): グルコース1%、ペプトン0.5%、酵母エキス0.3%を含む培地100mL(pH7.0)に微生物を植菌し、25℃、振とう200rpmの条件で94時間培養した。
ロドトルラ ミヌタ(Rhodotorula minuta)IFO-0715株をグルコース1%、ペプトン0.5%、酵母エキス0.3%を含む培地100mL(pH7.0)で25℃、94時間振とう培養した。遠心分離によって菌体を得た。これに適量の水、1Mリン酸緩衝液(pH7.0)0.1mL、グルコース20mg、2-メチルアミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オンの塩酸塩1mgを加え混合し、その1mLを30℃、48時間振とう反応した。反応液を遠心分離し、上清をHPLC(Inertsil Ph-3ジーエルサイエンス社製、径4.6mm、長さ75mm、溶離液0.05Mリン酸二水素ナトリウム二水和物(アセトニトリル7%含有)、pH4.6、流速0.5mL/分、検出波長UV220nm)で分析した。その結果、エリスロ-2-メチルアミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オール塩酸塩0.03mg/mLの生成を確認した。生成物の光学純度を決定するため、サンプルをHPLC(住化分析社製カラムOA-4900、径4.6mm、長さ250mm、溶離液へキサン:1,2-ジクロロエタン:メタノール:トリフロロ酢酸=240:140:40:1、流速0.5mL/分、検出波長UV254nm)で分析した。その結果を表4に示す。生成物は(光学純度100%)であることが判明した。
〔実施例38〜41〕
〔エリスロ-2-アミノ-1-(3-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オールの生成〕
表5に示した微生物を用い、表5の培養条件に従い、実施例6と同様に2-アミノ-1-(3-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オンの反応を行い、エリスロ-2-アミノ-1-(3-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オールを得た。反応液を遠心分離し、上清をHPLC(Inertsil Ph-3ジーエルサイエンス社製、径4.6mm、長さ75mm、溶離液0.05Mリン酸二水素ナトリウム二水和物(アセトニトリル7%含有)、pH4.6、流速0.5mL/分、検出波長UV220nm)で分析した。更に生成物の光学純度を決定するため、サンプルをHPLC(ダイセル化学社製カラムCROWNPAK CR(-)、径4mm、長さ150mm、過塩素酸水溶液、pH2.0、流速0.5mL/分、検出波長UV220nm)で分析した。その結果を表5に示す。
〔実施例42及び43〕
〔エリスロ-2-アミノ-1-(2,5-ジメトキシフェニル)プロパン-1-オールの生成〕
表6に示した微生物を用い、表6の培養条件に従い、実施例6と同様に2-アミノ-1-(2,5-ジメトキシフェニル)プロパン-1-オンを反応させ、分析を行った。光学活性エリスロ-2-アミノ-1-(2,5-ジメトキシフェニル)プロパン-1-オールを得た。その結果を表6に示す。
〔実施例44〕
〔2-〔4-〔2-〔〔(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル〕アミノ〕エチル〕フェノキシ〕酢酸の製造〕
実施例1〜4で得られた2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オールから国際公開第99/05090号パンフレット(WO99/05090)の実施例6に記載の方法で2-〔4-〔2-〔〔(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル〕アミノ〕エチル〕フェノキシ〕酢酸を製造できる。
具体的には、(1R,2S)-2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オールに2-[4-(2-ブロモエチル)フェノキシ]酢酸エチルを反応させ2-〔4-〔2-〔〔(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル〕アミノ〕エチル〕フェノキシ〕酢酸エチルを得、そのエタノール溶液に水酸化ナトリウム水溶液を反応させることにより、2-〔4-〔2-〔〔(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル〕アミノ〕エチル〕フェノキシ〕酢酸を得ることができる。
〔実施例45〜46〕
〔抽出酵素を用いた(1R,2S)-2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オールの生成〕
ノカルディア サルモニカラ アウランチアカ亜種(Nocardia salmonicolor subsp. aurantiaca) IFO-14426株をグルコース1%、ペプトン0.5%、酵母エキス0.3%を含む培地100mL(pH7.0)で25℃、93時間振とう培養した。遠心分離によって菌体を得た。これに0.3g湿重量/mLになるように20mMリン酸緩衝液(pH5.5)を加え、懸濁した後、氷中にて超音波処理(300μA、1分、5回)を行い、菌体を破砕した。更に遠心分離によって上清である抽出酵素液を得た。抽出酵素液 0.5mLに適量の水、1Mリン酸緩衝液(pH6.0) 0.05mL、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH) 5mg、2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オン1mgを加え混合し1mLとした。その1mLを30℃、48時間振とう反応した。反応液を遠心分離し、上清をHPLC(Inertsil ODS-3ジーエルサイエンス社製、径4.6mm、長さ75mm、溶離液 5%アセトニトリル、0.1% TFA含有水溶液、pH2.0、流速1.0mL/分、検出波長UV220nm)で分析した。その結果、2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オール0.02mg/mLの生成を確認した。生成物の光学純度を決定するため、サンプルをHPLC(ダイセル化学社製カラムCROWNPAK CR(-)、径4mm、長さ150mm、過塩素酸水溶液、pH2.0、流速0.5mL/分、検出波長UV220nm)で分析した。その結果、生成物は光学純度100%であることが判明した。
ノカルディア サルモニカラ アウランチアカ亜種IFO-14426株に代えて表7に示す微生物を使用した以外は、上記と同様にして(1R,2S)-2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オールを得た。その結果を表7に示した。
本発明の光学活性エリスロ-β-アミノアルコールの製造方法によれば、α-アミノケトン化合物またはその塩のエナンチオマー混合物から、ジアステレオマー副生成物の生成を十分に防止しつつ、所望の光学活性を有するエリスロ-β-アミノアルコールを高収率かつ高選択的に簡易な工程で製造することが可能となる。従って、本発明によれば、所望の光学活性を有するジフェネチルアミン誘導体などを高収率かつ簡易な工程で製造することが可能となり、医薬またはその中間体を製造する過程において非常に有用である。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。

Claims (9)

  1. 一般式(I):
    (式中Xは、同一または異なっていてもよく、ハロゲン原子、低級アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、ニトロ基およびスルホニル基からなる群より選ばれる少なくとも一種を示し、nは0〜3の整数を示し、R1は低級アルキル基を示し、R2及びR3は同一または異なっていてもよく、水素原子および低級アルキル基からなる群より選ばれる少なくとも一種を示し、*は不斉炭素を示す。)
    で表されるα-アミノケトン化合物またはその塩のエナンチオマー混合物に対して、ノカルディア(Nocardia)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、クライシア(Kuraishia)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、ピチア(Pichia)属、キャンディダ(Candida)属に属する微生物群から選ばれる少なくとも一つの微生物の菌体、菌体処理物又は培養液を作用させ、
    一般式(II):
    (式中X、n、R1、R2、R3 及び*は上記一般式(I)における定義と同義である。)
    で表される光学活性なエリスロ-β-アミノアルコール化合物を生成せしめることを特徴とする光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物の製造方法。
  2. 請求項1に記載の一般式(I)(式中X、n、R 1 、R 2 、R 3 及び*は請求項1に記載の定義と同義である)で表されるα-アミノケトン化合物またはその塩のエナンチオマー混合物に対して、スポリジオボラス(Sporidiobolus)属に属する微生物の菌体、菌体処理物又は培養液を作用させ、
    一般式(III):
    (式中X、n、R 1 、R 2 、R 3 及び*は請求項1に記載の定義と同義である。)
    で表される光学活性なエリスロ-β-アミノアルコール化合物を生成せしめることを特徴とする光学活性エリスロ-β-アミノアルコール化合物の製造方法
  3. 一般式(I)で表されるα-アミノケトン化合物の不斉還元、ラセミ化同時進行反応により1R,2S-エリスロ-β-アミノアルコールを得ることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  4. 一般式(I)で表されるα-アミノケトン化合物の不斉還元、ラセミ化同時進行反応により1S,2R-エリスロ-β-アミノアルコールを得ることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
  5. 微生物が、ノカルディアサルモニカラアウランチアカ亜種(Nocardia salmonicolor subsp. aurantiaca)、ロドコッカスエリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)、クライシアカプスラタ(Kuraishia capsulata)、ロドトルラミヌタ(Rhodotorula minuta)、スポリジオボラスルイネニアエ(Sporidiobolus ruineniae)、ピチアカプスラタ(Pichia capsulata)、キャンディダモリシアナ(Candida molischiana)、ロドコッカスルバー(Rhodococcus ruber)、ロドコッカスゾフィー(Rhodococcus zopfii)、ロドコッカスグロベルルス(Rhodococcus globerulus)、及びロドコッカスロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)から成る群から選ばれたものであることを特徴とする請求項1又は3に記載の製造方法。
  6. 微生物が、ノカルディアサルモニカラアウランチアカ亜種 IFO-14426 (Nocardia salmonicolor subsp. aurantiaca IFO-14426)、クライシアカプスラタ IFO-0974 (Kuraishia capsulata IFO-0974)、ロドトルラミヌタ IFO-0715 (Rhodotorula minuta IFO-0715)、スポリジオボラスルイネニアエ IFO-1689 (Sporidiobolus ruineniae IFO-1689)、ピチアカプスラタ NBRC-0721(Pichia capsulata NBRC-0721)、キャンディダモリシアナNBRC-10780(Candida molischiana NBRC-10780)、ロドコッカスルバーNBRC-15591(Rhodococcus ruber NBRC-15591)、ロドコッカスゾフィー NBRC-100606(Rhodococcus zopfii NBRC-100606)、ロドコッカスグロベルルス NBRC-14531(Rhodococcus globerulus NBRC-14531)、ロドコッカスロドクロウス NBRC-15564(Rhodococcus rhodochrous NBRC-15564)、ロドコッカス sp. JCM-6198(Rhodococcus sp. JCM-6198)、ロドコッカス sp. JCM-6199(Rhodococcus sp. JCM-6199)、及びロドコッカス sp. NBRC-13165(Rhodococcus sp. NBRC-13165)から成る群から選ばれたものであることを特徴とする請求項1、3又は5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 請求項1に記載の一般式(I)(式中X、n、R 1 、R 2 、R 3 及び*は請求項1に記載の定義と同義である)で表されるα-アミノケトン化合物またはその塩のエナンチオマー混合物に対して、ノカルディア(Nocardia)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、クライシア(Kuraishia)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、ピチア(Pichia)属、キャンディダ(Candida)属に属する微生物群から選ばれる少なくとも一つの微生物の菌体、菌体処理物又は培養液を作用させ、一般式(II):(式中X、n、R 1 、R 2 、R 3 及び*は上記一般式(I)における定義と同義である。)で表される光学活性なエリスロ-β-アミノアルコール化合物を生成せしめ、得られた光学活性なエリスロ-β-アミノアルコール化合物をジフェネチルアミン誘導体に変換することを特徴とするジフェネチルアミン誘導体の製造方法。
  8. α-アミノケトン化合物が2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オンであり、光学活性なエリスロ-β-アミノアルコール化合物が(1R,2S)-2-アミノ-1-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-1-オールであり、ジフェネチルアミン誘導体が2-[4-[2-[[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]アミノ]エチル]フェノキシ]酢酸である請求項7に記載の製造方法。
  9. 請求項1に記載の一般式(I)(式中X、n、R 1 、R 2 、R 3 及び*は請求項1に記載の定義と同義である)で表されるα-アミノケトン化合物またはその塩のエナンチオマー混合物に対して、スポリジオボラス(Sporidiobolus)属に属する微生物の菌体、菌体処理物又は培養液を作用させ、一般式(III):(式中X、n、R 1 、R 2 、R 3 及び*は上記一般式(I)における定義と同義である。)で表される光学活性なエリスロ-β-アミノアルコール化合物を生成せしめ、得られた光学活性なエリスロ-β-アミノアルコール化合物をジフェネチルアミン誘導体に変換することを特徴とするジフェネチルアミン誘導体の製造方法。
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