JP5156280B2 - ポリ塩化ビフェニル分解処理方法 - Google Patents
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例えば、変圧器やコンデンサーなどにおいては、内部のポリ塩化ビフェニルを含む絶縁油を一旦抜油した後に解体され、さらに該解体物がノルマルパラフィンなどで洗浄されてポリ塩化ビフェニルが除去されたりしている。
このアルカリ金属を用いる方法としては、例えば、数μm程度の粒径に調整されたナトリウム粒子が鉱油などの分散媒中に分散されているナトリウム分散体を用いる方法が知られており、このナトリウム分散体を用いるポリ塩化ビフェニルの脱塩素化分解処理は、紫外線を用いる処理や、超臨界水を用いる処理に比べて、使用する装置や、処理のプロセスが簡易であることから広く用いられている。
また、この水分除去が実施された後は、ナトリウムとポリ塩化ビフェニルとの反応を促進させるべく、ナトリウムの融点以上に加熱されたたナトリウム分散体を添加・混合して脱塩素化を実施させる方法が通常採用されている。
この解体物の洗浄に用いられた判定液には、ポリ塩化ビフェニルとともに電気機器に用いられていた絶縁油やノルマルパラフィンなどの油が含有されており、判定液は、これらを蒸留により分離することで再生されて繰り返して利用されている。
このポリ塩化ビフェニルを含む油からは、前記蒸留操作によって判定液が除去されてはいるものの、通常、完全に除去されてはおらず、例えば、判定液としても用いられた1−ブロモプロパンなどが含有された状態となっている。
しかし、1−ブロモプロパンは、71℃と低い沸点を有する物質であり、ポリ塩化ビフェニルを含む油をナトリウム分散体との混合前に減圧蒸留したり、あるいは、加熱条件下でポリ塩化ビフェニルを含む油とナトリウム分散体とを混合したりする際に揮発するおそれがある。
したがって、1−ブロモプロパンの揮発にともなう手間の増大などを抑制させつつナトリウム分散体での分解処理を実施させ得る。
以下に、本発明の好ましい第一の実施の形態について、判定液として用いられた1−ブロモプロパンの蒸留分離によって生じた1−ブロモプロパンがポリ塩化ビフェニルとともに含有されている油(以下「被処理油」ともいう)をナトリウム分散体で無害化処理する場合を例に説明する。
この混合工程においては、前記被処理油とナトリウム分散体との混合を実施する。
また、このとき、被処理油とナトリウム分散体との混合物の温度が70℃以下となるようにして被処理油とナトリウム分散体との混合を実施する。
この混合工程を混合物の温度が70℃以下となるようにして実施するのは、混合物の温度が70℃を超えると、この混合工程時に1−ブロモプロパンの揮発が発生するおそれを生じるためである。
なお、被処理油とナトリウム分散体との混合方法については、特に限定されるものではなく、例えば、被処理油中にナトリウム分散体を添加して攪拌するなどの方法を採用し得る。
前記混合工程後には、混合工程で作成された被処理油とナトリウム分散体との混合物を一定時間保持して該混合物中の1−ブロモプロパンとナトリウムとを反応させて1−ブロモプロパンを脱臭素化させる脱臭素化工程を実施する。
この混合工程においては、1−ブロモプロパンとナトリウムとの反応熱などにより、通常、被処理油とナトリウム分散体との混合物が昇温することとなるが、前記混合物の温度が70℃を超える温度とならないように必要に応じて混合物の冷却を実施する。
なお、ナトリウムによる1−ブロモプロパンの脱臭素化反応をより促進させ得る点からは、混合物の温度をより高い温度とすることが好ましいが、1−ブロモプロパンの揮発をより確実に防止し得る点からは混合物の温度をより低い温度とすることが好ましい。
このようなことから、この脱臭素化工程を、混合物の温度が40〜60℃の状態で実施させることが好ましい。
すなわち、混合物の温度を40〜60℃の状態としつつ脱臭素化工程を実施することにより、1−ブロモプロパンの揮発を抑制しつつ脱臭素化の効率を向上させ得る。
該昇温工程は、被処理油に含有されるポリ塩化ビフェニルとナトリウムとを好適に反応させるべく被処理油とナトリウム分散体との混合物を所定の温度に昇温させるために実施するものであり、後段の脱塩素化工程におけるポリ塩化ビフェニルの脱塩素化分解を効率良く実施させ得る点からは、被処理油とナトリウム分散体との混合物をナトリウムの融点以上の温度とすることが好ましい。
一方で、あまり温度を上昇させると油が揮発したり、さらには、発火が起きたりするおそれがあることから、被処理油とナトリウム分散体との混合物は、90〜120℃に昇温させることが好ましい。
前記昇温工程後には、被処理油とナトリウム分散体との混合物を、例えば、90〜120℃に一定時間保持して該混合物中のポリ塩化ビフェニルとナトリウムとを反応させてポリ塩化ビフェニルを脱塩素化分解させる脱塩素化工程を実施する。
このときも被処理油とナトリウム分散体との混合物に対して攪拌を実施するなどして、ナトリウムによる脱塩素化反応を促進させるとともにナトリウム粒子の表面に析出する酸化ナトリウム、塩化ナトリウムなどを脱落させてナトリウムを表面に露出させ、ナトリウム粒子を反応性が高い状態に維持させることが好ましい。
また、脱臭素化、脱塩素化の能力が不足しているようであれば、新たに、ナトリウム分散体を加えて、新たな被処理油の処理のためのナトリウム分散体として用いることができる。
あるいは、脱臭素化、脱塩素化の能力を殆ど有していない状態であれば、例えば、水和処理するなどして系外に排出させることができる。
次いで、本発明の好ましい第二の実施の形態について、1−ブロモプロパンとポリ塩化ビフェニルとともに水が含有されている油(以下「含水被処理油」ともいう)をナトリウム分散体で無害化処理する場合を例に説明する。
この含水被処理油は、従来の処理方法では、臭化水素などの発生を抑制しつつ処理することが特に困難である。したがって、このような含水被処理油の処理においては、本発明の効果をより顕著に発揮させ得る。
この含水被処理油に対しては、前記第一実施形態で説明したような処理方法をそのまま採用することも可能ではあるが、以下に説明する方法を採用することが好適である。
上記のように、この第二実施形態のポリ塩化ビフェニル分解処理方法は、前処理工程を脱臭素化工程前に実施する点において、前記第一実施形態と異なっている。
この前処理工程を実施することにより含水被処理油中の水分を減少させることができて、脱臭素化工程において、1−ブロモプロパンがこの油中の水と反応して臭化水素を発生させるおそれを抑制させ得る。
この前処理工程においては、混合物の温度をより低温に維持することで、前処理工程における1−ブロモプロパンと水との反応を抑制させることができ臭化水素の発生をいっそう抑制させ得る。
一方で、混合物の温度をあまり低温に維持させようとすると、混合物の冷却に要するエネルギーコストに見合った臭化水素発生抑制効果を得ることが困難となる。
このような点において、前処理工程は、混合物の温度を常温(20℃)以上40℃未満とすることが好ましい。
なお、この前処理工程の実施時間については、含水被処理油における水分含有量などにもよるが、通常、5〜30分とされる。
この前処理工程後の一次昇温工程については、特に限定されるものではなく、第一実施形態における昇温工程で説明した方法と同様の方法により実施することができる。
また、一次昇温工程に必要な熱量を、この前処理工程における、水とナトリウムとの反応熱などで十分確保できるような場合であれば、例えば、混合物を常温以上40℃未満となるように冷却しつつ前処理工程後を実施し、所定時間経過した後に、該冷却を中止して反応熱で40〜60℃の温度に混合物を昇温させる一次昇温工程を実施することも可能である。
すなわち、前記混合工程前にこの粒子状や塊状のアルカリ金属もしくはアルカリ金属塩を含水被処理油に添加して(あるいは、この粒子状や塊状のアルカリ金属もしくはアルカリ金属塩に含水被処理油を添加して)、この粒子状や塊状のアルカリ金属もしくはアルカリ金属塩が添加された含水被処理油を、例えば、40℃未満に一定時間維持して実施されることとなる。
次いで、本発明の好ましい第三の実施の形態について、含水被処理油をナトリウム分散体で無害化処理する場合を例に説明する。
この疎水性溶媒混合工程に用いられる疎水性溶媒としては、上記に例示のヘキサン以外には、その他のノルマルパラフィンなどを挙げることができトリデカンなどを挙げることができる。
これらは、通常、混合液に対して体積で0.5〜2倍量となる大過剰な状態で含多水被処理油に混合する。
この疎水性溶媒は、後段において実施される減圧蒸留工程において、例えば、1−ブロモプロパンが残留しているような場合でもこの1−ブロモプロパンの揮発を防止しつつ当該疎水性溶媒のみを選択的に揮発させ得る点において、1−ブロモプロパンよりも沸点の低い物質が好適であり、次段の油水分離工程における水や1−ブロモプロパンの水性成分の分離性能に優れていることなどからもヘキサンが好適である。
この油水分離工程は、通常、疎水性溶媒混合工程後の疎水性溶媒と含多水被処理油との混合物を、例えば、静置分離することにより実施することができる。
なお、この油水分離工程によって、通常、含多水被処理油に含まれている水と1−ブロモプロパンとの殆どが水性成分として除去されることとなるが、一部がポリ塩化ビフェニルを含む油性成分側に残留する場合があることから、この第三実施形態のポリ塩化ビフェニル分解処理方法においては、この油水分離工程後には、第二実施形態において説明した2a’)前処理工程、2b’)一次昇温工程、2c’)脱臭素化工程と同様にして2a”)前処理工程、2b”)一次昇温工程、2c”)脱臭素化工程を実施する。
また、水性成分として除去された水と1−ブロモプロパンとは、通常、別工程にて処理される。
この減圧蒸留工程においては、脱臭素化工程後の前記混合物を減圧蒸留して、前記混合物からヘキサンなど疎水性溶媒を除去する。
このときの圧力(真空度)などは、特に限定されるものではなく、要すれば、混合物を加温して減圧蒸留を実施させることも可能である。
このとき減圧蒸留されたヘキサンなど疎水性溶媒は、通常、そのままの状態で疎水性溶媒混合工程に再利用することができる。
Claims (4)
- ポリ塩化ビフェニルが含有されている油と、ナトリウム粒子が分散媒中に分散されてなるナトリウム分散体とを混合してポリ塩化ビフェニルとナトリウムとを反応させて前記油に含有されているポリ塩化ビフェニルの脱塩素化を実施するポリ塩化ビフェニル分解処理方法であって、
1−ブロモプロパンがポリ塩化ビフェニルとともに含有されている油中のポリ塩化ビフェニルの分解処理に用いられ、前記油と前記ナトリウム分散体とを混合し、しかも、前記油と前記ナトリウム分散体との混合物の温度が70℃以下となるように混合して、前記混合物の温度が70℃以下の状態で1−ブロモプロパンとナトリウムとを反応させて1−ブロモプロパンの少なくとも一部を脱臭素化させた後に、前記混合物の温度が70℃を超える状態となるように前記混合物を昇温させて前記脱塩素化を実施させることを特徴とするポリ塩化ビフェニル分解処理方法。 - 1−ブロモプロパンとポリ塩化ビフェニルとが含有されており、さらに水が含有されている油中のポリ塩化ビフェニルの分解処理に用いられる請求項1記載のポリ塩化ビフェニル分解処理方法。
- 前記混合物の温度が40〜60℃の状態で前記脱臭素化を実施する請求項1または2に記載のポリ塩化ビフェニル分解処理方法。
- アルカリ金属もしくはアルカリ金属塩と前記水とを40℃未満の温度で反応させてアルカリ金属の水和物を生成させた後に前記脱臭素化を実施する請求項3に記載のポリ塩化ビフェニル分解処理方法。
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