次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るコイル巻線システムによって製造されたコイル巻線体の拡大斜視図、図2は、図1に示すコイル巻線体の縦断面図、図3は、コイル巻線体を構成する上プレートを上方から見た平面図、図4は、図1のIV−IV線に沿った縦断面図、図5は、コイル巻線体を構成する下プレートの底面図、図6は、下プレートの上面に設けられたガイドスロープを示す部分拡大斜視図である。
先ず、図7に示されるコイル巻線システム10によって線材106が巻回されたコイル巻線体100について説明する。なお、後記する線材106の巻き取り段階において、軸方向を線材106の列方向、径方向を段方向とする。
このコイル巻線体100は、図1及び図2に示されるように、樹脂製材料によって形成され上治具12が挿通される貫通孔101を有する上プレート102(以下、上プレート102の上面102a、下面102bとする)と、樹脂製材料によって形成され貫通孔103を有する下プレート104(以下、下プレート104の上面104a、下面104bとする)とを含む
さらに、前記コイル巻線体100は、前記上プレート102と下プレート104との間に挟持され、線材(導線)106が巻回されて複数段に積層されたコイルを有するコイル積層体108と、上下方向に沿って非重畳し千鳥足状に配置された前記上プレート102及び前記下プレート104の円弧状凸部114a、114b同士を交互に絡げて前記上プレート102及び下プレート104を保持する絡げ線116とを備える。なお、前記コイル積層体108のコイル内周面120は、コイルボビン等の芯材が何ら設けられておらず、外部に露呈した状態にある。
前記上プレート102及び下プレート104の外周部から半径外方向に突出する円弧状凸部114a、114bには、絡げ線116を絡げるときに前記絡げ線116を案内する第1ガイド溝122が形成される(図3及び図5参照)。前記第1ガイド溝122の内壁底面は、図4に示されるように、縦断面視して中央部が僅かに隆起した湾曲面123によって形成されることにより、絡げ線116が円弧状凸部114a、114bに対して絡げ易くなると共に、適宜の張力に保持される。
なお、前記円弧状凸部114a、114bは、上プレート102に5箇所設けられ(図3参照)、下プレート104に6箇所設けられる(図5参照)。また、上プレート102の円弧状凸部114aに形成された第1ガイド溝122は上向き開口するように設けられ、一方、下プレート104の円弧状凸部114bに形成された第1ガイド溝122は下向きに開口するように設けられて、それぞれ絡げ線116を好適に保持するように構成される。
上プレート102の上面102aには、図1に示されるように、後記する上治具12の第1ピン17a(図9及び図10参照)が挿入されるピン穴119aが形成され、前記第1ピン17aがピン穴119aに挿入されることにより上プレート102が上治具12に対して所定位置に位置決めされる。
また、下プレート104の下面104bには、図5に示されるように、後記する下治具14の第2ピン17b(図9及び図11参照)が挿入されるピン穴119bが形成され、前記第2ピン17bがピン穴119bに挿入されることにより、下プレート104が下治具14に対して所定位置に位置決めされる。なお、前記ピン穴119a、119bは、上プレート102又は下プレート104を貫通しておらず、途中で閉塞するように形成されている。これにより、上プレート102と下プレート104との間に挟持されるコイル積層体108の外表面に対する損傷が好適に阻止される。
前記下プレート104には、図5に示されるように、半径外方向に向かって突出し、線材106の巻き始め部分が巻き留めされる横断面略L字状の第1巻き留め部110aと、線材106の巻き終わり部分が巻き留めされる横断面略L字状の第2巻き留め部110bとが設けられる。なお、前記第1巻き留め部110a及び第2巻き留め部110bには、それぞれ、次工程において、後記する一対のターミナル端子152a、152b(図29(a)参照)が加締め止めされて、前記線材106の巻き始め部分及び巻き終わり部分と電気的に接続される。
また、図5に示されるように、下プレート104の外周面と前記第1及び第2巻き留め部110a、110bとの間には、矩形状の平板部124が一体に形成される。前記下プレート104の下面104bの平板部124には、第1巻き留め部110aに巻き留めされた線材106の巻き始め部分を、前記第1巻き留め部110aから下プレート104の外周部に向かって案内する曲折した第2ガイド溝126が形成される。
さらに、下プレート104の内周部には、図2、図5及び図6に示されるように、軸方向(下プレート104の上面104a及び下面104b)に向かって僅かに膨出する円筒状突起部128が形成される。また、図6に示されるように、前記下プレート104の上面104aには、前記円筒状突起部128に対し接線方向に延在する断面凹形状の溝からなり、前記線材106の巻き始め部分を下プレート104の外周部から内周部に向かって案内するガイドスロープ130が形成される。このガイドスロープ130は、図20に示されるように、内周部側が浅く外周部側に向かって徐々に深くなる所定角度傾斜した傾斜面(溝底)からなるように形成される。
前記傾斜面と略直交するガイドスロープ130の一方の側壁132には、図6に示されるように、所定間隔離間し該傾斜面側に向かって横方向に膨出する、例えば、2つのリブ134、134が形成される。このリブ134、134は、ガイドスロープ130に沿って案内される線材106に当接するようになっており、これにより、例えば、次工程においてモールド成形する際、溶融樹脂がガイドスロープ130内を前記線材106に沿って充填されることが阻止され、この結果、コイル内周面120に対する溶融樹脂の進入を好適に阻止することが可能となる。なお、リブ134、134は、複数に限定されるものではなく、1個以上あればよい。
さらにまた、下プレート104の円弧状凸部114bには、図5に示されるように、絡げ線106の絡げ始め部分を係止する切り欠き部136が形成され、他の円弧状凸部114bには、絡げ線106の絡げ終わり部分を係止する他の切り欠き部136が形成される。
下プレート104と対向する上プレート102の下面102bには、図21に示されるように、縦断面円弧状の複数の溝が連接して形成された第3ガイド溝138が形成され、この第3ガイド溝138は、線材106が複数段に積層されて折り返すときに前記線材106を案内して整列させる機能を発揮する。
次に、図7に基づいて、本実施形態に係るコイル巻線システム10について説明する。
このコイル巻線システム10は、図示しない昇降機構を介して上下方向に沿って昇降自在に設けられた上治具12と、モータMの回転駆動作用下に図示しない基台上に矢印方向に沿って回転自在に支持された下治具14とから構成されるコイル巻線装置15を含む。
さらに、コイル巻線システム10は、線材供給源17から供給された線材106を前記コイル巻線装置15に対して送給するノズル30と、複数のリニアアクチュエータが組み付けられて構成され、図示しないガイドレールの案内作用下に前記ノズル30を相互に直交するXYZの3軸方向に変位させる3軸アクチュエータ機構32と、前記ノズル30から送給される線材106に対して適度の張力を付与するテンショナ装置34とを備える。なお、前記ノズル30、3軸アクチュエータ機構32及び線材供給源17は、線材供給手段として機能するものである。
前記上治具12は、図9及び図10に示されるように、上プレート102が装着されて前記上プレート102を係止する上治具本体210と、下治具14の後記する爪部240の開口部内に挿入されて前記爪部240(分割爪)を拡径させるテーパ体220とから構成される。
上治具本体210は、図10に示されるように、下面に上プレート102の上面102aに対応する形状からなる装着面211a(図13〜図15参照)が形成された厚肉円盤状の取付座211と、前記取付座211の中心から鉛直下方に向かって延在する差込ロッド部215とを有する。
取付座211は、図示しない昇降機構によって昇降自在に連結されると共に、上プレート102の上面102aに当接する装着面211aが下面に形成され、また、前記装着面211aに装着される上プレート102との相対的な位置決めを行う第1ピン17aが下方側に向かって突出して設けられている。なお、上プレート102は、径方向に開閉する開閉爪213(図13参照)によって前記取付座211の装着面211aに取り付けられる。
差込ロッド部215は、下治具14の後記する爪部240に差し込まれる略円柱体からなり、その下端部には差し込みやすいように環状のテーパ面216が形成されている。
また、差込ロッド部215の下部には、下治具14に設けられたキー231(図14及び図15参照)が挿入されるキー溝217が鉛直方向に沿って形成されている。これにより、差込ロッド部215(上治具12)と下治具14との周方向における相対位置が位置決めされる。
さらに、差込ロッド部215の下部側の周面には、周回するロック溝218が形成され、上治具12が下治具14に差し込まれた際、下治具14のロック片232がロック溝218に挿入される(図15参照)。これによって、上治具12を下治具14に差し込んだ後、前記上治具12の抜脱が阻止されるようになっている。なお、ロック片232の下部側には、図示しないシリンダが設けられ、前記シリンダのピストンロッドがロック片232の下端部を押圧することにより、ロック片232がロック溝218から離間してロック状態が解除される。
テーパ体220は、差込ロッド部215の下部が爪部240に差し込まれた後、続いて爪部240に差し込まれる略逆円錐台形状に形成され、その周面はテーパ面221に形成されている。また、テーパ体220には、軸線方向に沿って貫通する挿通孔222が形成され、前記挿通孔222に差込ロッド部215が挿通されている。
さらに、テーパ体220の上方には2本のねじ棒223、223が配設され、前記2本のねじ棒223、223は、取付座211の2つのねじ孔214、214に螺入されている。この場合、各ねじ棒223、223の上端にはナット224が締結され、前記ナット224が取付座211に係止されることで、2本のねじ棒223、223の下端位置が所定の高さに調節可能に設けられる。
このねじ棒223、223の下端は、テーパ体220の上面に当接し、その結果、テーパ体220は、取付座211に対してねじ棒223、223の高さによって規制された所定の高さに設定される。なお、テーパ体220は、図示しないキーによって、上治具本体210に対して鉛直方向にガイドされると共に、抜け落ちないように保持されている。
テーパ体220と取付座211との間には、圧縮コイルばね225が介装され、上治具12が爪部240に差し込まれた際、テーパ体220のテーパ面221が爪部240のテーパ面240a(図13参照)と好適に当接するように設けられる。
下治具14は、図8及び図11に示されるように、略円筒状を呈する下治具本体230と、前記下治具本体230の上部に設けられ拡径したフランジ部からなる台座230aと、前記台座230aに形成された円形状凹部内に挿入される環状プレート261と、前記環状プレート261の径方向に沿って変位自在に支持された第1〜第3分割爪241a〜241cを有し前記上治具12のテーパ体220が挿入されることにより半径外方向に沿って拡径する爪部240と、前記下治具本体230の軸線と直交する方向に突出し線材106及び絡げ線116の巻き始めの一端部を係止する一対の係止部212、212とを備える。
さらに、下治具14は、図11に示されるように、ばね力によって爪部240の第1〜第3分割爪241a〜241cを径方向内側に向かって押圧する3本のラジアルばね251と、ばね力によって爪部240を上方に向かって押圧する6本のスラストばね265とを有する。
下治具本体230は、モータMによって適宜回転可能に設けられる。下治具本体230には、上治具12のキー溝217に嵌挿されるキー231が設けられると共に、上治具12のロック溝218に係合するロック片232が設けられる(図15参照)。
爪部240は、閉じた状態で筒状を呈し、周方向において分割された状態で、平断面視して円弧状からなる第1〜第3分割爪241a〜241cを有する。第1〜第3分割爪241a〜241cは、それぞれ、径方向に沿ってスライド自在に配設されていると共に、ラジアルばね251によって径方向内側に向かって押圧されている。
すなわち、爪部240に対して上治具12が差し込まれていない場合には、第1〜第3分割爪241a〜241cが、ラジアルばね251のばね力によって径方向内側に向かって押圧され、爪部240は縮径して筒状に閉じた状態にある。一方、爪部240に対して上治具12が差し込まれた場合には、第1〜第3分割爪241a〜241cが、ラジアルばね251のばね力に抗して径方向外側にそれぞれ変位し、爪部240は拡径して開いた状態となる。
各第1〜第3分割爪241a〜241cの内周面は、図13に示されるように、下方側に向かって徐々に縮径したテーパ面240aに形成され、前記テーパ面240aの下方は、内径が一定の内周面240bに形成されている。
各第1〜第3分割爪241a〜241cの外周面の下部側には、図11に示されるように、周方向に沿って周溝242が形成されている。また、各第1〜第3分割爪241a〜241cの周溝242が形成された部分には、細く括れた首部247が設けられ、前記首部247を、ガイド部材252の後記する一対の突起部252a、252aがスライド自在に挟持するように設けられる。さらに、前記首部247の外側面には、ばね穴242aが形成され、前記ばね穴242aにラジアルばね251が装着されて位置決めされている。
各第1〜第3分割爪241a〜241cの外周面の上部側には、周方向に沿って延在する第1段差部243が形成され、外周面の下部側には、周方向に沿って延在する第2段差部244が形成されている。第1段差部243と第2段差部244とは、それぞれ、爪部240の軸方向に沿って所定距離離間した位置に設けられている。この場合、第1段差部243は、爪部240が開いたとき、上プレート102の内周側下端面140に当接し(図16参照)、第2段差部244は、爪部240が開いたとき、下プレート104の内周側上端面142に当接するように設けられている(図17参照)。
さらに、各第1〜第3分割爪241a〜241cの下端部には、平断面視して、円弧状に形成された係止用フランジ245が設けられ、前記係止用フランジ245は、爪部240が閉じたとき、環状プレート261の隆起部262に係止されるように設けられる(図13参照)。
図7に示されるように、上治具12と下治具14とが同軸状に組み付けられたとき、上下方向に沿って所定距離だけ離間する上プレート102と下プレート104との間には、線材106が巻回される巻線部として機能する爪部240の周面が露呈するように設けられる。この爪部240の周面は、第1〜第3分割爪241a〜241cの周面が周方向に沿って所定角度離間しクリアランスを介して配置されることにより構成されるものである。
この場合、第1分割爪241a及び第2分割爪241bの周面には、図18に示されるように、水平方向に沿って平行に延在し、周面に巻回される線材106を案内する複数の溝部246が形成される。また、第3分割爪241cの周面は、何ら凹凸形状が形成されていない平滑面248からなる。この平滑面248は、線材106が周面に沿って巻回されたときに次の列に移行する乗り換えを円滑に遂行するものである。
3本のラジアルばね251は、図12に示されるように、平面視して、下治具本体230の台座230aの上面に、ガイド部材252を介して、周方向に等角度(120度毎)離間して取り付けられていると共に、ガイド部材252によって径方向に沿ってガイドされるように設けられている。
ガイド部材252の軸方向に沿った一端部には、第1〜第3分割爪241a〜241c側に向かって略平行に突出する一対の突起部252a、252aが設けられ、前記一対の突起部252a、252aは、各第1〜第3分割爪241a〜241cの周溝242に差し込まれると共に、各第1〜第3分割爪241a〜241cの首部247をスライド自在に挟むように設けられている。これにより、各第1〜第3分割爪241a〜241cは、ガイド部材252を介して、下治具本体230の上部に径方向に沿ってスライド自在に設けられている。
ガイド部材252の上には、図11に示されるように、下プレート104が装着されるリング状の取付プレート253が固定されている。この取付プレート253の上面には、下治具14に対して下プレート104を所定位置に位置決めするための第2ピン17bが設けられ、また、前記ガイド部材252が装着される断面矩形状の凹部254が形成されている。
6本のスラストばね265は、例えば、圧縮コイルばね等によって構成され、下治具本体230の台座230aの円形状凹部内に形成されたばね穴に装着されると共に、周方向に沿って等角度(60度毎)離間するように配置されている(図12参照)。
環状プレート261は、図11及び図13に示されるように、6本のスラストばね265上に配置され、6本のスラストばね265によって均一に支持されている。また、環状プレート261の上面には、爪部240が配置されている。すなわち、6本のスラストばね265は、環状プレート261を介して爪部240を上方に向かって押圧するように設けられている。
環状プレート261の内周部には、外周部と比較して肉厚に形成された隆起部262が設けられている。上治具12が爪部240に差し込まれておらず爪部240が閉じた状態では、隆起部262に対して第1〜第3分割爪241a〜241cの係止用フランジ245が当接して係止されるように設けられている。すなわち、隆起部262は、爪部240が閉じた状態において、第1〜第3分割爪241a〜241cの径方向内側への変位を規制するストッパとして機能するように設けられる。
本実施形態に係るコイル巻線システム10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次に、コイル巻線システム10の動作について説明する。
先ず、線材106を巻回するための準備工程について概略説明すると、図8に示されるように、上プレート102が装着された上治具12と下プレート104が装着された下治具14とが同軸状に離間した状態において、図示しない昇降機構を介して上治具12を下治具14に向かって下降させて上治具12と下治具14とを同軸状に組み付ける。
この場合、上治具12のテーパ体220が爪部240内に挿入されて第1〜第3分割爪241a〜241cを半径外方向に押圧し、前記第1〜第3分割爪241a〜241cが半径外方向にスライドすることにより、上治具12と下治具14との組み付けが完了する。前記上下治具12、14の組み付けが完了することにより、上下プレート102、104が所定間隔離間して状態で保持され、爪部240の周面(巻線部)に対する線材106の巻き付け準備が完了する。
以下、図13〜図17を参照して、上治具12と下治具14との組み付け動作について詳細に説明する。
図13に示すように、上治具12の取付座211の下面(装着面211a)に、第1ピン17aとピン穴119aとを位置合わせしながら、上プレート102を取り付ける。一方、下治具14の取付プレート253の上面253aに、第2ピン17bとピン穴119bとを位置合わせしながら、下プレート104を取り付ける。
前記上下プレート102、104を上下治具12、14にそれぞれ装着した後、下治具14のキー231と、上治具12のキー溝217とを位置合わせしながら、図示しない昇降機構によって上治具12を下降させ、上治具12の差込ロッド部215を、下治具14の爪部240の開口部内に差し込む。
その後、差込ロッド部215が第1〜第3分割爪241a〜241cの内周面240bに当接すると、各第1〜第3分割爪241a〜241cが、ラジアルばね251のばね力に抗して、径方向外側にスライドし、爪部240が開き始める(図14参照)。
さらに、テーパ体220のテーパ面221が第1〜第3分割爪241a〜241cのテーパ面240aに当接しながら下降すると、各第1〜第3分割爪241a〜241cが径方向外側にさらにスライドする。次いで、各第1〜第3分割爪241a〜241cの係止用フランジ245が取付プレート253の内周面253bに当接すると(図15参照)、各第1〜第3分割爪241a〜241cの径方向外側へのスライドが規制される。
ここで、第1〜第3分割爪241a〜241cは、環状プレート261を介して各スラストばね265によって押圧されているので、上方に向かって均等に押圧することが可能となっており、第1〜第3分割爪241a〜241cの下方側の第2段差部244と、下プレート104の内周側上端面142との間には、ギャップGが形成されるようになっている(図13、図14参照)。
上治具12がさらに下降し、図15に示すように、環状プレート261の下面261aが下治具本体230の上面230aに当接すると、上治具12の下降が停止する。その際、各第1〜第3分割爪241a〜241cは、上治具12の下降に伴って、各スラストばね265の押圧力に抗して、下方にスライドする。
ここで、第1〜第3分割爪241a〜241cの上部側部位Pにおいては、図16に示されるように、上プレート102の内周側下端面140が、第1〜第3分割爪241a〜241cの上部側の第1段差部243に当接する。一方、第1〜第3分割爪241a〜241cの下部側部位Qにおいては、図17に示されるように、下プレート120の内周側上端面142が、第1〜第3分割爪241a〜241cの下部側の第2段差部244に当接する。
特に、下部側部位Qにおいては、各第1〜第3分割爪241a〜241cがスラストばね265のばね力によって、予め上方に押圧されてギャップGが形成されていることから(図13、図14参照)、各第1〜第3分割爪241a〜241cの下部側の第2段差部244の直下に、下プレート104の内周側上端面142が位置した後で、下部側の第2段差部244が内周側上端面142に当接する。
この結果、例えば、スラストばね265を有せず、径方向外側のみにスライドする図示しない分割爪の外周面が、下プレート104の内周面103a(図17参照)に当接するような不具合が防止される。
以上のようにして、上治具12が下治具14に同軸状に組み付けられた状態となり、下治具14のロック片232がロック溝218に係合してロック状態となる。
このように上治具12が下治具14に組み付けられた状態において、図15に示されるように、上治具12における取付座211の下面(装着面211a)と、下治具14における取付プレート253の上面253aとの間の軸方向長さLは、所定値に設定される。また、各第1〜第3分割爪241a〜241cの拡径した外周位置、すなわち、径方向長さDも、所定値に設定される。
ここで、第1〜第3分割爪241a〜241cに形成される上方側の第1段差部243、及び、下方側の第2段差部244における各軸方向高さ位置は、上プレート102の内周側下端面140、及び、下プレート104の内周側上端面142に、各々圧縮荷重が加えられる位置に設定される。
この結果、上プレート102は取付座211の下面(装着面211a)と第1〜第3分割爪241a〜241cの第1段差部243との間で、また、下プレート104は取付プレート253の上面253aと第1〜第3分割爪241a〜241cの第2段差部244との間で、所定位置で挟持、すなわち拘束される。
さらに詳細には、上プレート102には、取付座211の下面(装着面211a)から上プレート102の上面を鉛直下側に向かって押圧する押圧力A2が付与され(図15参照)、これと同時に、第1〜第3分割爪241a〜241cの第1段差部243から上プレート102の内周側下端面140を軸方向上側に向かって押圧する圧縮荷重(押圧力A3、図15、図16参照)が付与される。
また、下プレート104には、取付プレート253の上面253aから下プレート104の下面を鉛直上側に向かって押圧する押圧力A6が付与され(図15参照)、これと同時に、第1〜第3分割爪241a〜241cの第2段差部244から下プレート104の内周側上端面142を軸方向下側に向かって押圧する圧縮荷重(押圧力A5、図15、図17参照)が付与される。そして、径方向において、第1〜第3分割爪241a〜241cと、下プレート104の貫通孔103との間には、所定のクリアランスが形成される(図17参照)。
このようにして、上治具12と下治具14とが組み付けられた状態において、開いた爪部240に対して上プレート102及び下プレート104が所定位置に拘束され、上プレート102と下プレート104との間(上下間の離間距離)は、所定の幅に設定される。
換言すると、爪部240の外周面が巻芯部となり、上プレート102が上フランジ部、下プレート104が下フランジ部となることから、上フランジ部及び下フランジ部を有するボビンと同様の構造、すなわち、仮想ボビンを形成することが可能となり、線材106の巻回を容易とすることが可能となる。これにより、上プレート102と下プレート104との間に、線材106を整巻し、巻姿が乱れていない、つまり、軸方向において線材106が整列したコイル積層体108を得ることができる。
続いて、以上のようにして上下治具12、14に保持された上下プレート102、104間に線材106を巻き付ける方法について説明する。
先ず、モータMが滅勢状態にあって、同軸状に組み付けられた上下治具12、14が静止した状態において、3軸アクチュエータ機構32の駆動作用下にノズル30を変位させ、前記ノズル30から送給された線材106の巻き始めの一端部を下治具本体230の係止部212に係止した後、図19(a)に示されるように、下プレート104の向かって左側に設けられた第1巻き留め部110aの外周面を下側から時計周り方向に1巻きする(矢印a1、a2参照)。なお、ノズル30から送給される線材106には、テンショナ装置34によって適度の張力が付与されているため、巻回された線材106がほつれることを好適に防止することができる。
続いて、3軸アクチュエータ機構32の駆動作用下にノズル30を横方向に沿って変位させ、下プレート104の向かって右側の第2巻き留め部110bの下面に形成された第2ガイド溝126に沿って線材106を挿通させた後(図19(a)の部分斜視図参照)、矢印a3に示されるように、下プレート104の上面104aに形成されたガイドスロープ130に沿って線材106が案内されるように前記下プレート104の外周部から内周部に向かって線材106を導出する。
線材106が前記ガイドスロープ130の傾斜面に沿って案内されて第3分割爪241cの平滑面248(最下部)に到達したとき、モータMを付勢して上下治具12、14を矢印方向に沿って一体的に回転させることにより、第1及び第2分割爪241a、241bの溝部246に案内されて、再び、第3分割爪241cの平滑面248に到達する(図20参照)。その際、前記第3分割爪241cの周面は、平滑面248によって形成されて線材106の巻き取り方向を何ら拘束することがないため、線材106を次の列に円滑に乗り換えさせることができる。
さらに、ノズル30が上方に向かって変位し線材106が、矢印a4に示されるように、第1〜第3分割爪241a〜241cの周面の列方向(軸方向)に沿って複数巻回されると共に(図19(b)参照)、前記ノズル30が軸方向に沿って往復動作することにより、線材106が爪部240の周面の径方向に沿って順次積層される(図19(c)参照)。
上下治具12、14が一体的に回転すると共にノズル30が下プレート104と上プレート102との間を複数回往復しながら線材106が送給されて複数段からなるコイル積層体108が形成された後、前記上下治具12、14の回転を停止した状態において、図19(c)の矢印a5〜a7に示されるように、線材106の巻き終わり部分を下プレート104の上面104aの内周部から外周部に向かって導出し、さらに、右側の第2巻き留め部110bの外周面を上側から時計周り方向に1巻きした後、図示しないカッタ手段によって線材106の巻き終わり部分を切断する。
このようにして、上治具12と下治具14とが同軸状に組み付けられ、爪部204に対して上プレート102及び下プレート104が所定間隔離間した状態において、所定幅に設定された上プレート102と下プレート104との間に、線材106が整巻されて軸方向において整列したコイル積層体108を得ることができる(図30のブロックE1参照)。
しかも、外部に露呈する前記コイル積層体108の巻き始め部分と巻き終わり部分とが、近接する第1巻き留め部110a及び第2巻き留め部110bにそれぞれ巻き留めされ、且つ下プレート104の平板部124の上下面にそれぞれ分離して交差状(クロス)に配置されることにより、前記巻き始め部分及び巻き終わり部分を含むコイル積層体108のアイソレーション性を確保することができる。
次に、ボビンレスコイルからなる前記コイル積層体108を上下方向に沿って保持する絡げ線116の絡げ方について、図22に基づいて以下説明する。なお、絡げ線116の絡げ始めの一端部が係止部212に係止される点は、前記線材106を巻回してコイル積層体108を構成する場合と同一であるため、その説明を省略する。また、前記絡げ線116としては、ノズル30から送給される線材106(導線)を用いて以下説明しているが、これに限定されるものではなく、導線以外の他の線材を用いてもよい。
矢印c1〜c3に示されるように、絡げ線116の絡げ始め部分を下プレート104の円弧状凸部114bの外周面に下方側から時計周り方向に1巻きした後、前記絡げ線116を上プレート102の円弧状凸部114aの第1ガイド溝122(図3参照)に係合させる。その際、前記下プレート104の円弧状凸部114bには、絡げ線116の絡げ始め部分を係止する切り欠き部136が形成されているため、前記切り欠き部136によって絡げ線116の絡げ始め部分が円滑に係止される。
続いて、モータMの駆動作用下に上下治具12、14を周方向に沿って一体的に回転させた状態において、ノズル30を上下方向に往復動作させながら、矢印c4〜c17に示されるように、上下方向に沿って非重畳し且つ周方向に沿って互い違いに配置された下プレート104の円弧状凸部114bの第1案内溝122と上プレート102の円弧状凸部114aの第1案内溝122に沿って絡げ線116を順次絡げる。なお、前記モータMは、図示しないコントローラによって制御され、適宜、正転及び逆転することにより、上下プレート102、104の円弧状凸部114a、114bに沿って絡げられる絡げ線116の張力が適度に設定される。
この場合、絡げ線116の係合部である上プレート102の円弧状凸部114aと下プレート104の円弧状凸部114bとは、千鳥足状に周方向に沿って互い違いに交互に配置されているため、上下プレート102、104の回転方向に対する位置ずれを好適に防止することができる。
また、上下プレート102、104間に絡げられた絡げ線116は、コイル積層体108の軸方向と略平行に延在している。このため、例えば、次工程においてコイル巻線体100の外表面を溶融樹脂によってモールド成形する際、後記する金型装置のゲートから注入された溶融樹脂の充填方向を前記軸方向と平行となるように設定することにより、溶融樹脂によって絡げ線116に対して過大な負荷が付与されることがなく、前記絡げ線116によってコイル積層体108が保持された状態を維持したままで良好な樹脂成形体(図29(b)参照)を得ることができる。
上下プレート102、104の円弧状凸部114a、114bを絡げ線116によって上下方向に沿って交互に絡げると共に、絡げ線116を上下プレート102、104の周方向に沿って引き回し、矢印c18〜c20に示されるように、下プレート104の他の円弧状凸部114bの外周面を時計回り方向に1巻きした後、図示しないカッタ手段によって絡げ線116の絡げ終わり部分を切断する。その際、前記下プレート104の他の円弧状凸部114bには、絡げ線116の絡げ終わり部分を係止する切り欠き部136が形成されているため、前記切り欠き部136によって絡げ線116の絡げ終わり部分が円滑に係止される。
このようにして、上下プレート102、104の外周面に絡げ線116が絡げられたコイル巻線体100が構成された後、図示しない昇降機構を介して上治具12を下治具14から離間させることにより、コイル巻線体100が取り出されて、次工程に搬送される。
本実施形態では、所定間隔離間して配置された上下プレート102、104を上下治具12、14によって保持し、下治具104に設けられた爪部240の周面に線材106を巻回して簡便に且つ効率的にボビンレスコイルからなるコイル巻線体100を形成することができる(図30のブロックE2参照)。
また、本実施形態では、上下プレート102、104間に整列されたコイル積層体108のアイソレーション性を好適に保持することができることは勿論のこと、外部に露呈する前記コイル積層体108の巻き始め部分及び巻き終わり部分が、左右方向に離間する第1巻き留め部110a及び第2巻き留め部110bにそれぞれ巻回され、且つ平板部124の上下面に分離してそれぞれ交差状に引き出されることにより、前記コイル積層体108のアイソレーション性を確実に確保することができる。
換言すると、本実施形態では、コイル積層体108の巻き始め部分が第2ガイド溝126を介して樹脂製の下プレート104の平板部124の下面104bに沿って引き出される共に、前記コイル積層体108の巻き終わり部分が下プレート104の平板部124の上面104aに沿って前記巻き始め部分と交差するように引き出され、前記巻き始め部分と巻き終わり部分との間に樹脂製材料で形成された平板部124を介在させて非接触状態とすることにより、アイソレーション性を確実に保持することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、例えば次のように変更することができる。
前記した実施形態では、爪部240は、第1〜第3分割爪241a〜241cを備える構成としたが、分割爪の個数はこれに限定されず、2個、又は4個以上でもよい。また、ラジアルばね251、スラストばね265の本数も、適宜変更してよい。
前記した実施形態では、スラストばね265が、圧縮コイルばねである構成を例示したが、その他に例えば、適宜なゴムから形成されたゴム部材であってもよい。このことは、ラジアルばね251についても同様である。
前記した実施形態では、上治具12にテーパ体220を備え、下治具14に爪部240を備える構成としたが、上治具12の機能と下治具14の機能とを逆、すなわち、上治具12に爪部240を備え、下治具14にテーパ体220を備える構成としてもよい。
次に、前記の工程で形成されたコイル巻線体100に対して樹脂性材料でモールドすることにより、コイル成形体を得る工程について以下説明する。なお、図23は、モールド成形を実施する金型装置の概略構成縦断面図であり、図24は、前記金型装置のキャビティ内に被成形体が装填されて型締めされた状態の概略構成縦断面図である。
先ず、内周面を除いた外表面が樹脂製材料によって被覆(モールド)される被成形体300について説明する。この被成形体300は、図29(a)に示されるように、樹脂製材料によってそれぞれ形成された上部側の第1プレート104と下部側の第2プレート102との間に挟持され、線材106が巻回されて複数段に積層されたコイルを有するコイル巻線体100と、前記第1プレート104の半径外方向に突出する一対の巻き留め部110a、110bに連結され、前記コイルと電気的に接続されるターミナル部150と、上下方向に沿って所定間隔離間して配置された前記第1プレート104及び前記第2プレート102の円弧状凸部114a、114b同士を交互に絡げて前記第1プレート104及び第2プレート102を保持する絡げ線116とを備える。
なお、この被成形体300では、図1に示されるコイル巻線体100を構成する下プレート104が上部側の第1プレート104となり、上プレート102が下部側の第2プレート102として構成され、被成形体300は、コイル巻線体100の天地が逆転した状態に配置されている。その他、同一の構成要素には、同一の参照符号を付して以下説明する。
前記ターミナル部150は、線材106の巻き始め部分と電気的に接続される第1ターミナル端子152aと、線材106の巻き終わり部分と電気的に接続される第2ターミナル端子152bとを有する。また、前記コイル巻線体100のコイル内周面120は、コイルボビン等の芯材が何ら設けられておらず、外部に露呈した状態にある。
前記第1プレート104には、隣接する前記円弧状凸部114bの間であって、周方向に沿って等角度離間しコイル外周面121(図23参照)から半径外方向に向かって所定長だけ突出する3つの突起部154が設けられる。この各突起部154は、後記するように上型412の複数のゲートから溶融樹脂がキャビティ430内に注入された際、各ゲートの終端部の直下に位置する溶融樹脂受容部として機能するものであり、前記突起部154で受容した溶融樹脂が後記する薄肉部成形用空間部444へ充填されるように溶融樹脂の流動を促すものである(図28参照)。
次に、金型装置410は、図23に示されるように、図示しない昇降機構を介して昇降自在に設けられる上型412と、図示しない基台上に固定される下型414と、図示しない変位機構を介して横方向に沿って進退自在に設けられ、後記する中空のカプラ部502(図29(b)参照)を形成するための入れ子として機能する突起418が設けられた一対の分割型420a、420bとを含む。なお、前記一対の分割型420a、420bは、分割されることがなく一体に構成するようにしてもよい。
さらに、金型装置410は、前記上型412の孔部に内嵌され、上部側の第1プレート104の内周縁部近傍の上面に当接してコイル巻線体100を下方側に向かって押圧し且つシールする環状突起部422が膨出形成された第1駒部材424と、前記下型414の孔部に装着され、下部側の第2プレート102の下面に臨み樹脂成形体500(図29(b)参照)の底面にシール装着用の環状溝(図示せず)を形成するための環状凸部426が膨出形成された第2駒部材428と、前記第2駒部材428に内嵌され、上型412及び下型414の壁面との間でキャビティ430(図24参照)を形成するコア部材432とを有する。なお、前記金型装置410には、前記キャビティ430に連通する図示しないガス抜き用通路が設けられる。
前記上型412には、例えば、プラスチック射出成形機等を含む図示しない溶融樹脂供給源に接続されて溶融樹脂をキャビティ430に向かって吐出(注入)する複数のゲートが配設される。前記複数のゲートは、図27に示されるように、コイル巻線体100の周方向に沿って等角度離間して配置され、前記コイル巻線体100の外周面及び軸方向の両端面を被覆する樹脂封止体504(図29(b)参照)を形成する第1〜第3ゲート434a〜434cと、第1及び第2ターミナル端子152a、152bを収納する筒体からなるカプラ部502を形成する第4ゲート434dとから構成される。
この場合、前記第1〜第3ゲート434a〜434cは、図24及び図27に示されるように、型締めされた状態において、第1プレート412の突起部154と対応する位置であって、前記突起部154の直上位置又は略直上位置に配設される。なお、図27は、型締めされた金型装置410を上方から見た平面図であり、第1〜第3ゲート434a〜434cと第1プレート104の突起部154との上下方向に沿った位置関係を明瞭とするために、キャビティ430内に配設された第1プレート104の突起部154を便宜的に実線で示している。
前記下型414には、溶融樹脂が固化された樹脂成形体500を上方に向かって押圧することにより、前記樹脂成形体500をキャビティ430から取り出すための複数のエジェクタピン436が設けられる(図26参照)。前記エジェクタピン436は、図示しないアクチュエータの駆動作用によって上下方向に沿って変位自在に設けられる。
コア部材432には、上部側の第1プレート104の内周面160に接触し、前記第1プレート104の内周面160との間で位置決め及びシール機能を営む円柱部438と、下部側の第2プレート102の内周面162に接触し、前記第2プレート102の内周面162との間で位置決め及びシール機能を営む環状拡径部からなる裾野部440と、第2駒部材428に近接する前記裾野部440の下方側に形成され、前記第2プレート102の屈曲部側近傍の下面を上方側に向かって押圧する環状段差部439とが設けられる。
上下方向に沿った前記第1プレート104と第2プレート102との間であって、コイル内周面120と対向する前記コア部材432の円柱部438の直径(外径)D1は、前記コイル内周面120の内径D2よりも小さく設定されている(D1<D2)。従って、図24に示されるように、被成形体300がキャビティ430に装填されて型締めされた状態では、コア部材432とコイルとが非接触状態に保持され、コア部材432の円柱部438の外径面とコイル内周面120との間にはクリアランス442が形成される。
なお、本実施形態では、上型412が下型414に対して昇降自在に設けられているが、これに限定されるものではなく、上型412と下型414とが相対的に離間可能に設けられていればよい。
モールド成形方法を実施する金型装置410は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
先ず、図23に示されるように、金型装置410のキャビティ430内に被成形体300(図29(a)参照)が装填された後、図示しない昇降機構を介して上型412及び第1駒部材424を一体的に下降させると共に、図示しない変位機構を介して一対の分割型420a、420bを変位させて型締め状態とする。
型締め状態では、図24及び図27に示されるように、第1〜第3ゲート434a〜434cの終端部446と第1プレート104の突起部154とが上下方向に沿って対応する位置関係となり、前記第1〜第3ゲート434a〜434cの終端部446が前記突起部154の直上位置又は略直上位置となる。また、前記型締め状態では、上型412の底壁と第1プレート104の上面との間で、上下方向の寸法が小さく且つ径方向の寸法が幅狭に形成された環状の薄肉部成形用空間部444が設けられる。なお、前記薄肉部成形用空間部444は、キャビティ430の一部を構成し、後記する樹脂成形体500の外側端面(上面)に形成された環状凹部506の底面を構成する薄肉部512を形成するためのものである。
型締めされた後、図示しない溶融樹脂供給源を付勢して溶融樹脂を第1〜第4ゲート434a〜434dから注入する(図25参照)。前記第1〜第3ゲート434a〜434cの終端部446から吐出された溶融樹脂は、溶融樹脂受容部として機能する第1プレート104の突起部154に受容され、上型412の底壁と第1プレート104の上面との間で形成された薄肉部成形用空間部444内への溶融樹脂の流動が促されて溶融樹脂が前記薄肉部成形用空間部444へ円滑に充填されると共に、被成形体300の外周部と下型414の側壁部との間で形成されたキャビティ430に沿って下方側に向かって流動する(図28参照)。なお、溶融樹脂の充填方向は、コイル巻線体100の軸方向と平行であって、キャビティ430の下部側から上方側に向かって徐々に充填されるものとする。
換言すると、仮に、第1〜第3ゲート434a〜434cの終端部446の直下に第1プレート104の突起部154が設けられていない場合、第1〜第3ゲート434a〜434cの終端部446から吐出された溶融樹脂を受容するものが何ら存在しないため、前記溶融樹脂はキャビティ430に沿って下方側へ流動するのみであり、第1〜第3ゲート434a〜434cの終端部446から横方向(溶融樹脂の吐出方向と直交する方向)に延在する薄肉部成形用空間部444への溶融樹脂の流動が困難となり、前記薄肉部成形用空間部444への充填量の不足によるショートモールドが発生するおそれがある。
しかしながら、本実施形態では、溶融樹脂受容部として機能する突起部154を、第1〜第3ゲート434a〜434cの終端部446の直下に位置するように第1プレート104の外周縁部に半径外方向に所定長だけ突出して設け、前記突起部154によって溶融樹脂の流動方向が変更されて第1〜第3ゲート434a〜434cの終端部446から横方向(溶融樹脂の吐出方向と直交する方向)への溶融樹脂の流動が可能となり、薄肉部成形用空間部444内へ溶融樹脂が円滑に充填されることによって前記ショートモールドの発生を好適に阻止することができる。
この場合、第1プレート104の内周縁部近傍の上面に第1駒部材424の環状突起部422が当接して被成形体300を下方側に向かって押圧することにより、溶融樹脂がキャビティ430に沿って充填されるとき、第1プレート104及び第2プレート102が上方に向かって持ち上げられる現象を好適に阻止することができる。
また、コア部材432の円柱部438の外径面に対して第1プレート104の内周面160が接触して第1シール部が形成されると共に、コア部材432の裾野部440に対して第2プレート102の内周面162が接触して第2シール部が形成される。さらに、上部側の第1プレート104及び下部側の第2プレート102がコア部材432の円柱部438及び裾野部440によってそれぞれ所定位置に位置決めされるので、被成形体300の同軸性(同軸精度)が良好となる。従って、溶融樹脂がキャビティ430に沿って充填されるとき、第1及び第2プレート104、102の内周面160、162によって形成される第1及び第2シール部によってコイル内周面120に対する溶融樹脂の進入が好適に阻止されると共に、同軸性を確保しながら被成形体300への溶融樹脂の充填が良好に達成される。
しかも、前述したように、コア部材432の円柱部438の外径面とコイル内周面120との間には、クリアランス442が形成されるように設定されている。この結果、コイル内周面120に積層された線材106は、キャビティ430への装填時や溶融樹脂の流動によって何ら損傷を受けることがなく、好適に保護される。
さらに、本実施形態では、第1プレート104の内周面近傍を下方側に向かって押圧する環状突起部422を有する第1駒部材424を設けることにより、前記第1シール部のシール作用と共働して、シール機能をより一層向上させることができる。また、第2プレート102の屈曲部側近傍の下面を上方側に向かって押圧する環状段差部439をコア部材432に設けることにより、前記第2シール部のシール作用と共働して、シール機能をより一層向上させることができる。
第1〜第4ゲート434a〜434dから注入された溶融樹脂のキャビティ430内への充填が完了した後、前記溶融樹脂が固化されることにより、コイル巻線体100のコイル内周面120を除いた軸方向の両端面及び外周面が樹脂製材料によってモールドされた樹脂成形体(コイル成形体)500が形成される(図30のブロックE3参照)。そこで、図示しないアクチュエータの駆動作用下に複数のエジェクタピン436を上昇させて樹脂成形体500を上方に向かって押圧することにより、前記樹脂成形体500を金型装置410のキャビティ430から簡便に取り出して、次工程に移送することができる。
図29(b)に示されるように、前記樹脂成形体500の上面(軸方向に沿った外側端面)には、図示しないシール部材を装着するための環状凹部506が形成され、前記環状凹部506から半径外方向の環状凸縁部508に略小円形状の複数のゲート跡510が形成される。従って、シール面となる環状凹部506内にゲート跡510が形成されないことにより、凹凸がなく平滑面からなるシール面によってシール機能を好適に発揮することができる。
換言すると、金型装置410に形成された第1〜第3ゲート434a〜434cの位置を、薄肉部成形用空間部444よりも半径外方向に配置することにより、前記薄肉部成形用空間部444によって形成される樹脂成形体500の薄肉部512の外周側にゲート跡510が形成される。従って、シール面となる薄肉部512にゲート跡510が形成されないことにより、凹凸がなく平滑面からなるシール面によってシール機能を好適に発揮することができる。
また、前記樹脂成形体500の軸方向に沿った外側端面には、前記環状凹部506の底面を構成する薄肉部512が形成される。前記薄肉部512は、キャビティ430の一部である薄肉部成形用空間部444内に充填された溶融樹脂が固化されて形成されたものであり、前述したように、ショートモールドやひけ等の発生が好適に阻止された良好な成形面とすることができる。