以下、本発明による電力変換装置の実施例を図面を用いて説明をする。
《電気自動車100》
図1は、本発明による電力変換装置が備えられるハイブリッド型の電気自動車の一実施例を示す概略構成図である。なお本発明による電力変換装置200は純粋な電気自動車にも当然適用でき、基本構成や基本動作はハイブリッド型の電気自動車と純粋な電気自動車とで共通するところがたいへん多い。従って以下代表してハイブリッド型の電気自動車の実施例を説明する。
前輪110および後輪114を備えるハイブリッド型の電気自動車100には、エンジン120と第1の回転電機130と第2の回転電機140と、前記第1の回転電機130と第2の回転電機140に高電圧の直流電力供給するバッテリ180が搭載されている。実際には低電圧電力(14ボルト系電力)を供給するバッテリがさらに搭載されており、以下に説明する制御回路の電源となる電力を供給するが、図示を省略する。エンジン120および第1の回転電機130と第2の回転電機140に基づく回転トルクは、変速機制御装置154とデファレンシャルギア160に伝達され、車軸112を介して前記前輪110に伝達される。
前記変速機150を制御する変速機制御装置154とエンジン120を制御するエンジン制御装置124と電力変換装置200を制御する前記回転電機制御回路基板700の前記回転電機制御回路とバッテリ180を制御するバッテリ制御装置184とが、それぞれ通信回線174であるローカルエリアネットワーク174によって総合制御装置170に接続されている。
前記総合制御装置170は、下位の制御装置である、変速機制御装置154やエンジン制御装置124や電力変換装置200やバッテリ制御装置184からそれぞれの状態を表す情報を、通信回線174を介して受け取る。これらの情報は車両の運転進や安全性の観点から車両を統合制御するのに使用される。車両の統合制御は上記各制御装置の連携動作で達成される制御であり、前記車両の統合制御を実現するための各制御装置への制御指令が上記通信回線174を介して総合制御装置170からそれぞれの制御装置へ送信される。例えば上記バッテリ制御装置184はバッテリ180の放電状況やバッテリを構成する各セル電池の状態を総合制御装置170に報告する。前記総合制御装置170は上記報告から上記バッテリ180の充電が必要と判断すると、電力変換装置200に発電の指示を出す。総合制御装置170はまたエンジン120と第1や第2の回転電気130、140の出力トルクを管理し、エンジンと前記第1や第2の回転電機130、140の出力トルクの総合トルクあるいはトルク分配比を演算処理のより求め、処理結果に基づく制御指令を変速機制御装置154やエンジン制御装置124や電力変換装置200へ送信する。トルク指令に基づき電力変換装置200は第1の回転電機130と第2の回転電機140を制御し、どちらか一方の回転電機であるいは両方の回転電機で指令のトルク出力を発生するようにこれらの回転電機を制御する。
第1の回転電機130と第2の回転電機140は電動機あるいは発電機として動作できる構造となっている。そして、例えば第1の回転電機130が電動機として動作しているとき、第2の回転電機140は電動機として、あるいは発電機として運転可能である。上述のとおり、車両の運転状態に基づき総合制御装置170はエンジンの出力トルクと回転電機の出力トルクとの分配を演算によりそれぞれの目標トルクを決定し、回転電機の目標トルクをトルク指令として、通信回線174を介して電力変換装置200に送信する。電力変換装置200は指令に基づき、第1の回転電機130および第2の回転電機140をそれぞれ電動機として運転するかあるいは発電機として運転するか、を演算処理により判断し、第1の回転電機130および第2の回転電機140を制御する。
しかし他の実施形態として、第1の回転電機130および第2の回転電機140を電動機として運転するか発電機として運転するかを、上記総合制御装置170で演算により決定しても良い。この方法では、第1の回転電機130あるいは第2の回転電機140をモータ運転の場合はその発生するトルクを、また発電機運転の場合には発電電力を総合制御装置170が決定し、その内容が指令として通信回線174を介して電力変換装置200に送るようになる。
どちらの方法であっても、前記電力変換装置200は総合制御装置170からの指令に基づき第1の回転電機130と第2の回転電機140を運転するためにインバータを構成するパワー半導体のスイッチング動作を制御する。これらパワー半導体のスイッチング動作により、第1の回転電機130と第2の回転電機140が電動機としてあるいは発電機として運転される。電動機として運転する場合は高電圧のバッテリ180からの直流電力が前記電力変換装置200のインバータに加えられ、インバータを構成するパワー半導体のスイッチング動作を制御することにより直流電力が3相交流電流に変換され、前記回転電機130あるいは140に供給され、前記回転電機130あるいは140が電動機として回転トルクを発生する。一方発電機として運転される場合、回転電機130あるいは140の回転子が外部からの回転トルクで回転し、この回転トルクに基づき前記回転電機の固定子巻線に3相交流電力を発生する。発生した3相交流電力は前記電力変換装置200で直流電力に変換され、前記高電圧のバッテリ180に供給され、前記バッテリ180が直流電力により充電される。
図1に示すエンジン120と第1と第2の回転電機130、140を回転軸で機械的に直結していても良いし、歯車やクラッチを介して接続される構造であっても良い。エンジン120と第1の回転電機130と第2の回転電機140とが直結している場合は、エンジンの回転速度に正比例して第1の回転電機130と第2の回転電機140が回転するので、第1の回転電機130と第2の回転電機140は回転停止状態から高速回転状態まで広範囲に回転速度が変化するので、回転電機は高速回転に耐えられ機械的な強度が必要となる。また常に第1の回転電機130と第2の回転電機140が回転していると回転電機の鉄損が常に発生する、特に高速回転状態では鉄損が大きい問題がある。一方この方式は、構造がシンプルで、安価と成る長所がある。
また第1の回転電機130と第2の回転電機140がクラッチや変速ギアを介して車両の駆動機構につながる方式は、第1の回転電機130と第2の回転電機140の回転速度の変動範囲を小さくできる長所がある。また必要に応じ車両の駆動機構から第1の回転電機130と第2の回転電機140を切り離すことができ、回転電機の鉄損などで運転効率を下げるのを押さえられる効果がある。他方、この方式は構造が複雑であり、システムが高価となる。
図1に示すとおり、電力変換装置200は、直流電源の電圧変動を押さえる複数の平滑コンデンサコンデンサを有するコンデンサモジュール300と、複数のパワー半導体を内蔵するパワーモジュール500、このパワーモジュール500のスイッチング動作を制御するスイッチング駆動回路を備えた基板(以下スイッチング駆動回路基板)600、および前記スイッチング動作の時間幅を決める信号すなわちパルスワイドモデュレーションの制御を行うPWM信号を発生する回転電機制御回路を備えた基板(以下回転電機制御回路基板と記す)700から構成されている。
上記パワーモジュール500を電気的に接続することで、パワーモジュール500が有するパワー半導体が電気的に接続されてインバータ回路が作られる。上記インバータ回路を構成するパワー半導体を制御するための信号が回転電機制御回路基板700で作られ、上記スイッチング駆動回路基板600へ送られる。上記スイッチング駆動回路基板600はいわゆるパワー半導体のゲート駆動回路であり、各パワー半導体のゲートへ供給するゲート駆動信号を発生し、そのゲート駆動信号が各パワー半導体のゲートに送られる、ゲート駆動信号に基づき各パワー半導体がスイッチング動作を行う。
上記コンデンサモジュール300、パワーモジュール500、スイッチング駆動回路基板600、回転電機制御回路基板700の詳細な回路や動作については後に詳述する。
前記高電圧のバッテリ180はたとえばニッケル水素電池あるいはリチウムイオン電池などの2次電池であり、300ボルトあるいは600ボルト、あるいはそれ以上の高電圧の直流電力を出力する。
《電力変換装置の全体構成》
図2、図3および図4は、前述した電力変換装置200の分解斜視図であり、該電力変換装置200の全体的な構成を概略的に示している。図2と図3と図4は前記電力変換装置200をそれぞれ異なる方向から見た分解斜視図である。
電力変換装置200は箱体の形状をなすハウジング210を有し、このハウジング210の底部には冷却水が循環する冷却水路216を内部に有する水路形成体220が設けられている。前記ハウジング210の底部には、前記冷却水路216に冷却水を供給するための冷却水の入口管212および冷却水の出口管214が該ハウジング210の外側へ突出する形状で、固定されている。
図1で説明したパワーモジュール500は、前記ハウジング210内に並設されて配置される第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504で構成されている。第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504には冷却用の放熱フィン506、507がそれぞれ設けられている。一方前記水路形成体220には水路につながる開口218、219が設けられている。前記第1と第2のパワーモジュール502、504を冷却通路216の上に固定することで、上記冷却用の放熱フィン506、507がそれぞれ前記水路形成体220に設けられた開口218、219から通路216の内部に突出する。前記開口218、219は放熱フィン506、507の周囲の金属壁で塞がれ、冷却水が漏れないと共に冷却水路が形成される。この第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504は、ハウジング210の冷却水の入口管212および冷却水の出口管214が形成された側壁面に直交する仮想の線分を境にして左右のそれぞれに配置されている。前記水路形成体220の内部に形成される冷却水路は、冷却水の入口管212からハウジング底部の長手方向に沿って他端まで延び、該他端部でU文字状に折り返され、再びハウジング底部の長手方向に沿って出口管214まで延びている。上記長手方向に沿った並行する2組の水路が前記水路形成体220内に形成され、前記水路形成体220にはそれぞれの水路に貫通する形状の前記開口218と219が形成されている。上記通路に沿って前記水路形成体220に第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504が前記水路形成体220に固定される。第1と第2のパワーモジュール502、504に設けられた放熱フィンが水路に突出することで効率の良い冷却が成されると共に、金属製の前記水路形成体220に第1と第2のパワーモジュール502、504の放熱面が密着することで効率の良い放熱構造を実現できる。さらに前記開口218、219は第1と第2のパワーモジュール502、504の放熱面でそれぞれ塞がれるので、構造が小型になると共に冷却効果が向上する。
前記第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504にそれぞれ積層して、第1の駆動回路基板602と第2の駆動回路基板604が並設されて配置された状態で設けられている。前記第1の駆動回路基板602と第2の駆動回路基板604は、図1で説明したスイッチング駆動回路基板600を構成する。
前記第1のパワーモジュール502の上方に配置される第1の駆動回路基板602は平面的に観た場合、該第1のパワーモジュール502より若干小さく形成され、図2、図3、図4では、前記第1のパワーモジュール502の両脇に並設された端子が露出して目視されるのみで、その大部分は前記第1の駆動回路基板602に隠れて目視できない状態となっている。同様に、前記第2のパワーモジュール504の上方に配置される第2の駆動回路基板604も平面的に観た場合、該第2のパワーモジュール504より若干小さく形成され、図2、図3、図4では、前記第2のパワーモジュール504の両脇に並設された端子が露出して目視されるのみで、その大部分は前記第2の駆動回路基板604に隠れて目視できない状態となっている。
前記ハウジング210の側面には前記冷却水の入口管212および出口管214が設けられ、この側面にさらに孔260に形成されている。この孔260には信号用のコネクタ282が配置される。このコネクタ282の取り付け位置の該ハウジング210内部には、該信号用のコネクタ282に近接して固定されるノイズ除去基板560および第2の放電基板520が配置されている。前記ノイズ除去基板560および第2の放電基板520の取り付け面が、前記第1のパワーモジュール502、第2のパワーモジュール504等の取り付け面と平行の面となるように、これらは取り付けられている。
なお、前記ノイズ除去基板560は、第2の放電基板520の下側に重ねて配置され、たとえば図2、図3、図4では該第2の放電基板520に隠れて目視できない状態となっている。なお、前記ノイズ除去基板560および第2の放電基板520は、ハウジング210の高さ方向において、前記パワーモジュール500およびスイッチング駆動回路を備えたスイッチング駆動回路基板600に対して充分に離間した状態で配置されている。上記スイッチング駆動回路基板600は第1の駆動回路基板602と第2の駆動回路基板604の複数の基板から構成されている。
前記複数の駆動回路基板602と604の上方には複数の平滑コンデンサを有するコンデンサモジュール300が配置され、このコンデンサモジュール300は実際には第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304を有しており、各第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304は、それぞれ、第1の駆動回路基板602と第2の駆動回路基板604の上方に配置されている。これら各第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304は、後述する保持板320に固定されているとともに、その電極は前記パワーモジュール500に接続されるように構成されている。
第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304の上方には、平板状の保持板320が、その周辺を前記ハウジング210の内壁面に密着して固定されて配置されている。この保持板320は、前記第1と第2のパワーモジュールの側の面に前記第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304を支持し固定すると共に、その反対側の面に回転電機制御回路基板700を保持し、固定している。そして、この保持板320はたとえば前記ハウジング210と同様に金属材料から構成され、前記第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304、および回転電機制御回路基板700の発熱を前記ハウジング210に流し、放熱する構成となっている。
上述のように、前記パワーモジュール500とスイッチング駆動回路基板600とノイズ除去基板560と第2の放電基板520とコンデンサモジュール300と保持板320と回転電機制御回路基板700とをハウジング210内に収納し、ハウジング210の上部の開口は金属製のカバー290によって塞がれている。
また、ハウジング210の前記冷却水の入口管212および出口管214が設けられた側壁を正面とした場合に、たとえばその右側の側壁には、端子ボックス800が取り付けられて配置されている。この端子ボックス800には、前記バッテリ180から直流電力が供給されるための直流電力用端子812とその内部に設けられた直流電力用の端子台810と、第1の回転電機130および第2の回転電機140と接続する交流電力用端子822とその内部に設けられた交流用の端子台820とが設けられている。
直流電力用の端子台810はバスバーを介して前記第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304の電極に電気的に接続され、交流用の端子台820は前記パワーモジュール500を構成する複数のパワーモジュール502と504の交流端子とそれぞれバスバーを介して電気的に接続されている。
なお、この端子ボックス800は、その本体840に前記直流電力用の端子台810を配置させた底板部844とカバー部846とが取り付けられることによって構成されるようになっている。該端子ボックス800の組み立てを容易にするためである。
このようにして組み立てられる電力変換装置200は、その外観図である図5に示すように極めてコンパクトな形状として構成される。
なお、前記直流電力用の端子台810と直流電力用端子812および交流用の端子台820と交流電力用端子822は、たとえば第1の回転電機130を発電機として動作させ、これによって得られる三相交流電力(回生エネルギー)を電力変換装置200によって直流電力に変換してバッテリ180に供給するようなハイブリッド自動車の運転モードによって、それぞれが交流端子と交流端子台および入力端と直流端子台として機能する。
《電力変換装置の電気回路図》
前記電力変換装置200の上述した各構成部材の詳細な説明をするに先だって、前記パワーモジュール500、スイッチング駆動回路基板600、ノイズ除去基板560、第2の放電基板520、および回転電機制御回路基板700の回路構成とそれらの接続形態を他の部品とともに、図6および図7を用いて説明する。なお、図6および図7は、回路図を左右に分けたそれぞれ部分図を示しており、図6と図7とを合わせることで回路図が完成する。
〈ノイズ除去基板560〉
まず、前記信号用のコネクタ282を通して電力変換装置200に入力または電力変換装置200から出力される各信号はノイズ除去基板560を通過する。これらの信号は、第1の回転電機130に組み込まれたロータの回転位置センサ132からの各信号、第1の回転電機130に組み込まれた温度センサ134からの信号、総合制御装置170を含む他の制御装置との送受信信号で、通信回線174を介して送受信される信号、総合制御装置170から送られてくる起動信号192、第2の回転電機140に組み込まれたロータの回転位置センサ142からの信号、第2の回転電気140に組み込まれた温度センサ144からの信号、総合制御装置170から送られてくる異常処理信号194である。なお、上記通信回線174を介して送られてくる信号には、エンジン回転速度の信号やアクセル開度の信号が含まれている。
さらに低電圧バッテリから送られてくる低電圧電流も上記ノイズ除去基板560を通過するように構成されており、12V電源176からの+電極電源は、ノイズ除去基板560の一辺の側から他方の辺の側にかけて、電極、フィルタ回路570、および電極を介して出力されるようになっており、12V電源176からの−電極電源は、電極、配線層、および電極を介して出力されるようになっている。
12V電源176を除く前記各信号は、ノイズ除去基板560の一辺の側から他方の辺の側にかけて、電極、バイパスコンデンサ562、および電極を介して出力されるようになっている。前記バイパスコンデンサ562は、各信号が伝達される配線層と前記12V電源からの−電極電源が供給される配線層との間に介在されて構成されている。
このように構成されるノイズ除去基板560は、前記各信号に重畳されるノイズを前記バイパスコンデンサ162によって除去し、後述の回転電機制御回路基板700に入力させようとするものである。
このノイズ除去基板560は、回転電機制御回路基板700とはそれらの基板を異にして形成され、該回転電機制御回路基板700と物理的に分離して構成されている。ノイズ除去基板560を、該回転電機制御回路基板700の配置個所に拘束されることなく、自由な個所に配置させるためである。
比較的大きな面積を有する回転電機制御回路基板700から入力信号のノイズを除去する部分の回路(本実施例のノイズ除去基板560上の回路に相当する)を物理的に分離させることは、該回転電機制御回路基板700を小型化できる効果を奏する。さらに、該ノイズ除去基板560は、該回転電機制御回路基板700に対して平行な面内にあるいは垂直な面内に位置づける等の自由な配置を試みることができる。したがって、電力変換装置200を小型化して構成しようとする場合に極めて好都合となる。
〈回転電機制御回路基板700〉
前記ノイズ除去基板560を介して入力される前記ロータの回転位置センサ132および温度センサ134からの各信号は、回転電機制御回路基板700上においてインターフェース回路732を介して第1のマイクロコンピュータ702に入力されるようになっている。
同様に、前記ノイズ除去基板560を介して入力される前記ロータの回転位置センサ142および温度センサ144からの各信号は、回転電機制御回路基板700においてインターフェース回路742を介して第2のマイクロコンピュータ704に入力される。
前記通信回路174からの情報は、前記通信ドライバ回路720を介して前記第1のマイクロコンピュータ702および第2のマイクロコンピュータ704に送られる。また前記第1のマイクロコンピュータ702および第2のマイクロコンピュータ704から動作状態を表す情報が前記通信ドライバ回路720および前記ノイズ除去基板560を通して通信回線174に送出され、所定の装置、例えば総合制御装置170に送られる。この総合制御装置170では、運転モード、たとえば、車輌の発進時あるいは低速走行時、通常走行時(中速、高速走行時)、加速時、減速あるいは制動時の各モードを判定する。運転モードを判定した総合制御装置170は、第1のマイクロコンピュータ702や第2のマイクロコンピュータ704に判定結果を送信し、この結果に基づき第1のマイクロコンピュータ702や第2のマイクロコンピュータ704がそれぞれ第1の回転電機130や第2の回転電機140を制御する。
運転モードに対応する制御内容は、たとえば、車輌の発進時あるいは低速走行時においては主に第1の回転電機130を電動機として動作させる。車輌の通常走行時においてはエンジン120と第1の回転電機130を併用して運転し、両方のトルクで車両が走行する。車輌の急加速時においてはあるいは高負荷運転においては、前記通常走行時の動作に加えてバッテリ180からの出力電力を三相交流電力に変換して第2の回転電機140にも供給し、2個の回転電機を電動機として運転しその出力トルクを車両の駆動に使用すると共に、さらにエンジンの出力を加えて運転する。車輌の減速あるいは制動時においては前記第1の回転電機130と第2の回転電機140とを発電機として運転し、これらによって得られた三相交流電力を直流電力に後述するインバータで変換してバッテリ180に供給し、充電する。
前記総合制御装置170からの運転モード情報を受け取った第1マイクロコンピュータ702および第2マイクロコンピュータ704は、それぞれインバータを構成するパワー半導体素子の動作タイミングを演算処理により求める。第1マイクロコンピュータ702の演算結果に基づくタイミング信号はインターフェース回路734を介して第1の駆動回路基板602に送出される。また、第2マイクロコンピュータ704において演算され、発生したタイミング信号はインターフェース回路744を介して第2の駆動回路基板604に送出される。
なお、前記第1の回転電機130の固定子巻線の各相を流れる電流値を検出する第1電流センサ536の出力と第1のパワーモジュール502に組み込まれた第1の温度センサ532の出力とが、インターフェース回路736を介して前記第1マイクロコンピュータ702に取り込まれる。前記第1マイクロコンピュータ702は取り込んだ第1の電流センサ536の出力を使用して、前記総合制御装置170の指令値に基づく制御が行われるように、前述のパワー半導体素子の動作タイミングの演算処理を行い、フィードバック制御する。上記温度センサ532の出力は動作の異常を診断するのに使用する。
同様に、前記第2の回転電機140の固定子巻線の各相を流れる電流値を検出する第2の電流センサ538の出力と第2のパワーモジュール504に組み込まれた第2の温度センサ534の出力とが、インターフェース回路746を介して前記第2マイクロコンピュータ704に取り込まれる。前記第2マイクロコンピュータ704は取り込んだ第2の電流センサ536の出力を使用して、前記総合制御装置170の指令値に基づく制御が行われるように、前述のパワー半導体素子の動作タイミングの演算処理を行い、フィードバック制御する。上記第2の温度センサ534の出力は動作の異常を診断するのに使用する。
上記第1電流センサ536と第2の電流センサ538は後述する交流端子台820に設けられている。
回転電機制御回路基板700は異常監視回路760を有している。この異常監視回路760には、前記ノイズ除去基板560および第2の放電基板520を通して得られる上位制御装置である総合制御装置170からの異常処理信号が入力される。前記異常処理信号は例えば高電圧部分に危険があると上位制御装置である総合制御装置170が判断したときに発せられる信号であり、前記異常監視回路760がこの信号を受けると、前記第1マイクロコンピュータ702に監視結果として異常状態信号を送出する。この信号に基づき前記第1の回転電機130の運転が前記第1マイクロコンピュータ702によって停止される。この状態では車両はエンジン120の出力トルクで運転される。
前記ノイズ除去基板560を介して12V電源176から直流電力が電源回路750に供給され、電源回路750から安定された一定電圧が出力される。電源回路750の出力は回転電機制御回路基板700上の第1マイクロコンピュータ702と第2マイクロコンピュータ704とインターフェース回路732およびその他の回転電機制御回路基板700上の回路に供給される。
〈スイッチング駆動回路基板600〉
スイッチング駆動回路基板600は第1の駆動回路基板602と第2の駆動回路基板604とから構成されている。第1の駆動回路基板602には、前記回転電機制御回路基板700のインターフェース回路734を介して第1のマイクロコンピュータ702が発生するスイッチングのタイミング信号が入力される。これらのタイミング信号はたとえばフォトカプラ等からなる絶縁回路622を介してU相のドライバ回路632とV相のドライバ回路634とW相のドライバ回路636にそれぞれ入力される。これらドライバ回路632と634と636とからの各出力は、後述する第1のパワーモジュール502内の各パワー半導体素子のスイッチング動作を制御する駆動信号として用いられる。
また、第1の駆動回路基板602には、前記ドライバ回路632と634と636とにおける電圧を検知する電圧センサ回路638が設けられている。電圧センサ回路638の出力は、上述したとおり、前記絶縁回路622と前記回転電機制御回路基板700のインターフェース回路736を介して第1のマイクロコンピュータ702に送られる。
前記ドライバ回路632と634と636とは第1の駆動回路基板602に設けられた電源回路612から定電圧によって駆動される。この電源回路612には前記信号用のコネクタ282からの12V直流電源がノイズ除去基板560および回転電機制御回路基板700を介して供給される。
第2の駆動回路基板604には、前記回転電機制御回路基板700のインターフェース回路744を介して第2のマイクロコンピュータ704が発生するスイッチングのタイミング信号が入力される。これらの信号は絶縁回路624を介してU相のドライバ回路642とV相のドライバ回路644とW相のドライバ回路646に入力される。これらドライバ642と644と646とからの各出力は後述する第2のパワーモジュール504内の各パワー半導体素子のスイッチング動作を制御するための信号として用いられる。
第1の駆動回路基板602と同様に、第2の駆動回路基板604には、前記ドライバ回路642と644と646における電圧を検知する電圧センサ回路648が設けられており、前述のとおり、その出力は前記絶縁回路624と前記回転電機制御回路基板700のインターフェース回路746とを介して第2のマイクロコンピュータ704に送られる。
前記ドライバ回路642と644と646を含む回路は、第2の駆動回路基板604に搭載される電源回路614からの安定した電源によって駆動される。この電源回路614には前記信号用のコネクタ282からの12V電源PWがノイズ除去基板560および回転電機制御回路基板700を介して供給される。
〈絶縁回路622と624〉
本実施の形態では、電源として低電圧バッテリと高電圧180の2種の直流電源を備えている。これらの電源はその電圧が異なるのみならず互いの接地側の電位も異なっている。絶縁回路622や624を設けることで、接地電位が異なっていても正常な動作を得ることができる。たとえば、ドライバ回路632と634と636と電圧センサ回路638さらにドライバ回路642と644と646と電圧センサ回路648の電位が、回転電機制御回路基板の接地電位と異なっていても絶縁回路622や624によりその影響を受けることなく、正常に動作する。以下に詳述するコンデンサ放電制御回路に対しても同様のことが言える。
〈パワーモジュール500〉
図1に記載のパワーモジュール500は第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504とを有しており、第1のパワーモジュール502は、図示されていないが、たとえば、直列接続された2個のパワー半導体素子によってそれぞれU相、V相、W相の各ブリッジ回路を構成した合計6個のパワー半導体素子を備えたインバータを有している。前記各ブリッジ回路の両端はバッテリ180からの直流電圧が供給される構成となっている。なお、第1の回転電機130に供給する電流が大電流である場合、上記インバータを構成する各パワー半導体素子をそれぞれ複数個の並列にする構成となる。上記内容は第2のパワーモジュール504においても同様である。
U相の各パワー半導体素子は前記スイッチ駆動回路基板602のドライバ回路632からの信号によって、V相の各パワー半導体素子は前記スイッチ駆動回路基板602のドライバ回路634からの信号によって、W相の各パワー半導体素子は前記スイッチ駆動回路基板602のドライバ回路636からの信号によって、それぞれスイッチング動作する。これにより3相交流が出力され、第1の回転電機130に供給される。各層の電流はそれぞれ電流センサ536で検出される。
第1のパワーモジュール502内には、温度センサ532が設けられ、インターフェース736を介して第1マイクロコンピュータ702に取り込まれる。温度上昇が上昇すると、第1の回転電機への電流を抑え、パワーモジュール502が破損するのを防止する。
同様に、第2のパワーモジュール504も内部にパワー半導体素子で構成されるインバータを備えている。前記インバータを構成する各相パワー半導体素子は前記スイッチ駆動回路基板614の各ドライバ回路642と644と646からの信号によって、スイッチング動作を行い、3相交流電流を出力したり、あるいは第2の回転電機140の出力を直流に変換したりする。各相の電流は電流センサ538で検出される。また、パワーモジュール504内には、温度センサ534が備えられており、この温度センサ534の出力はインターフェース746を介して第2のマイクロコンピュータ704に入力される。温度上昇に応じて、インバータの制御電流を押さえ、パワーモジュール504の破損を防止する。
〈コンデンサモジュール300と第1と第2の放電抵抗〉
図1のコンデンサモジュール300は並列接続された第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304とを有している。各第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304は直流電源ラインとして作用するバスバー860の両線間に並列して接続され、このバスバー860には直流高電圧バッテリ180から高電圧の直流電力が供給される。前記バスバー860は前記第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504のそれぞれの前記各インバータ回路の直流両端に接続されている。
また、前記各第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304に並列して第1の放電抵抗(図示せず)と第2の放電抵抗524が接続されている。これらの各抵抗は該第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304に蓄えられた電荷を放電させるためのもので、このうちの第2の放電抵抗524は早急に第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304の蓄積電荷を放電する場合に使用する抵抗であり、第2の放電基板520における制御によって行われる。
〈第2の放電基板520〉
第2の放電基板520には、前記信号用のコネクタ282からノイズ除去基板560を介して異常処理信号194が入力されることで前記第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304に蓄えられた電荷を早急に放電するため、コンデンサ放電制御回路522が設けられている。
前記コンデンサ放電制御回路522には、前記異常処理信号194の入力によって動作するスイッチング素子526であるトランジスタを備え、このトランジスタ526は前記第2の放電抵抗524と直列接続されており、このトランジスタ526により前記第2の放電抵抗524が前記第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304に対して閉回路を作る。前記トランジスタ526の動通によって、第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304に蓄えられた電荷は該第2の放電抵抗524を通して放電される。
前記コンデンサ放電制御回路522には前記バッテリ180から高電圧、例えば約300Vあるいは600Vが印加される。この高電圧電源とノイズ除去基板560や回転電機制御回路基板の接地電位が異なっており、正常に動作するために、たとえばフォトカプラ等からなる絶縁回路528を介して異常処理信号194が該コンデンサ放電制御回路CDCに入力させる構成としている。そして、この第2の放電基板520は、回転電機制御回路基板700とはそれらの基板を異にして形成され、該回転電機制御回路基板700と物理的に分離して構成されている。
また、回転電機制御回路基板700は約12V程度の電圧が印加されるのに対し、第2の放電基板520は、例えば300Vから600Vなどの高電圧が印加されることから、それらを物理的に分離して構成することによって、該第2の放電基板520を回転電機制御回路基板700に対して影響しないように充分に離間して配置させることができる。
そして、比較的大きな面積を有する回転電機制御回路基板700から第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304の蓄積された電荷の強制放電を行う回路(本実施例の第2の放電基板520上の回路に相当する)を物理的に分離させることは、該回転電機制御回路基板700を小型化できる効果を奏する。さらに、該第2の放電基板520は、該回転電機制御回路基板700に対して平行な面内にあるいは垂直な面内に位置づける等の自由な配置を試みることができる。したがって、電力変換装置200を小型化して構成しようとする場合に極めて好都合となる。
《電力変換装置200の各構成部材》
次に、前記図2ないし図4に示した各構成部材のそれぞれの詳細な構成について順次説明をする。
〈ハウジング210〉
ハウジング210は、金属材料たとえばアルミで構成され、略方形状の箱体からなり、底部には冷却水路を備えた水路形成体を有している。また上部は開口している。以下の説明の便宜を考慮し、ハウジング210の前記4つの側壁部のうち一の側壁部を正面壁部232と称し、この正面壁部232に対して隣接する各側壁部のうち右側の側壁部を主側壁部234と称する。
図8は、前記電力変換装置200をハウジング210の正面壁部232側から観た図を示している。
ハウジング210の底部には、折り返されることにより併設される2つの冷却水路が循環するように構成され、該冷却水が供給される空間部(図示せず)を挟んだ二重構造からなる水路形成体220を備えている。そして、ハウジング210の正面壁部232には前記空間部に接続される冷却水の入口管212および冷却水の出口管214が備えられ、前記空間部に冷却水の入口管212および冷却水の出口管214を通して冷却水を供給することによって、ハウジング210の底部に冷却水を循環できるようになっている。すなわち、ハウジング210は、その底部において冷却水が循環する冷却水路216が備えられた構成となっている。
また、このハウジング210の前記空間部を形成する前記水路形成体220の上側板(前記パワーモジュール500と対向する側の板)に、たとえば図4に示されるように、前記主側壁部234とほぼ平行な仮想の線分によって二分割される各領域のほぼ中央部にそれぞれ一方の前記正面壁部232から対向する他方の側壁部に延在して開口218、219が形成されている。
ハウジング210の底部には第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504からなる一対のパワーモジュールが配置され、それぞれの各第1のパワーモジュール502、第2のパワーモジュール504は水路形成体220の上方に位置づけられて配置されている。各第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504の放熱面には、多数の並設されたピン状の突起からなる放熱フィン506と507とを備えている。この放熱フィン506と507が形成されている部分が、それぞれ前記水路形成体220の開口218と219の内部に突出している。さらに前記開口はそれぞれ放熱フィン506と507の周囲のパワーモジュール504の放熱面で閉じられ、これにより水漏れが防止され、密閉した水路が216が形成される。
各第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504のそれぞれの放熱フィンRDF1、RDF2とハウジング210の底面に形成された前記開口218と219 は、図5のVIII−VIII線における断面を示す図9に示されている。
このような構成とすることにより、ハウジング210の底部における冷却水による冷却が各第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504の各放熱フィン506と507とにより効率よく行われる。また、各第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504の各放熱フィン506と507が前記開口218と219に沿って挿入配置される構成となることにより、ハウジング210に対する各第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504の位置決めの効果を有する。
また、ハウジング210の前記冷却水の入口管212および冷却水の出口管214が突出している正面壁部232には、該冷却水の入口管212および冷却水の出口管214よりも上方に位置づけられる個所に比較的小さな面積を有するほぼ矩形状の孔260が形成されている。この孔260には、ハウジングの内部から該孔260を通して突出させた状態で、後に詳述する信号用のコネクタ282が配置されるようになっている。
さらに、ハウジング210の主側壁部234には、たとえば図3に示すように、該ハウジング210の開口側(カバーCVが配置される上部)に、前記正面壁部232の側からこの正面壁部232と対向する他の側壁部の側にかけて延在する方向に比較的小さな面積を有する孔262および比較的大きな面積を有する孔264が順次並設されて形成されている。ハウジング210の主側壁部234には、後に詳述する端子ボックス800が配置されるようになっており、該端子ボックス800内の直流電力用の端子台810は前記孔262CH2を通してハウジング210内の第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304に電気的に接続され、該端子ボックス800内の交流用の端子台820は前記孔264を通してハウジング210内の第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504に電気的に接続される。
なお、ハウジング210の各側壁部の内側面には、たとえば図4に示すように、その周方向に沿って並設された複数の突起体PRが形成されている。各突起体PRはそれぞれハウジング210の底部から開口端の側にかけてすなわち高さ方向に延在され、前記開口端の手前で端面を備えて構成されている。これら突起体PRの各端面はハウジング210の底部の水路形成体220とほぼ平行となっているとともに、ねじ孔が形成されている。これら突起体PRは、後に詳述するが、その端面において、ハウジング210の開口を広範囲にわたって閉塞するようにして配置される保持板320をその周辺にて支持するとともに、該保持板320を通して前記ねじ孔に螺入されるねじSC4(図15参照)によって該保持板320を固定させるようになっている。
〈信号用のコネクタ282〉
図10は、前記信号用のコネクタ282およびその近傍の構成を示した断面図である。該信号用のコネクタ282はハウジング210に形成された孔260に、ハウジングの内部から該孔260を通して外側へ突出させた状態で配置されている。
この信号用のコネクタ282は断面がL字状の支持部材SMを介してハウジング210に固定されている。すなわち、信号用のコネクタ282は、該支持部材SMのうちハウジング210の正面壁部232と平行な平板部SM(1)に固定され、該平板部SM(1)が前記ハウジング210の内側面にたとえばねじSC8等によって固定されることにより、前記孔260内に配置されるようになっている。
そして、前記支持部材SMのうち他方の平板部SM(2)は、ハウジング210の内側面と直交して、すなわちハウジング210の底部とほぼ並行に延在して配置され、その下面側においてノイズ除去基板560が、上面側において第2の放電基板520がそれぞれ搭載されるようになっている。
ここで、第2の放電基板520は、支持部材SMの平板部SM(2)の上面に搭載され、ハウジング210の開口(カバー290が取り付けられる側)に近い側に配置された構成となっている。第2の放電基板520は前記ノイズ除去基板560と比較した場合に放電破壊が発生し易く、該破壊が生じた際には新たな放電基板CBDと交換がし易いようにするため、上述した配置としている。
なお、図示されていないが、信号用のコネクタ282からの配線はその大部分がノイズ除去基板560に接続されて構成されている。この場合、信号用のコネクタ282とノイズ除去基板560は何らの障害物もなく近接して配置される構成となっていることから、その配線も極めて容易にできる効果を奏する。
また、図10では、後述するパワーモジュール500とスイッチング駆動回路基板600に対する前記ノイズ除去基板560および第2の放電基板520の配置関係を明示しているが、該ノイズ除去基板560および第2の放電基板520は、パワーモジュール500とスイッチ駆動回路基板600と充分な距離Dを保って配置され、該パワーモジュール500とスイッチ駆動回路基板600からのノイズ等の影響を少なくすることができる。
さらに、平面的に観た場合、互いに重ねられて配置された前記ノイズ除去基板560および第2の放電基板520は、前記パワーモジュール500、スイッチ駆動回路基板600の一部に重ねられて配置されるように構成されている。このことは、平面的に観たハウジング210の面積を、前記パワーモジュール500、スイッチ駆動回路基板600の占める面積にほぼ等しく形成することができ、ノイズ除去基板560および第2の放電基板520における占有面積を考慮する必要がないことを意味し、ハウジング210の小型化を図ることができる。
〈パワーモジュール500およびスイッチ駆動回路基板600〉
図11は、前記ハウジング210の内部にパワーモジュール500とスイッチ駆動回路基板600を配置させた状態を示す平面図である。
パワーモジュール500を構成する第1と第2のパワーモジュール502と504は、前記ハウジング210の内部において、後述する他の電気部品よりも最下層に位置づけられて配置されている。前記第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504は、第1の回転電機130(モータあるいは発電機)および第2の回転電機140(発電機あるいはモータ)をそれぞれ駆動する。
第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504は、その短手方向の辺をハウジング210の正面壁部232に平行になるように、その長手方向の辺を主側壁部234に平行になるように、並列して配置されている。
また、これら第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504は、それぞれの直流端子IT1とIT2および交流端子OT1とOT2を同方向に配置させた状態で幾何学的にも同一の構成からなり、たとえば一方の第1のパワーモジュール502に対し、他方の第2のパワーモジュール504を180°回転させることにより、それらの直流端子IT1、IT2が互いに向き合うようにして配置されるようになっている。この場合、各第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504は、それぞれの直流端子にIT1、IT2において対応するもの同士を近接配置させるため、長手方向に若干ずれた配置となっている。図11に示すように第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504の直流端子IT1とIT2はハウジング210の中央部に配置されており、交流端子OT1、OT2はハウジング210の側部に配置されている。
そして、これら第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504は、図示されていないが、それぞれ、たとえば銅からなる熱伝導性部材の導電基板と、この導電基板の上面の周辺に接着された堰状からなるケースと、前記導電基板の前記ケースに囲まれた領域にたとえば半田付けされる絶縁基板と、この絶縁基板に搭載されるトランジスタ(たとえば絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)およびダイオードとこれらトランジスタおよびダイオードを接続する配線層、これら配線層と接続され前記ケース上に形成された複数の直流端子ITおよび交流端子OT等から構成されている。前記トランジスタの変わりにIGBTを用いても良い。
なお、図11においては、第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504には、それぞれ、スイッチ駆動回路基板602と604が重ねて配置されているため、前記トランジスタおよびダイオード等あるいはIGBTが搭載された中央部の領域は目視されておらず、前記ケース上に形成された直流端子ITおよび交流端子OTが目視された状態となって描かれている。
各第1のパワーモジュール502、第2のパワーモジュール504の直流端子IT1とIT2は、上述したように、該第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504の互いに近接して向き合っている辺の側にそれぞれ並設されて形成され、各第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504の交流端子OT1、OT2は、それぞれ、前記直流端子IT1とIT2が形成された辺と平行な他の辺の側にそれぞれ並設されて形成されている。換言すれば、パワーモジュール500の直流端子ITは並設された各第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504の中央部に位置づけられ、パワーモジュール500の交流端子OTは並設された各第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504の外側に位置づけられるようにして配置されている。
各第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504の直流端子IT1とIT2は後に詳述するコンデンサモジュール300の端子と電気的に接続され、各第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504の交流端子OT1とOT2は後に詳述する端子ボックス800内の交流用の端子台820に接続されるようになっている。
すなわち、第1のパワーモジュール502の交流端子OT1は、U相、V相、W相における各端子OT1u、OT1v、OT1wからなり、これら各端子OT1u、OT1v、OT1wは、それぞれ、その配置個所から並設された各パワーモジュール502と504の一方の短辺側に沿って引き回された後にハウジング210の主側壁部234の側において立設されたバスバーBP1u、BP1v、BP1wを介して、前記ハウジング210の主側壁部234に形成された孔264を通して突出されるリード端子OL1u、OL1v、OL1wに引き出されるようになっている。
また、同様に、第2のパワーモジュール504の交流端子OT2は、U相、V相、W相における各端子OT2u、OT2v、OT2wからなり、これら各端子OT2u、OT2v、OT2wは、それぞれ、その配置個所からハウジング210の主側壁部234の側において立設されたバスバーBP2u、BP2v、BP2wを介して、前記孔264を通して突出されるリード端子OL2u、OL2v、OL2wに引き出される。
なお、各第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504の放熱面には水路に突出する放熱ヒィン506と507が設けられ、各第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504の放熱フィンの周辺においてねじ孔が形成されている。このねじ孔を通してハウジング210の底面に固定されるようになっている。パワーモジュールPUMの上方にはスイッチング駆動回路基板700が配置されている。このスイッチング駆動回路基板700も別体からなる一対の第1の駆動回路基板602および第2の駆動回路基板604からなり、パワーモジュール502の上方に第1の駆動回路基板602が配置され、ねじSC2によって該パワーモジュール502に固定され、第2のパワーモジュール504の上方に第2の駆動回路基板604が配置され、ねじSC2によって該パワーモジュール504に固定されている。
これら第1の駆動回路基板602と第2の駆動回路基板604は、上述したように、それぞれ、第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504にスイッチング信号を供給するための回路基板として構成されている。
これら第1の駆動回路基板602と第2の駆動回路基板604には、その主表面に設けられたコネクタCNを介してハーネスHNが引き出され、このハーネスHNは後述する回転電機制御回路基板700に接続されている。
なお、この実施例の説明では、パワーモジュール500とスイッチ駆動回路基板700は、それぞれ別体のものとして扱っているが、パワーモジュール500基板に該スイッチ駆動回路を一体に設けるようにしても良い。放熱効率や装置の小型化を図る上では、本実施例の方が望ましい。
〈コンデンサモジュール300〉
図12は、前記ハウジング210の内部に平滑コンデンサを備えたコンデンサモジュール300を配置させた状態を示す平面図である。
コンデンサモジュール300は、前記ハウジング210の内部において、前記スイッチング駆動回路基板600の上方に位置づけられて配置されるようになっている。
また、このコンデンサモジュール300は第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304から構成され、第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304はたとえば樹脂材から構成された直方体状のケースにそれぞれたとえば5あるいは6個のフィルムコンデンサ(コンデンサセル)が収納されて構成されている。
第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304はそれぞれ並列されて配置され、第1のコンデンサモジュール302は前記第1の駆動回路基板602の上方に、第2のコンデンサモジュール304は前記第2の駆動回路基板604の上方に配置される。
図13は、第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304を模式的に示した図で、各第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304の長手方向に直交する平面における断面図である。なお、図13(a)、(b)はそれぞれ、前記各第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304の長手方向にずれた個所における各断面図を示している。
これら各第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304は若干離間された状態で、それらの底面側において前記離間部を掛け渡すようにして配置された電極ET1、ET2によって、たとえば相互に固定された状態となっている。この電極ET1、ET2は、それぞれ前記第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504の直流端子INに接続されている。
電極ET1は、その外観において、第1のコンデンサモジュール302のケースCS1の底部においてその内部から外方へ引き出された幅広導体が第1のパワーモジュール502側に屈曲され該第1のパワーモジュール502の直流端子INとの接続を図る接続部JN1を有して構成されている。電極ET1は、第1導電板FC1、絶縁シートIS1、第2導電板SC1の順次3層構造からなる材料で構成され、第1のコンデンサモジュール302内のフィルムコンデンサFIC1の一方の電極は前記各導電板FC1、SC1のうち一方の導電板に接続され、該フィルムコンデンサFIC1の他方の電極は前記各導電板FC1、SC1のうち他方の導電板に接続されている。この電極ET1の前記第1のパワーモジュール502の直流端子INとの接続部JN1にあっては、並設される複数の各直流端子INのそれぞれに応じて、前記各導電板FC1、SC1のうちいずれかが接続されるようになっている(図13(a)の場合、導電板FC1が接続され、図13(b)の場合、導電板SC1が接続されている)。
電極ET2も、その外観において、第2のコンデンサモジュール304のケースCS2の底部においてその内部から外方へ引き出された幅広導体が第2のパワーモジュール504側に屈曲され該第2のパワーモジュール504の直流端子INとの接続を図る接続部JN2を有して構成されている。そして、電極ET2も、第1導電板FC2、絶縁シートIS2、第2導電板SC2の順次3層構造からなる材料で構成され、第2のコンデンサモジュール304内のフィルムコンデンサFIC2の一方の電極が前記各導電板FC2、SC2のうち一方の導電板に接続され、該フィルムコンデンサFIC2の他方の電極が前記各導電板FC2、SC2のうち他方の導電板に接続されている。この電極ET2の前記第2のパワーモジュール504の直流端子INとの接続部JN2にあっては、並設される複数の各直流端子INのそれぞれに応じて、前記各導電板のうちいずれかが接続されるようになっている。
なお、第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304のそれぞれの前記電極ET1、ET2は、それらを構成する第1導電板FC、第2導電板SCが、それぞれ、パワーモジュール500におけるいわゆるU相アームにおける一対の直流端子、V相アームにおける一対の直流端子、W相アームにおける一対の直流端子に接続されることによって、第1のパワーモジュール502、第2のパワーモジュール504に電気的に接続されるようになっている。このことから、図12に示す各第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304の間から目視される電極ET1、ET2(図12では、符号JNで示されている)は、各アームにおける一対の直流端子INの数に対応した数(6個)となっている。
このように電極ET1、ET2を、上述のように、第1導電板FC、絶縁シートIS、第2導電板SCの順次3層構造として構成するのは、第1導電板FCと第2導電板SCのそれぞれに流れる電流の向きを逆になるように構成し、これにより、インダクタンスの結合を惹起せしめ、インダクタンスの低減を図るためである。
なお、前記電極ET1とET2は、図13に示すように、それらの第2のパワーモジュール504の直流端子INとの接続部JN1、JN2において当初から物理的に互いに接続させた状態で構成するようにしてもよく、あるいは、図13の場合とは異なり、予め分離させた状態で構成しておきパワーモジュール500の直流端子INに接続させた段階で互いに物理的に(電気的にも)接続されるように構成してもよい。
前記電極ET1およびET2のパワーモジュール500の直流端子INとの接続部JNは、この接続部JNを通して該直流端子INに螺入されるねじSC3によって前記パワーモジュール500の直流端子INに固定され、信頼性のある電気的接続が図られるようになっている。
図13の模式図に示した第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304および第1のパワーモジュール502、第2のパワーモジュール504は、図9に示す第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304および第1のパワーモジュール502、第2のパワーモジュール504に対応するものである。この場合、図9に示す第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304では、それぞれの電極ET1、ET2の中途部に湾曲部からなるベンド構造部BD1、BD2を備えた構成としている。各電極ET1、ET2に該ベンド構造部BD1、BD2を具備させることによって各電極ET1、ET2における応力をこの部分で吸収し、緩和することができる。
図12に示すように、第1のコンデンサモジュール302には、後述する直流電力用の端子台810を介してバッテリ180に接続される一対の電極TM1が備えられ、第2のコンデンサモジュール304にも、後述する直流電力用の端子台810を介してバッテリ180に接続される一対の電極TM2が備えられている。
第1のコンデンサモジュール302の各電極TM1は、その一方において前記第1導電板FC1に接続され他方において前記第2導電板SC1に接続され、第2のコンデンサモジュール304の各電極TM2は、その一方において前記第1導電板FC2に接続され他方において前記第2導電板SC2に接続されている。
第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304のそれぞれの電極TM1とTM2は、いずれも、ハウジング210の正面壁部232側に配置されて構成されている。このように電極TM1、TM2がハウジング210の正面壁部232側に配置されているのは、後に詳述する端子ボックス800内に配置される直流電力用の端子台810がハウジング210の正面壁部232側に位置づけられているからである。
第1のコンデンサモジュール302の各電極TM1と前記直流電力用の端子台810の電気的接続はバスバーBB1を介して、およびコンデンサモジュールCT2の各電極TM2と前記直流電力用の端子台810の電気的接続はバスバーBB2を介してそれぞれなされている(図3参照)。
なお、たとえば図3に示すように、第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304はそれらの間に若干の隙間を備え、この隙間には第1の放電抵抗(図示せず)および第2の放電抵抗524がそれらの軸方向に沿って並設されている。第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304の間の隙間は、図12に示すように、第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304の各電極ET1とET2の接続部JNを前記ねじSC3によって第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304を第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504と電気的に接続させるために必要となるものであり、また、このような接続の後にあっては前記第1の放電抵抗(図示せず)および第2の放電抵抗524の配置によって該隙間の有効利用を図っている。
さらに、前記第1のコンデンサモジュール302および第2のコンデンサモジュール304は、それぞれ、後述する保持板320に固定されている。すなわち、図12に示すように、平面的に観た第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304は、それぞれ、その四隅において、ナットが埋め込まれた固定用孔FH1、FH2が形成され、前記保持板320の前記固定用孔FH1、FH2に対応する孔を通して当該固定用孔FH1、FH2に螺入されるねじSC4(図15参照)によって、第1のコンデンサモジュール302および第2のコンデンサモジュール304は保持板320に固定される。すなわち、各第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304は保持板320に懸架された状態で固定されている。
〈端子ボックス800〉
端子ボックス800は、電力変換装置200の前記ハウジング210に固定され、その内部には直流電力用の端子台810および交流用の端子台820が配置されている。
該端子ボックス800が取り付けられた側から観た電力変換装置200の外観図を図14に示す。端子ボックス800はハウジング210の主側壁部234に複数のねじSC5によって取り付けられている。
図2乃至図4に示すように、ハウジング210の主側壁部234に形成された比較的小さな孔262および比較的大きな孔264にそれぞれ対応させて、端子ボックス800に比較的小さな孔266および比較的大きな孔268が形成されている。端子ボックス800はこれら各孔266と268とを二分する隔壁852が設けられており、孔266の側のスペースには直流電力用の端子台810が配置され、孔268の側のスペースには交流用の端子台820が配置されている。
前記直流電力用の端子台810はノイズフィルタを備えており、直流電力端子812を通して前記バッテリ180から供給された直流電力が、この直流電力用の端子台810に設けられたノイズフィルタでノイズが除去される。またノイズフィルタはパワーモジュール500のスイッチング動作で発生するノイズが外部に出て行くのを防止する。
前記直流電力用の端子台810から断面が平角の導電材が、前記孔266および前記孔262を通して延び、前記直流電力用の端子台810に近接して配置される前記ハウジング210の内部の一対の端子TTと電気的に接続する。この端子TTは、前記バスバーBB1およびBB2を介して第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304のそれぞれの電極TM1とTM2に接続され、さらにパワーモジュール500の直流端子に電気的に接続している。
前記交流用の端子台820は、ハウジング210の前記孔264および端子ボックス800の前記孔268を通して挿入されるリード端子OL1とOL2に接続されている。前記リード端子OL1は第1のパワーモジュール502の交流端子OT1とバスバーBP1を介して接続されるており、リード端子OL2は第2のパワーモジュール504の交流端子OT2とバスバーBP2を介して接続されている。
前記リード端子OL1はリード端子OL1wとOL1vとOL1uを有しており、端子ボックス800に設けられた交流電力接続部822を介してそれぞれ、第1の回転電機130のW相接続端子とV相接続端子とU相接続端子に接続されるように、端子ボックス800は構成されている。同様に前記リード端子OL2はリード端子OL2wとOL2vとOL12とを有しており、それぞれは第2の回転電機140のW相接続端子とV相接続端子とU相接続端子に、交流電力接続部822を介して接続されるように、端子ボックス800は構成されている。前記交流用の端子台820は交流電流を検知する電流センサ536と538を有しており、第1の回転電機130と第2の回転電機140の各相を流れる電流を検出する。
前記端子ボックス800はその上端面側に端子ボックスのカバー846を、下端面側には前記直流電力用の端子台810を有する底部844を備えている。この実施形態では、端子ボックス800を有し、この端子ボックスを介して外部の直流電源と各回転電機に接続される構造であり、車種により各回転電機や直流電源の位置が異なっていても、本体の構造を変えることなく、あるいは若干の変更で対応できる効果がある。
〈保持板320〉
図14は、前記ハウジング210の内部に保持板320を配置させた状態を示す平面図で、該保持板320に搭載された回転電機制御回路基板700をも示している。
保持板320は回転電機制御回路基板700を備えた制御基板ブラケットとして構成され、前記ハウジング210の内部において、前記コンデンサモジュール300の上側に位置した状態で前記ハウジング210に固定されている。
すなわち、ハウジング210の内側面にはその周方向に沿ってほぼ等間隔に複数個の突起体PRが形成され、該突起体PRの上端面が前記保持板320をその周辺において支持させ、該保持板320の周辺に形成されたねじ孔を通して前記突出部PRの上端面に螺入されるねじSC4によって定位置に配置できるようになっている。
保持板320は、その機械的強度を向上するため、ハウジング210と同様熱伝達の良い金属材料、例えばアルミ材料で作られている。また、前記回転電機制御回路基板700が載置される面においてパターン化された凹凸面が形成されている。
保持板320の前記凹面は、前記回転電機制御回路基板700の該保持板320の側の面における配線層等の形成領域に対向した部分において形成され、これにより、前記配線層等が金属材である保持板320と接触するのを防止でき、該配線層に電気的短絡が生じるのを防止できる。
また、保持板320の前記凸面は、前記回転電機制御回路基板700の前記第2基板BST2と反対側の面に搭載された比較的大型で発熱が生じるようなたとえば半導体素子等と前記回転電機制御回路基板700を介して対向する部分において形成され、これにより、前記半導体素子等からの発熱を第2基台の側へ伝導し易くなるように構成されている。この場合、前記凸面と回転電機制御回路基板700との間には熱伝導が良好で絶縁材からなるたとえばシート等を介在させ、前記半導体素子等の搭載領域に対して該回転電機制御回路基板700の反対側に形成された配線層等の前記保持板320による電気的短絡を防止するようにしてもよい。
前記保持板320の前記回転電機制御回路基板700との対向面のたとえば前記凹面内に、図3に示すように、複数の散在されたボス部BSが形成され、このボス部において前記回転電機制御回路基板700に形成されたねじ孔を通して螺入されるねじSC6(図15参照)によって、該回転電機制御回路基板700が保持板320に固定されるようになっている。
なお、この保持板320は、その下方に配置される前記第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304を、該保持板320に形成されたねじ孔を通し前記第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304の四隅に設けられた固定用孔FH1、FH2に螺入されるねじSC4によって、固定していることは上述した通りである。
このように、各第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304は、ハウジング210に当接されて配置されている保持板320に固体された構成となっているため、該第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304から発生した熱は保持板320を通してハウジング210に伝導され易く放熱効果に優れた構成となっている。
〈回転電機制御回路基板700〉
図15は、前記ハウジング210内の保持板320上に搭載させた回転電機制御回路基板700を示した平面図である。
この回転電機制御回路基板700は、小信号用の電子部品がコネクタCNとともに搭載されている。このコネクタCNは、ハーネスHNを介してたとえば前記スイッチ駆動回路基板6001に搭載されたコネクタCNに接続されている。
この回転電機制御回路基板700は、たとえばその周辺の四隅の各領域において、また、該周辺を除く中央部の領域であって、各部品が搭載された領域およびこれら部品を接続する配線層が形成された領域を回避させた領域において、ねじ孔が形成され、これらねじ孔を通して前記保持板320に螺入されるねじSC6によって、該保持板320に固定されるようになっている。
これにより、前記回転電機制御回路基板700は、たとえばその周縁部のみでフレームに固定される構造の場合と比較して、振動等で中央が撓んでしまうという弊害を回避することができる。
上述したように、この回転電機制御回路基板700は、ハウジング210に当接されて配置されている保持板320に載置された構成となっているため、該回転電機制御回路基板700から発生した熱は保持板320を通してハウジング210に伝導され易く放熱効果に優れた構成となっている。
〈カバー290〉
カバー290は、前記ハウジング210の内部に、前記第1のパワーモジュール502、第2のパワーモジュール504、スイッチ駆動回路基板6001、6002、第1のコンデンサモジュール302と第2のコンデンサモジュール304、保持板320、回転電機制御回路基板700を順次収納させた後に、該ハウジング210の開口を閉塞させる蓋材からなっている。
このカバー290は、その材料がたとえばハウジング210と同様の材料で構成され、その周辺において周方向にほぼ等間隔に沿って並設されたねじ孔を通してハウジング210の上端面に螺入されるねじSC7によって、該ハウジング210に固定されている(図5参照)。
《電力変換装置200の組み立て》
図2から図4を用いて電力変換装置200の組み立てについて説明する。
ステップ1:冷却水の入口管212および出口管214を備えたハウジング210に、第1のパワーモジュール502と第2のパワーモジュール504および第1の駆動回路基板602と第2の駆動回路基板604を備えたパワーモジュールの組み立て体を組み付ける。このときハウジング210の一方側である底部に設けられた水路216の開口218と219にパワーモジュールの組み立て体の放熱フィン506と507が挿入され、水路216の開口218と219が密閉される。また第1のパワーモジュール502や第2のパワーモジュール504と回転電機130や140とを電気的につなぐためのバスバーが固定される。前記開口218と219に放熱フィン506と507が挿入される際に、開口の周囲で位置決めができ、前記組み立て体を組み付ける作業の作業性が向上する。
ステップ2:前記パワーモジュールの組み立て体に上記信号用のコネクタ282や上記ノイズ除去基板560および上記第2の放電基板520が取付けられる。なお、前記パワーモジュールの組み立て体に上記信号用のコネクタ282や上記ノイズ除去基板560および上記第2の放電基板520を取り付けた後、パワーモジュールの組み立て体580をハウジング210に組み付けるようにしても良い。
ステップ3:複数のコンデンサモジュール302と304を有する上記コンデンサモジュール300が上記パワーモジュールの組み立て体580の上に挿入され、配線が施される。
ステップ4:コンデンサモジュール300の上に保持板320が位置するように、保持板320がハウジング210の側壁に取れつけられる。この工程でコンデンサモジュール300が保持板320に固定される。コンデンサモジュール300とパワーモジュールの組み立て体との電気的な接続を行ってからその上に位置する保持板320を取り付ける方がコンデンサモジュール300とパワーモジュールの電気接続の作業性が向上する。しかし、先に保持板320にコンデンサモジュール300を固定し、コンデンサモジュール300を固定した保持板320をパワーモジュールの組み立て体580の上に組み付けるようにしても良い。この場合、配線作業を保持板320の取付け後に行うこととなり、保持板320とハウジング210の内壁の一部に作業用の孔を設けておくと作業性が向上する。
ステップ5:保持板320に回転電機制御回路基板700が固定され、配線の接続が行われる。但し、保持板320に回転電機制御回路基板700を固定し、その後保持板320をハウジング210の側壁に固定するようにしても良い。保持板320をハウジング210に固定する前に回転電機制御回路基板700を保持板320に固定した方が作業性が向上するし、配線接続の信頼性も確保し易い。
ステップ6:次にカバー290を取り付ける。
ステップ7:ハウジング210に交流用の端子台820を取り付け、直流電力用の端子台810を内蔵した端子ボックス800がハウジング210に取り付けられる。底板部844がこの端子ボックス800の本体840に取り付けられて、電気的な接続がなされ、その本体840にカバー部846が取り付けられる。なお、ハウジング210への端子ボックス800の取り付けが完了してから、カバー290を取り付けても良い。またハウジング210への端子ボックス800の取り付けが完了してから、コンデンサモジュール300や保持板320の取り付けを行っても良い。
《電力変換装置200のエンジンルームへの配置の一態様》
このように構成した電力変換装置200は、そのハウジング210の正面壁部232に、信号用のコネクタ282、冷却水の循環用の冷却水の入口管212および冷却水の出口管214が備えられ、また、前記正面壁部232に直交する主側壁部234に、直流電力用の端子台810および交流用の端子台820を内蔵させた端子ボックス800が備えられた構成となっている。
このことは、該電力変換装置200と物理的あるいは電気的に接続される他の装置を、該電力変換装置200のたとえば前方および両側面のうちの一方の側面側に集約させて配置させることができ、このことは該電力変換装置200を配置すべきスペースの壁側にも配置させることができ、該電力変換装置200の配置の裕度性を向上させる効果を有する。
図16は、エンジン120を中央に配置させたエンジンルーム102において、2つの電力変換装置200の配置態様の一実施例を示した平面図である。
一方の電力変換装置200はエンジン120の左側であってエンジンルーム102の奥側に配置され、他方の電力変換装置200は該エンジン120の右側であって該エンジンルーム102の奥側に配置されている。
この場合、各電力変換装置200は、そのハウジング210の正面壁部232を手前に配置させた場合に、それぞれ主側壁部234が互いに逆の方向に位置づけられる関係に構成されている。
このため、各電力変換装置200は、それらの信号用のコネクタ282、冷却水の循環用の冷却水の入口管212および冷却水の出口管214CLOが手前の側に指向され、それらの端子ボックス800はエンジン120の側に指向されるようになる。
このことから、図16に示すように、エンジン120を間にして各電力変換装置200をエンジンルームの奥側に配置させることができ、他の装置との物理的および電気的な接続を容易に行うことができる。
本発明による電力変換装置は、たとえばハイブリッド自動車に適用されるものについて説明したものである。しかし、これに限定されることはなく、少なくとも電動機を使用し、その制御にインバータを要する全ての電力変換装置に適用できることはいうまでもない。
上述した各実施例はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施例での効果を単独であるいは相乗して奏することができるからである。