以下、本発明の実施例を図に基づいて説明する。本実施形態のインバータは、電動機を車輌の唯一の駆動源とする電気自動車や、内燃機関であるエンジンと電動機とを車輌の駆動源とするハイブリッド電気自動車等の電動車輌に搭載されるものであって、車載電源であるバッテリから供給された直流電力を三相交流電力に変換して電動機に供給する電力変換装置である。
本発明の実施形態に係る電力変換装置について、図面を参照しながら以下詳細に説明する。本発明の実施形態に係る電力変換装置は、ハイブリッド用の自動車や純粋な電気自動車に適用可能であるが、代表例として、本発明の実施形態に係る電力変換装置をハイブリッド自動車に適用した場合の制御構成と電力変換装置の回路構成について、図1と図2を用いて説明する。図1はハイブリッド自動車の制御ブロックを示す図である。
本発明の実施形態に係る電力変換装置では、自動車に搭載される車載電機システムの車載用電力変換装置、特に、車両駆動用電機システムに用いられ、搭載環境や動作的環境などが大変厳しい車両駆動用インバータ装置を例に挙げて説明する。車両駆動用インバータ装置は、車両駆動用電動機の駆動を制御する制御装置として車両駆動用電機システムに備えられ、車載電源を構成する車載バッテリ或いは車載発電装置から供給された直流電力を所定の交流電力に変換し、得られた交流電力を車両駆動用電動機に供給して車両駆動用電動機の駆動を制御する。また、車両駆動用電動機は発電機としての機能も有しているので、車両駆動用インバータ装置は運転モードに応じ、車両駆動用電動機の発生する交流電力を直流電力に変換する機能も有している。変換された直流電力は車載バッテリに供給される。
図1において、ハイブリッド電気自動車(以下、「HEV」と記述する)110は1つの電動車両であり、2つの車両駆動用システムを備えている。その1つは、内燃機関であるエンジン120を動力源としたエンジンシステムである。エンジンシステムは、主としてHEVの駆動源として用いられる。もう1つは、モータジェネレータ192,194を動力源とした車載電機システムである。車載電機システムは、主としてHEVの駆動源及びHEVの電力発生源として用いられる。モータジェネレータ192,194は例えば同期機あるいは誘導機であり、運転方法によりモータとしても発電機としても動作するので、ここではモータジェネレータと記すこととする。
車体のフロント部には前輪車軸114が回転可能に軸支されている。前輪車軸114の両端には1対の前輪112が設けられている。車体のリア部には後輪車軸(図示省略)が回転可能に軸支されている。後輪車軸の両端には1対の後輪が設けられている。本実施形態のHEVでは、動力によって駆動される主輪を前輪112とし、連れ回される従輪を後輪とする、いわゆる前輪駆動方式を採用しているが、この逆、すなわち後輪駆動方式を採用しても構わない。
前輪車軸114の中央部には前輪側デファレンシャルギア(以下、「前輪側DEF」と記述する)116が設けられている。前輪車軸114は前輪側DEF116の出力側に機械的に接続されている。前輪側DEF116の入力側には変速機118の出力軸が機械的に接続されている。前輪側DEF116は、変速機118によって変速されて伝達された回転駆動力を左右の前輪車軸114に分配する差動式動力分配機構である。変速機118の入力側にはモータジェネレータ192の出力側が機械的に接続されている。モータジェネレータ192の入力側には動力分配機構122を介してエンジン120の出力側及びモータジェネレータ194の出力側が機械的に接続されている。尚、モータジェネレータ192,194及び動力分配機構122は、変速機118の筐体の内部に収納されている。
モータジェネレータ192,194は、回転子に永久磁石を備えた同期機であり、固定子の電機子巻線に供給される交流電力がインバータ装置140,142によって制御されることによりモータジェネレータ192,194の駆動が制御される。インバータ装置140,142にはバッテリ136が電気的に接続されており、バッテリ136とインバータ装置140,142との相互において電力の授受が可能である。
本実施形態では、モータジェネレータ192及びインバータ装置140からなる第1電動発電ユニットと、モータジェネレータ194及びインバータ装置142からなる第2電動発電ユニットとの2つを備え、運転状態に応じてそれらを使い分けている。すなわち、エンジン120からの動力によって車両を駆動している場合において、車両の駆動トルクをアシストする場合には第2電動発電ユニットを発電ユニットとしてエンジン120の動力によって作動させて発電させ、その発電によって得られた電力によって第1電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させる。また、同様の場合において、車両の車速をアシストする場合には第1電動発電ユニットを発電ユニットとしてエンジン120の動力によって作動させて発電させ、その発電によって得られた電力によって第2電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させる。
また、本実施形態では、バッテリ136の電力によって第1電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させることにより、モータジェネレータ192の動力のみによって車両の駆動ができる。さらに、本実施形態では、第1電動発電ユニット又は第2電動発電ユニットを発電ユニットとしてエンジン120の動力或いは車輪からの動力によって作動させて発電させることにより、バッテリ136の充電ができる。
バッテリ136はさらに補機用のモータ195を駆動するための電源としても使用される。補機としては例えばエアコンディショナーのコンプレッサを駆動するモータ、あるいは制御用の油圧ポンプを駆動するモータであり、バッテリ136からインバータ43装置に直流電力が供給され、インバータ装置43で交流の電力に変換されてモータ195に供給される。前記インバータ装置43はインバータ装置140や142と同様の機能を持ち、モータ195に供給する交流の位相や周波数,電力を制御する。例えばモータ195の回転子の回転に対し進み位相の交流電力を供給することにより、モータ195はトルクを発生する。一方、遅れ位相の交流電力を発生することで、モータ195は発電機として作用し、モータ195は回生制動状態の運転となる。このようなインバータ装置43の制御機能はインバータ装置140や142の制御機能と同様である。モータ195の容量がモータジェネレータ192や194の容量より小さいので、インバータ装置43の最大変換電力がインバータ装置140や142より小さいが、インバータ装置43の回路構成は基本的にインバータ装置140や142の回路構成と同じである。
インバータ装置140や142およびインバータ装置43さらにコンデンサモジュール500は電気的に密接な関係にある。さらに発熱に対する対策が必要な点が共通している。また装置の体積をできるだけ小さく作ることが望まれている。これらの点から以下で詳述する電力変換装置は、インバータ装置140や142およびインバータ装置43さらにコンデンサモジュール500を電力変換装置の筐体内に内蔵している。この構成により、小型で信頼性の高い装置が実現できる。
またインバータ装置140や142およびインバータ装置43さらにコンデンサモジュール500を一つの筐体に内蔵することで、配線の簡素化やノイズ対策で効果がある。またコンデンサモジュール500とインバータ装置140や142およびインバータ装置43との接続回路のインダクタンスを低減でき、スパイク電圧を低減できると共に、発熱の低減や放熱効率の向上を図ることができる。
次に、図2を用いてインバータ装置140や142あるいはインバータ装置43の電気回路構成を説明する。尚、図1,図2に示す実施形態では、インバータ装置140や142あるいはインバータ装置43をそれぞれ個別に構成する場合を例に挙げて説明する。インバータ装置140や142あるいはインバータ装置43は同様の構成で同様の作用を為し、同様の機能を有しているので、ここでは、代表例としてインバータ装置140の説明を行う。
本実施形態に係る電力変換装置200は、インバータ装置140とコンデンサモジュール500とを備え、インバータ装置140はインバータ回路144と制御部170とを有している。また、インバータ回路144は、上アームとして動作するIGBT328(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)及びダイオード156と、下アームとして動作するIGBT330及びダイオード166と、からなる上下アーム直列回路150を複数有し(図2の例では3つの上下アーム直列回路150,150,150)、それぞれの上下アーム直列回路150の中点部分(中間電極169)から交流端子159を通してモータジェネレータ192への交流電力線(交流バスバー)186と接続する構成である。また、制御部170はインバータ回路144を駆動制御するドライバ回路174と、ドライバ回路174へ信号線176を介して制御信号を供給する制御回路172と、を有している。
上アームと下アームのIGBT328や330は、スイッチング用パワー半導体素子であり、制御部170から出力された駆動信号を受けて動作し、バッテリ136から供給された直流電力を三相交流電力に変換する。この変換された電力はモータジェネレータ192の電機子巻線に供給される。
インバータ回路144は3相ブリッジ回路により構成されており、3相分の上下アーム直列回路150,150,150がそれぞれ、バッテリ136の正極側と負極側に電気的に接続されている直流正極端子314と直流負極端子316の間に電気的に並列に接続されている。
本実施形態では、スイッチング用パワー半導体素子としてIGBT328や330を用いることを例示している。IGBT328や330は、コレクタ電極153,163,エミッタ電極(信号用エミッタ電極端子155,165),ゲート電極(ゲート電極端子154,164)を備えている。IGBT328,330のコレクタ電極153,163とエミッタ電極との間にはダイオード156,166が図示するように電気的に接続されている。ダイオード156,166は、カソード電極及びアノード電極の2つの電極を備えており、IGBT328,330のエミッタ電極からコレクタ電極に向かう方向が順方向となるように、カソード電極がIGBT328,330のコレクタ電極に、アノード電極がIGBT328,330のエミッタ電極にそれぞれ電気的に接続されている。スイッチング用パワー半導体素子としてはMOSFET(金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ)を用いてもよい、この場合はダイオード156やダイオード166は不要となる。
上下アーム直列回路150は、モータジェネレータ192の電機子巻線の各相巻線に対応して3相分設けられている。3つの上下アーム直列回路150,150,150はそれぞれ、IGBT328のエミッタ電極とIGBT330のコレクタ電極163を接続する中間電極169,交流端子159を介してモータジェネレータ192へのU相,V相,W相を形成している。上下アーム直列回路同士は電気的に並列接続されている。上アームのIGBT328のコレクタ電極153は正極端子(P端子)157を介してコンデンサモジュール500の正極側コンデンサ電極に、下アームのIGBT330のエミッタ電極は負極端子(N端子)158を介してコンデンサモジュール500の負極側コンデンサ電極にそれぞれ電気的に接続(直流バスバーで接続)されている。各アームの中点部分(上アームのIGBT328のエミッタ電極と下アームのIGBT330のコレクタ電極との接続部分)にあたる中間電極169は、モータジェネレータ192の電機子巻線の対応する相巻線に交流コネクタ188を介して電気的に接続されている。
コンデンサモジュール500は、IGBT328,330のスイッチング動作によって生じる直流電圧の変動を抑制する平滑回路を構成するためのものである。コンデンサモジュール500の正極側コンデンサ電極にはバッテリ136の正極側が、コンデンサモジュール500の負極側コンデンサ電極にはバッテリ136の負極側がそれぞれ直流コネクタ138を介して電気的に接続されている。これにより、コンデンサモジュール500は、上アームIGBT328のコレクタ電極153とバッテリ136の正極側との間と、下アームIGBT330のエミッタ電極とバッテリ136の負極側との間で接続され、バッテリ136と上下アーム直列回路150に対して電気的に並列接続される。
制御部170はIGBT328,330を作動させるためのものであり、他の制御装置やセンサなどからの入力情報に基づいて、IGBT328,330のスイッチングタイミングを制御するためのタイミング信号を生成する制御回路172と、制御回路172から出力されたタイミング信号に基づいて、IGBT328,330をスイッチング動作させるためのドライブ信号を生成するドライブ回路174とを備えている。
制御回路172は、IGBT328,330のスイッチングタイミングを演算処理するためのマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と記述する)を備えている。マイコンには入力情報として、モータジェネレータ192に対して要求される目標トルク値,上下アーム直列回路150からモータジェネレータ192の電機子巻線に供給される電流値、及びモータジェネレータ192の回転子の磁極位置が入力されている。目標トルク値は、不図示の上位の制御装置から出力された指令信号に基づくものである。電流値は、電流センサ180から出力された検出信号に基づいて検出されたものである。磁極位置は、モータジェネレータ192に設けられた回転磁極センサ(不図示)から出力された検出信号に基づいて検出されたものである。本実施形態では3相の電流値を検出する場合を例に挙げて説明するが、2相分の電流値を検出するようにしても構わない。
制御回路172内のマイコンは、目標トルク値に基づいてモータジェネレータ192のd,q軸の電流指令値を演算し、この演算されたd,q軸の電流指令値と、検出されたd,q軸の電流値との差分に基づいてd,q軸の電圧指令値を演算し、この演算されたd,q軸の電圧指令値を、検出された磁極位置に基づいてU相,V相,W相の電圧指令値に変換する。そして、マイコンは、U相,V相,W相の電圧指令値に基づく基本波(正弦波)と搬送波(三角波)との比較に基づいてパルス状の変調波を生成し、この生成された変調波をPWM(パルス幅変調)信号としてドライバ回路174に出力する。
ドライバ回路174は、下アームを駆動する場合、PWM信号を増幅し、これをドライブ信号として、対応する下アームのIGBT330のゲート電極に、上アームを駆動する場合、PWM信号の基準電位のレベルを上アームの基準電位のレベルにシフトしてからPWM信号を増幅し、これをドライブ信号として、対応する上アームのIGBT328のゲート電極にそれぞれ出力する。これにより、各IGBT328,330は、入力されたドライブ信号に基づいてスイッチング動作する。
また、制御部170は、異常検知(過電流,過電圧,過温度など)を行い、上下アーム直列回路150を保護している。このため、制御部170にはセンシング情報が入力されている。例えば各アームの信号用エミッタ電極端子155,165からは各IGBT328,330のエミッタ電極に流れる電流の情報が、対応する駆動部(IC)に入力されている。これにより、各駆動部(IC)は過電流検知を行い、過電流が検知された場合には対応するIGBT328,330のスイッチング動作を停止させ、対応するIGBT328,330を過電流から保護する。上下アーム直列回路150に設けられた温度センサ(不図示)からは上下アーム直列回路150の温度の情報がマイコンに入力されている。また、マイコンには上下アーム直列回路150の直流正極側の電圧の情報が入力されている。マイコンは、それらの情報に基づいて過温度検知及び過電圧検知を行い、過温度或いは過電圧が検知された場合には全てのIGBT328,330のスイッチング動作を停止させ、上下アーム直列回路150(引いては、この回路150を含む半導体モジュール)を過温度或いは過電圧から保護する。
インバータ回路144の上下アームのIGBT328,330の導通および遮断動作が一定の順で切り替わり、この切り替わり時のモータジェネレータ192の固定子巻線の電流は、ダイオード156,166によって作られる回路を流れる。
上下アーム直列回路150は、図示するように、Positive端子(P端子,正極端子)157,Negative端子(N端子158,負極端子),上下アームの中間電極169からの交流端子159,上アームの信号用端子(信号用エミッタ電極端子)155,上アームのゲート電極端子154,下アームの信号用端子(信号用エミッタ電極端子)165,下アームのゲート端子電極164、を備えている。また、電力変換装置200は、入力側に直流コネクタ138を有し、出力側に交流コネクタ188を有して、それぞれのコネクタ138と188を通してバッテリ136とモータジェネレータ192にそれぞれ接続される。また、モータジェネレータへ出力する3相交流の各相の出力を発生する回路として、各相に2つの上下アーム直列回路を並列接続する回路構成の電力変換装置であってもよい。
図3〜図6において、200は電力変換装置、10は上部ケース、11は金属ベース板、12は筐体、13は冷却水入口配管、14は冷却水出口配管、420はカバー、16は下部ケース、17は交流ターミナルケース、18は交流ターミナル、19は冷却水流路、20は制御回路基板で制御回路172を保持している。21は外部との接続のためのコネクタ、22は駆動回路基板でドライバ回路174を保持している。300はパワーモジュール(半導体モジュール部)で2個設けられており、それぞれのパワーモジュールにはインバータ回路144が内蔵されている。700は積層導体板、800はOリング、304は金属ベース、188は交流コネクタ、314は直流正極端子、316は直流負極端子、500はコンデンサモジュール、502はコンデンサモジュールケース、504は正極側コンデンサ端子、506は負極側コンデンサ端子、514はコンデンサセル、をそれぞれ表す。
図3は、本発明の実施形態に係る電力変換装置の全体構成の外観斜視図を示す。本実施形態に係る電力変換装置200の外観は、上面あるいは底面が略長方形の筐体12と、前記筐体12の短辺側の外周の1つに設けられた冷却水入口配管13および冷却水出口配管14と、前記筐体12の上部開口を塞ぐための上部ケース10と、前記筐体12の下部開口を塞ぐための下部ケース16とを固定して形成されたものである。筐体12の底面図あるいは上面図の形状を略長方形としたことで、車両への取り付けが容易となり、また生産し易い効果がある。
前記電力変換装置200の長辺側の外周にはモータジェネレータ192や194との接続を助けるための2組の交流ターミナルケース17が設けられる。交流ターミナル18は、パワーモジュール300とモータジェネレータ192,194とを電気的に接続して、該パワーモジュール300から出力される交流電流を該モータジェネレータ192,194へ伝達する。
コネクタ21は、筐体12に内蔵された制御回路基板20に接続されており、外部からの各種信号を該制御回路基板20に伝送する。直流(バッテリ)電源側正極端子510と直流(バッテリ)電源側負極端子512は、バッテリ136とコンデンサモジュール500とを電気的に接続する。ここで本実施形態では、コネクタ21は、前記筐体12の短辺側の外周面の一方側に設けられる。一方、直流(バッテリ)電源側正極端子510と直流(バッテリ)電源側負極端子512は、前記コネクタ21が設けられた面とは反対側の短辺側の外周面に設けられる。つまり、コネクタ21と直流(バッテリ)電源側正極端子510が離れた配置となっている。これにより、直流(バッテリ)電源側正極端子510から筐体12に侵入し、さらにコネクタ21まで伝播するノイズを低減することでき、制御回路基板20によるモータの制御性を向上させることができる。
図4は、本発明の実施形態に係る電力変換装置の全体構成を各構成要素に分解した斜視図である。
図4に示すように、筐体12の中ほどに冷却水流路19が設けられ、該冷却水流路19の上部には流れの方向に並んで2組の開口400と402が形成されている。前記2組の開口400と402がそれぞれパワーモジュール300で塞がれる様に2個のパワーモジュール300が前記冷却水流路19の上面に固定されている。各パワーモジュール300には放熱のためのフィン305が設けられており、各パワーモジュール300のフィン305はそれぞれ前記冷却水流路19の開口400と402から冷却水の流れの中に突出している。
前記冷却水流路19の下側にはアルミ鋳造を行いやすくするための開口404が形成されており、前記開口404はカバー420で塞がれている。また前記冷却水流路19の下側には補機用のインバータ装置43が取り付けられている。前記補機用のインバータ装置43は、図2に示すインバータ回路144と同様の回路が内蔵されており、前記インバータ回路144を構成しているパワー半導体素子を内蔵したパワーモジュールを有している。補機用のインバータ装置43は前記内蔵している前記パワーモジュールの放熱金属面が前記冷却水流路19の下面に対向するようにして、前記冷却水流路19の下面に固定されている。また、パワーモジュール300と筐体12との間には、シールをするためのOリング800が設けられ、さらにカバー420と筐体12との間にもOリング802が設けられる。本実施形態ではシール材をOリングとしているが、Oリングの代わりに樹脂材・液状シール・パッキンなどを代用しても良く、特に液状シールを用いた場合には電力変換装置200の組立性を向上させることができる。
さらに前記冷却水流路19の下部に放熱作用を為す下部ケース16が設けられ、前記下部ケース16にはコンデンサモジュール500が、コンデンサモジュール500の金属材からなるケースの放熱面が前記下部ケース16の面に対向するようにして前記下部ケース16の面に固定されている。この構造により冷却水流路19の上面と下面とを利用して効率良く冷却することができ、電力変換装置全体の小型化に繋がる。
冷却水入出口配管13,14からの冷却水が冷却水流路19を流れることによって、併設されている2個のパワーモジュール300が有する放熱フィンが冷却され、前記2個のパワーモジュール300全体が冷却される。冷却水流路19の下面に設けられた補機用のインバータ装置43も同時に冷却する。
さらに冷却水流路19が設けられている筐体12が冷却されることにより、筐体12の下部に設けられた下部ケース16が冷却され、この冷却によりコンデンサモジュール500の熱が下部ケース16および筐体12を介して冷却水に熱的伝導され、コンデンサモジュール500が冷却される。
パワーモジュール300の上方には、該パワーモジュール300とコンデンサモジュール500とを電気的に接続するための積層導体板700が配置される。この積層導体板700は、2つのパワーモジュール300に跨って、2つのパワーモジュール300の幅方向に幅広に構成されている。さらに、積層導体板700は、コンデンサモジュール500の正極側端子と接続される正極側導体板702と、負極側端子と接続される負極側導体板704と、該正極側端子と該負極側端子と間に配置される絶縁部材によって構成される。これにより積層導体板700の積層面積を広げることができるので、パワーモジュール300からコンデンサモジュール500までの寄生インダクタンスの低減を図ることができる。また、一つの積層導体板700を2つのパワーモジュール300に載置した後、積層導体板700とパワーモジュール300とコンデンサモジュール500との電気的な接続を行うことが出来るので、パワーモジュール300を2つ備える電力変換装置であっても、その組立工数を抑えることができる。
積層導体板700の上方には制御回路基板20と駆動回路基板22とが配置され、駆動回路基板22には図2に示すドライバ回路174が搭載され、制御回路基板20には図2に示すCPUを有する制御回路172が搭載される。また、駆動回路基板22と制御回路基板20の間には金属ベース板11が配置され、金属ベース板11は両基板22,20に搭載される回路群の電磁シールドの機能を奏すると共に駆動回路基板22と制御回路基板20とが発生する熱を逃がし、冷却する作用を有している。このように筐体19の中央部に冷却水流路19を設け、その一方の側に車両駆動用のパワーモジュール300を配置し、また他方の側に補機用のパワーモジュール43を配置することで、少ない空間で効率良く冷却でき、電力変換装置全体の小型化が可能となる。また筐体中央部の冷却水流路19の主構造を筐体12と一体にアルミ材の鋳造で作ることにより、冷却水流路19は冷却効果に加え機械的強度を強くする効果がある。またアルミ鋳造で作ることで筐体12と冷却水流路19とが一体構造となり、熱伝導が良くなり冷却効率が向上する。
駆動回路基板22には、金属ベース板11を通り抜けて、制御回路基板20の回路群との接続を行う基板間コネクタ23が設けられている。また、制御回路基板20には外部との電気的接続を行うコネクタ21が設けられている。コネクタ21により電力変換装置の外の、例えばバッテリ136として車に搭載されているリチウム電池モジュールとの信号の伝送が行われ、リチウム電池モジュールから電池の状態を表す信号やリチウム電池の充電状態などの信号が送られてくる。前記制御回路基板20に保持されている制御回路172との信号の授受を行うために前記基板間コネクタ23が設けられており、図示を省略しているが図2に示す信号線176が設けられ、この信号線176と基板間コネクタ23を介して制御回路基板20からインバータ回路のスイッチングタイミングの信号が駆動回路基板22に伝達され、駆動回路基板22で駆動信号であるゲート駆動信号を発生し、パワーモジュールのゲート電極にそれぞれ印加される。
筐体12の上部と下部には開口が形成され、これら開口はそれぞれ上部ケース10と下部ケース16が例えばネジ等で筐体12に固定されることにより塞がれる。筐体12の中央に冷却水流路19が設けられ、前記冷却水流路19にパワーモジュール300やカバー420を固定する。このようにして冷却水流路19を完成させ、水路の水漏れ試験を行う。水漏れ試験に合格した場合に、次に前記筐体12の上部と下部の開口から基板やコンデンサモジュール500を取り付ける作業を行うことができる。このように中央に冷却水流路19に配置し、次に前記筐体12の上部と下部の開口から必要な部品を固定する作業が行える構造を為しており、生産性が向上する。また冷却水流路19を最初に完成させ、水漏れ試験の後その他の部品を取り付けることが可能となり、生産性と信頼性の両方が向上する。
図5は冷却水流路19を有する筐体12のアルミ鋳造品に冷却水入口配管と出口配管を取り付けた図であり、図5(a)は筐体12の斜視図、図5(b)は筐体12の上面図、図5(c)は筐体12の下面図である。図5に示す如く筐体12と前記筐体12の内部に設けられた冷却水流路19が一体に鋳造されている。筐体12の上面あるいは下面は略長方形の形状を為し、長方形の短辺の一方側筐体側面に冷却水を取り入れるための冷却水入口配管13が設けられ、同じ側面に冷却水入口配管14が設けられている。
前記冷却水入口配管13から冷却水流路19に流入した冷却水は、矢印418の方向である長方形の長辺に沿って流れ、長方形の短辺の他方側の側面の手前近傍で矢印421a及び421bのように折り返し、再び長方形の長辺に沿って矢印422の方向に流れ、不図示の出口孔から流出する。冷却水流路19の行き側と帰り側にそれぞれ2個ずつの開口400と402とが形成されている。前記開口にはパワーモジュール300がそれぞれ固定され、各パワーモジュール300の放熱のためのフィンがそれぞれの開口から冷却水の流れの中に突出する構造となっている。前記筐体12の流れの方向すなわち長辺の沿った方向にパワーモジュール300が並べて固定され、この固定により前記各パワーモジュール300により冷却水流路19の開口を例えばOリング800などで完全に塞ぐことができるように、支持部410が筐体と一体成形されている。この支持部410は、筐体12の略中央に位置し、支持部410に対して冷却水の出入り口側の方に1つのパワーモジュール300が固定され、また前記支持部410に対して冷却水の折り返し側の方に他の1つのパワーモジュール300が固定される。図5(b)に示す螺子穴412は前記出入り口側のパワーモジュール300を冷却水流路19に固定するために用いられ、この固定により開口400が密閉される。また螺子穴414は前記折り返し側のパワーモジュール300を冷却水流路19に固定するために用いられ、この固定により開口402が密閉される。このように冷却水流路19の行き側と帰り側両方を跨ぐようにパワーモジュール300を配置することで、インバータ回路144を金属ベース304の上に高密度で集積できるため、パワーモジュール300の小型化が可能となり電力変換装置200の小型化にも大きく寄与する。
前記出入り口側のパワーモジュール300は冷却水入口配管13からの冷たい冷却水と、出口側に近く発熱部品からの熱によって暖められた冷却水とにより冷やされることとなる。一方、前記折り返し側のパワーモジュール300は、少し温められた冷却水及び、出口孔403近くの冷却水よりは少し冷えた状態の冷却水によって冷却される。結果として折り返し冷却通路と2つのパワーモジュール300の配置関係は、2つのパワーモジュール300の冷却効率が均衡した状態となるメリットがある。
前記支持部410はパワーモジュール300の固定のために使用され、開口400や402の密閉のために必要である。さらに前記支持部410は筐体12の強度の強化に大きな効果がある。冷却水流路19は上述の通り折り返し形状であり、行き側流路と帰り側流路を隔てる隔壁408が設けられ、この隔壁408が前記支持部410と一体に作られている。隔壁408は単に行き側流路と帰り側流路を隔てる作用の他に、筐体の機械的な強度を高める作用をしている。また折り返し通路間の熱の伝達通路としての作用を為し、冷却水の温度を均一化する作用を為す。冷却水の入口側と出口側との温度差が大きいと冷却効率のムラが大きくなる。ある程度の温度差は仕方ないが、この隔壁408が前記支持部410と一体に作られていることで冷却水の温度差を抑える効果が有る。
図5(c)は前記冷却水流路19の裏面を示しており、前記支持部410に対応した裏面に開口404が形成されている。この開口404は、筐体の鋳造により形成する前記支持部410と筐体12一体構造の歩留まりを向上するためのものである。開口404の形成により、鋳造品では、前記支持部410と冷却水流路19の底部との二重構造が無くなり、鋳造し易く、生産性が向上する。
また、前記冷却水流路19の側部には貫通穴406が形成される。前記冷却水流路19を挟んで両側に設置される電気部品(パワーモジュール300及びコンデンサモジュール500)同士を、この貫通穴406を介して接続される。
また、筐体12は、冷却水流路19と筐体12との一体構造として製造できるので、鋳造生産特にアルミダイキャスト生産に適している。
図6は、電力変換装置200の断面図であり、基本的な構造は図3から図5に基づいて、既に説明したとおりである。
筐体12の断面における上下方向の中央部には筐体12と一体にアルミダイキャストで作られた冷却水流路19(図6の点線部)が設けられ、冷却水流路19の上面側に形成された開口にパワーモジュール300(図6の一点鎖線部)が設置されている。図6の紙面に対して左側が冷却水の行き側の往路19aであり、紙面に対して右側が水路の折り返し側の復路19bである。往路19aおよび復路19bは、上述のとおりそれぞれ開口が設けられ、前記開口は、パワーモジュール300の放熱のための金属ベース304により往路19aおよび復路19bの両方に跨るように塞がれ、前記金属ベース304に設けられた放熱のためのフィン305が冷却水の流れのなかに前記開口から突出する。また、冷却水流路19の下面側には補機用のインバータ装置43が固定されている。
略中央が屈曲した板状の交流電力線186は、その一端がパワーモジュール300の交流端子159と接続され、その他端が、電力変換装置200内部から突出して交流コネクタを形成している。正極側コンデンサ端子504及び負極側コンデンサ端子506は、貫通孔406(図6の2点鎖線部)を介して、正極側導体板702及び負極側導体板704にそれぞれ電気的及び機械的に接続される。筐体12の略中央を長方形の長辺方向に往復する冷却水流路19が配置され、前記冷却水の流れ方向と略垂直の方向に、交流コネクタ188と正極側コンデンサ端子504及び負極側コンデンサ端子506が配置される。そのため電気配線が整然と配置され、電力変換装置200の小型化に繋がっている。積層導体板700の正極側導体板702及び負極側導体板704、さらに交流側電力線186がパワーモジュール300の外に突出して接続端子を形成しているため構造がたいへん簡単で、また他の接続導体が使用されていないため小型化になっている。この構造により生産性が向上し、信頼性も向上する。
さらに前記貫通孔406は前記冷却水流路19とは筐体12内部の枠体で隔絶しており、かつ正極側導体板702及び負極側導体板704と正極側コンデンサ端子506及び負極側コンデンサ端子504との接続部が該貫通孔406内に存在するため、信頼性が向上する。
発熱量の大きいパワーモジュール300を冷却水流路19の一方の面に固定すると共にパワーモジュール300のフィン305が冷却水流路19の開口から水路内に突出するようにして効率良く冷却し、次に放熱量の大きい補機用インバータ装置43を冷却水流路19の他方の面で冷却し、さらに次に発熱量が大きいコンデンサモジュール500を筐体12および下部ケース16を介して冷却する構造としている。このように放熱量の多さにあわせた冷却構造としているので、冷却効率や信頼性が向上すると共に、電力変換装置200をより小型化することができる。
さらに補機用インバータ装置43を冷却水流路19のコンデンサモジュール500側面に固定しているので、補機用インバータ装置43の平滑用コンデンサとしてコンデンサモジュール500を使用でき、この場合配線距離が短くなる効果がある。また配線距離が短いことからインダクタンスを小さくできる効果がある。
パワーモジュール300の上方には、ドライバ回路174を実装した駆動回路基板22が配置され、さらに駆動回路基板22の上方には放熱および電磁シールドの効果を高める金属ベース板11を介在させて制御回路基板20が配置されている。なお制御回路基板20には図2に示した制御回路172が搭載されている。上部ケース10を筐体12に固定することによって、本実施形態に係る電力変換装置200が構成される。
上述のように、制御回路基板20とパワーモジュール300との間に駆動回路基板22を配置しているので、制御回路基板20からインバータ回路の動作タイミングが駆動回路基板22に伝えられ、それに基づいて駆動回路基板22でゲート信号が作られ、パワーモジュール300のゲートにそれぞれ印加される。このように電気的な接続関係に沿って制御回路基板20や駆動回路基板22を配置しているので、電気配線が簡素化でき、電力変換装置200の小型化に繋がる。また、駆動回路基板22は、制御回路基板20に対して、パワーモジュール300やコンデンサモジュール500よりも近い距離に配置される。そのため駆動回路基板22から駆動回路基板20までの配線距離は、他の部品(パワーモジュール300等)と制御回路基板20との配線距離よりも短くなる。よって電源側正極端子510から伝わる電磁ノイズやIGBT328,330のスイッチング動作による電磁ノイズが、駆動回路基板22から駆動回路基板20までの配線に侵入することを抑えることができる。
冷却水流路19の一方の面にパワーモジュール300を固定し、他方の面に補機用インバータ装置43を固定することで、冷却水流路19でパワーモジュール300と補機用インバータ装置43を同時に冷却する。この場合、パワーモジュール300は放熱のためのフィンが冷却水流路19の冷却水と直接、接するのでより冷却効果が大きい。さらに冷却水流路19で筐体12を冷却し、筐体12に下部ケース16や金属ベース板11を固定することで下部ケース16や金属ベース板11を介して冷却する。下部ケース16にはコンデンサモジュール500の金属ケースが固定されるので下部ケース16と筐体12を介してコンデンサモジュール500が冷却される。さらに金属ベース板11を介して制御回路基板20や駆動回路基板22を冷却する。さらに、下部ケース16も熱伝導性の良い材料でできていて、コンデンサモジュール500からの発熱を受け、筐体19に熱を伝導し、冷却水流路19の冷却水で放熱される。また、冷却水流路19の下部カバー15側である他方の側には、車内用エアコン,オイルポンプ,他用途のポンプ用として用いる、比較的小容量の補機用インバータ装置43を設置する。この補機用インバータ装置43からの発熱は、前記筐体12の中間枠体を通して冷却水流路19の冷却水で放熱される。このように中央に冷却水流路19を設け、一方に金属ベース板11を設け、他方に下部ケース16を設けることで、電力変換装置200を構成するのに必要な部品を発熱量に応じ、効率良く冷却することができる。また電力変換装置200の内部に部品が整然と配置されることとなり、小型化が可能となる。
電力変換装置の放熱機能を果たす放熱体は、第1に冷却水流路19であるが、この他にも金属ベース板11がその機能を奏している(放熱機能を果たすために金属ベース板11を設けている)。金属ベース板11は、電磁シールド機能を果たすとともに、制御回路基板20や駆動回路基板22からの熱を受けて、筐体12に熱を伝導し、冷却水流路19の冷却水で放熱される。
このように、本実施形態に係る電力変換装置は、放熱体が3層の積層体を形成しており、すなわち、金属ベース板11,冷却水流路19,下部ケース16という積層構造であり、これらの放熱体はそれぞれの発熱体(パワーモジュール300,制御回路基板20,駆動回路基板22,コンデンサモジュール500)に隣接して階層的に設置される。階層構造の中央部には、主たる放熱体である冷却水流路19が存在し、金属ベース板11と下部ケース16は筐体12を通して冷却水流路19の冷却水に熱を伝える構造となっている。筐体12内に3つの放熱体(冷却水流路19,金属ベース板11,下部ケース16)が収容されて、放熱性を向上させるとともに薄型化,小型化に寄与している。
図7(a)は、本実施形態に関するパワーモジュール300の上方斜視図であり、図7(b)は、当該パワーモジュール300の上面図である。302はパワーモジュールケース、304は金属ベース、314は直流正極端子、316は直流負極端子、318は直流正極端子314と直流負極端子316との間に介装された絶縁紙、320U/320Lはパワーモジュールの制御端子、328は上アーム用のIGBT、330は下アーム用のIGBT,156/166はダイオード、をそれぞれ表す。なお、不図示のピンフィン又はストレートフィンが、IGBTが搭載された側とは反対側の金属ベース304の面上に設けられる。
パワーモジュール300は、大きく分けて、例えば樹脂材料のパワーモジュールケース302内の配線を含めた半導体モジュール部と、金属材料例えばCu,Al,AlSiCなどからなる金属ベース304と、外部との接続端子(直流正極端子314や制御端子320U等)と、から構成される。そして外部と接続する端子として、パワーモジュール300は、モータと接続するためのU,V,W相の交流端子159と、コンデンサモジュール500と接続する直流正極端子314及び直流負極端子316とを有している。
また、前記半導体モジュール部は、絶縁基板334の上に上下アームのIGBT328,330,ダイオード156/166等が設けられて、レジン又はシリコンゲル(不図示)によって保護されている。絶縁基板334はセラミック基板であっても良いし、さらに薄い絶縁シートであってもよい。
図7(b)は、金属ベース304に固着された熱伝導性の良いセラミックからなる絶縁基板334の上に、上下アーム直列回路が具体的にどのような配置で設置されているかを示す配置構成図とその機能を示す説明図である。図7(b)に示すIGBT328,330とダイオード327,332はそれぞれ2つのチップを並列接続して上アーム,下アームを構成し、上下アームに通電可能な電流容量を増やしている。
本実施形態に係るコンデンサモジュールと、その接続相手部品について、図8,図9及び図10を参照しながら説明する。図8に示すように、コンデンサモジュール500は、外部直流電源との接続用に電源側正極端子510,電源側負極端子512を樹脂などの充填材522から突出するように備える。さらに、電源側正極端子510及び電源側負極端子512は、コンデンサモジュールケース502の一辺側近傍であり、かつ当該一辺の略中央に配置される。
コンデンサモジュールケース502の内部には、複数のコンデンサセルが収納されている。本実施形態は、コンデンサセルとして、フィルムコンデンサを用いている。
充填材522は、前述のコンデンサセル同士の隙間に入り込み、コンデンサセルをコンデンサモジュールケース502に固定している。電源側正極端子510はコンデンサセルの一端と接続されており、電源側負極端子512はコンデンサセルのもう一端に接続されている。
コンデンサモジュール500は、電源側正極端子510が備えられた辺と対向する辺側に、正極接続端子506a〜506c,負極端子504a,504bを備える。正極接続端子506a〜506c及び負極端子504a,504bは、積層導体板700と接続するための端子である。
正極接続端子506a〜506c及び負極端子504a,504bは、充填材522の上面から上方に突出した導体板551の先端付近に設けられる。導体板551は、コンデンサモジュール500の長辺とほぼ同じ長さを持った幅広の導体板である。言い換えると、導体板551は、2つのパワーモジュール300a及び300bを跨ぐように、コンデンサモジュール500の長手方向に広がっている。導体板551は、充填材522の内部で水平に折れ曲がり、コンデンサセルと接続されている。積層された2つの導体板の間には絶縁材517を挟むことにより、導体板551の絶縁沿面距離が確保されている。正極接続端子506a〜506cは、接続相手部品である積層導体板700と機械的且つ電気的にネジで締結するための貫通孔511a,511bを持つ。同様の理由で負極端子504a,504bは貫通孔509a,509bを持つ。
積層導体板700は、パワーモジュール300a及び300bに跨ぐように、かつパワーモジュール300a及び300bの上方に配置される。積層導体板700は、正極導体板702と負極導体板704、さらに正極導体板702と負極導体板704の間に挟んだ絶縁材519で構成される。正極導体板702は、その一方側の長辺に沿ってコンデンサモジュール500との接続端子702a〜702cを有する。接続端子702a〜702cは、コンデンサモジュール500とのネジ締結のため、貫通孔707a〜707dを有する。
一方、積層導体板700は、その他方側の長辺に沿ってパワーモジュール300a及び300bとの接続端子702d〜702fを備える。接続端子702d〜702fは、パワーモジュール300a及び300bとネジ締結するための貫通孔711a〜711dを持つ。負極導体板704は、その一方側の長辺に沿ってコンデンサモジュール500とのネジ締結用に貫通孔709a〜709dを持つ。また、負極導体板704は、その他方側の長辺に沿ってパワーモジュール300a及び300bとの接続端子713d〜713fを有する。
パワーモジュール300a及び300bは、コンデンサモジュール500と積層導体板700の間に位置し、積層導体板700を介してコンデンサモジュール500から平滑された電圧,電流を得る。2つのパワーモジュール300aと300bは、コンデンサモジュール500及び積層導体板700の長辺を二等分する略中央線に対して線対称に配置される。
電力変換装置の組み立てにおいて、作業の簡易化による作業時間短縮は、コスト面,生産性、更には信頼性向上のために大きな課題である。ネジによる締結作業においては一般的に、締結部を作業者若しくは組み立て機器と対面するようにしてから、ネジ締めを行う。このため、締結部が部品に対して複数方向に存在する場合は、部品の各方向でのネジ締めが完了する度に、部品を回転させて作業者等に向き直し後にネジ締めを行う必要がある。つまり、この部品を回転させる作業を削減することが課題となっている。
そこで、本発明の実施形態では、パワーモジュール300a及び300bのネジ穴314a〜314d,316a,316b,316dが開いている方向に合わせて、コンデンサモジュール500側の貫通孔509a〜509d,511a〜511dが形成されている。
コンデンサモジュール500側の貫通孔509a〜509d,511a〜511dが、パワーモジュール300a及び300bのネジ穴314a〜314d,316a,316b,316dと同一方向に向いていることで、ネジ締め方向を一方向に集約できる。ネジ締め方向が一方向に集約されることで、部品を回転させる作業を削減できる。
また、ネジ締結による電気的接続部は、その接続部の温度上昇を抑えるために十分な接触面積を確保する必要がある。接触面積を確保するためには、基準穴から締結穴までの寸法と、又は基準面から締結面までの寸法に精度が要求される。ここで基準穴及び基準面とは、ネジ締結をする際に、コンデンサモジュール500を所定の位置に固定するための目印であり、例えば本実施形態では、貫通孔553aが基準穴であり、パワーモジュール300a及び300bの上面が基準面である。特に大電流が流れるHEV用コンデンサモジュールにおいては電気的接続部の温度上昇が問題となり、この寸法精度の確保が課題となっている。
そこで、本発明の実施形態では、コンデンサモジュール500の正極導体板505,負極導体板507は、例えば二箇所のみに曲げを持つような簡素化された形状を採っている。充填材522内で折り曲げられて形成された第一の折り曲げ部555と、正極接続端子506a〜506cを形成するための第二の折り曲げ部557が、空間内で略平行に形成される。
これにより、正極導体板505及び負極導体板507は、複数方向に対して曲げを持つ場合に比べて寸法精度の確保が容易である。さらに、図8に示すように負極端子504bには二つの貫通孔509c,509dが設けられている。これにより、複数の貫通孔を一端子に集約することで管理すべき寸法を低減することができる。例えば、貫通孔509aと貫通孔509bを負極端子504aに集約すると、管理する寸法は、貫通孔509aと貫通孔509bを別々の端子に設ける場合の半分となる。
パワーモジュール300a及び300bの大電流化と小型化の傾向から、電力変換装置の低インダクタンス化が課題となっている。パワーモジュール300a及び300bは、大電流化により発熱量が多くなるのに対し、小型化により放熱性能に制限を受ける可能性がある。よって、パワーモジュール内のIGBTは、そのスイッチング損失を抑えるために高速スイッチングにより制御されることが求められる。したがって、高速スイッチングは大きなサージ電圧を発生させるため、サージ電圧の原因であるインダクタンスの低減が課題となる。
正極導体板505及び負極導体板507は、端子部を除き積層構造であり、極めて薄い絶縁層を介して近接している。正極導体板505及び負極導体板507は、コンデンサモジュール500の長辺方向に拡がっている。正極導体板505及び負極導体板507は、図9に示されるように、パワーモジュール300a及び300bから遠ざかる方向に折り曲げられて構成された正極接続端子506a〜506c及び負極端子504a,504bを備える。正極接続端子506a〜506c及び負極端子504a,504bは、パワーモジュール300a及び300bのネジ穴314a〜314d,316a〜316dに積層導体板700を介して接続される。
正極導体板505に流れる電流と負極導体板507に流れる電流は、その方向が逆になっている。正極導体板505と負極導体板507が近接しているため、それぞれに流れる電流が発生する磁束を相殺することができ、磁束に起因するインダクタンスが低減する。また、正極導体板505と負極導体板507との幅を可能な限り広くすることで電流経路を広げられ、インダクタンスが低減する。
正極接続端子506a〜506c,負極端子504a,504bがパワーモジュール300a及び300bから遠ざかる方向に折り曲がっていることにより、積層導体板700との接続部ではUターン電流が形成され、曲げ部を除いて、発生する磁束を相殺できる。これによりインダクタンス低減を図る。
電力変換装置の小型化傾向に伴い、コンデンサモジュールの小型化も課題となっている。コンデンサモジュールの小型化は、複数のパワーモジュールに対して1個のコンデンサモジュールで電流,電圧の平滑化を行うことにより達成できる。ここで、複数のパワーモジュール用に電流,電圧の平滑化を行う大型コンデンサモジュールをインバータに収納するための効率的な接続方法の発案が新たな課題となっている。
パワーモジュール300a及び300bは、コンデンサモジュール500の上方に位置し、コンデンサモジュール500の長手方向に沿って並べて配置される。パワーモジュール300a及び300bの配列位置を上方から見ると、パワーモジュール300a及び300bの2個ともコンデンサモジュール500が存在する平面内に収まっている。積層導体板700は、パワーモジュール300a及び300bの間を跨って、パワーモジュール300a及び300bの配列方向に広がり、コンデンサモジュール500の長辺と略同一の長さを持つ。一方、積層導体板700の短手方向の長さは、コンデンサモジュール500の短手方向よりも短くなっている。積層導体板700の貫通孔711a〜711d,713a〜713dは、ネジによりパワーモジュール300a及び300bのネジ穴314a〜314d,316a〜316dに締結される。
本実施形態に係る導体板551と積層導体板700を用いることで、2つのパワーモジュール300a及び300bに対して1個のコンデンサモジュール500を高さ方向へ積み上げて配置させ、それぞれを接続させることができる。導体板551と積層導体板700組の長手方向長さは、コンデンサモジュール500の長辺と略同一であることから、組み立て後の形状における長手方向の長さは、コンデンサモジュール500の長辺と略同一となる。一方、コンデンサモジュール500の短手方向において、パワーモジュール300a及び300bと積層導体板700は、上方から見てコンデンサモジュール500が存在する平面内に配置されている。よって、組み立て後の電力変換装置の短手方向の長さは、コンデンサモジュール500の短辺と略同一となる。つまり、本実施形態では、部品組み立てによって電力変換装置の水平方向の形状が拡大することを抑制できる。
前記パワーモジュール300a及び300bの放熱が課題となっている。さらに、小型化されたコンデンサモジュール500が有する導体板551の放熱の対策も課題となっている。つまり、コンデンサモジュール500が有する正極導体板505,負極導体板507は、パワーモジュール300a及び300bの動作時に発生するリップル電流が流れるために発熱するからである。
正極導体板505及び負極導体板507は、コンデンサモジュールケース502内に収納された複数のコンデンサセルを覆うように形成される。電源側正極端子510及び電源側負極端子512は、コンデンサモジュール500の長辺の略中心付近に位置している。積層導体板700と接続される正極接続端子506a〜506c及び負極端子504a,504bは、コンデンサモジュール500の長辺を二等分する直線A−Aに対して線対称に位置している。また、積層導体板700の接続端子も、コンデンサモジュール500の長辺を二等分する直線A−Aに対して線対称となる。パワーモジュール300a及び300bは、コンデンサモジュール500の長辺を二等分する直線A−Aに対して互いに線対称に配置され、積層導体板700との接続ネジ穴314a,314b,316a〜316dも前記直線に対して線対称に配置されている。
コンデンサモジュール500の正極接続端子506a〜506c,負極端子504a,504bが線対称であることから、2つのパワーモジュール300a及び300bが動作して発生するリップル電流は、コンデンサモジュール500の長辺を二等分する直線A−Aに対して線対称となる電流経路をとる。前記直線に対して線対称に流れる電流は、コンデンサモジュール500の有する正極導体板505,負極導体板507上を均等に分散するため、局部的な発熱を避けることができる。パワーモジュール300a及び300bのうち1個が動作する場合であっても、垂直に立ち上がった正極導体板551と、正極導体板551と積層関係にあるもう1枚の負極導体板を流れる電流が分散し、コンデンサモジュール500内部に広がる正極導体板505,負極導体板507上を流れる電流の偏りがなくなる。この結果、パワーモジュール300a及び300bのうち1個のみが動作する場合であっても、コンデンサモジュール500の局部的発熱を避けることが可能である。