JP5154055B2 - 電子回路基板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子回路基板を製造する方法に関するものである。
液晶ポリマーは、従来、電子回路基板の絶縁体材料として用いられてきたガラス/エポキシ樹脂複合材やポリイミドと比べて電気特性が良好であり、その上、耐熱性が高く且つ吸収性が低いといった優れた性質を有する。よって、液晶ポリマーを絶縁体材料とする電子回路基板は、ガラス/エポキシ樹脂複合材やポリイミドを用いた従来の基板よりも電気特性に優れ、且つはんだを用いた実装にも十分に耐えられる。また、液晶ポリマーは熱可塑性樹脂であることから、液晶ポリマーフィルムをカバーフィルムとして熱圧着したり、液晶ポリマーフィルムからなる基材同士を熱圧着して多層基板を作成し高密度化することも可能である。そこで近年、液晶ポリマーが電子回路基板の絶縁体材料として注目されている。
しかし、液晶ポリマーは流動性が高く、融点以上で熱圧着させると樹脂が流動し、回路パターンが変形してしまう。よって、液晶ポリマーフィルムを積層する場合には融点未満で熱圧着する必要があるが、それではフィルム間の密着性が不足する。そこで、液晶ポリマーフィルムの表面を処理することによって、融点未満での接着性を確保する必要があった。
従来、かかる表面処理には、特許文献1に記載の技術のように紫外線が用いられていた。また、特許文献2には、液晶ポリマーの表面を活性化した上で、当該表面と金属とを熱融着する技術が記載されており、表面活性化方法として、紫外線照射の他にコロナ放電やプラズマ照射などが例示されている。
さらに特許文献3には、熱可塑性ポリマーの表面をプラズマ処理することによって、表面部における酸素原子のモル比を高め、密着性を高める技術が記載されている。また、特許文献4には、熱可塑性樹脂層をプラズマ処理し、樹脂層間の密着強度を確保する技術が記載されている。
特開平1−216824号公報(特許請求の範囲) 特開2000−233448号公報(特許請求の範囲、段落0029) 特開2001−49002号公報(特許請求の範囲) 特開2006−179609号公報(請求項3と4、段落0073、表1)
上述した様に、液晶ポリマーを電子回路基板材料として用いる場合には、融点未満で熱圧着せざるを得ない。そこで、液晶ポリマーフィルムの融点未満での密着性を高めるべく、表面改質処理を行なう技術は種々知られていた。特に特許文献3と4では、液晶ポリマーフィルムの表面をプラズマ処理することによって、液晶ポリマーフィルム同士、或いは接着剤やメッキ銅層に対する接着強度が向上した実験データが開示されている。しかし、これら従来技術では対応できない場合があった。
即ち、近年、環境保護の観点から、鉛フリーのはんだも用いられるようになってきている。かかる鉛フリーのはんだは、スズや銀、銅などを主成分とし、240〜280℃程度という高温を必要とする。その結果、液晶ポリマーの吸水性が低いといっても、フィルム間或いはフィルムと金属層との間が十分に密着していない場合には、わずかな水分がはんだリフロー中に気化してボイドが発生する。また、電子回路基板の高密度化が求められており、回路のライン間隔が狭まっていることから、基板の密着性が十分でないと銅のマイグレーションが起こり短絡してしまうという問題もある。従って、近年の電子回路基板、特に半導体パッケージ基板においては、例えば高湿状態に保持した上で高温処理するなど、より一層厳しい条件で高品質を保持できることが求められる。
そこで本発明が解決すべき課題は、液晶ポリマーフィルムを絶縁体として用いた電子回路基板における層間の密着性をより一層高め、ボイドや短絡の発生等を顕著に抑制することができる電子回路基板の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、特に液晶ポリマーフィルムをプラズマ処理する際における様々な条件につき鋭意研究を進めた。その結果、液晶ポリマーフィルムの密着性を高めるには、プラズマ照射時における酸素濃度と真空度を適切に規定すればよいことを見出して、本発明を完成した。
本発明に係る電子回路基板の製造方法は、液晶ポリマーフィルムを積層して熱圧着する方法であって、
少なくとも1の液晶ポリマーフィルムの片面または両面に、回路パターンを形成する工程;
各液晶ポリマーフィルムの片面または両面を、80容積%以上の酸素雰囲気下、18Pa以下の圧力でプラズマ処理する工程;および
液晶ポリマーフィルムのプラズマ処理した面を対向させて積層し、熱圧着する工程;を含むことを特徴とする。
上記方法において、プラズマ処理は、ダイレクトプラズマモードで行うことが好ましい。プラズマ処理のモードにはダイレクトプラズマモードとリアクティブイオンエッチングモードがある。特許文献4では、これらのうちリアクティブイオンエッチングモードが好ましいとされているが、その理由やダイレクトプラズマモードとの比較試験は為されていない。一方、本発明者は、高温のはんだリフローによる電子回路基板のボイドを抑制するには、リアクティブイオンエッチングモードよりもダイレクトプラズマモードが好適であることを実験により確認している。
上記プラズマ処理は、90容積%以上の酸素雰囲気下、および15Pa以下の圧力で行うことが好ましい。それぞれ、電子回路基板のボイドの発生をより一層抑制できるからである。
本発明方法によれば、適切な条件のプラズマ処理によって、液晶ポリマーフィルムの密着性が顕著に高められる。その結果、高湿環境下で保持した後における高温のはんだリフロー等の急激な加熱を経ても、ボイドが発生し難い電子回路基板を製造することができる。また、本発明方法で製造された電子回路基板は、密着性が高いことから層間への水の浸入が極めて少なく、吸水環境下で電圧を印加しても、金属成分のマイグレーションによる不良の発生が抑制されている。
従って、本発明方法は、品質の高い電子回路基板を歩留り良く効率的に製造できるものとして、産業上極めて有用である。
本発明に係る電子回路基板の製造方法は、液晶ポリマーフィルムを積層して熱圧着する方法であって、
少なくとも1の液晶ポリマーフィルムの片面または両面に、回路パターンを形成する工程;
各液晶ポリマーフィルムの片面または両面を、80容積%以上の酸素雰囲気下、18Pa以下の圧力でプラズマ処理する工程;および
液晶ポリマーフィルムのプラズマ処理した面を対向させて積層し、熱圧着する工程;を含むことを特徴とする。
本発明方法では、絶縁体として液晶ポリマーからなるフィルムを用いる。液晶ポリマーは、耐熱性などに優れる熱可塑性樹脂である上に、誘電特性にも優れることから、電子回路基板の絶縁体材料として特に有用である。
液晶ポリマー樹脂には、溶融状態で液晶性を示すサーモトロピック液晶ポリマー樹脂と、溶液状態で液晶性を示すリオトロピック液晶ポリマー樹脂がある。本発明ではサーモトロピック液晶ポリマーが好適であり、より具体的には、サーモトロピック液晶ポリエステルやサーモトロピック液晶ポリエステルアミドが好ましい。
サーモトロピック液晶ポリエステル(以下、単に「液晶ポリエステル」という)とは、例えば、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールや芳香族ヒドロキシカルボン酸などのモノマーを主体として合成される芳香族ポリエステルであって、溶融時に液晶性を示すものである。その代表的なものとしては、パラヒドロキシ安息香酸(PHB)と、テレフタル酸と、4,4’−ビフェノールから合成されるI型[下式(1)]、PHBと2,6−ヒドロキシナフトエ酸から合成されるII型[下式(2)]、PHBと、テレフタル酸と、エチレングリコールから合成されるIII型[下式(3)]が挙げられる。
本発明に係る液晶ポリマーとしては、液晶性(特にサーモトロピック液晶性)を示し且つ本発明の目的を達成し得るものであれば、例えば、上記(1)〜(3)式に示すユニットを主体(例えば、液晶ポリマーの全構成ユニット中、50モル%以上)とし、他のユニットも有する共重合タイプのポリマーであってもよい。他のユニットとしては、例えば、エーテル結合を有するユニット、イミド結合を有するユニット、アミド結合を有するユニットなどが挙げられる。
また、液晶ポリエステルアミドとしては、他のユニットとしてアミド結合を有する上記液晶ポリエステルが該当し、例えば、下式(4)の構造を有するものが挙げられる。例えば、式(4)中、sのユニット、tのユニットおよびuのユニットのモル比が、70/15/15のものが知られている。
本発明で用いる液晶ポリマーは、誘電特性などの特性を過剰に貶めない範囲で液晶ポリマー以外のポリマーを含んでもよい。当該ポリマーは、液晶ポリマーと単に混合されているのみであっても、化学結合していてもよい。この様なアロイ用ポリマーとしては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリレートなどが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。液晶ポリマーと上記アロイ用ポリマーの混合割合は特に制限されないが、例えば、質量比で50:50〜95:5であることが好ましく、70:30〜90:10であることがより好ましい。液晶ポリマーを含むポリマーアロイも、液晶ポリマーによる優れた特性を保有し得る。但し、液晶ポリエステルおよび/または液晶ポリエステルアミドのみからなる液晶ポリマーが最適である。
本発明の液晶ポリマーとしては、その融点が280〜360℃程度のものが好適である。280℃程度以上であれば、半田リフローの熱にも十分に耐えることができ、また、360℃以下であれば、押出成形も十分に可能である。
本発明で用いる液晶ポリマーフィルムの分子配向は2軸配向が好ましく、そのMD/TDの強度比が1/3〜3/1の間にあるものが好ましく、1/2〜2/1の間にあるものがより好ましい。強度比が当該範囲であれば、その線膨張係数(CTE)の異方性も適度であり、加工性や信頼性も十分確保することができる。
上記液晶ポリマーフィルムでは、フィルム平面に平行な方向の線膨張係数が25ppm/℃以下に調整されていることが好ましい。より好ましくは21ppm/℃以下である。また、液晶ポリマーフィルムの上記線膨張係数の下限は、8ppm/℃であることが望ましい。液晶ポリマーフィルムの線膨張係数は、機器分析(TMA)法により、試験片幅:4.5mm、チャック間距離:15mm、荷重:1gとし、室温から200℃まで昇温後(昇温速度:5℃/分)、降温速度:5℃/分で冷却する際に、160℃から25℃の間で測定される試験片の寸法変化から求めた値であり、例えば、フィルムのMD方向(フィルム製造時の走行方向)およびTD方向(MD方向に直交する方向)の線膨張係数の何れもが、上記範囲を満足していることが好ましい。
液晶ポリマーフィルムの厚さとしては、5μmから1000μmが好ましい。薄すぎると強度が不足し、厚すぎるとフィルム化が困難である。より好適には、10μm以上、500μm以下とする。なお、本明細書では、「フィルム」の他に「シート」の語を用いる場合があるが、これらを厚さ等により区別しているわけではなく、便宜上、液晶ポリマーフィルムに回路パターンを形成したものを「回路パターンシート」という。
以上の特に好適な条件を満たす液晶ポリマーフィルムのうち市販品としては、液晶ポリエステルからなるジャパンゴアテックス社製のBIAC(登録商標)シリーズがある。
本発明では、先ず、少なくとも1の液晶ポリマーフィルムの片面または両面に、回路パターンを形成する。当該工程の条件は特に制限されず、常法を用いればよい。例えば、液晶ポリマーフィルムの片面または両面に、金属箔を熱融着や接着したり、或いはスパッタリングや蒸着、無電解メッキ等により金属層を形成する。次いで、エッチングにより所望の回路を形成すればよい。なお、金属箔を熱融着等する場合には、液晶ポリマーフィルムと金属層との密着性を高めるために、後述する方法に従って、液晶ポリマーフィルムの表面をプラズマ処理してもよい。
本発明方法により単層板を製造する場合には、液晶ポリマーフィルムの片面に回路パターンを形成する。二層板を製造する場合には、外側層となる液晶ポリマーフィルムの片面にも回路パターンを形成することも可能であるが、一般的には液晶ポリマーフィルムの両面に回路を形成する。三層以上の多層板の場合は、一般的には液晶ポリマーフィルムの片面に回路を形成し、得られた回路パターンシートを積層する。
なお、本発明で少なくとも1の液晶ポリマーフィルムに回路パターンを形成するとしたのは、液晶ポリマーフィルムに回路パターンを形成せずにカバーフィルムとして用いる場合があることによる。
当該金属層を構成する金属は、電子回路基板で用いられるものであれば特に制限されず、例えば、銅、アルミ、金、銀、およびそれらの金属を主体とする合金とすることができる。
当該金属層の厚みは、電子回路基板の金属層として一般的なものとすることができる。例えば、薄過ぎると回路が切れて導通不良部分が発生するおそれがある。一方、厚過ぎると、液晶ポリマーフィルムを熱圧着した際に、金属層の厚みによる高低差をフィルムで埋めきれない場合がある。以上を考慮して、金属層の厚みとしては1μm以上200μm以下が好適である。
なお、金属層は単層構造でもよく、また、2種以上の金属を積層した多層構造でもよい。
本発明方法では、液晶ポリマーフィルムの片面または両面を、80容積%以上の酸素雰囲気下、18Pa以下の圧力でプラズマ処理する。
「片面または両面」とは、少なくとも他の液晶ポリマーフィルムと接する側の面をプラズマ処理することを意味する。また、プラズマ処理する面は、回路パターンが形成されていてもよいものとする。
より具体的には、プラズマ処理する面には、図1のように回路パターンシートの回路面、および回路面を保護するカバーフィルムのうち回路面に接する側の面や、図2のように多層板における各回路パターンシートの回路面と回路面とは逆の面、即ち回路面に接する側の面などが含まれる。即ち、プラズマ処理すべき面には、回路が形成されている面など、その少なくとも一部が他の液晶ポリマーフィルムと圧着される面も含まれる。
プラズマ処理は、減圧した後に所定の気体を導入した雰囲気中で、放電平行平板型の一対の電極間に直流から高周波(RF)までの周波数帯で電力の供給を行なってプラズマ放電を発生させ、これを液晶ポリマーフィルムの表面に照射することにより実施する。
本発明方法では、80容積%以上の酸素雰囲気下でプラズマ処理を行う。本発明者が見出した知見によれば、酸素濃度が高い雰囲気下でプラズマ処理を行うほど液晶ポリマーフィルム同士または液晶ポリマーフィルムと金属層との密着性は高まり、ボイド等を抑制できる。よって、当該酸素濃度は90容積%以上がより好ましい。なお、当該酸素濃度が100容積%未満である場合、他の気体は特に制限されず、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素などを用いることができる。
また、圧力は18Pa(約135mTorr)以下とする。圧力が低いほど、密着性が高まるからである。よって、当該圧力は15Pa以下がより好適である。
プラズマ処理における出力は、0.05W/cm2以上、1.0W/cm2以下が好ましく、0.6W/cm2以下がより好ましい。この範囲の出力でプラズマ処理を行えば、表面を過剰に粗化しない範囲で液晶ポリマーフィルムの接着性を向上させることができる。
プラズマ処理のモードには、ダイレクトプラズマ(DP)とリアクティブイオンエッチング(RIE)とがある。ダイレクトプラズマは、グランド側にサンプルを設置する方式であり、ラジカルが試料全体へ満遍なく作用できるという利点がある。リアクティブイオンエッチングは、ダイレクトプラズマとは逆にRF電極側に試料を設置する方式であり、イオンが加速されつつ試料に作用する。本発明では、後述する実験結果の通りボイドを良好に抑制できることから、ダイレクトプラズマモードを好適に用いる。
プラズマ照射におけるその他の条件は、適宜調節すればよい。例えば、処理時間は、平衡状態に達するまでの時間等により調節できる。より具体的には、使用する機械によって、十分に液晶ポリマーフィルムの表面改質効果が得られる程度に処理時間を調節すればよい。一方、プラズマ照射による表面改質効果は、主に圧力等に依存し、経時的に効果が高くなるというものではないため、予備実験などにより処理時間を決定するとよい。通常は、10〜600秒間程度とすることが多い。
その他、本発明では、バッチ式の平行平板電極に限らず、フィルムの巻だし、巻き取りが真空槽内部もしくは、外部に設置してあるプラズマ連続処理装置を使用することも可能であり、プラズマ装置の種類は特に限定されるものではない。
次に、液晶ポリマーフィルムのプラズマ処理した面を対向させて積層し、熱圧着する。例えば、単層板と二層板の場合は、回路パターンシートの回路形成面とカバーフィルムの片面をプラズマ処理し、当該プラズマ処理面を対向させて積層した上で熱圧着する。多層板の場合は、回路パターンシートの両面をプラズマ処理して積層した上で熱圧着する。なお、積層体の一番下の面(カバーフィルムと反対側の最下面)は、プラズマ処理しなくてもよい。また、カバーフィルムの片面をプラズマ処理した上で、一番上の回路面にカバーフィルムのプラズマ処理面を対向させて積層して熱圧着してもよい。
液晶ポリマーフィルムのプラズマ処理した面に金属層を熱圧着する条件は、一般的なものを採用することができる。但し、熱圧着温度としては、液晶ポリマーが十分に軟化する温度が好ましいが、融点を超えると圧力により樹脂が流動するおそれがある。よって、融点未満で熱圧着することが好ましく、また、DMAの引張モードで測定した弾性率が、室温域の1/10〜1/1000の範囲内にある温度が好ましい。より具体的には250〜300℃程度とする。
圧力は、0.5MPa〜10MPa程度が好ましい。この圧力範囲であれば、回路パターンに乱れを生じさせず、且つより確実に液晶ポリマーフィルムと金属層を圧着することができる。なお、回路パターンの有無によるプレス圧力の不均一性を緩和するため、プレスされる材料の両側に、クッション材を用いることが好ましい。
熱圧着装置は一般的なものを用いればよく、例えば、平板プレス機、連続ベルトプレス機、ロールラミネーター等が用いられるが、真空式の平板プレス機が、精度良く積層できるので好ましい。
本発明方法によれば、適切な条件でのプラズマ処理により、液晶ポリマーフィルム同士或いは金属層に対する液晶ポリマーフィルムの密着性が高められているため、層間に侵入した水を原因とするボイドや、金属成分のマイグレーションによる短絡などが顕著に抑制されている。よって本発明は、高品質な電子回路基板を良好な歩留で効率的に製造できるものとして、非常に利用価値が高い。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
実施例1
(1)回路パターンシート
50μm厚の液晶ポリマーフィルムの片面に12μm厚の銅箔が積層されている片面銅張板であるジャパンゴアテックス製のBIAC BC050−S12−B17をエッチングすることにより、ライン/スペースが100/50μmの評価用回路パターンを形成した。
(2)カバーフィルム
上記片面銅張板の銅箔を塩化第二鉄によりエッチングして、カバーフィルムとする液晶ポリマーフィルムを得た。
(3)プラズマ処理
上記(1)の回路パターンシートの回路面側、および上記(2)のカバーフィルムの銅箔が無かった方の面を、表1の条件でプラズマまたは紫外線で処理した。なお、プラズマ処理ではマーチ社製のプラズマークリーナーPX−1000を用い、紫外線処理では日本電池社製の低圧水銀灯(主波長:254nmおよび175nm)を用いた。なお、当該水銀灯の254nmの紫外線の照度をオーク製作所製の照度計(UV−351−25)により測定したところ、70mW/cm2であった。また、プラズマの処理装置の出力は0.3W/cm2、処理時間は300秒間とした。また、2000mJ/cm2の紫外線による処理時間は約28秒間、4000mJ/cm2の場合は約57秒間とした。
(4)積層
上記回路パターンシートの回路面に、プラズマ処理した面が接触するように上記カバーフィルムを重ね合わせ、真空熱プレス装置(北川精機製、ホットアンドコールドプレス VH1−1921)を用い、温度:290℃、圧力:4MPa、プレス時間:15分間の条件で熱プレスした。
(5)試験方法
上記積層シートをオートクレーブ装置(ヤマト科学社製、Autoclave SP510)に入れ、相対湿度:100%、2気圧、121℃で30分間吸水させた。次いで、シート表面の水分を拭き取った後、250℃のはんだ槽に20秒間浮かせた。その後、層間に発生したボイドを目視で観察した。各シートの写真を図3に示す。
図3の通り、紫外線処理した場合(No.5と6)および未処理の場合(No.7)、明確にボイドが生じている。これは、層間の密着性が十分ではないためにオートクレーブ装置中の吸水処理により水分が層間に進入し、はんだ槽における高温処理によって、この水分が気化したことによると考えられる。この状況は、プラズマ処理した場合であっても、圧力を200mTorr(約26.7Pa)まで高めた場合(No.2)、窒素雰囲気下で処理した場合(No.3)、およびRIEモードで処理した場合(No.4)でも同様であった。
その一方で、DPモードで酸素雰囲気下、50mTorr(約6.7Pa)の圧力でプラズマ処理したNo.1では、ボイドはほとんど生じていない。以上の通り、本発明方法で製造した電子回路基板は、鉛以外のはんだリフロー等の高温処理を経ても、ボイドなどの不良が発生し難いことが実証された。
実施例2 プラズマ処理におけるガスの検討
表面処理条件を表2の通り変更して液晶ポリマーシートをプラズマ処理した以外は実施例1と同様にして、ボイドの発生状況を観察した。なお、表2中のガス濃度のパーセンテージは、何れも容積%である。結果を図4に示す。
図4の通り、プラズマ処理におけるガス中の酸素濃度が高くなるほど、高温処理によるボイドの発生は少なくなり、当該酸素濃度が90容積%の場合(No.9)、ボイドの発生を十分に抑制できている。しかし、当該酸素濃度が71容積%の場合(No.10)、ボイドの発生は明らかに多い。以上の結果より、液晶ポリマーシートを80容積%以上の酸素雰囲気下でプラズマ処理して電子回路基板の絶縁体として用いれば、高温による電子回路基板のボイドの発生を十分に抑制できると考えられる。
実施例3 プラズマ処理における圧力の検討
表面処理条件を表3の通り変更して液晶ポリマーシートをプラズマ処理した以外は実施例1と同様にして、ボイドの発生状況を観察した。結果を図5に示す。
図5の通り、プラズマ処理における圧力が低くなるほど、高温処理によるボイドの発生は少なくなり、当該圧力が125mTorr(約16.7Pa)の場合(No.14)、ボイドの発生を十分に抑制できている。一方、当該圧力が150mTorr(約20.0Pa)の場合(No.15)、ボイドの発生は比較的多い。以上の結果より、液晶ポリマーシートを圧力18Pa以下でプラズマ処理して電子回路基板の絶縁体として用いれば、高温による電子回路基板のボイドの発生を十分に抑制できると考えられる。
本発明方法の一態様を示す図である。 本発明方法の一態様を示す図である。 様々な条件で製造した電子回路基板を高温で処理した場合におけるボイドの発生状況を示す写真である。図3(1)〜(7)は、それぞれ表1のNo.1〜7の電子回路基板の写真に対応する。 プラズマ処理におけるガス中の酸素濃度を変更して製造した電子回路基板を高温で処理した場合におけるボイドの発生状況を示す写真である。図4(1)〜(4)は、それぞれ表2のNo.8〜11の電子回路基板の写真に対応する。 プラズマ処理における圧力を変更して製造した電子回路基板を高温で処理した場合におけるボイドの発生状況を示す写真である。図5(1)〜(4)は、それぞれ表3のNo.12〜15の電子回路基板の写真に対応する。
符号の説明
1:回路パターンシート、 2:液晶ポリマーフィルム、 3:金属層、 4:被プラズマ処理表面

Claims (3)

  1. 分子配向が2軸配向である液晶ポリマーフィルムを積層して熱圧着する電子回路基板の製造方法であって、
    少なくとも1の液晶ポリマーフィルムの片面または両面に、回路パターンを形成する工程;
    各液晶ポリマーフィルムの片面または両面を、80容積%以上の酸素雰囲気下、18Pa以下の圧力のダイレクトプラズマモードでプラズマ処理する工程;および
    液晶ポリマーフィルムのプラズマ処理した面を対向させて積層し、熱圧着する工程;を含むことを特徴とする電子回路基板の製造方法。
  2. 90容積%以上の酸素雰囲気下でプラズマ処理を行う請求項1に記載の電子回路基板の製造方法。
  3. 15Pa以下の圧力でプラズマ処理を行う請求項1又は2に記載の電子回路基板の製造方法。
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