JP5152766B2 - 癌の浸潤と転移の検査方法及び検査用試薬 - Google Patents

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本発明は、生体試料、特に血液中のチトクロムcを測定することによる、癌の浸潤と転移の検査方法及び検査用試薬に関するものである。
癌は細胞の異常増殖に基づく疾患であるが、最近の研究により、癌細胞は細胞分裂と細胞死の微妙なバランスの基に増殖することが明らかとなってきた。癌細胞の細胞死には、ネクローシスとアポトーシスという二つのパターンが存在する。ネクローシスは細胞の壊死とも言われ、限定されたスペースでの癌の過剰増殖による酸素不足や栄養不良によって引き起こされる細胞死である。一方アポトーシスは、細胞の遺伝子にコントロールされた細胞死であり、細胞の自殺死ともいわれ、多くの遺伝子によって制御されている。特に癌細胞ではしばしば遺伝子に変異や異常発現が認められ、細胞のアポトーシスに対する感受性に変化をもたらしていると言われている。細胞にアポトーシスを引き起こす情報伝達経路の一つとして、細胞内のミトコンドリア経路が存在する。ミトコンドリア経路においては、ミトコンドリアからチトクロムcが細胞質に遊離することによってアポトーシスのシグナルが入る。細胞質内のチトクロムcはアポトーシス制御因子であるApaf-1と結合し、次いで蛋白分解酵素であるカスパーゼを活性化して細胞死を招くと言われている。チトクロムcはさらに細胞外にも遊離し、血液中のチトクロムc値を測定することにより、生体内で起こっているアポトーシスの指標となることが知られており(非特許文献2、特許文献1、2)、多くの疾患の診断マーカーとしての用途が期待されている。
癌を悪性ならしめる性質として、周辺組織への浸潤や他臓器への転移があげられる。浸潤や転移の診断法としては、組織の摘出による病理組織診断や、CT、MRIなどによる画像診断が一般的である。しかし、組織の摘出による病理組織学的検査は患者への侵襲を伴い、熟練者による顕微鏡観察が必要であり、結果が判明するまでに時間を要する。画像診断は非侵襲的な方法で結果の判明も早いが、高価な機器が必要であり、微小な癌の検出や細胞レベルでの浸潤の検出は困難である。このような状況に鑑み、患者に対する侵襲が少なく、血液などの生体試料に含まれるバイオマーカーによる簡便で安価な検査法が期待されるが、未だ癌の浸潤や転移を高精度に診断できる有用なバイオマーカーは存在しない。
WO 01/35093 特開2003-028860
Andrea Renz, et al. Rapid extracellular release of cytochrome c is specific for apoptosis and markers cell death in vivo, BLOOD, 98(5)1542-1548,2001 Z.BEN-ARI, et al. Circulating soluble cytochrome c in liver disease as marker of apoptosis, Journal of Internal Medicine, 254,168-175,2003
本発明の課題は、生体試料、特に血液中のチトクロムcを測定することにより、癌の浸潤と転移を診断する、簡便で精度に優れた検査用試薬及び検査方法を提供することにある
本発明者らは、高感度で定量精度に優れた電気化学発光免疫測定法により、各種癌患者血清中のチトクロムcを測定した結果、転移を有する患者では転移の無い患者に比べてチトクロムc値が有意に高いことを見出した。また、周辺組織への癌細胞の浸潤を認めた患者では、浸潤を認めない患者に比べてチトクロムc値が有意に高いことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下に関する。
1.体液中のチトクロムcを測定し、測定結果を癌の浸潤と転移の指標として用いることを特徴とする検査方法。
2.チトクロムcを免疫化学的方法により測定する、1に記載の方法。
3.体液中のチトクロムcを測定するための試薬を含む、癌の浸潤と転移の検査用試薬。4.チトクロムcを免疫化学的方法により測定する、3に記載の試薬。
体液中のチトクロムcを測定することにより癌の浸潤と転移の診断が可能となり、簡便で精度に優れた検査方法及び検査用試薬が提供される。
転移の無い患者群と転移の有る患者群間での血清チトクロムc値の比較を示す。 周辺組織への癌の浸潤のない患者群、被膜外・漿膜外浸潤があるがリンパ管・脈管侵襲のない患者群、リンパ管・脈管侵襲のある患者群間での血清チトクロムc値の比較を示す。 転移(リンパ節転移を除く)の診断能における、LDHとチトクロムcのROC分析結果を示す。 浸潤の診断能における、LDHとチトクロムcのROC分析結果を示す。
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の検査方法は、癌の浸潤と転移を検査する方法であって、癌患者の体液中のチトクロムcを測定し、測定結果を癌の浸潤と転移の指標として用いることを特徴とする。指標として用いるとは、癌患者の体液中のチトクロムcの測定値を、転移又は浸潤していない群の測定値と比較することであり、その比較結果に基づき転移又は浸潤の有無が検査される。転移又は浸潤していない群の測定値は、予め求めた転移又は浸潤していない群の測定値を使うことも許される。具体的には、転移又は浸潤していない群の測定値より高値である場合に、癌の転移又は浸潤があると判断することができる。すなわち、本発明の検査方法は、以下の工程を含む。
(1)癌患者の体液中のチトクロムcを測定し、
(2)該測定値を転移又は浸潤していない群の測定値と比較し、
(3)高値である場合に転移又は浸潤していると判断する工程。
ここで、体液とは、生体より採取された血液、血漿、血清、脳脊髄液等を意味する。
体液中のチトクロムcを測定する方法としては、免疫化学的方法、電気泳動による方法、クロマトグラフィーによる方法等が考えられる。電気泳動による方法としては、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行ってチトクロムcをバンドとして検出する方法、キャピラ
リー電気泳動でピークとして検出する方法等がある。また、クロマトグラフィーによる方法としては、高速液体クロマトグラフィーでピークとして検出する方法等がある。場合によっては感度を上げるために、蛍光標識することも許されるが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
チトクロムcを測定する方法としては、感度及び簡便性から免疫化学的方法が好ましい。ここで免疫化学的方法とは、チトクロムcに対する抗体を用いてチトクロムcを定量する方法である。免疫化学的方法としては、チトクロムcを標識する競合法、抗体を標識するサンドイッチ法、抗体結合したビーズの凝集を観察するラテックスビーズ法、抗体結合したラテックス粒子などを膜上で展開して反応させるイムノクロマト法等、様々な方法があるが、チトクロムcに対する抗体を用いた方法であれば、本発明の好ましい態様に含まれる。抗体はモノクローナル抗体でも、ポリクローナル抗体でも良い。また標識する方法にも、放射性同位元素による標識、電気化学発光する化合物による標識、蛍光標識、酵素標識、ビオチン標識等、様々な方法があるが、本発明はこれらの例に限られるものではない。
本発明で使用されるポリクローナル抗体(抗血清)又はモノクローナル抗体は、既存の一般的な製造方法によって製造することができる。例えば、モノクローナル抗体は、抗体産生細胞と自己抗体産生能のない骨髄腫系細胞(ミエローマ細胞)からハイブリドーマを調製し(ネイチャー(Nature)、第256巻、第495〜第497頁、1975年)、該ハイブリドーマをクローン化し、哺乳動物の免疫に用いた抗原に対して特異的親和性を示すモノクローナル抗体を産生するクローンを選択することによって製造することができる。
またモノクローナル抗体の場合には、IgG、IgM、IgA、IgDあるいはIgE等のいずれのアイソタイプを有するモノクローナル抗体をも包含する。好ましくは、IgGまたはIgMである。
さらに、本発明における抗体には、抗体のフラグメントも含まれるものであり、この「抗体のフラグメント」には、F(ab')2 、Fab'、Fab 、Fv(variable fragment of antibody)、sFv、dsFv(disulphide stabilised Fv)あるいはdAb(single domain
antibody)などが含まれる(エキスパート・オピニオン・オン・テラピューティック・パテンツ(Exp. Opin. Ther. Patents),第6巻,第5号,第441〜456頁,1996年)。
チトクロムcを測定する免疫化学的方法の例として、以下にサンドイッチ法についてステップを追って説明する。
1)チトクロムcに対する抗体をビーズまたはカップ上に固相化する。ビーズはマイクロビーズでもよく、その場合は磁性体のマイクロビーズが好ましい。固相化は、共有結合により結合させても非共有結合により結合させても構わない。通常、ビーズまたはカップ上の非特異的な結合部位をふさぐため、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン等の蛋白質、Tween 20等の界面活性剤でブロッキング操作を行う。
2)検体を、必要であればBSA、カゼイン等の蛋白質、または、Tween 20等の界面活性剤を含む緩衝液で希釈し、ビーズまたはカップに加える。また、検量線作成用に既知の量のチトクロムcも同様に希釈して加える。
3)ビーズまたはカップを、できればTween 20等の界面活性剤を含む緩衝液で洗浄後、できればBSA、カゼイン等の蛋白質、または、Tween 20等の界面活性剤を含む緩衝液で希釈された標識抗体を加える。
4)ビーズまたはカップを、できればTween 20等の界面活性剤を含む緩衝液で洗浄後、標識に応じた方法で測定する。例えば、放射性標識であれば放射活性を、酵素標識であれば酵素活性を、電気化学発光化合物標識であれば発光量を測定する。また、ビオチン化標識であれば更に標識アビジンを加えて、標識に応じた方法で測定する。
5)既知量のチトクロムcから検量線を作成し、検体中に含まれるチトクロムc量を計算する。
以上のステップにより、検体中のチトクロムcが測定される。
チトクロムcの測定においては、好ましくは酸性領域で抗チトクロムc抗体とチトクロムcとを反応させる(国際公開第WO 2006/112445参照)。酸性領域とは、抗体とチトクロムcの結合に影響を与える体液中の妨害物質の影響が減弱するpH領域であり、通常には、pH7以下、好ましくはpH3.0〜pH6.0、さらに好ましくはpH3.5〜pH5、特に好ましくはpH3.5〜pH4.5である。
チトクロムcの測定結果を指標として用いることにより、癌の浸潤と転移の有無が検査される。例えばチトクロムcの測定値が正常値(転移又は浸潤していない群の測定値)よりも高い場合に、癌の浸潤と転移が検出されたとすることができる。また、正常値として正常値上限(カットオフ値)を設定し(例えば、コントロール群の濃度の平均値+標準偏差の3倍)、それとの比較で浸潤と転移の有無を判定してもよい。また正常値は、予め転移又は浸潤していない群のチトクロムcの測定値を測定しておいて、定めることも許される。
免疫化学的方法としては、サンドイッチ法が好ましい。サンドイッチ法は、固定化抗体と標識抗体により抗原がサンドイッチされた状態を利用する電気化学発光免疫測定法など免疫化学的方法である。サンドイッチ法は、蛋白質濃度の高い体液中のチトクロムcを高感度で定量するのに適した方法である。
また、サンドイッチ法によるチトクロムcの測定に当たり、酸性領域で反応を行う方法は、固相化した抗体と検体中のチトクロムcとを反応させる第1反応のみならず、第1反応で妨害物質が除去しきれなかったときに、第2反応(チトクロムcと標識抗体を反応させる工程)に用いても有効である。
また本発明は、チトクロムcを測定することにより癌の浸潤と転移を検査する検査用試薬にも関し、この試薬は体液中のチトクロムcを測定するための試薬を含む。チトクロムcを定量するための試薬は、好ましくは、免疫化学的方法により測定するための試薬である。このような測定試薬としては、チトクロムcに対する抗体が挙げられる。
本発明の検査用試薬は、好ましくは、チトクロムcに対する抗体を構成成分とする、体液中のチトクロムcをサンドイッチ法により測定する検査用試薬である。この態様の検査用試薬は、抗体として抗チトクロムc抗体を用いる以外は、通常のサンドイッチ法に用いられる試薬(キット)と同様の構成でよい。その一例としてサンドイッチ法によりチトクロムcを測定する検査用試薬は、例えば1).抗チトクロムc抗体結合ビーズ、抗チトクロムc抗体結合カップなどの抗チトクロムc抗体結合固相、2).標識抗チトクロムc抗体、3).既知濃度のチトクロムc標準抗原溶液、4).反応用溶液、5).洗浄液、を含有する試薬である。更に酵素標識であれば、6).発色基質、7).反応停止液が含まれてもよい。
本発明の検査用試薬は、抗チトクロムc抗体とチトクロムcの反応を酸性領域の緩衝液中で行うことを特徴とするものであってもよい。例えば、検査用試薬付属の使用説明書に
、酸性条件でチトクロムcと抗チトクロムc抗体の反応を行う旨が記載された検査用試薬が挙げられる。また、酸性に調整した反応用緩衝液を含む検査用試薬としてもよい。
以下に、具体的な例をもって本発明を示すが、本発明はこれに限られるものではない。
[参考例1]抗チトクロムcIgGの精製
ラットチトクロムc(シグマ社製)をウサギに免疫し、チトクロムcに対する抗血清を得た。その抗血清に最終濃度2 Mになるように硫酸アンモニウムを添加し、室温(20-30℃)で5時間撹拌した。撹拌した溶液を10000回転で30分遠心し上清を捨て、沈殿物に0.1 Mリン酸緩衝液pH 7.2を加え溶解後、0.1 Mリン酸緩衝液pH 7.2にて透析した。
透析した溶液を、ウシチトクロムc(シグマ社)を結合したCNBr-Sepharose4B(GEヘルスケアバイオサイエンス社)カラムに流し、0.15M NaClを含む0.01Mトリス塩酸緩衝液pH 7.5でカラムを洗浄後、0.1 M塩酸グアニジンでIgGを溶出した。溶出されたIgGを0.15 M NaClを含む0.01 Mトリス塩酸緩衝液pH 7.5で透析し抗チトクロムcIgG精製物とした。
[参考例2]抗チトクロムcIgG F(ab')2ポリクローナル抗体の調製
精製した抗チトクロムcIgGを0.1 M酢酸緩衝液pH 4.2で透析し、ペプシン(シグマ社)を蛋白質濃度比で20:1の割合になるように加え、37℃で16時間反応させた。1 N NaOHを加えpHを7.5に調整し、0.15 M NaClを含む0.01 Mトリス塩酸緩衝液pH 7.5で平衡化したSephacryl S-200(GEヘルスケアバイオサイエンス社)カラムに流しゲル濾過を行った。フラクションの第一ピークを集め、濃縮し、抗チトクロムcIgG F(ab')2ポリクローナル抗体とした。
[参考例3]抗チトクロムcモノクローナル抗体の作製
ヒトチトクロムc(R&D Systems社)110μg/100μLと65 mMリン酸緩衝液pH 7.5に溶解した2 mg/mLオブアルブミン55μLを混合して、そこへ65 mMリン酸緩衝液pH 7.5で希釈した1 mMグルタルアルデヒド42μLを加え、室温で2時間撹拌した。次に、0.15 M NaClで4℃において48時間透析し、等量のFCAとアジュバントを作製し、BALB/Cマウス腹腔に0.1
mL免疫した。2週間おきに合計3回同様に免疫した。3回目の免疫の2週間後、マウスに生理食塩水に溶解したヒトチトクロムc50μg/100μLを尾静脈より静注した。3日後マウスから脾臓を摘出して、常法に従い、脾臓リンパ球をポリエチレングリコール法によりミエローマ細胞P3X63 Ag8U.1と細胞融合した。ヒトチトクロムcを抗原としてスクリーニングを行い、ヒトチトクロムcに対するモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ(clone:3G7および27G9)を樹立した。
樹立したハイブリドーマをエスクロンSF-B培地(三光純薬社)で培養して増殖させ、BALB/Cマウス腹腔に接種した。1週間後、腹水を採取した。採取した腹水からプロテインAを用いてIgGを精製し、抗チトクロムc抗体(3G7抗体および27G9抗体)を得た。
[参考例4]抗チトクロムc抗体固相化ビーズの作製
抗チトクロムcモノクローナル抗体(clone:2B5F8(R&D Systems社)またはclone:6H2.B4(BectonDickinson社))を、0.15M NaClを含む0.1 M酢酸緩衝液(pH 4.2)で透析し、OD 280 nmが0.56になるよう0.15M NaClを含む0.1 M酢酸緩衝液(pH 4.2)で希釈した。希釈した抗体1.67 mLを、あらかじめ磁石を用いて0.15M NaClを含む0.1 M酢酸緩衝液(pH
4.2)3 mLで3回洗浄したビーズ(DynabeadsR M-450 Epoxy, Dynal社)3.36 mL分と混合し、室温で17時間撹拌した。次にビーズをブロッキング緩衝液(50 mM Tris・HCl, 1% BSA, 0.15 M NaCl, 0.1% NaN3, pH7.5)3 mLで懸濁し、室温で7時間撹拌してビーズをブロッキングした。ブロッキングされたビーズを使用時に1検体あたり3×107個になるよう
調整して測定に用いた。
[参考例5]ルテニウム錯体標識抗チトクロムc抗体の作製
参考例3で作製した抗チトクロムcモノクローナル抗体(3G7抗体または27G9抗体)あるいは参考例2で作製した抗チトクロムcIgG F(ab')2ポリクローナル抗体をPBSで透析し、抗体濃度を0.5 mg/mLから2 mg/mLの範囲に調製する。抗体1 mLに、ジメチルスルホキシドに10mg/mL濃度で溶解したルテニウム錯体(ruthenium(II) tris(bipyridyl) - N-hydroxysuccinimide, IGEN Corp. USA)を12.2μL加え室温で30分撹拌した。次に2 M グリシンを50μL加え、室温で10分撹拌した。それを、PBS-3(10 mMリン酸カリウム, 0.15M NaCl, 0.05% NaN3, pH 6.0)であらかじめ平衡化したSephadex G-25(GEヘルスケアバイオサイエンス社)カラム(1.5 cmφ x 30 cm)にアプライしてPBS-3で溶出し、1 mLでフラクション分取した。各フラクションのOD 280 nmを測定し、第1ピークのフラクションを集めルテニウム錯体標識抗チトクロムc抗体とした。抗体濃度をMicro BCA protein Assay kit(PIERCE社)を用いて測定した。
[参考例6]ヒトチトクロムc標準抗原の調製
チトクロムc標準抗原は、ヒトチトクロムc(R&D Systems社)を5% BSA、0.15 M NaCl, 0.1% NaN3を含む0.15 Mリン酸ナトリウム緩衝液pH 7.4で1000 ng/mL, 500 ng/mL, 100 ng/mL, 50 ng/mL, 10 ng/mLに希釈して調製した。
[実施例1]転移の無い癌患者群と転移の有る癌患者群間での血清チトクロムc値の比較(1)測定症例
悪性腫瘍に対する外科的切除術適応患者総計100例(消化管40例 [食道癌3例、胃癌11例、結腸癌17例、肝癌7例、胆嚢癌2例]、肺17例 [小細胞癌2例、非小細胞癌15例]、泌尿器6例、生殖器19例、乳腺2例、甲状腺4例、皮膚11例、軟部組織2例、頭頚部5例)の術前1週前に採血して得た血清につき、チトクロムc値を測定した。
また、術前に施行した画像診断により、同一臓器内または他臓器への癌の転移が認められた症例を転移(+)群(57症例)とし、転移が認められなかった症例を転移(−)群(42症例)とした。さらに転移(−)群については、摘出手術試料の病理検査により、周辺組織への腫瘍細胞の浸潤が認められた症例を浸潤(+)群(26症例)、浸潤が認められなかった症例を浸潤(−)群(16症例)とした。
(2)電気化学発光免疫測定法
500μL容量のポリプロピレン製反応管に反応用溶液(0.15M NaCl, 15mM EDTA, 5% N102(日本油脂社製), 0.1% NaN3を含む0.1 Mクエン酸リン酸緩衝液pH 4.0)を200μL注入し、そこに各患者血清並びに5濃度のヒトチトクロムc標準抗原(1000 ng/mL, 500 ng/mL, 100 ng/mL, 50 ng/mL, 10 ng/mL)を20μLずつ加えた。その後の測定は、全自動電気化学発光免疫測定機ピコルミR8220(三光純薬社)を用いて行った。すなわち、反応管に1%BSA、0.3%スクロース、0.01容量%Tween20、0.1%NaN3を含む0.15M PBS(pH 7.5)でビーズ濃度1mg/mLに調整した抗チトクロムc抗体固相化ビーズ液25μLを加えて9分間反応させた。その後、ピコルミR BF洗浄液(三光純薬社)350μLでビーズを2回洗浄し、1% BSA、0.3% スクロース、 0.01 容量% Tween 20、 0.1% NaN3を含む0.15 M PBS(pH 7.5)で0.5〜1μg/mL濃度に調整したルテニウム錯体標識抗チトクロムc抗体液200μLを加えて9分間反応させた。ピコルミR BF洗浄液350μLでビーズを2回洗浄後、ピコルミR発光電解液(三光純薬社)を300μL加えて発光量を計測した。
横軸にヒトチトクロムc標準抗原濃度、縦軸にヒトチトクロムc標準抗原の発光量をプロットして標準曲線を描き、その標準曲線を基に、各患者血清の発光量からそれぞれに含まれるチトクロムc値を算出した。
(3)結果
転移(+)群と転移(−)群における血清チトクロムc値の分布を図1に示し、各群における血清チトクロムc値の中央値と陽性率を表1に示した。マンホイットニーU検定において、転移(+)群の血清チトクロムc値は、転移(−)群に比べて有意(P=0.000051)に高値を示した。転移、浸潤ともに(−)群16例における血清チトクロムc値の平均値+3SD値をカットオフ値(25.5ng/mL)とした場合、転移(−)群の陽性率は23.8%であったのに対し、転移(+)群の陽性率は56.1%と高値を示した。
また、転移(−)群において、周辺組織への腫瘍細胞の浸潤(+)群と浸潤(−)群における血清チトクロムc値の分布を図1に示し、各群における血清チトクロムc値の中央値と陽性率を表2に示した。マンホイットニーU検定において、浸潤(+)群の血清チトクロムc値は、浸潤(−)群に比べて有意(P=0.00049)に高い血清チトクロムc値を示した。上述のカットオフ値(25.5ng/mL)に従って判定した場合、浸潤(−)群の陽性率は0%であったのに対し、浸潤(+)群の陽性率は38.5%と高値を示した。
この結果は、癌の転移や周辺組織への浸潤によって血清チトクロムc値が上昇することを示し、血清チトクロムc値を測定することによって、癌の転移や浸潤の診断を可能ならしめるものである。
Figure 0005152766
Figure 0005152766
[実施例2]癌の周辺組織への浸潤度による血清チトクロムc値の比較
(1)測定症例と測定方法
実施例1に用いた症例の中から、手術時摘出組織の病理検査結果に基づいて、腫瘍細胞の原発臓器外(被膜・漿膜外)への浸潤を認めない症例を浸潤(−)群(19症例)、脈管侵襲のみを認める症例を浸潤A群(28症例)、原発臓器外(被膜・漿膜外)への浸潤を認める症例を浸潤B群(28症例)として分類し、それぞれの群について血清チトクロムc値を比較した。血清チトクロムc値の測定は、実施例1に示した電気化学発光免疫測定法にて行った。
(2)結果
浸潤(−)群、浸潤A群、浸潤B群のチトクロムc値の分布と各群における陽性率を図2に示した。なお、陽性率を求めるためのカットオフ値は、実施例1に示した値(25.5ng/mL)を用いた。マンホイットニーU検定において、浸潤B群の血清チトクロムc値は、浸潤(−)群比べて有意(P = 0.003)に高値を示し、また、浸潤A群に比べても有意(P = 0.03
02)に高値を示した。陽性率は浸潤(−)群0%、浸潤A群29.4%、浸潤B群66.7%であった。
この結果は、癌の浸潤度が高いほど血清チトクロムc値が高くなることを示すものであった。
[実施例3]癌の転移と浸潤診断におけるLDHとチトクロムcの比較
(1)測定症例と測定方法
実施例1で用いた症例の中から、術前化学療法を施行した症例を除く転移例(リンパ節転移を除く72症例)と浸潤例(76症例)につき、血清チトクロムc値と細胞障害マーカーであるLDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)値を測定した。血清チトクロムc値の測定は、実施例1に示した電気化学発光免疫測定法にて行った。また、LDHは日本臨床化学学会(JSCC)勧告法に準拠したJSCC標準化対応法に従って測定した。
(2)結果
ROC分析により転移に対する診断能を比較した結果を図3に、浸潤に対する診断能を比較した結果を図4に示した。曲線下面積は、図3、図4ともにチトクロムcの方がLDHに比べて広く、転移と浸潤に対する診断能は、チトクロムcの方がLDHに比べて優れていた。
本発明の検査方法及び診断試薬により、体液中のチトクロムcを測定することにより癌の浸潤と転移の診断が可能となる。

Claims (6)

  1. 転移性の癌の転移を検査する方法であって、以下の工程、
    (1)癌患者から採取された体液中のチトクロムcを測定し、
    (2)該測定値を転移していない群の測定値と比較し、
    (3)高値である場合に転移していると判断する工程、
    を含む方法。
  2. チトクロムcを免疫化学的方法により測定する、請求項1に記載の方法。
  3. 体液が血清である請求項1に記載の方法。
  4. 浸潤性の癌の浸潤を検査する方法であって、以下の工程、
    (1)癌患者から採取された体液中のチトクロムcを測定し、
    (2)該測定値を浸潤していない群の測定値と比較し、
    (3)高値である場合に浸潤していると判断する工程、
    を含む方法。
  5. チトクロムcを免疫化学的方法により測定する、請求項4に記載の方法。
  6. 体液が血清である請求項4に記載の方法
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