JP2009145132A - 大腸癌、動脈硬化症、又はメタボリックシンドロームの検出方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の大腸癌、動脈硬化症、又はメタボリックシンドロームの検出方法は、レジスチン様分子βを分析することを特徴とする。大腸癌の検出用キット、動脈硬化症の検出用キット、又はメタボリックシンドロームの検出用キットは、レジスチン様分子βに特異的に結合する抗体又はその断片を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
Description
一方、レジスチンのアイソフォームであるRELMβは、約14kDaのタンパク質であり、生体内では2量体又は6量体を形成していると考えられている。また、正常組織では、小腸と大腸に発現が見られ、気管支上皮にも発現が認められる。
RELMβについて、最近、その発現を調節することによって、患者におけるアレルギー反応を減少させることが可能であることが示されている(特許文献1)。更に、肥満マウスでRELMβの血中濃度が上昇することが報告されている(非特許文献1)。更に、RELMβを肝臓において過剰発現するトランスジェニックマウスは、高血糖、高脂血症、脂肪肝といったメタボリック症候群を呈することも報告されている(非特許文献2)。これらの報告は、RELMβがメタボリック症候群の発症と関連していることを強く示唆するものである(非特許文献3)。しかしながら、RELMβの生体内における生理活性は、未だ明確には解明されていない。
従って、本発明の課題は、大腸癌、動脈硬化症、又はメタボリックシンドロームの検出方法及び検出キットを提供することにある。
本発明による大腸癌の検出方法の好ましい態様においては、前記レジスチン様分子βの分析が免疫学的分析方法であり、特には免疫組織染色法、ウエスタンブロット法、及び酵素免疫測定法である。
また、本発明は、レジスチン様分子βを分析することを特徴とする、動脈硬化症の検出方法に関する。
本発明による動脈硬化症の検出方法の好ましい態様においては、前記レジスチン様分子βの分析が免疫学的分析方法であり、特には免疫組織染色法、ウエスタンブロット法、及び酵素免疫測定法である。
更に、本発明は、レジスチン様分子βを分析することを特徴とする、メタボリックシンドロームの検出方法に関する。
本発明によるメタボリックシンドロームの検出方法の好ましい態様においては、前記レジスチン様分子βの分析が免疫学的分析方法であり、特には免疫組織染色法、ウエスタンブロット法、及び酵素免疫測定法である。
また、本発明は、レジスチン様分子βに特異的に結合する抗体又はその断片を含むことを特徴とする、大腸癌の検出用キットに関する。
また、本発明は、レジスチン様分子βに特異的に結合する抗体又はその断片を含むことを特徴とする、動脈硬化症の検出用キットに関する。
更に、本発明は、レジスチン様分子βに特異的に結合する抗体又はその断片を含むことを特徴とする、メタボリックシンドロームの検出用キットにも関する。
生活習慣病には、糖尿病、高脂血症、高血圧、高尿酸血症、動脈硬化症、がん(例えば、大腸癌)などが含まれ、生活習慣病が発症する背景として、肥満に加えて、高脂血症、高血圧、高血糖などの病態が複合した状態を、メタボリックシンドロームと呼んでいる。
大腸癌による死亡者数は年々増加しており、女性では2003年に悪性新生物による死亡原因のうちの第一位となり、男性でも2003年に2万人以上が死亡しており(第4位)、大腸癌は大きな健康問題となっている。
大腸癌の診断方法として、遺伝性大腸癌については多くの遺伝子診断が行われているが、健康診断などで実施されている一般的な診断方法としては、便潜血反応でヘモグロビンを生化学的又は免疫学的に検出する便潜血検査が用いられている。しかしながら、便潜血検査では、大腸癌以外の出血も検出するため、大腸癌の検出率としては必ずしも満足できるものではなかった。また試料に病原菌が含まれる可能性もあり、検査をする人は検体の取り扱いに注意する必要がある。
一方、新しい診断法として、血漿中の抗原又は酵素などを腫瘍マーカーとして測定することも多く検討されていて、その代表的なものとしてCA19−9、CEAが大腸癌のバイオマーカーとて使用されている。しかし、CA19−9は糖鎖抗原を認識しており、他の腫瘍マーカーと認識抗原がオーバーラップし、膵癌、胆管系の癌をはじめとする消化器癌の患者血中で上昇し、大腸癌に特異なマーカーではない。CEAも消化器癌に特異的ではあるが、正常人の大腸粘膜でも産生されていて大腸癌に特異的なマーカーになり得ない。このように、安全で簡便で検出精度の高い大腸癌の検出方法は今までなかった。
また、生検、内視鏡による肉眼分類、及び病理組織学的診断については、診断基準が整備されてきており、従来あった病理医の間における診断結果の相違は、解消されてきている。しかし、国際的には消化管上皮性腫瘍の診断には大きな格差があり、確定診断の可能な病理診断用の腫瘍マーカーもなかった。
アテローム(粥状)硬化:大動脈、脳動脈、及び冠動脈などの比較的太い動脈に起こり、動脈の内膜にコレステロールなどの脂肪からなる粥状物質が付着し、アテロームプラック(粥状硬化斑)ができるものである。
細動脈硬化:高血圧による変化で、脳や腎臓の細い動脈に起きやすく、梗塞を起こしたり、血管壁全体が破裂して出血したりする。
メンケルベルグ型(中膜)硬化:動脈の中膜にカルシウムが溜って、硬化し中膜がもろくなるものである。
動脈硬化症は、脳動脈で起きた場合、脳梗塞及び脳出血の原因となり、冠動脈で起きた場合、心筋梗塞及び狭心症などの虚血性心疾患の原因となり、大動脈で起きた場合、大動脈瘤及び大動脈解離の原因となり、腎動脈で起きた場合、腎硬化症及びそれによる腎不全の原因となり、末梢動脈で起きた場合、閉塞性動脈硬化症の原因となる。
まず、必須項目として、内臓脂肪蓄積(内臓脂肪面積が100平方cm以上)のマーカーとして、ウエスト周囲径が、男性で85cm以上、女性で90cm以上である。この必須項目に加え、下記の3項目のうちの2項目以上に該当する場合は、メタボリックシンドロームと診断される。
血清脂肪異常(高脂血漿):トリグリセリド値(血清中性脂肪)が150mg/dL以上か、血清HDLコレステロール値が40mg/dL未満のいずれか、又は両方を満たすもの。
高血圧:最高(収縮期)血圧が130mmHg以上か、最低(拡張期)血圧が85mmHg以上のいずれか、又は両方を満たすもの。
高血糖:空腹時血糖が110mg/dL以上。
これらのメタボリックシンドロームの状態を長期間持続させることにより、合併症が発生する確率が高まるため、メタボリックシンドロームを解消することにより、合併症を予防することが重要となっている。
本明細書におけるレジスチン様分子β(RELMβ)は、レジスチンのアイソフォームである。マウスではレジスチンのアイソフォームとして、RELMα、β、γの3つのアイソフォームが発見されており、RELMαは脂肪組織、心臓、肺及び舌での発現、RELMβは腸での発現、RELMγは造血組織での発現が確認されている。一方、ヒトでは前記のように、RELMβのみが発見されており、その生理的意義はまだ解明されていなかった。
RELMβは、約14kDaのタンパク質であり、生体内では2量体又は6量体を形成していると考えられている
但し、ヒトのRELMβタンパク質は、レジスチンと相同性を有するため、相同性の低いN末端側の約半分のペプチドを用いることが好ましく、例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列の16番〜66番のアミノ酸配列からなるペプチドの全部又は一部を免疫抗原として用いることが好ましい。図4にレジスチンとRELMβのアミノ酸配列の相同性を記載しているが、レジスチンは108アミノ酸、RELMβは111アミノ酸からなるタンパク質である。
また、大腸菌や酵母などで発現させる組換え抗原を用いる場合は、発現を容易にするため、他のタンパク質、例えば、SODとの融合抗原とすることも可能である。また、精製を容易にするため、様々なTagなどを結合させて発現させることもできる。
特に、前記サンドイッチELISA法に用いる被検試料としては、血液、血清、血漿、便などを用いることが好ましい。
また、被検試料として血管を用いる場合にも、前記免疫組織染色で、血管のRELMβの発現を確認し、正常血管組織との閾値を設定し比較することにより、動脈硬化症であるか否かを判定することができる。
なお、大腸癌患者の癌組織と正常組織との閾値、及び動脈硬化症患者の血管組織と正常組織との閾値は、種々の条件、例えば、組織の調製状態、又は患者の状態などに応じて異なるため、一概には規定することはできないが、当業者であれば、正常組織と癌組織の染色性の差を比較することによって、決定することができる。
本発明の検出用キットは、RELMβに特異的に結合する抗体又はその断片を含む。前記抗体としては、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体のいずれを用いることもできる前記抗体断片としては、RELMβへの特異的結合能を保持する限り、特に限定されるものではなく、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、又はFvを用いることができる。
例えば、標識化抗体を用いる免疫学的手法、例えば、酵素免疫測定法、化学発光免疫測定法、蛍光抗体法、又は放射免疫測定法などの場合には、標識物質で標識した標識化抗体又は標識化抗体断片の形態で含むことができる。標識物質の具体例としては、酵素としてペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、又はグルコースオキシダーゼ等を、蛍光物質としてフルオレセインイソチアネート又は希土類金属キレート等を、放射性同位体として3H、14C、又は125I等を、その他、ビオチン、アビジン、又は化学発光物質等を挙げることができる。酵素又は化学発光物質等の場合には、それ自体単独では測定可能なシグナルをもたらすことはできないことから、それぞれ対応する適当な基質等を選択して含むことが好ましい。
本実施例1では、RELMβの抗原を作製し、その抗原をマウスに免疫し、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを樹立した。
(A)RELMβタンパク質の調製(免疫用抗原の調製)
配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするDNA断片、すなわち、RELMβタンパク質の16番〜66番のペプチドをコードするDNA断片を、ヒト大腸がん細胞株LS174T細胞からのmRNAを鋳型として、PCRにより取得した。このDNA断片を、発現ベクターpGEX−4T−1の制限酵素サイトEcoRIサイトに組み込んだ。得られたベクターpGEX−hRELMbeta16−66により、大腸菌DH5α株を形質転換し、GST融合RELMβタンパク質(16−66)を発現させた。RELMβタンパク質の発現した菌体を回収し、Glutathione Sepharose 4Bカラムを用いて精製し、10mgのGST融合RELMβタンパク質(16−66)を得た。
前記の工程(A)で得られた、GST融合RELMβタンパク質(16−66)を用いて、モノクローナル抗体の作製を行った。
PBSに溶解したGST融合RELMβタンパク質(16−66)(2mg/mL)を、等量の完全フロイントアジュバントと混合し、0.1mLを6週齢のメスのBALB/cマウスに腹腔内に接種した。1週間後に、GST融合RELMβタンパク質(16−66)(2mg/mL)を、等量の不完全フロイントアジュバントと混合し、同様に免疫を行い、この追加免疫を3回繰り返した。合計5回の免疫を行った3日後に、PBSに希釈したGST融合RELMβタンパク質(16−66)(0.1mg/mL)を尾静脈から注射した(最終免疫)。
本実施例2では、大腸癌組織において、RELMβの検出を行った。
被検材料として、大腸癌を併発した潰瘍性大腸炎の生検組織を用い、定法に従い、固定し、パラフィン包埋した。被検材料を、緩衝ホルマリン[組成:10%ホルマリン原液,リン酸ナトリウム(pH7.2)]で固定した後、エタノールで脱水し、続いて、クロロホルムで置換した後、融点56〜58℃のパラフィンを用いて包埋した。得られたパラフィン包埋標本から、ミクロトームを用いて、連続薄切切片(約10μm)を作製し、この切片をスライドガラスに貼布し、充分に乾燥させた。次に、得られたスライドグラスを、キシレン×3回、100%エタノール×2回、95%エタノール×1回、及び80%エタノール×1回の工程を各3分間ずつ行い脱パラフィンし、精製水で洗浄した。
同様に、80症例の大腸癌患者から得られた大腸癌の組織について、免疫組織染色を行った。全ての症例から得られた組織において、癌部ではRELMβの発現の強い発現が見られ、正常組織や潰瘍性大腸炎などの非癌部においては、RELMβの発現は非常に低いものであった。
本比較例1は、正常大腸でのRELMβの発現の検出を行った。
被検材料として、正常大腸組織を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。図1Cの正常大腸癌におけるRELMβの発現は、図1A及びBの大腸癌の癌部と比較すると、非常に低い発現量であった。
本実施例3では、動脈硬化症の組織においてRELMβの検出を行った。
被検材料として、大動脈粥状硬化病変組織を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。図2Aは弱拡大像であり、図2Bは、組織球の集族層の強拡大像である。組織球の細胞質にRELMβの発現が強く見られた。また、図3A及びBは、図2の症例と異なる症例の400倍拡大像である。RELMβは、すべての組織球に発現しているわけではなく、集族傾向の強い部分の組織球にRELMβの強い発現が見られた。
この他に、全部で10症例の動脈硬化を起こしている患者の動脈硬化巣について、免疫組織染色を行ったが、全ての症例において組織球の細胞質に、RELMβの強い発現が見られた。
本実施例4では、RELMβに対するモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を用いて、サンドイッチELISA法による免疫学的分析方法の構築を行った。
ポリクローナル抗体は、以下のように作成したものを用いた。実施例1で作成したGST融合RELMβタンパク質(16−66)100μg/headを、2週間おきに完全フロイントアジュバント、又はフロイントアジュバントを用いてウサギの背部及び足しょに免疫した。4回以上の免疫を行った後に、血清を採取した。ポリクローナル抗体の精製は、免疫に用いたGST融合RELMβタンパク質(16−66)のGTSを除くため、トロンビンでGST部分を切断し、RELMβタンパク質(16−66)を得た。このRELMβタンパク質(16−66)をアフィニティーカラム(Affi−gel10)に結合させ、抗血清中の抗RELMβ抗体を精製した。
免疫学的分析は、まずPBSで2μg/mLに希釈した3A6モノクローナル抗体100μLを、96well plates(NUNC社Maxisorp)に加え、4℃、一晩で、固相化した。Pierce社Protein−Free T20(TBS) Blocking Bufferで、25℃1時間、ブロッキングした。PBS−0.5%Tween−20(PBS−T)に1%BSAを添加した希釈液で、標準物質として前記のGSTを切断したRELMβタンパク質(16−66)を100ng/mLから1.5ng/mLまで、段階希釈し、100μLずつ添加した。25℃、2時間インキュベートした後、PBS−Tで3回洗浄を行った。0.1μg/mLの精製したラビット抗RELMβポリクローナル抗体100μLを加え、25℃、1.5時間インキュベートした。PBS−Tで3回洗浄後、PBS−Tで希釈したHRP標識抗ラビットIg抗体(0.3μg/mL:GE社)を加え、25℃、1時間インキュベートした。各ウェルをPBS−Tで、4回洗浄した後、100μLのPOD基質溶液[2.2mM−o−フェニレンジアミン、0.03%過酸化水素水を含む0.075Mクエン酸リン酸緩衝液(pH5.0)]100μLを加え、25℃で15分間反応させ、1M硫酸100μLを各ウェルに加え、各ウェルの492nmにおける吸光度を測定した。図5に示すように、Logistic5PL(Cook)CurveによくフィットしRELMβの量をよく反映する検量線を得ることができた。
Claims (9)
- レジスチン様分子βを分析することを特徴とする、大腸癌の検出方法。
- 前記レジスチン様分子βの分析が免疫学的分析方法である、請求項1に記載の大腸癌の検出方法。
- レジスチン様分子βを分析することを特徴とする、動脈硬化症の検出方法。
- 前記レジスチン様分子βの分析が免疫学的分析方法である、請求項3に記載の動脈硬化症の検出方法。
- レジスチン様分子βを分析することを特徴とする、メタボリックシンドロームの検出方法。
- 前記レジスチン様分子βの分析が免疫学的分析方法である、請求項5に記載のメタボリックシンドロームの検出方法。
- レジスチン様分子βに特異的に結合する抗体又はその断片を含むことを特徴とする、大腸癌の検出用キット。
- レジスチン様分子βに特異的に結合する抗体又はその断片を含むことを特徴とする、動脈硬化症の検出用キット。
- レジスチン様分子βに特異的に結合する抗体又はその断片を含むことを特徴とする、メタボリックシンドロームの検出用キット。
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