JP4348556B2 - メラノーマ又は肺癌の検査のためのキット - Google Patents

メラノーマ又は肺癌の検査のためのキット Download PDF

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Description

本発明は、癌およびリウマチの診断剤、並びに検査・診断方法に関し、より詳細には、血液や滑液など体液中の細胞膜蛋白質CD166の検出による癌およびリウマチの診断剤、並びに検査・診断方法に関する。
腫瘍診断マーカーには糖タンパク質、ホルモン、酵素など多くの種類があり、現在30種類ほどが血液や尿を調べる臨床検査として病院などで使用されている。しかし、これら腫瘍診断マーカーの中には、正常な生理的状態でも増加または減少し、癌の存在とは無関係なこともある。
また、一つの腫瘍マーカーだけで癌の有無や悪性度を判定することは実際上不可能であり、他種のマーカーとの併用およびレントゲン、CT、MRI等による診断との組み合わせが重要となる。つまり、癌特異性および癌の悪性度、転移性、大きさ、予後に相関する新規の腫瘍マーカーが多数開発されればされるほど、癌の診断は正確性を増すといえる。
一方、慢性関節リウマチは臨床症状とリウマチ因子の測定により診断が行われているが、従来の診断法では肺や肝臓の疾患時でも陽性になることがあり、時に正常の人でも(+)になることがあった。したがって、リウマチの診断や進行度を正確に判定するための適格な分子を見出すことが期待されており、このような分子を見出すことは今後の老人医学を考える上で極めて有意義である。
ところで、細胞膜蛋白質であるCD166は、元来、鶏の神経系の発生に重要な分子として研究されてきたが、現在ではヒトやマウス、ラット等にも広く発現することが判明している。CD166は、ALCAM(activated leukocyte-cell adhesion molecule:活性化白血球接着分子)、BEN/SC1/DM−GRASPという別名で呼ばれることもあるが、これまでに、メラノーマ(黒色腫)や肺癌などある種の腫瘍に過剰発現することが報告されている(下記の非特許文献1〜3参照)。
J. Exp. Med., 181, 2213-2220, (1995) Am. J. Pathol, 152, 805-813, (1998) Biochem. Biophys. Res. Commun., 267, 870-874, (2000)
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、その目的は、癌およびリウマチを簡便かつ正確に検査・診断するための新規な診断剤、および同診断剤を使用した癌およびリウマチの検査・診断方法、さらには制癌剤およびリウマチ治療剤のスクリーニング方法を提供することにある。
本発明者は、上記の課題に鑑み鋭意研究を進めた結果、(1)細胞膜蛋白質であるCD166が、癌患者の血液中に検出され、しかも、そのCD166検出量は腫瘍の有無・大きさ・消長とよく相関すること、また、(2)CD166が慢性関節リウマチモデルラットの滑液中で特異的に検出されること、等を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、医療上および産業上有用な発明として、下記A)〜H)の発明を含むものである。
A) 血液中のCD166を検出するための試薬を含有する、癌検査のための診断剤。
B) 抗CD166抗体を含有する、上記A)記載の診断剤。
C) メラノーマ又は肺癌の検査に使用される、上記A)記載の診断剤。
D) 上記A)又はB)記載の診断剤を使用して血液中のCD166を検出し、この検出結果に応じて癌の発症の有無、進行の程度または予後の状況を判定する方法。
E) 滑液中のCD166を検出するための試薬を含有する、リウマチ検査のための診断剤。
F) 抗CD166抗体を含有する、上記E)記載の診断剤。
G) 制癌剤のスクリーニング方法であって、候補物質を動物の癌細胞または癌組織に投与し、その後、上記A)又はB)記載の診断剤を使用して血液中のCD166を検出することで候補物質の抗癌作用を評価するステップを含むことを特徴とする、制癌剤のスクリーニング方法。
H) リウマチ治療剤のスクリーニング方法であって、候補物質を動物のリウマチの病理組織に投与し、その後、上記E)又はF)記載の診断剤を使用して滑液中のCD166を検出することで候補物質の抗リウマチ作用を評価するステップを含むことを特徴とする、リウマチ治療剤のスクリーニング方法。
CD166は、癌患者の血液中に検出され、しかも、その検出量は腫瘍の有無・大きさ・消長とよく相関することから、癌の検査・診断における良好な体液性マーカーとして利用できる。つまり、血液など体液中のCD166を検出し、この検出結果に応じて癌の発症の有無、進行の程度、予後の状況などを判定できる。
このように、体液を検体(被検物)とすることができるので検査が簡便である。その上、抗CD166抗体を用いることで、ELISA法等によりCD166を簡易かつ精度良く検出できる。
本発明の利用として、(1)血清診断による腫瘍の検出確率の向上、(2)手術後の再発・転移の追跡確認、(3)制癌剤の開発、などが挙げられ、本発明は、癌の検査・診断のみならず治療薬の開発にも広く利用できる。
さらに、CD166は、慢性関節リウマチの検査・診断、治療薬の開発に利用できる。この場合も関節滑液など被検者の体液を検査対象とすることができ、CD166の検出結果に応じて、リウマチの発症の有無、進行の程度、予後の状況などリウマチに関する検査・診断に利用できる。
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
〔1〕癌およびリウマチの検査・診断における体液性マーカーとしてのCD166の利用
CD166は、細胞表面糖蛋白質であり、前述のようにALCAMとも呼ばれており、CD6をリガンドとする免疫グロブリンスーパーファミリー分子である(J. Exp. Med. 181 (6), 2213-2220 (1995)参照)。ヒト、マウス等のCD166のアミノ酸配列およびその遺伝子配列は既に明らかになっており、例えばヒト由来のCD166のアミノ酸配列およびその遺伝子配列は、データベース(DDBJ/EMBL/GenBank databases)にアクセッション番号L38608(およびNM_001627)として登録されている。また、マウス由来のCD166のアミノ酸配列およびその遺伝子配列は、同データベースにアクセッション番号U95030およびBC027280として登録されている。
なお、CD166は、ヒトについては、MED、SB10-antigen、HCAの少なくとも3種類が知られており、本発明はいずれの種類のCD166を検出することとしてもよい。また、CD166は、マウスについてはMuSCの少なくとも1種類が、ラットについてはHB2、KG-CAM、F84.1-antigenの少なくとも3種類が知られており、本発明を実験動物であるこれらマウス、ラットに適用する場合は、いずれの種類のCD166を検出することとしてもよい。
上記CD166について、本発明者は、実験動物を用いた癌移植実験によって、癌罹患個体の血液中にCD166が検出されること、および癌の大きさと血液中のCD166量との間に相関性が認められることを見出した。また、外科手術により癌組織を摘出すると血液中のCD166が消失し、癌が再発、転移すると再び増加することも明らかにした(図1・2参照)。さらに、ヒトの肺癌患者の血液中にもCD166が検出されることを実験により明らかにした(図3参照)。なお、これらの詳細は後述の実施例において説明する。
以上のことから、血液などの体液中のCD166を検出することで、癌の個性判断(種類や悪性度)、腫瘍の大きさや早期診断、さらには手術後の再発の有無など癌に関する検査・診断に利用可能と考えられる。
さらに、本発明者は、ラットのコラーゲン誘発慢性関節リウマチモデルにおいて、滑液中にCD166が検出されることを見出した(図4参照)。正常な関節や外傷性関節炎ではCD166は検出されなかったことから、滑液中におけるCD166の検出は、慢性関節リウマチに特異的であると考えられる。したがって、滑液など体液中のCD166を検出することによって、癌に関する検査・診断のみならず、リウマチに関する検査・診断にも利用可能である。
このように、CD166は体液性マーカーとして、癌およびリウマチの検査・診断に利用できる。CD166蛋白の検出には公知の蛋白検出法を用いることができるが、抗CD166抗体を用いる方法が簡便であるので、以下では、抗CD166抗体を用いたCD166の検出方法について説明する。
〔2〕抗CD166抗体を用いたCD166の検出
〔2−1〕抗CD166抗体の作製
抗CD166抗体は、CD166の検出・測定に使用可能な限りにおいて、特にその構造・種類等は限定されるものではない。抗CD166抗体は、CD166の精製タンパク質、その組換えタンパク質(融合タンパク質等)、またはそのフラグメント(合成ペプチド等)などを免疫原(抗原)として用いることにより、公知の方法によりポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体として得ることができる。公知の方法としては、Harlowらの「Antibodies : A laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York(1988)」、岩崎らの「単クローン抗体 ハイブリドーマとELISA 講談社(1991)」、「タンパク質実験ハンドブック 羊土社 2003年8月15日発行」などの文献に記載の方法が例示されるが、特にこれらの方法に限定されるものではなく、これらの方法の改変法を含めた公知の抗体作製法の中から使用目的などに応じて適切な方法を選択すればよい。
ポリクローナル抗体を作製する場合は、例えば、抗原で動物を免疫した後、その動物の血液から血清を得て、抗体価検定を行い、最終的に抗血清からポリクローナル抗体を調製または精製すればよい。免疫に使用する動物としては、ウサギ、マウス、ラット等が例示されるが、その他の実験動物を用いてもよく、特に限定されるものではない。
上記抗原には、ヒト、マウス等のCD166の精製タンパク質、その組換えタンパク質(融合タンパク質等)、その抗原決定基(エピトープ)を含むフラグメント(合成ペプチド等)、その他のCD166タンパク質の誘導体や変異体、それらのアナログ、またはそれらを発現する細胞などを使用することができる。
モノクローナル抗体を作製する場合は、例えば、上記抗原でマウスを免疫した後、そのマウス脾臓リンパ球とマウス由来のミエローマ細胞とを融合させて得られた抗体産生ハイブリドーマにより、モノクローナル抗体を精製すればよい。この場合も、免疫に使用する動物としては、マウスのほか、ラット、ウサギその他の実験動物を用いてもよく、特に限定されるものではない。
ハイブリドーマの生産方法は、従来公知の方法、例えば、ハイブリドーマ法(Kohler, G. and Milstein, C., Nature 256, 495-497(1975))、トリオーマ法、ヒトB−細胞ハイブリドーマ法(Kozbor, Immunology Today 4, 72(1983))、EBV−ハイブリドーマ法(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R Liss, Inc., 77-96(1985))、等が利用できるが、特に限定されるものではない。
また、モノクローナル抗体は、ファージディスプレイを用いて作製してもよい(Griffiths, A.D. and Duncan, A.R., Curr. Opin. Biotechnol., 9, 102-108(1998)他)。
〔2−2〕CD166の検出方法
抗CD166抗体を使用したCD166の検出方法としては、ウエスタンブロット法(イムノブロット法)、ELISA法、サンドイッチELISA法などを挙げることができる。サンドイッチELISA法は、例えば、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を用いて血液中や滑液中のCD166を定量化することができ、体液中の微量のCD166を検出・測定する方法として期待できる。
勿論、その他の公知の蛋白検出法によりCD166の検出・測定を行ってもよく、抗体をペルオキシダーゼ等の酵素により標識して目的タンパク質(CD166)を検出するELISA法のほか、抗体を蛍光分子や放射性同位元素などにより標識してCD166を検出してもよく、例えば、二次抗体に蛍光標識したものを使用する蛍光免疫染色法などを使用できる。
検体(被検物)には、体液(血液、滑液、リンパ液、その他、尿、汗、消化液、およびこれらの成分を含む)のほかに、癌組織、リウマチの病理組織などの組織を検体に用いてCD166の検出・測定を行うことも可能であるが、この場合は、免疫組織化学法などを用いることにより、組織切片におけるCD166を検出できる。
また、組織を検体に用いる場合は、CD166蛋白を直接検出する方法のほかに、CD166のmRNAを検出・測定することにより、CD166蛋白の発現の有無を間接的に検出してもよい。mRNAの検出には、核酸プローブを使用したin situ hybridization法などが使用できる。この方法の場合は、抗CD166抗体は不要である。
〔3〕本発明の利用態様
前述のように、本発明は、CD166を検出することにより、癌およびリウマチに関する検査・診断に利用できる。
CD166を用いて癌診断、特に血液による癌の存在診断が実現すれば、治療後再発の超早期診断の新戦略となる。また、関節滑液中のCD166量によりリウマチの進行が予測できれば、リウマチ治療の必要性や治療効果の判定にも応用できる。
したがって、病院の臨床検査部門、外部の臨床検査機関、医薬品および医学系研究所などにおいて、本発明は、腫瘍の検査・診断、手術後の再発・転移の確認、さらに慢性関節リウマチの進行度と治療効果の判定などに利用できる。
なお、本発明の「癌検査のための診断剤」、「癌の検査・診断方法」において、検査・診断対象となる癌の種類は、メラノーマ(黒色腫)や肺癌に限定されるものではなく、その他の腫瘍、例えば、扁平上皮癌(皮膚癌、子宮頚部癌、頭頚部癌、食道癌等)、血液性悪性腫瘍、消化器癌(大腸癌、膵癌、肝癌、胃癌等)、神経芽細胞腫、脳腫瘍、乳癌、精巣癌、前立腺癌、卵巣癌などにも適用できる可能性がある。
また、本発明の「診断剤」は、CD166検出用の試薬を含むものであればよく、例えば抗CD166抗体のほか、CD166の検出に用いる化合物(試薬、酵素、緩衝液など)を含むものであってもよく、さらに、CD166検出用キットとして反応用容器などを含むものであってもよい。
さらに、本発明を制癌剤およびリウマチ治療剤のスクリーニング方法に応用することも可能である。制癌剤のスクリーニング方法に応用する場合は、制癌剤の候補物質を癌細胞または癌組織に投与し、その後、本発明の方法によりCD166を検出することで候補物質の抗癌作用を評価する。特に、癌モデル動物を用いた実験において、当該動物を採血しCD166を検出することで、簡易迅速に候補物質の抗癌作用を評価できる。このように、本発明の検査・診断法は、ヒト(患者)に対して実施する場合のほか、実験動物に使用する場合も含まれる。
同様に、リウマチ治療剤のスクリーニング方法に応用する場合は、候補物質をリウマチの病理組織に投与し、その後、本発明の方法によりCD166を検出することで候補物質の抗リウマチ作用を評価する。本発明には、このような制癌剤およびリウマチ治療剤のスクリーニング方法も含まれる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
〔実施例1:メラノーマ罹患マウスの血液中CD166の検出〕
可移植性CD166発現細胞をマウスに移植し、腫瘍を形成させた。その後、血液を採取し、抗CD166抗体を用いたウエスタンブロット法により、CD166の有無を検討した。あわせて、抗CD166抗体を用いた免疫組織化学法により、腫瘍組織におけるCD166の検出を行った。
検出に使用した抗CD166抗体は、次のようにして作製した。まず、マウスのCD166の細胞外領域とヒトのIgG-Fcを遺伝子工学的に融合させ、サルの腎細胞COS7に導入し、培養液中にキメラCD166蛋白を分泌させた。そして、Protein Aにより精製後、このキメラCD166蛋白を抗原とし、常法にしたがい、マウス・モノクローナル抗体(CD166の4番目のIgループを認識)およびウサギ・ポリクローナル抗体を作製した。ウサギ・ポリクローナル抗体は、上記CD166の融合タンパク質で3回ウサギを免疫し、血清を採取後プロテインAにて精製し作製した。本実験においてはこのウサギ・ポリクローナル抗体を用いてCD166の検出を行った。
上記ウエスタンブロット法については、概略次のように行った。まず、マウスの血清10マイクロリットルを10マイクロリットルの可溶化バッファー(NP40)で処理し、色素液(BPB、DTT、beta-メルカプトエタノール)と混濁後、94度で2分過熱した。そして、8.5%SDS−PAGE後、PVDF膜に転写し、抗CD166ポリクローナル抗体を添加し、次にHRP標識抗ウサギIg抗体を添加し、最終的に蛍光発色剤ECLを反応させ、レントゲンフィルムに感光させ可視化した。
図1(a)は、抗CD166抗体を用いた免疫組織化学法によって、可移植性CD166陽性メラノーマ細胞移植マウスの腫瘍組織におけるCD166の検出の有無を調べた結果を示すものであり、同図に示すように、メラノーマ細胞でのCD166の発現が観察された。
また、図1(b)は、血液を被検物として、上記ウエスタンブロット法により、CD166の検出の有無を検討した結果を示すものである。図中、レーン1は正常マウス血液、レーン2〜4はそれぞれ、メラノーマ移植マウス血液(2週目、即ちメラノーマ細胞移植後14日目)、メラノーマ移植マウス血液(3週目、即ちメラノーマ細胞移植後21日目)、メラノーマ移植マウス血液(3週目に腫瘍摘出しその2週後の再発例、即ち移植後21日目に腫瘍を外科的に摘出し、その後再発した14日目の血液)を被検物としたものである。
同図に示すように、正常マウスの血液(レーン1)にはCD166が検出されなかったが、メラノーマ罹患マウス(腫瘍罹患個体)の血液(レーン2〜4)には、約92kDaのバンドが観察され、CD166が検出された。さらに、腫瘍が大きくなるにつれて血液中CD166量も増し(レーン2と3の比較)、外科手術により腫瘍摘出するとCD166量は減少した(レーン3と4の比較)。
図2は、上記ウエスタンブロット法による検出バンドの相対強度を数値化し、メラノーマ細胞移植マウスの血中CD166の変動をグラフに示したものである。グラフ中、「*」は正常マウス血液と比べ相対検出量が有意に上昇していることを示す。このグラフからもわかるように、血液中のCD166量と腫瘍の有無・大きさ・消長とに相関性が認められた。即ち、メラノーマ細胞移植後14日目(腫瘍体積約2.2cm3)に比べて、メラノーマ細胞移植後21日目(腫瘍体積約5.3cm3)の血中CD166発現量は高く、さらに腫瘍摘出後14日目の例では血液中のCD166量は減少したが、再発した例では再発しなかった例に比べてCD166発現量は高かった。
〔実施例2:肺癌患者の末梢血液中のCD166の検出〕
肺癌患者(3例)の血清(5マイクロリットル)を被検物として、実施例1と同様に、CD166の検出の有無を抗CD166抗体を用いたウエスタンブロット法により解析した。抗体は、抗ヒトCD166ポリクローナル抗体を使用し、ヒトのCD166の融合タンパク質で3回ウサギを免疫し、血清を採取後プロテインAにて精製し作製した。ウエスタンブロット法については、被検物に癌患者(ヒト)の臨床血清サンプルを使用した以外は実施例1と同様に行った。
上記実験結果を図3に示す。図中、レーン1は正常ヒト血清、レーン2〜4は互いに異なる肺癌患者血清を被検物としたものである。同図に示すように、正常ヒト血液はCD166陰性であったが、癌患者の血液(レーン2−4)にはCD166が検出された。このように、ヒトの肺癌臨床例においても血液中にCD166が検出されることが示された。
〔実施例3:膝関節滑液中のCD166の検出〕
ラットをコラーゲン・タイプ2で免疫し、慢性関節リウマチモデルを作製した。そして、実施例1と同様に、抗CD166抗体(上記ウサギ・ポリクローナル抗体)を用いたウエスタンブロット法および免疫組織化学法により、CD166の検出を行った。
図4の(a)(b)は、コラーゲン誘発慢性関節リウマチモデルラットの病理組織をヘマトキシリンエオジン染色により示す図であり、(a)は弱拡大図、(b)は強拡大図である。このときの関節リウマチのグレードはスコアー4であり、骨組織の融解とパンヌス形成が顕著である。
免疫組織化学法による解析の結果、増殖滑膜細胞と浸潤リンパ球にCD166が発現していた。また、ラットの関節より滑液を採取し、15000gで遠心後その10マイクロリットルを被検物として、実施例1と同様のウエスタンブロット法により滑液中のCD166量を測定した結果が図4の(c)に示される。図中、レーン1は正常ラットの滑液、レーン2は外傷性関節炎ラットの滑液、レーン3〜5は上記の慢性関節リウマチモデルラットの滑液であり、レーン3の関節リウマチのグレードはスコアー2であり、レーン4・5の関節リウマチのグレードはそれぞれスコアー3・4である。同図に示すように、慢性関節リウマチモデルラットにのみCD166が検出され、リウマチの病変が進行するにつれてCD166検出量も増加した。このように、関節リウマチのグレードと滑液中のCD166量の推移との間には相関性が認められた。
以上のように、本発明は、癌およびリウマチに関する検査・診断に幅広く利用できるほか、制癌剤やリウマチ治療剤のスクリーニング方法に応用できるなど産業上種々の有用性を有するものである。
(a)は、抗CD166抗体を用いた免疫組織化学法により、メラノーマ細胞移植マウスの腫瘍組織におけるCD166を検出した結果、(b)は、抗CD166抗体を用いたウエスタンブロット法により、血中のCD166を検出した結果である。 メラノーマ細胞移植マウスの血液中のCD166の変動を示すグラフである。 抗CD166抗体を用いたウエスタンブロット法により、肺癌患者の末梢血液中のCD166を検出した結果を示す図である。 (a)(b)は、コラーゲン誘発慢性関節リウマチモデルラットの病理組織を示す図であり、(c)は、抗CD166抗体を用いたウエスタンブロット法により滑液中のCD166量を測定した結果を示す図である。

Claims (4)

  1. 血液中のCD166を検出するための試薬を含有する、メラノーマ又は肺癌の検査のためのキット
  2. 抗CD166抗体を含有する、請求項1記載のキット
  3. 滑液中のCD166を検出するための試薬を含有する、リウマチ検査のためのキット
  4. 抗CD166抗体を含有する、請求項記載のキット
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