JP2005077258A - Pcnaを用いた悪性腫瘍(癌及び肉腫)の血清診断 - Google Patents
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Abstract
【課題】 固形癌又は肉腫を判定する方法および判定する試薬などを提供する。
【解決手段】ヒトから血液を分離して、その中に含まれるPCNA(増殖細胞核抗原)を免疫化学的方法などにより検出して、固形癌又は肉腫に罹患しているか否かを判定することができる。また、検出されたPCNAのレベルによって病変の大きさを判定することも可能である。PCNAの免疫化学的な検出は、少なくともPCNAを認識する抗体を含有する試薬によって実施することができる。
【選択図】 なし
【解決手段】ヒトから血液を分離して、その中に含まれるPCNA(増殖細胞核抗原)を免疫化学的方法などにより検出して、固形癌又は肉腫に罹患しているか否かを判定することができる。また、検出されたPCNAのレベルによって病変の大きさを判定することも可能である。PCNAの免疫化学的な検出は、少なくともPCNAを認識する抗体を含有する試薬によって実施することができる。
【選択図】 なし
Description
本発明は、血液中のPCNA(Proliferating Cell Nuclear Antigen;増殖細胞核抗原)を検出することによる固形癌又は肉腫の判定方法に関する。また本発明は、前記方法を実施するために使用される固形癌又は肉腫の判定用試薬等に関する。
PCNAは、細胞分裂に伴うDNA合成直前の細胞周期G1からS相で発現増加し、DNA複製や修復及び細胞周期の調節に重要な役割を担っている核内蛋白である。また、PCNAは細胞周期関連蛋白に属し、DNAポリメラーゼデルタの補助因子として機能している非ヒストン核蛋白質であり、その分子量は36kDaで、DNA複製時には必須であるといわれている。
非特許文献1には、大腸癌患者から採取した大腸の組織を抗PCNAモノクローナル抗体を使用して免疫組織学的に検討し、正常組織部分に比べて癌組織部分ではPCNAの発現量が増大していることが記載されている。
また、非特許文献2には、血液癌に属する悪性リンパ腫患者の血液を採取し、血清中のPCNAの存在をサンドイッチELISA法により検討して、悪性リンパ腫患者16名のうち6名の末梢血液中にPCNAが検出され、健常人では検出されないことが記載されている。
このように、癌組織においてPCNAの発現が正常組織に比べて増大すること(非特許文献1)、及び、悪性リンパ腫のような血液癌患者において、癌の罹患部位自体である末梢血液中にPCNAが検出されること(非特許文献2)は知られている。
しかしながら、これまで血液癌以外の悪性腫瘍、すなわち、身体の深部の臓器等に発生する固形癌や肉腫に罹患している患者の末梢血液中において、PCNAが検出されることについては知られていない。
「日本消化器病学会雑誌」、平成5年3月、第90巻、第3号、p.647−654 "Leukemia and Lymphoma"、1997年、第28巻、p.113−125
「日本消化器病学会雑誌」、平成5年3月、第90巻、第3号、p.647−654 "Leukemia and Lymphoma"、1997年、第28巻、p.113−125
悪性腫瘍は日本人の死因の第1位であり、3人に1人は悪性腫瘍が原因で死亡すると言われている。代表的な悪性腫瘍として、胃癌、肝臓癌、肺癌、前立腺癌、子宮癌、卵巣癌、白血病、リンパ腫、骨肉腫等が知られており、特に肺癌による死亡者が近年増加する傾向にある。
近年の集団検診の普及による早期発見および早期治療によって悪性腫瘍の治癒率は上昇しつつあるものの、身体の深部の臓器に存在する悪性腫瘍、例えば、固形癌に分類される膵臓癌、胆管癌、卵巣癌や、肉腫に分類される骨肉腫等の早期発見は困難であり、これらによる死亡率は依然として高いままである。
これまで、例えば、固形癌の一種である前立腺癌に固有の血液中の生化学的マーカーが早期発見のために使用されてはいるが、癌の発症部位等を限定しない、固形癌や肉腫全般を判定することのできる血液中の生化学的マーカーは知られていない。また、X線撮影、CT(コンピュータートモグラフィー)、MRI(核磁気共鳴)などの種々の臨床的検査によって、身体のどこかに腫瘍の存在が疑われた場合に、その腫瘍が良性か、悪性のものであるかの判定は、身体に侵襲を加えて採取(バイオプシー)された病理組織を顕微鏡下で観察することによって行なわれている。
具体的には、熟練した専門の病理医がギムザ染色等された組織切片を顕微鏡下で観察し、その組織を構成している細胞構造、細胞構築、細胞核のクロマチンの形状等から総合的に判断して、その腫瘍組織が良性であるか、悪性であるかが判定される。
このような従来の判定方法では、病理組織切片の作成、及び、専門の病理医の高度な知識と経験が要求され、悪性腫瘍を簡便に判定することができなかった。
このような状況に鑑み、本発明は、悪性腫瘍に分類される固形癌又は肉腫の簡便な判定方法、及び該方法を実施するために使用される判定用試薬等を提供することを目的とする。
本発明者は、固形癌組織及び肉腫組織では腫瘍細胞が分裂・増殖の途上で同時に壊死を起こしているという現象、及びPCNAが核分裂、すなわち、DNAの複製時に必須の蛋白である点に着目した。その結果、健常人の血液中では検出されないPCNAが、各種の固形癌又は肉腫に罹患している患者の血液中では検出され、PCNAが固形癌又は肉腫を判定するための生化学的マーカーとなり得ることを見い出し、下記本発明(1)〜(8)を完成した。
(1)ヒトから分離された血液中のPCNAを検出することを特徴とする固形癌又は肉腫の判定方法。
(2)PCNAの検出をPCNAを認識する抗体を使用する免疫化学的方法により行なう前記(1)に記載の判定方法。
(3)免疫化学的方法が酵素免疫化学的方法、ラテックス凝集法、免疫クロマト法及びウエスタンブロット法からなる群から選択される前記(2)に記載の判定方法。
(4)固形癌が胆管癌、前立腺癌、胃癌、乳癌、食道癌、肝癌及び大腸癌、又は肉腫が骨肉腫、ユーイング肉腫及び悪性繊維性組織球腫からなる群から選択される前記(1)〜(3)の何れかに記載の判定方法。
(5)前記(2)又は(3)に記載の判定方法を実施するために使用され、少なくともPCNAを認識する抗体を含有する固形癌又は肉腫の判定用試薬。
(6)固形癌が胆管癌、前立腺癌、胃癌、乳癌、食道癌、肝癌及び大腸癌、又は肉腫が骨肉腫、ユーイング肉腫及び悪性繊維性組織球腫からなる群から選択される前記(5)に記載の判定用試薬。
(7)前記(5)に記載の判定用試薬を含む商業パッケージであって、該判定用試薬を固形癌又は肉腫の判定に使用できること、又は使用すべきであることが該パッケージ上に記載されているか、又は該パッケージ中に前記のように記載された該判定用試薬に関する記載物を含む商業パッケージ。
(8)固形癌が胆管癌、前立腺癌、胃癌、乳癌、食道癌、肝癌及び大腸癌、又は肉腫が骨肉腫、ユーイング肉腫及び悪性繊維性組織球腫からなる群から選択される前記(7)に記載の商業パッケージ。
本発明の固形癌又は肉腫を判定する方法によれば、各種臓器において、固形癌又は肉腫に罹患しているか否かを簡便に判定することができる。また、本発明の固形癌又は肉腫の判定用試薬等を使用することにより、前記判定方法と同一の効果を達成することができる。
本発明は、ヒトから分離された血液中のPCNAを検出することを特徴とする固形癌又は肉腫の判定方法に関する。
本発明の判定の対象となる固形癌としては、上皮性細胞由来の悪性腫瘍であれば、特に制限されず何れのものでもよい。その中でも特に、胆管癌、前立腺癌、胃癌、乳癌、食道癌、肝癌又は大腸癌が好ましい。また、本発明の判定の対象となる肉腫としては、白血病や悪性リンパ腫等の血液腫瘍を除く非上皮性細胞由来の悪性腫瘍であれば、特に制限されず、何れのものでもよい。その中でも特に、骨肉腫、ユーイング肉腫又は悪性繊維性組織球腫が好ましい。
本明細書において「固形癌又は肉腫の判定」とは、罹患している固形癌又は肉腫の存在の有無を推定するのみならず、その病態の進行の程度、すなわち、病変(腫瘍)組織の大きさを推定することも意味する。
本発明において、ヒトから分離された血液中のPCNAの検出は、特に制限されず、たとえば、免疫化学的方法やHPLC法等の各種クロマトグラフィー法などのいずれの方法によっても行うことができる。その中でも特に、抗PCNA抗体を利用する免疫化学的方法により検出を行なうのが好ましい。また、固形癌又は肉腫の進行度やその経過を判定したい場合には、定量的にPCNAのレベルを検出することができる方法が好ましい。
ヒトから分離された血液中のPCNAの検出に使用される免疫化学的方法としては、特に制限はなく、従来公知の例えば、酵素免疫測定法(EIA法)、ラテックス凝集法、免疫クロマト法、ウエスタンブロット法、放射免疫測定法(RIA法)、蛍光免疫測定法(FIA法)、ルミネッセンス免疫測定法、スピン免疫測定法、抗原抗体複合体形成に伴う濁度を測定する比濁法、抗体固相膜電極を利用し抗原との結合による電位変化を検出する酵素センサー電極法、免疫電気泳動法などが挙げられる。これらの中でも、EIA法、ラテックス凝集法、免疫クロマト法又はウエスタンブロット法が好ましい。
EIA法として、抗PCNA抗体に対して酵素標識PCNAと血液検体中のPCNAを競合的に反応せしめる競合的酵素免疫測定法や、2種類の抗PCNA抗体、特にモノクローナル抗体を用いたサンドイッチ酵素結合免疫固相測定法(サンドイッチELISA法)等が挙げられる。それらの中でも、抗原(PCNA)に対する特異性および検出操作の容易性の点において、サンドイッチELISA法が特に好ましい。
サンドイッチELISA法によってPCNAを検出する場合、PCNAに存在する異なるエピトープを認識する2種類の抗体、すなわち固相化抗体と酵素標識抗体との間に、PCNAを挟み込み(サンドイッチ)、PCNAに結合した標識抗体の酵素量を測ることによりPCNAを検出することができる。
なお、血液中のPCNAの検出を目的とする上記サンドイッチELISA法は公知であり(前記非特許文献2参照)、また、この方法を検出原理としたPCNAの検出試薬は後述のとおり市販されている。これらの公知の方法・試薬によれば、ヒトから分離された血液中のPCNAの検出は容易に実施することができる。
ラテックス凝集法は、抗体感作ラテックス粒子と抗原との凝集反応を利用した免疫化学的方法である。この方法によるPCNAの検出は、抗PCNA抗体感作ラテックス粒子と検体血液中のPCNAとを免疫反応せしめ、その結果生じたラテックス粒子の凝集の程度を測定することにより実施できる。
また、免疫クロマト法は全ての免疫化学反応系がシート状のキャリア上に保持されており、血液の添加のみで操作が完了する方法である。本法によるPCNAの検出原理は、次のとおりである。まず、検体たる血液がキャリアに滴下されると、血液中のPCNAとキャリア上に配置された標識物(金コロイド等)で標識された抗PCNA抗体とが免疫反応し、その結果、免疫複合体が生成される。この複合体がキャリア上をクロマト的に展開し、特定部位(判定部位)に固相化された別のエピトープを認識する抗PCNA抗体に捕捉されると標識物が集積し、その集積度合いを肉眼で観察することによって、PCNAを検出することができる。
免疫クロマト法の実施には特別な測定機器は不要であり、病院外での判定や、迅速な判定が求められる場合には有利な方法である。本方法は一定のレベル以上のPCNAの存在を定性的に検出するのに適しており、特定の値以上のPCNAを検出すれば陽性の結果が、また、特定の値未満であれば陰性の結果が出るように容易に検出感度を調整することができる。
ウェスタンブロット法を本発明の免疫化学的方法として採用する場合、例えば次のようにして血液中のPCNAを検出することができる。ドデシル硫酸ナトリウム含有ポリアクリルアミドゲル上に検体たる血液を添加し、一定の電圧をかけて電気泳動を行い、泳動によりゲル上で分離された蛋白をPVDF(ポリビリニデンジフルオライド)膜のようなブロッティング用膜に電気的に転写(トランスファー)し、この膜をスキムミルク等でブロッキング処理した後に、西洋ワサビパーオキシダーゼ(HRP)等の酵素で標識した抗PCNA抗体を膜に反応させる。その後、酵素基質及び発色剤を添加し、膜上にPCNAが存在すれば、発色により、PCNAを検出することができる。また、この発色をX線フィルム上に露光することにより、発光として捉えることもできる。さらに、デンシトメーター等によって発色の程度を測定すれば、検出されたPCNAを定量することも可能である。
なお、ウェスタンブロット法による、具体的な検出方法は後記実施例に記載されている。
本発明において、検体である血液としては、ヒトから分離されたものであればよく、全血、血清、血漿のいずれであってもよい。これらの血液は、ヒトから採取した血液を常法に従って処理することで、適宜、得ることができる。
以上のような方法によって血液中にPCNAが検出された場合に、そのヒトは固形癌又は肉腫に罹患していると判定することができる。また、検出されるPCNAの量によって固形癌又は肉腫の病変部位の大きさを判定することもできる。なお、前述の非特許文献2に記載され、及び後記実施例に示すように健常人の血液中においてはPCNAは検出されない。
本発明の判定方法を実施する場合には、公知の一般的な検査法である他の方法、例えば、X線撮影、超音波断層撮影、CTスキャンなどと組み合わせることによって固形癌又は肉腫の判定はより確実となる。
また、本発明は、上記本発明の判定方法のうち、免疫化学的方法を実施するために使用され、少なくとも抗PCNA抗体を含有する固形癌又は肉腫の判定用試薬に関する。
かかる判定用試薬は、免疫化学的方法により血液中のPCNAを検出して、固形癌又は肉腫を判定する場合に好適に使用することができ、かかる判定方法と同一の目的を達成するものである。
本発明の判定用試薬に含有される抗PCNA抗体は、ヒトから分離された血液中に存在するPCNAを認識し、PCNAとの特異的な免疫反応性を有するものであれば、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体の何れでもよい。両者のうち、抗体の安定供給の点において、また、PCNAに対する高い特異性及び均一性の点においてモノクローナル抗体が好ましい。
このような抗PCNA抗体は公知の手段により製造することができ、遊離の状態、標識された状態または固相化された状態で免疫化学的方法に適用される。
ポリクローナル抗体は、常法によりヒトの分裂細胞やウサギ胸腺等から分離・精製したPCNAを適当なアジュバント、例えば、完全フロイントアジュバントとともにマウス、ラット、ウサギなどの動物に免疫し、血液を採取して公知の処理をなすことにより製造することができる。
またモノクローナル抗体は、このように免疫された動物の脾臓細胞を採取し、ミルシュタインらの方法によりミエローマ細胞との細胞融合、抗体産生細胞スクリーニング及びクローニング等を行い、抗PCNA抗体を産生する細胞株を樹立し、これを培養することにより製造することができる。ここで、免疫抗原として利用されるPCNAは、必ずしもヒトの細胞等に存在する天然のPCNAである必要はなく、遺伝子工学的手法により得られる組換え型PCNAやそれらの同効物(断片)であってもよい。
このような抗PCNA抗体は市販されており、それらを入手して、本発明の判定用試薬に含まれる抗体として使用することもできる。
本発明の判定用試薬にサンドイッチELISA法を採用する場合、かくして得られた抗PCNA抗体は、固相化抗PCNA抗体及び酵素標識抗PCNA抗体の形態で使用される。
固相化抗PCNA抗体は、前述のようにして得られた抗体を固相(例えば、マイクロプレートウェルやプラスチックビーズ)に結合させることにより製造することができる。固相への結合は、通常、抗体をクエン酸緩衝液等の適当な緩衝液に溶解し、固相表面と抗体溶液を適当な時間(1〜2日)接触させることにより行うことができる。
さらに、非特異的吸着や非特異的反応を抑制するために、牛血清アルブミン(BSA)や牛ミルク蛋白等のリン酸緩衝溶液を固相と接触させ、抗体によってコートされなかった固相表面部分を前記BSAや牛ミルク蛋白等でブロッキングすることが一般に行われる。
酵素標識抗PCNA抗体は、上記固相化された抗体とは異なるエピトープを認識する抗PCNA抗体と、酵素とを結合(標識)させることにより製造することができる。該抗体を標識する酵素としては、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、パーオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ等が挙げられる。これらの酵素と抗PCNA抗体との結合はそれ自体公知の方法、例えば、グルタルアルデヒド法、マレイミド法などにより行うことができる。
また、酵素標識抗PCNA抗体を使用する代わりに、アビジン−ビオチン反応を利用した方法(酵素の代わりにビオチンで標識した抗体を血液中のPCNAに反応させ、その後に酵素標識ストレプトアビジンを結合させる方法)を利用して、PCNAの検出を行ってもよい。
サンドイッチELISA法では、固相化抗PCNA抗体及び酵素標識抗PCNA抗体以外に必要に応じて、酵素基質、発色剤、洗浄液、反応停止液、基質溶解液、標準抗原などが使用される。本発明は、上記抗PCNA抗体以外にこれらを構成試薬として含んで成る固形癌又は肉腫の判定用キットの形態で実現されてもよい。
上記キットの中に含まれる酵素基質は、抗PCNA抗体に結合された標識酵素に応じて適当なものが選択される。例えば、酵素がアルカリフォスファターゼの場合においてはp−ニトロフェニルホスフェート(PNPP)等が選択される。この場合には、発色剤としてo−フェニレンジアミン(OPD)、テトラメチルベンチジン(TMB)などが使用される。また、洗浄液、反応停止液、基質溶解液についても、選択した標識酵素に応じて、従来公知のものを特に制限なく適宜使用することができる。
なお、サンドイッチELISA法によるPCNAの検出キットが販売されており(例えば、オンコジーン社製「PCNA ELISA」)、これらを本発明の固形癌又は肉腫の判定用試薬として使用することもできる。
本発明の判定用試薬にラテックス凝集法を採用する場合、抗PCNA抗体は、ラテックス感作抗PCNA抗体の形態をとる。ラテックス粒子と抗PCNA抗体との感作(結合)は、この分野で公知の方法、例えば、架橋剤としてカルボジイミドやグルタルアルデヒド等を利用する化学結合法や物理吸着法により成すことができる。
ラテックス凝集法では、上記ラテックス感作抗PCNA抗体以外に必要に応じて、希釈安定化緩衝液、標準抗原などが使用される。本発明は、前記抗体以外に、これらを構成試薬として含んで成る固形癌又は肉腫の判定用キットの形態で実現されてもよい。
本発明の判定用試薬に免疫クロマト法を採用する場合、抗PCNA抗体は、固相化抗PCNA抗体及び標識抗PCNA抗体の形態で使用される。このような免疫クロマト法による本発明の判定用試薬は、Watanabe et al., Clinical Biochemistry 34(2001)p.257-263に記載の方法に準じて製造することができる。
本発明の判定用試薬にウェスタンブロット法を採用する場合、抗PCNA抗体は、前記サンドイッチELISA法と同様な酵素標識抗PCNA抗体の形態で使用される。また、2種類の抗体を使用する二抗体法によれば、抗PCNA抗体は、フリーの非ラベル化抗体(一次抗体)の形態で使用される。例えば、一次抗体がウサギ抗PCNA抗体であれば、二次抗体として酵素標識ヤギ抗ウサギイムノグロブリン抗体が使用され、また、例えば一次抗体がマウス抗PCNA抗体であれば、二次抗体として酵素標識ウサギ抗マウスイムノグロブリン抗体が使用される。
ウェスタンブロット法では、抗PCNA抗体以外に必要に応じて、二次抗体、酵素基質、発色剤、ニトロセルロース膜、PVDF膜、ブロッキング剤等が使用される。本発明は、前記抗PCNA抗体以外にこれらを構成試薬として含んで成る固形癌又は肉腫の判定用キットの形態で実現されていてもよい。
本発明の判定用試薬は、実際の医療現場において、商業パッケージの形態で提供される。かかる商業パッケージは上記判定用試薬をその中に含み、該判定用試薬を固形癌又は肉腫の判定に使用できる、または使用すべきであることが該パッケージ外箱に記載されているか、又は、そのように記載された該判定用試薬に関する記載物(いわゆる「添付文書」)を該パッケージ中に含むものである。
以下、実施例に基いて本発明をさらに具体的に説明する。
実施例;各種の固形癌患者又は肉腫患者血液中のPCNAの検出
固形癌患者として、胆管癌2例、前立腺癌1例、胃癌3例、乳癌10例、食道癌18例、肝癌3例及び大腸癌3例の患者、また、肉腫患者として骨肉腫3例、ユーイング肉腫1例及び悪性繊維性組織球腫2例の患者、並びに、対照として健常人30例の血液中のPCNAを次のとおり検出した。
実施例;各種の固形癌患者又は肉腫患者血液中のPCNAの検出
固形癌患者として、胆管癌2例、前立腺癌1例、胃癌3例、乳癌10例、食道癌18例、肝癌3例及び大腸癌3例の患者、また、肉腫患者として骨肉腫3例、ユーイング肉腫1例及び悪性繊維性組織球腫2例の患者、並びに、対照として健常人30例の血液中のPCNAを次のとおり検出した。
インフォームドコンセントが得られたこれらの患者及び健常人の静脈から血液を採取し、常法により得られた血清にリン酸緩衝生理食塩液(pH7.0)を加え、血清を30倍希釈した。希釈血清8μLを、常法に従い、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミド電気泳動(SDS−PAGE、泳動条件;20mA、90−180V、30分間)に適用した。以下のPCNAの検出は、市販のECL(Electrical Chemical Luminescence)キット(「ECLplus」;アマシャムバイオサイエンス社)を使用して行った。
前記キットに含まれるHybond−ECL膜上に電気泳動により分離された蛋白をトランスファーし、このHybond−ECL膜と5%牛ミルク蛋白(ブロックエース(登録商標);大日本製薬株式会社)及び0.1%TWEEN(登録商標)20含有リン酸緩衝生理食塩液とを3時間室温で反応させることにより膜の蛋白未結合部位をブロッキング処理した。その後、リン酸緩衝生理食塩液(pH7.0)で前記ECL膜を洗浄し、西洋ワサビパーオキシダーゼ(HRP)標識抗PCNAモノクローナル抗体(クローン;PC10 ダコ社)のリン酸緩衝生理食塩液(1:1500、pH7.0)と反応させ、前記キットに含まれる検出試薬溶液A及びBを40:1の割合で混和した液を、膜の単位面積(cm2)当たり、0.1mLの量で添加し、ECL膜を家庭用包装ラップフィルムで覆い密封した状態で、室温で5分間放置し反応させた。過剰の検出試薬溶液を除去し、蛋白ブロット面を前記ラップフィルムで覆ったECL膜をX線フィルムカセットにセットした。前記キットに含まれるオートラジオグラフィー用のフィルムであるHyperfilm ECLをECL膜に重ね合わせて、15秒〜15分間露光させた。
露光の結果、前記フィルム上の36kDaの位置に、黒いスポットが肉眼的に観察された場合をPCNA陽性と判断した。
結果を以下の表に示す。
この結果は、血液中のPCNAを検出することによって、固形癌又は肉腫に罹患しているか否かを判定できること、すなわち、PCNAが固形癌及び肉腫の生化学的マーカーとして使用できることを示すものである。
本発明の固形癌又は肉腫の判定方法及び判定用試薬を利用することにより、医療の現場において、これまで複雑かつ時間のかかっていた固形癌又は肉腫の判定を、簡便にかつ短時間に実施することができる。本発明は、固形癌及び肉腫の早期発見・早期治療に寄与するものである。
Claims (8)
- ヒトから分離された血液中のPCNAを検出することを特徴とする固形癌又は肉腫の判定方法。
- PCNAの検出をPCNAを認識する抗体を使用する免疫化学的方法により行なう請求項1に記載の判定方法。
- 免疫化学的方法が酵素免疫化学的方法、ラテックス凝集法、免疫クロマト法及びウエスタンブロット法からなる群から選択される請求項2に記載の判定方法。
- 固形癌が胆管癌、前立腺癌、胃癌、乳癌、食道癌、肝癌及び大腸癌、又は肉腫が骨肉腫、ユーイング肉腫及び悪性繊維性組織球腫からなる群から選択される請求項1〜3の何れか一項に記載の判定方法。
- 請求項2又は3に記載の判定方法を実施するために使用され、少なくともPCNAを認識する抗体を含有する固形癌又は肉腫の判定用試薬。
- 固形癌が胆管癌、前立腺癌、胃癌、乳癌、食道癌、肝癌及び大腸癌、又は肉腫が骨肉腫、ユーイング肉腫及び悪性繊維性組織球腫からなる群から選択される請求項5に記載の判定用試薬。
- 請求項5に記載の判定用試薬を含む商業パッケージであって、該判定用試薬を固形癌又は肉腫の判定に使用できること、又は使用すべきであることが該パッケージ上に記載されているか、又は該パッケージ中に前記のように記載された該判定用試薬に関する記載物を含む商業パッケージ。
- 固形癌が胆管癌、前立腺癌、胃癌、乳癌、食道癌、肝癌及び大腸癌、又は肉腫が骨肉腫、ユーイング肉腫及び悪性繊維性組織球腫からなる群から選択される請求項7に記載の商業パッケージ。
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