JP5152549B2 - ジョセフソン接合及びジョセフソンデバイス - Google Patents
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Description
上記構成において、強磁性層は導電性強磁性層又は絶縁性強磁性層の何れかでなっていてよい。
高温超伝導体層の中央部と導電性強磁性層とを絶縁するための絶縁層が、好ましくは、高温超伝導体層の中央部と導電性強磁性層との間に挿入されている。
高温超伝導体層の中央部の幅は、好ましくは高温超伝導体層のコヒーレント長と同程度である。
高温超伝導体層は、好ましくは、酸化物超伝導体からなる。この酸化物超伝導体は、好ましくは銅酸化物超伝導体からなり、銅酸化物超伝導体は、La,Sr,Cu及びOからなる化合物(LSCO)、Y,Ba,Cu及びOからなる化合物(YBCO)及びBi,Sr,Ca,Cu及びOからなる化合物(BSCCO)の何れかである。
強磁性層は、好ましくは、フェライト、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、及びクロム(Cr)の何れかである。
基板は、好ましくは、酸化マグネシウム(MgO)、サファイア(Al2O3)、LaとAlと酸素とからなるLaAlO3基板及びSrとAlと酸素とからなるSrAlO3基板の何れかである。
本発明のジョセフソン接合は、従来のSIS型又はSNS型ジョセフソン接合よりも構造が簡単である。このため、その製造に必要なプロセス数を従来のSIS型又はSNS型ジョセフソン接合よりも減らすことができる。
従って、本発明のジョセフソン接合は、高温超伝導体を用いたSIS型ジョセフソン接合で深刻な問題になっていた絶縁バリア層の作製というプロセスを使用しないので、電気特性の再現性及び制御性を飛躍的に改善することができる。これにより、高温超伝導体を用いたジョセフソン接合のIcRN積を大きくすることが可能になる。
最初に、本発明による第1の実施形態に係るジョセフソン接合について説明する。図1は、本発明による第1の実施形態に係るジョセフソン接合1を模式的に説明するもので、それぞれ、(A)は平面図、(B)は(A)のX−X方向に沿う断面図、(C)は(A)のY−Y方向に沿う断面図である。
図1(A)に示すように、本発明による第1の実施形態に係るジョセフソン接合1は、基板6上に形成された超伝導体からなる薄層(以下、超伝導体層と呼ぶ)2上の狭窄部2Cに、絶縁性の強磁性層3(以下、絶縁性強磁性層と呼ぶ)が被覆された構造を有している。
ここで、超伝導体層2を構成する超伝導体としては、ニオブ、窒化ニオブ、アルミニウム、鉛や銅酸化物超伝導体などの高温超伝導体などからなる材料を使用することができ、超伝導体であればその種類を問わない。銅酸化物超伝導体としては、La,Sr,Cu及びOからなる化合物(LSCO)、Y,Ba,Cu及びOからなる化合物(YBCO)、Bi,Sr,Ca,Cu及びOからなる化合物(BSCCO)などが挙げられる。特に、Tcの大きい高温超伝導体層を用いれば、ジョセフソン接合のIcRN積を大きくすることができる。以下の説明においては、超伝導体層2は高温超伝導体層として説明する。
図2は本発明による第2の実施形態に係るジョセフソン接合8を模式的に説明するもので、それぞれ、(A)は斜視図、(B)は(A)のX−X方向に沿う断面図、(C)は(A)のY−Y方向に沿う断面図である。図2に示すように、ジョセフソン接合8が、図1に示したジョセフソン接合1と異なるのは、超伝導体層2の幅をW2とし、絶縁性強磁性層3を、厚さがtfの導電性強磁性層12とした点にある。他の構成はジョセフソン接合1と同じであるので説明は省略する。
図4は本発明による第3の実施形態に係るジョセフソン接合10を模式的に説明するもので、それぞれ、(A)は平面図、(B)は(A)のX−X方向に沿う断面図、(C)は(A)のY−Y方向に沿う断面図である。図4に示すように、ジョセフソン接合10が、図1に示したジョセフソン接合1と異なるのは、高温超伝導体層2Cに被覆する強磁性層を導電性強磁性層12とした点と、この導電性強磁性層12と高温超伝導体層2との間に絶縁層14を挿入した点にある。他の構成はジョセフソン接合1と同じであるので説明は省略する。
最初に、図5(A)に示すように、基板6上に高温超伝導体層2を成膜する。基板6と高温超伝導体層2との間には、図示を省略するが、必要に応じてバッファ層を挿入してもよい。基板としては、酸化マグネシウム(MgO)、サファイア(Al2O3)、LaとAlと酸素とからなるLaAlO3基板、SrとAlと酸素とからなるSrAlO3基板等を用いることができる。
次に、図5(B)に示すように、マスクなどを用いたリソグラフィ工程及びエッチング工程により高温超伝導体層2にジョセフソン接合の所定のパターンを形成する。
そして、図5(C)に示すように、高温超伝導体層2上に、絶縁性強磁性層3を成膜する。次に、絶縁性強磁性層3を、マスクなどを用いたリソグラフィ工程及びエッチング工程により絶縁性強磁性層3を所定のパターンとすることで、ジョセフソン接合1を製造することができる。絶縁性強磁性層3の材料としては、Fe3O4等の各種のフェライトを用いることができる。
ここで、上記の絶縁性強磁性層3を導電性強磁性層12にすれば、ジョセフソン接合8,8Aを製造することができる。絶縁性強磁性層3の材料としては、鉄(Fe),ニッケル(Ni),マンガン(Mn),クロム(Cr)などを用いることができる。
本発明の方法によりジョセフソン接合1,8,8Aを製造すれば、ジョセフソン接合1,8,8Aの電気特性の制御性や再現性を飛躍的に向上させることができる。
図6(A)〜(D)は、本発明による第4の実施形態に係るジョセフソン接合10の製造工程を示すもので、図2(A)のX−X方向に沿う断面図を示している。
本発明による第4の実施形態に係るジョセフソン接合10を製造する場合には、上記したジョセフソン接合1の製造方法と同様に、高温超伝導体層2のパターンを形成した後に(図6(A)及び(B)参照)、さらに、図6(C)に示すように、所定の形状の絶縁層14を形成する工程を追加する。次に、図6(D)に示すように、絶縁層14上に、絶縁性強磁性層3の代わりに導電性強磁性層12を所定の形状にして形成すればよい。ここで、導電性強磁性層12として、鉄(Fe),ニッケル(Ni),マンガン(Mn),クロム(Cr)などの材料を用いることができる。
図7は、本発明のジョセフソン接合1を用いた超伝導量子干渉素子(以下、適宜SQUIDと呼ぶ)の構造を模式的に示すもので、(A)は斜視図、(B)は(A)のX−X方向に沿う断面図である。図7に示すように、超伝導量子干渉素子20は、超伝導体層2からなる四角形リングの一辺の中央部に絶縁性強磁性層3が被覆されて、ジョセフソン接合1が形成されており、所謂RF−SQUIDとなる。四角形リングにおいて、X−X方向に直交するY−Y方向の両辺の中央部には、電流端子20A,20Bが設けられている。電流端子20A,20Bに電流を流すと、ある閾値を越えたときに超伝導量子干渉素子20にはゼロではない電圧が発生するが、この閾値を臨界電流と称する。臨界電流が磁束の関数となることを利用すると、臨界電流の測定により磁束を高感度で検出することができる。図7においては、ジョセフソン接合1を用いたが、絶縁性強磁性層3の代わりに超伝導体層2上に絶縁層14及び導電性強磁性層12を被覆したジョセフソン接合8,8A,10としてもよい。
図8に示すように、超伝導量子干渉素子25には、超伝導体層2からなる四角形リングのX−X方向の対向する二辺の中央部に絶縁性強磁性層3が被覆されて、ジョセフソン接合1が2個形成されており、所謂、DC−SQUIDとなる。四角形リングにおいて、X−X方向に直交するY−Y方向の両辺の中央部には、電流端子25A,25Bが設けられている。図8においては、ジョセフソン接合1を用いたがジョセフソン接合8,8A,10としてもよい。DC−SQUIDにおいても臨界電流の測定により磁束を高感度で検出することができる。
図9は、本発明のジョセフソン接合1を用いた単一磁束量子デバイスの構造を模式的に示し、(A)は部分斜視図、(B)は(A)のX−X方向に沿う断面図である。図9に示すように、単一磁束量子デバイス30においては、接地体となる層31及びこの接地体層の表面上に形成される絶縁層32上に、超伝導体層33からなる四角形リングが形成され、この一辺の中央部に絶縁性強磁性層34が被覆されてジョセフソン接合1が形成され、図7で示すRF−SQUIDが構成されている。超伝導体層33の図示する一端部33Aは接地体層31と接続されている。他端部33Bは、図示しない他のRF−SQUIDと超伝導体層からなる配線層で連結接続されている。
上記アレイ40,45,50,55においてはジョセフソン接合1を用いたが、絶縁性強磁性層43,53,57の代わりに超伝導体層41,46上に絶縁層14及び導電性強磁性層12を被覆したジョセフソン接合8,8A,10としてもよい。
図14(A)〜(K)は、実施例のジョセフソン接合8を製作する際の製作工程を模式的に示す断面図である。
図14(A)に示すように、LaSrAlO4(LSAO)基板6上に、後述するパルスレーザを用いたアブレーション法(PLD法)によって膜厚が約40〜80nmのLa2−xSrxCuO4からなる超伝導体層2を堆積し、図14(B)に示すようにLa2−xSrxCuO4超伝導体層上にポジ型の電子ビーム露光用レジスト61(Shipley社製、型番1813)を塗布し、図14(C)に示すように電子ビーム露光62を行ない、現像を行なうことによって強磁性層12が配置されるべき領域が開口されたレジストパターン63を形成した(図14(D)参照)。
図14(G)に示すように電子ビーム露光用レジスト61が塗布され、図14(H)に示すように電子ビーム露光用レジスト61が露光され、図14(I)に示すように電子ビーム露光用レジストが現像されて超伝導体層2をエッチングするパターン65が形成される。次に、図14(J)に示すようにエッチングパターン65をマスクとして余分な超伝導体層がエッチングされ、最後にエッチングパターンとして用いた電子ビーム露光用レジスト65を除去して実施例のジョセフソン接合を製作した。なお、上記ジョセフソン接合8の作製で用いたパターンには、ジョセフソン接合8の電気抵抗特性評価のための四端子法パターン等も含んでいる。
図16は、実施例においてパルスレーザアブレーション法で堆積したLa2−xSrxCuO4膜のX線回折パターンを示す図であり、(A)がSrの組成xが0.15の場合を、(B)がSrの組成が0.2の場合を示している。図16の縦軸は回折X線強度(任意目盛り)を示し、横軸は角度2θ(°)、すなわちX線の原子面への入射角θの2倍に相当する角度である。
図16から明らかなように、作製したLa2−xSrxCuO4(x=0.15及び0.2)、つまり、La1.85Sr0.15CuO4(図16(A)参照)及びLa1.8Sr0.2CuO4(図16(B)参照)においては、何れも回折X線強度の鋭いピークが観測され、結晶性の良好な超伝導体の相が得られていることが分かった。
図17から明らかなように、組成xが0.15のLa1.85Sr0.15CuO4からなる超伝導体層の臨界温度は約30Kであり、組成xが0.2のLa1.8Sr0.2CuO4からなる超伝導体層の臨界温度は約25Kであることが分かった。
実施例に対する比較例として、強磁性層を設けないものを製作し、これ以外は実施例と同様にして製作した。この比較例は、超伝導体層の細線から構成されている。
図19は、実施例のジョセフソン接合8における電気抵抗の温度依存性を測定した結果を示す図である。図19の縦軸は抵抗(Ω)、横軸は絶対温度(K)であり、比較例も併せて示している。超伝導体層2は、La1.85Sr0.15CuO4を用いた。
図19から明らかなように、比較例の超伝導体層が29.7Kで零となるのに対して、実施例のジョセフソン接合8の電気抵抗は27.7Kで零となり、超伝導が生じる温度、すなわち、臨界温度が低下したことが分かった。これは、実施例のジョセフソン接合8が導電性強磁性層12を備えていることにより、導電性強磁性層12の下部にある超伝導体層2の臨界温度が低下することに起因している。
図21は、実施例のジョセフソン接合8において10GHzのマイクロ波を照射したときの電流電圧特性及び微分抵抗を測定した結果を示す図である。図21の横軸はジョセフソン接合への印加電圧(V)であり、右縦軸が電流(μA)を、左縦軸が微分抵抗(dV/dI、任意目盛り)を示している。図21から明らかなように、実施例のジョセフソン接合8に流れる電流は、その微分抵抗においてなだらかなキンクが20μVおきに観察された。
V=hf/(2e)=Φf (1)
ここで、Vはシャッピーロ・ステップの間隔電圧(V)、hはプランク定数(6.626×10−34J・s)、eは電子の単位電荷(1.602×10−19C)、Φ(=h/(2e))は磁束量子である。10GHzのマイクロ波を照射したときのシャッピーロ・ステップの間隔は、式(1)から20μVと計算される。したがって、実施例で観察されたキンクのステップ間隔は、式(1)を満足し、ジョセフソン接合8が示す干渉効果であるシャッピーロ・ステップが観察されていることが判明した。
2,33,41,46:超伝導体層(高温超伝導体層)
2A,2B:電極
2C,42,47:狭窄部
3,34,43,53,57:絶縁性強磁性層
6:基板
12,64:導電性強磁性層
14:絶縁層
20:超伝導量子干渉素子(RF−SQUID)
20A,20B:電流端子
25:超伝導量子干渉素子(DC−SQUID)
25A,25B:電流端子
30:単一磁束量子デバイス
31:接地体層
32:絶縁層
33A,33B:端部
40,45,55,60:ジョセフソン接合を用いたアレイ
61:電子ビーム露光用レジスト
62:電子ビーム露光
63,65:レジストパターン
70:パルスレーザアブレーション装置
71:真空容器
71A:窓部
72:ターゲット
73:基板
74:基板保持部
75:真空計
76:排気部
77:酸素ガス導入部
78:パルスレーザ
79:レンズ
81:ターゲット回転部
Claims (9)
- 基板と、基板上に形成される結晶からなる高温超伝導体層と、該高温超伝導体層の中央部上に積層される強磁性層と、を備え、
上記高温超伝導体層の中央部の幅は、該中央部の両端部の幅よりも狭く形成されており、かつ、ジョセフソン侵入長以下であることを特徴とする、ジョセフソン接合。 - 前記強磁性層が、導電性強磁性層又は絶縁性強磁性層の何れかでなることを特徴とする、請求項1に記載のジョセフソン接合。
- 前記高温超伝導体層の中央部と前記導電性強磁性層とを絶縁するための絶縁層が、前記高温超伝導体層の中央部と前記導電性強磁性層との間に挿入されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のジョセフソン接合。
- 前記高温超伝導体層の中央部の幅が、上記高温超伝導体層のコヒーレント長と同程度であることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載のジョセフソン接合。
- 前記高温超伝導体層は、酸化物超伝導体からなることを特徴とする、請求項1に記載のジョセフソン接合。
- 前記酸化物超伝導体は、銅酸化物超伝導体からなり、該銅酸化物超伝導体は、La,Sr,Cu及びOからなる化合物(LSCO)、Y,Ba,Cu及びOからなる化合物(YBCO)及びBi,Sr,Ca,Cu及びOからなる化合物(BSCCO)の何れかであることを特徴とする、請求項5に記載のジョセフソン接合。
- 前記強磁性層が、フェライト,鉄(Fe),ニッケル(Ni),マンガン(Mn)及びクロム(Cr)の何れかであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のジョセフソン接合。
- 前記基板は、酸化マグネシウム(MgO)、サファイア(Al2O3)、LaとAlと酸素とからなるLaAlO3基板及びSrとAlと酸素とからなるSrAlO3基板の何れかであることを特徴とする、請求項1に記載のジョセフソン接合。
- 請求項1〜8の何れかに記載のジョセフソン接合を用いたことを特徴とする、ジョセフソンデバイス。
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