以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る軟水器の一例を示す概略構成図である。この軟水器1は、家庭において使用する生活用水を軟水にする家庭用の軟水器であって、図示しない水道本管から引き込まれる水道水を水源として使用し、上記水道本管から家庭内に引き込まれる給水配管の最上流側(より詳細には、水道メータの下流側)に配設される。
この軟水器1は、イオン交換樹脂を充填したイオン交換樹脂充填槽2と、水道本管から供給される水道水(原水)をイオン交換樹脂充填槽2に取り込むための入水流路3と、イオン交換樹脂充填槽2を経由して軟水化処理された被処理水(軟水)を器具外部に供給するための出水流路4と、水道水をイオン交換樹脂充填槽2を経由させずに迂回して出水流路4に供給するバイパス流路5と、イオン交換樹脂を再生する再生液(塩水)生成用の水道水を薬液タンク10に供給するためのタンク補水流路(補水流路)6と、器具内部の不要な水を器具外部に排出するための排水流路7と、軟水器1の各部を制御する制御部8とを主要部として備えている。
イオン交換樹脂充填槽2は、内部にイオン交換樹脂が充填された有底筒型の容器で構成されており、入水流路3から供給される水道水が上部フィルタ11を介してイオン交換樹脂充填槽2内に導入可能とされ、イオン交換樹脂充填槽2を通過することによって軟水化処理された軟水(被処理水)が下部フィルタ12から分岐ヘッド9を介して出水流路4に流出できるように構成されている。
入水流路3は、入水口(入水部)13とイオン交換樹脂充填槽2とを繋ぐ流路であって、一端に上記水道本管からの配管を接続する入水口13を備えるとともに、その他端が上記分岐ヘッド9の一端に接続された配管で構成されている。そして、この入水流路3には、入水口13からの入水流量を検出する入水流量センサ14と、入水流路3の逆流を防止する一対の逆止弁15a,15bと、入水流路3の通水を制御する入水弁16とが直列に備えられている。
17は逆流防止機構である。この逆流防止機構17は、水道本管からの給水圧(入水圧)が低下したときに軟水器1側から水道本管側に水が逆流するのを防止するための機構であり、給水圧を利用してバネ18の弾性に抗して弁体19を閉止させるための第1の管路20と、給水圧の低下によって弁体19がバネ18の弾性に抗しきれずに開いたときに入水流路3(具体的には、逆止弁15a,15b間)内にある水を、水排出路21を介して外部に排出させるための第2の管路22とを備えて構成されている。
出水流路4は、イオン交換樹脂充填槽2と出水口(出水部)23とを繋ぐ流路であって、一端に軟水を供給する家屋に通ずる給水配管を接続する出水口23を備えるとともに、その他端が上記下部フィルタ12に連通する分岐ヘッド9の一端に接続された配管で構成されている。そして、この出水流路4には、異物除去用のストレーナ25と、出水流路4の通水(軟水の出水)を制御する採水弁26とが直列に備えられている。
バイパス流路5は、入水口13と出水口23を連通させる流路であって、一端が上記入水流路3における逆止弁15bと入水弁16との間に接続され、その他端が上記出水流路4における出水口23と採水弁26との間に接続された配管で構成されており、このバイパス流路5には、バイパス流路5の通水を制御するバイパス弁27が備えられている。
タンク補水流路(補水流路)6は、薬液タンク10の再生液流出口を介さずに薬液タンク10に補水するための流路であって、その一端が上記入水流路3における入水口13と入水流量センサ14との間に接続されるとともに、その他端が上記薬液タンク10の上端に設けられた補水口28に接続された配管で構成されている。このタンク補水流路6には、軟水器1の電源起動時等に、後述するような位置初期化処理の必要がない電磁弁で構成された補水弁29が備えられている。
薬液タンク10は、イオン交換樹脂の再生液を貯留するためのタンクであって、その内部にイオン交換樹脂の再生液を生成するための薬剤(たとえば、工業塩)を投入する薬剤かご30を収容する大気開放の箱型の容器で構成されている。具体的には、この薬剤かご30は、図1に示すように、その底部が薬液タンク10の底部から浮いた状態で薬液タンク10内に保持されており、薬液タンク10内の水位がこの薬剤かご30の底部の高さを越えて上昇したときに薬剤かご30内の薬剤が水に浸漬されて溶け出し、薬液タンク10内で再生液(塩水)が生成されるように構成されている。
この薬液タンク10には、該タンク10内の水位を検出するための水位電極31と、再生液の濃度を検出するための濃度検知電極32とが備えられている。そして、後述するタンク補水運転時には、薬液タンク10内の水位と再生液の濃度を制御部8で監視しながら補水弁29の開閉制御が行われる。また、上記補水口28の下方にはオーバーフロー排出口33が備えられており、薬液タンク10内の水位がこのオーバーフロー排出口33の高さにまで上昇すると、このオーバーフロー排出口33から器具外部に排出されるように構成されている。
薬液タンク10の下部には、再生液を上記イオン交換樹脂充填槽2に供給するための薬液流路35が接続されている(この薬液流路35と薬液タンク10との接続部分が薬液タンク10における再生液流出口を構成する)。この薬液流路35は、その一端が薬液タンク10の下部に連通し、その他端が上記分岐ヘッド9の他端に接続された配管で構成されており、この薬液流路35には薬液流路35の通水を制御する薬液弁36が備えられている。
排水流路7は、その一端に排水を器具外部に導出するための排水口40が備えられるとともに、その他端が分岐されて、分岐された一端が上記入水流路3における入水弁16と上部フィルタ11との間に接続されるとともに、分岐された他端が上記薬液流路35における薬液弁36と分岐ヘッド9との間に接続されている。そして、この排水流路7の入水流路3側の分岐配管41には、該分岐配管41の通水を制御する逆洗排水弁42が備えられており、また、薬液流路35側の分岐配管43には、該分岐配管43の通水を制御する順洗排水弁44が備えられている。
上記制御部8は、軟水器1の各部を制御するマイコン(図示せず)を備えた制御基板で構成されている。この制御部8は、上記入水流量センサ14、水位電極31、濃度検知電極32等の各種センサ類と電気的に接続され、これらセンサ類で検出される各種情報の取り込みが可能に構成されるとともに、上記入水弁16、採水弁26、バイパス弁27、補水弁29、薬液弁36、逆洗排水弁42、順洗排水弁44の各駆動源(図示せず)とも電気的に接続され、これらの駆動源を個々に制御できるように構成されている。
本実施形態では、上記入水弁16、採水弁26、バイパス弁27、薬液弁36、逆洗排水弁42及び順洗排水弁44の駆動源にはステッピングモータが用いられている。すなわち、これらの各弁はステッピングモータ式の流路制御弁で構成され、制御部8で設定される制御量(ステップ数)に基づいて弁の開度が設定・制御される。これに対して、上記補水弁29は、後述するタンク補水時以外のときには弁が閉じられている常閉の電磁弁で構成され、制御部8の制御信号に基づいてその開閉制御が行われる。
ところで、本実施形態の軟水器1においては、このように入水弁16等の駆動源としてステッピングモータを用いていることから、軟水器1の電源起動時(制御部8への電源供給が開始された直後)に、制御部8が、これら入水弁16等の駆動源となる各ステッピングモータの位置初期化処理(ポジションリセット)を行うように構成されている。すなわち、制御部8は、軟水器1に電源が供給されると、個々のステッピングモータについて、一旦その回転体を弁の開方向に駆動させ、該回転体が所定の位置(弁の全開位置)まで正常に動作したかを判定し、モータ制御上の起点を設定するように構成されている(詳細は後述する)。
なお、この位置初期化処理が正常に終了すると、制御部8は、バイパス弁27のみを全開位置に維持させておき、その他の流路制御弁(入水弁16、採水弁26、薬液弁36、逆洗排水弁42及び順洗排水弁44)は全閉(閉状態)に制御して、この状態を位置初期化処理後の初期状態として待機状態となる。ここで、この待機状態でバイパス弁27のみを全開にするのは、たとえば、入水弁16や採水弁26が閉故障(閉弁状態で固着)していたような場合でも、軟水器1から家庭への水の供給が途絶(断水)しないようにするためである。また、薬液弁36や順洗排水弁44、逆洗排水弁42を閉じるので、排水管から水道水が漏れ出すこと(排水止水不良)も防止される。
そして、この待機状態において、図示しない操作部の操作等によって軟水運転が選択されると、制御部8は、バイパス弁27を全閉、入水弁16及び採水弁26を全開に制御し(その他の流路制御弁は全閉を維持)、入水口13から供給される水道水が入水流路3、上部フィルタ11を介してイオン交換樹脂充填槽2内に導入され、ここで軟水化処理された被処理水(軟水)が下部フィルタ12、分岐ヘッド9、出水流路4を経て出水口23から家庭内へ向かう給水配管に供給される(軟水運転)。
なお、この軟水運転のほか、制御部8は、タンク補水運転、通薬運転、ストレーナ洗浄運転、順洗運転、逆洗運転といった運転モードを備えており、これらが選択されたときには、以下のような各運転を実施する。
すなわち、イオン交換樹脂の再生を行う場合、制御部8は、イオン交換樹脂充填槽2への通薬に先立って、補水弁29を開く一方、バイパス弁27を全開に制御して家屋への給水(原水の給水)を確保しつつ、その他の流路制御弁(入水弁16、採水弁26、薬液弁36、逆洗排水弁42及び順洗排水弁44)を全閉に制御して、入水口13から供給される水道水がタンク補水流路6を通じて薬液タンク10に供給されるようにし、薬液タンク10内で再生液を生成する(タンク補水運転)。
また、薬液タンク10で生成された再生液をイオン交換樹脂充填槽2に通薬させる際には、上記制御部8は、バイパス弁27を全開に制御して家屋への給水を確保しつつ、薬液弁36と逆洗排水弁42を全開、その他の流路制御弁(入水弁16、採水弁26及び順洗排水弁44)は全閉に制御して、薬液タンク10内の再生液が薬液流路35、分岐ヘッド9、下部フィルタ12を介してイオン交換樹脂充填槽2に通薬され、上部フィルタ11から分岐配管41、排水流路7を経て器具外部に排出されるようにする(通薬運転)。
また、ストレーナ25を洗浄する際には、上記制御部8は、バイパス弁27を全開に制御して家屋への給水を確保しつつ、採水弁26と順洗排水弁44を全開、その他の流路制御弁(入水弁16、薬液弁36及び逆洗排水弁42)を全閉に制御して、入水口13から供給される水道水が、採水弁26、ストレーナ25、分岐ヘッド9、順洗排水弁44から分岐配管43、排水流路7を経て器具外部に排出されるようにする(ストレーナ洗浄運転)。
また、イオン交換樹脂充填槽2の順洗運転(軟水運転時と同方向の通水による洗浄)を行うときは、上記制御部8は、バイパス弁27を全開に制御して家屋への給水を確保しつつ、入水弁16と順洗排水弁44を全開、その他の流路制御弁(採水弁26、薬液弁36及び逆洗排水弁42)を全閉に制御して、入水口13から供給される水道水が、入水弁16、上部フィルタ11を介してイオン交換樹脂充填槽2内に導入されるようにし、下部フィルタ12から分岐ヘッド9、順洗排水弁44、分岐配管43、排水流路7を経て器具外部に排出されるようにする(順洗運転)。
さらに、イオン交換樹脂充填槽2の逆洗運転(軟水運転時と逆方向の通水による洗浄)を行うときは、上記制御部8は、バイパス弁27を全開に制御して家屋への給水を確保しつつ、採水弁26と逆洗排水弁42を全開、その他の流路制御弁(入水弁16、薬液弁36及び順洗排水弁44)を全閉に制御して、入水口13から供給される水道水が、採水弁26、分岐ヘッド9、下部フィルタ12を介してイオン交換樹脂充填槽2内に導入されるようにし、上部フィルタ11から逆洗排水弁42、分岐配管41、排水流路7を経て器具外部に排出されるようにする(逆洗運転)。
次に、このように構成された軟水器1における上記流路制御弁の位置初期化処理について、図2から図5に基づいて詳細に説明する。
図2は、各ステッピングモータの回転体の位置検出を行う位置検出回路を示している。この図において、符号M1〜M6に示すのは、上記入水弁16、採水弁26、バイパス弁27、薬液弁36、逆洗排水弁42及び順洗排水弁44に対応する各ステッピングモータの回転体である。各回転体M1〜M6には、それぞれ所定位置に回転位置検出用の磁性体50が配設されており、また、回転体M1〜M6のそれぞれには対向する所定位置に磁性体50の磁気を検出するセンサとなるホール素子(ホールIC)IC1〜IC6が配設されている。
各ホール素子IC1〜IC6には、制御部8との間に、共通の電源線(15Vライン51とグランドライン52)と個別の信号線S1〜S6とが接続されており、各ホール素子IC1〜IC6での磁気の検出信号は、各信号線S1〜S6を介して制御部8に入力されるように構成されている。このように、各ホール素子IC1〜IC6のそれぞれに個別の電源線を配設せずに共通の電源線を使用しているのは、制御基板(制御部8)における電源端子数の増加を抑制し、制御基板の小型化を図るためである。このような共通の電源線を用いたステッピングモータの位置検出回路の構成は、従来よりこの種の軟水器において使用されているものである。なお、図2では特に図示していないが、各ステッピングモータを駆動させるための駆動用の電源線(ステッピングモータのコイルへの電源線)は、各ステッピングモータごとに別途配設されている。
図3は、上記ステッピングモータ式の流路制御弁におけるステッピングモータの回転角と弁の開度との関係の一例を示す模式図である。具体的には、この図3は弁の閉切り位置が297°とされた流路制御弁についての制御例を示している。
この図3に示す流路制御弁は、弁の全開位置が0°(制御量0ステップ)で、全閉位置が315°(正確には3408ステップであるが、制御部8での制御では便宜的に制御量を3400ステップとしている、以下同様)とされており、本実施形態では、さらに、弁の開側及び閉側にモータの回転体(図2のM1〜M6参照)がオーバーランしないように、それぞれメカロックが設けられている。
このメカロックは、モータの回転体の回転を機械的に規制する公知の構造の回転規制手段(たとえば、回転体にその回転を許容する範囲で周回溝を設けて、この周回溝に回転体の回転を規制するピンを嵌合させ、周回溝の周回方向に回転体の回転を許容する一方、許容範囲を超える回転に対しては周回溝の端部とピンとが当接し、それ以上の回転が規制される構造)で構成されている。
図示例では、このメカロックとして、開側のメカロック(開側動作限界位置)が−8°に、また、閉側のメカロック(閉側動作限界位置)が+327°の位置に設定されている。したがって、この図示例の流路制御弁においては、モータの回転体が弁の開方向(時計回り)に回転するときには−8°の位置でその回転が強制的に停止されてそれ以上開方向に進まなくなり、また、閉方向(反時計回り)に回転するときには+327°の位置を超えて閉方向に進まないようにされている。
なお、このメカロックの位置は流路制御弁の構造に応じて適宜設定される。開側のメカロックの位置は、少なくとも弁の全開位置(0°)よりも小さく−側(つまり、0°未満)に設定される。また、閉側のメカロックの位置は、少なくとも弁の閉切り位置(図示例では297°)よりも大きく+側に設定される。より好ましくは、この閉側のメカロックの位置は、弁の全閉位置(315°)を超える+側(つまり、315°以上)に設定される。
図4は、軟水器1における各流路制御弁の位置初期化処理の手順を示すフローチャートであり、図5は、各流路制御弁について行われる位置初期化処理の具体的内容を示すフローチャートである。
図4に示すように、この軟水器1では、該軟水器1に電源供給が開始されると、制御部8は、各流路制御弁の位置初期化処理を開始するのに先立って、まず、薬液弁36が閉じられていないかを判断するように構成されている(図4ステップS1参照)。
これは、たとえば、(1)通薬運転時など薬液弁36を開いている状態で停電等によって電源供給が遮断された後に電源が再起動(電源供給が再開)されたような場合に、この状態(つまり、薬液弁36が開いた状態)で入水弁16または採水弁26の位置初期化処理を先に行うと、位置初期化処理によってこれらの弁が開かれることに伴って、入水圧により、薬液弁36から薬液タンク10内に水道水が逆流するおそれがあることや、(2)入水弁16または採水弁26を開いた洗浄運転中の停電後に電源が再起動した場合に、この状態(つまり、入水弁16または採水弁26が開いた状態)で薬液弁36の位置初期化処理を先に行うと、上記(1)のときと同様に、入水圧によって、薬液弁36から薬液タンク10内に水道水が逆流するおそれがあることから、このような薬液タンク10への逆流を防止するために、薬液弁36が開いているとき(つまり、図4ステップS1の判断が肯定的な場合)には、薬液弁36の位置初期化処理を先行して行えるようにするための処理である。
したがって、この図4ステップS1の判断が肯定的(つまり、薬液弁36が閉じておらず開いている状態)であるときには、制御部8は、図4ステップS2に移行して、薬液弁36の位置初期化処理(ポジションリセット)を最初に行う。これに対して、図4ステップS1の判断が否定的(つまり、薬液弁36が閉じている状態)であるときには、薬液弁36の位置初期化処理に先行して入水弁16及び採水弁26の位置初期化処理を先に行う(図4ステップS5、S7、S14参照)。つまり、本実施形態の軟水器1では、薬液弁36の状態に応じて各流路制御弁の位置初期化処理を行う順序が決定される。
ここで、各流路制御弁の位置初期化処理について、薬液弁36を例にとって詳細に説明する。位置初期化処理にあたっては、制御部8は、まず、ステッピングモータの回転体を0°の位置(つまり、弁の全開位置)を目指して開方向に制御する。このとき、薬液弁36の駆動系統及び回転体の位置検出系統がともに正常であれば、この制御に伴って回転体が0°に向かって時計回りに回転し、ホールICでの磁気検出可能位置(図3では、4°〜−6°の範囲)まで回転体が回転すると、磁性体50の磁気を検出したホールICから開位置検出信号(開リミッタ信号)が制御部8に与えられる(図5ステップS1の判断が肯定的となる)。
そして、このように制御部8に薬液弁36の開位置検出信号が与えられると、制御部8は、この開位置検出信号が得られた位置をモータ制御上の基点(つまり、0ステップ)に設定し(図5ステップS2参照)、薬液弁36についての位置初期化処理を正常に終了する(図5ステップS3参照)。
これに対し、制御部8に開位置検出信号が与えられない場合(図5ステップS1の判断が否定的な場合)、制御部8は、開制御を継続した状態で一定時間(図示例では15秒)内にホールICからの開位置検出信号が与えられないかを判断する(図5ステップS4参照)。そして、一定時間が経過しても薬液弁36についての開位置検出信号が得られない場合(図5ステップS4の判断が肯定的な場合)には、制御部8は、回転体が開側のメカロック位置(すなわち、本例では−8°の位置)まで回転したものとみなして、現在位置(現在のポジション)を開側メカロックの位置に相当するステップ(本例では、−86ステップ)に設定し(図5ステップS5参照)、薬液弁36についての位置初期化処理は失敗とする(図5ステップS6参照)。
このようにして、薬液弁36の位置初期化処理が完了すると、本実施形態の軟水器1においては、その結果の良否(位置初期化処理の成功/失敗)にかかわらず、制御部8は、薬液弁36を閉じる制御を行う(図4ステップS3参照)。
すなわち、薬液弁36の位置初期化処理が正常に終了している場合には、先に開位置検出信号が得られた位置を起点に(0ステップを起点に)、目標制御量を3400ステップとして薬液弁36を閉じる制御を行う。これに対して、位置初期化処理に失敗していた場合には、制御部8は、本来の閉位置である315°(本来の目標制御量3400ステップ)を目指し、この本来の目標制御量である3400ステップに開側メカロックの差分である86ステップ分を加えた3486ステップを目標制御量としてステッピングモータを閉側に回転させる制御を行う。つまり、この場合、開側のメカロックの位置(−86ステップ)を起点に、そこから目標位置(315°)までの制御量(3400+86ステップ)を設定する。
これにより、薬液弁36が作動不能に陥っている場合(たとえば、ゴミ噛みによる作動不良や駆動電源の電源断などの場合)を除き、薬液弁36のステッピングモータは、開側のメカロックの位置から閉側の閉切り位置(297°)を超えて315°の位置まで回転し、薬液弁36が全閉状態となる。したがって、本実施形態の軟水器1では、薬液弁36の位置初期化処理失敗の原因が、たとえば、薬液弁36の位置検出系統の異常にすぎない場合(具体的には、ホールICの15Vライン51又はグランドライン52が断線している場合)には、薬液弁36を正常時と同様に閉じることができる。
なお、ここで、本実施形態では、位置初期化処理が失敗の場合に開側のメカロックの差分(86ステップ)に加算する制御量として本来の目標制御量(3400ステップ)を加算する場合を示したが、ここで加算する制御量は、少なくとも弁を閉切り位置まで動作させるに足りる制御量(具体的には、3216ステップ以上)であればよい。ただし、この加算する制御量をあまり大きくして閉側のメカロックに達するような制御量(3538ステップ)にすると、薬液弁36の部品(特に弁体を弾発付勢する弾性部材)を破損するおそれがあるので、ここで加算する制御量は、このような部品破損を招かない範囲で適宜設定される。
このようにして、薬液弁36の位置初期化処理が終了すると、次に、制御部8は、バイパス弁27の位置初期化処理を行う(図4ステップS4参照)。このバイパス弁27の位置初期化処理も上述した薬液弁36と同様の手順(具体的には、図5に示す手順)で行われるが、このバイパス弁27については、位置初期化処理の結果(成功/失敗)に関わらず、制御部8は、位置初期化処理終了後はバイパス弁27を開いた状態に維持する。なお、バイパス弁27が閉故障している場合には、バイパス弁27を開くことはできないが、この場合は、後述する故障対応動作を行う。
バイパス弁27の位置初期化処理が終了すると、続いて、制御部8は、採水弁26、入水弁16、順洗排水弁44、逆洗排水弁42の順でそれぞれ位置初期化処理を行う(図4ステップS5〜S12参照)。これら各弁の位置初期化処理についても、上記薬液弁36の場合と同様に、制御部8は、位置初期化処理の成功/失敗にかかわらず、その終了後は各弁を閉じる制御を行う(図4ステップS6、S8、S10、S12参照)。なお、この図4ステップS5〜S12に示した位置初期化処理を行う順序(採水弁26、入水弁16、順洗排水弁44、逆洗排水弁42の順序)は適宜変更可能である。
そして、これらの処理が終了すると、制御部8は、次に、図4ステップS13に移行して、薬液弁36の位置初期化処理が既に終了しているか否かを判定し、未だ終了していなければ(図4ステップS1の判断が否定的であった場合には)、薬液弁36の位置初期化処理と位置初期化処理後の閉弁制御を行う(図4ステップS14、S15参照)。この場合も、位置初期化処理の成功/失敗にかかわらず、その終了後に薬液弁36を閉じるのは上記と同様である。一方、薬液弁36の位置初期化処理が既に終了している場合(図4ステップS1の判断が肯定的であった場合)には、ここでは薬液弁36の位置初期化処理は行わずに次の処理に移行する。
このように、本実施形態の軟水器1においては、水源(入水口13)と薬液タンク10との間に直列に配された流路制御弁(具体的には、入水口13から入水弁16、イオン交換樹脂充填槽2、分岐ヘッド9、薬液弁36を介して薬液タンク10に至る経路において直列に配された入水弁16と薬液弁36、及び、入水口13からバイパス弁27、採水弁26、分岐ヘッド9、薬液弁36を介して薬液タンク10に至る経路において直列に配されたバイパス弁27と採水弁26と薬液弁36)についての位置初期化処理にあたっては、これら直列に配された流路制御弁のうち、少なくともいずれか1つの弁が閉位置にあることを条件として、その他の流路制御弁の開制御を許可するように構成されている。
すなわち、薬液弁36が開位置にあるときには、薬液弁36の位置初期化処理を先行して行って薬液弁36を一旦閉位置に制御して薬液タンク10の再生液流出口に通じる流路を遮断した上で、入水弁16及び採水弁26の位置初期化処理(つまり、これら入水弁16と採水弁26の開制御)を行うように構成されている。また、薬液弁36が閉位置にあるときには、入水弁16及び採水弁26の位置初期化処理を先行して行ってこれら入水弁16と採水弁26の双方を一旦閉位置に制御して入水口13から薬液弁36に至る流路を遮断し(水源と薬液タンク10との間に介挿される薬液弁36以外の流路制御弁によって水源と薬液タンク10との間を遮断し)、その上で、薬液弁36の位置初期化処理(つまり、薬液弁36の開制御)を行うように構成されている。
そのため、本実施形態の軟水器1では、位置初期化処理に伴って薬液弁36と入水弁16又は採水弁26とが同時に開くことが回避され、薬液タンク10への逆流が防止される。また、薬液弁36を開くときには、常に入水弁16及び採水弁26いずれも閉じられているので、薬液タンク10内の再生液が誤って家庭内に流入することもなく、その際には、バイパス弁27を開制御しており、家庭側が断水することも防止されている。
そして、各流路制御弁の位置初期化処理がすべて終了すると、制御部8は、最後に、各流路制御弁での位置初期化処理がすべて正常に終了したか(位置初期化処理に成功したか)を判定し(図4ステップS16参照)、すべての流路制御弁において位置初期化処理に成功していれば、上述した通常どおりの待機状態となる(図4ステップS17参照)。
これに対して、いずれか一つでも流路制御弁の位置初期化処理に失敗していれば、所定の故障対応動作を行う(図4ステップS18参照)。
ここで、この故障対応動作としては、たとえば、位置初期化処理に失敗した流路制御弁を特定した故障表示を所定の表示部(図示せず)に行わせたり、所定の音響出力部(図示せず)を通じて警報音や故障を報じるメッセージを報知するように構成される。そして、すべての流路制御弁において位置初期化に失敗した場合には、ステッピングモータの位置検出系統に異常がある(ホールICの共通の電源線が断線している)可能性が高いので、その旨を表示等するように構成される。
また、その一方で、バイパス弁27の位置初期化処理に失敗した場合には、バイパス弁27の閉故障のおそれがある(つまり、このままでは断水になるおそれがある)ので、この場合には、制御部8は、入水弁16及び採水弁26を開いて、入水口13、入水弁16、上部フィルタ11、下部フィルタ12、分岐ヘッド9、採水弁26、出水口23の経路を設定して、断水になるのを防止する。なお、この制御は、薬液弁36、逆洗排水弁42、順洗排水弁44のいずれか一つでも開いていると、薬液タンク10への逆流や排水流路7への水漏れ(排水止水不良)が発生するので、バイパス弁27のみが位置初期化処理に失敗した場合に実行される。
このように、本実施形態の軟水器1においては、水源と薬液タンク10との間に直列に配された流路制御弁(入水弁16と薬液弁36及びバイパス弁27と採水弁26と薬液弁36)について開制御を行うにあたっては、制御部8が、これら直列に配された流路制御弁のうち、少なくともいずれか1つの弁が閉位置にあることを条件として、その他の流路制御弁の開制御を許可するので、水源と薬液タンク10との間に直列に配された流路制御弁が同時に開くことが回避され、薬液タンク10への逆流が確実に防止される。
なお、上述した実施形態は本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなく発明の範囲内で種々の設計変更が可能である。
たとえば、上述した実施形態では、バイパス弁27の位置初期化処理に失敗した場合には、制御部8が、入水弁16及び採水弁26を開いて断水を防止する場合を示したが、これは軟水器1の断水を防止するための措置であるので、たとえば、入水口13からイオン交換樹脂充填槽2を介して出水口23に至る流路中に、上記以外の他の流路制御弁が備えられているような場合には、当該流路制御弁も開状態に制御して、出水部からの出水を可能にするように構成される。
また、上述した実施形態では、水源と薬液タンク10との間に直列に配される流路制御弁として入水弁16と薬液弁36及びバイパス弁27と採水弁26と薬液弁36とを示したが、このように直列に配される複数の流路制御弁としてこれら以外に他の流路制御弁を設けるように構成することも可能である。その場合,これら直列に配される流路制御弁の開制御を行うにあたっては、少なくともいずれか1つの弁が閉位置にあることを条件として、その他の流路制御弁の開制御を許可するように構成される。なお、この流路制御弁の開制御の条件は、上述した位置初期化処理におけるときの開制御に限らず、通常の動作においても適用可能である。