以下、本発明の一実施形態にかかるインクジェット記録装置について図面を参照しながら詳細に説明する。
<インクジェット記録装置の全体構造>
図1に示すインクジェット記録装置1は、外部のコンピュータから受信した画像情報に基づいて記録媒体の一例である用紙Pに画像を形成可能なインクジェットプリンタである。この記録装置1は、ケーシング2内に、記録部20、用紙収納部101、用紙搬送路5、搬送ユニット30、排出部103、メンテナンスユニット50、このメンテナンスユニット50の移動手段としての昇降機構40、及びこれらを制御する制御部131を備えている。なお、以下の説明において、用紙Pが搬送ユニット30上を搬送されるときの搬送方向を方向D1とし、これに垂直な方向(用紙Pの幅方向)を方向D2とする。
記録部20は、図1及び図2に示すように、方向D1の上流側から順にブラック、シアン、マゼンダ及びイエローの各色に対応した4組(12個)の記録ヘッド22(22K、22C、22M、22Y)と、これらを支持するヘッド支持枠体18とを備えている。各色の記録ヘッド22に対応して、図略の4台のインクタンクが備えられている。各色のインクは、このインクタンクから各記録ヘッド22に補給される。なお、以下の説明において、特に限定する必要がある場合を除き、「K」「C」「M」「Y」の識別記号は省略する。
12個の記録ヘッド22は、後述する搬送ユニット30の搬送ベルト31の上方に並べて配置されている。各記録ヘッド22は、その下面にノズル面22aを有している(図9)。ノズル面22aには、インクを吐出する複数のノズルが設けられている。ノズル面22aは、方向D2に長い矩形状に形成されている。各記録ヘッド22は、ノズル面22aから用紙Pの紙面に略垂直な方向にインクを吐出して画像を形成することが可能なラインタイプのヘッドである。
記録ヘッド22のインクの吐出方式としては、例えばピエゾ素子を用いてインクを押し出すピエゾ方式や、発熱体によって気泡を発生させ、圧力をかけてインクを吐出するサーマルインクジェット方式など、各種方式を適用することができる。
ヘッド支持枠体18は、直方体形状を有している。このヘッド支持枠体18の天板18aには、キャップ支持部材としてのばね92の上端が固定されており、このばね92の下端部にはワイプ用キャップ部材91が取り付けられている。ワイプ用キャップ部材91及びばね92の詳細については後述する。
用紙収納部101は、用紙Pを収納可能であり、記録部20の下部に配置されている。用紙収納部101は、用紙が収納される給紙カセット3と、用紙搬送路5に用紙を供給するための用紙供給ローラ4とを有している。
用紙搬送路5は、この用紙搬送路5の上流側に配置されたローラ102と用紙を一旦停止させて斜め補正等を行った後、用紙を搬送ユニット30へ送り出すレジストローラ6とを有している。
搬送ユニット30は、記録部20の下方に配置されている。この搬送ユニット30は、用紙Pを記録部20に供給し、この記録部20により表面に画像が形成された用紙Pを排出部103に搬送する。搬送ユニット30は、フレーム36、ローラ32,33,34、搬送ベルト31、及び用紙保持機構35を有している。
ローラ32,33,34は、方向D1に所定の間隔を隔ててフレーム36に回転自在に支持されている。
搬送ベルト31は、無端ベルトになっており、ローラ32,33,34に架け渡されている。搬送ベルト31は、ローラ33とローラ32の間に位置する部分の上面が用紙Pの搬送面47として機能する。この搬送面47は、複数の記録ヘッド22のノズル面22aに対向している。
用紙保持機構35は、搬送ベルト31の搬送面47の下方において搬送面47に沿って記録部20に対向する位置に配置されている。この用紙保持機構35は、そのケースの上面に多数の空気吸引用の孔(図示せず)を有し、これらの孔を通じて外部の空気をケースの内部に吸引することができる。また、搬送ベルト31にも、多数の空気吸引用の孔(図示せず)が設けられている。したがって、用紙保持機構35により空気が吸引されると、用紙Pが搬送ベルト31の上面に吸着されるので、用紙Pを安定して搬送することができる。
昇降機構40は、搬送ユニット30の下方に配置された一対の偏心カム41,42を有している。偏心カム41,42は、軸部41b,42bが図略の支持部材にそれぞれ支持されており、これらの軸部41b,42bを中心に図略の駆動モータによってそれぞれ回動する。偏心カム41,42は、複数のベアリング41a,42aをそれぞれ有しており、これらのベアリング41a,42aが搬送ユニット30のフレーム36に当接した状態で搬送ユニット30を支持している。搬送ユニット30は、偏心カム41,42が軸部41b,42bを中心に回動することにより上下方向に移動する。
図1は、偏心カム41,42がほぼ鉛直方向に起立して搬送ユニット30が持ち上げられた状態を示している。この状態から偏心カム41,42が互いに内側に向いて回転すると、図3に示すように搬送ユニット30が下降する。
記録部20により用紙Pに画像が形成される画像形成モードにおいては、搬送ユニット30は、昇降機構40により持ち上げられて、図1に示すように記録ヘッド22のノズル面22aに近接した位置に配置される。この近接位置は、ノズル面22aと用紙Pとの間が印刷に適した間隔となるように調整されている。
一方、後述するワイプモード(吐出回復モード)、ヘッドキャップモードなどにおいては、搬送ユニット30は、昇降機構40により下降して、図3に示すように記録ヘッド22と離隔した位置に移動する。なお、搬送ユニット30の高さは、偏心カム41,42の回転角度を調節することによって適宜調節することができる。
排出部103は、乾燥装置7、排出ローラ8、排出口9、及び排出トレイ10を備えている。乾燥装置7は、搬送ユニット30の方向D1の下流側に配置されている。記録部20において用紙Pに吐出されたインクは乾燥装置7によって乾燥する。インクが乾燥した用紙Pは、排出ローラ8によって排出口9に送られ、ケーシング2の側面から外部に延設された排出トレイ10に排出される。
制御部131は、中央処理装置(CPU)、プログラムなどのデータが記憶されているメモリ(ROM)、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するためのメモリ(RAM)などで構成されている。この制御部131は、昇降機構40、後述する第1移動機構、第2移動機構などの動作を制御する。
<メンテナンスユニット>
次に、メンテナンスユニット50について説明する。
図4〜7に示すように、メンテナンスユニット50は、枠体81、この枠体81に支持された4つのワイプユニット82(82K,82C,82M,82Y)、枠体81に支持された4つのヘッドキャップユニット83(83K,83C,83M,83Y)、ガイドレール111〜114、モータM1,M2、及びシャフトS1,S2を備えている。
ガイドレール111,113、モータM1、及びシャフトS1は、ワイプユニット82を記録ヘッド22に対して移動させる第1移動機構として機能する。ガイドレール112,114、モータM2、及びシャフトS2は、ヘッドキャップユニット83を記録ヘッド22に対して移動させる第2移動機構として機能する。
各ワイプユニット82及び各ヘッドキャップユニット83は、平面視したときに、方向D1の寸法が短く、これに垂直な方向D2の寸法が長い長尺の長方形状を有している。また、各ワイプユニット82及び各ヘッドキャップユニット83は、図7に示すように方向D1の上流側からみたときに、厚みが小さく方向D2に長い扁平な形状を有している。ワイプユニット及びヘッドキャップユニット83の詳細については後述する。
図4に示すように、枠体81は、長尺状の4つの枠部材81a〜81dが平面視で長方形状に組み合わされたものであり、これらの枠部材81a〜81dにより囲まれた空間にワイプユニット82及びヘッドキャップユニット83が配置されている。枠体81内の前記空間において、各ワイプユニット82はヘッドキャップユニット83の上方にそれぞれ配置されている。
図4〜図6に示すように、4つの枠部材81a〜81dのうち、方向D2の一方側に配置され、方向D1に延びる枠部材81cは、方向D1に延びる4つの長孔116を有している。4つの長孔116のうちの2つは、枠部材81cの上部に設けられており、これらの長孔116の下部に残りの2つが設けられている。上部に設けられた2つの長孔116は、ガイドレール111に沿って(ワイプユニット82が配置されている位置に沿って)形成されている。下部に設けられた2つの長孔116は、ガイドレール112に沿って(ヘッドキャップユニット83が配置されている位置に沿って)形成されている。
また、方向D2の他方側に配置され、方向D1に延びる枠部材81dは、枠部材81cの4つの長孔116に対向する位置に同形状の4つの長孔116を有している。
ガイドレール111,112は、枠部材81cの内側にこの枠部材81cと略平行にそれぞれ配置されている。ガイドレール112は、ガイドレール111の下方に配置されている。一方、ガイドレール113,114は、枠部材81dの内側にこの枠部材81dと略平行にそれぞれ配置されている。ガイドレール114は、ガイドレール113の下方に配置されている。
図5に示すように、ガイドレール111及びガイドレール113は、各ワイプユニット82の端部をそれぞれ支持している。各ワイプユニット82の端部は、ねじ117によりガイドレール111,113に固定されている。隣り合うワイプユニット82同士の間隔は、これらの間に記録ヘッド22が配置可能な大きさに調整されている。
同様に、ガイドレール112及びガイドレール114は、各ヘッドキャップユニット83の端部をそれぞれ支持している。各ヘッドキャップユニット83の端部は、ねじ117によりガイドレール112,114に固定されている。隣り合うヘッドキャップユニット83同士の間隔は、これらの間に記録ヘッド22が配置可能な大きさに調整されている。
ガイドレール111は、枠部材81c側に突出する2つの突起部115を有している。一方の突起部115は、方向D1の上流側の位置(ワイプユニット82Kとワイプユニット82Cとの間の位置)に設けられ、他方の突起部115は、方向D1の下流側の位置(ワイプユニット82Mとワイプユニット82Yとの間の位置)に設けられている。同様に、ガイドレール112は、枠部材81c側に突出する2つの突起部115を有している。一方の突起部115は、ヘッドキャップユニット83Kとヘッドキャップユニット83Cとの間の位置に設けられ、他方の突起部115は、ヘッドキャップユニット83Mとヘッドキャップユニット83Yとの間の位置に設けられている。また、ガイドレール113,114は、ガイドレール111,112の突起部115に対して方向D2に対向する位置に同様の突起部115をそれぞれ有している。
ガイドレール111の2つの突起部115は、枠部材81cの上側の2つの長孔116にそれぞれ係合しており、ガイドレール113の2つの突起部115は、枠部材81dの上側の2つの長孔116にそれぞれ係合している。これらの突起部115は、各長孔116の長手方向の開口範囲内において方向D1に沿って移動可能である。
同様に、ガイドレール112の2つの突起部115は、枠部材81cの下側の2つの長孔116にそれぞれ係合しており、ガイドレール114の2つの突起部115は、枠部材81dの下側の2つの長孔116にそれぞれ係合している。これらの突起部115は、各長孔116の長手方向の開口範囲内において方向D1に沿って移動可能である。
このようにガイドレール111〜114は、突起部115と長孔116との係合によって枠体81に対して方向D1に沿ってスライド移動可能に支持されている。したがって、4つのワイプユニット82は、ガイドレール111及びガイドレール113のスライド移動に伴って方向D1にスライド移動し、4つのヘッドキャップユニット83は、ガイドレール112及びガイドレール114のスライド移動に伴って方向D1にスライド移動する。
図4及び図6に示すように、シャフトS1は、枠部材81cの方向D1側の端部と枠部材81dの方向D1側の端部に回転自在に支持されている。また、シャフトS2は、シャフトS1の下方に配置されており、枠部材81cの方向D1側の端部と枠部材81dの方向D1側の端部に回転自在に支持されている。
シャフトS1は、枠部材81d側の端部に歯車状の駆動ギアG1を有している。この駆動ギアG1は、ガイドレール113の方向D1側の端部にライン状に設けられたラックギアG2に歯合している。また、シャフトS2は、枠部材81d側の端部に歯車状の駆動ギアG3を有している。この駆動ギアG3は、ガイドレール114の方向D1側の端部にライン状に設けられたラックギアG4に歯合している。
なお、図示を省略しているが、シャフトS1は、枠部材81c側の端部にもギアG1を有しており、このギアG1は、ガイドレール111の方向D1側の端部に設けられたギアG2に歯合している。同様に図示を省略しているが、シャフトS2は、枠部材81c側の端部にギアG3を有しており、このギアG3は、ガイドレール112の方向D1側の端部に設けられたギアG4に歯合している。
図6に示すように、モータM1は、枠部材81dにおける方向D1側の端部の外面に支持部材119を介して固定されている。モータM2は、モータM1の下方に配置され、枠部材81dにおける方向D1側の端部の外面に支持部材120を介して固定されている。モータM1の図略の回転軸は、シャフトS1の端部に固定されており、モータM2の図略の回転軸は、シャフトS2の端部に固定されている。
モータM1が駆動すると、シャフトS1がギアG1とともに回転するので、ギアG2を有するガイドレール111,113がワイプユニット82とともに方向D1又はその反対方向に移動する。移動方向は、モータM1の回転方向を反転させることにより変えることができる。同様に、モータM2の回転によりガイドレール112,114がヘッドキャップユニット83とともに方向D1又はその反対方向に移動する。
図8は、画像形成モードにおける記録ヘッド22、ワイプユニット82及びヘッドキャップユニット83の位置関係を示している。この画像形成モードにおいては、ワイプユニット82及びヘッドキャップユニット83は、画像形成の邪魔にならないように、対応する記録ヘッド22の横の位置、すなわち方向D1の反対方向側の退避位置に退避している。
図9に示すように、各ワイプユニット82は、ワイプ支持部材としてのワイプトレイ122、ワイプ部材118、固定部材121、及びインク案内片125を有している。
各ワイプトレイ122は、長方形状の底板部122aとこの底板部122aの周縁から上方に延設された側壁部122bとを有し、上部に開口部122cを有している。
各ワイプユニット82は、固定部材121を介してワイプトレイ122に支持された3つのワイプ部材118を有している。各ワイプ部材118は、各組の3つの記録ヘッド22にそれぞれ対応する位置に設けられている。図4及び図9に示すように、各ワイプ部材118は、方向D2に長く、下半分が固定部材121に接触し、上半分が固定部材121よりも高さ方向に突出した長尺で扁平な形状を有する弾性部材である。
3つのワイプ部材118のうち2つは、方向D1側に配置され、残り1つはこれらのワイプ部材118よりも方向D1の反対側に配置されている。方向D1側の2つは、所定の間隔をあけてワイプユニット82の長手方向の両側に配置され、残り1つは、前記2つのワイプ部材118のほぼ中間に配置されている。
各ワイプ部材118にワイピングされたインクは、ワイプ部材118を伝って下方に移動しインク案内片125を経由してワイプトレイ122に収容される。収容されたインクは、例えば図略のポンプなどにより吸引されてインク回収口126を通じて回収される。
図9に示すように、各ヘッドキャップユニット83は、キャップトレイ123、及びヘッド用キャップ部材124を有している。各ヘッドキャップユニット83は、3つのヘッド用キャップ部材124を有しており、これらが各組の3つの記録ヘッド22のノズル面22aをそれぞれ塞ぐ。
各キャップトレイ123は、ワイプトレイ122の底板部122aとほぼ同じ大きさを有する底板部123aと、この底板部123aの周縁から上方に延設された側壁部123bとを有している。
各ヘッド用キャップ部材124は、対応する記録ヘッド22の下端部の形状に適合するように形成されている。すなわち、各ヘッド用キャップ部材124は、記録ヘッド22のノズル形成領域Nをカバーできる大きさの開口部124aを有し、この開口部124aの周縁に沿って配設されたゴム124bを有している。
また、3つのヘッド用キャップ部材124は、これらの間をつなぐ天板部128と、この天板部128の周縁から下方に延びる延設部129とともに蓋部を構成している。この蓋部は、キャップトレイ123の上部の開口を塞いでいる。
<ワイプ用キャップ部材>
図2、図7、図8及び図9に示すように、記録装置1は、4つのワイプ用キャップ部材91を備えている。各ワイプ用キャップ部材91は、直方体形状を有する箱体である。各ワイプ用キャップ部材91は、対応するワイプトレイ122の上方にそれぞれ配置されている。各ワイプ用キャップ部材91は、対応するワイプトレイ122に着脱可能であり、前記着脱時にワイプ部材118の出入り口となる開口部91aが下部に設けられている。
各ワイプ用キャップ部材91における方向D1及び方向D2の寸法は、対応するワイプトレイ122とほぼ同程度である。図9に示すように、装着時には、ワイプ用キャップ部材91の開口部91aの周縁部91bとワイプトレイ122の開口部122cの周縁部(対向部)122dとが対向する。ワイプ用キャップ部材91の周縁部91bには、全周にわたってほぼ同じ厚みの弾性部材93が取り付けられている。この弾性部材93は、前記装着時には周縁部91bと周縁部122dとの間に介在する。これにより、ワイプ用キャップ部材91は、ワイプトレイ122に装着された装着時には、ワイプトレイ122との間に塞がれた密閉空間を形成できる。この密閉空間にはワイプ部材118が収容される(図9)。
弾性部材93の材料としては、弾性を有する合成ゴムや合成樹脂などを用いることができる。具体的には、弾性部材93の材料としては、例えばウレタンゴム、シリコーンゴムなどが挙げられる。
各ワイプ用キャップ部材91は、キャップ支持部材としての複数のばね92に支持されている。本実施形態では、前記複数のばね92は、図7に示すように上下方向に伸縮可能な弾性を有する3つのコイルばねである。各ばね92は、その上端部がヘッド支持枠体18の天板18aに固定されており、下端部がワイプ用キャップ部材91の上面に固定されている。これにより、各ワイプ用キャップ部材91は、複数のばね92に吊り下げられて上下方向に移動可能に支持されている。
ばね92の弾性及び長さは、後述する各モードにおいてワイプ用キャップ部材91がワイプトレイ122に対して着脱されるように調整されている。また、ばね92の弾性及び長さは、装着時(画像形成モード時及びヘッドキャップモード時)においてワイプ用キャップ部材91がワイプトレイ122側に付勢された状態となるように調整されている。ここで、ワイプ用キャップ部材91がワイプトレイ122側に付勢された状態とは、前記装着時において、ばね92の弾性によりばね92がワイプ用キャップ部材91を上向き引っ張る力又は下向きに押す力と、ワイプ用キャップ部材91の重さとを合わせた力が下方に向いていて、ワイプ用キャップ部材91がワイプトレイ122を下方に押している状態のことをいう。
制御部131は、用紙Pに画像を形成する画像形成モード、ヘッド用キャップ部材124によってノズル面22aを覆うヘッドキャップモード、及びワイプ部材118によってノズル面22aを拭き取るワイプモードのモード切り替えが可能である。
制御部131は、昇降機構40を制御して、画像形成モード時及びヘッドキャップモード時には、ワイプ用キャップ部材91をワイプトレイ122に装着し、ワイプモード時には、ワイプトレイ122を画像形成モード時及びヘッドキャップモード時よりも下方に配置してワイプ用キャップ部材91をワイプトレイ122から取り外す。
以下、各モードについて詳細に説明する。
<画像形成モード>
まず、記録装置1の画像形成モードの動作について説明する。
外部に接続されたコンピュータから画像を形成するための命令が出されると、用紙収納部101から搬送ユニット30へと用紙Pが送り出される。そして、用紙Pが、搬送ユニット30の搬送ベルト31で搬送されているときに、記録ヘッド22からインクが吐出され、用紙P上に画像が形成される。そして、画像が形成された用紙Pは、排出部103のローラ8によって搬送され、排出口9から排出トレイ10に排出される。
図10(a)は、図1の状態に対応するものであり、画像形成モードにおける記録ヘッド22、ワイプ用キャップ部材91、ワイプユニット82及びヘッドキャップユニット83との位置関係を示している。この画像形成モードでは、各ワイプユニット82及びキャップユニット83は、対応する記録ヘッド22に隣接する退避位置に退避している。
この画像形成モード時におけるワイプユニット82は、後述するワイプモード時及びヘッドキャップモード時よりも上方に配置されている。図10(a)に示すように、画像形成モードでは、ワイプ用キャップ部材91は、ワイプトレイ122に装着された状態である。このとき、ワイプトレイ122は、ワイプ用キャップ部材91の自重及びばね92の弾性力によって下方に付勢(押圧)されている。これにより、ワイプ用キャップ部材91とワイプトレイ122に囲まれた空間の密閉状態が高められている。
画像形成動作が終了した後に、所定時間の間、画像形成命令が出されなかった場合や、電源スイッチ(図示しない)がオフにされた場合等には、記録装置1は、画像を形成可能な状態から待機状態へと移行する。この待機状態には、後述するワイプモードとヘッドキャップモードとがある。ワイプモードは、ノズル面22aに付着したインクをワイプ部材118によって除去し、記録ヘッド22からの吐出を正常な状態に回復させるためのモードである。ヘッドキャップモードは、電源スイッチがオフにされた場合などのように長時間使用されないときのモードである。
<ワイプモード>
次に、ワイプモードの動作について説明する。以下では、画像形成モードからワイプモードに移行する場合を例にして説明する。すなわち、図1に示す画像形成モードの状態から、昇降機構40の偏心カム41,42が回動するのに伴って、搬送ユニット30及びこれに支持されたメンテナンスユニット50は、画像形成モード高さ(図1)から下方に離隔したワイプモード高さ(図3)へと下方に移動する。図10(b)は、図3の状態に対応するものであり、搬送ユニット30がワイプモード高さに移動したときの記録ヘッド22、ワイプ用キャップ部材91、ワイプユニット82及びヘッドキャップユニット83との位置関係を示している。
図10(b)に示すように、ワイプモードでは、ワイプユニット82がワイプモード高さに配置されると、ワイプ用キャップ部材91は、ワイプトレイ122から取り外された状態となる。すなわち、ばね92の弾性及び長さは、ワイプ用キャップ部材91がワイプモード高さにあるワイプトレイ122にまで下降せず、ワイプトレイ122とは離隔した位置で静止するように調整されている。
次に、図10(b)に示す状態から、メンテナンスユニット50のモータM1を駆動してシャフトS1を一方側に回転(図6における時計回りに回転)させることにより、4つのワイプユニット82を方向D1に移動させる。各ワイプユニット82が対応する記録ヘッド22の下方の所定位置(インク受け位置)に到達した時点でモータM1の駆動を停止する(図10(c))。この図10(c)に示す状態では、各ワイプ部材118は、ノズル面22aとは接触しておらず、ノズル面22aとの間に所定の隙間をあけて配置されている。
この状態で各記録ヘッド22からインクが強制的に吐出され、吐出されたインクは、ワイプトレイ122に収容される。図10(c)に示すように、インク受け位置において、ワイプトレイ122は、3つの記録ヘッド22のノズル面22aを下方からカバーしている。したがって、ワイプトレイ122は、ワイプモードにおいて複数のノズルから下方に吐出されたインクをほぼ漏れなく受け入れることができる。
ついで、偏心カム41,42の先端が上方に持ち上がる方向に偏心カム41,42を回転させて搬送ユニット30及びメンテナンスユニット50をわずかに上昇させ、ワイプ部材118の先端をノズル面22aに接触させる(図10(d))。図10(d)に示す位置がワイプ開始位置となる。
ついで、図11(a)に示すように、各ワイプ部材118によって各記録ヘッド22のノズル面22aをワイピングする。各ワイプ部材118の先端がノズル面22aに当接した状態でワイプ部材118がノズル面22aをワイプしながら水平方向(方向D1)に移動する。これにより、各ノズル面22aが各ワイプ部材118により拭き取られる。
具体的には、メンテナンスユニット50のモータM1を駆動してシャフトS1を一方側に回転(図6における時計回りに回転)させることにより、4つのワイプユニット82を方向D1に移動させる。各ワイプユニット82のワイプ部材118が対応する記録ヘッド22のノズル面22aの端部に到達した時点でモータM1の駆動を停止する(図11(a))。図11(a)に示す位置がワイプ終了位置となる。
ついで、偏心カム41,42の先端が下方に下がる方向に偏心カム41,42を回転させて搬送ユニット30及びメンテナンスユニット50をわずかに下降させ、ワイプ部材118の先端をノズル面22aから離隔させる(図11(b))。
ついで、メンテナンスユニット50のモータM1を駆動してシャフトS1を他方側に回転(図6における反時計回りに回転)させることにより、4つのワイプユニット82を方向D1の反対方向に移動させる。各ワイプユニット82が対応するヘッドキャップユニット83の上方に到達した時点でモータM1の駆動を停止する(図11(c))。
最後に、図11(d)に示す画像形成モードの位置にメンテナンスユニット50を移動させてそこで待機するか、又は画像形成を再開してもよく、また、後述するヘッドキャップモードを実行して記録ヘッド22のノズル面22aをキャップしてもよい。
<ヘッドキャップモード>
次に、ヘッドキャップモードの動作について説明する。以下では、画像形成モードからヘッドキャップモードに移行する場合を例にして説明する。
まず、図12(a)に示す画像形成モードの状態から、偏心カム41,42の先端が下方に下がる方向に偏心カム41,42を回転させて搬送ユニット30及びメンテナンスユニット50を下降させる。メンテナンスユニット50の下降動作を停止する位置は、ワイプモードのときよりも上方である。すなわち、記録ヘッド22の下方に向かってヘッドキャップユニット83のみが方向D1に移動できればよいので、図12(b)に示すように、ヘッドキャップユニット83の上端が記録ヘッド22のノズル面22aよりも下方に到達したあたりで偏心カム41,42の回転を停止する。
図12(b)に示すように、ヘッドキャップモードでは、ワイプ用キャップ部材91は、ワイプトレイ122に装着された状態である。このとき、ワイプトレイ122は、ワイプ用キャップ部材91の自重及びばね92の弾性力によって下方に付勢(押圧)されている。これにより、ワイプ用キャップ部材91とワイプトレイ122に囲まれた空間の密閉状態が高められている。
ついで、メンテナンスユニット50のモータM2を駆動してシャフトS2を一方側に回転(図6における時計回りに回転)させることにより、4つのヘッドキャップユニット83を方向D1に移動させる。各ヘッドキャップユニット83が対応する記録ヘッド22の下方の所定位置に到達した時点でモータM2の駆動を停止する(図12(c))。この図12(c)に示す状態では、各ヘッドキャップユニット83は、ノズル面22aとは接触しておらず、ノズル面22aとの間に所定の隙間をあけて配置されている。
ついで、偏心カム41,42の先端が上方に持ち上がる方向に偏心カム41,42を回転させて搬送ユニット30及びメンテナンスユニット50をわずかに上昇させ、各ヘッド用キャップ部材124のゴム124bをノズル面22aに接触させる(図12(d))。これにより、各記録ヘッド22のノズル面22aは、ヘッド用キャップ部材124により密閉される。
以上説明したように本実施形態では、昇降機構40が制御部131によって制御されることにより、ワイプモード時にはワイプ用キャップ部材91がワイプトレイ122から取り外され、ワイプモード後にはワイプ用キャップ部材91がワイプトレイ122に装着される。この装着時には、ワイプトレイ122とワイプ用キャップ部材91との間に形成される塞がれた空間にワイプ部材118が収容されるので、ワイプモード時にワイプ部材118に付着してワイプ部材118に残存するインクが増粘するのを抑制できる。これにより、記録ヘッド22のノズル面22aに増粘したインクが再付着するのを抑制することができる。
また、本実施形態では、ワイプ用キャップ部材91がばね92によって上下方向に移動可能に支持されているので、ワイプトレイ122をワイプ用キャップ部材91に対して上下方向に相対移動させてワイプ用キャップ部材91に着脱する際の衝撃がばね92の弾性によって緩和される。また、上記のようにばね92の下端部にワイプ用キャップ部材91を吊り下げた簡単な構造であるので、インクジェット記録装置1の構造が複雑化するのを抑制できる。
また、本実施形態では、ワイプモード時にはワイプ用キャップ部材91をワイプトレイ122から取り外してワイプ部材118によりノズル面22aを拭き取る一方で、画像形成モード時及びヘッドキャップモード時にはワイプ用キャップ部材91をワイプトレイ122に装着してワイプ部材118に付着したインクの増粘を抑制することができる。
また、本実施形態では、ばね92の弾性及び長さは、前記装着時にワイプ用キャップ部材91がワイプトレイ122側に付勢された状態となるように調整されているので、ワイプ用キャップ部材91がワイプトレイ122に対して位置ずれしたり、浮いたりするのを抑制することができる。これにより、ワイプトレイ122とワイプ用キャップ部材91との間に形成される前記空間は、塞がれた状態に安定的に維持される。
また、本実施形態では、前記装着時においてワイプ用キャップ部材91の周縁部91bとワイプトレイ122の周縁部122dとの間に介在する弾性部材93をさらに備えているので、ワイプトレイ122とワイプ用キャップ部材91との間に形成される前記空間の密閉性を高めることができる。これにより、ワイプモード時にワイプ部材118に付着するインクの増粘が進行するのをさらに抑制することができる。また、本実施形態では、ワイプ用キャップ部材91を装着した前記装着時にワイプトレイ122がワイプ用キャップ部材91から受ける押圧力、及び前記着脱時にワイプトレイ122がワイプ用キャップ部材91から受ける衝撃力が、弾性部材93の弾性によって緩和される。これにより、前記押圧力や衝撃力に起因してワイプトレイ122と記録ヘッド22との相対位置がずれるのを抑制することができるので、ワイプモードにおける前記相対位置を精度よく維持でき、インクの拭き取り効果を長期にわたって維持することができる。
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態では、4色フルカラーのインクジェット記録装置を例に挙げて説明したが、本発明は、5色以上又は単色のインクを用いたインクジェット記録装置に適用することもできる。
また、前記実施形態では、ワイプユニットとヘッドキャップユニットの両方を備えている場合を例に挙げて説明したが、ワイプユニットのみを備えていてもよい。
また、前記実施形態では、ワイプ部材が長尺で扁平な形状を有する場合を例に挙げて説明したが、ワイプ部材は他の形状であってもよい。
また、前記実施形態では、ワイプユニットを前記記録ヘッドに対して移動させる移動手段を備えている場合を例に挙げて説明したが、前記移動手段は、ワイプユニットを記録ヘッドに対して相対移動させることができるものであればよいので、記録ヘッドをワイプユニットに対して移動させるものであってもよい。
また、前記実施形態では、キャップ支持部材がコイルばねである場合を例に挙げて説明したが、キャップ支持部材は、ワイプ用キャップ部材を上下方向に移動可能に支持できるものであればよく、コイルばね以外のばねであってもよく、ばね以外の部材であってもよい。例えば、キャップ支持部材としては、ワイプ用キャップ部材を上下方向に案内するガイドレールと、キャップ支持部材に連結されたシャフトと、このシャフトを回転させるモータとを備えた機構が挙げられる。この機構では、例えばガイドレールとシャフトに、互いに歯合するギアがそれぞれ形成されており、モータの駆動によってシャフトが回転すると、ガイドレールとともにワイプ用キャップ部材が上下方向に移動する。
また、前記実施形態では、キャップ支持部材を備えている場合を例に挙げて説明したが、ワイプ用キャップ部材を例えばヘッド支持枠体などに直接固定すればキャップ支持部材を省略することもできる。
また、前記実施形態では、弾性部材をワイプ用キャップ部材の開口部の周縁部に設けた場合を例に挙げて説明したが、弾性部材を、ワイプトレイの開口部の周縁部に設けてもよい。また、弾性部材は省略することもできる。
また、前記実施形態では、ワイプ支持部材がワイプトレイである場合を例に挙げて説明したが、ワイプ支持部材はワイプ部材を支持でき、ワイプ用キャップ部材とともに塞がれた空間を形成できるものであればよく、トレイ形状に限定されない。ワイプ支持部材としては、例えば水平方向に延びる平板状の部材や棒状の部材であってもよい。
また、前記実施形態では、ワイプ支持部材をワイプ用キャップ部材に対して相対移動させる移動手段が、搬送ユニットを上下に昇降させる昇降機構である場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。すなわち、前記実施形態のように昇降機構が搬送ユニットの移動手段としての役割とワイプ支持部材の移動手段としての役割とを兼ね備えたものでなくてもよく、それぞれ別個の移動手段を備えていてもよい。
また、前記実施形態において、ワイプ用キャップ部材が上下に移動する際に前後左右に位置ぶれしないように、ワイプ用キャップ部材の前後及び/又は左右をガイドするガイドレールなどが設けられていてもよい。これにより、ワイプ用キャップ部材の上下移動の動作がより安定する。
また、前記実施形態では、ワイプモードにおいて、ノズルからインクを強制的に吐出させる吐出回復動作を実行する場合を例に挙げて説明したが、ワイプモードでは、前記吐出回復動作を省略して、ノズル面の拭き取りのみを行ってもよい。