以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明を具体化した一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
図1を参照して、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置X1(以下「記録装置X1」と略称する。)について説明する。なお、図1では、記録部3による印刷が可能な記録位置に記録装置X1の搬送ユニット5が配置された状態を示している。また、図1において、前記記録位置から下方へ所定距離を隔てた退避位置に配置された搬送ユニット5が破線で示されている。
図1に示すように、記録装置X1は、給紙カセット1、給紙部2、記録部3、搬送ユニット5、昇降機構6、排紙部7、メンテナンスユニット8、デカーラー部14、手差しフィーダ25、及びこれらを収容又は支持する筐体11などを備えている。
記録装置X1は、入力される画像データに基づいて印刷処理を実行するプリンタである。なお、本発明に係るインクジェット記録装置は、プリンタに限らず、複写機、ファクシミリ装置、複合機などにも適用可能である。
給紙カセット1は、筐体11の底部に設けられている。給紙カセット1には、記録装置X1において印刷対象となる用紙Pが収容される。もちろん、印刷対象は、紙に限らずOHPシート又は布などの記録媒体であってもよい。
給紙部2は、ピックアップローラー21、及び搬送ローラー22を備える給送機構である。ピックアップローラー21は、給紙カセット1から用紙Pを1枚ずつ取り出す。搬送ローラー22は、ピックアップローラー21により取り出されて、搬送路23Aに給送された用紙Pを、レジストローラー対24へ向けて搬送する。レジストローラー対24は、所定の搬送タイミング(画像の書き出しタイミング)で用紙Pを記録部3に搬送する。なお、搬送路23Aには、用紙Pを搬送するための搬送ローラー対が適所に設けられている。
手差しフィーダ25は、その上面に用紙を載置するものである。手差しフィーダ25は、図1において筐体11の右側面に設けられている。手差しフィーダ25には、給紙ローラー26が設けられている。給紙ローラー26は、手差しフィーダ25に載置されている用紙を1枚ずつ取り出して、レジストローラー対24へ向けて搬送する。
レジストローラー対24よりも搬送方向D1の下流側には、搬送ユニット5及び記録部3が配置されている。
記録部3は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色に対応する複数のラインヘッド31と、これらを支持するヘッドフレーム35とを有している。ヘッドフレーム35は筐体11に支持されている。本実施形態では、記録部3は、上述した4色に対応して、4つのラインヘッド31を有する。なお、ラインヘッド31の数は、上述した4つに限られず、少なくとも1つ有していればよい。
ラインヘッド31は、所謂ラインヘッド型の記録ヘッドである。即ち、記録装置X1は、所謂ラインヘッド型のインクジェット記録装置である。ラインヘッド31は、用紙Pの搬送方向D1に垂直な幅方向D2(図2参照)に長いものであり、具体的には、ラインヘッド31の幅は、搬送される最大幅の用紙Pの幅に対応する長さを有する。ラインヘッド31それぞれは、用紙Pの搬送方向D1に沿って所定間隔を隔てられて、ヘッドフレーム35に固定されている。ラインヘッド31の下面は、インク吐出面である。前記インク吐出面には、インク吐出用の多数のノズルが設けられている。
記録部3は、搬送ユニット5によって搬送される用紙Pに画像を記録する。記録部3は、各ラインヘッド31の各ノズルからインクを吐出させることにより用紙Pに画像を記録する。ラインヘッド31のインクの吐出方式としては、例えばピエゾ素子を利用してインクを吐出させるピエゾ方式、又は加熱により気泡を発生させてインクを吐出させるサーマル方式などが採用される。
記録装置X1は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色に対応するインクが収容されたインクタンク(不図示)を備えている。前記インクタンクは、不図示のインクチューブによってラインヘッド31それぞれに接続されている。ラインヘッド31には、対応する前記インクタンクから前記インクチューブを通じてインクが補給される。
搬送ユニット5は、記録部3の下方に配置されている。搬送ユニット5は、用紙Pをラインヘッド31の前記インク吐出面に対向させつつ搬送方向D1へ搬送する。具体的に、搬送ユニット5は、用紙Pが載置される用紙搬送ベルト37、用紙搬送ベルト37を張架する張架ローラー38、及びこれらを支持するユニットフレーム39(図2参照)などを備えている。ユニットフレーム39は、筐体11に取り付けられている。なお、用紙搬送ベルト37と前記インク吐出面との間隔は、画像記録時の用紙Pの表面と前記インク吐出面との間隙が例えば1mmとなるように調整される。モーターなどの駆動部から伝達された駆動力によって張架ローラー38が回転されると、用紙搬送ベルト37が用紙Pを搬送方向D1へ搬送可能な方向に回動する。これにより、給紙部2から供給された用紙Pは、搬送ユニット5によって、記録部3を経て排紙部7へ向けて搬送される。なお、搬送ユニット5には、用紙Pを用紙搬送ベルト37に吸着させるべく、用紙搬送ベルト37に形成された多数の貫通孔から吸気を行う吸引ユニット(不図示)なども設けられている。
搬送ユニット5の下方には、昇降機構6が設けられている。昇降機構6は、搬送ユニット5を下方から支持しており、搬送ユニット5をラインヘッド31に対して上下に昇降させる。即ち、昇降機構6は、搬送ユニット5及びラインヘッド31を相対的に上下に移動させることにより、搬送ユニット5及びラインヘッド31を離間及び接近させる。具体的には、昇降機構6は、記録部3による印刷が可能な記録位置(図1において実線で示す位置)と、前記記録位置から下方へ所定距離を隔てた退避位置(図1において破線で示す位置)との間で搬送ユニット5を移動させる。
図2は、搬送ユニット5が前記退避位置に配置され、メンテナンスユニット8が後述の待機位置に配置された状態を示す斜視図である。図2に示すように、前記退避位置は、上下方向において、搬送ユニット5の位置が最も低く、搬送ユニット5がラインヘッド31から最も離間した位置である。搬送ユニット5が前記退避位置にあるとき、搬送ユニット5に残った用紙Pを取り除くことができる。また、搬送ユニット5が前記退避位置にあるときに、メンテナンスユニット8が記録部3の下側に空いたスペースに移動可能となる。ここで、図3は、メンテナンスユニット8が記録部3の下方に定められた後述のメンテナンス位置に配置された状態を示す斜視図である。前記スペースにメンテナンスユニット8が配置された状態で、キャップユニット9によって前記インク吐出面の前記ノズルをカバーするキャッピング動作や、ワイプユニット10によるワイピング動作などが可能になる。
図1に示すように、排紙部7は、記録部3よりも搬送方向D1の下流側に設けられている。排紙部7は、用紙Pが載置される用紙搬送ベルト、前記用紙搬送ベルトを張架する張架ローラー、及びこれらを支持するフレームなどを備えている。記録部3によってインク画像が記録された用紙Pは、排紙部7に搬送される。そして、排紙部7の用紙搬送ベルト上を搬送される間に、用紙Pに付着したインクが乾燥される。
排紙部7よりも搬送方向D1の下流側には、デカーラー部14が設けられている。排紙部7にてインクが乾燥された用紙Pはデカーラー部14に搬送され、用紙Pの幅方向D2に並んだ複数のローラーを用いて用紙Pに生じたカールが矯正される。なお、排紙部7は、用紙Pの搬送中に用紙Pに送風してインクを乾燥させる乾燥ユニット(不図示)なども設けられている。
デカーラー部14を通過した用紙Pは、両面記録を行わない場合は、図1において筐体11の左側面に設けられた排紙トレイ27に至る搬送路23Bを通って、排紙トレイ27に排出される。なお、搬送路23Bには、用紙Pを搬送するための搬送ローラー対が適所に設けられている。
筐体11の上部であって、記録部3の上方には、両面記録を行うための反転搬送路23Cが設けられている。両面記録を行う場合には、第一面への記録が終了した用紙Pは、搬送路23Bへ搬送された後に、搬送路23Bから分岐する反転搬送路23Cに送り込まれる。反転搬送路23Cへ送られた用紙Pは、続いて第二面の記録のために搬送方向が切り替えられて、筐体11の上部を通過して図1の右側に向かって送られる。その後、用紙Pは、搬送路23A、及びレジストローラー対24を経て、第二面を上向きにした状態で再度搬送ユニット5へ搬送される。なお、反転搬送路23Cには、用紙Pを搬送するための搬送ローラー対が適所に設けられている。
メンテナンスユニット8は、非印刷時に、記録部3よりも搬送方向D1の下流側の排紙部7の下方に定められた待機位置(図1及び図2に示される位置)に配置されている。メンテナンスユニット8は、ラインヘッド31の吐出性能を維持又は回復させる機構であり、キャップユニット9と、ワイプユニット10とを有している。
キャップユニット9は、ラインヘッド31の前記ノズルをキャップしてカバーするキャップ部材を有しており、非印刷時にラインヘッド31の前記ノズルをカバーする。これにより、前記ノズル内のインクの乾燥が防止される。キャップユニット9は、筐体11内において、水平方向へ移動可能なように筐体11の内部フレームなどによって。これにより、キャップユニット9は、記録部3よりも搬送方向D1の下流側の排紙部7の下方に定められた待機位置と、記録部3のラインヘッド31の下方に定められたメンテナンス位置との間を移動可能となる。
キャップユニット9は、上述したキャッピング動作が実行される場合に、ラインヘッド31の下方の前記メンテナンス位置に水平移動され、更に上方に移動されてキャッピング位置に配置される。前記キャッピング位置は、ラインヘッド31の前記ノズルを覆うことが可能な位置である。具体的には、キャップユニット9は、通常時(印刷時)は、排紙部7の下方に定められた前記待機位置に配置されている。そして、キャッピング動作を行うための指示が入力されるか、或いは、キャッピング動作を行うための動作条件が満たされると、キャップユニット9が内部キャリッジ60とともにラインヘッド31の下方の前記メンテナンス位置に移動される。その後、キャップユニット9は、ワイヤー駆動機構(不図示)によって上方に移動されて、ラインヘッド31の前記ノズルを覆う。
ワイプユニット10は、ラインヘッド31の前記ノズルから排出されるインクを受けるインクトレイ(不図示)と、ラインヘッド31の前記インク吐出面を清掃する複数のワイパー部材(不図示)と、を有する。ワイプユニット10の前記ワイパー部材が、ラインヘッド31の前記インク吐出面に接触して水平移動することにより、前記ノズルから吐出されたインクを拭き取り、拭き取られたインクを回収する。ワイプユニット10は、内部キャリッジ60に支持されている。
ワイプユニット10は、上述したワイピング動作が実行される場合に、ラインヘッド31の下方の位置に内部キャリッジ60とともに水平移動して、ワイピング動作が可能なワイピング位置に配置される。具体的には、ワイプユニット10は、通常時(印刷時)は、排紙部7の下方の前記待機位置であって、キャップユニット9よりも下方の位置に配置されている。そして、ワイピング動作を行うための指示が入力されるか、或いは、ワイピング動作を行うための動作条件が満たされると、内部キャリッジ60がラインヘッド31の下方の前記メンテナンス位置に移動される。このとき、キャップユニット9は、内部キャリッジ60とともに移動せずに前記待機位置に配置された状態を保持する。
内部キャリッジ60は、ワイプユニット10をラインヘッド31の下方の前記メンテナンス位置に移動させる。その後、ワイプユニット10は、ワイヤー駆動機構(不図示)によって上方に移動されて、前記ワイプ部材が前記インク吐出面に接触する。この状態で、前記ワイプ部材が水平移動されて、前記インク吐出面がワイピングされる。なお、ワイピング動作が終了すると、ワイプユニット10は、前記インク吐出面から下方へ離れ、内部キャリッジ60は、ワイプユニット10とともに、元の位置、つまり、前記待機位置に戻される。
内部キャリッジ60は、図1において筐体11の左側面に形成された開口(不図示)から筐体11の内部に挿抜可能に構成されている。前記開口は、カバー或いは扉などによって閉塞されており、筐体11内に内部キャリッジ60を取り付ける場合や、内部キャリッジ60を取り外す場合に開放される。
内部キャリッジ60は、ワイプユニット10を支持するものであり、筐体11の内部で予め定められた移動方向D10へ水平にスライド移動可能なように筐体11に支持されている。内部キャリッジ60において、ワイプユニット10は底側に載置されており、前記ワイヤー駆動機構(不図示)によって必要に応じて上下方向へ昇降される。前記移動方向D10は、図1における左右方向に一致する方向であり、鉛直方向に交差する方向(本発明の第1方向)の一例である。
図4は、内部キャリッジ60のスライド支持構造を模式的に示す斜視図である。図4に示すように、筐体11は、幅方向D2に互いに対向する一対の板状の内部フレーム11Aを有している。この内部フレーム11Aの内側面それぞれに、前記移動方向D10と同方向へ延在する支持レール12が取り付けられている。つまり、筐体11には、前記移動方向D10に沿って水平に延びる一対の支持レール12が設けられている。
内部キャリッジ60は、例えば板金で構成されており、ワイプユニット10を載置する底板61と、その底板61において幅方向D2の両端それぞれから情報へ立設するサイドプレート62と、を有している。サイドプレート62それぞれの上端部には、支持レール12に支持される一対のガイド片64が設けられている。つまり、内部キャリッジ60の上部における幅方向D2の両端それぞれに、ガイド片64が設けられている。各ガイド片64は、サイドプレート62の上端部が外方向へ鍔状に屈曲された形状に形成されている。
また、内部キャリッジ60には、前記移動方向D10に沿って水平に延在するラックギヤ65が設けられている。ラックギヤ65は、例えば樹脂部材で形成されている。ラックギヤ65は、一対のガイド片64それぞれの上面64A(図7参照)に取り付けられている。ラックギヤ65には、後述するピニオンギヤ43が噛み合わされる。ピニオンギヤ43に伝達された回転力がラックギヤ65に伝達すると、その回転力が内部キャリッジ60を前記移動方向D10へ移動させる力として作用する。
図5は、内部キャリッジ60の駆動装置40を示す斜視図である。図6は、駆動装置40のギヤ伝達機構42を示す斜視図である。
図5及び図6に示すように、駆動装置40は、モーター41と、ギヤ伝達機構42と、2つのピニオンギヤ43と、回転軸44と、を有する。
回転軸44は、筐体11に回転可能に支持されている。回転軸44は、前記移動方向D10に直交する幅方向D2に延出しており、筐体11の内部フレーム11A(図4参照)それぞれに固定されたブラケット46(46A,46B)に回転可能に支持されている。ブラケット46には、ブラケット46を貫通する軸孔が形成されており、その軸孔に回転軸44の両端部が挿入されている。一方のブラケット46Aは、一方の支持レール12にビスなどによって固定されている。ブラケット46Aは、モーター41及びギヤ伝達機構42を支持するとともに収容するケースを兼ねている。また、他方のブラケット46Bは、他方の支持レール12に一体に形成されている。なお、図6では、ブラケット46Aの図示が省略されている。
回転軸44には、ピニオンギヤ43(43A,43B)が固定されている。ピニオンギヤ43は、回転軸44の両端部それぞれに取り付けられており、対応するラックギヤ65に噛合している。回転軸44の両端部は、その断面がDカット形状に形成されている。そして、ピニオンギヤ43の中心に形成された軸孔は、Dカット形状の回転軸44が挿入可能なように、Dカット形状に形成されている。ピニオンギヤ43は、回転軸44を軸方向へずれないように、固定ピンによって回転軸44に固定されている。各ピニオンギヤ43は、対応するラックギヤ65と噛合することにより、ピニオンギヤ43に入力された回転力を前記移動方向D10の駆動力(直線方向の駆動力)に変換して、内部キャリッジ60に伝達する。
図6に示すように、一方のピニオンギヤ43Aよりも回転軸44の軸方向の外側には、モーター41及びギヤ伝達機構42が設けられている。モーター41は、内部キャリッジ60に前記移動方向D10に移動させる駆動力を供給する。モーター41の出力軸411にギヤ歯が形成されている。出力軸411からピニオンギヤ43Aに至る伝達経路にギヤ伝達機構42が設けられている。
ギヤ伝達機構42は、第1増速ギヤ421、第2増速ギヤ422、第1アイドルギヤ423、第2アイドルギヤ424を有する。これらのギヤ421~423は、樹脂部材によって形成されている。4つの各ギヤ421~424のうち、ギヤ421~423がブラケット46Aに回転可能に支持されている。
第1増速ギヤ421は、大径ギヤ421A及び小径ギヤ421Bが二段に配置されたものであり、大径ギヤ421Aが出力軸411に噛合している。
第2増速ギヤ422は、大径ギヤ422A及び小径ギヤ422Bが二段に配置されたものであり、大径ギヤ422Aが第1増速ギヤ421の大径ギヤ421Aに噛合している。
第1アイドルギヤ423は、第2増速ギヤ422の小径ギヤ422Bに噛合しており、また、第2アイドルギヤ424にも噛合している。
第2アイドルギヤ424は、ピニオンギヤ43Aを貫通して軸方向の外側へ突出する回転軸44の端部に連結されている。第2アイドルギヤ424の軸孔も、カット形状の回転軸44が挿入可能なように、Dカット形状に形成されている。第2アイドルギヤ424は、回転軸44に対して固定ピンなどによって固定されておらず、そのため、回転軸44を軸方向へスライド移動可能である。
図6に示すように、回転軸44の端部には、操作部48が取り付けられている。操作部48は、第2アイドルギヤ424を貫通して軸方向の外側へ突出した部分に取り付けられている。操作部48は、各ピニオンギヤ43に設けられた後述のフランジ431を軸方向へ移動させる駆動力を付与するためのものであり、作業者によって操作される部分である。作業者は、操作部48を回転軸44の軸方向に沿って予め定められた押し込み方向D20(図5及び図6参照)へ押し付けたり、その逆方向へ引っ張ったりすることにより、回転軸44とともにピニオンギヤ43及びフランジ431を軸方向へ移動させる。
ピニオンギヤ43Aには、円形状のフランジ431が一体に形成されている。フランジ431は、ピニオンギヤ43Aの外周縁に設けられており、具体的には、ピニオンギヤ43Aにおいて押し込み方向D20側の側面の外周縁に設けられている。フランジ431の外径は、ピニオンギヤ43Aの外径よりも大きく、側面視で、ピニオンギヤ43Aの外周縁よりも径方向外側へ突出している。このフランジ431は、後述する第1ガイド溝71(本発明の第1ガイド部の一例)に挿入される。なお、ピニオンギヤ43Bにも、押し込み方向D20側の側面の外周縁にフランジ431が設けられている。
ところで、保守点検などのために、メンテナンスユニット8が筐体11から取り外される場合がある。この場合、作業者は、メンテナンスユニット8を筐体11の開口から引き出して、筐体11からメンテナンスユニット8を取り外す。しかしながら、メンテナンスユニット8はワイプユニット10を備えており、重量があるため、内部キャリッジ60を前記開口側へ引き出してスライドさせる際に、不用意に支持レール12による支持が外れ、メンテナンスユニット8が落下するおそれがある。また、メンテナンスユニット8を筐体11に取り付ける際に、一方の支持レール12における支持位置と他方の支持レール12における支持位置とが前記移動方向D10にずれた状態でメンテナンスユニット8が装着される場合がある。この場合、前記待機位置から前記メンテナンス位置への移動がスムーズに行われなくなる。また、メンテナンスユニット8を前記メンテナンス位置に正確に配置させることができず、キャッピング不良やワイピング不良が生じる。また、内部キャリッジ60にかかる負荷によって、内部キャリッジ60が変形するおそれがある。
上述した問題を解決するために、本実施形態では、フランジ431の支持構造を後述するように構成することにより、メンテナンスユニット8の引出時に不用意に抜け落ちることを防止するとともに、メンテナンスユニット8の装着時における位置決め精度を向上させている。
図7は、内部キャリッジ60のガイド片64に形成されたラックギヤ65の周辺の構造を示す部分拡大図である。図7に示すラックギヤ65は、ピニオンギヤ43Aが噛合される部分である。
図7に示すように、ピニオンギヤ43Aに対応する一方のガイド片64には、第1ガイド溝71と、第2ガイド溝72(本発明の第2ガイド部の一例)と、終端ガイド面73(本発明の第3ガイド部の一例)と、ストッパー壁74(本発明の規制部の一例)と、が形成されている。第1ガイド溝71、第2ガイド溝72、終端ガイド面73、及びストッパー壁74は、いずれも、ガイド片64の上面64Aに形成されている。
第1ガイド溝71は、上述したように、フランジ431が挿入される部分である。第1ガイド溝71は、ラックギヤ65よりも前記押し込み方向D20側に形成されており、ラックギヤ65に並ぶように前記移動方向D10に延在している。第1ガイド溝71は、前記移動方向D10に渡って同幅に形成された長溝である。第1ガイド溝71の長さは、ラックギヤ65よりも少し長く形成されており、その深さは、概ね、フランジ431の突出長さと同程度である。
対応するラックギヤ65にピニオンギヤ43Aが噛合した状態で、第1ガイド溝71にフランジ431が挿入される。これにより、フランジ431が軸方向へ移動することが規制され、更に、ラックギヤ65からピニオンギヤ43Aが脱輪することが防止される。また、ピニオンギヤ43Aに回転駆動力が入力されると、第1ガイド溝71にフランジ431が挿通された状態でピニオンギヤ43Aがラックギヤ65上を転動する。このため、内部キャリッジ60が前記移動方向D10からずれることなく、前記移動方向D10へ真っ直ぐに案内される。
ストッパー壁74は、内部キャリッジ60が筐体11から引き出される引出方向D11へ移動することを所定の特定位置で規制する。ストッパー壁74は、例えば、ガイド片64における第1ガイド溝71の終端を構成する壁である。前記特定位置は、図8に示されるように、内部キャリッジ60が引出方向D11へ引き出された場合に、フランジ431が第1ガイド溝71のストッパー壁74に当接したときの内部キャリッジ60の位置である。
第2ガイド溝72は、第1ガイド溝71の内部側の側壁711(溝側壁)に形成されている。第2ガイド溝72は、側壁711を軸方向へ切り欠いた凹状に形成されている。第2ガイド溝72は、後述する第1位置と第2位置との間でフランジ431を移動可能に案内する。前記第1位置は、図8に示す位置であり、前記特定位置に内部キャリッジ60が配置された状態で、フランジ431が第1ガイド溝に挿入された位置である。また、前記第2位置は、図9に示す位置であり、前記第1位置から前記押し込み方向D20側へ隔てた位置である。この第2位置は、第2ガイド溝72を通り過ぎて、後述の終端ガイド面73上にフランジ431が配置される位置である。
本実施形態では、図7に示すように、第2ガイド溝72は、第1ガイド溝71の側壁711の上端から第1ガイド溝71の溝底面まで凹んだ凹部である。第2ガイド溝72の溝底面は、フランジ431の外周の円弧形状に対応する曲率を有する円弧面に形成されており、具体的には、フランジ431の外周の円弧の曲率よりも若干小さい曲率に形成されている。つまり、第2ガイド溝72の溝底面の円弧面は、フランジ431の外周の円弧形状よりも曲がり具合が緩くなっている。このため、前記第1位置に配置されたフランジ431は、第2ガイド溝72を通って前記第2位置へ向けて円滑に移動することができる。また、前記第2位置に配置されたフランジ431は、第2ガイド溝72を通って前記第1位置へ向けて円滑に移動することができる。
終端ガイド面73は、第2ガイド溝72と連続して形成されており、第2ガイド溝72に対して前記押し込み方向D20側に隣接して設けられている。終端ガイド面73は、前記第2位置にフランジ431が配置された状態で、前記特定位置から前記引出方向D11へ内部キャリッジ60を移動可能に案内する。具体的には、終端ガイド面73は、ガイド片64の終端部の内部側の縁部において、上面64Aから下方へ落ち込んだ平坦な段差面である。終端ガイド面73において引出方向D11の端部には、上面64Aに至る傾斜面731が形成されている。終端ガイド面73は、側面視で、第2ガイド溝72からガイド片64の終端に至って形成されている。このため、フランジ431が前記第2位置に配置された状態では、ストッパー壁74による規制は効かない。このため、前記特定位置にある内部キャリッジ60は、前記引出方向D11へ更に引き出されることにより、筐体11から内部キャリッジ60を取り外すことができる。
なお、他方のピニオンギヤ43Bに対応するガイド片64にも、第1ガイド溝71、第2ガイド溝72、終端ガイド面73、及びストッパー壁74が形成されている。これらは、ピニオンギヤ43Aに対応するガイド片64に形成されたものと同じ構成であるため、説明を省略する。
上述したように、本実施形態では、ガイド片64の上面64Aに、挿入されたフランジ431を幅方向D2に規制するとともに内部キャリッジ60を前記移動方向D10に案内する第1ガイド溝71と、前記特定位置でフランジ431に当接して内部キャリッジ60が筐体11から引出方向D11へ移動することを規制するストッパー壁74と、前記特定位置に内部キャリッジ60が配置された状態で、フランジ431を前記第1位置と前記第2位置との間で移動可能に案内する第2ガイド溝72と、前記第2位置にフランジ431が配置された状態で、前記特定位置から引出方向D11へ内部キャリッジ60を移動可能に案内する終端ガイド面73と、が形成されている。そのため、筐体11に内部キャリッジ60が装着され、ピニオンギヤ43がラックギヤ65に噛合した状態では、筐体11から内部キャリッジ60が引出方向D11へ引き出されたとしても、前記特定位置でストッパー壁74によって引出方向D11への移動が規制され、それ以上引き出すことができない。したがって、作業者が引出方向D11へ内部キャリッジ60を引っ張り出した場合に、不用意に支持レール12による支持が外れて内部キャリッジ60が落下することはない。
また、前記特定位置でストッパー壁74によって引出方向D11への移動が規制された状態で、作業者が操作部48を前記押し込み方向D20へ押し込むように操作すると、その押し込み力によって、回転軸44が前記押し込み方向D20へ移動し、各ピニオンギヤ43及びフランジ431も同方向へ移動しようとする。この場合、第2ガイド溝72が設けられているため、第1ガイド溝71によって軸方向へのフランジ431の移動が規制されず、同方向への移動が許容される。その後、フランジ431が前記第2位置に配置されると、ストッパー壁74の規制が無くなるため、内部キャリッジ60が前記引出方向D11へ更に引き出されることにより、筐体11から内部キャリッジ60を取り外すことができる。このように、内部キャリッジ60を取り外す過程に、その取り外し作業の前準備として、操作部48を操作する作業を加えることにより、作業者は、内部キャリッジ60が取り外される際に落下に対して十分に注意することができ、その結果、不用意な落下を防止することができる。
また、内部キャリッジ60を筐体11の内部に装着する場合、操作部48は押し込まれた状態で、内部キャリッジ60が筐体11の内部に挿入される。このとき、各ピニオンギヤ43のフランジ431は、終端ガイド面73に案内されて、傾斜面731側へ転動する。そして、傾斜面731にフランジ431が当接するとそれ以上の転動が規制される。このとき、フランジ431は前記第2位置に配置される。つまり、各ピニオンギヤ43のフランジ431が傾斜面731に当接することにより、各ピニオンギヤ43のフランジ431を前記第2位置に正確に位置決めすることができる。この状態で、作業者が操作部48を前記押し込み方向D20とは反対の方向へ引っ張ると、その引っ張り力によって、回転軸44が前記押し込み方向D20とは反対の方向へ移動し、各ピニオンギヤ43及びフランジ431も同方向へ移動しようとする。この場合、第2ガイド溝72が設けられているため、前記第2位置から第2ガイド溝72を通って第1ガイド溝71にフランジ431が移動することができる。また、第1ガイド溝71にフランジ431が移動するとともに、ピニオンギヤ43の歯がラックギヤ65の歯に噛合する。その結果、幅方向D2それぞれに離間した各ラックギヤ65に対するピニオンギヤ43の噛み合わせに対して移動方向D10のズレが生じない。これにより、噛み合わせのズレに起因する内部キャリッジ60の問題、つまり、内部キャリッジ60の移動不良や、内部キャリッジ60の変形、キャッピング不良やワイピング不良が防止される。
なお、上述の実施形態では、支持レール12とガイド片64とによって内部キャリッジ60が水平方向へ移動可能に支持されたレール支持構造を例示したが、内部キャリッジ60の支持構造はこの構成に限られない。例えば、内部キャリッジ60の底板61でワイプユニット10の底部をスライド可能に支持する構成であってもよい。
また、上述の実施形態では、ガイド片64の上面64Aにラックギヤ65等を設けた構成を例示したが、本発明は、ラックギヤ65が、内部キャリッジ60のサイドプレート62の外側面に設けられた構成、底板61の下面に設けられた構成、などを適用することも可能である。つまり、ラックギヤ65の取付位置は限定されず、内部キャリッジ60を水平方向へ移動可能な駆動力を内部キャリッジ60に伝達することができる位置に設けられていればよい。
また、上述の実施形態では、内部キャリッジ60が水平方向へ移動可能に支持された構成を例示したが、内部キャリッジ60の移動方向は、水平方向に限られず、水平方向に対して傾斜した方向であってもよい。