以下、本発明の一実施形態にかかるインクジェット記録装置について図面を参照しながら詳細に説明する。
<インクジェット記録装置の全体構造>
図1に示すインクジェット記録装置1は、外部のコンピュータから受信した画像情報に基づいて記録媒体の一例である用紙Pに画像を形成可能なインクジェットプリンタである。この記録装置1は、ケーシング2内に、記録部20、用紙収納部101、用紙搬送路5、搬送ユニット30、昇降機構40、排出部103、メンテナンスユニット50、及びこれらを制御する制御部131を備えている。なお、以下の説明において、用紙Pが搬送ユニット30上を搬送されるときの搬送方向を方向D1とし、これに垂直な方向(用紙Pの幅方向)を方向D2とする。
記録部20は、図2に示すように、方向D1の上流側から順にブラック、シアン、マゼンダ及びイエローの各色に対応した4組(12個)のインクジェットヘッド22(22K、22C、22M、22Y)を備えている。各色のインクジェットヘッド22に対応して、図略の4台のインクタンクが備えられている。各色のインクは、このインクタンクから各インクジェットヘッド22に補給される。なお、以下の説明において、特に限定する必要がある場合を除き、「K」「C」「M」「Y」の識別記号は省略する。
12個のインクジェットヘッド22は、後述する搬送ユニット30の搬送ベルト31の上方に並べて配置されている。各インクジェットヘッド22は、図略のヘッド支持部材により支持されている。各インクジェットヘッド22は、その下面にノズル面22aを有している(図8(b))。ノズル面22aには、インクを吐出する複数のノズルが設けられている。ノズル面22aは、用紙Pの搬送方向に直交する方向に長い矩形状に形成されている。各インクジェットヘッド22は、ノズル面22aから用紙Pの紙面に略垂直な方向にインクを吐出して画像を形成することが可能なラインタイプのヘッドである。
インクジェットヘッド22のインクの吐出方式としては、例えばピエゾ素子を用いてインクを押し出すピエゾ方式や、発熱体によって気泡を発生させ、圧力をかけてインクを吐出するサーマルインクジェット方式など、各種方式を適用することができる。
用紙収納部101は、用紙Pを収納可能であり、記録部20の下部に配置されている。用紙収納部101は、用紙が収納される給紙カセット3と、用紙搬送路5に用紙を供給するための用紙供給ローラ4とを有している。
用紙搬送路5は、この用紙搬送路5の上流側に配置されたローラ102と用紙を一旦停止させて斜め補正等を行った後、用紙を搬送ユニット30へ送り出すレジストローラ6とを有している。
搬送ユニット30は、記録部20の下方に配置されている。この搬送ユニット30は、用紙Pを記録部20に供給し、この記録部20により表面に画像が形成された用紙Pを排出部103に搬送する。搬送ユニット30は、フレーム36、ローラ32,33,34、搬送ベルト31、及び用紙保持機構35を有している。
ローラ32,33,34は、方向D1に所定の間隔を隔ててフレーム36に回転自在に支持されている。
搬送ベルト31は、無端ベルトになっており、ローラ32,33,34に架け渡されている。搬送ベルト31は、ローラ33とローラ32の間に位置する部分の上面が用紙Pの搬送面47として機能する。この搬送面47は、複数のインクジェットヘッド22のノズル面22aに対向している。
用紙保持機構35は、搬送ベルト31の搬送面47の下方において搬送面47に沿って記録部20に対向する位置に配置されている。この用紙保持機構35は、そのケースの上面に多数の空気吸引用の孔(図示せず)を有し、これらの孔を通じて外部の空気をケースの内部に吸引することができる。また、搬送ベルト31にも、多数の空気吸引用の孔(図示せず)が設けられている。したがって、用紙保持機構35により空気が吸引されると、用紙Pが搬送ベルト31の上面に吸着されるので、用紙Pを安定して搬送することができる。
昇降機構40は、搬送ユニット30の下方に配置された一対の偏心カム41,42を有している。偏心カム41,42は、軸部41b,42bが図略の支持部材にそれぞれ支持されており、これらの軸部41b,42bを中心に図略の駆動モータによってそれぞれ回動する。偏心カム41,42は、複数のベアリング41a,42aをそれぞれ有しており、これらのベアリング41a,42aが搬送ユニット30のフレーム36に当接した状態で搬送ユニット30を支持している。搬送ユニット30は、偏心カム41,42が軸部41b,42bを中心に回動することにより上下方向に移動する。
図1は、偏心カム41,42がほぼ鉛直方向に起立して搬送ユニット30が持ち上げられた状態を示している。この状態から偏心カム41,42が互いに内側に向いて回転すると、図3に示すように搬送ユニット30が下降する。
記録部20により用紙Pに画像が形成される画像形成モードにおいては、搬送ユニット30は、昇降機構40により持ち上げられて、図1に示すようにインクジェットヘッド22のノズル面22aに近接した位置に配置される。この近接位置は、ノズル面22aと用紙Pとの間が印刷に適した間隔となるように調整されている。
一方、後述する吐出回復モード、キャップモードなどにおいては、搬送ユニット30は、昇降機構40により下降して、図3に示すようにインクジェットヘッド22と離隔した位置に移動する。なお、搬送ユニット30の高さは、偏心カム41,42の回転角度を調節することによって適宜調節することができる。
排出部103は、乾燥装置7、排出ローラ8、排出口9、及び排出トレイ10を備えている。乾燥装置7は、搬送ユニット30の方向D1の下流側に配置されている。記録部20において用紙Pに吐出されたインクは乾燥装置7によって乾燥する。インクが乾燥した用紙Pは、排出ローラ8によって排出口9に送られ、ケーシング2の側面から外部に延設された排出トレイ10に排出される。
制御部131は、中央処理装置(CPU)、プログラムなどのデータが記憶されているメモリ(ROM)、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するためのメモリ(RAM)などで構成されている。この制御部131は、昇降機構40、後述する第1移動機構、第2移動機構などの動作を制御する。
<メンテナンスユニット>
次に、メンテナンスユニット50について説明する。
図4〜7に示すように、メンテナンスユニット50は、枠体81、この枠体81に支持された4つのワイプユニット82(82K,82C,82M,82Y)、枠体81に支持された4つのキャップユニット83(83K,83C,83M,83Y)、ガイドレール111〜114、モータM1,M2、及びシャフトS1,S2を備えている。
ガイドレール111,113、モータM1、及びシャフトS1は、ワイプユニット82をインクジェットヘッド22に対して移動させる第1移動機構(第1移動手段)として機能する。ガイドレール112,114、モータM2、及びシャフトS2は、キャップユニット83をインクジェットヘッド22に対して移動させる第2移動機構(第2移動手段)として機能する。
各ワイプユニット82及び各キャップユニット83は、平面視したときに、方向D1の寸法が短く、これに垂直な方向D2の寸法が長い長尺の長方形状を有している。また、各ワイプユニット82及び各キャップユニット83は、図7に示すように方向D1の上流側からみたときに、厚みが小さく方向D2に長い扁平な形状を有している。ワイプユニット及びキャップユニット83の詳細については後述する。
図4に示すように、枠体81は、長尺状の4つの枠部材81a〜81dが平面視で長方形状に組み合わされたものであり、これらの枠部材81a〜81dにより囲まれた空間にワイプユニット82及びキャップユニット83が配置されている。枠体81内の前記空間において、各ワイプユニット82はキャップユニット83の上方にそれぞれ配置されている。
図4〜図6に示すように、4つの枠部材81a〜81dのうち、方向D2の一方側に配置され、方向D1に延びる枠部材81cは、方向D1に延びる4つの長孔116を有している。4つの長孔116のうちの2つは、枠部材81cの上部に設けられており、これらの長孔116の下部に残りの2つが設けられている。上部に設けられた2つの長孔116は、ガイドレール111に沿って(ワイプユニット82が配置されている位置に沿って)形成されている。下部に設けられた2つの長孔116は、ガイドレール112に沿って(キャップユニット83が配置されている位置に沿って)形成されている。
また、方向D2の他方側に配置され、方向D1に延びる枠部材81dは、枠部材81cの4つの長孔116に対向する位置に同形状の4つの長孔116を有している。
ガイドレール111,112は、枠部材81cの内側にこの枠部材81cと略平行にそれぞれ配置されている。ガイドレール112は、ガイドレール111の下方に配置されている。一方、ガイドレール113,114は、枠部材81dの内側にこの枠部材81dと略平行にそれぞれ配置されている。ガイドレール114は、ガイドレール113の下方に配置されている。
図5に示すように、ガイドレール111及びガイドレール113は、各ワイプユニット82の端部をそれぞれ支持している。各ワイプユニット82の端部は、ねじ117によりガイドレール111,113に固定されている。隣り合うワイプユニット82同士の間隔は、これらの間にインクジェットヘッド22が配置可能な大きさに調整されている。
同様に、ガイドレール112及びガイドレール114は、各キャップユニット83の端部をそれぞれ支持している。各キャップユニット83の端部は、ねじ117によりガイドレール112,114に固定されている。隣り合うキャップユニット83同士の間隔は、これらの間にインクジェットヘッド22が配置可能な大きさに調整されている。
ガイドレール111は、枠部材81c側に突出する2つの突起部115を有している。一方の突起部115は、方向D1の上流側の位置(ワイプユニット82Kとワイプユニット82Cとの間の位置)に設けられ、他方の突起部115は、方向D1の下流側の位置(ワイプユニット82Mとワイプユニット82Yとの間の位置)に設けられている。同様に、ガイドレール112は、枠部材81c側に突出する2つの突起部115を有している。一方の突起部115は、キャップユニット83Kとキャップユニット83Cとの間の位置に設けられ、他方の突起部115は、キャップユニット83Mとキャップユニット83Yとの間の位置に設けられている。また、ガイドレール113,114は、ガイドレール111,112の突起部115に対して方向D2に対向する位置に同様の突起部115をそれぞれ有している。
ガイドレール111の2つの突起部115は、枠部材81cの上側の2つの長孔116にそれぞれ係合しており、ガイドレール113の2つの突起部115は、枠部材81dの上側の2つの長孔116にそれぞれ係合している。これらの突起部115は、各長孔116の長手方向の開口範囲内において方向D1に沿って移動可能である。
同様に、ガイドレール112の2つの突起部115は、枠部材81cの下側の2つの長孔116にそれぞれ係合しており、ガイドレール114の2つの突起部115は、枠部材81dの下側の2つの長孔116にそれぞれ係合している。これらの突起部115は、各長孔116の長手方向の開口範囲内において方向D1に沿って移動可能である。
このようにガイドレール111〜114は、突起部115と長孔116との係合によって枠体81に対して方向D1に沿ってスライド移動可能に支持されている。したがって、4つのワイプユニット82は、ガイドレール111及びガイドレール113のスライド移動に伴って方向D1にスライド移動し、4つのキャップユニット83は、ガイドレール112及びガイドレール114のスライド移動に伴って方向D1にスライド移動する。
図4及び図6に示すように、シャフトS1は、枠部材81cの方向D1側の端部と枠部材81dの方向D1側の端部に回転自在に支持されている。また、シャフトS2は、シャフトS1の下方に配置されており、枠部材81cの方向D1側の端部と枠部材81dの方向D1側の端部に回転自在に支持されている。
シャフトS1は、枠部材81d側の端部に歯車状の駆動ギアG1を有している。この駆動ギアG1は、ガイドレール113の方向D1側の端部にライン状に設けられたラックギアG2に歯合している。また、シャフトS2は、枠部材81d側の端部に歯車状の駆動ギアG3を有している。この駆動ギアG3は、ガイドレール114の方向D1側の端部にライン状に設けられたラックギアG4に歯合している。
なお、図示を省略しているが、シャフトS1は、枠部材81c側の端部にもギアG1を有しており、このギアG1は、ガイドレール111の方向D1側の端部に設けられたギアG2に歯合している。同様に図示を省略しているが、シャフトS2は、枠部材81c側の端部にギアG3を有しており、このギアG3は、ガイドレール112の方向D1側の端部に設けられたギアG4に歯合している。
図6に示すように、モータM1は、枠部材81dにおける方向D1側の端部の外面に支持部材119を介して固定されている。モータM2は、モータM1の下方に配置され、枠部材81dにおける方向D1側の端部の外面に支持部材120を介して固定されている。モータM1の図略の回転軸は、シャフトS1の端部に固定されており、モータM2の図略の回転軸は、シャフトS2の端部に固定されている。
モータM1が駆動すると、シャフトS1がギアG1とともに回転するので、ギアG2を有するガイドレール111,113がワイプユニット82とともに方向D1又はその反対方向に移動する。移動方向は、モータM1の回転方向を反転させることにより変えることができる。同様に、モータM2の回転によりガイドレール112,114がキャップユニット83とともに方向D1又はその反対方向に移動する。
図8(a)は、画像形成モードにおけるインクジェットヘッド22、ワイプユニット82及びキャップユニット83の位置関係を示している。この画像形成モードにおいては、ワイプユニット82及びキャップユニット83は、画像形成の邪魔にならないように、対応するインクジェットヘッド22の横の位置、すなわち方向D1の反対方向側の退避位置に退避している。
図8(b)に示すように、各ワイプユニット82は、ワイプトレイ122、ワイプ部材118、支持部材121、及びインク案内片125を有している。
各ワイプトレイ122は、長方形状の底板部122aとこの底板部122aの周縁から上方に延設された側壁部122bとを有し、上部に開口部122cを有している。各開口部122cは、後述する吐出回復モードにおいて、ワイプユニット82による拭き取り動作中、ノズル面22aのノズル形成領域Nをその範囲内に含む開口領域を有している。ここで、ノズル形成領域Nとは、ノズル面22aのうち、複数のノズルが形成(配列)されている領域をいう。言い換えると、ノズル形成領域Nは、ノズル面22aに配列された複数のノズルのうち外側(周囲)に位置する複数のノズルに沿って引いた線で囲まれる領域をいう。
各ワイプユニット82は、支持部材121によりワイプトレイ122に支持された3つのワイプ部材118を有している。各ワイプ部材118は、各組の3つのインクジェットヘッド22にそれぞれ対応する位置に設けられている。図4及び図8(b)に示すように、各ワイプ部材118は、方向D2に長く、下半分が支持部材121に接触し、上半分が支持部材121よりも高さ方向に突出した長尺で扁平な形状を有する弾性部材である。
3つのワイプ部材118のうち2つは、方向D1側に配置され、残り1つはこれらのワイプ部材118よりも方向D1の反対側に配置されている。方向D1側の2つは、所定の間隔をあけてワイプユニット82の長手方向の両側に配置され、残り1つは、前記2つのワイプ部材118のほぼ中間に配置されている。
各ワイプ部材118にワイピングされたインクは、ワイプ部材118を伝って下方に移動しインク案内片125を経由してワイプトレイ122に収容される。収容されたインクは、例えば図略のポンプなどにより吸引されてインク回収口126を通じて回収される。
図8(b)に示すように、各キャップユニット83は、キャップトレイ123、及びキャップ部材124を有している。各キャップユニット83は、3つのキャップ部材124を有しており、これらが各組の3つのインクジェットヘッド22のノズル面22aをそれぞれ塞ぐ。
各キャップトレイ123は、ワイプトレイ122の底板部122aとほぼ同じ大きさを有する底板部123aと、この底板部123aの周縁から上方に延設された側壁部123bとを有している。
各キャップ部材124は、対応するインクジェットヘッド22の下端部の形状に適合するように形成されている。すなわち、各キャップ部材124は、インクジェットヘッド22のノズル形成領域Nをカバーできる大きさの開口部124aを有し、この開口部124aの周縁に沿って配設された弾性部材124bを有している。
また、3つのキャップ部材124は、これらの間をつなぐ天板部128と、この天板部128の周縁から下方に延びる延設部129とともに蓋部を構成している。この蓋部は、キャップトレイ123の上部の開口を塞いでいる。
<画像形成モード>
次に、記録装置1の画像形成モードの動作について説明する。
まず、外部に接続されたコンピュータから画像を形成するための命令が出されると、用紙収納部101から搬送ユニット30へと用紙が送り出される。そして、用紙が、搬送ユニット30の搬送ベルト31で搬送されているときに、インクジェットヘッド22からインクが吐出され、用紙上に画像が形成される。そして、画像が形成された用紙は、排出部103のローラ8によって搬送され、排出口9から排出トレイ10に排出される。
<吐出回復モード>
次に、吐出回復モードの動作について説明する。
画像形成動作が終了した後に、所定時間の間、画像形成命令が出されなかった場合や、電源スイッチ(図示しない)がオフにされた場合等には、記録装置1は、画像を形成可能な状態から待機状態へと移行する。すなわち、昇降機構40の偏心カム41,42が回動して図1の状態から図3の状態になるのに伴って搬送ユニット30は、画像形成位置(近接位置)から離隔した離隔位置へと下方に移動する。メンテナンスユニット50は、搬送ユニット30に支持されているので、搬送ユニット30とともに下方に移動する(図3の状態)。
図9(a)は、図1の状態に対応するものであり、画像形成モードにおけるインクジェットヘッド22とワイプユニット82及びキャップユニット83との位置関係を示している。図9(b)は、図3の状態に対応するものであり、搬送ユニット30が前記離隔位置に移動したときのインクジェットヘッド22とワイプユニット82及びキャップユニット83との位置関係を示している。
図9(b)に示す状態から、メンテナンスユニット50のモータM1を駆動してシャフトS1を一方側に回転(図6における時計回りに回転)させることにより、4つのワイプユニット82を方向D1に移動させる。各ワイプユニット82が対応するインクジェットヘッド22の下方の所定位置(インク受け位置)に到達した時点でモータM1の駆動を停止する(図9(c))。この図9(c)に示す状態では、各ワイプ部材118は、ノズル面22aとは接触しておらず、ノズル面22aとの間に所定の隙間をあけて配置されている。
この状態で各インクジェットヘッド22からインクが吐出され、吐出されたインクは、ワイプトレイ122に収容される。図9(c)に示すように、インク受け位置において、ワイプトレイ122は、3つのインクジェットヘッド22のノズル形成領域Nを下方からカバーしている。すなわち、各ノズル形成領域N、及びワイプトレイ122を平面視したときに、ワイプトレイ122内に各ノズル形成領域Nが位置している。したがって、ワイプトレイ122は、吐出回復モードにおいて複数のノズルから下方に吐出されたインクをほぼ漏れなく受け入れることができる。
ついで、偏心カム41,42の先端が上方に持ち上がる方向に偏心カム41,42を回転させて搬送ユニット30及びメンテナンスユニット50をわずかに上昇させ、ワイプ部材118の先端をノズル面22aに接触させる(図9(d)及び図11(a))。図9(d)及び図11(a)に示す位置がワイプ開始位置となる。
図9(d)及び図11(a)に示すように、ワイプ開始位置において、ワイプトレイ122は、3つのインクジェットヘッド22の各ノズル形成領域Nを下方からカバーしている。言い換えると、開口部122cは、このワイプ開始位置において、平面視で3つのノズル形成領域Nをその範囲内に含む開口領域を有している。したがって、ワイプトレイ122は、吐出回復モードにおいて複数のノズルから吐出され、ノズル面22aに付着したインクが滴となって下方に落下した場合であっても、そのインクをワイプトレイ122内に受け入れることができる。
ついで、図10(a)に示すように、各ワイプ部材118によって各インクジェットヘッド22のノズル面22aをワイピングする。各ワイプ部材118の先端がノズル面22aに当接した状態でワイプ部材118がノズル面22aをワイプしながら水平方向(方向D1)に移動する。これにより、各ノズル面22aが各ワイプ部材118により拭き取られる。
具体的には、メンテナンスユニット50のモータM1を駆動してシャフトS1を一方側に回転(図6における時計回りに回転)させることにより、4つのワイプユニット82を方向D1に移動させる。各ワイプユニット82のワイプ部材118が対応するインクジェットヘッド22のノズル面22aの端部に到達した時点でモータM1の駆動を停止する(図10(a)及び図11(b))。図10(a)及び図11(b)に示す位置がワイプ終了位置となる。
図10(a)及び図11(b)に示すように、ワイプ終了位置において、ワイプトレイ122は、3つのインクジェットヘッド22の各ノズル形成領域Nを下方からカバーしている。言い換えると、開口部122cは、このワイプ終了位置において、平面視で3つのノズル形成領域Nをその範囲内に含む開口領域を有している。したがって、ワイプトレイ122は、ワイピングされたノズル面22aに除去されずに残ったインクが滴となって下方に落下した場合であっても、そのインクを受け入れることができる。
なお、ワイプトレイ122は、ワイプユニット82がワイプ開始位置とワイプ終了位置にあるときだけではなく、ワイプユニット82がワイプ開始位置からワイプ終了位置に至るまでの間においても3つのインクジェットヘッド22の各ノズル形成領域Nを下方からカバーしている。具体的には、図9(c)に示す吐出回復モードのインク吐出開始時から、図9(d)に示すワイプユニット82がワイプ開始位置に配置され、さらに図10(a)に示すワイプユニット82がワイプ終了位置に配置されるまでの間、ワイプトレイ122は、下方からノズル形成範囲をカバーできる。すなわち、図9(c)に示す状態から図10(a)に示す状態に至るまでの間中、平面視したときに、3つのノズル形成範囲Nが、ワイプトレイ122における方向D1側の側壁部122bの上縁122dと、方向D1の反対側の側壁部122bの上縁122eの間に位置している。
ついで、偏心カム41,42の先端が下方に下がる方向に偏心カム41,42を回転させて搬送ユニット30及びメンテナンスユニット50をわずかに下降させ、ワイプ部材118の先端をノズル面22aから離隔させる(図10(b)。
ついで、メンテナンスユニット50のモータM1を駆動してシャフトS1を他方側に回転(図6における反時計回りに回転)させることにより、4つのワイプユニット82を方向D1の反対方向に移動させる。各ワイプユニット82が対応するキャップユニット83の上方に到達した時点でモータM1の駆動を停止する(図10(c))。
この図10(c)に示す位置で一連の動作を終了してもよく、また、必要に応じて図10(d)に示す画像形成モードの位置にメンテナンスユニット50を移動させた後に動作を終了してもよい。また、上記の吐出回復モードが終了した後、次のキャップモードを実行してインクジェットヘッド22のノズル面22aをキャップしてもよい。
<キャップモード>
次に、キャップモードの動作について説明する。
まず、図12(a)に示す状態から、偏心カム41,42の先端が下方に下がる方向に偏心カム41,42を回転させて搬送ユニット30及びメンテナンスユニット50を下降させる。メンテナンスユニット50の下降動作を停止する位置は、吐出回復モードのときよりも上方である。すなわち、インクジェットヘッド22の下方に向かってキャップユニット83が方向D1に移動できればよいので、図12(b)に示すように、キャップユニット83の上端がインクジェットヘッド22のノズル面22aよりも下方に到達したあたりで偏心カム41,42の回転を停止する。
ついで、メンテナンスユニット50のモータM2を駆動してシャフトS2を一方側に回転(図6における時計回りに回転)させることにより、4つのキャップユニット83を方向D1に移動させる。各キャップユニット83が対応するインクジェットヘッド22の下方の所定位置に到達した時点でモータM2の駆動を停止する(図12(c))。この図12(c)に示す状態では、各キャップユニット83は、ノズル面22aとは接触しておらず、ノズル面22aとの間に所定の隙間をあけて配置されている。
ついで、偏心カム41,42の先端が上方に持ち上がる方向に偏心カム41,42を回転させて搬送ユニット30及びメンテナンスユニット50をわずかに上昇させ、各キャップ部材124の弾性部材124bをノズル面22aに接触させる(図12(d))。これにより、各インクジェットヘッド22のノズル面22aは、キャップ部材124により密閉される。
以上説明したように本実施形態のインクジェット記録装置1では、前記ワイプユニットが前記ワイプ開始位置から前記ワイプ終了位置まで前記相対移動するときには、平面視において前記ノズル形成領域が開口部の開口領域に含まれている。すなわち、ノズル面の拭き取りの開始から終了までの間、ノズル形成領域の下方にはノズル形成領域をカバーするように開口部が位置している。したがって、インクがワイプ部材により拭き取られてこのワイプ部材を伝ってトレイに収容される場合はもちろんのこと、拭き取り前及び拭き取り後のノズル面からインク滴が下方に落下した場合であっても、このインクを開口部を通じてトレイ内に収容することができる。これにより、装置内が汚染されるのを抑制することができる。
また、本実施形態では、画像形成モードにおいては、ワイプユニットとキャップユニットが上下方向に並んで配置された状態で退避するので、ワイプユニットとキャップユニットを水平方向に並べて配置する場合と比べて水平方向の装置サイズを小さくすることができる。また、ワイプユニット及びキャップユニットがインクジェットヘッドに隣接して配置されるので、後述する吐出回復モード又はキャップモードの際にワイプユニット又はキャップユニットがインクジェットヘッドのノズル面に対向する位置まで移動する距離を短くすることができる。
また、本実施形態では、複数の前記インクジェットヘッドを備え、各インクジェットヘッドに対応する前記ワイプユニット及び前記キャップユニットがそれぞれ設けられており、各ワイプユニットと各キャップユニットが上下方向に並んで配置されるので、水平方向の装置サイズが大きくなるのを効果的に抑制することができる。また、前記インクジェットヘッドと、これに対応する前記ワイプユニット及び前記キャップユニットとが、前記記録媒体の搬送方向に沿って交互に配置されるので、吐出回復モード又はキャップモードの際に各ワイプユニット又は各キャップユニットが対応するインクジェットヘッドのノズル面に対向する位置まで移動する距離を短くすることができる。
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態では、4色フルカラーのインクジェット記録装置を例に挙げて説明したが、本発明は、5色以上又は単色のインクを用いたインクジェット記録装置に適用することもできる。
また、前記実施形態では、ワイプユニットとキャップユニットの両方を備えている場合を例に挙げて説明したが、ワイプユニットのみを備えていてもよい。
また、前記実施形態では、ワイプ部材が長尺で扁平な形状を有する場合を例に挙げて説明したが、ワイプ部材は他の形状であってもよい。
また、前記実施形態では、ワイプユニットを前記インクジェットヘッドに対して移動させる移動手段を備えている場合を例に挙げて説明したが、前記移動手段は、ワイプユニットをインクジェットヘッドに対して相対移動させることができるものであればよいので、インクジェットヘッドをワイプユニットに対して移動させるものであってもよい。