JP5149832B2 - 水安全管理システム - Google Patents
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Description
特に水道は、重要なライフラインの一つであり、水道水の安全性を常に維持管理するのが水道事業体の責務である。
しかし、水源水質は悪化傾向にあり、油の流入やアンモニア性窒素流入等による水質事故は毎年一定件数発生している。
一方、国内では、市町村合併及び水道事業への補助金削減の流れから、複数の水道事業体の統合・広域化が検討されている。
そして、水道事業の広域化に伴い、維持管理のための人員削減や外部委託の促進が予想される。
このような状況において、一定以上の水質管理レベルを合理的に維持するための管理手法が求められている。
食品製造においては、製造方法が予め決められており、原材料の品質も安定しているため、例えば適正な温度管理の範囲として、温度の上下限値を設定する。ただし、食品によって適正な温度範囲は異なるため、この管理を容易にする手段として、例えば特許文献1には、食品温度管理装置が提案されている。特許文献1に記載される技術では、食品毎の温度管理基準及びその付属情報を、製造されている食品の名称と関連付けて登録し、登録された基準に適合したか否かをモニタリングしている。
例えば特許文献2に示される管理基準は、HACCPにおける管理基準(CL)を、浄水場で原水を浄化する工程に対して適用したものであり、水道水の水質に関するそれぞれの指標において、消費者に危害が発生しない範囲がどの程度であるかを示す基準としている。
すなわち、水質管理における管理基準は、浄水場における監視制御システムの制御の目標値のように頻繁に調整されたり、一般的な食品製造におけるHACCPの管理基準のように常に一定値となることがなく、所定の長さの期間において一定値となる。
しかしながら、例えば特許文献2に開示される技術では、管理基準を設定変更する周期についての記載がなく、重点的に管理することが好ましい重要管理点の管理について改善の余地がある。
なお、本実施形態に係る水質管理システムは、HACCPを導入した水質管理システムであり、危害物質として濁度(後記する浄水濁度)、残塩濃度(残留塩素濃度)、pH(水素イオン指数)を対象として説明する。そして、浄水濁度を調整する工程、残塩濃度を調整する工程、及びpHを調整する工程を重要管理点とし、浄水濁度、残塩濃度、及びpHを指標とした管理基準を設定して水質管理する水質管理システムとする。
なお、凝集剤注入量は、原水濁度に対する、注入された凝集剤中のアルミニウムの比であるALT比(mg−AL/度)で管理される。
凝集剤注入量計測装置22aは、凝集剤注入装置22から混和池202に注入される凝集剤注入量を計測して検出信号に変換し、制御装置20に入力する。
塩素注入量計測装置23aは、塩素注入装置23から塩素混和池206に注入される塩素注入量を計測して検出信号に変換し、制御装置20に入力する。
また、消石灰注入量計測装置24aは、消石灰注入装置24から塩素混和池206に注入される消石灰注入量を計測して検出信号に変換し、制御装置20に入力する。
この構成によって、制御装置20は、凝集剤注入量、塩素注入量、及び消石灰注入量を取得できる。
さらに、原水濁度、凝集剤注入量等に基づいて、制御装置20はALT比を算出できる。
この構成によって、水安全管理システム1と監視制御システム2をネットワーク3を介して接続でき、水安全管理システム1と監視制御システム2は、ネットワーク3を介して、互いにデータを受け渡すことができる。
なお、データ読み出し装置11bとデータ書き込み装置12bは一体に構成されていてもよい。
管理基準は重要管理点で危害を適切に制御するための基準であり、重要管理点に対応して算出される。
例えば本実施形態においては、濁度(浄水濁度)を調整する工程、残塩濃度を調整する工程、及びpHを調整する工程を重要管理点とし、各重要管理点における危害物質が浄水濁度、残塩濃度、及びpHである。そして、演算部15は、浄水濁度の管理基準、残塩濃度の管理基準、及びpHの管理基準を算出する。
本実施形態に係る水質管理システム100は、水安全管理システム1の演算部15が算出する管理基準を重要管理点の管理基準に設定して、HACCPで水質管理する。
演算部15が管理基準を算出する手順は後記する。
管理基準データベース141は、重要管理点に対応する管理基準がデータとして格納されているデータベースであり、本実施形態においては、浄水濁度の管理基準、残塩濃度の管理基準、及びpHの管理基準がデータとして格納される。
さらに、周期データベース143には、優先度と、水安全管理システム1が管理基準を出力する出力周期を関連付ける出力周期テーブル143b(第2のテーブル)が格納されている。
そして、入力周期テーブル143aと出力周期テーブル143bを含んで周期データ143cが構成される。
なお、本実施形態においては、重要管理点を、浄水濁度を調整する工程、残塩濃度を調整する工程、及びpHを調整する工程の3工程としたため、入力周期テーブル143aの水質項目が3項となっているが、項目数は限定されるものではなく、水質管理システム100(図1参照)に必要な項目数を適宜増減すればよい。
また、水質項目は、重要管理点に対応した項目であることから、入力周期テーブル143aは、重要管理点に、水質項目の入力周期と優先度を関連付けるテーブルであり、重要管理点の優先度を設定するためのテーブルといえる。
この場合、水安全管理システム1の入力部16(図2参照)に残塩濃度が入力される周期が1分であり、入力部16は、図3の(a)に示す入力周期テーブル143aの入力周期として「1分」を算出し、入力周期テーブル143aの入力周期を「1分」に更新する。
したがって、入力周期テーブル143aの入力周期は、残塩濃度のモニタリング周期に等しくなる。
同様に、水安全管理システム1の入力部16は、浄水濁度が入力される周期を、浄水濁度の入力周期として算出し、さらにpHが入力される周期を、pHの入力周期として算出する。
通信装置18(図2参照)は、出力部17が出力した管理基準をネットワーク3(図2参照)に送出し、監視制御システム2(図2参照)に送信する。
一方、優先度Cは優先度が最も低く、出力部17は、優先度がCに設定される水質項目に対応する管理基準、すなわち、優先度がCに設定される重要管理点の管理基準を、最も長い周期である1日周期で出力する。
なお、優先度はA,B,Cの3種に限定されるものではなく、適宜増減すればよい。また、各優先度の出力周期は、例えばオペレータによって適宜設定される構成が好適である。
図2に示す通信装置18は、出力部17が出力した管理基準をネットワーク3に送出し、監視制御システム2に送信する。
オペレータは、重要管理点で危害が適切に制御されているか否かを判定するための指標(指標1)を、予め設定しておく。本実施形態に係る管理基準としては、残塩濃度、浄水濁度など単一の測定によって得られる指標や、ALT比のように複数の指標から求める指標がある。さらに、オペレータは、指標1に基づく管理基準を算出する上で満足すべき指標(指標2)とその値(境界値)を設定しておく。
ここで設定される指標2の浄水濁度の値は、消費者が用いる給水栓で少なくとも水質基準を満たすことが必要となる。
そしてオペレータが設定する指標1、指標2及び境界値は、例えば、水質・プロセスデータベース142にデータとして記憶しておけばよい。
また、例えば、ALT比などのように複数の指標から求める指標の場合、演算部15は、読み込んだ対象情報に基づいて当該指標を算出する。
すなわち、データ数が充分に多い場合に、指標2のデータの少なくとも一部が境界値条件を満たさないときは、図5の(b)に示すように、演算部15は、指標1(例えばALT比)が指標2(例えば浄水濁度)の条件を逸脱する割合(逸脱率)を示すヒストグラムを作成し、そのヒストグラムをフィッティングする関数と逸脱率の許容値の交点となるALT比を管理基準として算出する。
例えば、演算部15は、指標1である塩素注入量と指標2である残塩濃度の関係を示す、原点を通る直線の傾きを0から変化させ、塩素注入量と残塩濃度の関係を示すデータが最初に直線上に乗ったときの直線と境界値の交点となる塩素注入量を管理基準として算出する。
そして、演算部15は、算出した管理基準を管理基準データベース141に書き込む。すなわち、演算部15は、管理基準データベース141を更新する(ステップS104)。
なお、演算部15が管理基準算出方法を選択する方法、及び管理基準を算出する方法の詳細は、前記した、本願出願人が出願した特許文献2(特開2006−302049号公報)に記載されており、ここでの詳細な説明は省略する。
通信装置18は、水質データ又はプロセスデータを含んだデータを受信すると、入力部16に入力する。そして、入力部16は、水質データ及びプロセスデータを含んだデータが入力されると、水質・プロセスデータベース142及び周期データベース143を更新する手順を開始し、入力された、水質データ及びプロセスデータで水質・プロセスデータベース142を更新する(ステップS201)。
監視制御システム2から送信され、入力部16に入力されるデータは、演算部15が指標(指標1、指標2)を算出するのに必要とされる水質データ(本実施形態においては、浄水濁度、残塩濃度、pH)やプロセスデータ(本実施形態においては、凝集剤注入量、塩素注入量、消石灰注入量)を含んでいる。
例えば、入力部16は、浄水濁度を受信する間隔から水質項目の浄水濁度の入力周期を算出する。そして、入力部16は、周期データベース143に格納される入力周期テーブル143aの浄水濁度の入力周期を、算出した入力周期に書き換える。
例えば、入力部16は、残塩濃度の入力周期を1分と算出した場合、残塩濃度の出力周期を、入力周期と同じ1分に書き換える。
出力部17は、例えば所定の周期で周期データベース143の入力周期テーブル143aを参照して各水質項目(重要管理点)の優先度を抽出し、さらに周期データベース143の出力周期テーブル143bを参照して、優先度に対応した出力周期を水質項目毎(重要管理点毎)に抽出(算出)する(ステップS301)。
そして、出力部17は、選択した、優先度Aの水質項目に対応する管理基準を出力する。換言すると、出力部17は、優先度Aの重要管理点の管理基準を出力する(ステップS303)。出力部17から出力された管理基準は通信装置18に入力され、通信装置18は、優先度Aの重要管理点の管理基準(例えば浄水濁度の管理基準)をネットワーク3に送出する。
一方、出力部17は、優先度Aの出力周期ではないと判定したとき(ステップS302→No)、処理をステップS304に進める。
そして、出力部17は、選択した、優先度Bの水質項目に対応する管理基準を出力する。換言すると、出力部17は、優先度Bの重要管理点の管理基準を出力する(ステップS305)。出力部17から出力された管理基準は通信装置18に入力され、通信装置18は、優先度Bの重要管理点の管理基準(例えば残塩濃度の管理基準)をネットワーク3に送出する。
一方、出力部17は、優先度Bの出力周期ではないと判定したとき(ステップS304→No)、処理をステップS306に進める。
そして、出力部17は、選択した、優先度Cの水質項目に対応する管理基準を出力する。換言すると、出力部17は、優先度Cの重要管理点の管理基準を出力する(ステップS307)。出力部17から出力された管理基準は通信装置18に入力され、通信装置18は、優先度Cの重要管理点の管理基準(例えばpHの管理基準)をネットワーク3に送出する。
一方、出力部17は、優先度Cの出力周期ではないと判定したとき(ステップS306→No)、管理基準を出力する手順を終了する。
出力部17が、管理基準を出力する手順を実行する所定の周期は任意に設定すればよいが、各優先度に設定される最短の出力周期より短い周期であることが好ましい。
そして、水安全管理システム1は受信した水質データ、及びプロセスデータに基づいて、重要管理点の管理基準を算出できる。
したがって、例えば水源水質(原水の水質)が変動した場合であっても、水安全管理システム1は、水源水質に応じた管理基準を算出できる。
この場合、優先度の高い重要管理点については、短い周期で監視制御システム2に管理基準を送信するように構成することによって、例えば水源水質が変動した場合であっても、監視制御システム2は、水源水質の変動に応じて算出される管理基準を、優先度に応じて速やかに取得できる。
そして、監視制御システム2は、取得した管理基準に基づいて浄水施設200を制御できる。
データ読み出し装置11bで読み出された水質データ及びプロセスデータは、例えば入力部16に入力され、入力部16は、図4に示す手順に従って、管理基準データベース141を更新する。
また、ネットワーク3とフレキシブルディスクFDなどリムーバブルな記録媒体を併用して、水安全管理システム1と監視制御システム2の間でデータの受け渡しをする水質管理システム100(図2参照)であってもよい。
例えば入力部16のみが備わる制御装置10を有する水安全管理システム1の場合、監視制御システム2(図2参照)から入力される水質データやプロセスデータを、表示装置12aが表示する構成であってもよい。
そして、例えばオペレータは、表示装置12aに表示される水質データやプロセスデータに基づいて、所定の水質を維持するように監視制御システム2を遠隔操作する構成であってもよい。
また、オペレータは、出力部17が管理基準を出力する出力周期を、データ入力装置11aで水安全管理システム1に入力し、周期データベース143(図2参照)を更新する。
制御装置10の演算部15は、管理基準データベース141を参照して管理基準を算出し、出力部17は、周期データベース143を参照して得られる出力周期で管理基準を出力する。
そして、通信装置18(図2参照)が管理基準をネットワーク3(図2参照)に送出する。
2 監視制御システム
3 ネットワーク
10 制御装置
11 入力装置
11a データ入力装置(データ設定手段)
11b データ読み出し装置
12 出力装置
12a 表示装置
12b データ書き込み装置
15 演算部
16 入力部
17 出力部
18 通信装置
141 管理基準データベース
142 水質・プロセスデータベース
143 周期データベース
143a 入力周期テーブル(第1のテーブル)
143b 出力周期テーブル(第2のテーブル)
143c、143d 周期データ
200 浄水施設
Claims (8)
- 水質の許容範囲として設定される管理基準を、浄水施設をモニタリング及び制御する監視制御システムから入力される水質データとプロセスデータに基づいて、前記水質データの項目毎に算出して出力する水安全管理システムであって、
前記水質データ、及び前記プロセスデータを格納する水質・プロセスデータベースと、
前記管理基準をデータとして格納する管理基準データベースと、
前記管理基準を出力する出力周期を前記水質データの項目毎に算出するための周期データを格納する周期データベースと、
前記管理基準を算出して前記管理基準データベースに格納する演算部、前記監視制御システムから入力される前記水質データ及び前記プロセスデータを前記水質・プロセスデータベースに格納する入力部、及び前記管理基準データベースに格納される前記管理基準を前記出力周期で出力する出力部を備える制御装置と、を含んで構成され、
前記出力部が前記管理基準を出力するときの優先度が前記水質データの項目毎に設定されるとともに、前記優先度が高いほど前記出力周期が短いことを特徴とする水安全管理システム。 - 前記監視制御システムとネットワークを介して接続され、
前記監視制御システムが前記ネットワークを介して送信する前記水質データ及び前記プロセスデータを受信して前記入力部に入力する機能、及び、前記出力部が出力する前記管理基準を前記ネットワークを介して前記監視制御システムに送信する機能を有する通信装置を備えることを特徴とする請求項1に記載の水安全管理システム。 - 前記監視制御システムが分散して配置される場合、分散するそれぞれの前記監視制御システムと前記ネットワークを介して接続されることを特徴とする請求項2に記載の水安全管理システム。
- 前記入力部は、前記水質データが入力される入力周期を前記水質データの項目毎に算出するとともに、前記出力周期が、算出した前記入力周期と等しくなるように前記周期データを書き換え、
前記出力部は、前記周期データから抽出する前記出力周期で、前記水質データの項目毎に前記管理基準を出力することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の水安全管理システム。 - 前記周期データは、
前記水質データの項目に、前記優先度を関連付ける第1のテーブル、及び前記優先度に、前記出力周期を関連付ける第2のテーブルを含んでおり、
前記出力部は、
前記第1のテーブルを参照して前記優先度を前記水質データの項目毎に抽出するとともに、前記第2のテーブルを参照して前記抽出した優先度に関連付けられる出力周期を抽出し、抽出した前記出力周期で、前記水質データの項目毎に前記管理基準を出力することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の水安全管理システム。 - オペレータがデータを入力するためのデータ入力装置を備え、
前記水質データの項目毎に関連付けられる前記優先度、及び前記優先度に関連付けられる前記出力周期が、前記データ入力装置から入力されるデータによって、それぞれ個別に変更されることを特徴とする請求項5に記載の水安全管理システム。 - 前記監視制御システムでリムーバブルな記録媒体に書き込まれた前記水質データ及び前記プロセスデータを読み出して前記入力部に入力するデータ読み出し装置と、前記出力部が出力する前記管理基準を前記記録媒体に書き込むデータ書き込み装置の少なくとも1つを備えることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の水安全管理システム。
- 前記入力部と前記出力部のどちらか一方を備え、
前記入力部のみが備わる場合、前記演算部が算出する前記管理基準を表示するための表示装置が備わり、
前記出力部のみが備わる場合、前記水質データ及び前記プロセスデータをオペレータが設定するためのデータ設定手段が備わることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の水安全管理システム。
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