JP5149185B2 - 水中懸濁性農薬組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、少なくとも1つの液状農薬成分及び少なくとも1つの固体農薬成分を含む安定な水中懸濁性農薬組成物に関する。
農薬は組成物の剤型に基づいて分類されており、特に水稲用農薬の場合、その施用目的が例えば水田中の草及び雑草といった望ましくない植生及び有害虫の防除にあることから、労働力をも節約しながら所要量の農薬を確実に施用するために、固形顆粒が主として考慮されている。しかしながら粒状組成物の場合、田面全体に均一に散布するのが困難であるという問題がある。さらに、顆粒自体のサイズを増大させ、活性成分(除草活性成分)の量を増加させかつ散布量を減少させる技術を用いて作業効率を改善する試みが近年なされてきた。
一方、固形顆粒に加えて、植え付け前処理用として使用される乳剤、及び植え付け後処理用として使用される水中懸濁性農薬組成物もある。液状農薬組成物、特に水中懸濁性農薬組成物は、環境負荷を低減させるその能力、その取り扱いやすさ、及び均一な散布、希釈及び濃度調整のしやすさなどを理由として、近年注目を浴びている。しかしながら、水中懸濁性農薬組成物には、水分の存在下で活性成分が不安定であったり、2種類以上の活性成分を配合する場合、特に液状成分と固体成分を組合せる場合に、全ての活性成分を均質に懸濁、分散させることが困難であり、活性成分が分離、沈殿又は凝集しやすいといったような問題点がある。
物理的特性の異なる2種類以上の活性成分を配合した液状組成物を処方する場合、活性成分の適切な分散、懸濁、乳化及び組合せを確保しながら、全ての活性成分の加水分解、沈殿及び凝集を阻害するように組成物の設計を行う必要がある。往々にして乳化剤、乳化安定剤、及び界面活性剤といった助剤が使用されるが、活性成分と使用する助剤の間の相溶性に対応する活性成分の加水分解や凝集の助長がみられる場合がある。例えば、常温で液状であるクロロアセトアミド系除草剤の一つであるプレチラクロールと、常温で固体であるスルホニル尿素系除草剤の一つであるベンスルフロンメチルを含む水性液状組成物を処方する場合、両活性成分の懸濁及び分散のために乳化安定剤や界面活性剤などの助剤の使用は不可欠であるが、使用する助剤の種類に応じ、ベンスルフロンメチルの顕著な加水分解や、沈殿、凝集が生じるといったような問題が存在する。
例えば特開平10−287503号公報には、農薬活性成分としてのスルホニル尿素系除草剤及びイヌエビ除草活性を有する除草活性成分としての平均重合度2000以下、ケン化度が69〜90モル%のポリビニルアルコール、及び水から成る水性懸濁組成物が満足のいく組成物安定性と改善された拡散性を示し、稲体への化学物質の接着を防ぐことで化学損傷を防ぐことができるという記述がある。さらに、特開平9−183704号公報には、リグニンスルホン酸塩を添加することで長期保存安定性に優れた、スルホニル尿素系除草剤化合物を含有する水性懸濁組成物が得られるという記述がある。
本発明の目的は、液状農薬成分と固体農薬成分とを含む水中懸濁性農薬組成物において、含有成分の分散、懸濁、乳化又はそれらの組合せが確保され、しかも長期保存した場合でも加水分解が阻害され、沈殿及び凝集も阻害されている組成物を提供することにある。
本発明者は、上記課題に焦点をあてた広範な研究を行なった結果、少なくとも1つの液状農薬成分と少なくとも1つの固体農薬成分とを含む水中懸濁性農薬組成物の中に油脂を配合することで、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。従って、本出願は以下の発明を内含する。
第1の態様において本発明は、少なくとも1つの液状農薬成分、少なくとも1つの固体農薬成分及び少なくとも1つの油脂を含む水中懸濁性農薬組成物を提供する。
第1の実施形態において、本発明は、油脂が、鉱油、植物油、脂肪酸エステル、エポキシ化植物油及び流動パラフィンから成る群から選択される水中懸濁性農薬組成物を提供している。
第2の実施形態において、本発明は、非イオン性界面活性剤を含む水中懸濁性農薬組成物を提供している。
第3の実施形態において、本発明は、非イオン性界面活性剤がポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーである水中懸濁性農薬組成物を提供している。
第4の実施形態において、本発明は、農薬成分が少なくとも1つの除草剤である水中懸濁性農薬組成物を提供している。
第5の実施形態において、本発明は、農薬成分が少なくとも1つの殺虫剤である水中懸濁性農薬組成物を提供している。
第4の実施形態において、本発明は、農薬成分が少なくとも1つの殺菌剤である水中懸濁性農薬組成物を提供している。
第6の実施形態において、本発明は、少なくとも1つの殺菌剤及び少なくとも1つの殺虫剤を農薬成分として含んで成る水中懸濁性農薬組成物を提供している。
第7の実施形態において、本発明は、液状農薬成分の少なくとも1つがクロロアセトアミド系除草剤である水中懸濁性農薬組成物を提供している。
第8の実施形態において、本発明は、クロロアセトアミド系除草剤がプレチラクロールである水中懸濁性農薬組成物を提供している。
第9の実施形態において、本発明は、クロロアセトアミド系除草剤がメトラクロールあるいはS−メトラクロールである水中懸濁性農薬組成物を提供している。
第11の実施形態において、本発明は、固体農薬成分の少なくとも1つがスルホニル尿素系除草剤である水中懸濁性農薬組成物を提供している。
第12の実施形態において、本発明は、スルホニル尿素系除草剤がベンスルフロンメチルである水中懸濁性農薬組成物を提供している。
第12の実施形態において、本発明は、固体農薬成分としてさらにピリフタリドを含む水中懸濁性農薬組成物を提供している。
第2の態様において、本発明は、制御が望まれる場合に有効量の水中懸濁性農薬組成物が作用できるようにする段階を含む、有用植物の作物、特にイネ科作物中の望ましくない植生を制御する方法を提供する。
第3の態様において、本発明は、有用植物の作物、特にイネ科作物中の草及び雑草を制御するための水中懸濁性農薬組成物を提供している。
第4の態様において、本発明は、少なくとも1つの液状農薬成分及び少なくとも1つの固体農薬成分を含む水中懸濁性農薬組成物中に油脂を配合することによる、農薬組成物の調製方法を提供している。
本発明に従うと、液状農薬成分及び固体農薬成分を含む水中懸濁性農薬組成物において、含有成分の満足のいく分散、懸濁、乳化又はそれらの組合せが確保され、長期保存した場合でも加水分解が阻害され、沈殿及び凝集も阻害される。
本発明は、少なくとも1つの液状農薬成分、少なくとも1つの固体農薬成分及び少なくとも1つの油脂を含む水中懸濁性農薬組成物を提供する。
本発明に係る水中懸濁性農薬組成物内で使用できる液状農薬成分については、それらが例えば組成物生産時、組成物中又は散布液中での温度といったような常温及び常圧で、或いは特定のケースに応じて最高約50℃の温度で、ガラス状、油状又は液体状態であることを条件として、特別な制限はない。標準的な例としては、プレチラクロールなどのクロロアセトアミド系化合物、カーバメート系化合物及びジニトロアニリン系化合物が含まれる。さらに、農薬化合物中で通常用いられる純度で油状である成分も、それがたとえ純粋形態である場合常温で固体であっても、本発明の液状農薬成分の中に含まれる。農薬成分は、例えば除草剤、殺菌剤、殺真菌剤、殺線虫剤、殺寄生虫剤、又はその他の殺生物剤であってよい。液状農薬成分は、好ましくは除草剤、殺虫剤、殺菌剤又は殺虫・殺真菌剤、特に好ましくは除草剤である。
液体除草剤の例としては、プレチラクロール(656)、メトラクロール(548)、プロジアミン(661)、エスプロカルブ(303)、プロスルフォカルブ(683)、トリクロピル(827)、フルアジフォップ(681)、オルベンカルブ(595)、モリネート(560)、ジメチンアミド(260)、ペラルゴン酸(583)、ダラポン(214)、ピペロホス(560)、ブタミフォス(102)、グリホセート・トリメシウム(419)、セトキシジム(726)、クレトジム(153)、S・メトラクロール(549)、及びシンメチリン(153)などが挙げられるがこれらに制限されるわけではない。本発明においては、クロロアセトアミド系除草剤であるプレチラクロール(656)及びメトラクロール(548)が好ましく、プレチラコロールが特に好ましい。これらの化合物及びその農学的に受容可能な塩については、例えば「The e-Pesticide Manual」、第13版、バージョン3.1、CDC Tomlin,British Crop Protection Council編、2004〜2005年の中で記述されている。
液状殺虫剤の例としては、シアノホス(184)、フェンチオン(346)、フェニトロチン(335)、ジクロフェンチオン(1051)、ピリミホス−メチル(1345)、ジアジノン(227)、イソキサチオン(480)、オキシデプロフォス(1324)、マラチオン、フェントエート(631)、フォルモチオン(1192)、チオメトン(801)、ジスルフォトン(278)、プロチオフォス(686)、スルプロフォス(1408)、プロペノフォス、ピラクロフォス(689)、ジクロルボス(286)、ナレド(657)、クロルフェンビンホス(131)、プロパフォス(1356)、イソフェンホス(1236)、エチオン(309)、カルボスルファン(119)、ベンフラカルブ(60)、アレトリン(17)、パーメントリン(626)、シハロトリン(196)、シフルトリン(193)、フェンバレレート(349)、フルシトリネート(367)、フルバリネート(1184)、シクロプロトリン(188)、シラフルオフェン(728)、プロパルガイド(671)、ハルフェンプロックス(424)、エトプロホス(312)、フォスチアゼート(408)が含まれるが、これらに制限されるわけではない。これらの化合物及びその農学的に受容可能な塩については、例えば、「The e-Pesticide Manual」、第13版、バージョン3.1、CDC Tomlin,British Crop Protection Council編、2004〜2005年の中で記述されている。
液状農薬成分のその他の例としては、液体殺菌剤特に殺真菌剤、例えば多硫化カルシウム(111)、エジフェンホス(290)、プロピコナゾール(675)、ペフラゾエート(618)、ピリフェノックス(703)、テトラコナゾール(778)、エクロメゾール(321)、ジノカプ(270)、メタラキシルM(516)が含まれる。これらの化合物及びその農学的に受容可能な塩については、例えば「The e-Pesticide Manual」、第13版、バージョン3.1、CDC Tomlin,British Crop Protection Council編、2004〜2005年の中で記述されている。
本発明に係る液体農薬成分は、水溶解度が低いもの、例えば常温・常圧で水溶解度が1000mg/l以下、好ましくは500mg/l以下のものが好ましい。このような液状農薬成分の例としては、プレチラクロール(水溶解度:50mg/l)、メトラクロール(水溶解度:488mg/l)、プロジアミン(水溶解度:0.013mg/l)、エスプロカルプ(水溶解度:4.9mg/l)、プロスルカルプ(水溶解度:13.2mg/l)、メタラキシル−M(水溶解度:28mg/l)がある。
上述の液状農薬成分は好ましくは、本発明において請求されている水中懸濁性農薬組成物の合計質量を100質量部として、好ましくは0.1〜60質量部、より好ましくは5〜40質量部という量で配合される。
本発明に係る水中懸濁性農薬組成物内で使用できる固体農薬成分については、それらが例えば組成物生産時、組成物中又は散布液中での温度といったような常温及び常圧で、固体状態にある農薬成分であることを条件として、特別な制限はない。これらの成分の標準的な例としては、スルホニル系化合物がある。農薬成分は、例えば除草剤、殺菌剤、殺真菌剤、殺線虫剤、殺寄生虫剤、及びその他の殺生物剤であってよい。液状農薬成分は、好ましくは除草剤、殺虫剤、殺菌剤又は殺虫・殺真菌剤、特に好ましくは除草剤である。
固体除草剤の例としては、ベンスルフロンメチル(64)、CNP(974)、ナプロアニリド(517)、ブフェノックス(75)、ピリブチカルブ(698)、ブロモブチド(93)、メフェナセット(505)、ダイムロン(213)、イマゾスルフロン(456)、ピラゾスルフロン−エチル(694)、シメトリン(732)、プロメトリン(666)、ジメタメトリン(259)、クロメトキシニル、オキサジアゾン(600)、ピラゾレート(692)、ピラゾキシフェン(695)、クロメプロップ(160)、ベンゾフェナップ(70)、テニルクロール(789)、オキサジクロメホン(604)、ペントキサゾン(625)、カフェンストロール(110)、アジムスルフロン(43)、ピリミノバック・メチル(707)、フェントラザミド(348)、及びビスピリバック−ナトリウム塩(82)が含まれるが、これらに制限されるわけではない。本発明においては、スルホニル尿素系除草剤であるベンスルフロン−メチル(64)が特に好ましい。これらの化合物及びその農学的に受容可能な塩については、例えば「The e-Pesticide Manual」、第13版、バージョン3.1、CDC Tomlin,British Crop Protection Council編、2004〜2005年の中で記述されている。
固体殺虫剤の例としては、イミダクロプリド(458)、ジノテフラン(271)、チアメトキサム(792)、アセタミプリド(4)、チアクロプリド(791)、ニテンピラム(579)、NAC(115)、ピリダフェンチオン(701)、クロルピリホス−メチル(146)、ジメトエード(262)、アセフェート(2)、カルタップ(123)、チオシクラム(798)、ベンスルタップ(66)、及びブプロフェジン(99)が含まれるがこれらに制限されるわけではない。これらの化合物及びその農学的に受容可能な塩については、例えば「The e-Pesticide Manual」、第13版、バージョン3.1、CDC Tomlin,British Crop Protection Council編、2004〜2005年の中で記述されている。
固体殺菌剤、特に固体殺真菌剤の例としては、シプロジニル(208)、メパリピリム(508)、ピリメタニル(705)、メタラキシル(516)、メプロニル(510)、フルトラニル(396)、テクロフタラム(766)、ペンシクロン(620)、ジクロメジン(239)、トリフルミゾール(834)、カスガマイシン(483)、バリダマイシン(846)、プロベナゾール(658)、イソプロチオラン(474)、シプロコナゾール(207)、メトコナゾール(525)、トリシクラゾール(828)、ピロキロン(710)、オキソリニック酸(606)、フェリムゾン(351)、イプロジオン(470)、トリホリン(838)、ピコキシストロビン(647)、アゾキシストロビン(47)、クレソキシム−メチル(485)、オリサストロビン、ピラクロストロビン(690)、トリフロキシストロビン(832)、及びメトミノストロビン(551)が含まれるがこれらに制限されるわけではない。これらの化合物及びその農学的に受容可能な塩については、例えば「The e-Pesticide Manual」、第13版、バージョン3.1、CDC Tomlin,British Crop Protection Council編、2004〜2005年の中で記述されている。
上述の固体農薬成分は好ましくは、本発明において請求されている水中懸濁性農薬組成物の合計質量を100質量部として、好ましくは0.1〜60質量部、より好ましくは0.1〜40質量部という量で配合される。
本発明に係る水中懸濁性農薬組成物は、液状農薬成分と固体農薬成分の分散性及び懸濁性を維持するための乳化安定剤として、また液状農薬成分による固体農薬成分の分解を阻害するために少なくとも1つの油脂を含有する。この油脂の例としては、スピンドルオイル、機械油及び流動パラフィン等の鉱物油、ソルベッソ及びシェルゾール等の芳香族系溶剤、ナタネ油、大豆油、ヒマワリ油、ヒマシ油、マツ油及び綿実油等の植物油、並びにこれらの油脂の誘導体、例えばメチルエステル及びその他のエステル誘導体、エポキシ化誘導体、脂肪酸エステルが含まれ、これらは単独で又は組み合わせて使用することができる。本発明において特に好ましい油脂は植物油及び流動パラフィンである。かかる油脂は好ましくは本発明に係る水中懸濁性農薬組成物の合計質量を100質量部として、0.1〜30質量部そしてより好ましくは1〜10質量部という量で配合される。
本発明に係る水中懸濁性農薬組成物の中には好ましくは界面活性剤が含有されている。好ましい界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー及びアルキルポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマーエーテルなどのポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー型の界面活性剤が含まれるが、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン(POE−POP)ブロックポリマーが特に好ましい。上述の界面活性剤の使用は、それにより液状農薬成分の満足のいく乳化及び固体農薬成分の満足のいく分散が期待でき、さらには液状農薬成分による固体農薬成分の分解を阻害できることから、好ましい。上述の界面活性剤は好ましくは、本発明に係る水中懸濁性農薬組成物の合計質量を100質量部として、0.01〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部という量で配合される。
好ましい界面活性剤はPOE−POPブロックポリマーであり、平均分子量が10,000以上、エチレンオキシド質量比が50%以上のもの(例えばエパンU−108;第一工業製薬(株))が、過酷な試験条件下での凝集の発生を阻害できることから特に好ましい。しかしながら、平均分子量が10,000以下又はエチレンオキシド質量比が50%以下のものでも、液状活性成分の満足のいく乳化を達成し、固体活性成分の分解を阻害することができる。さらに、異なる平均分子量又はエチレンオキサイド質量比をもつPOE−POPブロックポリマーを複数組合わせて用いることで、所望の物理的特性をもつ組成物を得ることが可能である。
本発明に係る水中懸濁性農薬組成物の中には、その他の界面活性剤を配合させることができ、その例としては、ポリオキシアルキレントリスチリルフェノール、ポリエチレングリコール高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル、ソルビタンアルキレート、アセチレンアルコール、アセチレンジオール及びそれらのアルキレンオキシド付加生成物、ポリアルキレンソルビタンアルキレート、ポリアルキルグルコシド、ショ糖脂肪酸エステル及びポリアルキレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤;アルキルアリールスルホン酸塩、ジアルキルスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、アルキル化又は非アルキル化ナフタレンスルホン酸塩及びその縮合生成物、アルキル硫酸エステル及びエステル塩、アルキル燐酸エステル及びエステル塩、アルキルアリール硫酸エステル及びエステル塩、アルキルアリール燐酸エステル及びエステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル及びエステル塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸エステル及びエステル塩、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル硫酸エステル及びエステル塩、及びポリカルボン酸型ポリマー活性化剤等のアニオン性界面活性剤;シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アルキルベタイン等の両性界面活性剤;そしてアルキルメチルアンモニウム塩及びポリオキシアルキレンアルキルメチルアンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤が含まれる。好ましい態様においては、本発明に係る水中懸濁性農薬組成物はポリエオキエチレントリスチリルフェノールをもう1つの界面活性剤として含有する。この界面活性剤は好ましくは、本発明に係る水中懸濁性農薬組成物の合計質量を100質量部として、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.01〜1質量部という量で配合される。
上述の各成分に加え、本発明に係る水中懸濁性農薬組成物は、水中懸濁性農薬組成物内で標準的に使用される慣用の賦形剤を含有でき、その例としては消泡剤、例えばシリコーン、防ばい剤例えば1,3−ベンズイソチアゾリン−3−オン及びその他のベンズイソチアゾリノン系化合物、pH調整剤、例えばK2PO4、凍結防止剤例えばプロピレングリコール、増粘剤例えばキサンタンガム、シリカ、ベントナイト、不活性担体例えば、クレー、珪藻土、炭酸カルシウム、保存料、粘着付与剤、肥料、及びその他の活性性成分がある。
本発明に係る水中懸濁性農薬組成物は、例えば上述の活性成分を上述の配合賦形剤及び液状又は固体担体と直接混合しかつ/又はそれらを一緒に粉砕することなどによる通常の方法を用いて生産可能である。
好ましくは、本発明に係る水中懸濁性農薬組成物は、以下に記述する要領で調製可能である。
(a) 固体農薬成分の濃縮粉砕スラリーの組成
さまざまなタイプの界面活性剤の一部分及びその他の助剤を、水中に溶解又は分散させることによって混合し、その後固体農薬成分を添加する。その後、バッチ式ビーズミルなどのビーズミルで混合物を適切に湿式粉砕して、濃厚スラリーを調製する。
(b) 液状農薬成分の乳化液の組成
水中でさまざまなタイプの界面活性剤とその他の助剤を混合する。ホモジナイザーなどで強制攪拌しながら、液状農薬成分に油脂を溶解させた油脂相を添加して、油相を水相に乳化させる。次にこの混合物を、所望の粒径になるまで適切に強制乳化させる。
(c) 組成物の生成
液状農薬成分乳化液に対し固体農薬成分スラリーを添加(乳化液対スラリー比は例えば9:1)して、ミキサーなどで適切に混合して組成物を得る。
本発明に係る水中懸濁性農薬組成物に従った除草剤は、湛水下の水田雑草を制御するために好適である。これは、好ましくは本発明に係る水中懸濁性農薬組成物を必要な量だけ直接、又は水で適当な濃度に希釈してから田面に施用することによってか、又は、田面に流入する水に添加すること(いわゆる水口処理)によって行なわれる。さらに、田植機による植え付けと同時に、本発明に係る組成物を施用することもできる。
本発明に係る水中懸濁性農薬組成物は、通常の散布と同じ要領で施用可能であるが、より多くの量の水中に希釈させることも可能である。本発明に係る水中懸濁性農薬組成物は好ましくは、100〜50,000ml/ha、そしてより好ましくは1000〜10,000ml/haの施用量で使用可能である。
以下、具体例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はこれにより限定されるものではない。
表1及び2に示す配合で、下記のとおりにして水中懸濁性農薬製剤を調製した。
Figure 0005149185
Figure 0005149185
表中、PFTはピリフタリドを、BSMはベンスルフロンメチルを表す。また、NK−PTCはPOE−POPブロックポリマーを主成分とするCoseal社製の乳化剤配合物である。
(a)固体農薬成分の濃厚粉砕スラリーを調製
ソプロポールBSU(界面活性剤;ローディア社製)0.1質量部、エパンU108(界面活性剤;第一工業製薬社製)2.0質量部、ロードシル454(消泡剤;ローディア社製シリコーン)0.1質量部、ロードポール23(増粘剤;ローディア社製キサンタンガム)0.1質量部を水に溶解または分散混合して、固体農薬成分を添加した。固体農薬成分としては、ベンスルフロンメチル(一般名)単独又はベンスルフロンメチルとピリフタリド(一般名)との組み合わせを使用した。スラリー中の各有効成分濃度はベンスルフロンメチルが15%、ピリフタリドが30%になるように調整した。バッチ式ビーズミル(アイメックス社製 4筒式サンドミル 1/8ガロン、ガラスビーズ1mmを使用)で1000rpm/1時間湿式粉砕して濃厚スラリーを調整した(製剤の10倍濃度)。
(b)液体農薬成分の乳化液の調製
水に乳化剤(エパンU108またはエパンU103またはエパンU105またはNK-PTC)、プロピレングリコール(凍結防止剤;昭和電工社製)KH2PO4(pH調整剤;日本化学工業社製)、キサンタンガム(増粘剤;ローディア社製)、プロキセルGXL(1,3−ベンズイゾチアゾリン−3−オン;防ばい剤;アーチケミカルズ社製)を混合した。各成分の添加量については表1および表2を参照のこと。ホモジナイザーで強制攪拌しながら液体農薬成分に油脂を溶解させた油相を添加して油相を水相に乳化させた。液体農薬成分としては、プレチラクロール(一般名)、S−メトラクロール(一般名)、エスプロカーブ(一般名)又はプロスルフォカーブ(一般名)を使用した。また、油脂としては、大豆油(ホーネンコーポレーション製)又は流動パラフィン(マツケン社製モレスコホワイトP−70)を使用した。各成分の添加量については表1および表2を参照のこと。約2分間強制乳化して、所要の粒径とした。
(c)水中懸濁性農薬製剤の調製
液体農薬成分乳化液に固体農薬成分スラリーを添加(乳化液:スラリー=9:1)して、プロペラ式の羽をシャフトに装着したラボミキサーで5分間混合して製剤を得た。
安定性試験
以上のとおりにして調製した各水中懸濁性農薬製剤について、40℃での保存安定性試験を実施し、製剤中の農薬成分の分解及び製剤中における油分またはクリーム分の発生の有無、凝集または沈殿発生の有無、上澄みの発生の有無を経時的に追跡した。その結果を表3〜6に示す。
Figure 0005149185
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上記の製剤調整方法に従って調整した農薬製剤約100mlをガラス容器に密封し40℃の恒温槽内に静置した。一定期間経過後に農薬製剤をとりだし、高速液体クロマトグラフにより農薬成分含有量を測定した。
上記の製剤調整方法に従って調整した農薬製剤約100mlをガラス容器に密封し40℃の恒温槽内に静置した。一定期間経過後に農薬製剤をとりだし、目視により上澄み発生の有無、オイル分またはクリーム分の分離の有無、凝集物または沈殿の発生の有無を確認し、その程度を測定した。
表の結果から、油脂を配合することで、製剤中の農薬成分の分解が抑制され、しかも製剤中の成分の分離や凝集、沈殿も抑えることができることがわかる。
本発明に係る液状農薬成分及び固体農薬成分を含む水中懸濁性農薬組成物は、含有成分の良好な懸濁・分散を確保し、しかも長期保存しても分解が抑制され、沈殿・凝集も抑制される。

Claims (10)

  1. 0.1〜60重量部で存在する液状農薬成分、0.1〜60重量部で存在する固体農薬成分、0.1〜30重量部で存在する油脂、及び0.01〜10重量部で存在するポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーを含み、ここで当該ブロックポリマーは平均分子量10,000以上、エチレンオキシド質量比が50%以上であり、前記液状農薬成分がプレチラクロール、メトラクロール、プロジアミン、エスプロカルブ、プロスルフォカルブ、トリクロピル、フルアジフォップ、オルベンカルブ、モリネート、ジメチンアミド、ペラルゴン酸、ダラポン、ピペロホス、ブタミフォス、グリホセート・トリメシウム、セトキシジム、クレトジム、S・メトラクロール及びシンメチリンから選択され、前記固体農薬成分がベンスルフロンメチル、イマゾスルフロン、ピラゾスルフロン−エチル及びアジムスルフロンから選択されるスルホニル尿素系除草剤であり、そして前記油脂が植物油及び流動パラフィンから成る群から選択される、水中懸濁性農薬組成物。
  2. 油脂が、植物油及び流動パラフィンから成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
  3. 液状農薬成分がプレチラクロール、S・メトラクロール、エスプロカルブ、及びプロスルフォカルブから選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 液状農薬成分がプレチラクロール、S・メトラクロール、エスプロカルブ、及びプロスルフォカルブから選択され、固体農薬成分がベンスルフロンメチルであり、そして前記油脂が植物油及び流動パラフィンから成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
  5. 固体農薬成分としてさらにピリフタリドを含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
  6. 制御が望まれる場合に有効量の請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物が作用できるようにする段階を含む、有用植物の作物中の望ましくない植生を制御する方法。
  7. 有用植物の作物がイネである、請求項に記載の方法。
  8. 有用植物の作物中の草及び雑草を制御するための請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物の使用。
  9. 有用植物の作物がイネである、請求項に記載の使用。
  10. 少なくとも1つの液状農薬成分及び少なくとも1つの固体農薬成分を含む水中懸濁性農薬組成物中に油脂を配合することによる、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物の調製方法。
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